導電粉および導電性組成物
【課題】嵩密度が低いとともに、形状保持性に優れ、しかも、樹脂中に混合した場合であっても、凸部が折れにくい凹凸を備えた導電粉、およびそのような導電粉を使用した導電性組成物を提供する。
【解決手段】主成分が銀またはニッケルであり、表面に凸部を備えるとともに、内部に、導電材料を結晶成長させるための核物質としての金属系粒子またはセラミック系粒子を含んでなる導電粉、およびそのような導電粉を使用した導電性組成物であって、少なくとも表面に対して、有機酸または有機酸塩による表面処理が施してあるとともに、かつ、嵩密度を0.5〜2.5g/cm3の範囲内の値とする。
【解決手段】主成分が銀またはニッケルであり、表面に凸部を備えるとともに、内部に、導電材料を結晶成長させるための核物質としての金属系粒子またはセラミック系粒子を含んでなる導電粉、およびそのような導電粉を使用した導電性組成物であって、少なくとも表面に対して、有機酸または有機酸塩による表面処理が施してあるとともに、かつ、嵩密度を0.5〜2.5g/cm3の範囲内の値とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸を備えた導電粉および導電性組成物に関し、特に、特定の表面処理が施してあって、かつ所定の嵩密度を有する凹凸を備えた導電粉、およびそのような導電粉を用いた導電性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、厚膜用ペーストや導電性接着剤等の用途において、所定量の金属粉末を樹脂中に混合分散させてなる導電性組成物が使用されている。
このような導電性組成物に使用される金属粉末としては、例えば、第1工程において、金属塩溶液を還元して、金属超微粒子を形成した後、第2工程において、当該金属超微粒子の存在下に、金属をさらに還元析出させて得られる二次凝集が少ない、球状の金属微粒子が知られている(例えば、特許文献1〜2参照)。
【0003】
一方、本発明の発明者らは、このような金属微粒子を改良すべく、放射状に延設された凸部と、当該凸部の間隙に凹部と、を備えるとともに、以下のいずれかの特徴を有する導電粉を提案している(例えば、特許文献3参照)。
(1)隣接する導電粉間で、当該凸部と、凹部とが相互に嵌合連結する導電粉である(第1特徴)。
(2)凸部の形状が、針状、桿状、又は花弁状からなる群から選択される少なくとも一つの形状である導電粉である(第2特徴)。
(3)樹脂を含んだ状態での比抵抗が5×10-6〜1×10-3Ω・cmの範囲内の値である導電粉である(第3特徴)。
【0004】
さらに、本発明の発明者らは、放射状に延設された凸部と、当該凸部の間隙に凹部と、を備えるとともに、内部に、導電材料としての銀またはニッケルを結晶成長させるための核物質であって、当該核物質として、金属系粒子またはセラミック系粒子を含んでなる銀またはニッケルを含む導電粉を提案している(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開平10−317022号 (特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平11−140511号 (特許請求の範囲)
【特許文献3】WO 02/061766号 (特許請求の範囲)
【特許文献4】特許第3828787号 (特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜2に開示された金属微粒子は、いずれも球状であって、隣接する金属粉末同士の表面における点接触を利用して、電気接続することを意図しているため、接触面積が小さく、樹脂を含んだ状態において接続導体間で得られる導通抵抗の値が大きいという問題が見られた。したがって、従来の導電性組成物においては、金属粉末(金属微粒子)を多量に添加しなければならず、そのために、導電性組成物の粘度が上昇し、取り扱いが困難になるという問題が見られた。
また、特許文献1〜2に開示された金属微粒子は、第1工程において形成した3〜1000nm程度の金属超微粒子を使用するため、かかる金属超微粒子の粒径がばらつくと、第2工程において得られる金属微粒子の平均粒径や粒度分布についても、さらに大きくばらつくという問題も見られた。
【0006】
また、特許文献3に開示された導電粉は、放射状に延設された凸部と、当該凸部の間隙に凹部と、を備えることにより、特許文献1〜2に開示された球状の金属微粒子と比較して、樹脂を含んだ状態での比抵抗は低いものの、粒度分布が若干広くなるとともに、凸部が損傷しやすく、より良好な取り扱いが望まれていた。
【0007】
一方、特許文献4に開示された導電粉は、核物質を含むことから、粒度分布が狭くなるとともに、比重や比抵抗の調整が容易であるものの、樹脂中に混合した場合に、未だ凸部が損傷して、折れやすいという問題が見られた。
したがって、導電性組成物を作成するに際して、樹脂に対する導電粉の分散条件によっては、凸部が折れてしまい、図13(a)および(b)に示すように、凝集物となって、濾過処理する際に、フィルターが目つまりしやすいという問題が見られた。
なお、図13(a)および図13(b)は、それぞれフィルターが目つまりした異なる箇所における顕微鏡写真である。
【0008】
ここで、従来の導電性組成物は、通常、導電粉を80重量%程度含んでいる一方、作業性を向上させるためには、粘度を低くする必要があり、比重の重い導電粉が沈降しやすくなって、接着剤成分から分離し、そのために電気特性が安定しないという問題が見られた。
したがって、従来の導電性組成物を、例えば、電気駆動装置におけるアルミニウム筐体と、駆動軸を含む駆動体との間の電気的接続部材として用いた場合、電気特性が安定しないことから、駆動軸の高速回転により発生した静電気がたまりやすくなり、それに起因して、電気駆動装置において誤作動が起きやすいという問題が見られた。
【0009】
そこで、本発明者らは鋭意検討した結果、導電粉の内部に核物質を含有させるとともに、所定の表面処理を施すことにより、所定の嵩密度を有するとともに、形状保持性が優れ、しかも、導電性組成物を作成するに際して、樹脂中に混合した場合であっても、凸部が折れにくくなって、安定的に濾過処理できることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、所定の嵩密度を有するとともに、優れた形状保持性を有し、かつ凸部が折れにくい導電粉、およびそのような導電粉を用いた密度が小さな導電性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、主成分が銀またはニッケルであって、表面に凸部を備えるとともに、内部に、導電材料を結晶成長させるための核物質としての金属系粒子またはセラミック系粒子を含んでなる導電粉であって、少なくとも表面に対して、有機酸または有機酸塩による処理が施してあり、かつ、嵩密度が0.5〜2.5g/cm3の範囲内の値であることを特徴とする導電粉が提供され、上述した問題を解決することができる。
すなわち、所定の嵩密度を有する導電粉において、内部に核物質を含むとともに、所定の表面処理が施されていることにより、形状保持性に優れ、樹脂中に混合した場合であっても、凸部が折れにくいという特性を発揮することができる。
したがって、導電性組成物を作成するに際して、樹脂中に混合した場合であっても、凸部が折れにくくなって、フィルター等を用いて、容易に濾過処理することができる。
また、所定の核物質を所定量含むことにより、比重や比抵抗の調整についても容易となり、導電性組成物を作成する際に、樹脂中への分散効果に優れるとともに、比較的少量の添加で良好な導電性が得られる導電粉とすることができる。
【0011】
また、本発明の導電粉を構成するにあたり、導電粉100重量部に対して、有機酸または有機酸塩の処理量を0.001〜5重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
このように有機酸または有機酸塩の処理量を調整して構成することにより、導電粉の形状保持性と、導電率との間のバランスについて、さらに良好なものとなる。
【0012】
また、本発明の導電粉を構成するにあたり、有機酸または有機酸塩が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、およびミリスチン酸塩からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
このように有機酸または有機酸塩の種類を制限して構成することにより、導電粉の形状保持性と、導電率との間のバランスについて、さらに良好なものとなる。
なお、有機酸塩を使用することによって、水相中での導電粉の表面処理が可能となる。
【0013】
また、本発明の導電粉を構成するにあたり、核物質の添加量を、全体量に対して、0.0001〜10重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
このように核物質の添加量を調整して構成することにより、粒度分布がさらに狭い導電粉とすることができるとともに、導電粉の比重や比抵抗の調整についてもさらに容易となる。
【0014】
また、本発明の別の態様は、主成分が銀またはニッケルであって、表面に凸部を備えるとともに、内部に、導電材料を結晶成長させるための核物質としての金属系粒子またはセラミック系粒子を含んでなる導電粉と、樹脂と、を含む導電性組成物であって、
導電粉の少なくとも表面に対して、有機酸または有機酸塩による処理が施してあり、
かつ、導電粉の嵩密度を0.5〜2.5g/cm3の範囲内の値とすることを特徴とする導電性組成物である。
すなわち、このように特定の表面処理が施されているとともに、所定の嵩密度を有する導電粉と、樹脂と、から導電性組成物を構成することにより、導電粉を樹脂中に容易に混合できるとともに、凸部が折れにくいという効果を得ることができる。
したがって、フィルター等を用いて、容易かつ迅速に濾過処理することができる一方、比較的少ない導電粉の添加であっても、導電性に優れた導電性組成物を効率的に得ることができる。
【0015】
また、本発明の導電性組成物を構成するにあたり、樹脂(硬化剤があれば、硬化剤を含む。)100重量部に対して、導電粉の添加量を40〜200重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
このように導電粉の添加量を調整して構成することにより、導電粉が沈降して、分離せず、導電性と、経済性との間のバランスにさらに優れた導電性組成物を得ることができる。
また、導電粉の添加量がかかる範囲であれば、導電性組成物を作成するに際して、フィルター等を用いて、容易かつ迅速に濾過処理することも可能となる。
【0016】
また、本発明の導電性組成物を構成するにあたり、密度を1.4〜3.5g/cm3の範囲内の値とすることが好ましい。
このように密度を調整して構成することにより、使い勝手に優れるとともに、軽量化が図られた導電性組成物を得ることができる。
【0017】
また、本発明の導電性組成物を構成するにあたり、樹脂として、主剤としてのビスフェノールF型エポキシ樹脂と、硬化剤としてのアミンアダクト化合物と、反応性希釈剤と、を含むとともに、25℃における粘度を1,000〜100,000mPa・secの範囲内の値とすることが好ましい。
このように特定樹脂組成物を含んで構成することにより、粘度が低く、フィルター等を用いて、容易かつ迅速に濾過処理することができるとともに、ディスペンサー等を用いた注入が可能な導電性組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、主成分が銀またはニッケルであって、表面に凸部を備えるとともに、内部に、導電材料を結晶成長させるための核物質としての金属系粒子またはセラミック系粒子を含んでなる導電粉であって、少なくとも表面に対して、有機酸塩による処理が施してあり、かつ、嵩密度が0.5〜2.5g/cm3の範囲内の値であることを特徴とする導電粉である。
以下、構成要件ごとに分けて、導電粉についての実施態様を具体的に説明する。
【0019】
1.形状
(1)凸部
凸部(突起と称する場合がある。)は、図1(a)〜(b)、あるいは、図2(a)〜(c)にそれぞれの顕微鏡写真を示すように、針状、桿状(棒状や竿状を含む。)、又は花弁状からなる群から選択される少なくとも一つの形状であることが好ましい。
この理由は、このように凸部を構成することにより、隣接する導電粉間で、凸部と凹部とが容易に嵌合連結することができ、導電経路の形成が容易となるためである。
また、針状の凸部を有する銀粉と、桿状の凸部を有する銀粉と、花弁状の凸部を有する銀粉とを組合せることにより、導電経路の形成が容易となって、比抵抗がさらに低下することが判明している。
【0020】
(2)凹部
また、凸部の間に、凹部(窪みと称する場合がある。)を設けることも好ましいが、その場合、図1(a)〜(b)、あるいは、図2(a)〜(c)にそれぞれの顕微鏡写真を示すように、凸部の間隙に設けられた窪み形状であって、凸部と嵌合連結可能な形状であることが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、隣接する導電粉間で、凸部と凹部とが容易に嵌合連結することができ、導電経路の形成がさらに容易となるためである。
また、凹部の深さ(大きさ)を導電粉に占める凹部の体積、すなわち凹部からなる空隙率で表すことが可能である。具体的に、凸部の先端を囲む閉曲面からなる球の体積を100容量%としたときに、凹部からなる空隙率を40容量%以上の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる凹部からなる空隙率が40容量%未満の値となると、凸部と、凹部との嵌合連結が不十分となる場合があるためである。一方、かかる凹部からなる空隙率が過度に大きくなると、導電粉の機械的強度が著しく低下する場合があるためである。
したがって、凹部からなる空隙率を42〜70容量%の範囲内の値とすることがより好ましく、45〜60容量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0021】
2.核物質
(1)種類
核物質が、有機系粒子、金属系粒子、およびセラミック系粒子の群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
この理由は、有機系粒子や金属系粒子を使用することにより、比重や粒径の調整が容易になるばかりか、形状保持性や比抵抗の調整についても容易になるためである。さらに、セラミック系粒子を使用することにより、比重や粒径の調整が容易になるばかりか、形状保持性や耐熱性等の特性についてもさらに向上させることができるためである。
【0022】
ここで、有機系粒子としては、スチレン系粒子、アクリル系粒子、ポリカーボネート粒子、オレフィン系粒子、シリコーン系粒子、ウレタン系粒子、タンパク質粒子、セルロース系粒子、ゴム系粒子、ポリアミド系粒子、フッ素系粒子、フェノール系粒子、黒鉛、活性炭等の一種単独または二種以上の組合せが挙げられる。
また、金属系粒子としては、銀粒子、金粒子、銅粒子、アルミニウム粒子、亜鉛粒子、半田粒子、錫粒子、ニッケル粒子等の一種単独または二種以上の組合せが挙げられる。
さらに、セラミック系粒子としては、シリカ粒子(ホワイトカーボン)、酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化亜鉛粒子、酸化スズ粒子、酸化ニオブ粒子等の一種単独または二種以上の組合せが挙げられる。
なお、一例であるが、図3に示すような球状の銀粒子であって、単分散銀粒子であることが好ましい。
この理由は、かかる球状かつ単分散の銀粒子を核成長の中心として、放射状に凸部を均一に延設することができ、粒度分布がさらに狭く、かつ形状保持性に優れた導電粉を得ることができるためである。
【0023】
(2)平均粒径
また、核物質の平均粒径を0.01〜10μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる核物質の平均粒径が0.01μm未満の値になると、核物質を中心として、放射状に凸部を均一に延設することが困難になる場合があるためである。一方、かかる核物質の平均粒径が10μmを超えると、導電粉の比重や粒径の調節が困難になったり、あるいは、核物質を中心として、放射状に凸部を均一に延設したりすることが困難になる場合があるためである。
