説明

導電性薄膜及びそれを用いたフレキシブル部材

【課題】 共役系導電性高分子薄膜の導電性を高めることによって、所望の導体に適用できる導電性薄膜を提供すること。
【解決手段】 導電性薄膜は、共役系導電性高分子17の薄膜16中に電解質塩、及び溶融塩の内の少なくとも1種の塩又は電解質18が、ランダムに含まれた構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、回路基板、携帯電話装置等の電子部品や電子機器に用いられる共役系導電性高分子を用いた導電性有機薄膜に関し、詳しくは、面での応用の電極、例えば、ディスプレイ用の透明電極、電磁シールド用の塗装膜に用いられる導電性有機薄膜とそれを用いたFFC(Flexible Flat Cable)もしくはFPC(Flexible Printed Circuit)等のフレキシブル部材及び電子部品や電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
共役系導電性高分子、例えば、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、及びポリチオフェンを初めとした共役系導電性高分子に、ごく微量のドーパントを入れることにより、導電性が大幅に向上することが知られている。共役系導電性高分子にドーパントをドープすることにより、ポーラロン、バイポーラロン構造を取ることが出来、導電性が大幅に向上する。この原理のため、導電性を上げるために必要なドーパントは、極めて微量である。
【0003】
一般に、共役系導電性高分子は、電子伝導により導電性を示す。一方、ドーパント自身は、導電性高分子と比較して極めて低い導電率しか示さないため、ドーパントをドープ剤として必要以上に混合しても、キャリア数(電気を運ぶ物質の数)の低下を招くだけで、導電性は向上しないと考えられてきた。
【0004】
このような共役系導電性高分子に、大量にドーパントを入れた例も提案されている。
【0005】
Poly(3,4−ethylenedioxythiophene)(PEDOT)に代表されるチオフェン系導電性高分子は、導電性の付与、ぬれ性、及び膜特性の向上を狙ってポリスチレンスルホン酸(PSS)のような高分子電解質を大量に添加している。このチオフェン系導電性高分子において、高分子電解質は、ドーパントとして働き、導電性高分子に導電性を付与するだけでなく、導電性高分子を、水溶性にするためのいわは溶媒としても働いている。
【0006】
しかしながら、高分子電解質(PSS)そのものは、イオン伝導体であり、伝導度は、半導体領域にある。よって、高分子電解質(PSS)の濃度増大により、伝導度は大幅に低下してしまう。
【0007】
ところで、電池用固体電解質の研究で、電解質をイオン伝導性高分子中、例えば、ポリエチレングリコール中に入れていくと、イオン伝導度は塩濃度5〜15%で極大を示し、それ以上は塩による結晶化のため、著しくイオン伝導度が低下することはよく知られている。それ以上の塩濃度である40%以上塩を入れると、逆にイオン伝導度か著しく増大することが、1990年代に報告された。このような化合物は塩の中に高分子があるような状態なので、Polymer in Saltと呼ばれている。
【0008】
例えば、非特許文献1において、PEDOTにPFイオンを用いて電解重合を行い、導電性高分子にドープすることが示されている。
【0009】
しかしながら、リチウム塩程度では、混合もしくは暴露しただけでは、ドープは困難であり、あくまでも電池用電解質の開発が目的のため、イオンのみ動くイオン伝導性材料の開発であり、電子伝導の共役系導電性高分子では、このような試みはなされていない。
【0010】
また、従来、導電性高分子薄膜の製造方法として、特許文献1に開示されたものがある。この特許文献1に開示された伝導性高分子フィルムの製造方法は、有機溶媒にリチウム塩を溶解させる第1工程と、前記第1工程を通しリチウム塩が溶解された有機溶媒に伝導性高分子を少量ずつ添加しながら溶解させ、濃い青色の溶液を得る第2工程と、前記第2工程を通して得られた濃い青色の溶液を平板面に一定の厚さで塗布する第3工程と、前記第3工程を通じて塗布された溶液中の溶媒を乾燥させる第4工程とを含む方法である。
【0011】
この特許文献1に開示の導電性高分子薄膜の製造方法により、伝導性を有する伝導性高分子フィルムを溶液から直接得ることができるので、伝導性を有する高分子フィルムを薄い膜に加工できるだけでなく、必要によって厚さを調節でき、用いる塩の種類と濃度によってフィルムの伝導度を調節できるので、電子/電気部品等使用目的によって多様な分野に応用でき、加工性に優れた伝導性高分子フィルムの製造方法を提供できるという利点を備えたものである。なお、この特許文献1では、導電性高分子に溶媒と塩を入れているが、この塩の添加はドープを目的である。
