説明

導電性膜の製造方法、及び、導電性膜

【課題】網目状の導電性膜を、簡易かつ安価に製造することができ、網目が細かく、ディスプレイ等に用いた場合に、モアレ等が生じない導電性膜の製造方法、及び、導電性膜を提供する。
【解決手段】導電性微粒子を含む有機溶媒分散体を基板に塗布して網目状の導電性膜を製造する方法であって、該製造方法は、塗布された有機溶媒分散体を、塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させる工程を含む導電性膜の製造方法、及び、導電性物質の網目状線部と空孔部とによって形成された網目状の導電性膜であって、該導電性膜は、空孔部の平均面積が400μm以下であり、網目状線部の線幅が5μm以下である導電性膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性膜の製造方法、及び、導電性膜に関する。より詳しくは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、電子ペーパー(デジタルペーパー)等の薄型ディスプレイ、タッチパネルに好適に用いることができる導電性膜の製造方法、及び、導電性膜に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性膜は、種々の電気機器へ適用されており、特に近年、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、電子ペーパー(デジタルペーパー)等の薄型ディスプレイの需要が拡大しており、このような用途に適用される導電性膜として、光透過性、導電性に優れるものが求められており活発に研究開発が行われている。
光透過性を有する導電性膜としては、現在では、酸化インジウム錫(ITO)が用いられることが一般的である。酸化インジウム錫により作成された導電性膜は、光透過性、導電性のバランスに優れており、通常の液晶ディスプレイ等だけではなく、例えば、タッチパネル用途等にも使用されている。しかしながら、インジウムのような希金属は高価であり、また、資源枯渇のおそれがあるため、より安価で、資源枯渇のおそれが少ない材料を用いた光透過性を有する導電性膜が求められているところであった。また、ITOの成膜には通常、スパッタリング法等が用いられているため、生産性が低い点でも改善の余地があった。
【0003】
光透過性を有する導電性膜の形態としては、酸化インジウム錫のように、光透過性と導電性を有する材料を用いた導電性膜の形態や、メッシュ状の導電性膜の形態等が挙げられる。メッシュ状の導電性膜、及び、その製造方法としては、例えば、透明基体表面に所定のパターンに形成された金属超微粒子触媒層と、この金属超微粒子触媒層上に形成された金属層とからなり、上記パターンの平均開口径と平均線幅との比が平均開口径/平均線幅≧7である透明導電膜、透明基体表面上に無電解メッキ触媒を含有するペーストでパターン印刷を行い、このパターン印刷された無電解メッキ触媒上に無電解メッキ処理を施して、パターン印刷部のみに金属層を形成させる透明導電膜の製造方法(例えば、特許文献1参照。)、支持体上に設けられた銀塩を含有する銀塩含有層を露光し、現像処理することにより金属銀部と光透過性部とを形成し、さらに上記金属銀部を物理現像及び/又はメッキ処理することにより上記金属銀部に導電性金属粒子を胆持させた導電性金属部を形成する導電性金属部及び光透過性部を有する透光性電磁波シールド膜の製造方法(例えば、特許文献2参照。)、透明基材及びそのうえに形成された細線パターンからなる電磁波シールド材であって、上記細線パターンが、物理現像による金属銀を触媒核とする金属めっき膜から成る電磁波シールド材、透明基材状に、物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層をこの順序で有する感光材料を露光し、物理現像処理により上記物理現像核層上に任意の細線パターンで金属銀を析出させ、次いで上記物理現像核層の上に設けられた層を除去した後、上記物理現像された金属銀を触媒核として金属をメッキする電磁波シールド材の製造方法(例えば、特許文献3参照。)が開示されている。このような方法で製造されたメッシュ状の導電性膜は電磁波遮蔽フィルム(EMIシールドフィルム)等として用いられているが、透過率の向上、モアレ防止のため、更なる細線化のニーズがあり、改善が求められるところであった。また、光透過率が低く、ディスプレイ用の透明電極等に用いることは難しいものであった。更に、パターン作成のために複雑なリソグラフィー工程が必要となるため、生産性の観点からも改善の余地があった。
【0004】
メッシュ状の導電性を有する被覆物を形成する方法としては、金属ナノ粉末を含んでいて、透明でかつ導電性を有する被覆物を形成する方法であって、(a)有機溶媒中で、金属ナノ粉末を、結合材、界面活性剤、添加剤、重合体、緩衝液、分散剤、及び、カップリング剤からなる群から選択された少なくとも一つの成分と共に、均質な混合物が得られるように混合し、(b)上記得られた均質な混合物を被覆しようとする表面に塗布し、(c)上記得られた均質な混合物から溶媒を蒸発させ、(d)上記表面に透明でかつ導電性を有する被覆物を形成するために、上記被覆された表面を焼結する方法が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。また、基板の少なくとも片面に、金属微粒子層がランダムな網目状に積層され、該金属微粒子層上にメッキ金属層が積層されたランダム網目層を有する導電性基板であって、該導電性基板の少なくとも片面の該めっき金属層の厚みが1.5μm以上であり、該導電性基板の全光線透過率が65%よりも大きく、かつ該導電性基板の少なくとも片面の表面比抵抗が0.5Ω/□(オーム/スクウェア)よりも小さい導電性基板が開示されている(例えば、特許文献5参照。)。
【0005】
ところで、多孔質構造を有する有機膜を形成する方法として、線状ポリマーを溶媒に溶解してポリマー溶液を調製し、次に、該ポリマー溶液を冷却して、雰囲気中の上記を結露させることによりその液滴の一部を上記ポリマー溶液の表面から内部に入り込ませ、次に、上記溶媒を蒸発させ、その後、上記結露した液滴を除去するハニカム状多孔質体の製造方法(例えば、特許文献6参照。)、ハニカム構造にパターニングされた有機膜(例えば、非特許文献1参照。)が開示されているが、いずれも高分子の有機膜を用いているものであり、導電性膜への適用等は記載されていない。
【0006】
更に、導電性金属で構成された線状部が基板上で二次元ネットワーク状に連なっており、かつ基板の全表面の面積に対して線状部の占める面積の割合が20%以下である透明電極が開示されている(特許文献7参照。これは本件発明の基礎出願後に公開された文献である。)。これには、導電性金属微粒子を有機溶媒中に分散させた塗布液を透明基板上に塗布し、かつ高湿度下で乾燥させて透明電極前駆体を形成する乾燥工程と、前記透明電極前駆体を焼成する焼成工程とを含む透明電極の製造方法が開示されている。実施例においては、銀ナノ粒子が用いられ、図2の焼成後に得られたもののSEM写真から、透明電極の表面には、網目状構造の規則性は消失しているが、二次元ネットワークを形成していることが観察でき、また、透明電極表面においても、開口部の面積は全表面の92.8%あった、と記載されている。
図2の焼成後に得られたもののSEM写真を見ると、確かに網目状構造の規則性は消失している。しかしながら、二次元ネットワークに関しては、それを形成していることは確認できず、表面の全面に渡り無秩序な凹凸が形成されているとしか見えない。そのような状態においては、開口部の面積が充分に確保されないものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−109435号公報(第1、2頁)
【特許文献2】特開2004−221564号公報(第1、2頁)
【特許文献3】再公表特許WO2004/007810号公報(第1、2頁)
【特許文献4】特開2005−530005号公報(第1、2頁)
【特許文献5】特開2007−227906号公報(第1、2頁)
【特許文献6】特開平8−311231号公報(第1、2頁)
【特許文献7】特開2008−243547号公報(第1、2、8−11頁)
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】西田仁(Jin Nishida)、西川和孝(Kazutaka Nishikawa),西村紳一郎(Shin−Ichiro Nishimura),和田成生(Shigeo Wada),狩野猛(Takeshi Karino),西川雄大(Takehiro Nishikawa)、居城邦治(Kuniharu Ijiro)、下村政嗣(Masatsugu Shimomura)、ポリマージャーナル(Polymer Journal)、2002年、第34巻、第3号、pp166−174
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、金属ナノ粒子を含むインキをグラビア印刷で塗布した後、メッキを行うような方法であると、メッシュの線幅を小さくすることが困難であった。また、銀塩の現像処理によりメッシュフィルムを形成する方法であると、露光によるパターンの作製後、余分な金属の除去、メッキといった複数の工程が必要となる点や、線幅を小さくすることが困難な点で改善の余地があった。
【0010】
更に、銀ナノ粒子有機溶媒分散体中にあらかじめ水を添加して、パターンを形成する方法であると、水の凝集等が生じることによりナノ分散することが困難である。そのため、このような方法を用いて形成した膜は、線幅、網目を細かくすることができなかった。また、あらかじめ添加されている水分によってインキの安定性が悪くなるため、改善の余地があった。
また特許文献7(本件発明の基礎出願後に公開)に開示された透明電極及びその製造方法ついては、上記のように焼成後に網目状構造の規則性は消失していて、網目状の導電性膜の製造方法とはなっていない。また後述する参考例で示されているように、銀の膜が全面において凹凸を形成しているだけであり、表面全面を覆って開口率が無いということになり、透明性も認められないものである。従って、網目状の導電性膜を製造するということを開示する従来技術は見当たらず、このような課題を解決することができれば、導電性フィルム等の導電性材料を用いる技術分野において、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、電子ペーパー(デジタルペーパー)等に対して種々の用途展開を図ることができ、大きな技術的意義があるといえる。