したがって、核物質の平均粒径を0.05〜5μmの範囲内の値とすることがより好ましく、0.1〜0.5μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、核物質の平均粒径は、例えば、電子顕微鏡写真をもとに、画像処理装置によって、容易に測定することができる。
【0024】
(3)添加量
また、核物質の添加量を、全体量に対して、0.0001〜10重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる核物質の添加量が0.0001重量%未満の値になると、核物質を中心として、放射状に凸部を均一に延設することが困難になる場合があるためである。一方、かかる核物質の添加量が10重量%を超えると、導電粉の比抵抗が著しく上昇する場合があるためである。
したがって、核物質の添加量を、全体量に対して、0.001〜5重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、0.01〜1重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、核物質の添加量は、例えば、電子線マイクロアナライザー(EPMA)を用いて測定することができる。
【0025】
3.平均粒径
また、導電粉の平均粒径を0.1〜22μm未満の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる導電粉の平均粒径が0.1μmとなると、所定の比抵抗を得るために、多量の導電粉を必要とする場合があるためである。一方、かかる導電粉の平均粒径が22μmを超えると、樹脂中に均一に混合分散することが困難となったり、製造時間が過度に長くなったりする場合があるためである。
したがって、導電粉の平均粒径を0.5〜15μmの範囲内の値とすることがより好ましく、1〜6μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、導電粉の平均粒径は、レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置により測定することができるし、あるいは電子顕微鏡写真から実測することもでき、さらには、当該電子顕微鏡写真から、画像処理装置を用いて算出することもできる。
【0026】
また、参考のため、図4に、導電性組成物(樹脂組成は実施例1準拠)の全体量を100重量%とし、導電粉(導電粉は実施例1準拠)の平均粒径を1〜6μmの範囲で変えた場合の、導電性組成物における硬化時の比抵抗の値(Ω・cm、表記上、例えば、1×10-1Ω・cmを1×E−1Ω・cmとしてある。以下、同様である。)を示してある。
かかる図4の特性図から理解されるように、導電粉の平均粒径が2〜6μmの場合に、比抵抗の値がより低くなる傾向が見られている。
したがって、導電性組成物を硬化させた場合の比抵抗、すなわち導電性を、導電粉の平均粒径によって微妙に調整できることが理解される。
【0027】
4.導電粉の種類
また、導電粉の種類としては、主成分を銀またはニッケルとすれば良く、副成分として、金、銅、アルミニウム、鉄、ジルコニウム、タングステン、スズ、鉛、半田等の一種単独または二種以上をさらに含有することができる。
この理由は、銀およびニッケルを主成分とすることにより、好適な比抵抗が得られやすいばかりか、比較的安価な導電粉を提供することができるためである。
また、主成分が、銀およびニッケルであれば、樹脂、特にエポキシ系樹脂やアクリル系樹脂との混合分散性に優れているためである。
【0028】
5.有機酸または有機酸塩による処理
また、導電粉を構成するにあたり、導電粉の表面、特に導電粉の凸部に対して、有機酸または有機酸塩による処理が施してあることを特徴とする。
この理由は、所定の表面処理が施されていることにより、形状保持性に優れ、樹脂中に混合した場合であっても、凸部が折れにくいという特性を発揮することができるためである。
すなわち、内部に核物質を含むとともに、所定の表面処理が施されていることにより、形状保持性に優れ、樹脂中に混合した場合であっても、凸部が折れにくいという特性を発揮することができる。したがって、導電性組成物を作成するに際して、樹脂中に混合した場合であっても、凸部が折れにくくなって、凝集物の発生を抑えることから、安定的に濾過処理をすることができる。
また、所定の核物質を所定量含むことにより、導電粉の比重や比抵抗の調整についても容易となるためである。
【0029】
また、有機酸または有機酸塩としては、カルボキシル基またはそれが塩基によって塩となった化合物であれば特に制限されるものでないが、具体的に、飽和脂肪酸、飽和脂肪酸塩、不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸塩、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸塩、芳香族カルボン酸、芳香族カルボン酸塩等が挙げられる。
また、飽和脂肪酸および飽和脂肪酸塩であることがより好ましく、より具体的には、コハク酸、グルタン酸、アジピン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、コハク酸塩、グルタン酸塩、アジピン酸塩、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、およびオレイン酸塩からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
この理由は、このような飽和脂肪酸または飽和脂肪酸塩を用いることにより、導電粉の形状保持性と、導電率との間のバランスについて、さらに良好なものとなるためである。
特に、比較的少量の使用であっても、優れた表面処理効果が得られることから、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩からなる群から選択される少なくとも一つであっても好ましい。
【0030】
また、有機酸塩を主として使用することにより、水中での導電粉の表面処理が可能となることから、より好ましいと言える。
特に、有機酸塩として、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、およびステアリン酸塩であれば、比較的少量の水中での添加によって、優れた表面処理効果が得られ、導電性の低下が少ないことから、好ましい有機酸塩である。
【0031】
6.比抵抗
また、樹脂を含んだ状態での導電粉の比抵抗を1×10-5〜1×10-1Ω・cmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる比抵抗が1×10-5Ω・cm未満の値になると、使用可能な導電粉の種類が過度に制限されたり、好適な導電粉の製造上の歩留まりが過度に低下したりする場合があるためである。
一方、かかる比抵抗が1×10-1Ω・cmを超えると、使用時の導通抵抗が高くなり、駆動電圧が高くなる場合があるためである。
したがって、樹脂を含んだ状態での導電粉の比抵抗を1×10-4〜5×10-2Ω・cmの範囲内の値とすることがより好ましく、5×10-4〜1×10-2Ω・cmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、樹脂を含んだ状態での導電粉の比抵抗は、後述する実施例1に示す測定方法により測定することができる。
【0032】
7.嵩密度
また、導電粉の嵩密度を嵩密度が0.5〜2.5g/cm3の範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、かかる導電粉の嵩密度が0.5g/cm3未満の値になると、導電粉の形状保持性が著しく低下したり、製造工程が複雑化したり、製造時の歩留まりが著しく低下したりする場合があるためである。
一方、かかる導電粉の嵩密度が2.5g/cm3を超えると、樹脂中への分散が著しく困難となったり、導電性が低下したりする場合があるためである。
したがって、導電粉の嵩密度を1.3〜2.3g/cm3の範囲内の値とすることがより好ましく、1.5〜2.0g/cm3の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、かかる導電粉の嵩密度は、JIS K5101 タップ法に準拠して測定することができる。
【0033】
8.製造方法
導電粉を製造するにあたり、いわゆる多段階液相還元法を採用することが好ましい。
すなわち、第1工程で、所定量の還元剤を用いるとともに、所定の還元条件において、金属塩溶液中の金属塩や、金属錯体中の金属錯体等を還元反応させることにより、核物質としての導電粉を作成する。
次いで、第2工程で、この核物質としての導電粉をもとに、所定の金属塩と、所定の還元剤とを、所定の還元条件において反応させることにより、凹凸を備えた導電粉を析出させる。
さらに、得られた凹凸を備えた導電粉に対して、有機酸または有機酸塩による表面処理を実施することにより、本願発明の導電粉を製造することができる。
【0034】
(1)第1工程
(1)−1 金属塩溶液
第1の工程で用いる金属塩溶液(金属錯体溶液を含む)中の金属濃度を、通常、0.01〜1mol/リットルの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる金属濃度が0.01mol/リットル未満の値となると、必要な核物質量が得られない場合があるためである。一方、かかる金属濃度が1mol/リットルを越えると、核物質の形状を制御することが困難となって導電粉の生産性が低下する場合があるためである。
したがって、金属塩溶液中の金属濃度を0.03〜0.5mol/リットルの範囲内の値とすることがより好ましく、0.05〜0.1mol/リットルの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0035】
(1)−2 還元剤
第1の工程で用いる還元剤としては、ホルムアルデヒド、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン、ヒドラジン化合物、ヒドロキノン、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸塩、ギ酸、無水亜硫酸ナトリウム、L(+)酒石酸、ギ酸アンモニウム、ロンガリット等の一種単独または二種以上の組合せが挙げられる。
これらの還元剤のうち、還元反応を容易に制御しやすいことから、L−アスコルビン酸、あるいは、L−アスコルビン酸とピロカテコールとの組合せを使用することがより好ましい。
【0036】
(2)第2工程
(2)−1 金属塩溶液
第2の工程で用いる金属塩溶液(金属錯体溶液を含む。)中の金属濃度を、通常、0.01〜5mol/リットルの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる金属濃度が0.01mol/リットル未満の値となると、導電粉の析出量が著しく低下し、導電粉の生産性が低下する場合があるためである。一方、かかる金属濃度が5mol/リットルを超えると、導電粉の形状を制御することが困難となって、同様に導電粉の生産性が低下する場合があるためである。したがって、金属塩溶液中の金属濃度を0.1〜3mol/リットルの範囲内の値とすることがより好ましく、0.3〜2mol/リットルの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0037】
また、形成する凸部の形状に対応させて、金属塩溶液中の金属濃度を適宜調整することも好ましい。
例えば、針状や桿状の凸部を有する導電粉を製造する場合には、金属塩溶液中の金属濃度を0.8〜2mol/リットルの範囲内の値とすることによって、所望の凸部を容易に形成することができる。また、例えば、花弁状の凸部を有する導電粉を製造する場合には、金属塩溶液中の金属濃度を0.3〜0.7mol/リットルの範囲内の値とすることによって、花弁状の凸部を容易に形成することができる。
【0038】
(2)−2 還元剤
また、第2の工程で用いる還元剤として、ホルムアルデヒド、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン、ヒドラジン化合物、ヒドロキノン、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ナトリウム、ピロカテコール、ブドウ糖、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、亜硫酸塩、ギ酸、無水亜硫酸ナトリウム、L(+)酒石酸、ギ酸アンモニウム、ロンガリット等の一種単独または二種以上の組合せが挙げられる。
これらの還元剤のうち、還元反応を容易に制御しやすいことから、L−アスコルビン酸、あるいは、L−アスコルビン酸とピロカテコールとの組合せを使用することがより好ましい。
【0039】
また、このような還元剤の濃度を0.01〜5mol/リットルの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる還元剤の濃度が0.01mol/リットル未満の値となると、導電粉の析出量が著しく低下し、導電粉の生産性が低下する場合があるためである。一方、かかる還元剤の濃度が5mol/リットルを超えると、導電粉の形状を制御することが困難となって、同様に導電粉の生産性が低下する場合があるためである。
したがって、還元剤の濃度を0.1〜3mol/リットルの範囲内の値とすることがより好ましく、0.3〜2mol/リットルの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、形成する凸部の形状に対応させて、還元剤の濃度を適宜調整することも好ましい。例えば、針状の凸部を有する導電粉を製造する場合には、還元剤の濃度を0.8〜2mol/リットルの範囲内の値とすることによって、針状の凸部を容易に形成することができる。また、例えば、桿状や花弁状の凸部を有する導電粉を製造する場合には、還元剤の濃度を0.3〜0.7mol/リットルの範囲内の値とすることによって、所望の凸部を容易に形成することができる。
【0040】
(2)−3 製造装置
また、第2工程を実施するにあたり、図5に示す管状製造装置10を用いることが好ましい。
かかる管状製造装置10は、複数のパイプを利用しており、大径のパイプ20内に、金属塩溶液13を導入するための小径のパイプ17と、還元剤14を導入するための小径のパイプ18と、がそれぞれ挿入されて、所定位置に配置されている。
そして、小径のパイプ17から導入された金属塩溶液13と、小径のパイプ18から導入された還元剤74とを、流動状態において、大径のパイプ20内で混合反応させる仕様である。
したがって、大径のパイプ20の周囲に設けた水冷ジャケット21によって、大径のパイプ20を所定温度に冷却しながら、そこで得られた核粒子をタンク23に補集することができる。
【0041】
(2)−4 核物質
また、第2の工程で、上述した核物質として導電粉を用いるにあたり、金属塩溶液か、あるいは還元剤のいずれかに混合した状態で使用することができる。
その際、図6に示すように、核物質として導電粉の使用量が多いほど、凹凸を備えた導電粉の平均粒径が小さくなることが判明している。
例えば、還元剤中に、核物質として、導電粉を1mol/リットル濃度の還元剤溶液1リットルに対して、0.06g使用すると、凹凸を備えた導電粉の平均粒径は約3μmとなる。
また、核物質として、導電粉を1mol/リットル濃度の還元剤溶液1リットルに対して、0.16g使用すると、凹凸を備えた導電粉の平均粒径は約2μmとなる。
よって、核物質として導電粉の使用量を、例えば、1mol/リットル還元剤濃度の還元溶液1リットルに対して、0.001〜0.8gの範囲で使用することにより、凹凸を備えた導電粉の平均粒径を1〜6μmの範囲内の値に容易に調整することができる。
【0042】
(2)−5 還元温度