【0012】
また、特許文献2には、ポリマー組成物の製造方法において、解凝集させたポリマー分子は、その後にドーピングすることで導電性が高くなることが開示されている。ここで、解凝集剤は、分子のドーピングの前、またはドーピング中に添加することができるもので、このポリマー分子の解凝集剤として、塩化リチウム、m−クレゾール、ノニルフェノールなどの薬剤が例示され、ポリマー分子の解凝集に使用されている。
【0013】
また、ポリマー組成物は、解凝集させた、可溶性前駆物質から生成した、置換または非置換のポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリアニリン、ポリアジン、ポリチオフェン、ポリ−p−フェニレンスルフィド、ポリフラン、ポリピロール、ポリセレノフェン、ポリアセチレンならびにこれらの組合せ、およびこれらを共重合からなるグループから選択されたポリマー分子を含むとともに100nmより大きい、前記ポリマー分子の凝集した領域が存在しないものである。
【0014】
なお、特許文献2では、電解質が使用されているが、これはあくまでも、解凝集(界面活性剤)として使用されており、ドープ剤等の導電性を向上させる目的で導電性高分子薄膜に導入したものではない。
【0015】
さらに、特許文献3には、ティアスらが電解質を含む溶液中にチオフェンモノマーを溶解し、電解酸化することによりポリチオフェン類の導電性重合薄膜を形成させている。これは秩序化した薄膜の作製や膜厚制御が困難であるとともに、電気化学的にドープしているために塩を大量に入れることができないという問題があった。また、渡辺らは、ポリチオフェン類を両親媒性分子と混合することによって、秩序性の良い層構造をもつ混合LB(Langmuir−Blodgett:ラングミュアプロジェット)膜を作製しているが、混合LB膜自体が絶縁性であり、そのままでは電気電子分野の機能性材料としては使用し難い。
【0016】
特許文献3では、導電性高分子を溶媒に溶かした混合液を水面上に液滴し、水面上にできた膜を支持基板上に積層させて薄膜を作製する。このように作製した薄膜を溶解しないような、電解塩を溶かした液に浸漬させ、電気化学的にアニオンをドーピングさせた導電性薄膜である。
【0017】
特許文献3では、主鎖に沿ってπ電子共役系を有する高分子と、両親媒性分子との混合ラングミュアプロジェット膜を表面に形成させた支持基板を、電解質を含み、かつ混合ラングミュア・プロジェット膜を溶解しない溶液中に浸潰し、電気化学的にアニオンをドーピンクすることで、導電性混合LB膜の製造方法が開示されている。そして、導電性高分子にはチオフェン系の高分子として、チオフェン系化合物の重合体を、電解質の塩として過塩素酸の塩が例示されている。
【0018】
ところで、従来において、フレキシブル回路基板、または、フレキシブルフラットケーブルは、フレキシブルな絶縁体の基体に、金属製の導体パターンを形成している。しかしながら、このようなフレキシブル部材は、導体パターンが金属箔等で形成されているために、複雑な導体パターンを作製する場合には、その作製工程が複雑であった。
【0019】
一方、電気回路基板に、導電性高分子を用いたものとしては、特許文献4、特許文献5、及び特許文献6に開示されたものがある。
【0020】
この従来の電気回路基板は、基板に導電性高分子を用いて導電性高分子パターンを形成し、その導電性高分子パターン上に電気めっき又は無電解めっき等によって、めっき膜を形成して導体パターンとするものであった。
【0021】
しかしながら、電気回路基板の基体としてフレキシブルなものを使用すると、めっき膜の剥離、われ、等の問題が生じるために、フレキシブル部材には適用できなかった。このように、導体パターンとして、Cuめっき膜を使用しなければ成らない理由として、導電性高分子膜の導電率の低さに起因している。
【0022】
【非特許文献1】PHYSICAL REVIEW B 56 (7)3659−3663(1997)
【特許文献1】特開2001−172418号公報
【特許文献2】特許3103030号公報
【特許文献3】特開平4−354561号公報
【特許文献4】特開平7−58439号公報
【特許文献5】特開平7−336022号公報
【特許文献6】特開2004−31392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
そこで、本発明の一技術的課題は、共役系導電性高分子薄膜の導電性を高めることによって、所望の導体に適用できる導電性薄膜を提供することにある。
【0024】