【0011】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、網目状の導電性膜を、簡易かつ安価に製造することができ、網目が細かく、ディスプレイ等に用いた場合には、モアレ等が生じない導電性膜の製造方法、及び、導電性膜を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、金属等の導電性物質によって導電性膜を形成することについて種々検討したところ、導電性物質の網目状線部と、空孔部とにより形成された導電性膜とすることによって、光透過性と導電性とを有する導電性膜とすることができることに着目した。しかしながら、従来の技術を適用する場合、例えば、金属微粒子層上にメッキ金属層が積層されたランダム網目層を形成するような方法であるとコストが高くなるという課題を有することになる。また、生産性の面で改善の余地があり、更に、有機溶媒分散体中にあらかじめ水を添加して、パターンを形成するような方法では、線幅、網目を細かくすることができなかったり、インキの安定性が悪くなったりすることになる。
上記のような従来の技術とは相違して、塗布された導電性微粒子を含む有機溶媒分散体を、塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させる工程を含む導電性膜の製造方法とすることによって、簡易かつ安価に網目状の導電性膜を製造することができ、また、生産性を向上させることができることを見いだした。更に、上記方法で製造した導電性膜は、線幅が小さく、網目の細かいものとすることができることを見いだし、本発明に到達したものである。網目状の導電性膜とすることができれば、近年急速に需要、用途が拡大している導電性材料における新たな導電性付与手法となり、種々の用途展開が期待されるところである。
【0013】
本発明の好ましい実施形態を示せば次のようになる。図1−1は、塗布された有機溶媒分散体を、塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させる工程の一例を示す、時間の経過による塗膜断面の概念図である。図1−1の左側から右側にいくにしたがって時間が経過しているものとなる。図1−1で示すように、基板11に塗布された有機溶媒分散体(以下、「塗膜」ともいう。)の表面で結露を生じさせることで、水滴13を凝集させることなく、塗膜12中に取り込むことができ、有機溶媒と水滴とが蒸発することで網目状の導電性膜を形成することができる。このような方法であるため、製造工程が簡易かつ低コストのものとなり、生産性も向上させることができる。
【0014】
すなわち本発明は、導電性微粒子を含む有機溶媒分散体を基板に塗布して網目状の導電性膜を製造する方法であって、該製造方法は、塗布された有機溶媒分散体を、塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させる工程を含む導電性膜の製造方法である。
本発明はまた、導電性物質の網目状線部と空孔部とによって形成された網目状の導電性膜であって、該導電性膜は、空孔部の平均面積が400μm以下であり、網目状線部の線幅が5μm以下である導電性膜でもある。
以下に本発明を詳述する。
【0015】
本発明の導電性膜の製造方法は、導電性微粒子を含む有機溶媒分散体を基板に塗布して網目状の導電性膜を製造する方法である。このような方法では、例えば、スパッタリング法や、メッキを行う方法等と比較して、簡易、かつ低コストで製膜を行うことができ、製造コストの削減、生産性の向上等を図ることができる。以下、基板上に塗布された有機溶媒分散体の膜を「塗膜」ともいう。
なお、網目状の導電性膜における網目状線部と空孔部との配置形態としては、ランダム状であってもよいし、規則的に並んでいる状態であってもよい。その例としては、後述する図6〜10等で示されるようなものである。これらの図においては、大きめの網目や小さめの網目が混在し、いくつか網目が切れているところもあるが、全体的に見れば、ミクロな技術分野において網目状の構造が認められると評価されるものである。すなわち、マイクロスコープで観察して、網目状の構造が確認できればよい。網目状の構造は、導電性膜全面に形成されていることが好ましいが、導電性膜が用いられる用途に応じて適宜設定されればよく、導電性膜としての機能が発揮され得る限り部分的であってもよい。その他の網目状の好ましい形態については後述する。
それに対して、特許文献7に開示された透明電極及びその製造方法においては、同文献の図2に示される通り、網目状構造は消失したと評価されることになる。これを確認したものが、後述する図15である。また、後述する参考例3のように、銀粒子が網目状の開口部の底の部分にも析出していることが認められ、基材が直接観察できる領域が無いと評価される場合も網目状の導電性膜とはならない。
【0016】
上記導電性膜の製造方法は、塗布された有機溶媒分散体を、塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させる工程を含むものである。これによれば、有機溶媒を蒸発させながら、結露により生じた水滴を塗膜中に取り込むことができる。そして、有機溶媒が蒸発し、更に取り込まれた水滴を乾燥させることにより、取り込まれた水滴に対応する空孔部を形成することができる。これにより、導電性微粒子から形成された網目状線部と、空孔部とが形成される。このように、本発明の導電性膜の製造方法を用いることによって、簡易かつ低コストに、優れた透過性及び導電性を有する網目状の導電性膜を製造することができる。すなわち、上記導電性膜の製造方法により形成された導電性膜は、網目状線部と空孔部とによって形成された網目状の導電性膜であることが好ましい。
【0017】
上記導電性膜の製造方法は、塗布された有機溶媒分散体を、塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させる工程を含むものである。塗膜表面で結露させることは、塗膜表面付近の湿度や、塗膜表面付近の雰囲気と塗膜表面との温度差を調整することによって行うことができる。すなわち、塗膜表面で結露する条件とすればよい。本発明においては、塗膜表面に網目状の導電性部と空孔部とが形成されていることから、これは、図1−1に示したような機構によって、塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させることによって生じたものであることが技術的に見て明らかである。
上記のことから、本発明の導電性膜の製造方法は、塗布された有機溶媒を、塗膜表面で結露が生じる条件で蒸発させる工程を含むものということもできる。塗膜表面で結露が生じる条件とは、例えば、有機溶媒を蒸発させる雰囲気の露点を、塗膜表面の温度よりも高いものとする条件である。結露を生じさせる方法としては特に限定されるものではないが、例えば、塗膜表面の温度を、有機溶媒を蒸発させる雰囲気の露点以下に冷却する方法、上記有機溶媒を蒸発させる雰囲気を加湿雰囲気として、該雰囲気の露点を塗膜表面の温度より高くする方法等が好適である。これらの方法は、一つの方法で用いてもよいし、複数の方法を組み合わせて用いてもよい。複数の方法を組み合わせて行うことによって、有機溶媒を蒸発させる条件をより精密に制御することができ、導電性膜の形態を調整することができる。
【0018】
上記塗膜表面の温度を、有機溶媒を蒸発させる雰囲気の露点以下に冷却する方法としては特に限定されるものではないが、冷却素子等を用いて塗膜を強制的に冷却する方法、有機溶媒の蒸発潜熱により塗膜表面温度を低くする方法等が挙げられる。また、冷却素子等を用いて塗膜を強制的に冷却する方法としては、有機溶媒分散体を塗布した基板を冷却することで、塗膜表面の温度を冷却することも好ましい。このような方法で冷却することにより、塗膜表面の温度と、有機溶媒を蒸発させる雰囲気の温度との差が大きくなるため、より簡易に結露を生じさせることができる。すなわち、塗膜表面の温度を有機溶媒を蒸発させる雰囲気の温度よりも低くすることが好ましい。例えば、ペルチェ素子等の冷却機器を用いることによって、有機溶媒分散体を塗布した基板を冷却する方法が好ましい方法の一つとして挙げられる。この方法であると、塗膜表面の温度制御と、有機溶媒を蒸発させる塗膜周囲の雰囲気の制御とを独立して行うことができるため、より精密な条件設定を行うことができる。条件をより調整することにより、製造される導電性膜の形状、透過率、導電率等を制御することができるため、種々の用途に応じて好適な形態の導電性膜を形成することができる。
【0019】
上記有機溶媒を蒸発させるときに塗膜表面で結露が生じるようにするためには、加湿雰囲気とすることが好ましい。すなわち、上記有機溶媒の蒸発を行う工程は、加湿雰囲気下で有機溶媒を蒸発させる工程であることが好ましい。加湿雰囲気とすることによって、有機溶媒分散体の表面で結露が生じやすくなる。上記有機溶媒を蒸発させる際の雰囲気を加湿雰囲気として、該露点を塗膜表面の温度より高くする方法としては、有機溶媒の蒸発を行う周囲全体を加湿する方法、加湿気体を塗膜表面に吹きつける方法等が好適である。加湿雰囲気とすることによって、塗膜表面で結露が生じやすくなる。加湿気体を塗膜表面に吹きつける際には、吹きつける速度等によって、塗膜の中に取り込まれる水滴の形状、量等が変化するため、吹きつける速度を調整することによって、有機溶媒を蒸発させる条件を調整することができる。これにより、導電性膜の形状を制御することができ、その特性(光透過率、導電性等)を向上させることができる。なお、上記加湿雰囲気は、加湿されるのと同様な条件、すなわち有機溶媒分散体の塗膜表面で結露が生じるのに充分な湿度となる雰囲気であればよく、加湿されていてもよいし、湿度の高い環境下で、有機溶媒を蒸発させる工程を行ってもよい。
【0020】
上記加湿雰囲気は、相対湿度が50%以上であることが好ましい。相対湿度が50%以上と高いことによって、上記塗膜表面で結露が生じやすくなり、効率的に導電性膜の製造を行うことができる。相対湿度としては、55%以上であることがより好ましく、60%以上であることが更に好ましい。
【0021】
上記加湿気体を吹きつける風速の上限としては、流速として5m/s(300m/min)以下であることが好ましい。5m/sを超える流速で加湿気体を吹きつける場合、塗布された有機溶媒分散体の形状が、加湿気体を吹きつけることにより変化し、有機溶媒を乾燥させた後の膜形状を目的の形状に保持することができないおそれがある。加湿気体を吹きつける風速の上限としてより好ましい流速としては、3m/s(180m/min)以下であり、更に好ましくは、1m/s(60m/min)以下である。また、上記風速の下限としては、0.02m/min以上であることが好ましい。風速が0.02m/min以下である場合には、塗布された有機溶媒分散体中に、水滴が充分に取り込まれないおそれがある。風速の下限としてより好ましい流速としては、0.1m/minであり、更に好ましくは、0.2m/min以上であり、特に好ましくは、0.4m/min以上である。加湿気体を吹きつける時間の上限としては、生産性の観点からは、1時間以内であることが好ましい。より好ましくは、40分以内であり、更に好ましくは、30分以内である。加湿気体を吹きつける時間の下限としては、1分以上であることが好ましい。1分未満であると、有機溶媒の蒸発が充分に行うことができないおそれがあり、また、有機溶媒分散体中へ水滴が充分に取り込まれないおそれがある。より好ましくは、5分以上であり、更に好ましくは、10分以上である。例えば、20分程度(15〜25分)が好適な時間である。吹きつける加湿気体の相対湿度についても、上述と同様に、相対湿度が50%以上であることが好ましく、更に好ましくは、55%以上であり、特に好ましくは、60%以上である。