また、第2の工程において、還元処理を実施する際の還元温度(反応温度)を0〜50℃の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる還元温度が0℃未満の値となると、導電粉の析出量が著しく低下し、導電粉の生産性が低下する場合があるためである。一方、かかる還元温度が50℃を超えると、導電粉の形状を制御することが困難となって、同様に導電粉の生産性が低下する場合があるためである。
したがって、かかる還元温度を5〜40℃の範囲内の値とすることがより好ましく、10〜30℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、導電粉の粒径を比較的小さくするとともに、粒度分布をさらに狭くしたい場合には、還元処理を実施する際の還元温度を0〜8℃の範囲内の値とすることが好ましい。
【0043】
(3)表面処理工程
多段階液相還元法を用いた第1の工程および第2の工程を経て得られた導電粉に対して、有機酸または有機酸塩による表面処理を実施する。
その際、液相還元法を実施した容器内に、有機酸または有機酸塩を直接的に投入して、得られた導電粉に対して、有機酸または有機酸塩による表面処理を実施することが好ましい。
このように実施すると、得られた導電粉を外部に取り出すことなく所定の表面処理が行えることより、導電粉の所定形状を維持しやすくなるためである。
また、有機酸塩を用いた場合には、液相が水相であっても、容易に溶解することができ、水系の液相還元法により得られた導電粉について、所定形状を維持しやすくなる。
【0044】
なお、導電粉に対して、有機酸または有機酸塩による表面処理を実施するに際して、導電粉100重量部に対して、有機酸または有機酸塩の処理量を0.001〜5重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このように有機酸または有機酸塩の処理量を調整して構成することにより、導電粉の形状保持性と、導電率との間のバランスについて、さらに良好なものとなるためである。
すなわち、有機酸または有機酸塩の処理量を過度に少なくすると、導電粉の形状保持性が低下し、凸部が折れやすくなって、導電性組成物を作成するに際して、フィルター等を用いて、容易に濾過処理することが困難となる場合があるためである。
一方、有機酸または有機酸塩の処理量を過度に多くすると、電気接点において、電気絶縁性の有機酸または有機酸塩が介在しやすくなり、導電性組成物を作成した際に、導電性が低下する場合があるためである。
したがって、有機酸または有機酸塩の処理量を、導電粉100重量部に対して、0.01〜1重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、0.05〜0.5重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0045】
(4)乾燥工程
また、所定の表面処理を行った導電粉に対して、乾燥工程を設けて、加熱処理することが好ましい。すなわち、例えば、液相還元法で得られた導電粉に対して、所定の表面処理を実施した後、30℃以上の温度で、30分以上加熱処理することが好ましい。
この理由は、かかる加熱処理によって、導電粉の内部に残留する液体、例えば、水等を効果的に飛散させることができ、その結果、導電粉の形状保持性を著しく向上させることができるためである。逆に言えば、液相還元法で得られた導電粉をそのまま湿潤状態に放置しておくと、導電粉の形状が崩れ易いためである。
したがって、より優れた形状保持性を得るためには、真空オーブンや恒温槽を用いて、40〜150℃の温度で、1〜48時間程度加熱処理を実施することが好ましい。
【0046】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、主成分が銀またはニッケルであって、表面に凸部を備えるとともに、内部に、導電材料を結晶成長させるための核物質としての金属系粒子またはセラミック系粒子を含んでなる導電粉と、樹脂と、を含む導電性組成物であって、導電粉の少なくとも表面に対して、有機酸または有機酸塩による処理が施してあり、かつ、導電粉の嵩密度を0.5〜2.5g/cm3の範囲内の値とすることを特徴とする導電性組成物である。
以下、構成要件ごとに分けて、導電性組成物についての実施態様を具体的に説明する。
【0047】
1.導電粉
(1)態様
第1の実施形態と同様の凹凸を備えた導電粉が使用できるため、ここでの説明は省略する。
【0048】
(2)添加量
樹脂に対する導電粉の添加量は、使用用途等に応じて適宜選択することができるが、通常、樹脂100重量部に対して、40〜200重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる導電粉の添加量が40重量部未満となると、得られる導電性組成物の比抵抗が過度に大きくなる場合があるためである。一方、かかる導電粉の添加量が200重量部を超えると、得られる導電性組成物の接着強度が低下したり、粘度が過度に上昇し、取り扱いが困難となったりする場合があるためである。
したがって、導電粉の添加量を、樹脂100重量部に対して、60〜150重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、80〜120重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
【0049】
その他、参考のため、図7に、導電性組成物(樹脂組成は、実施例1準拠)の全体量を100重量%とし、導電粉の添加量を50〜65重量%の範囲で変えた場合における、硬化させた導電性組成物の比抵抗(Ω・cm)の値を示してある。
かかる図7の特性図から理解されるように、導電粉の添加量が多い程、導電性組成物を硬化させた場合の比抵抗(Ω・cm)の値が小さくなり、例えば、導電粉の添加量が50重量%では、比抵抗が約5×10-2Ω・cmであったものが、導電粉の添加量が60重量%では、比抵抗が約1×10-2Ω・cmとなっている。
したがって、導電性組成物を硬化させた場合の比抵抗、すなわち導電性組成物の導電性を、導電粉の添加量によって調整することができる。
【0050】
2.樹脂
(1)主剤
導電性組成物を構成する樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂、エポキシ系樹脂、オキセタン系樹脂、フェノール系樹脂、シアネートエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS樹脂)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS樹脂)、およびスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS樹脂)等の一種単独または二種以上の組合せが挙げられる。
これらの樹脂のうち、特に、エポキシ系樹脂を主成分とした熱硬化系樹脂であることがより好ましい。
この理由は、かかる熱硬化系樹脂であれば、使用時の粘度が低くて取り扱いが容易であるばかりか、熱硬化させることにより、さらに好適な比抵抗や機械的特性を、長期間にわたって得ることができるためである。
【0051】
(2)反応性希釈剤
また、導電性組成物を構成する樹脂が、反応性希釈剤を含むことが好ましい。
このような反応性希釈剤としては、脂肪族単官能エポキシ化合物、脂肪族二官能エポキシ化合物、芳香族単官能エポキシ化合物等の一つまたは二種以上の組み合わせが挙げられる。
より具体的には、o−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、シクロへキサンジメチロール型エポキシ樹脂、フェニルグリシジルエーテル、o−クレジルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、o−フェニルフェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、フェノール(EO)5グリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル等の一つまたは二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0052】
また、反応性希釈剤の添加量を、全体量に対して、5〜30重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる反応性希釈剤の添加量が、5重量%未満の値になると、添加効果が得られない場合があるためである。
一方、かかる反応性希釈剤の添加量が、30重量%以上の値になると、接着性が著しく低下する場合があるためである。
したがって、かかる反応性希釈剤の添加量を、全体量に対して、8〜25重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、10〜22重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0053】
その他、参考のため、図8に、導電性組成物(組成は実施例1準拠)の全体量を100重量%とし、反応性希釈剤(2種類)の添加量を10〜20重量%の範囲で変えた場合であって、導電性組成物を硬化させた場合の比抵抗(Ω・cm)の値を示してある。
かかる図8の特性図から理解されるように、反応性希釈剤の種類によって、導電性組成物を硬化させた場合の比抵抗(Ω・cm)の値が変わっている。例えば、ラインBに示すように、脂肪族二官能エポキシ化合物では、比抵抗が約8×10-2〜1×10-1Ω・cmの範囲内の値であるのに対して、ラインAに示すように、芳香族単官能エポキシ化合物の場合には、比抵抗が約2×10-2〜5×10-2Ω・cmの範囲内の値となっている。
したがって、導電性組成物を硬化させた場合の比抵抗、すなわち導電性を、反応性希釈剤の種類を変えることによって微妙に調整することができる。
【0054】
(3)硬化剤
また、主剤が、エポキシ樹脂等の場合、硬化剤を添加することが好ましい。
このような硬化剤としては、イミダゾール化合物、二級アミン化合物、三級アミン化合物、変性脂肪族アミン化合物、エポキシ樹脂アミンアダクト化合物の一つまたは二種以上の組み合わせが挙げられる。
特に、エポキシ樹脂アミンアダクト化合物であれば、室温における潜在性が高い上に、60〜90℃において速硬化性であることから、好ましい硬化剤である。
なお、エポキシ樹脂アミンアダクト化合物の市販品としては、例えば、アミキュアPN−23、PN−31、PN−40、MY−24(以上、味の素ファインテクノ(株)製)、キュアダクトP−0505(四国化成工業(株))が挙げられる。
【0055】
また、かかる硬化剤の添加量を、エポキシ樹脂を100重量部に対して、10〜35重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる硬化剤の添加量が、10重量部未満の値になると、硬化が不十分となって、接着特性が著しく低下する場合があるためである。
一方、かかる硬化剤の添加量が、35重量部を超えた値になると、導電性が低下したり、潜在性が低下したりする場合があるためである。
したがって、かかる硬化剤の添加量を、エポキシ樹脂を100重量部に対して、13〜30重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、15〜25重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、硬化剤の添加量を決定するエポキシ樹脂の重量部は、反応性希釈剤を含む場合には、それも含んだ状態での総量を意味する。
【0056】
その他、参考のため、図9に、導電性組成物(樹脂組成は実施例1準拠)におけるエポキシ樹脂を100重量部とし、硬化剤としてのアミンアダクト化合物の添加量を13〜25重量部の範囲で変えた場合の、導電性組成物における硬化時の比抵抗(Ω・cm)の値を示してある。
かかる図9の特性図から理解されるように、硬化剤の添加量が多い程、導電性組成物を硬化させた場合の比抵抗(Ω・cm)の値が大きくなり、例えば、硬化剤の添加量が15重量部では比抵抗が約5×10-2Ω・cmであったものが、硬化剤の添加量が25重量部では、比抵抗が5×103Ω・cmとなっている。
したがって、導電性組成物を硬化させた場合の比抵抗、すなわち導電性組成物の導電性を、硬化剤の添加量によって調整することができる。
【0057】
3.添加剤
導電性組成物中に、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、金属イオン捕獲剤、粘度調整剤、無機フィラー、有機フィラー、カーボン繊維、着色剤、およびカップリング剤等を添加することも好ましい。
特に、導電性組成物は、導電粉を添加することによる酸化劣化が通常加速されるため、酸化防止剤として、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、またはリン酸エステル系酸化防止剤等を、全体量に対して、0.1〜10重量%の範囲内で添加することが好ましい。
【0058】
また、導電性組成物中に、シリカ粒子を添加することも好ましい。
このようなシリカ粒子としては、疎水性シリカや親水性シリカが挙げられる。
また、かかるシリカ粒子の添加量を、全体量に対して、0.1〜5重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるシリカ粒子の添加量が、0.1重量%未満の値になると、添加効果が発現しない
場合があるためである。
一方、かかるシリカ粒子の添加量が、5重量%以上の値になると、導電性が低下する場合があるためである。
したがって、かかるシリカ粒子の添加量を、全体量に対して、0.2〜3重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、0.5〜2重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
【0059】
その他、参考のため、図10に、導電性組成物(組成は実施例1準拠)の全体量を100重量%とし、シリカ粒子の添加量を0.5〜2.0重量%の範囲で変えるとともに、導電性組成物を硬化させた場合の比抵抗(Ω・cm)の値を示してある。
かかる図10の特性図から理解されるように、シリカ粒子の添加量が多い程、導電性組成物を硬化させた場合の比抵抗(Ω・cm)の値が若干大きくなり、例えば、シリカ粒子の添加量が0.5重量%では、比抵抗が約3×10-2Ω・cmであったものが、シリカ粒子の添加量が2.0重量%では、比抵抗が約7×10-2Ω・cmとなっている。
したがって、導電性組成物を硬化させた場合の比抵抗、すなわち導電性を、シリカ粒子の添加量によって微妙に調整することができる。
【0060】
4.密度
また、導電性組成物の密度を1.4〜3.5g/cm3の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、導電性組成物の密度が、1.4g/cm3未満の値になると、導電性が著しく低下する場合があるためである。
一方、かかる導電性組成物の密度が、3.5g/cm3を超えると、取り扱い性が低下したり、アルミニウム等の被着体から剥離しやすくなったりする場合があるためである。
したがって、導電性組成物の密度を、1.7〜3.0g/cm3の範囲内の値とすることがより好ましく、2.0〜2.5g/cm3の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0061】
5.製造方法
(1)混合分散工程
導電性組成物の製造方法は特に制限されるものではないが、例えば、プロペラミキサ、プラネタリーミキサ、三本ロール、ニーダー、スパチュラ等を利用して、樹脂中に、所定量の凹凸を備えた導電粉を混合分散して、製造することが好ましい。
【0062】
ここで、凹凸を備えた導電粉の凸部が折れないように、混合条件を制御することが好ましい。
例えば、図11に示すように、プタネタリーミキサを用いた場合、混合時間が10〜120分の範囲では、混合時間にかかわらず、硬化後に、一定の比抵抗を示す導電性組成物が得られていることが理解される。
一方、図12に直線で示すように、三本ロールを用いた場合、混練回数が1〜10回の範囲で、混練回数が多くなるにつれて、比抵抗の値が大きく変わっている。