また、本発明のもう一つの技術的課題は、前記導電性薄膜を用いたフレキシブル部材とその製造方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明によれば、共役系導電性高分子の薄膜中に電解質塩及び溶融塩の内の少なくとも1種の塩又は電解質が、ランダムに含まれた構造を有することを特徴とする導電性薄膜が得られる。
【0026】
また、本発明によれば、前記導電性薄膜において、前記共役系導電性高分子は、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、およびその誘導体またはこれらの共重合体の内の少なくとも1種類以上をその構造に含むことを特徴とする導電性薄膜が得られる。
【0027】
また、本発明によれば、前記いずれか一つの導電性薄膜において、前記電解質塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、過塩素酸リチウム、ヘキサフルオロ燐酸リチウム、リチウムジペンタフルオロエタンスルホンイミドの内の少なくとも一種であり、前記溶融塩はイミダゾール塩であることを特徴とする導電性薄膜が得られる。
【0028】
また、本発明によれば、前記いずれか一つの導電性薄膜において、前記ポリチオフェンは、3,4−ethylenedioxythiophene骨格及びその誘導体の内の少なくとも一種を含むことを特徴とする導電性薄膜が得られる。
【0029】
また、本発明によれば、フレキシブル基材に形成された導体部を備えたフレキシブル配線基板又はフレキシブルフラットケーブルからなるフレキシブル部材であって、前記導体部として前記いずれか1つの導電性薄膜を備えていることを特徴とするフレキシブル部材が得られる。ここで、本発明において、フレキシブル部材のうち、フレキシブル基体に導体が形成されているものをフレキシブルフラットケーブル(FFC)と呼び、更に、チップコンデンサ、チップ抵抗、チップインダクタ等の回路素子が搭載されているものもしくは搭載可能なものをフレキシブル配線基板(FPC)と呼ぶ。
【0030】
また、本発明によれば、前記いずれか一つの導電性薄膜を電子表示素子の透明電極に用いたことを特徴とする電子表示装置が得られる。
【0031】
また、本発明によれば、前記いずれか一つの導電性薄膜を電磁シールド塗装に用いた電子部品または電子機器を備えていることを特徴とする電子装置が得られる。
【発明の効果】
【0032】
本発明においては、共役系導電性高分子に大量の塩又は電解質を添加し、この混合溶液を例えば、スピンコート等で薄膜化し、約40度で加熱固化させる簡便な方法で、抵抗の小さい導電性薄膜を作製することができる。
【0033】
また、本発明においては、塩又は電解質濃度で抵抗値を変化させることができ、容易に抵抗値を変更できる。
【0034】
さらに、本発明においては、前記導電性薄膜は所望する硬度と導電性を備えているために、フレキシブル基材に塗布又は印刷形成するだけで、フレキシブル部材を作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明についてさらに説明する。
【0036】
本発明の導電性薄膜は、共役系導電性高分子の薄膜中に電解質塩、及び溶融塩のうち1種類以上の塩もしくは電解質が(ランダムに)含まれた構造を有する。
【0037】
即ち、本発明では、前記共役系導電性高分子として、ポリアニリン、ポリチオフェン誘導体、ポリピロールまたはこれらの共重合体のうち少なくとも1種類以上をその構造に含むものである。この共役系導電性高分子のいずれかを含んでいれば良く、共重合体、ブレンド、ハイブリッドのような形態でもかまわない。これらの導電性高分子は水溶液になっていて、電解質と混合の後、成膜する。
【0038】
また、本発明において、電解質としての電解質塩とは、固体でも溶液状態でもかまわず、リチウムイオン二次電池等の技術分野における電解塩と呼ばれるものも含まれる。この電解塩として、塩化ナトリウム、塩化カリウム、過塩素酸リチウム、ヘキサフロロリン酸リチウム、リチウムジペンタフルオロエタンスルホンイミド[(CSONLi]が例示できる。
【0039】
また、溶融塩としてイミタゾール塩、さらに、電解質として、ポリスチレンスルフオン酸(PSS)のような高分子電解質を添加した構造であっても良い。電解質は、直接投入してもかまわないが、あらかじめ溶媒に溶解後混合すると、溶解速度が速く便利であり、ゲル化等の副作用が起こらない利点がある。
【0040】
この電解質の量は、質量で10%以上含むことが好ましいが、多量に含めば、含むほど、導電率が大きくなる傾向を示す。実用的な範囲は、20%から、70%の範囲であり、30%から50%の範囲がより好ましい。
【0041】
また、前記導電性薄膜において、前記ポリチオフェンは、3,4−ethylenedioxythiophene骨格及びその誘導体の内の少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0042】