【0022】
ここで、導電性膜を製造する方法について図1−2を用いて説明する。図1−2は、塗布された有機溶媒分散体を、塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させる工程を示すフロー図である。図1−2(a)で示すように、基板11に塗布された有機溶媒分散体(以下、「塗膜」ともいう。)は、塗膜12を形成した基板11を冷却する方法や加湿気体を吹きつける方法により塗膜表面で結露が生じる条件とすることで、図1−2(b)に示すように、塗膜の表面で結露が生じることとなる。結露により生じた水滴13は、図1−2(c)及び図1−2(d)に示すように塗膜12中に取り込まれる。また、塗布された有機溶媒分散体は、時間が経過するとともに、有機溶媒が蒸発し、薄くなっていく。そして、有機溶媒と、加湿雰囲気によって取り込まれた水滴とが蒸発することによって、図1−2(e)に示すように、有機溶媒が蒸発した膜は空孔部14及び網目状線部15が形成されたものとなる。このようにして、網目状のパターンが形成されることとなる。また、図2は、有機溶媒が蒸発した後の膜の形態を示す平面模式図であるが、形成された空孔部14の周りに金属を含んでなる網目状線部15が形成されたものとなり、透過性を有する導電性膜が形成される。
また、図3に示すように、ペルチェ素子20を用いて、基板21及び塗膜22の冷却を行い、更に加湿気体を塗布された有機溶媒分散体に吹きつけることにより有機溶媒を蒸発させる方法は、本発明の導電性膜の製造方法の好適な形態の一つである。すなわち、上記製造方法は、基板及び塗膜の冷却を行い、かつ加湿気体を塗膜に吹きつけ、該塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させる工程を含む製造方法が好ましい。
【0023】
上記導電性微粒子は、一般的に平均粒子径が100μm以下の導電性粒子を意味するものであり、導電性微粒子の粒子径は特に限定されるものではないが、平均粒子径が1μm以下であることが好ましい。1μm以下の平均粒子径とすることで、導電性を有する網目状線部の線幅を細くすることができ、透明導電性膜の透過部を広くすることができ、開口率が向上することとなる。これにより、透明導電性膜の透過率が向上する。導電性微粒子の平均粒子径としてより好ましくは、500nm以下であり、更に好ましくは、100nm以下であり、特に好ましくは、50nm以下であり、最も好ましくは、10nm以下である。特に、10nm以下の平均粒子径とすることにより、形成された導電性を有する網目状線部の導電率を高めることができる。また、金属粒子を用いた場合、粒径が小さくなることで、融点が低下するため、低い焼成温度で粒子同士を融着させ、導電性を発現させることができる。粒子径分布としては、変動係数が30%以内であることが好ましく、より好ましくは、20%以内であり、更に好ましくは、15%以内である。
【0024】
上記平均粒子径は、TEM像(透過型電子顕微鏡観察像)、又は、SEM像(走査型電子顕微鏡観察像)により得られる数平均粒子径;粉末X線回折測定法により得られる結晶子径;X線小角散乱法等により得られる慣性半径とその散乱強度から求められる平均粒子径等を用いることができる。中でも、SEM像(走査型電子顕微鏡観察像)により得られる数平均粒子径であることが好ましい。
上記導電性微粒子の形状は、球状に限られず、例えば、楕円球状、立方体状、直方体状、ピラミッド状、針状、柱状、棒状、筒状、りん片状、板状(例えば、六角板状)等の薄片状、紐状等の形状でも好適に用いることができる。
【0025】
上記導電性微粒子は、導電性を有する物質を含有する微粒子であれば特に限定されないが、例えば、金属、導電性を有する無機酸化物、炭素系材料、炭化物系材料等の微粒子が挙げられる。金属としては、種々の金属を用いることができ、単体金属、合金、固溶体等のいずれの形態であってもよい。金属元素としては特に限定されず、例えば、白金、金、銀、銅、アルミ、クロム、コバルト、タングステン等の種々の金属元素を用いることができるが、導電性が高い金属であることが好ましい。導電性が高い金属としては、白金、金、銀及び銅からなる群より選ばれる少なくとも一つを含有するものであることが好ましい。また、金属としては、化学的安定性が高い金属であることが好ましい。例えば、上述した導電性膜の製造方法を用いる場合、有機溶媒に導電性微粒子を分散させて有機溶媒を乾燥させる等の工程を経ることとなる。このような工程に対して、酸化、腐食等が生じないことが好ましい。化学的安定性が高い観点からは、上記金属は、白金、金及び銀からなる群より選ばれる少なくとも一つを含有してなることが好ましい。この中でも、低コスト化の観点からは、銀を含有することが好ましい形態である。導電性を有する無機酸化物としては、酸化インジウム錫等のインジウム系酸化物、酸化亜鉛系酸化物等の透明導電性物質、導電性を有する非透明性の無機酸化物等が挙げられる。炭素系材料としては、カーボンブラック等が挙げられる。炭化物系材料としては、シリコンカーバイド、クロムカーバイド、チタンカーバイド等が挙げられる。また、用いることが可能な導電性微粒子としては、非導電性微粒子を上記導電性微粒子を形成する導電性物質(金属、導電性を有する無機酸化物、炭素系材料、炭化物系材料等)で取り囲んだ微粒子(例えば、コア「非導電性物質」、シェル「導電性物質」のコア−シェル構造を持つ微粒子)も好ましい。非導電性微粒子としては、特に限定されるものではなく、種々の物質で形成された非導電性微粒子を用いることができる。更に、用いることができる導電性微粒子としては、酸化銀、酸化銅等の酸化物微粒子を有機溶媒に分散させて塗布した後、塗布膜を還元雰囲気に置くことで、銀、銅等の金属に還元して用いることも可能である。すなわち、上記導電性膜の製造方法は、酸化物微粒子を有機溶媒に分散させて塗布した後、還元雰囲気に置くことで、酸化物微粒子を還元する工程を含むことも好ましい形態の一つである。
【0026】
上記有機溶媒分散体は、有機溶媒に導電性微粒子が分散された分散体であり、有機溶媒及び導電性微粒子以外の物質を含んでいてもよい。有機溶媒としては、特に限定されるものではなく、種々の有機溶媒を用いることができる。
上記有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、混合キシレン、エチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、ドデシルベンゼン、フェニルキシリルエタン等のベンゼン系炭化水素等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−デカン等のパラフィン系炭化水素、アイソパー(Isopar、エクソン化学社製)等のイソパラフィン系炭化水素、1−オクテン、1−デセン等のオレフィン系炭化水素、シクロヘキサン、デカリン等のナフテン系炭化水素等の脂肪族炭化水素類;ケロシン、石油エーテル、石油ベンジン、リグロイン、工業ガソリン、コールタールナフサ、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油や石炭由来の炭化水素混合物;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、トリクロロフルオロエタン、テトラブロモエタン、ジブロモテトラフルオロエタン、テトラフルオロジヨードエタン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、トリクロロフルオロエチレン、クロロブタン、クロロシクロヘキサン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードメタン、ジヨードメタン、ヨードホルム等のハロゲン化炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、オクタノール、メチルセロソルブ等のアルコール類;ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類;ハイドロフルオロエーテル等のフッ素系溶剤;二硫化炭素等が好ましい。これらの有機溶媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0027】
上記有機溶媒としては、疎水性の有機溶媒が好ましい。疎水性の有機溶媒を用いることによって、加湿雰囲気下に置いた場合に、より安定した形態で有機溶媒分散体中に水滴を取り込むことができる。また、有機溶媒としては、非極性の有機溶媒であることが好ましい。非極性であることにより、極性分子である水に溶けにくいものとなるため、塗膜に取り込まれた水滴の形態をより好適に保持することができる。非極性の有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭素数6〜10程度の芳香族炭化水素系溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;脂肪族炭化水素系溶媒等を好ましく用いることができる。有機溶媒の蒸発速度、水の溶解度の点から、すなわち、比較的蒸発速度が速く、水滴が結露しやすく、かつ水と混じりにくい点からは、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサン等がより好ましい。上記有機溶媒としては、極性溶媒と非極性溶媒との混合溶媒であってもよい。例えば、芳香族炭化水素溶媒とケトン系溶媒との混合溶媒、芳香族炭化水素とアミド系溶媒との混合溶媒等であってもよい。
【0028】
上記有機溶媒の比重は、水の比重以下であることが好ましい。有機溶媒の比重が水の比重よりも大きい場合、塗膜表面で結露した水滴が有機溶媒分散体中に取り込まれないおそれがある。有機溶媒の比重として具体的には、室温(20℃)での比重が1.00以下であることが好ましく、0.95以下であることがより好ましく、0.90以下であることが更に好ましい。
【0029】
上記有機溶媒の粘度としては、室温(20℃)において2mPa・s以下であることが好ましい。塗布された有機溶媒分散体中に水を取り込む場合、有機溶媒の粘度が高すぎると、充分に水滴を取り込むことができないおそれがある。
【0030】
上記有機溶媒分散体は、水及び有機溶媒に対する両親媒性化合物を含有することが好ましい。両親媒性化合物を含有することによって、界面活性機能により塗膜中に取り込んだ水滴の形状を好適な形態で保持することが容易となり、例えば、水滴同士の凝集を制御することができる。両親媒性化合物としては、両親媒性低分子化合物でもよいし、両親媒性高分子化合物でもよく特に限定されるものではない。界面活性機能をより発揮できる形態としては、両親媒性高分子化合物であることが好ましい。また、有機溶媒分散体中で塗膜中に取り込んだ水滴の形態を好適に保持するには、界面活性機能を有する化合物を用いることが好ましい。すなわち、上記有機溶媒分散体が、界面活性機能を有する化合物を含有することも本発明の好ましい形態の一つである。
【0031】
