説明

導電性被膜付き基材の製造方法および導電性被膜付き基材

【課題】基材と導電性被膜との密着性に優れ、かつ、電気抵抗の低い導電性被膜を有する導電性被膜付き基材を得ることができる導電性被膜付き基材の製造方法を提供する。
【解決手段】導電性組成物を基材上に塗布し、硬化させて、多孔質の導電性被膜を形成する導電性被膜形成工程と、前記導電性被膜上に接着剤を塗布して前記基材と前記導電性被膜とを接着させて、導電性被膜付き基材を得る接着工程とを具備する導電性被膜付き基材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性被膜付き基材の製造方法および導電性被膜付き基材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエステルフィルム等の合成樹脂基材上に、銀ペースト等の導電性組成物を、スクリーン印刷等の印刷法によって、所定の回路パターンとなるように印刷し、これらを加熱して導体回路をなす導電性被膜を形成し、回路基板を製造する方法が知られている。上記製造方法において、基材と導電性被膜との密着性を得るために、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂等からなるバインダを配合した導電性組成物を用いる方法が一般的である(例えば、特許文献1〜5参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開昭60−88027号公報
【特許文献2】特開昭63−86205号公報
【特許文献3】特開昭60−15474号公報
【特許文献4】国際公開第03/085052号パンフレット
【特許文献5】国際公開第03/051562号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1〜5に記載された方法は、基材密着性を上げるために比較的多量のバインダを含有するため、得られる導電性被膜の電気抵抗が高くなるという問題がある。
そこで、本発明は、基材と導電性被膜との密着性に優れ、かつ、電気抵抗の低い導電性被膜を有する導電性被膜付き基材を得ることができる導電性被膜付き基材の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、基材と導電性被膜との密着性に優れ、かつ、電気抵抗の低い導電性被膜を有する導電性被膜付き基材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、基材上に多孔質の導電性被膜を形成し、この導電性被膜上に接着剤を塗布すると、接着剤が導電性被膜の孔部に浸透して基材と導電性被膜との密着性を向上できるため、上記導電性被膜にバインダを配合する必要がなくなり、導電性被膜の電気抵抗を低くできることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
即ち、本発明は、下記(1)〜(9)を提供する。
(1)導電性組成物を基材上に塗布し、硬化させて、多孔質の導電性被膜を形成する導電性被膜形成工程と、
前記導電性被膜上に接着剤を塗布して前記基材と前記導電性被膜とを接着させて、導電性被膜付き基材を得る接着工程とを具備する導電性被膜付き基材の製造方法。
(2)前記導電性組成物が、酸化銀と、第二級脂肪酸銀塩とを含有する上記(1)に記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
(3)前記導電性組成物が、更に、還元剤を含有する上記(2)に記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
(4)前記多孔質の導電性被膜が、空隙率10〜80%の導電性被膜である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
(5)前記接着剤が、ポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物とを含有するウレタン系接着剤である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
(6)前記ポリイソシアネート化合物が、イソシアヌレート構造を有する上記(5)に記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
(7)基材と、前記基材上に形成された多孔質の導電性被膜とを有し、前記基材と前記導電性被膜とが接着剤で接着されている導電性被膜付き基材。
(8)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の導電性被膜付き基材の製造方法により得られる上記(7)に記載の導電性被膜付き基材。
(9)前記多孔質の導電性被膜が、空隙率10〜80%の導電性被膜である上記(7)に記載の導電性被膜付き基材。
【発明の効果】
【0007】