本発明の導電性薄膜は、これまでの常識を覆す画期的なものである。この導電性薄膜に関して、電導度の向上が確認でき、なおかつ、塩そのものの、硬さを利用できるため、硬度も上げられる場合が多く、利用価値は大きい。
【0043】
なおかつ、通常、導電性高分子は、高価である場合が多く、比較的安い電解塩を主成分に出来るメリットは大きいと考えられる。
【0044】
また、従来の導電性薄膜において、硬さが下がる場合として、固体同士を混ぜ合わせた場合、相溶で溶融塩になってしまう場合がある。
【0045】
本発明では、導電性高分子に大量の電解塩を添加することにより、導電率の向上を図れるものである。
【0046】
また、本発明においては、通常、導電性高分子のドープに必要な量よりは遥かに大量の塩を添加するものである。むしろ塩の中に導電性高分子が存在するほどの極めて高濃度領域において特性を示す。
【0047】
従来技術の常識によれば、大量の塩添加については、検討が行われてこなかったが、本発明においては、高濃度状態でも、高伝導度を維持または、伝導度が更に良くなるものである。そして、本発明では、塩濃度が高いため、塩の種類によっては、膜の硬度を上げることも可能とするものである。
【0048】
また、本発明では、最初から導電性高分子を電解塩と混合し、それを薄膜化後加熱硬化させたものであり、その電解塩の薄膜への入り方が、前述した特許文献3が塩を電気化学的にドープすることで大量に添加できないものとは、根本的に異なるものである。
【0049】
本発明では、伝導度、表面硬度に代表されるような諸特性を向上することができ、さらに、導電性高分子に塩を大量に入れた構造で、諸特性向上を図る事ができる。
【0050】
図1は本発明の実施の形態による導電性薄膜の一製造例の概略を示す図である。図1に示すように、まず、導電性高分子水溶液11と電解塩12とを容器13内で混合して混合液14とする(ステップS1)。次に、回転テーブル15上にスピンコート等によって成膜化する(ステップS2)。このときの導電性薄膜16は、右図に示すように、導電性高分子17中にランダムに電解塩18が混合分散されている構造を備えている。さらに、この導電性薄膜16を約40℃で加熱乾燥(ステップS3)して、完成となる。
【0051】
ここで、本発明の導電性薄膜を製造するには、上記したスピンコートのほかに、ディップコート、蒸着、インクジェット、スクリーン印刷、ディスペンサーなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
それでは、本発明の具体例について説明する。
【0053】
(例1)
PEDOT/PSS(バイトロン P)スタルクボィテック製10gに、過塩素酸リチウム(LiClO、和光純薬工業)を所定濃度になるように添加し、1時間攪拌し、十分溶解させた。この溶液を、シリコン基板上に1000rpmでスピンコートし、厚さ約100nmの薄膜を得た。直流4端子法にて、体積抵抗率測定を行った。
【0054】
比較のために、バイトロン Pを同一の条件で実験を行った。
【0055】
図2は、例1における体積抵抗率の塩濃度依存性を示している。体積抵抗率は塩濃度1%以下で極小値を示し、塩濃度が上がるにつれて上昇した。塩濃度10%を超えると再び体積抵抗率は低下し、塩濃度25%以上では導電性高分子のみよりも低い体積抵抗率を示した。更に、塩濃度を上げても体積抵抗率は低下し、伝導度が増加した。
【0056】
(例2)
PEDOT/PSS(バイトロン P)スタルクボィテック製10gに、ヘキサフロロリン酸リチウム(LiPF和光純薬工業)を所定濃度になるように添加し、1時間攪拌し十分溶解させた。この溶液を、シリコン基板上に1000rpmでスピンコートし、厚さ約100nmの薄膜を得た。直流4端子法にて、体積抵抗率測定を行った(比較実験としてバイトロン Pを同一の条件で実験を行った。)。
【0057】
図3は例2に係る体積抵抗率の塩濃度依存性を示す図である。図3を参照すると、体積抵抗率は塩濃度1%以下で極小値を示し、塩濃度が上がるにつれて上昇した。塩濃度2%を超えると再び体積抵抗率は低下し、塩濃度5%以上では導電性高分子のみよりも、低い体積抵抗率を示した。更に、塩濃度を上げると体積抵抗率は低下した。
【0058】
(例3)
PEDOT/PSS(バイトロン P)スタルクボィテック製10gに(CSONLi(BETI 3M製)を所定濃度になるように添加し、1時間攪拌し十分溶解させた。この溶液を、シリコン基板上に1000rpmでスピンコートし、厚さ約100nmの薄膜を得た。直流4端子法にて、体積抵抗率測定を行った。比較実験としてバイトロン Pを、同一の条件で実験を行った。
【0059】