上記両親媒性化合物の含有量としては、有機溶媒分散体100質量%に対して、両親媒性化合物の含有量が0.001〜25質量%であることが好ましい。このような範囲の含有量とすることによって、塗布された有機溶媒分散体中に取り込まれる水滴の形態をより安定して保持することができる。0.001質量%未満である場合には、塗膜表面における水滴の成長や輸送が困難になり、開口率が低くなるおそれがある。25質量%を超えると、塗膜表面で水滴が凝集し、空孔部が充分に形成されないおそれがある。また、導電性が発現しにくくなるおそれがある。両親媒性化合物の含有量としてより好ましくは、0.001〜15質量%であり、更に好ましくは、0.001〜5質量%であり、特に好ましくは、0.01〜1質量%である。
【0032】
上記両親媒性化合物としては、親水性基と疎水性基との両方を有する化合物であることが好ましい。両親媒性化合物は、基板上に塗布された有機溶媒分散体に付着した水滴が互いに融合することを防止するために添加される。両親媒性化合物としては、水及び有機溶媒の両方に対して親和する部分を有する化合物であれば特に限定されるものではないが、疎水性基としては、例えば、炭素数5〜20の炭化水素基、フェニル基、フェニレン基等の非極性基が挙げられる。また、親水性基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、カルボニル基、スルホ基、エステル基、アミド基、エーテル基等が挙げられる。
【0033】
上記両親媒性化合物としては、アルキル硫酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤、アルキルアンモニウムクロライド等のカチオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤、オクチルアミン、ドデシルアミン等のアルキルアミン、両親媒性高分子等が挙げられる。有機溶媒及び水への溶解性の観点からノニオン系界面活性剤、両親媒性高分子が好ましい。これらの両親媒性化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
上記両親媒性高分子としては、ポリアクリルアミドを主鎖骨格として、側鎖に親水性基と疎水性基とを持つ高分子、疎水性(メタ)アクリレートと親水性(メタ)アクリレートとの共重合体、ポリスチレンと親水性(メタ)アクリレートとの共重合体、オクタデシルイソシアネート変性ポリエチレンイミン(エポミンRP−20、日本触媒社製)のように主鎖に親水性基を持ち、側鎖に疎水性基を持つ高分子、疎水性基と親水性基とを有するポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのブロック共重合体、又は、ジクロルジフェニルスルホンとビスフェノールAのナトリウム塩との重縮合により得られ、主鎖骨格中に疎水性基であるジフェニレンジメチルメチレン基と親水性基であるジフェニレンスルホン基とを有するポリスルホン等が挙げられる。
【0035】
上記両親媒性高分子としては、重量平均分子量5000以上のものが好ましい。重量平均分子量5000以上の両親媒性高分子であると、溶媒蒸発時や焼成の際にパターン構造が崩れにくくなる。より好ましくは、重量平均分子量10000以上のものであり、更に好ましくは、50000以上であり、特に好ましくは、90000以上である。
また、上記両親媒性高分子の数平均分子量は3000以上であることが好ましい。数平均分子量が3000以上の両親媒性高分子であると、溶媒蒸発時や焼成の際にパターン構造が崩れにくくなる。両親媒性高分子の数平均分子量としては、5000以上であることがより好ましく、10000以上であることが更に好ましく、20000以上であることが特に好ましい。
重量平均分子量及び数平均分子量は、例えば、測定装置として、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)HLC−8120(東ソー社製)を使用し、カラムにTSK−GEL GMHXL−L(東ソー社製)を用いて、ポリスチレン換算の分子量として測定することができる。
【0036】
上記ポリアクリルアミドを主鎖骨格として、側鎖に親水性基と疎水性基とを持つ高分子としては、例えば、下記式:
【0037】
【化1】

【0038】
(式中、n及びmは、同一又は異なって、構成単位の繰り返し数を表す。)で表される(ドデシルアクリルアミド)−(ω−カルボキシヘキシルアクリルアミド)−ランダム共重合体(以下、「CAP」ともいう。)が好ましい。
式中、mに対するnの比率(n/m)としては、1〜15が好ましく、より好ましくは、2〜12であり、更に好ましくは、3〜10である。
【0039】
上記疎水性(メタ)アクリレートとしては、ノルマルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0040】
上記親水性(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチル2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
また、上記疎水性(メタ)アクリレートの代わりに、疎水性(メタ)アクリルアミド、スチレン等の疎水性ラジカル重合性モノマーを、上記親水性(メタ)アクリレートの代わりに、親水性(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン等の親水性ラジカル重合性モノマーを用いてもよい。
疎水性(メタ)アクリレート及び親水性(メタ)アクリレートはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、異なる成分を含んでいてもよい。
【0042】
上記有機溶媒分散体は、有機溶媒分散体100質量%に対して、導電性微粒子の含有量が0.05〜10質量%であることが好ましい。10質量%を超える場合には、有機溶媒分散体中で導電性微粒子が凝集し、充分に分散されていない状態になるおそれがある。また、0.05質量%未満である場合には、導電性微粒子が少なく、充分な導電性が得られないおそれがある。導電性微粒子の含有量としてより好ましくは、0.1〜10質量%であり、更に好ましくは、0.2〜10質量%である。
【0043】
上記有機溶媒分散体は、塗布前の水分含有量が10質量%以下であることが好ましい。塗布前の有機溶媒分散体中に水分が多く含有されている場合、有機溶媒分散体中の水分が表面張力により大きな水滴となり、網目を細かくすることができないおそれがある。塗布前の水分含有量としてより好ましくは、5質量%以下である。
【0044】
上記有機溶媒分散体は、基板に塗布されるものである。上記基板は、特に限定されるものではなく、有機溶媒分散体を表面に塗布することができるものであればよい。上記基板としては、例えば、ガラス基板、プラスチック基板、単結晶基板、半導体基板、金属基板等の種々の基板を用いることができる。電子ペーパー(デジタルペーパー)等のディスプレイに用いる場合には、ガラス基板、透明性を有するプラスチック基板等の透明基板を基板として用いることが好適である。透明基板とは、可視光の透過率が高い基板のことであり、例えば、波長400〜700nmの可視光の透過率が50%以上であることが好ましい。より好ましくは、上記透過率が70%以上であり、更に好ましくは、80%以上である。また、ガラス基板、プラスチック基板を用いることは、低コスト化の観点からも好適である。また、電子ペーパー等の表示装置として用いる場合には、可とう性を有する基板を用いることも好ましい形態である。プラスチック基板としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のエステル系;アクリル系;シクロオレフィン系;オレフィン系;ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート等の樹脂系のフィルムが挙げられる。
【0045】
上記有機溶媒分散体を塗布する基板は、表面が親水性である基板を用いることが好ましい。上記基板の表面が親水性であることによって、水滴と基板とを接触しやすくし、空孔の貫通率を高め、空孔底面に余分な高分子・粒子膜の形成を防ぐことができ、空孔部の形状を開口率が高い導電性膜の形態とすることができる。表面が親水性である基板としては、水に対する接触角が90°以下であることが好ましい。90°以下であることによって、有機溶媒分散体中に取り込まれた水滴の形状を調整し、空孔部の形状を開口率が高い形態にすることができる。水に対する接触角の上限としてより好ましくは、60°以下であり、更に好ましくは、30°以下である。
上記有機溶媒分散体を塗布する基板は、基板表面に親水化処理を行われたものであることが好ましい。これによれば、上述のように、有機溶媒分散体中に取り込まれた水滴を好適な形状で保持することができる。また、基板表面の親水性を制御することによって、導電性膜の形状を更に制御することができる。親水化処理の方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルカリ性溶液に浸漬させる方法が好ましい。アルカリ性溶液としては、特に限定されるものではないが、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液等を好ましく用いることができる。具体的には、飽和水酸化カリウムエタノール溶液等を好ましく用いることができる。また、親水化処理の方法としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、UV−オゾン処理を行う方法等が挙げられる。このような方法は、基板の種類、有機溶媒分散体の種類等によって適宜好ましい方法を選択することが好ましい。また、親水化による基板の接触角は、上述した好ましい接触角の値を用いることができる。
【0046】
上記製造方法は、有機溶媒を蒸発させた膜を焼成する工程を含むことが好ましい。有機溶媒を蒸発させた後では、導電性微粒子が存在している網目状線部に有機溶媒等の有機溶媒分散体中に含有されていた物質が残留しているおそれがあり、その場合、導電性微粒子同士が分離され、導電性が得られなくなるおそれがある。焼成を行うことによって、乾燥後の膜中に有機溶媒が含まれている場合にも、充分に有機溶媒を蒸発させることができ、高い導電性を得ることができるものとすることができる。また、焼成を行うことで、導電性微粒子同士を結合させ、導電性を高めることができる。
【0047】
上記焼成する工程において、焼成する温度は特に限定されず、金属材料、導電性微粒子の含有量、有機溶媒の種類、膜厚等によって異なるものであり、各々の条件で適宜好適な条件で行うことができるが、焼成温度は、400℃以下であることが好ましい。焼成温度が高い場合には、導電性微粒子が凝集して結合することができず、充分な導電性が得られないおそれがある。焼成温度としてより好ましくは、300℃以下であり、更に好ましくは、200℃以下である。焼成時間としては、2時間以内であることが好ましく、より好ましくは、1時間以内であり、更に好ましくは、30分以内である。
【0048】