本発明の導電性被膜付き基材の製造方法によれば、基材と導電性被膜との密着性に優れ、かつ、電気抵抗の低い導電性被膜を有する導電性被膜付き基材を得ることができる。
また、本発明の導電性被膜付き基材は、基材と導電性被膜との密着性に優れ、かつ、電気抵抗の低い導電性被膜を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の導電性被膜付き基材の製造方法(以下、「本発明の製造方法」という。)は、導電性組成物を基材上に塗布し、硬化させて、多孔質の導電性被膜を形成する導電性被膜形成工程と、前記導電性被膜上に接着剤を塗布して前記基材と前記導電性被膜とを接着させて、導電性被膜付き基材を得る接着工程とを具備する。
【0009】
<導電性被膜形成工程>
上記導電性被膜形成工程は、導電性組成物を基材上に塗布し、硬化させて、多孔質の導電性被膜を形成する工程である。
上記基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド等のフィルム;銅板、銅箔、ガラス、エポキシ等の基板等が挙げられる。
上記基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)またはポリイミドから形成される基材が、柔軟性に優れる点から好ましい。
【0010】
上記導電性組成物は、多孔質の導電性被膜を形成できるものであれば特に限定されず、例えば、銀ペースト等の金属を含有する導電性組成物、導電性ポリマーを含有する導電性組成物等を用いることができる。上記導電性組成物としては、酸化銀と、第二級脂肪酸銀塩とを含有する導電性組成物が好適に挙げられる。
【0011】
上記導電性組成物に用いられる酸化銀は、酸化銀(I)、即ち、Ag2Oである。上記酸化銀の形状は特に限定されないが、粒子径が10μm以下の粒子状であるのが好ましく、1μm以下であるのがより好ましい。粒子径がこの範囲であると、より低温で自己還元反応が生ずるので、低温で導電性被膜を形成できる。
【0012】
上記導電性組成物に用いられる第二級脂肪酸銀塩は、第二級脂肪酸と、酸化銀とを反応させて得られるものである。
上記第二級脂肪酸銀塩としては、沸点が200℃以下の第二級脂肪酸と酸化銀とを反応させて得られる第二級脂肪酸銀塩が低温で導電性被膜を形成できる点から好ましい態様の1つである。具体的には、下記式(1)で表される沸点が200℃以下の第二級脂肪酸と酸化銀とを反応させて得られるものが好適に挙げられる。
【0013】
【化1】

【0014】
式中、R1は、炭素数1〜6のアルキル基を表し、R2は、炭素数1〜10のアルキル基を表す。
【0015】
上記式(1)中、R1の炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基が挙げられる。R1は、メチル基、エチル基であるのが好ましい。
また、上記式(1)中、R2の炭素数1〜10のアルキル基としては、上記R1の炭素数1〜6のアルキル基以外に、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基が挙げられる。R2は、メチル基、エチル基、n−プロピル基であるのが好ましい。
【0016】
上記式(1)で表される第二級脂肪酸としては、具体的には、例えば、2−メチルプロパン酸(別名:イソ酪酸)、2−メチルブタン酸(別名:2−メチル酪酸)、2−メチルペンタン酸、2−メチルヘプタン酸、2−エチルブタン酸;アクリル酸等の不飽和脂肪酸等が挙げられる。
これらのうち、2−メチルプロパン酸であるのが、得られる第二級脂肪酸銀塩である2−メチルプロパン酸銀塩を含有する導電性組成物を用いて形成される導電性被膜の形成時間が短時間、具体的には、180℃程度の温度で数秒となる点から好ましい。
【0017】
一方、上記第二級脂肪酸銀塩の反応に用いられる酸化銀は、上述した酸化銀と同様、酸化銀(I)、即ち、Ag2Oである。
【0018】
上記導電性組成物に用いる第二級脂肪酸銀塩は、上記第二級脂肪酸と、酸化銀とを反応させて得られる。この反応は、下記式(2)で表される反応が進行するものであれば特に限定されないが、上記酸化銀を粉砕しつつ進行させる方法や上記酸化銀を粉砕した後に上記脂肪酸を反応させる方法が好ましい。
前者の方法としては、具体的には、上記酸化銀と、溶剤により上記脂肪酸を溶液化したものとを、ボールミル等により混練し、固体である上記酸化銀を粉砕しながら、室温で、1〜24時間程度、好ましくは2〜8時間反応させるのが好ましい。
【0019】
【化2】

【0020】
上記式(2)中、R1〜R2は、上記式(1)中のR1〜R2と同様である。
【0021】
上記脂肪酸を溶液化する溶剤としては、具体的には、例えば、ブチルカルビトール、メチルエチルケトン、イソホロン、α−テルピネオール等が挙げれる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