図4は例3に係る体積抵抗率の塩濃度依存性を示す図である。図4は体積抵抗率は塩濃度2%で極小値を示し、塩濃度が上がるにつれて上昇した。塩15%を超えると再び体積抵抗率は低下した。更に塩濃度を上げると、体積抵抗率は低下した。
【0060】
(例4)
まず、本発明の導電性薄膜を用いてFPCを作製した。過塩素酸リチウム45%添加したバイトロン Pをディスペンサーを用いてポリエステル上に配線を描画することによってフレキシブルな配線を得た。
【0061】
市販のインクジェット装置を用いて、ポリイミドフィルムに過塩素酸リチウム45%添加したバイトロン Pを描画し、フレキシブルな配線を得た。
【0062】
(例5)
次に、本発明の導電性薄膜を用いて、透明電極を作製した。ガラス基板上に過塩素酸リチウム45%を添加したバイトロン Pを3000rpmでスピンキャストした。導電性のある透明な均質な膜が得られた。更に、有機半導体の一種であるポリビニルカルバゾール溶液をスピンキャストし、その上に発光層としてAlq3(Tris(8−hydroxyquinoline)aluminum(III))を蒸着し、さらに電極としてアルミを蒸着して、ヘテロ構造の有機ELを作製した。発光を確認でき、透明電極として機能することが確認できた。
【0063】
(例6)
次に、本発明の導電性薄膜を用いた電磁シールドについて説明する。OHP(Over Head Projector)シート上に過塩素酸リチウムを45%添加したバイトロン Pをディップコートした。導電性のある膜が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上説明したとおり、本発明の導電性薄膜は、電子部品の導体膜とくに、フレキシブル部材用導体膜として最適である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施の形態による導電性薄膜の製造工程の概略を示す図である。
【図2】例1における体積抵抗率の塩濃度依存性を示す図である。
【図3】例2に係る体積抵抗率の塩濃度依存性を示す図である。
【図4】例3に係る体積抵抗率の塩濃度依存性を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
11 導電性高分子水溶液
12 電解塩
13 容器
14 混合液
15 回転テーブル
16 導電性薄膜
17 導電性高分子
18 電解質塩

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役系導電性高分子の薄膜中に電解質塩及び溶融塩の内の少なくとも1種の塩又は電解質が、ランダムに含まれた構造を有することを特徴とする導電性薄膜。
【請求項2】
請求項1に記載の導電性薄膜において、前記共役系導電性高分子は、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、およびその誘導体またはこれらの共重合体の内の少なくとも1種類以上をその構造に含むことを特徴とする導電性薄膜。
【請求項3】
請求項1に記載の導電性薄膜において、前記電解質塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、過塩素酸リチウム、ヘキサフルオロ燐酸リチウム、リチウムジペンタフルオロエタンスルホンイミドの内の少なくとも一種であり、前記溶融塩はイミダゾール塩であることを特徴とする導電性薄膜。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の導電性薄膜において、前記ポリチオフェンは、3,4−ethylenedioxythiophene骨格及びその誘導体の内の少なくとも一種を含むことを特徴とする導電性薄膜。
【請求項5】
フレキシブル基材に形成された導体部を備えたフレキシブル配線基板又はフレキシブルフラットケーブルからなるフレキシブル部材であって、前記導体部として請求項1乃至4の内のいずれか1つに記載の導電性薄膜を備えていることを特徴とするフレキシブル部材。
【請求項6】
請求項1乃至4の内のいずれか一つに記載の導電性薄膜を電子表示素子の透明電極に用いたことを特徴とする電子表示装置。
【請求項7】
請求項1乃至4の内のいずれか一つに記載の導電性薄膜を電磁シールド塗装に用いた電子部品または電子機器を備えていることを特徴とする電子装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−96016(P2007−96016A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−283773(P2005−283773)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】