上記導電性膜の製造方法は、塗布された有機溶媒分散体を、塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させる工程の後に、無電解めっきを行う工程を含むことが好ましい。このように、無電解めっきを行うことによって、得られる導電性膜の導電性を更に向上させることができる。上記焼成する工程を行う場合には、焼成する工程を行った後に、無電解めっきを行う工程を含むことが好ましい。
【0049】
本発明はまた、上記製造方法により製造される導電性膜でもある。上記製造方法により製造されたものであることによって、上記導電性膜は、導電性物質の網目状線部と空孔部とによって形成された網目状の導電性膜となり、光透過性と導電性とを有する透明導電性膜とすることができる。すなわち、上記製造方法により製造される透明導電性膜もまた、本発明の1つである。そして、上記製造方法を用いることによって、光透過性を有する導電性膜を簡易、かつ安価に製造することが可能となる。
上記導電性膜の形態としては、空孔部の平均面積が400μm以下であり、網目状線部の線幅が5μm以下であることが好ましい。空孔部の平均面積が小さく、網目状線部の線幅が細いことによって、光の透過性が高く、均一性の高い網目状の導電性膜を形成することができる。また、上記製造方法により製造される導電性膜のより好ましい形態としては、後述する網目状の導電性膜の好ましい形態と同様である。すなわち、空孔部の平均面積としてより好ましくは、300μm以下であり、更に好ましくは、200μm以下であり、特に好ましくは、100μm以下である。また、上記空孔部は、平均最大フェレ径が20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。空孔部による開口率としては、60%以上であることが好ましく、これにより光透過率を高めた導電性膜とすることができる。空孔部による開口率は65%以上であることがより好ましく、更に好ましくは、70%以上であり、特に好ましくは、80%以上であり、最も好ましくは、90%以上である。上記網目状線部の線幅としてより好ましくは、2μm以下であり、更に好ましくは、1μm以下である。なお、最大フェレ径とは、各空孔部の輪郭に接するように引いた2本の平行線間の最大のものを最大フェレ径といい、平均最大フェレ径とは、計測した各空孔部の最大フェレ径の平均をとったものを平均最大フェレ径という。
【0050】
本発明は更に、導電性物質の網目状線部と空孔部とによって形成された網目状の導電性膜であって、該導電性膜は、空孔部の平均面積が400μm以下であり、網目状線部の線幅が5μm以下である導電性膜でもある。空孔部の平均面積が小さく、網目状線部の線幅が細いことによって、光の透過性が高く、かつ均一性の高い網目状の透明導電性膜を形成することができる。例えば、上述したように、電子ペーパー等に用いる場合には、表示を行うマイクロカプセルに対して均一に電圧を印加することができる。網目が広い(空孔部の面積が大きい)場合、導電性膜により電圧を印加してマイクロカプセルの色を変化させるような電子ペーパー等のディスプレイに用いる場合、網目が細かいものでないとその空孔部の中にマイクロカプセルの全体が納まることとなり、そのようなカプセルには電圧が印加されないこととなる。また、網目が細かいことによって、導電性がより均一となる。これによれば、例えば、タッチパネルに用いられた場合、位置の認識の精度が高くなる。このような網目状の導電性膜は、上記導電性膜の製造方法を用いて形成することが可能である。上記導電性膜における網目状線部と空孔部との配置形態としては、ランダム状であってもよいし、規則的に並んでいる状態であってもよい。例えば、網目状の導電性膜を形成する際に、より網目の細かいものとするためには、ランダム状であった方が製造がより容易になるため、ランダム状であることも好ましい形態の一つである。ここで、ランダム状とは、網目状線部と空孔部とが一定の規則に基づいて配置されていない状態であることをいう。
【0051】
上記導電性膜は、空孔部の平均面積が400μm以下であり、網目状線部の線幅が5μm以下であることによって、導電性膜の網目が細かいということができる。網目が細かいことによって、導電性膜の面内で均一な導電性を有するものとすることができる。空孔部の平均面積が400μmを超える場合、導電性膜の面内の均一性が充分とならず、例えば、光の透過性、導電性にばらつきが生じるおそれがある。また、上述したように、電子ペーパー等のディスプレイに対して用いる場合、電圧が印加されない部分が生じることにより、導電性膜としての機能が充分でなくなるおそれがある。空孔部の平均面積として、より好ましくは、300μm以下であり、更に好ましくは、200μm以下であり、特に好ましくは、100μm以下である。また、上記空孔部は、平均最大フェレ径が20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。上記網目状線部の線幅は、5μm以下であり、線幅が細いことによって、例えば、ディスプレイ等において生じるおそれのあるモアレを抑制することができる。網目状線部の線幅が5μmを越える場合、開口率が小さくなり、光透過性が充分でなくなるおそれがある。網目状線部の線幅として、より好ましくは、2μm以下であり、更に好ましくは、1μm以下である。上記のように、空孔部の平均面積、網目状線部の線幅を制御することによって、導電性膜の光透過性及び導電性をより好ましい値へと制御することができる。
【0052】
上記導電性膜は、空孔部による開口率が60%以上であることが好ましい。開口率を高めることによって、光の透過性を向上させることができるため、電子ペーパー等のディスプレイに用いる場合に好適に用いることができる。60%未満であると、充分な光透過率を得ることができず、透過性を有する導電性膜として充分な特性を発揮することができないおそれがある。空孔部による開口率は、65%以上であることがより好ましく、更に好ましくは、70%以上であり、特に好ましくは、80%以上であり、最も好ましくは、90%以上である。
開口率、線幅、空孔部の平均面積及び平均最大フェレ径については、以下の方法により求めることができる。
【0053】
<開口率、線幅、空孔部の平均面積、平均最大フェレ径の求め方>
導電性膜の表面を超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製、S−4800)にて倍率1000倍で観察し、観察した画像を画像処理ソフト(Image−Pro Plus ver.4.0、米国Media Cybernetics社製)を用いて、以下の方法で処理し、導電膜の開口率、線幅、空孔部の平均面積、フェレ径を求める。
【0054】
顕微鏡観察した画像(これを「原画像」とする。)を、上述の画像処理ソフトを用いて導電部が黒、その他の部分(網目の開口部)が白となるように白黒に二値化する。この時、二値化の閾値は、色調のヒストグラムより白と黒のピーク値を求め、その中間値とする。次に、二値化画像の白黒反転処理を行う(この画像を「二値化画像」とする。)。この時の、全体の面積に対する黒部の面積比を求め、開口率とする。
【0055】
また、二値化画像の白部の面積を求め、これを導電部の面積(S)とする。次に、二値化画像の細線化処理を行う(この画像を「細線化処理画像」とする。)。細線化処理画像の白部の面積を求め、これを導電部の長さ(L)とする。上記で求めたSとLの値を用い、下記式(1)により導電部の線幅を求める。
導電部の線幅=S/L (1)
【0056】
続いて、二値化画像の黒部を抽出する(この画像を「抽出画像」とする。)。抽出の際、境界上の空孔部については除外する。また、1μm以下の面積の空孔部についても除外する。このときの、各要素の面積、及び、最大フェレ径を計測し、平均化したものを、それぞれ、空孔部の平均面積、空孔部の平均最大フェレ径とする。
【0057】
上記網目状線部の厚みは、200nm以上であることが好ましい。200nm以上であることによって、線幅が小さくなったとしても充分な導電率を得ることができる。導電性膜の膜厚が200nm未満である場合には、導電性が低くなり、導電性膜としての特性を充分に発揮することができないおそれがある。網目状線部の厚みとしてより好ましくは、1μm以上である。なお、網目状線部の厚みは、最大膜厚を測定することによって求められ、例えば、レーザー顕微鏡を用いることによって測定することができる。測定方法としては、レーザー顕微鏡(VK−9700、キーエンス社製)で倍率50倍で塗膜を観測し、観察した画像から塗膜の最大の段差を10箇所で計測し、平均した値を導電性膜の最大膜厚とする。
【0058】
上記導電性膜は、可視光(波長が400〜700nm)の光透過率が20%以上であることが好ましい。光透過率を高くすることで、例えば、電子ペーパー等の表示装置に対して好適に用いることができる。光透過率としてより好ましくは、40%以上であり、更に好ましくは、60%以上であり、特に好ましくは、80%以上である。上記光透過率は、例えば、分光光度計(商品名「V−530」、日本分光社製)を用いて、300〜800nmの波長の光について測定することができる。
【0059】
上記導電性膜はまた、全光線透過率が20%以上であることが好ましい。全光線透過率が20%以上である場合、例えば、電子ペーパー等の表示装置に対して好適に用いることができる。全光線透過率としてより好ましくは、40%以上であり、更に好ましくは、60%以上であり、特に好ましくは、75%以上である。
なお、上記全光線透過率は、例えば、ヘイズメーター NDH5000(日本電色工業社製)を用いて、JIS K7361−1に準拠して測定することができる。
【0060】
上記空孔部による開口率が高い場合、網目状線部の面積が小さくなると、開口率が低い同じ膜厚の導電性膜と比較すると、導電性膜の抵抗率が増加することとなる。そのため、網目状線部の面積は、充分な導電性を確保することができる面積であることが好ましい。好ましい網目状線部の面積は、導電性膜の膜厚、面積、導電性膜を構成する金属材料等によって異なるが、例えば、導電性膜の面内のシート抵抗が10Ω/□以下であるように網目状線部の面積を設定することが好ましい。これによれば、導電性膜のシート抵抗としてより好ましくは、10Ω/□以下であり、更に好ましくは、10Ω/□以下であり、特に好ましくは、10Ω/□以下である。
なお、上記シート抵抗は、例えば、抵抗率計 ロレスター−GP(三菱化学アナリテック社製、プローブ:ASPプローブ)を用いて、四端子四探針法により測定することができる。
【0061】