これは、プタネタリーミキサの場合、凹凸を備えた導電粉の凸部にかかるせん断力があまり大きくないために、比較的長時間かかるものの、凹凸を備えた導電粉の形状を維持したまま、混合分散できることを意味している。
一方、三本ロールを用いた場合、凹凸を備えた導電粉の凸部にかかるせん断力が比較的大きいために、比較的短時間で分散できるものの、凸部が折れやすく、過度の混練回数、例えば、6回以上では、導電粉の形状が球状に近くなって、比抵抗が著しく上昇することが確認されている。
なお、凹凸を備えた導電粉に対して、有機酸または有機酸塩による表面処理を行わない場合、図12に点線で示すように、三本ロールによる混練回数が、例えば、3回以上で、導電粉の形状が球状に近くなって、比抵抗が著しく上昇することが確認されている。
よって、三本ロールと、プタネタリーミキサを組み合わせ、まず、1〜5回の混練回数で三本ロールによる混合分散を行い、その後、プラネタリーミキサで例えば10〜60分の範囲で混合分散を行い、その後三本ロールで、例えば1〜5回混練分散を行うことが好ましい。
【0063】
また、樹脂の粘度は1,000〜100,000mPa・secの範囲内の値にすることも好ましく、
さらにまた、導電粉と、樹脂とがより均一に混合するように、導電粉の周囲を予めカップリング剤処理することも好ましい。例えば、導電粉100重量部に対して、1〜10重量部のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン等を添加混合し、次いで、このようにカップリング剤処理した導電粉を、樹脂中に、混合分散することが好ましい。
【0064】
(2)濾過処理工程
また、凹凸を備えた導電粉と、樹脂とを均一に混合した後、フィルター等を用いて、導電粉の凝集物やゴミ等を濾過処理し、除去することが好ましい。
この理由は、導電粉の凝集物等を濾過処理することによって、ディスペンサー等を用いて導電性組成物を塗布する場合に、目つまりすることを有効に防止できるためである。
なお、本願発明の導電粉であれば、内部に核物質を含むとともに、所定の表面処理が施されていることにより、樹脂中に混合した場合であっても、凸部が折れにくいことから、凝集物の発生が少なく、例えば、目開き20〜200μmのメッシュフィルター等を用いて、容易に濾過処理することができるという利点がある。
【実施例】
【0065】
[実施例1]
1.導電粉および導電性組成物の製造
(1)針状突起を有する銀粉の製造
濃度1mol/リットルのL−アスコルビン酸水溶液50mlに対して、核物質生成用液体5mlを投入し、核物質入り還元液(核物質の平均粒径:約0.15μm)を作成した。
ここで、核物質生成用液体は、その全体量において、97.4重量%の水と、濃度28重量%のアンモニア水1.5重量%と、ゼラチン0.1重量%と、硝酸銀1重量%と、を、室温で、均一に混合攪拌して構成してある。
また、核物質入り還元液における核物質の平均粒径は、電子顕微鏡写真から算出した。
【0066】
次いで、図5に示す製造装置を用いて、濃度1mol/リットルの硝酸銀水溶液50mlと、核物質入り還元液50mlとをそれぞれ別々の挿入口から投入し、還元反応をさらに生じさせ、表面に針状突起を備えた銀粒子(平均粒径:3μm、凸部長さ:0.7μm)を得た。
次いで、析出生成した銀粒子100重量部に対して、有機酸塩としてのステアリン酸アンモニウムの処理量が、0.02重量部の割合になるように、水中に添加し、銀粒子に対して有機酸塩による表面処理を行った。
その後、表面処理を行った銀粒子を採取し、次いで水洗し、さらに、真空オーブン中100℃、3時間の条件で乾燥して、核物質として銀粒子を0.9重量%含む針状突起を有する表面処理銀粉(A1)を得た。
【0067】
(2)導電性組成物の製造
容器内に、ビスフェノールF型エポキシ樹脂であるEPICLON830−S(大日本インキ化学工業製)100重量部、硬化剤としてのアミキュアPN−23(味の素ファインテクノ(株)製)20重量部、反応性希釈剤としてのo−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル(YED−122、ジャパンエポキシレジン(株)製)40重量部および(1)で得られた表面処理銀粉(A1)170重量部を添加した後、スパチュラを用いて、大まかに混合した。
次いで、三本ロール(間隔30〜40μm)を2回通過させた後、プラネタリーミキサで30分間、さらに攪拌混合して、導電性組成物とした。
その後、目開き63μmのメッシュフィルターを備えた濾過装置を用いて、濾過処理を行い、実施例1の導電性組成物とした。
【0068】
2.導電粉および導電性組成物の評価
(1)粒度分布(評価1)
得られた表面処理銀粉(A1)を水中に均一に分散させ、その状態における粒度分布を、レーザー回折・散乱法粒度分布計 マイクロトラックHRA 9320−X100(日機装(株)製)を用いて測定した。また、得られた粒度分布曲線から、以下の基準に即して粒度分布性を評価した。
なお、評価に用いた粒度分布における標準偏差(SD)は、次式より求めた。
SD=(d84%−d16%)/2
d84%:粒度分布曲線において、累積値が84%となる時点の粒径(μm)
d16%:粒度分布曲線において、累積値が16%となる時点の粒径(μm)
◎:粒度分布における標準偏差が、銀粉の体積平均径の20%以内の値である。
○:粒度分布における標準偏差が、銀粉の体積平均径の30%以内の値である。
△:粒度分布における標準偏差が、銀粉の体積平均径40%以内の値である。
×:粒度分布における標準偏差が、銀粉の体積平均径50%を越える値である。
【0069】
(2)形状保持性1(評価2)
得られた表面処理銀粉(A1)を、25℃の蒸留水中に入れて放置し、その形状変化を観察して、以下の基準に即して形状保持性1を評価した。
◎:10時間以上の放置時間で、形状変化が観察されない。
○:5時間以上10時間未満の放置時間で、形状変化が観察される。
△:3時間以上5時間未満の放置時間で、形状変化が観察される。
×:3時間未満の放置により、形状変化が観察される。
【0070】
(3)形状保持性2(評価3)
得られた表面処理銀粉(乾燥前A1)を、25℃の蒸留水中に入れて、フィルターとして定性濾紙No.2(アドバンテック東洋(株)製)を備えた濾過装置を用いて濾過処理し、その濾過性から、以下の基準に即して形状保持性2を評価した。
◎:目つまりが全く観察されない。
○:濾過速度が若干遅くなるが、目つまりがほとんど観察されない。
△:濾過速度が相当遅くなり、目つまりが少々観察される。
×:濾過処理ができない状態である。
【0071】
(4)接着力(評価4)
得られた導電性組成物を、縦120mm×横25mm×厚さ2mmの銅版の端に、パターン状(縦12.5mm×横25mm×厚さ0.5mm)にスクリーン印刷した後、その上から縦120mm×横25mm×厚さ2mmの銅版を張り合わせた。
次いで、180℃×30分の条件で加熱硬化させて、接着力測定試料とした。
次いで、得られた接着力測定試料につき、テンシロン型万能試験機RTC−1310A((株)オリエンテック製)を用いて、引っ張りせん断力を測定した。
【0072】
(5)比抵抗(評価5)
得られた導電性組成物の比抵抗を、ガラス上に縦40mm、横1mm、厚さ0.1mmに印刷し、所定の温度で硬化させた後に2点間の抵抗を測定し、比抵抗を計算により求めた。
【0073】
[実施例2〜7]
実施例2〜7では、有機酸塩の種類(ミリスチン酸アンモニウム)および処理量の影響を検討した。
すなわち、実施例2では、析出生成した銀粒子100重量部に対して、有機酸塩(ミリスチン酸アンモニウム)の処理量を0.005重量部とした以外は、実施例1と同様に表面処理銀粉(A2)を製造して、評価した。
また、実施例3では、析出生成した銀粒子100重量部に対して、有機酸塩(ミリスチン酸アンモニウム)の処理量を0.05重量部とした以外は、実施例1と同様に表面処理銀粉(A3)を製造して、評価した。
また、実施例4では、析出生成した銀粒子100重量部に対して、有機酸塩(ミリスチン酸アンモニウム)の処理量を0.1重量部とした以外は、実施例1と同様に表面処理銀粉(A4)を製造して、評価した。
【0074】
また、実施例5では、析出生成した銀粒子100重量部に対して、有機酸塩(ステアリン酸アンモニウム)の処理量を0.5重量部とした以外は、実施例1と同様に表面処理銀粉(A5)を製造して、評価した。
また、実施例6では、析出生成した銀粒子100重量部に対して、有機酸塩(ステアリン酸アンモニウム)の処理量を3.0重量部とした以外は、実施例1と同様に表面処理銀粉(A6)を製造して、評価した。
さらに、実施例7では、析出生成した銀粒子100重量部に対して、有機酸塩(ステアリン酸アンモニウム)の処理量を0.001重量部とした以外は、実施例1と同様に表面処理銀粉(A7)を製造して、評価した。
【0075】
[比較例1]
比較例1では、実施例1における有機酸塩による表面処理を実施しなかった以外は、実施例1と同様に導電粉(針状突起を有する銀粉(B1))を製造して、評価した。
【0076】
[比較例2]
比較例2では、実施例1における核物質としての銀粒子を使用しなかった以外は、実施例1と同様に導電粉(針状突起を有する銀粉(B2))を製造して、評価した。
【0077】
【表1】
【0078】
[実施例8〜10]
実施例8〜10では、表2に示すように、導電粉の嵩密度の種類を変えた以外は、実施例1と同様に表面処理銀粉を製造して、評価した。
すなわち、実施例8では、図5に示す管状製造装置ではなく、ビーカー反応を用い、50mlの硝酸銀水溶液と、50mlの核物質入り還元液と、を300mlのビーカーに投入し、急いで攪拌した後、実施例1と同様に表面処理を行って、嵩密度が1.28g/cm3の表面処理銀粉(A8)を製造して、評価した。
また、実施例9では、還元液50mlに加えるジエタノールアミンの添加量を1gとし、銀粉の嵩密度を1.67g/cm3とした以外は、実施例1と同様に表面処理銀粉(A9)を製造して、評価した。
また、実施例10では、還元液50mlに加えるジエタノールアミンの添加量を2.5gとした以外は、実施例1と同様にして、嵩密度が2.23g/cm3の表面処理銀粉(A10)を製造して、評価した。
【0079】
【表2】
【0080】
[実施例11〜15]
実施例11〜15では、表3に示すように、導電粉を表面処理有機酸塩の種類を変えた以外は、実施例1と同様に表面処理銀粉を製造して、評価した。
すなわち、実施例11では、有機酸塩の種類をアジピン酸アンモニウムとした以外は、実施例1と同様に表面処理銀粉(A11)を製造して、評価した。
また、実施例12では、有機酸塩の種類をオレイン酸アンモニウムとした以外は、実施例1と同様に表面処理銀粉(A12)を製造して、評価した。
【0081】
また、実施例13では、有機酸塩の種類を安息香酸アンモニウムとした以外は、実施例1と同様に表面処理銀粉(A13)を製造して、評価した。
また、実施例14では、有機酸塩の種類をマレイン酸アンモニウムとした以外は、実施例1と同様に表面処理銀粉(A14)を製造して、評価した。
さらに、実施例15では、有機酸塩の種類をクエン酸アンモニウムとした以外は、実施例1と同様に表面処理銀粉(A15)を製造して、評価した。
【0082】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上説明したように、本発明の導電粉によれば、導電粉の内部に核物質を含有させるとともに、所定の表面処理を施すことによって、形状保持性がさらに優れ、しかも、樹脂中に混合した場合であっても、凸部が折れにくくなった。
また、本発明の導電性組成物によれば、内部に核物質を含有させるとともに、所定の表面処理を施した導電粉を所定量含むことにより、得られる比抵抗が低い上に、製造が容易な導電性組成物が得られるようになった。
【0084】
したがって、本発明の導電性組成物であれば、各種電気製品、電子製品、自動車製品等の用途において、好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1(a)〜(b)は、それぞれ本発明における導電粉の一例の電子顕微鏡写真(倍率500、5000)である。
【図2】図2(a)〜(c)は、それぞれ本発明の別の導電粉(3種類)の電子顕微鏡写真(各倍率4000、8000、4000)である。
【図3】図3(a)〜(b)は、それぞれ導電粉における核粒子の一例の電子顕微鏡写真(倍率10000、50000)である。
【図4】図4は、導電粉の平均粒径と、導電性組成物における硬化時の比抵抗との関係を示す特性図である。
【図5】図5は、導電粉の製造装置の一例を説明するために供する図である。
【図6】図6は、導電粉における核粒子の添加量と、導電粉の平均粒径との関係を示す特性図である。
【図7】図7は、導電粉の添加量と、導電性組成物における硬化時の比抵抗との関係を説明するために供する図である。
【図8】図8は、導電性組成物における反応性希釈剤の添加量と、導電性組成物における硬化時の比抵抗との関係を説明するために供する図である。
【図9】図9は、導電性組成物における硬化剤の添加量と、導電性組成物における硬化時の比抵抗との関係を説明するために供する図である。
【図10】図10は、導電性組成物におけるシリカ粒子の添加量と、導電性組成物における硬化時の比抵抗との関係を説明するために供する図である。
【図11】図11は、プラネタリーミキサの混錬時間と、導電性組成物における硬化時の比抵抗との関係を説明するために供する図である。
【図12】図12は、三本ロールの混練回数と、導電性組成物における硬化時の比抵抗との関係を説明するために供する図である。
【図13】図13(a)〜(b)は、それぞれ導電性組成物の濾過装置におけるフィルターの目つまり状態を示す電子顕微鏡写真(倍率40倍)である。
【符号の説明】
【0086】
10:管状製造装置
11:金属塩溶液タンク
12:還元剤タンク
13:金属塩溶液
14:還元剤
15、16:流量弁
17、18:小径のパイプ
20:大径のパイプ
21:水冷ジャケット
22:水
23:タンク
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸を備えた導電粉および導電性組成物に関し、特に、特定の表面処理が施してあって、かつ所定の嵩密度を有する凹凸を備えた導電粉、およびそのような導電粉を用いた導電性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、厚膜用ペーストや導電性接着剤等の用途において、所定量の金属粉末を樹脂中に混合分散させてなる導電性組成物が使用されている。
このような導電性組成物に使用される金属粉末としては、例えば、第1工程において、金属塩溶液を還元して、金属超微粒子を形成した後、第2工程において、当該金属超微粒子の存在下に、金属をさらに還元析出させて得られる二次凝集が少ない、球状の金属微粒子が知られている(例えば、特許文献1〜2参照)。
【0003】
一方、本発明の発明者らは、このような金属微粒子を改良すべく、放射状に延設された凸部と、当該凸部の間隙に凹部と、を備えるとともに、以下のいずれかの特徴を有する導電粉を提案している(例えば、特許文献3参照)。
(1)隣接する導電粉間で、当該凸部と、凹部とが相互に嵌合連結する導電粉である(第1特徴)。
(2)凸部の形状が、針状、桿状、又は花弁状からなる群から選択される少なくとも一つの形状である導電粉である(第2特徴)。
(3)樹脂を含んだ状態での比抵抗が5×10-6〜1×10-3Ω・cmの範囲内の値である導電粉である(第3特徴)。
【0004】
さらに、本発明の発明者らは、放射状に延設された凸部と、当該凸部の間隙に凹部と、を備えるとともに、内部に、導電材料としての銀またはニッケルを結晶成長させるための核物質であって、当該核物質として、金属系粒子またはセラミック系粒子を含んでなる銀またはニッケルを含む導電粉を提案している(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開平10−317022号 (特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平11−140511号 (特許請求の範囲)
【特許文献3】WO 02/061766号 (特許請求の範囲)