中でも、イソホロンおよび/またはα−テルピネオールを溶媒として用いるのが、上記反応により得られる第二級脂肪酸銀塩を含有する導電性組成物のチクソ性が良好となる点から好ましい。
【0022】
上記導電性組成物は、更に還元剤を含有するのが好ましい。上記還元剤としては、具体的には、例えば、エチレングリコール類、アクリル化合物、エポキシ化合物、α−テルピネオール等が挙げられる。
【0023】
また、上記導電性組成物は、必要に応じて、金属粉を含有していてもよい。
上記金属粉としては、具体的には、例えば、銅、銀、アルミニウム等が挙げられ、中でも、銅、銀であるのが好ましい。また、0.01〜10μmの粒径の金属粉であるのが好ましい。
【0024】
本発明の製造方法においては、接着剤が導電性被膜の孔部に浸透して導電性被膜と基材とを接着できるため、導電性組成物がバインダを含有しなくても優れた密着性を得ることができる。したがって、本発明の製造方法に用いられる導電性組成物としては、得られる導電性被膜の電気抵抗を低くできる点から、バインダを含有しない導電性組成物であることが好ましい。
【0025】
上記導電性組成物の製造方法としては、特に限定されないが、上記酸化銀および上記肪酸銀塩ならびに所望により含有していてもよい還元剤および金属粉を、ロール、ニーダー、押出し機、万能かくはん機等により混合する方法等が挙げられる。
また、上記脂肪酸と、過剰量の上記酸化銀とを混合し、上記第二級脂肪酸銀塩を合成して、酸化銀と第二級脂肪酸銀塩とを含有する導電性組成物を製造することもできる。
【0026】
上記導電性組成物は、必要に応じて上記で例示したα−テルピネオール等の溶剤を用いて溶液化された後、以下に例示する塗布方法により基材上に塗布され、硬化されて、多孔質の導電性被膜を形成する。
塗布方法としては、具体的には、例えば、インクジェット、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、凸版印刷等が挙げられる。
【0027】
上記導電性被膜形成工程において、塗布された導電性組成物を硬化させる方法は、特に限定されず、使用する導電性組成物の種類等に応じて適宜設定することができる。例えば、上記脂肪酸銀と上記第二級脂肪酸銀塩とを含有する導電性組成物を用いる場合の硬化方法としては、熱処理または光照射が挙げられ、熱処理と光照射を併用してもよい。
熱処理の条件は特に制限されないが、例えば、上記第二級脂肪酸銀塩として沸点が200℃以下の第二級脂肪酸と酸化銀とを反応させて得られる第二級脂肪酸銀塩を用いる場合は、100〜250℃の温度で、数秒〜数十分間、加熱する処理であるのが好ましく、160℃程度で、1分程度、加熱する処理であるのがより好ましい。熱処理の温度および時間がこの範囲であると、耐熱性の低い基材にも導電性被膜を形成することができる。
上記光照射は、塗布された導電性組成物に、紫外線または赤外線を照射して行う。照射時間等の条件は、適宜設定することができる。
【0028】
上記塗布された導電性組成物に熱処理および/または光照射することにより、上記第二級脂肪酸銀塩が銀に分解され、分解により生じた一部の脂肪酸と酸化銀とが反応し、再び第二級脂肪酸銀塩を生成し、それが還元(銀と脂肪酸への分解)されるサイクルを繰り返すことにより導電性被膜が形成される。導電性被膜が形成される際に、上記第二級脂肪酸銀塩の分解により生じた脂肪酸またはその分解物が揮発するため、上記導電性被膜は多孔質になると考えられる。
【0029】
上記により得られる導電性被膜の空隙率は、10〜80%であることが好ましく、20〜70%であることがより好ましく、30〜70%であることが更に好ましい。この範囲であれば、導電性被膜が多孔質であるため、得られる導電性被膜付き基材における導電性被膜と基材との密着性に優れ、更に、被膜の強度や導電性にも優れる。
なお、本明細書において導電性被膜の空隙率は、SEMを用い、表・断面の画像から画像処理を行い、パソコン上で計算を行うことで、空隙分散率を算出して求められる値である。
【0030】
<接着工程>
上記接着工程は、上記導電性被膜形成工程により得られた導電性被膜上に、接着剤を塗布して、上記基材と上記導電性被膜とを接着させて、導電性被膜付き基材を得る工程である。
上記接着剤は、使用する基材の種類等に応じて適宜選択して用いることができる。具体的には、例えば、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤等が挙げられる。中でも、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物とを含有するウレタン系接着剤が、接着性に優れ、湿気により硬化することができる点から好ましい。
【0031】
上記ウレタン系接着剤に用いられるポリイソシアネート化合物としては、公知のウレタン系接着剤に使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、イソシアヌレート構造を有するポリイソシアネート化合物が、基材密着性に優れるという点から好適に挙げられる。