上記導電性物質は、導電性を有する物質であれば特に限定されないが、例えば、金属、導電性を有する無機酸化物、炭素系材料、炭化物系材料等が挙げられる。金属としては、種々の金属を用いることができ、単体金属、合金、固溶体等のいずれの形態であってもよい。金属元素としては特に限定されず、例えば、白金、金、銀、銅、アルミ、クロム、コバルト、タングステン等を用いることができるが、導電性が高い金属であることが好ましい。導電性が高い金属としては、白金、金、銀及び銅からなる群より選ばれる少なくとも一つを含有するものであることが好ましい。金属としては、化学的安定性が高い金属であることが好ましい。例えば、上述した導電性膜の製造方法を用いる場合、有機溶媒に導電性微粒子を分散させて有機溶媒を乾燥させる等の工程を経ることとなる。このような工程に対して、酸化、腐食等が生じないことが好ましい。化学的安定性が高い観点からは、上記金属は、白金、金及び銀からなる群より選ばれる少なくとも一つを含有してなることが好ましい。また、低コスト化の観点からは、この中でも、導電性物質として用いる金属としては、銀を含有することが好ましい形態である。導電性を有する無機酸化物としては、酸化インジウム錫等のインジウム系酸化物、酸化亜鉛系酸化物等の透明導電性物質、導電性を有する非透明性の無機酸化物等が挙げられる。炭素系材料としては、カーボンブラック等が挙げられる。また、網目状線部の中には、非導電性物質が含まれていてもよい。例えば、非導電性物質を導電性物質(金属、導電性を有する無機酸化物、炭素系材料、炭化物系材料等)で取り囲んだ微粒子(例えば、コア「非導電性物質」、シェル「導電性物質」のコア−シェル構造を持つ微粒子)を焼結させることで形成されたような形態であってもよい。
【0062】
上記導電性膜の用途としては、特に限定されるものではなく、導電性を必要とする用途であればどのような用途にも用いることができる。例えば、プラズマディスプレイ等に用いられる電磁波遮蔽フィルム(EMIシールドフィルム)等として用いることができるし、電子ペーパー(デジタルペーパー)、液晶表示装置の表示装置に用いられる電極として用いることもできる。また、タッチパネル等にも用いることができる。
このように、本発明はまた、デジタルペーパーに用いられる導電性膜でもある。
【発明の効果】
【0063】
本発明の導電性膜の製造方法によって、網目状の導電性膜を、簡易かつ安価に製造することができ、網目が細かく、光透過性に優れ、更に面内の均一性が優れる導電性膜を製造することができる。また、このような導電性膜は、網目が細かくなることから、電子ペーパー等のディスプレイ等に好適に用いることができる。また、面内の均一性に優れることから、ディスプレイ等に適用する場合には、モアレ等が生じないものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1−1】図1−1は、塗布された有機溶媒分散体を、塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させる工程の一例を示す、時間の経過による塗膜断面の概念図である。
【図1−2】図1−2(a)〜(e)は、塗布された有機溶媒分散体を、塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させる工程を示す概念図である。
【図2】図2は、空孔部と網目状線部が形成された網目状の導電性膜の平面模式図である。
【図3】図3は、ペルチェ素子を用いて、基板及び塗膜を冷却し、更に加湿気体を塗膜に吹きつけながら蒸発させる方法を示す断面模式図である。
【図4】図4は、焼成前、焼成後の膜の形態を示す光学顕微鏡観察像である。(a−1)は、焼成前の膜を20倍の倍率で観察したものであり、(a−2)は、100倍の倍率で観察したものである。(b−1)は、200℃で1時間の焼成を行った膜を20倍の倍率で観察したものであり、(b−2)は、100倍の倍率で観察したものである。(c−1)は、300℃で30分間の焼成を行った膜を20倍の倍率で観察したものであり、(c−2)は、100倍の倍率で観察したものである。(d−1)は、400℃で30分間の焼成を行った膜を20倍の倍率で観察したものであり、(d−2)は、100倍の倍率で観察したものである。
【図5】図5は、焼成前、焼成後の膜の形態を示す電子顕微鏡観察像である。図5(a)は、焼成前の膜、図5(b)は、200℃で1時間の焼成を行った膜、図5(c)は、300℃で30分間の焼成を行った膜、図5(d)は、400℃で30分間の焼成を行った膜である。
【図6】図6は、200℃で1時間の焼成を行った膜を倍率を下げて観察したときの電子顕微鏡観察像である。
【図7】図7は、200℃で1時間の焼成を行った膜を観察した結果の原画像である。
【図8】図8は、200℃で1時間の焼成を行った膜の二値化画像である。
【図9】図9は、200℃で1時間の焼成を行った膜の細線化処理画像である。
【図10】図10は、200℃で1時間の焼成を行った膜の抽出画像である。
【図11】AFMにより表面形状像、電流像の測定方法を示す模式図である。
【図12】AFMを用いて測定した、200℃で1時間の焼成を行った膜の表面形状像(a)、電流像(b)である。
【図13】AFMを用いて測定した、400℃で30分間の焼成を行った膜の表面形状像(a)、電流像(b)である。
【図14】得られた導電性膜の透過率を測定した結果を示すグラフである。
【図15】図15は、参考例1で作成した焼成後の膜の形態を示す光学顕微鏡観察像である。3000倍の倍率で観察したものである。
【図16】図16は、実施例8のデジタルペーパーに電圧を印加した時の様子のイメージ図である。
【図17】図17は、比較例2のデジタルペーパーに電圧を印加した時の様子のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0066】
<導電性微粒子分散溶液(x−1)の調整方法>
オクチルアミン(和光純薬工業株式会社製)148.1gをいれた1Lビーカーを40℃の恒温槽に入れる。次に酢酸銀(和光純薬工業株式会社製)18.6gを添加し20分間充分に攪拌混合し、均一な混合溶液を調整する。続いて、20wt%水素化ホウ素ナトリウム水溶液20gを徐々に添加することにより還元処理を実施した。
還元処理後、アセトンを200g添加し、しばらく放置後、ろ過により銀及び有機物からなる沈殿物を分離回収する。回収物にトルエンを添加し、再溶解後、10℃以下まで冷却させた後、再度ろ過し、不純物を低減させたトルエン分散溶液を調整した。次に、エバボレーターによりトルエンを留去し、銀微粒子を20wt%含有する導電性微粒子分散溶液(x−1)を調整した。この溶液は、銀微粒子の他にオクチルアミン9wt%、トルエン71wt%を含有する溶液であった。この溶液をFE−SEMで観察したところ、平均粒子径4nm、変動係数が14%の粒子径分布をもつナノ粒子分散体であることが確認された。
【0067】
<導電性微粒子分散溶液(x−2)の調整方法>
トルエンの代わりにベンゼンを用いた以外は、導電性微粒子分散溶液(x−1)と同様に調整し、導電性微粒子分散溶液(x−2)を得た。この溶液は、銀微粒子を20wt%、オクチルアミンを9wt%、ベンゼンを71wt%含有する溶液であった。この溶液をFE−SEMで観察したところ、平均粒子径4nm、変動係数が14%の粒子径分布をもつナノ粒子分散体であることが確認された。
【0068】
<導電性微粒子分散溶液(x−3)の調整方法>
トルエンの代わりにシクロヘキサンを用いた以外は、導電性微粒子分散溶液(x−1)と同様に調整し、導電性微粒子分散溶液(x−3)を得た。この溶液は、銀微粒子を20wt%、オクチルアミンを9wt%、シクロヘキサンを71wt%含有する溶液であった。この溶液をFE−SEMで観察したところ、平均粒子径4nm、変動係数が14%の粒子径分布をもつナノ粒子分散体であることが確認された。
【0069】
(実施例1)
<多孔質膜作製条件>
導電性微粒子分散溶液(x−1)を用いて、銀の重量濃度として2.5mg/ml、CAP(n:m=4:1、Mn=99000、Mw=280000)1.0mg/mlのトルエン溶液を調整した。スライドカラスを飽和水酸化カリウムエタノール溶液に2時間浸漬後、エタノール、水で超音波洗浄を行うことにより、親水化処理を行った。このときの基板の接触角は、測定できないほど低く、ほぼ0°であった。0.5ml程度の溶液を上記基板上に塗布し、ペルチェ素子で基板を8℃に冷却して加湿空気(相対湿度50%以上)を0.8m/minの流速で、20分間吹きつけて有機溶媒を蒸発させて、乾燥製膜した。
<乾燥条件>
室温、常圧下で乾燥(風乾)した。
<焼成条件>
乾燥を行った後の膜を、電気炉で常圧、空気雰囲気下で10℃/分で昇温した。3つの試料を用いて行い、それぞれ、200℃で1時間、300℃で30分、400℃で30分の焼成を行った。焼成後、自然放冷し、室温まで冷却した。このときの導電性膜の最大膜厚としては、焼成前の膜では1.60μm、200℃で1時間の焼成を行った膜では1.07μm、300℃で1時間の焼成を行った膜ではで0.51μm、400℃で1時間の焼成を行った膜では0.35μmであった。
なお、最大膜厚は、レーザー顕微鏡(VK−9700、キーエンス社製)で倍率50倍で塗膜を観測した。観察した画像から塗膜の最大の段差を10箇所で計測し、平均した値を導電性膜の最大膜厚とした。
【0070】
図4は、焼成前、焼成後の膜の形態を示す光学顕微鏡観察像である。図4(a−1)は、焼成前の膜を20倍の倍率で観察したものであり、(a−2)は、100倍の倍率で観察したものである。図4(b−1)は、200℃で1時間の焼成を行った膜を20倍の倍率で観察したものであり、(b−2)は、100倍の倍率で観察したものである。図4(c−1)は、300℃で30分間の焼成を行った膜を20倍の倍率で観察したものであり、(c−2)は、100倍の倍率で観察したものである。図4(d−1)は、400℃で30分間の焼成を行った膜を20倍の倍率で観察したものであり、(d−2)は、100倍の倍率で観察したものである。
図5は、焼成前、焼成後の膜の形態を示す電子顕微鏡観察像である。図5(a)は、焼成前の膜、図5(b)は、200℃で1時間の焼成を行った膜、図5(c)は、300℃で30分間の焼成を行った膜、図5(d)は、400℃で30分間の焼成を行った膜である。また、図6は、200℃で1時間の焼成を行った膜を倍率を下げて観察したときの電子顕微鏡観察像である。
【0071】
光学顕微鏡及び電子顕微鏡により観察した結果、焼成前、焼成後のいずれの膜においても、網目状線部と空孔部とが形成された導電性膜となっていることがわかる。また、200℃で1時間焼成を行ったものについて開口率、線幅、空孔部の平均面積、空孔部の平均フェレ径を求めた。開口率は、80%、線幅は1.1μm、空孔部の平均面積は60.4μm、空孔部の平均最大フェレ径は8.1μmであった。これらの測定方法について以下に示す。
【0072】
<開口率、線幅、空孔部の平均面積、平均最大フェレ径の求め方>
導電性膜の表面を超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡(S−4800、日立ハイテクノロジーズ社製)にて倍率1000倍で観察し、観察した画像を画像処理ソフト(Image−Pro Plus ver.4.0、米国Media Cybernetics社製)を用いて、以下の方法で処理し、導電膜の開口率、線幅、空孔部の平均面積、フェレ径を求めた。
【0073】
顕微鏡観察した画像(これを「原画像」とする。)を、上述の画像処理ソフトを用いて導電部が黒、その他の部分(網目の開口部)が白となるように白黒に二値化した。図7は、200℃で1時間の焼成を行った膜を観察した結果の原画像である。この時、二値化の閾値は、色調のヒストグラムより白と黒のピーク値を求め、その中間値とする。次に、二値化画像の白黒反転処理を行った(この画像を「二値化画像」とする。)。図8は、200℃で1時間の焼成を行った膜の二値化画像である。この時の、全体の面積に対する黒部の面積比を求め、開口率とした。