【特許文献4】特許第3828787号 (特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜2に開示された金属微粒子は、いずれも球状であって、隣接する金属粉末同士の表面における点接触を利用して、電気接続することを意図しているため、接触面積が小さく、樹脂を含んだ状態において接続導体間で得られる導通抵抗の値が大きいという問題が見られた。したがって、従来の導電性組成物においては、金属粉末(金属微粒子)を多量に添加しなければならず、そのために、導電性組成物の粘度が上昇し、取り扱いが困難になるという問題が見られた。
また、特許文献1〜2に開示された金属微粒子は、第1工程において形成した3〜1000nm程度の金属超微粒子を使用するため、かかる金属超微粒子の粒径がばらつくと、第2工程において得られる金属微粒子の平均粒径や粒度分布についても、さらに大きくばらつくという問題も見られた。
【0006】
また、特許文献3に開示された導電粉は、放射状に延設された凸部と、当該凸部の間隙に凹部と、を備えることにより、特許文献1〜2に開示された球状の金属微粒子と比較して、樹脂を含んだ状態での比抵抗は低いものの、粒度分布が若干広くなるとともに、凸部が損傷しやすく、より良好な取り扱いが望まれていた。
【0007】
一方、特許文献4に開示された導電粉は、核物質を含むことから、粒度分布が狭くなるとともに、比重や比抵抗の調整が容易であるものの、樹脂中に混合した場合に、未だ凸部が損傷して、折れやすいという問題が見られた。
したがって、導電性組成物を作成するに際して、樹脂に対する導電粉の分散条件によっては、凸部が折れてしまい、図13(a)および(b)に示すように、凝集物となって、濾過処理する際に、フィルターが目つまりしやすいという問題が見られた。
なお、図13(a)および図13(b)は、それぞれフィルターが目つまりした異なる箇所における顕微鏡写真である。
【0008】
ここで、従来の導電性組成物は、通常、導電粉を80重量%程度含んでいる一方、作業性を向上させるためには、粘度を低くする必要があり、比重の重い導電粉が沈降しやすくなって、接着剤成分から分離し、そのために電気特性が安定しないという問題が見られた。
したがって、従来の導電性組成物を、例えば、電気駆動装置におけるアルミニウム筐体と、駆動軸を含む駆動体との間の電気的接続部材として用いた場合、電気特性が安定しないことから、駆動軸の高速回転により発生した静電気がたまりやすくなり、それに起因して、電気駆動装置において誤作動が起きやすいという問題が見られた。
【0009】
そこで、本発明者らは鋭意検討した結果、導電粉の内部に核物質を含有させるとともに、所定の表面処理を施すことにより、所定の嵩密度を有するとともに、形状保持性が優れ、しかも、導電性組成物を作成するに際して、樹脂中に混合した場合であっても、凸部が折れにくくなって、安定的に濾過処理できることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、所定の嵩密度を有するとともに、優れた形状保持性を有し、かつ凸部が折れにくい導電粉、およびそのような導電粉を用いた密度が小さな導電性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、主成分が銀またはニッケルであって、表面に凸部を備えるとともに、内部に、導電材料を結晶成長させるための核物質としての金属系粒子またはセラミック系粒子を含んでなる導電粉であって、少なくとも表面に対して、有機酸または有機酸塩による処理が施してあり、かつ、嵩密度が0.5〜2.5g/cm3の範囲内の値であることを特徴とする導電粉が提供され、上述した問題を解決することができる。
すなわち、所定の嵩密度を有する導電粉において、内部に核物質を含むとともに、所定の表面処理が施されていることにより、形状保持性に優れ、樹脂中に混合した場合であっても、凸部が折れにくいという特性を発揮することができる。
したがって、導電性組成物を作成するに際して、樹脂中に混合した場合であっても、凸部が折れにくくなって、フィルター等を用いて、容易に濾過処理することができる。
また、所定の核物質を所定量含むことにより、比重や比抵抗の調整についても容易となり、導電性組成物を作成する際に、樹脂中への分散効果に優れるとともに、比較的少量の添加で良好な導電性が得られる導電粉とすることができる。
【0011】
また、本発明の導電粉を構成するにあたり、導電粉100重量部に対して、有機酸または有機酸塩の処理量を0.001〜5重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
このように有機酸または有機酸塩の処理量を調整して構成することにより、導電粉の形状保持性と、導電率との間のバランスについて、さらに良好なものとなる。
【0012】
また、本発明の導電粉を構成するにあたり、有機酸または有機酸塩が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、およびミリスチン酸塩からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
このように有機酸または有機酸塩の種類を制限して構成することにより、導電粉の形状保持性と、導電率との間のバランスについて、さらに良好なものとなる。
なお、有機酸塩を使用することによって、水相中での導電粉の表面処理が可能となる。
【0013】
また、本発明の導電粉を構成するにあたり、核物質の添加量を、全体量に対して、0.0001〜10重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
このように核物質の添加量を調整して構成することにより、粒度分布がさらに狭い導電粉とすることができるとともに、導電粉の比重や比抵抗の調整についてもさらに容易となる。
【0014】
また、本発明の別の態様は、主成分が銀またはニッケルであって、表面に凸部を備えるとともに、内部に、導電材料を結晶成長させるための核物質としての金属系粒子またはセラミック系粒子を含んでなる導電粉と、樹脂と、を含む導電性組成物であって、
導電粉の少なくとも表面に対して、有機酸または有機酸塩による処理が施してあり、
かつ、導電粉の嵩密度を0.5〜2.5g/cm3の範囲内の値とすることを特徴とする導電性組成物である。
すなわち、このように特定の表面処理が施されているとともに、所定の嵩密度を有する導電粉と、樹脂と、から導電性組成物を構成することにより、導電粉を樹脂中に容易に混合できるとともに、凸部が折れにくいという効果を得ることができる。
したがって、フィルター等を用いて、容易かつ迅速に濾過処理することができる一方、比較的少ない導電粉の添加であっても、導電性に優れた導電性組成物を効率的に得ることができる。
【0015】
また、本発明の導電性組成物を構成するにあたり、樹脂(硬化剤があれば、硬化剤を含む。)100重量部に対して、導電粉の添加量を40〜200重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
このように導電粉の添加量を調整して構成することにより、導電粉が沈降して、分離せず、導電性と、経済性との間のバランスにさらに優れた導電性組成物を得ることができる。
また、導電粉の添加量がかかる範囲であれば、導電性組成物を作成するに際して、フィルター等を用いて、容易かつ迅速に濾過処理することも可能となる。
【0016】
また、本発明の導電性組成物を構成するにあたり、密度を1.4〜3.5g/cm3の範囲内の値とすることが好ましい。
このように密度を調整して構成することにより、使い勝手に優れるとともに、軽量化が図られた導電性組成物を得ることができる。
【0017】
また、本発明の導電性組成物を構成するにあたり、樹脂として、主剤としてのビスフェノールF型エポキシ樹脂と、硬化剤としてのアミンアダクト化合物と、反応性希釈剤と、を含むとともに、25℃における粘度を1,000〜100,000mPa・secの範囲内の値とすることが好ましい。
このように特定樹脂組成物を含んで構成することにより、粘度が低く、フィルター等を用いて、容易かつ迅速に濾過処理することができるとともに、ディスペンサー等を用いた注入が可能な導電性組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、主成分が銀またはニッケルであって、表面に凸部を備えるとともに、内部に、導電材料を結晶成長させるための核物質としての金属系粒子またはセラミック系粒子を含んでなる導電粉であって、少なくとも表面に対して、有機酸塩による処理が施してあり、かつ、嵩密度が0.5〜2.5g/cm3の範囲内の値であることを特徴とする導電粉である。
以下、構成要件ごとに分けて、導電粉についての実施態様を具体的に説明する。
【0019】
1.形状
(1)凸部
凸部(突起と称する場合がある。)は、図1(a)〜(b)、あるいは、図2(a)〜(c)にそれぞれの顕微鏡写真を示すように、針状、桿状(棒状や竿状を含む。)、又は花弁状からなる群から選択される少なくとも一つの形状であることが好ましい。
この理由は、このように凸部を構成することにより、隣接する導電粉間で、凸部と凹部とが容易に嵌合連結することができ、導電経路の形成が容易となるためである。
また、針状の凸部を有する銀粉と、桿状の凸部を有する銀粉と、花弁状の凸部を有する銀粉とを組合せることにより、導電経路の形成が容易となって、比抵抗がさらに低下することが判明している。
【0020】
(2)凹部
また、凸部の間に、凹部(窪みと称する場合がある。)を設けることも好ましいが、その場合、図1(a)〜(b)、あるいは、図2(a)〜(c)にそれぞれの顕微鏡写真を示すように、凸部の間隙に設けられた窪み形状であって、凸部と嵌合連結可能な形状であることが好ましい。
この理由は、このように構成することにより、隣接する導電粉間で、凸部と凹部とが容易に嵌合連結することができ、導電経路の形成がさらに容易となるためである。
また、凹部の深さ(大きさ)を導電粉に占める凹部の体積、すなわち凹部からなる空隙率で表すことが可能である。具体的に、凸部の先端を囲む閉曲面からなる球の体積を100容量%としたときに、凹部からなる空隙率を40容量%以上の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる凹部からなる空隙率が40容量%未満の値となると、凸部と、凹部との嵌合連結が不十分となる場合があるためである。一方、かかる凹部からなる空隙率が過度に大きくなると、導電粉の機械的強度が著しく低下する場合があるためである。
したがって、凹部からなる空隙率を42〜70容量%の範囲内の値とすることがより好ましく、45〜60容量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0021】
2.核物質
(1)種類
核物質が、有機系粒子、金属系粒子、およびセラミック系粒子の群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
この理由は、有機系粒子や金属系粒子を使用することにより、比重や粒径の調整が容易になるばかりか、形状保持性や比抵抗の調整についても容易になるためである。さらに、セラミック系粒子を使用することにより、比重や粒径の調整が容易になるばかりか、形状保持性や耐熱性等の特性についてもさらに向上させることができるためである。
【0022】
ここで、有機系粒子としては、スチレン系粒子、アクリル系粒子、ポリカーボネート粒子、オレフィン系粒子、シリコーン系粒子、ウレタン系粒子、タンパク質粒子、セルロース系粒子、ゴム系粒子、ポリアミド系粒子、フッ素系粒子、フェノール系粒子、黒鉛、活性炭等の一種単独または二種以上の組合せが挙げられる。
また、金属系粒子としては、銀粒子、金粒子、銅粒子、アルミニウム粒子、亜鉛粒子、半田粒子、錫粒子、ニッケル粒子等の一種単独または二種以上の組合せが挙げられる。
さらに、セラミック系粒子としては、シリカ粒子(ホワイトカーボン)、酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化亜鉛粒子、酸化スズ粒子、酸化ニオブ粒子等の一種単独または二種以上の組合せが挙げられる。
なお、一例であるが、図3に示すような球状の銀粒子であって、単分散銀粒子であることが好ましい。
この理由は、かかる球状かつ単分散の銀粒子を核成長の中心として、放射状に凸部を均一に延設することができ、粒度分布がさらに狭く、かつ形状保持性に優れた導電粉を得ることができるためである。
【0023】
(2)平均粒径
また、核物質の平均粒径を0.01〜10μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる核物質の平均粒径が0.01μm未満の値になると、核物質を中心として、放射状に凸部を均一に延設することが困難になる場合があるためである。一方、かかる核物質の平均粒径が10μmを超えると、導電粉の比重や粒径の調節が困難になったり、あるいは、核物質を中心として、放射状に凸部を均一に延設したりすることが困難になる場合があるためである。
したがって、核物質の平均粒径を0.05〜5μmの範囲内の値とすることがより好ましく、0.1〜0.5μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、核物質の平均粒径は、例えば、電子顕微鏡写真をもとに、画像処理装置によって、容易に測定することができる。
【0024】
(3)添加量
また、核物質の添加量を、全体量に対して、0.0001〜10重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる核物質の添加量が0.0001重量%未満の値になると、核物質を中心として、放射状に凸部を均一に延設することが困難になる場合があるためである。一方、かかる核物質の添加量が10重量%を超えると、導電粉の比抵抗が著しく上昇する場合があるためである。
したがって、核物質の添加量を、全体量に対して、0.001〜5重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、0.01〜1重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、核物質の添加量は、例えば、電子線マイクロアナライザー(EPMA)を用いて測定することができる。
【0025】
3.平均粒径
また、導電粉の平均粒径を0.1〜22μm未満の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる導電粉の平均粒径が0.1μmとなると、所定の比抵抗を得るために、多量の導電粉を必要とする場合があるためである。一方、かかる導電粉の平均粒径が22μmを超えると、樹脂中に均一に混合分散することが困難となったり、製造時間が過度に長くなったりする場合があるためである。
したがって、導電粉の平均粒径を0.5〜15μmの範囲内の値とすることがより好ましく、1〜6μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、導電粉の平均粒径は、レーザー回折・散乱法粒度分布測定装置により測定することができるし、あるいは電子顕微鏡写真から実測することもでき、さらには、当該電子顕微鏡写真から、画像処理装置を用いて算出することもできる。
【0026】
また、参考のため、図4に、導電性組成物(樹脂組成は実施例1準拠)の全体量を100重量%とし、導電粉(導電粉は実施例1準拠)の平均粒径を1〜6μmの範囲で変えた場合の、導電性組成物における硬化時の比抵抗の値(Ω・cm、表記上、例えば、1×10-1Ω・cmを1×E−1Ω・cmとしてある。以下、同様である。)を示してある。
かかる図4の特性図から理解されるように、導電粉の平均粒径が2〜6μmの場合に、比抵抗の値がより低くなる傾向が見られている。
したがって、導電性組成物を硬化させた場合の比抵抗、すなわち導電性を、導電粉の平均粒径によって微妙に調整できることが理解される。
【0027】
4.導電粉の種類
また、導電粉の種類としては、主成分を銀またはニッケルとすれば良く、副成分として、金、銅、アルミニウム、鉄、ジルコニウム、タングステン、スズ、鉛、半田等の一種単独または二種以上をさらに含有することができる。