【0032】
また、上記接着剤としては、脂肪族第二級炭素原子または脂肪族第三級炭素原子に結合しているイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂と、硬化剤とを含有する接着剤組成物が、密着性に優れる点から好ましい態様の1つである。このような接着剤組成物としては、特願2005−181858号に記載された組成物を用いることができる。
【0033】
上記接着工程において、上記接着剤が上記導電性被膜の上に塗布された後、上記導電性被膜の孔部を通って導電性被膜と基材との境界に到達することができるため、導電性被膜と基材とを強固に接着することができる。
【0034】
上記接着剤は、導電性被膜上の他、導電性被膜の周囲にも塗布することができる。また、上記接着工程において、導電性被膜の表面に上記接着剤からなるコーティング膜を形成させることが好ましい。
【0035】
上述した本発明の製造方法によれば、基材と導電性被膜との密着性に優れ、かつ、電気抵抗の低い導電性被膜を有する導電性被膜付き基材を得ることができる。
【0036】
次に、本発明の導電性被膜付き基材について説明する。
本発明の導電性被膜付き基材は、基材と、前記基材上に形成された多孔質の導電性被膜とを有し、前記基材と前記導電性被膜とが接着剤で接着されている導電性被膜付き基材である。
【0037】
本発明の導電性被膜付き基材に用いられる基材および接着剤は、上述した本発明の製造方法で説明したものと同様である。また、上記導電性被膜は、多孔質であり、導電性を有する被膜であれば特に限定されないが、例えば、上述した導電性組成物を基材上に塗布して硬化させて得られるものが好適に挙げられる。また、導電性被膜を形成した後に孔を設けたものでもよい。
上記導電性被膜付き基材としては、上述した本発明の製造方法により得られるものが好ましい。
【0038】
上記導電性被膜の空隙率は、10〜80%であることが好ましく、20〜70%であることがより好ましく、30〜70%であることが更に好ましい。この範囲であれば、導電性被膜が多孔質であるため、導電性被膜と基材との密着性に優れ、更に、被膜の強度や導電性にも優れる。
【0039】
また、本発明の導電性被膜付き基材は、導電性被膜の表面にコーティング膜を有することが好ましい。コーティング膜を有する場合、導電性被膜の酸化や物理的な損傷を防止できる。上記コーティング膜は、上記接着工程において簡便に形成することができる点から、上記接着剤から形成されていることが好ましい。また、別途コーティング剤を塗布して形成してもよい。
【0040】
上述した本発明の導電性被膜付き基材は、基材と導電性被膜との密着性に優れ、かつ、電気抵抗の低い導電性被膜を有する。
本発明の導電性被膜付き基材は、例えば、電子回路、アンテナ等の回路の作製に好適に用いることができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例を示して、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
酸化銀(I)100g、イソ酪酸銀17g、ステアリン酸2.5gおよびα−テルピネオール40gをボールミルで24時間混合し、酸化銀を粉砕しつつ反応させて導電性組成物を得た。
得られた導電性組成物をPETフィルム(ルミラーS56、東レ社製)、PENフィルム(テオネックス081、帝人デュポンフィルム社製)およびポリイミドフィルム(カプトン、東レ・デュポン社製)のそれぞれに塗布した後、160℃で1分間の条件で乾燥し、導電性被膜を作製した。
【0042】
図1は、実施例1の基材上に形成された導電性被膜(接着剤塗布前)の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(1000倍)である。図1から明らかなように、得られた導電性被膜には多数の孔が観察された。実施例1の導電性被膜の空隙率は約40%だった。
また、接着剤塗布前に導電性被膜の体積抵抗率を抵抗率計(ロレスターGP、三菱化学社製、以下同じ。)を用いた4端子4探針法により測定し、また、下記の方法により密着性を評価した。結果を下記第1表に示す。
【0043】
次に、各導電性被膜の上に、ウレタン−エポキシ系接着剤(Y−coat242R、横浜ゴム社製)を塗布し、導電性被膜とフィルムとを接着させて、各導電性被膜付き基材を得た。
得られた導電性被膜付き基材の導電性被膜の体積抵抗率を抵抗率計により測定し、また、下記の方法により各導電性被膜付き基材の密着性を評価した。結果を下記第1表に示す。
【0044】
(密着性評価)
密着性の評価は、碁盤目テープはく離試験により行った。
各試料の導電性被膜に1mmの基盤目100個(10×10)を作り、基盤目上にセロハン粘着テープ(幅18mm)を付着させ、直ちにテープの一端を直角に保ち、瞬間的に引き離し、剥がれないで残った基盤目の個数を調べた。
【0045】
(比較例1)
導電性組成物として、バインダを含有する市販の銀ペースト(FA−353、藤倉化成社製)を用いた点以外は、実施例1と同様に、導電性被膜および導電性被膜付き基材を作製し、各導電性被膜の体積抵抗率を測定し、各導電性被膜付き基材の密着性を評価した。結果を下記第1表に示す。
図2は、比較例1の基材上に形成された導電性被膜(接着剤塗布前)の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真(1000倍)である。図2から明らかなように、得られた導電性被膜には、孔がほとんどなかった。比較例1の導電性被膜の空隙率は約8%だった。
【0046】
(比較例2)
酸化銀(I)100g、第三級脂肪酸銀塩であるネオデカン酸銀塩75gおよびα−テルピネオール40gをボールミルで24時間混合し、酸化銀を粉砕しつつ反応させて導電性組成物を得た。
得られた導電性組成物を用いて、実施例1と同様に、導電性被膜および導電性被膜付き基材を作製し、各導電性被膜の体積抵抗率を測定し、また、各導電性被膜の付き基材の密着性を評価した。結果を下記第1表に示す。
図3は、比較例2の基材上に形成された導電性被膜(接着剤塗布前)の断面のSEM写真(1000倍)である。
図3から明らかなように、得られた導電性被膜には孔がほとんどなかった。比較例2の導電性被膜の空隙率は0%だった。
【0047】
【表1】

【0048】
第1表に示す結果から明らかなように、バインダを含有する市販の銀ペーストを用いた導電性被膜付き基材(比較例1)は、密着性に優れていたものの、その導電性被膜の体積抵抗率が高かった。また、第三級脂肪酸銀塩を含有する導電性組成物を用いた導電性被膜付き基材(比較例2)は、導電性被膜に孔がほとんど存在せず、そのため接着剤を塗布しても密着性は向上しなかった。
一方、実施例1の接着剤塗布後の導電性被膜付き基材は、優れた密着性を有し、更に、その導電性被膜の体積抵抗率は比較例1に比べて格段に低くすることができた。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、実施例1の基材上に形成された導電性被膜(接着剤塗布前)の断面のSEM写真(1000倍)である。
【図2】図2は、比較例1の基材上に形成された導電性被膜(接着剤塗布前)の断面のSEM写真(1000倍)である。
【図3】図3は、比較例2の基材上に形成された導電性被膜(接着剤塗布前)の断面のSEM写真(1000倍)である。
【符号の説明】
【0050】
1 導電性被膜
2 フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性組成物を基材上に塗布し、硬化させて、多孔質の導電性被膜を形成する導電性被膜形成工程と、
前記導電性被膜上に接着剤を塗布して前記基材と前記導電性被膜とを接着させて、導電性被膜付き基材を得る接着工程とを具備する導電性被膜付き基材の製造方法。
【請求項2】
前記導電性組成物が、酸化銀と、第二級脂肪酸銀塩とを含有する請求項1に記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
【請求項3】
前記導電性組成物が、更に、還元剤を含有する請求項2に記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
【請求項4】
前記多孔質の導電性被膜が、空隙率10〜80%の導電性被膜である請求項1〜3のいずれかに記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
【請求項5】
前記接着剤が、ポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物とを含有するウレタン系接着剤である請求項1〜4のいずれかに記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
【請求項6】
前記ポリイソシアネート化合物が、イソシアヌレート構造を有する請求項5に記載の導電性被膜付き基材の製造方法。
【請求項7】
基材と、前記基材上に形成された多孔質の導電性被膜とを有し、前記基材と前記導電性被膜とが接着剤で接着されている導電性被膜付き基材。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の導電性被膜付き基材の製造方法により得られる請求項7に記載の導電性被膜付き基材。
【請求項9】
前記多孔質の導電性被膜が、空隙率10〜80%の導電性被膜である請求項7に記載の導電性被膜付き基材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−317482(P2007−317482A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−145319(P2006−145319)
【出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】