【0074】
また、二値化画像の白部の面積を求め、これを導電部の面積(S)とした。次に、二値化画像の細線化処理を行った(この画像を「細線化処理画像」とする。)。図9は、200℃で1時間の焼成を行った膜の細線化処理画像である。細線化処理画像の白部の面積を求め、これを 導電部の長さ(L)とした。上記で求めたSとLの値を用い、下記式(1)により導電部の線幅を求めた。
導電部の線幅=S/L (1)
【0075】
続いて、二値化画像の黒部を抽出した(この画像を「抽出画像」とする。)。図10は、200℃で1時間の焼成を行った膜の抽出画像である。灰色部分が抽出した空孔部(平均化するためにカウントした空孔部)であり、黒色部分は、カウントしていない空孔部である。また、図10中の数字は、抽出した空孔部の数をカウントしたときの数字である。抽出の際、境界上の空孔部については除外した。また、1μm以下の面積の空孔部についても除外した。このときの、各要素の面積、及び、各空孔部の最大フェレ径を計測し、平均化したものを、それぞれ、空孔部の平均面積、空孔部の平均最大フェレ径とした。
【0076】
焼成後の導電性膜について走査型プローブ顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)を用いて、表面形状像、電流像の観察を行った。カンチレバーは、セイコーインスツル社製のSI−AF01Aを用いた。
測定条件
導電測定AFMホルダ(セイコーインスツル社製)を用いて測定した。焼成後のサンプルを約1cm角に切り出し、端部をドータイト銀ペーストで固定した。金コートした探針を用い、探針と基板の間にバイアス電圧1〜5Vを印加して表面形状像と電流像の同時測定を行った。スキャン範囲は50μm四方である。図11に、AFM測定装置の模式図を示す。図11に示すように、ピエゾステージ31上に試料ステージ32を乗せ、その上に基板上に導電性膜を形成した試料33を設置する。そして、金コート探針34により試料33の表面を走査しながら、試料の表面形状を観察した。また、銀ペースト35により試料表面の導電性膜と試料ステージとを連結することにより、金コート探針34と銀ペースト35との間に1〜5Vのバイアスを印加することによって、電流像を観察した。図12に、AFM測定によって、200℃で1時間焼成を行った膜について、表面形状像(a)、電流像(b)を示す。また、図13に、AFM測定によって、400℃で30分間焼成を行った膜について、表面形状像(a)、電流像(b)を示す。
【0077】
200℃で1時間の焼成を行った膜においては、図12(a)の表面形状像から空孔部と網目状線部とが形成された膜であることを確認した。電流像からは、網目状線部に対応する部分で電流が流れていることが確認され、網目状線部により導電性のネットワークが形成されていることが確認された。
400℃で30分間の焼成を行った膜においては、図13(a)の表面形状像から空孔部と網目状線部とが形成された膜であることを確認したが、導電性物質の凝集等によって好適な状態で導電性のネットワークが形成されておらず、図13(b)の電流像からは、電流が流れていることを確認することができなかった。
【0078】
焼成前、焼成後の導電性膜について、透過率の評価を行った。透過率の評価には、分光光度計(商品名「V−530」、日本分光社製)を用いて、300〜800nmの波長の光について透過率を測定した。透過率を測定した結果を図14に示す。図13は、縦軸が透過率、横軸が光の波長を示すグラフである。200℃で1時間の焼成を行った膜において、波長が300〜700nmの光において、透過率は20〜70%程度であった。これは、空孔部に銀が残留しているためと考えられるが、製造条件を最適化することによって空孔部に残留している銀を排除すれば、全ての波長範囲で導電性膜の開口率と同等以上の透過率を得ることができるものとすることができる。また、300℃で30分間の焼成を行った膜、400℃で30分間の焼成を行った膜では、光透過率が40〜90%であった。
【0079】
(実施例2)
<多孔質膜作製条件>
導電性微粒子分散溶液(x−2)を用いて、銀の重量濃度として1.0mg/ml、CAP(n:m=4:1、Mn=99000、Mw=280000)1.0mg/mlのベンゼン溶液を調整した。25℃、相対湿度50%の雰囲気下で、2.0mlの溶液を5cm角のスライドガラス基板上に塗布し、加湿空気(相対湿度90%以上)を0.6m/minの流速で、10分間吹きつけて有機溶媒を蒸発させて、乾燥製膜した。
<乾燥条件>
室温、常圧下で乾燥(風乾)した。
<焼成条件>
乾燥を行った後の膜を、電気炉で常圧、空気雰囲気下で10℃/分で昇温し、300℃で30分間焼成を行った。焼成後、自然放冷し、室温まで冷却した。このときの導電性膜の最大膜厚は、0.2μmであり、導電性膜のシート抵抗は、8.0×10Ω/□、全光線透過率は、77%であった。また、導電性膜の開口率、線幅、空孔部の平均面積、空孔部の平均最大フェレ径を求めた結果、表1の通りであった。
なお、導電性膜のシート抵抗、全光線透過率は、以下のようにして測定された。
【0080】
<シート抵抗>
導電性膜のシート抵抗は、抵抗率計 ロレスター−GP(三菱化学アナリテック社製、プローブ:ASPプローブ)を用いて、四端子四探針法により測定した。
<全光線透過率>
導電性膜の全光線透過率は、ヘイズメーター NDH5000(日本電色工業社製)を用いて、JIS K7361−1に準拠して測定した。
【0081】
(実施例3)
<多孔質膜作製条件>
導電性微粒子分散溶液(x−3)を用いて、銀の重量濃度として1.0mg/ml、CAP(n:m=7.6:1、Mn=25000、Mw=95000)1.0mg/mlのシクロヘキサン溶液を調整した。25℃、相対湿度50%の雰囲気下で、2.0mlの溶液を5cm角のスライドガラス基板上に塗布し、加湿空気(相対湿度90%以上)を0.6m/minの流速で、10分間吹きつけて有機溶媒を蒸発させて、乾燥製膜した。
<乾燥条件>
室温、常圧下で乾燥(風乾)した。
<焼成条件>
乾燥を行った後の膜を、電気炉で常圧、空気雰囲気下で10℃/分で昇温し、300℃で15分間焼成を行った。焼成後、自然放冷し、室温まで冷却した。このときの導電性膜の最大膜厚は、0.4μmであり、導電性膜のシート抵抗は、46Ω/□、全光線透過率は、63%であった。また、導電性膜の開口率、線幅、空孔部の平均面積、空孔部の平均最大フェレ径を求めた結果、表1の通りであった。
【0082】
(実施例4)
<多孔質膜作製条件>
導電性微粒子分散溶液(x−3)を用いて、銀の重量濃度として1.0mg/ml、エポミンRP20(オクタデシルイソシアネート変性ポリエチレンイミン、日本触媒社製、Mn=6500、Mw=13700)1.0mg/mlのシクロヘキサン溶液を調整した。23℃、相対湿度70%の雰囲気下で、2.0mlの溶液を5cm角のスライドガラス基板上に塗布し、加湿空気(相対湿度70%以上)を1.5m/minの流速で、10分間吹きつけて有機溶媒を蒸発させて、乾燥製膜した。
<乾燥条件>
室温、常圧下で乾燥(風乾)した。
<焼成条件>
乾燥を行った後の膜を、電気炉で常圧、空気雰囲気下で10℃/分で昇温し、200℃で1時間、150℃で1時間焼成を行った。焼成後、自然放冷し、室温まで冷却した。このときの導電性膜の最大膜厚は、0.5μmであり、導電性膜のシート抵抗は、20Ω/□、全光線透過率は、28%であった。また、導電性膜の開口率、線幅、空孔部の平均面積、空孔部の平均最大フェレ径を求めた結果、表1の通りであった。
【0083】
(実施例5)
<多孔質膜作製条件>
導電性微粒子分散溶液(x−3)を用いて、銀の重量濃度として3.7mg/ml、シクロへキシルメタクリレート−プラクセルFM−1(カプロラクトン変性メタクリレート)共重合体(シクロへキシルメタクリレート:プラクセルFM−1のモル比9:1、Mn=25000、Mw=93000)0.11mg/mlのシクロヘキサン溶液を調整した。23℃、相対湿度70%の雰囲気下で、2.0mlの溶液を5cm角のスライドガラス基板上に塗布し、加湿空気(相対湿度70%以上)を1.6m/minの流速で、10分間吹きつけて有機溶媒を蒸発させて、乾燥製膜した。
<乾燥条件>
室温、常圧下で乾燥(風乾)した。
<焼成条件>
乾燥を行った後の膜を、電気炉で常圧、空気雰囲気下で10℃/分で昇温し、180℃で15分間焼成を行った。焼成後、自然放冷し、室温まで冷却した。このときの導電性膜の最大膜厚は、0.8μmであり、導電性膜のシート抵抗は、3.5×10Ω/□、全光線透過率は、30%であった。また、導電性膜の開口率、線幅、空孔部の平均面積、空孔部の平均最大フェレ径を求めた結果、表1の通りであった。
【0084】
(実施例6)
<多孔質膜作製条件>
導電性微粒子分散溶液(x−3)を用いて、銀の重量濃度として3.7mg/ml、エポミンRP20(オクタデシルイソシアネート変性ポリエチレンイミン、日本触媒社製、Mn=6500、Mw=13700)0.11mg/mlのシクロヘキサン溶液を調整した。23℃、相対湿度70%の雰囲気下で、2.0mlの溶液を5cm角のスライドガラス基板上に塗布し、加湿空気(相対湿度70%以上)を1.6m/minの流速で、10分間吹きつけて有機溶媒を蒸発させて、乾燥製膜した。
<乾燥条件>
室温、常圧下で乾燥(風乾)した。
<焼成条件>
乾燥を行った後の膜を、電気炉で常圧、空気雰囲気下で10℃/分で昇温し、180℃で15分間焼成を行った。焼成後、自然放冷し、室温まで冷却した。このときの導電性膜の最大膜厚は、0.9μmであり、導電性膜のシート抵抗は、42Ω/□、全光線透過率は、43%であった。また、導電性膜の開口率、線幅、空孔部の平均面積、空孔部の平均最大フェレ径を求めた結果、表1の通りであった。
【0085】
(実施例7)
<多孔質膜作製条件>
導電性微粒子分散溶液(x−3)を用いて、銀の重量濃度として3.7mg/ml、CAP(n:m=7.6:1、Mn=25000、Mw=95000)0.11mg/mlのシクロヘキサン溶液を調整した。23℃、相対湿度70%の雰囲気下で、2.0mlの溶液を5cm角のスライドガラス基板上に塗布し、加湿空気(相対湿度70%以上)を1.6m/minの流速で、10分間吹きつけて有機溶媒を蒸発させて、乾燥製膜した。
<乾燥条件>
室温、常圧下で乾燥(風乾)した。
<焼成条件>
乾燥を行った後の膜を、電気炉で常圧、空気雰囲気下で10℃/分で昇温し、180℃で15分間焼成を行った。焼成後、自然放冷し、室温まで冷却した。このときの導電性膜の最大膜厚は、0.8μmであり、導電性膜のシート抵抗は、6Ω/□、全光線透過率は、42%であった。また、導電性膜の開口率、線幅、空孔部の平均面積、空孔部の平均最大フェレ径を求めた結果、表1の通りであった。
【0086】
【表1】

【0087】
(参考例1:網目状の導電性膜が形成されない実施形態)
<多孔質膜作製条件>
導電性微粒子として、三ッ星ベルト製の銀微粒子分散溶液(クロロホルム溶液)を用いて、銀の重量濃度として2.75mg/mlのクロロホルム溶液を調整した。23℃、相対湿度70%の雰囲気下で、2.0mlの溶液を5cm角のスライドガラス基板上に塗布し、加湿空気(相対湿度70%)を1.6m/minの流速で、10分間吹きつけて有機溶媒を蒸発させて、乾燥製膜した。