この理由は、銀およびニッケルを主成分とすることにより、好適な比抵抗が得られやすいばかりか、比較的安価な導電粉を提供することができるためである。
また、主成分が、銀およびニッケルであれば、樹脂、特にエポキシ系樹脂やアクリル系樹脂との混合分散性に優れているためである。
【0028】
5.有機酸または有機酸塩による処理
また、導電粉を構成するにあたり、導電粉の表面、特に導電粉の凸部に対して、有機酸または有機酸塩による処理が施してあることを特徴とする。
この理由は、所定の表面処理が施されていることにより、形状保持性に優れ、樹脂中に混合した場合であっても、凸部が折れにくいという特性を発揮することができるためである。
すなわち、内部に核物質を含むとともに、所定の表面処理が施されていることにより、形状保持性に優れ、樹脂中に混合した場合であっても、凸部が折れにくいという特性を発揮することができる。したがって、導電性組成物を作成するに際して、樹脂中に混合した場合であっても、凸部が折れにくくなって、凝集物の発生を抑えることから、安定的に濾過処理をすることができる。
また、所定の核物質を所定量含むことにより、導電粉の比重や比抵抗の調整についても容易となるためである。
【0029】
また、有機酸または有機酸塩としては、カルボキシル基またはそれが塩基によって塩となった化合物であれば特に制限されるものでないが、具体的に、飽和脂肪酸、飽和脂肪酸塩、不飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸塩、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸塩、芳香族カルボン酸、芳香族カルボン酸塩等が挙げられる。
また、飽和脂肪酸および飽和脂肪酸塩であることがより好ましく、より具体的には、コハク酸、グルタン酸、アジピン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、コハク酸塩、グルタン酸塩、アジピン酸塩、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、およびオレイン酸塩からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
この理由は、このような飽和脂肪酸または飽和脂肪酸塩を用いることにより、導電粉の形状保持性と、導電率との間のバランスについて、さらに良好なものとなるためである。
特に、比較的少量の使用であっても、優れた表面処理効果が得られることから、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩からなる群から選択される少なくとも一つであっても好ましい。
【0030】
また、有機酸塩を主として使用することにより、水中での導電粉の表面処理が可能となることから、より好ましいと言える。
特に、有機酸塩として、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、およびステアリン酸塩であれば、比較的少量の水中での添加によって、優れた表面処理効果が得られ、導電性の低下が少ないことから、好ましい有機酸塩である。
【0031】
6.比抵抗
また、樹脂を含んだ状態での導電粉の比抵抗を1×10-5〜1×10-1Ω・cmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる比抵抗が1×10-5Ω・cm未満の値になると、使用可能な導電粉の種類が過度に制限されたり、好適な導電粉の製造上の歩留まりが過度に低下したりする場合があるためである。
一方、かかる比抵抗が1×10-1Ω・cmを超えると、使用時の導通抵抗が高くなり、駆動電圧が高くなる場合があるためである。
したがって、樹脂を含んだ状態での導電粉の比抵抗を1×10-4〜5×10-2Ω・cmの範囲内の値とすることがより好ましく、5×10-4〜1×10-2Ω・cmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、樹脂を含んだ状態での導電粉の比抵抗は、後述する実施例1に示す測定方法により測定することができる。
【0032】
7.嵩密度
また、導電粉の嵩密度を嵩密度が0.5〜2.5g/cm3の範囲内の値とすることを特徴とする。
この理由は、かかる導電粉の嵩密度が0.5g/cm3未満の値になると、導電粉の形状保持性が著しく低下したり、製造工程が複雑化したり、製造時の歩留まりが著しく低下したりする場合があるためである。
一方、かかる導電粉の嵩密度が2.5g/cm3を超えると、樹脂中への分散が著しく困難となったり、導電性が低下したりする場合があるためである。
したがって、導電粉の嵩密度を1.3〜2.3g/cm3の範囲内の値とすることがより好ましく、1.5〜2.0g/cm3の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、かかる導電粉の嵩密度は、JIS K5101 タップ法に準拠して測定することができる。
【0033】
8.製造方法
導電粉を製造するにあたり、いわゆる多段階液相還元法を採用することが好ましい。
すなわち、第1工程で、所定量の還元剤を用いるとともに、所定の還元条件において、金属塩溶液中の金属塩や、金属錯体中の金属錯体等を還元反応させることにより、核物質としての導電粉を作成する。
次いで、第2工程で、この核物質としての導電粉をもとに、所定の金属塩と、所定の還元剤とを、所定の還元条件において反応させることにより、凹凸を備えた導電粉を析出させる。
さらに、得られた凹凸を備えた導電粉に対して、有機酸または有機酸塩による表面処理を実施することにより、本願発明の導電粉を製造することができる。
【0034】
(1)第1工程
(1)−1 金属塩溶液
第1の工程で用いる金属塩溶液(金属錯体溶液を含む)中の金属濃度を、通常、0.01〜1mol/リットルの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる金属濃度が0.01mol/リットル未満の値となると、必要な核物質量が得られない場合があるためである。一方、かかる金属濃度が1mol/リットルを越えると、核物質の形状を制御することが困難となって導電粉の生産性が低下する場合があるためである。
したがって、金属塩溶液中の金属濃度を0.03〜0.5mol/リットルの範囲内の値とすることがより好ましく、0.05〜0.1mol/リットルの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0035】
(1)−2 還元剤
第1の工程で用いる還元剤としては、ホルムアルデヒド、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン、ヒドラジン化合物、ヒドロキノン、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸塩、ギ酸、無水亜硫酸ナトリウム、L(+)酒石酸、ギ酸アンモニウム、ロンガリット等の一種単独または二種以上の組合せが挙げられる。
これらの還元剤のうち、還元反応を容易に制御しやすいことから、L−アスコルビン酸、あるいは、L−アスコルビン酸とピロカテコールとの組合せを使用することがより好ましい。
【0036】
(2)第2工程
(2)−1 金属塩溶液
第2の工程で用いる金属塩溶液(金属錯体溶液を含む。)中の金属濃度を、通常、0.01〜5mol/リットルの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる金属濃度が0.01mol/リットル未満の値となると、導電粉の析出量が著しく低下し、導電粉の生産性が低下する場合があるためである。一方、かかる金属濃度が5mol/リットルを超えると、導電粉の形状を制御することが困難となって、同様に導電粉の生産性が低下する場合があるためである。したがって、金属塩溶液中の金属濃度を0.1〜3mol/リットルの範囲内の値とすることがより好ましく、0.3〜2mol/リットルの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0037】
また、形成する凸部の形状に対応させて、金属塩溶液中の金属濃度を適宜調整することも好ましい。
例えば、針状や桿状の凸部を有する導電粉を製造する場合には、金属塩溶液中の金属濃度を0.8〜2mol/リットルの範囲内の値とすることによって、所望の凸部を容易に形成することができる。また、例えば、花弁状の凸部を有する導電粉を製造する場合には、金属塩溶液中の金属濃度を0.3〜0.7mol/リットルの範囲内の値とすることによって、花弁状の凸部を容易に形成することができる。
【0038】
(2)−2 還元剤
また、第2の工程で用いる還元剤として、ホルムアルデヒド、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン、ヒドラジン化合物、ヒドロキノン、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ナトリウム、ピロカテコール、ブドウ糖、次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、亜硫酸塩、ギ酸、無水亜硫酸ナトリウム、L(+)酒石酸、ギ酸アンモニウム、ロンガリット等の一種単独または二種以上の組合せが挙げられる。
これらの還元剤のうち、還元反応を容易に制御しやすいことから、L−アスコルビン酸、あるいは、L−アスコルビン酸とピロカテコールとの組合せを使用することがより好ましい。
【0039】
また、このような還元剤の濃度を0.01〜5mol/リットルの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる還元剤の濃度が0.01mol/リットル未満の値となると、導電粉の析出量が著しく低下し、導電粉の生産性が低下する場合があるためである。一方、かかる還元剤の濃度が5mol/リットルを超えると、導電粉の形状を制御することが困難となって、同様に導電粉の生産性が低下する場合があるためである。
したがって、還元剤の濃度を0.1〜3mol/リットルの範囲内の値とすることがより好ましく、0.3〜2mol/リットルの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、形成する凸部の形状に対応させて、還元剤の濃度を適宜調整することも好ましい。例えば、針状の凸部を有する導電粉を製造する場合には、還元剤の濃度を0.8〜2mol/リットルの範囲内の値とすることによって、針状の凸部を容易に形成することができる。また、例えば、桿状や花弁状の凸部を有する導電粉を製造する場合には、還元剤の濃度を0.3〜0.7mol/リットルの範囲内の値とすることによって、所望の凸部を容易に形成することができる。
【0040】
(2)−3 製造装置
また、第2工程を実施するにあたり、図5に示す管状製造装置10を用いることが好ましい。
かかる管状製造装置10は、複数のパイプを利用しており、大径のパイプ20内に、金属塩溶液13を導入するための小径のパイプ17と、還元剤14を導入するための小径のパイプ18と、がそれぞれ挿入されて、所定位置に配置されている。
そして、小径のパイプ17から導入された金属塩溶液13と、小径のパイプ18から導入された還元剤74とを、流動状態において、大径のパイプ20内で混合反応させる仕様である。
したがって、大径のパイプ20の周囲に設けた水冷ジャケット21によって、大径のパイプ20を所定温度に冷却しながら、そこで得られた核粒子をタンク23に補集することができる。
【0041】
(2)−4 核物質
また、第2の工程で、上述した核物質として導電粉を用いるにあたり、金属塩溶液か、あるいは還元剤のいずれかに混合した状態で使用することができる。
その際、図6に示すように、核物質として導電粉の使用量が多いほど、凹凸を備えた導電粉の平均粒径が小さくなることが判明している。
例えば、還元剤中に、核物質として、導電粉を1mol/リットル濃度の還元剤溶液1リットルに対して、0.06g使用すると、凹凸を備えた導電粉の平均粒径は約3μmとなる。
また、核物質として、導電粉を1mol/リットル濃度の還元剤溶液1リットルに対して、0.16g使用すると、凹凸を備えた導電粉の平均粒径は約2μmとなる。
よって、核物質として導電粉の使用量を、例えば、1mol/リットル還元剤濃度の還元溶液1リットルに対して、0.001〜0.8gの範囲で使用することにより、凹凸を備えた導電粉の平均粒径を1〜6μmの範囲内の値に容易に調整することができる。
【0042】
(2)−5 還元温度
また、第2の工程において、還元処理を実施する際の還元温度(反応温度)を0〜50℃の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる還元温度が0℃未満の値となると、導電粉の析出量が著しく低下し、導電粉の生産性が低下する場合があるためである。一方、かかる還元温度が50℃を超えると、導電粉の形状を制御することが困難となって、同様に導電粉の生産性が低下する場合があるためである。
したがって、かかる還元温度を5〜40℃の範囲内の値とすることがより好ましく、10〜30℃の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、導電粉の粒径を比較的小さくするとともに、粒度分布をさらに狭くしたい場合には、還元処理を実施する際の還元温度を0〜8℃の範囲内の値とすることが好ましい。
【0043】
(3)表面処理工程
多段階液相還元法を用いた第1の工程および第2の工程を経て得られた導電粉に対して、有機酸または有機酸塩による表面処理を実施する。
その際、液相還元法を実施した容器内に、有機酸または有機酸塩を直接的に投入して、得られた導電粉に対して、有機酸または有機酸塩による表面処理を実施することが好ましい。
このように実施すると、得られた導電粉を外部に取り出すことなく所定の表面処理が行えることより、導電粉の所定形状を維持しやすくなるためである。
また、有機酸塩を用いた場合には、液相が水相であっても、容易に溶解することができ、水系の液相還元法により得られた導電粉について、所定形状を維持しやすくなる。
【0044】
なお、導電粉に対して、有機酸または有機酸塩による表面処理を実施するに際して、導電粉100重量部に対して、有機酸または有機酸塩の処理量を0.001〜5重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、このように有機酸または有機酸塩の処理量を調整して構成することにより、導電粉の形状保持性と、導電率との間のバランスについて、さらに良好なものとなるためである。
すなわち、有機酸または有機酸塩の処理量を過度に少なくすると、導電粉の形状保持性が低下し、凸部が折れやすくなって、導電性組成物を作成するに際して、フィルター等を用いて、容易に濾過処理することが困難となる場合があるためである。
一方、有機酸または有機酸塩の処理量を過度に多くすると、電気接点において、電気絶縁性の有機酸または有機酸塩が介在しやすくなり、導電性組成物を作成した際に、導電性が低下する場合があるためである。
したがって、有機酸または有機酸塩の処理量を、導電粉100重量部に対して、0.01〜1重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、0.05〜0.5重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0045】
(4)乾燥工程
また、所定の表面処理を行った導電粉に対して、乾燥工程を設けて、加熱処理することが好ましい。すなわち、例えば、液相還元法で得られた導電粉に対して、所定の表面処理を実施した後、30℃以上の温度で、30分以上加熱処理することが好ましい。
この理由は、かかる加熱処理によって、導電粉の内部に残留する液体、例えば、水等を効果的に飛散させることができ、その結果、導電粉の形状保持性を著しく向上させることができるためである。逆に言えば、液相還元法で得られた導電粉をそのまま湿潤状態に放置しておくと、導電粉の形状が崩れ易いためである。
したがって、より優れた形状保持性を得るためには、真空オーブンや恒温槽を用いて、40〜150℃の温度で、1〜48時間程度加熱処理を実施することが好ましい。
【0046】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、主成分が銀またはニッケルであって、表面に凸部を備えるとともに、内部に、導電材料を結晶成長させるための核物質としての金属系粒子またはセラミック系粒子を含んでなる導電粉と、樹脂と、を含む導電性組成物であって、導電粉の少なくとも表面に対して、有機酸または有機酸塩による処理が施してあり、かつ、導電粉の嵩密度を0.5〜2.5g/cm3の範囲内の値とすることを特徴とする導電性組成物である。
以下、構成要件ごとに分けて、導電性組成物についての実施態様を具体的に説明する。
【0047】
1.導電粉
(1)態様
第1の実施形態と同様の凹凸を備えた導電粉が使用できるため、ここでの説明は省略する。
【0048】
(2)添加量
樹脂に対する導電粉の添加量は、使用用途等に応じて適宜選択することができるが、通常、樹脂100重量部に対して、40〜200重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる導電粉の添加量が40重量部未満となると、得られる導電性組成物の比抵抗が過度に大きくなる場合があるためである。一方、かかる導電粉の添加量が200重量部を超えると、得られる導電性組成物の接着強度が低下したり、粘度が過度に上昇し、取り扱いが困難となったりする場合があるためである。
したがって、導電粉の添加量を、樹脂100重量部に対して、60〜150重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、80〜120重量部の範囲内の値とすることが好ましい。
【0049】
その他、参考のため、図7に、導電性組成物(樹脂組成は、実施例1準拠)の全体量を100重量%とし、導電粉の添加量を50〜65重量%の範囲で変えた場合における、硬化させた導電性組成物の比抵抗(Ω・cm)の値を示してある。
かかる図7の特性図から理解されるように、導電粉の添加量が多い程、導電性組成物を硬化させた場合の比抵抗(Ω・cm)の値が小さくなり、例えば、導電粉の添加量が50重量%では、比抵抗が約5×10-2Ω・cmであったものが、導電粉の添加量が60重量%では、比抵抗が約1×10-2Ω・cmとなっている。
したがって、導電性組成物を硬化させた場合の比抵抗、すなわち導電性組成物の導電性を、導電粉の添加量によって調整することができる。
【0050】
2.樹脂
(1)主剤
導電性組成物を構成する樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂、エポキシ系樹脂、オキセタン系樹脂、フェノール系樹脂、シアネートエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS樹脂)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS樹脂)、およびスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS樹脂)等の一種単独または二種以上の組合せが挙げられる。
これらの樹脂のうち、特に、エポキシ系樹脂を主成分とした熱硬化系樹脂であることがより好ましい。
この理由は、かかる熱硬化系樹脂であれば、使用時の粘度が低くて取り扱いが容易であるばかりか、熱硬化させることにより、さらに好適な比抵抗や機械的特性を、長期間にわたって得ることができるためである。
【0051】
(2)反応性希釈剤
また、導電性組成物を構成する樹脂が、反応性希釈剤を含むことが好ましい。
このような反応性希釈剤としては、脂肪族単官能エポキシ化合物、脂肪族二官能エポキシ化合物、芳香族単官能エポキシ化合物等の一つまたは二種以上の組み合わせが挙げられる。
より具体的には、o−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、シクロへキサンジメチロール型エポキシ樹脂、フェニルグリシジルエーテル、o−クレジルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、o−フェニルフェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、フェノール(EO)5グリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル等の一つまたは二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0052】
また、反応性希釈剤の添加量を、全体量に対して、5〜30重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる反応性希釈剤の添加量が、5重量%未満の値になると、添加効果が得られない場合があるためである。
一方、かかる反応性希釈剤の添加量が、30重量%以上の値になると、接着性が著しく低下する場合があるためである。
したがって、かかる反応性希釈剤の添加量を、全体量に対して、8〜25重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、10〜22重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0053】
その他、参考のため、図8に、導電性組成物(組成は実施例1準拠)の全体量を100重量%とし、反応性希釈剤(2種類)の添加量を10〜20重量%の範囲で変えた場合であって、導電性組成物を硬化させた場合の比抵抗(Ω・cm)の値を示してある。
かかる図8の特性図から理解されるように、反応性希釈剤の種類によって、導電性組成物を硬化させた場合の比抵抗(Ω・cm)の値が変わっている。例えば、ラインBに示すように、脂肪族二官能エポキシ化合物では、比抵抗が約8×10-2〜1×10-1Ω・cmの範囲内の値であるのに対して、ラインAに示すように、芳香族単官能エポキシ化合物の場合には、比抵抗が約2×10-2〜5×10-2Ω・cmの範囲内の値となっている。
したがって、導電性組成物を硬化させた場合の比抵抗、すなわち導電性を、反応性希釈剤の種類を変えることによって微妙に調整することができる。
【0054】
(3)硬化剤
また、主剤が、エポキシ樹脂等の場合、硬化剤を添加することが好ましい。
このような硬化剤としては、イミダゾール化合物、二級アミン化合物、三級アミン化合物、変性脂肪族アミン化合物、エポキシ樹脂アミンアダクト化合物の一つまたは二種以上の組み合わせが挙げられる。
特に、エポキシ樹脂アミンアダクト化合物であれば、室温における潜在性が高い上に、60〜90℃において速硬化性であることから、好ましい硬化剤である。
なお、エポキシ樹脂アミンアダクト化合物の市販品としては、例えば、アミキュアPN−23、PN−31、PN−40、MY−24(以上、味の素ファインテクノ(株)製)、キュアダクトP−0505(四国化成工業(株))が挙げられる。
【0055】
また、かかる硬化剤の添加量を、エポキシ樹脂を100重量部に対して、10〜35重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる硬化剤の添加量が、10重量部未満の値になると、硬化が不十分となって、接着特性が著しく低下する場合があるためである。
一方、かかる硬化剤の添加量が、35重量部を超えた値になると、導電性が低下したり、潜在性が低下したりする場合があるためである。
したがって、かかる硬化剤の添加量を、エポキシ樹脂を100重量部に対して、13〜30重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、15〜25重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、硬化剤の添加量を決定するエポキシ樹脂の重量部は、反応性希釈剤を含む場合には、それも含んだ状態での総量を意味する。
【0056】
その他、参考のため、図9に、導電性組成物(樹脂組成は実施例1準拠)におけるエポキシ樹脂を100重量部とし、硬化剤としてのアミンアダクト化合物の添加量を13〜25重量部の範囲で変えた場合の、導電性組成物における硬化時の比抵抗(Ω・cm)の値を示してある。
かかる図9の特性図から理解されるように、硬化剤の添加量が多い程、導電性組成物を硬化させた場合の比抵抗(Ω・cm)の値が大きくなり、例えば、硬化剤の添加量が15重量部では比抵抗が約5×10-2Ω・cmであったものが、硬化剤の添加量が25重量部では、比抵抗が5×103Ω・cmとなっている。
したがって、導電性組成物を硬化させた場合の比抵抗、すなわち導電性組成物の導電性を、硬化剤の添加量によって調整することができる。
【0057】
3.添加剤
導電性組成物中に、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、金属イオン捕獲剤、粘度調整剤、無機フィラー、有機フィラー、カーボン繊維、着色剤、およびカップリング剤等を添加することも好ましい。
特に、導電性組成物は、導電粉を添加することによる酸化劣化が通常加速されるため、酸化防止剤として、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、またはリン酸エステル系酸化防止剤等を、全体量に対して、0.1〜10重量%の範囲内で添加することが好ましい。
【0058】
また、導電性組成物中に、シリカ粒子を添加することも好ましい。
このようなシリカ粒子としては、疎水性シリカや親水性シリカが挙げられる。
また、かかるシリカ粒子の添加量を、全体量に対して、0.1〜5重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかるシリカ粒子の添加量が、0.1重量%未満の値になると、添加効果が発現しない
場合があるためである。
一方、かかるシリカ粒子の添加量が、5重量%以上の値になると、導電性が低下する場合があるためである。
したがって、かかるシリカ粒子の添加量を、全体量に対して、0.2〜3重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、0.5〜2重量%の範囲内の値とすることが好ましい。
【0059】
その他、参考のため、図10に、導電性組成物(組成は実施例1準拠)の全体量を100重量%とし、シリカ粒子の添加量を0.5〜2.0重量%の範囲で変えるとともに、導電性組成物を硬化させた場合の比抵抗(Ω・cm)の値を示してある。
かかる図10の特性図から理解されるように、シリカ粒子の添加量が多い程、導電性組成物を硬化させた場合の比抵抗(Ω・cm)の値が若干大きくなり、例えば、シリカ粒子の添加量が0.5重量%では、比抵抗が約3×10-2Ω・cmであったものが、シリカ粒子の添加量が2.0重量%では、比抵抗が約7×10-2Ω・cmとなっている。
したがって、導電性組成物を硬化させた場合の比抵抗、すなわち導電性を、シリカ粒子の添加量によって微妙に調整することができる。
【0060】
4.密度
また、導電性組成物の密度を1.4〜3.5g/cm3の範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、導電性組成物の密度が、1.4g/cm3未満の値になると、導電性が著しく低下する場合があるためである。
一方、かかる導電性組成物の密度が、3.5g/cm3を超えると、取り扱い性が低下したり、アルミニウム等の被着体から剥離しやすくなったりする場合があるためである。
したがって、導電性組成物の密度を、1.7〜3.0g/cm3の範囲内の値とすることがより好ましく、2.0〜2.5g/cm3の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0061】
5.製造方法
(1)混合分散工程
導電性組成物の製造方法は特に制限されるものではないが、例えば、プロペラミキサ、プラネタリーミキサ、三本ロール、ニーダー、スパチュラ等を利用して、樹脂中に、所定量の凹凸を備えた導電粉を混合分散して、製造することが好ましい。
【0062】
ここで、凹凸を備えた導電粉の凸部が折れないように、混合条件を制御することが好ましい。
例えば、図11に示すように、プタネタリーミキサを用いた場合、混合時間が10〜120分の範囲では、混合時間にかかわらず、硬化後に、一定の比抵抗を示す導電性組成物が得られていることが理解される。
一方、図12に直線で示すように、三本ロールを用いた場合、混練回数が1〜10回の範囲で、混練回数が多くなるにつれて、比抵抗の値が大きく変わっている。
これは、プタネタリーミキサの場合、凹凸を備えた導電粉の凸部にかかるせん断力があまり大きくないために、比較的長時間かかるものの、凹凸を備えた導電粉の形状を維持したまま、混合分散できることを意味している。
一方、三本ロールを用いた場合、凹凸を備えた導電粉の凸部にかかるせん断力が比較的大きいために、比較的短時間で分散できるものの、凸部が折れやすく、過度の混練回数、例えば、6回以上では、導電粉の形状が球状に近くなって、比抵抗が著しく上昇することが確認されている。
なお、凹凸を備えた導電粉に対して、有機酸または有機酸塩による表面処理を行わない場合、図12に点線で示すように、三本ロールによる混練回数が、例えば、3回以上で、導電粉の形状が球状に近くなって、比抵抗が著しく上昇することが確認されている。
よって、三本ロールと、プタネタリーミキサを組み合わせ、まず、1〜5回の混練回数で三本ロールによる混合分散を行い、その後、プラネタリーミキサで例えば10〜60分の範囲で混合分散を行い、その後三本ロールで、例えば1〜5回混練分散を行うことが好ましい。
【0063】
また、樹脂の粘度は1,000〜100,000mPa・secの範囲内の値にすることも好ましく、
さらにまた、導電粉と、樹脂とがより均一に混合するように、導電粉の周囲を予めカップリング剤処理することも好ましい。例えば、導電粉100重量部に対して、1〜10重量部のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン等を添加混合し、次いで、このようにカップリング剤処理した導電粉を、樹脂中に、混合分散することが好ましい。
【0064】
(2)濾過処理工程
また、凹凸を備えた導電粉と、樹脂とを均一に混合した後、フィルター等を用いて、導電粉の凝集物やゴミ等を濾過処理し、除去することが好ましい。
この理由は、導電粉の凝集物等を濾過処理することによって、ディスペンサー等を用いて導電性組成物を塗布する場合に、目つまりすることを有効に防止できるためである。
なお、本願発明の導電粉であれば、内部に核物質を含むとともに、所定の表面処理が施されていることにより、樹脂中に混合した場合であっても、凸部が折れにくいことから、凝集物の発生が少なく、例えば、目開き20〜200μmのメッシュフィルター等を用いて、容易に濾過処理することができるという利点がある。
【実施例】
【0065】
[実施例1]
1.導電粉および導電性組成物の製造
(1)針状突起を有する銀粉の製造
濃度1mol/リットルのL−アスコルビン酸水溶液50mlに対して、核物質生成用液体5mlを投入し、核物質入り還元液(核物質の平均粒径:約0.15μm)を作成した。
ここで、核物質生成用液体は、その全体量において、97.4重量%の水と、濃度28重量%のアンモニア水1.5重量%と、ゼラチン0.1重量%と、硝酸銀1重量%と、を、室温で、均一に混合攪拌して構成してある。
また、核物質入り還元液における核物質の平均粒径は、電子顕微鏡写真から算出した。
【0066】
次いで、図5に示す製造装置を用いて、濃度1mol/リットルの硝酸銀水溶液50mlと、核物質入り還元液50mlとをそれぞれ別々の挿入口から投入し、還元反応をさらに生じさせ、表面に針状突起を備えた銀粒子(平均粒径:3μm、凸部長さ:0.7μm)を得た。
次いで、析出生成した銀粒子100重量部に対して、有機酸塩としてのステアリン酸アンモニウムの処理量が、0.02重量部の割合になるように、水中に添加し、銀粒子に対して有機酸塩による表面処理を行った。
その後、表面処理を行った銀粒子を採取し、次いで水洗し、さらに、真空オーブン中100℃、3時間の条件で乾燥して、核物質として銀粒子を0.9重量%含む針状突起を有する表面処理銀粉(A1)を得た。
【0067】
(2)導電性組成物の製造
容器内に、ビスフェノールF型エポキシ樹脂であるEPICLON830−S(大日本インキ化学工業製)100重量部、硬化剤としてのアミキュアPN−23(味の素ファインテクノ(株)製)20重量部、反応性希釈剤としてのo−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル(YED−122、ジャパンエポキシレジン(株)製)40重量部および(1)で得られた表面処理銀粉(A1)170重量部を添加した後、スパチュラを用いて、大まかに混合した。
次いで、三本ロール(間隔30〜40μm)を2回通過させた後、プラネタリーミキサで30分間、さらに攪拌混合して、導電性組成物とした。
その後、目開き63μmのメッシュフィルターを備えた濾過装置を用いて、濾過処理を行い、実施例1の導電性組成物とした。
【0068】
2.導電粉および導電性組成物の評価
(1)粒度分布(評価1)
得られた表面処理銀粉(A1)を水中に均一に分散させ、その状態における粒度分布を、レーザー回折・散乱法粒度分布計 マイクロトラックHRA 9320−X100(日機装(株)製)を用いて測定した。また、得られた粒度分布曲線から、以下の基準に即して粒度分布性を評価した。
なお、評価に用いた粒度分布における標準偏差(SD)は、次式より求めた。
SD=(d84%−d16%)/2
d84%:粒度分布曲線において、累積値が84%となる時点の粒径(μm)
d16%:粒度分布曲線において、累積値が16%となる時点の粒径(μm)
◎:粒度分布における標準偏差が、銀粉の体積平均径の20%以内の値である。
○:粒度分布における標準偏差が、銀粉の体積平均径の30%以内の値である。
△:粒度分布における標準偏差が、銀粉の体積平均径40%以内の値である。
×:粒度分布における標準偏差が、銀粉の体積平均径50%を越える値である。
【0069】
(2)形状保持性1(評価2)
得られた表面処理銀粉(A1)を、25℃の蒸留水中に入れて放置し、その形状変化を観察して、以下の基準に即して形状保持性1を評価した。
◎:10時間以上の放置時間で、形状変化が観察されない。
○:5時間以上10時間未満の放置時間で、形状変化が観察される。
△:3時間以上5時間未満の放置時間で、形状変化が観察される。
×:3時間未満の放置により、形状変化が観察される。
【0070】
(3)形状保持性2(評価3)
得られた表面処理銀粉(乾燥前A1)を、25℃の蒸留水中に入れて、フィルターとして定性濾紙No.2(アドバンテック東洋(株)製)を備えた濾過装置を用いて濾過処理し、その濾過性から、以下の基準に即して形状保持性2を評価した。
◎:目つまりが全く観察されない。
○:濾過速度が若干遅くなるが、目つまりがほとんど観察されない。
△:濾過速度が相当遅くなり、目つまりが少々観察される。
×:濾過処理ができない状態である。
【0071】
(4)接着力(評価4)
得られた導電性組成物を、縦120mm×横25mm×厚さ2mmの銅版の端に、パターン状(縦12.5mm×横25mm×厚さ0.5mm)にスクリーン印刷した後、その上から縦120mm×横25mm×厚さ2mmの銅版を張り合わせた。
次いで、180℃×30分の条件で加熱硬化させて、接着力測定試料とした。
次いで、得られた接着力測定試料につき、テンシロン型万能試験機RTC−1310A((株)オリエンテック製)を用いて、引っ張りせん断力を測定した。
【0072】
(5)比抵抗(評価5)
得られた導電性組成物の比抵抗を、ガラス上に縦40mm、横1mm、厚さ0.1mmに印刷し、所定の温度で硬化させた後に2点間の抵抗を測定し、比抵抗を計算により求めた。
【0073】
[実施例2〜7]
実施例2〜7では、有機酸塩の種類(ミリスチン酸アンモニウム)および処理量の影響を検討した。
すなわち、実施例2では、析出生成した銀粒子100重量部に対して、有機酸塩(ミリスチン酸アンモニウム)の処理量を0.005重量部とした以外は、実施例1と同様に表面処理銀粉(A2)を製造して、評価した。
また、実施例3では、析出生成した銀粒子100重量部に対して、有機酸塩(ミリスチン酸アンモニウム)の処理量を0.05重量部とした以外は、実施例1と同様に表面処理銀粉(A3)を製造して、評価した。
また、実施例4では、析出生成した銀粒子100重量部に対して、有機酸塩(ミリスチン酸アンモニウム)の処理量を0.1重量部とした以外は、実施例1と同様に表面処理銀粉(A4)を製造して、評価した。
【0074】
また、実施例5では、析出生成した銀粒子100重量部に対して、有機酸塩(ステアリン酸アンモニウム)の処理量を0.5重量部とした以外は、実施例1と同様に表面処理銀粉(A5)を製造して、評価した。
また、実施例6では、析出生成した銀粒子100重量部に対して、有機酸塩(ステアリン酸アンモニウム)の処理量を3.0重量部とした以外は、実施例1と同様に表面処理銀粉(A6)を製造して、評価した。
さらに、実施例7では、析出生成した銀粒子100重量部に対して、有機酸塩(ステアリン酸アンモニウム)の処理量を0.001重量部とした以外は、実施例1と同様に表面処理銀粉(A7)を製造して、評価した。
【0075】
[比較例1]
比較例1では、実施例1における有機酸塩による表面処理を実施しなかった以外は、実施例1と同様に導電粉(針状突起を有する銀粉(B1))を製造して、評価した。
【0076】
[比較例2]
比較例2では、実施例1における核物質としての銀粒子を使用しなかった以外は、実施例1と同様に導電粉(針状突起を有する銀粉(B2))を製造して、評価した。
【0077】
【表1】
【0078】
[実施例8〜10]
実施例8〜10では、表2に示すように、導電粉の嵩密度の種類を変えた以外は、実施例1と同様に表面処理銀粉を製造して、評価した。
すなわち、実施例8では、図5に示す管状製造装置ではなく、ビーカー反応を用い、50mlの硝酸銀水溶液と、50mlの核物質入り還元液と、を300mlのビーカーに投入し、急いで攪拌した後、実施例1と同様に表面処理を行って、嵩密度が1.28g/cm3の表面処理銀粉(A8)を製造して、評価した。
また、実施例9では、還元液50mlに加えるジエタノールアミンの添加量を1gとし、銀粉の嵩密度を1.67g/cm3とした以外は、実施例1と同様に表面処理銀粉(A9)を製造して、評価した。
また、実施例10では、還元液50mlに加えるジエタノールアミンの添加量を2.5gとした以外は、実施例1と同様にして、嵩密度が2.23g/cm3の表面処理銀粉(A10)を製造して、評価した。
【0079】
【表2】
【0080】
[実施例11〜15]
実施例11〜15では、表3に示すように、導電粉を表面処理有機酸塩の種類を変えた以外は、実施例1と同様に表面処理銀粉を製造して、評価した。
すなわち、実施例11では、有機酸塩の種類をアジピン酸アンモニウムとした以外は、実施例1と同様に表面処理銀粉(A11)を製造して、評価した。
また、実施例12では、有機酸塩の種類をオレイン酸アンモニウムとした以外は、実施例1と同様に表面処理銀粉(A12)を製造して、評価した。
【0081】
また、実施例13では、有機酸塩の種類を安息香酸アンモニウムとした以外は、実施例1と同様に表面処理銀粉(A13)を製造して、評価した。
また、実施例14では、有機酸塩の種類をマレイン酸アンモニウムとした以外は、実施例1と同様に表面処理銀粉(A14)を製造して、評価した。
さらに、実施例15では、有機酸塩の種類をクエン酸アンモニウムとした以外は、実施例1と同様に表面処理銀粉(A15)を製造して、評価した。
【0082】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上説明したように、本発明の導電粉によれば、導電粉の内部に核物質を含有させるとともに、所定の表面処理を施すことによって、形状保持性がさらに優れ、しかも、樹脂中に混合した場合であっても、凸部が折れにくくなった。
また、本発明の導電性組成物によれば、内部に核物質を含有させるとともに、所定の表面処理を施した導電粉を所定量含むことにより、得られる比抵抗が低い上に、製造が容易な導電性組成物が得られるようになった。
【0084】
したがって、本発明の導電性組成物であれば、各種電気製品、電子製品、自動車製品等の用途において、好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1(a)〜(b)は、それぞれ本発明における導電粉の一例の電子顕微鏡写真(倍率500、5000)である。
【図2】図2(a)〜(c)は、それぞれ本発明の別の導電粉(3種類)の電子顕微鏡写真(各倍率4000、8000、4000)である。
【図3】図3(a)〜(b)は、それぞれ導電粉における核粒子の一例の電子顕微鏡写真(倍率10000、50000)である。
【図4】図4は、導電粉の平均粒径と、導電性組成物における硬化時の比抵抗との関係を示す特性図である。
【図5】図5は、導電粉の製造装置の一例を説明するために供する図である。
【図6】図6は、導電粉における核粒子の添加量と、導電粉の平均粒径との関係を示す特性図である。
【図7】図7は、導電粉の添加量と、導電性組成物における硬化時の比抵抗との関係を説明するために供する図である。
【図8】図8は、導電性組成物における反応性希釈剤の添加量と、導電性組成物における硬化時の比抵抗との関係を説明するために供する図である。
【図9】図9は、導電性組成物における硬化剤の添加量と、導電性組成物における硬化時の比抵抗との関係を説明するために供する図である。
【図10】図10は、導電性組成物におけるシリカ粒子の添加量と、導電性組成物における硬化時の比抵抗との関係を説明するために供する図である。
【図11】図11は、プラネタリーミキサの混錬時間と、導電性組成物における硬化時の比抵抗との関係を説明するために供する図である。
【図12】図12は、三本ロールの混練回数と、導電性組成物における硬化時の比抵抗との関係を説明するために供する図である。
【図13】図13(a)〜(b)は、それぞれ導電性組成物の濾過装置におけるフィルターの目つまり状態を示す電子顕微鏡写真(倍率40倍)である。
【符号の説明】
【0086】
10:管状製造装置
11:金属塩溶液タンク
12:還元剤タンク
13:金属塩溶液
14:還元剤
15、16:流量弁
17、18:小径のパイプ
20:大径のパイプ
21:水冷ジャケット
22:水
23:タンク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主成分が銀またはニッケルであり、表面に凸部を備えるとともに、内部に、導電材料を結晶成長させるための核物質としての金属系粒子またはセラミック系粒子を含んでなる導電粉であって、
少なくとも表面に対して、有機酸または有機酸塩による処理が施してあり、
かつ、嵩密度が0.5〜2.5g/cm3の範囲内の値であることを特徴とする導電粉。
【請求項2】
前記導電粉100重量部に対して、前記有機酸の処理量を0.001〜5重量部の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1に記載の導電粉。
【請求項3】
前記有機酸または有機酸塩が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、およびステアリン酸塩からなる群から選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項1または2に記載の導電粉。
【請求項4】
前記核物質の添加量を、全体量に対して、0.0001〜10重量%の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の導電粉。
【請求項5】
主成分が銀またはニッケルであって、表面に凸部を備えるとともに、内部に、導電材料を結晶成長させるための核物質としての金属系粒子またはセラミック系粒子を含んでなる導電粉と、樹脂と、を含む導電性組成物であって、
前記導電粉の少なくとも表面に対して、有機酸または有機酸塩による処理が施してあり、
かつ、前記導電粉の嵩密度を0.5〜2.5g/cm3の範囲内の値とすることを特徴とする導電性組成物。
【請求項6】
前記樹脂100重量部に対して、前記導電粉の添加量を40〜200重量部の範囲内の値とすることを特徴とする請求項5に記載の導電性組成物。
【請求項7】
密度を1.4〜3.5g/cm3の範囲内の値とすることを特徴とする請求項5または6に記載の導電性組成物。
【請求項8】
前記樹脂として、主剤としてのビスフェノールF型エポキシ樹脂と、硬化剤としてのアミンアダクト化合物と、反応性希釈剤と、を含むとともに、25℃における粘度を1,000〜100,000mPa・secの範囲内の値とすることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の導電性組成物。
【請求項1】
主成分が銀またはニッケルであり、表面に凸部を備えるとともに、内部に、導電材料を結晶成長させるための核物質としての金属系粒子またはセラミック系粒子を含んでなる導電粉であって、
少なくとも表面に対して、有機酸または有機酸塩による処理が施してあり、
かつ、嵩密度が0.5〜2.5g/cm3の範囲内の値であることを特徴とする導電粉。
【請求項2】
前記導電粉100重量部に対して、前記有機酸の処理量を0.001〜5重量部の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1に記載の導電粉。
【請求項3】
前記有機酸または有機酸塩が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸塩、ミリスチン酸塩、パルミチン酸塩、およびステアリン酸塩からなる群から選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項1または2に記載の導電粉。
【請求項4】
前記核物質の添加量を、全体量に対して、0.0001〜10重量%の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の導電粉。
【請求項5】
主成分が銀またはニッケルであって、表面に凸部を備えるとともに、内部に、導電材料を結晶成長させるための核物質としての金属系粒子またはセラミック系粒子を含んでなる導電粉と、樹脂と、を含む導電性組成物であって、
前記導電粉の少なくとも表面に対して、有機酸または有機酸塩による処理が施してあり、
かつ、前記導電粉の嵩密度を0.5〜2.5g/cm3の範囲内の値とすることを特徴とする導電性組成物。
【請求項6】
前記樹脂100重量部に対して、前記導電粉の添加量を40〜200重量部の範囲内の値とすることを特徴とする請求項5に記載の導電性組成物。
【請求項7】
密度を1.4〜3.5g/cm3の範囲内の値とすることを特徴とする請求項5または6に記載の導電性組成物。
【請求項8】
前記樹脂として、主剤としてのビスフェノールF型エポキシ樹脂と、硬化剤としてのアミンアダクト化合物と、反応性希釈剤と、を含むとともに、25℃における粘度を1,000〜100,000mPa・secの範囲内の値とすることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の導電性組成物。
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1】
【図2】
【図3】
【図13】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1】
【図2】
【図3】
【図13】
【公開番号】特開2009−277403(P2009−277403A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−125493(P2008−125493)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(000123491)化研テック株式会社 (15)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(000123491)化研テック株式会社 (15)
【Fターム(参考)】
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