<乾燥条件>
室温、常圧下で乾燥(風乾)した。
<焼成条件>
乾燥を行った後の膜を、電気炉で常圧、空気雰囲気下で10℃/分で昇温し、300℃で15分間焼成を行った。焼成後、自然放冷し、室温まで冷却した。
【0088】
図15は、参考例1で作成した焼成後の膜の形態を示す光学顕微鏡観察像である。光学顕微鏡観察はデジタルマイクロスコープ VHX−100(キーエンス社製)を用いて、3000倍の倍率で行った。観察した結果、表面に凹凸はあるものの、パターンは形成されていなかった。
なお、図15において、白く見える部分が凸部、黒く見える部分が凹部であり、銀膜の凹凸が表面全面を覆っていることが観察される。このような場合、透明性、透過性は無いといえる。
【0089】
(参考例2:網目状の導電性膜が形成されない実施形態)
<多孔質膜作製条件>
導電性微粒子分散溶液(x−3)を用いて、銀の重量濃度として0.2mg/mlのシクロヘキサン溶液を調整した。25℃、相対湿度80%の雰囲気下で、2.0mlの溶液を5cm角のスライドガラス基板上に塗布し、加湿空気(相対湿度80%)を0.6m/minの流速で、10分間吹きつけて有機溶媒を蒸発させて、乾燥製膜した。
<乾燥条件>
室温、常圧下で乾燥(風乾)した。
<焼成条件>
乾燥を行った後の膜を、電気炉で常圧、空気雰囲気下で10℃/分で昇温し、300℃で15分間焼成を行った。焼成後、自然放冷し、室温まで冷却した。
作成した焼成後の膜の形態を参考例1と同様に、デジタルマイクロスコープで観察したところ、パターン構造を観察することが出来ず、全面に銀の薄膜が形成された。
【0090】
(参考例3:網目状の導電性膜が形成されない実施形態)
<多孔質膜作製条件>
導電性微粒子分散溶液(x−3)を用いて、銀の重量濃度として0.1mg/ml、ポリスチレン(アルドリッチ(Aldrich)社製、Mw=280000)0.2mg/mlのシクロヘキサン溶液を調整した。5cm角のスライドガラスを飽和水酸化カリウムエタノール溶液に2時間浸漬後、エタノール、水で超音波洗浄を行うことにより、親水化処理を行った。このときの基板の接触角は、測定できないほど低く、ほぼ0°であった。25℃、相対湿度80%の雰囲気下で、2.0mlの溶液を5cm角のスライドガラス基板上に塗布し、加湿空気(相対湿度80%)を0.6m/minの流速で、10分間吹きつけて有機溶媒を蒸発させて、乾燥製膜した。
<乾燥条件>
室温、常圧下で乾燥(風乾)した。
<焼成条件>
乾燥を行った後の膜を、電気炉で常圧、空気雰囲気下で10℃/分で昇温し、300℃で15分間焼成を行った。焼成後、自然放冷し、室温まで冷却した。
作成した焼成後の膜の形態を参考例1と同様に、デジタルマイクロスコープで観察したところ、部分的にしかパターン構造が出来ておらず、また、パターン構造が観察された部分も、銀粒子が開口部の底にも析出しており、基材が直接観察出来る領域がなかった。
【0091】
(比較例1)
<多孔質膜作製条件>
導電性微粒子分散溶液(x−3)を用いて、銀の重量濃度として3.7mg/ml、エポミンRP20(オクタデシルイソシアネート変性ポリエチレンイミン、日本触媒社製、Mn=6500、Mw=13700)0.11mg/mlのシクロヘキサン溶液を調整した。23℃、相対湿度40%の雰囲気下で、2.0mlの溶液を5cm角のスライドガラス基板上に塗布し、空気(相対湿度40%)を1.6m/minの流速で、10分間吹き付けて有機溶媒を蒸発させて、乾燥製膜した。
<乾燥条件>
室温、常圧下で乾燥(風乾)した。
<焼成条件>
乾燥を行った後の膜を、電気炉で常圧、空気雰囲気下で10℃/分で昇温し、180℃で15分間焼成を行った。焼成後、自然放冷し、室温まで冷却した。
<結果>
パターンが出来ず、全面に銀ナノ粒子が塗布されていた。
透過率:12%
導電性:ロレスターで測定できず。
パターンが出来ないため、透過率が低く、また、パターンが出来たときと比較し、全面に塗布されて膜厚が薄くなるため、導電性が出なくなっていた。
【0092】
(実施例8)
特開2005−338189号公報の比較例を参考に、以下のようにしてデジタルペーパーを作製した。
<TiO
300mLの4つ口フラスコに、酸化チタン(製品名:タイペークCR−97、石原産業社製)100g、n−ヘキサン100gおよびオクタデシルトリクロロシラン(製品名:LS6495、信越化学工業社製)4gを仕込み、攪拌混合をしながら、上記フラスコを55℃の超音波浴槽(超音波ホモジナイザー(製品名:BRANSON5210、ヤマト社製)により超音波を発生させた浴槽)に入れ、超音波分散を行いながらカップリング剤処理を2時間行った。
この分散液を遠心分離用沈降管に移し、遠心分離機(製品名:高速冷却遠心機GRX−220、トミー社製)により10000Gで15分間沈降操作を行い、その後、沈降管の上澄み液を除去して、表面処理された酸化チタン(p1)を得た。
<CB>
200mLのビーカーに、カーボンブラック(製品名:MA100、三菱化学社製)5gおよびメチルメタアクリレート172.5gを仕込み、超音波ホモジナイザー(製品名:BRANSON5210、ヤマト社製)で分散処理を行った後、アゾビスブチロニトリル3.5gを加えて溶解させ、モノマー組成物を得た。
アニオン性界面活性剤(製品名:ハイテノールNO8)2.5gを水750gに溶解させた水溶液を予め調製しておき、これに上記モノマー組成物を全量添加し、高速攪拌乳化機(製品名:クリアミックスCLM−0.8S、エム・テクニック社製)により分散処理して、上記モノマー組成物の懸濁液を得た。
この懸演液を75℃に昇温させ5時間保持することにより重合反応を行い、黒色微粒子の分散体を得た。この黒色微粒子の粒子経(体積平均粒子経)を、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(製品名:LA−910、堀場製作所社製)を用いて測定したところ、0.8μmであった。上記分散体について、ろ過、洗浄および乾燥を施すことにより、黒色微粒子(p2)を得た。
<インキ化>
アイソパーM(エクソン化学社製)85.6gに、黒色微粒子(p2)3.1gおよび酸化チタン(p1)11.5gを仕込み、超音波浴槽で2時間分散処理を行い、電気泳動表示装置用分散液(i1)を得た。
<カプセル化>
500mLの平底セパラブルフラスコに、水60g、アラビアゴム6gおよびゼラチン6gを仕込み、溶解させた。
この溶液を43℃に保持しながら、ディスパー(製品名:ROBOMICS、特殊機化工業社製)による攪拌下で、50℃に加温した電気泳動表示装置用分散液(i1)95gを添加し、その後、攪拌速度を徐々に上げ、1200rpmで30分間攪拌して懸濁液を得た。この懸濁液に43℃の温水300mLを添加しながら攪拌速度を徐々に下げた。
櫂型攪拌羽根により懸濁液全体を均一状態に保持し得る攪拌下で、10wt%酢酸水溶液約11mLを22分かけて定量添加し、pH4.0とした後、10℃に冷却した。
冷却した状態で懸濁液を2時間保持した後、37wt%ホルマリン水溶液3mLを添加し、さらに10wt%NaCO水溶液22mLを25分かけて定量添加した。
さらに、懸濁液の温度を常温に戻し、20時間保持して熟成させ、電気泳動表示装置用マイクロカプセル(cm1)の分散液を得た。電気泳動表示装置用マイクロカプセル(cm1)の体積平均粒子径は51.1μmであった。
この分散液を目開き孔径80μmと30μmのメッシュに通して分級し、粒子径30〜80μmの電気泳動表示装置用マイクロカプセル(cm1)のペースト(固形分:57wt%)を得た。
<塗工液>
次に、アルカリ可溶型アクリル樹脂エマルション(製品名:WR503A、日本触媒社製、樹脂含量:30wt%)2.1gを固形分が5wt%となるように水で希釈し、これに25wt%アンモニア水0.2gを添加して、上記アルカリ可溶型アクリル樹脂の溶液を調製した。この樹脂溶液12.8gを、上記ペースト12.8gに添加して、混合機(製品名:あわとり練太郎AR−100、シンキー社製)で10分間混合し、塗工液を得た。
<塗布、ラミネート>
上記塗工液を、ITO付きPETフィルムにアプリケーターで塗布した後、90℃で10分乾燥して、電気泳動表示装置用シート(s1)を得た。
電気泳動表示装置用シート(s1)の塗工面に、本発明の銀導電性膜付きガラスをラミネートし、対向電極を有する電気泳動表示装置(d1)を作製した。
装置(d1)に3Vの電圧を印加したところ、陰極側表面に白色が、陽極側表面に黒色が得られ、電圧の極性を逆にすると各々色が逆転し、本発明の導電性膜がデジタルペーパー用の透明電極として使用できることが確認出来た。なお、装置(d1)に電圧を印加した時の様子は、図16のように表すことができる。
【0093】
(比較例2)
特表2005−530005号公報の実施例10に従い、銀パターン導電性膜が形成された導電性フィルムを作製した。導電性膜の線幅は3.2μm、空孔部の平均面積は5673μm、空孔部の平均最大フェレ径は84μmであった。前記、電気泳動表示装置用シート(s1)の塗工面に、銀導電性膜が形成された導電性フィルムをラミネートし、対向電極を有する電気泳動表示装置(d2)を作製した。
装置(d2)に3Vの電圧を印加したところ、銀のパターン上のマイクロカプセルのみが電気泳動し、銀のパターンにかからないマイクロカプセルは電気泳動しなかった。この様子を簡略化して表すと、図17のように表すことができる。このため、全面に渡って白色、黒色にならず、陰極側、陽極側共に、白黒が混じったまだらな模様が観察され、比較例2の導電性膜はデジタルペーパー用の透明電極として不適であった。
【符号の説明】
【0094】
11、21:基板
12、22:塗膜(塗布された有機溶媒分散体)
13:水滴
14:空孔部
15:網目状線部
20:ペルチェ素子
31:ピエゾステージ
32:試料ステージ
33:試料
34:金コート探針
35:銀ペースト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性微粒子を含む有機溶媒分散体を基板に塗布して網目状の導電性膜を製造する方法であって、
該製造方法は、塗布された有機溶媒分散体を、塗膜表面で結露させながら有機溶媒を蒸発させる工程を含むことを特徴とする導電性膜の製造方法。
【請求項2】
前記有機溶媒分散体は、水及び有機溶媒に対する両親媒性化合物を含有することを特徴とする請求項1記載の導電性膜の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれかに記載の方法により製造されることを特徴とする導電性膜。
【請求項4】
導電性物質の網目状線部と空孔部とによって形成された網目状の導電性膜であって、
該導電性膜は、空孔部の平均面積が400μm以下であり、網目状線部の線幅が5μm以下であることを特徴とする導電性膜。
【請求項5】
デジタルペーパーに用いられることを特徴とする請求項3又は4記載の導電性膜。

【図1−1】
image rotate

【図1−2】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図14】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate