説明

導電膜形成用感光材料及び導電性材料

【課題】高い導電性と透光性とを同時に有する導電膜を低コストで製造するための導電膜形成用感光材料を提供する。
【解決手段】支持体上に銀塩含有乳剤層を有する導電膜形成用感光材料であって、前記銀塩含有乳剤層または銀塩含有乳剤層側のいずれかの層に導電性微粒子及びバインダーを含有し、前記導電性微粒子及びバインダーの質量比(導電性微粒子/バインダー)が1/33〜1.5/1である導電膜形成用感光材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電膜形成用感光材料及び導電性材料に関するものである。さらに詳しく言えば、本発明はいずれかの層に導電性微粒子とバインダーを含有させた導電性膜形成用感光材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な製造方法による導電性フィルムが検討されている(例えば、特許文献1〜5参照)。この中で、ハロゲン化銀乳剤を塗布し、導電性のための銀の導電部と、透明性の確保のための開口部からなるようにパターン露光して、導電性フィルムとして製造される銀塩方式導電性フィルムがある(例えば、特許文献6〜8参照)。この導電性フィルムは種々の用途が検討されており、本発明者らは無機EL等の面電極としての利用に着目して研究してきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−13088号公報
【特許文献2】特開平10−340629号公報
【特許文献3】特開平10−41682号公報
【特許文献4】特公昭42−23746号公報
【特許文献5】特開2006−228649号公報
【特許文献6】特開2004−221564号公報
【特許文献7】特開2004−221565号公報
【特許文献8】特開2007−95408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、高い導電性を有する導電性材料及びそれを製造するための導電膜形成用感光材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、銀塩含有乳剤層または銀塩含有乳剤層側のいずれかの層に導電性微粒子及びバインダーを含有させ、導電性微粒子及びバインダーの質量比(導電性微粒子/バインダー)を所定比率に設定すること、または導電性微粒子を所定量含有させることで、得られる導電性材料の導電性を高めることができ、面電極などとして有用であることを見出した。
つまり、導電性微粒子とバインダーを感光材料のいずれかの層に含有させ、これを露光、現像処理して導電性材料を作製することで、上記課題を解決しうることを見出した。
【0006】
すなわち、以下の発明により上記課題を解決できる。
(1)支持体上に銀塩含有乳剤層を有する導電膜形成用感光材料であって、
前記銀塩含有乳剤層または銀塩含有乳剤層側のいずれかの層に導電性微粒子及びバインダーを含有し、
前記導電性微粒子及びバインダーの質量比(導電性微粒子/バインダー)が1/33〜1.5/1であることを特徴とする導電膜形成用感光材料。
(2)前記導電性微粒子及びバインダーの質量比(導電性微粒子/バインダー)が1/3〜1.5/1であることを特徴とする(1)項に記載の導電膜形成用感光材料。
(3)前記導電性微粒子及びバインダーを含有させた層が、前記銀塩含有乳剤層に隣接する層であることを特徴とする(1)又は(2)項に記載の導電膜形成用感光材料。
(4)前記導電性微粒子の塗布量が、0.05〜0.9g/m2であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の導電膜形成用感光材料。
(5)前記導電性微粒子の塗布量が、0.2〜0.4g/m2であることを特徴とする(4)項に記載の導電膜形成用感光材料。
(6)前記導電性微粒子が、SnO2,ZnO,TiO2,Al23,In23,MgO,BaO,およびMoO3からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物、これらの複合金属酸化物、または、これらの金属酸化物に異種原子を含む金属酸化物であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の導電膜形成用感光材料。
(7)前記導電性微粒子が、アンチモンがドープされたSnO2であることを特徴とする(6)に記載の導電膜形成用感光材料。
(8)前記導電性微粒子が球状であるときは平均粒子径が0.085〜0.12μmであり、針状のときは平均軸長が長軸0.2〜20μm,短軸0.01〜0.02μmであることを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項に記載の導電膜形成用感光材料。
(9)前記銀塩含有乳剤層側に、前記銀塩含有乳剤層に隣接する保護層を有し、前記保護層に導電性微粒子及びバインダーを含有することを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1項に記載の導電膜形成用感光材料。
(10)支持体上に銀塩含有乳剤層を有する導電膜形成用感光材料であって、
前記銀塩含有乳剤層または銀塩含有乳剤層側のいずれかの層に導電性微粒子及びバインダーを含有し、
前記導電性微粒子の含有量が0.05〜0.9g/m2であることを特徴とする導電膜形成用感光材料。
(11)(1)〜(10)のいずれか1項に記載の導電膜形成用感光材料をパターン露光し、現像処理して得た導電性材料。
(12)支持体上に導電層を有する導電性材料であって、
前記導電層または導電層側のいずれかの層に導電性微粒子及びバインダーを含有し、
前記導電性微粒子及びバインダーの質量比(導電性微粒子/バインダー)が1/33〜1.5/1であることを特徴とする導電性材料。
(13)前記導電性微粒子及びバインダーの質量比(導電性微粒子/バインダー)が1/3〜1.5/1であることを特徴とする(12)記載の導電性材料。
(14)前記導電性微粒子の塗布量が、0.05〜0.9g/m2であることを特徴とする(12)又は(13)に記載の導電性材料。
(15)前記導電層の表面抵抗が0.01Ω/□以上であることを特徴とする(12)〜(14)のいずれか1項に記載の導電性材料。
なお、本発明における「銀塩含有乳剤層側」とは、支持体のバック面側の反対側であって銀塩含有乳剤層等が塗布されている側をいう。また、この乳剤層側の「上層」とは、支持体からより離れた表面層に近い側の層(あるいは表面層)をいい、「下層」とは支持体により近い側の層をいう。
導電層はメッシュパターン形状の導電部であることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の導電膜形成用感光材料を用いれば、それをパターン露光後、現像処理することにより、高い導電性を有する導電膜を、メッキ処理を施すことなく低コストで製造できる。特に、高い導電性と透明性とを有する導電性材料を低コストで製造することができる。とりわけ、現像処理後にオーバーコートで導電性微粒子を塗布することなく、一括処理、例えば導電性微粒子を同時重層塗布できることが大きい利点である。
本発明の感光材料を用いて得られる導電性材料は、例えば導電膜としては、液晶テレビ、プラズマテレビ、有機EL、無機EL、太陽電池、タッチパネル、プリント回線基板などに広く応用することができる。精度の要求されるペン入力のタッチパネルにも、本発明は対応でき、文字などの入力情報が途切れることなく直線性に優れる。また、本発明の導電膜形成用感光材料を用いて製造された導電膜は低抵抗性で、電磁波シールド材などに用いることができる。また透光性導電膜は、透光性電磁波遮蔽フィルムや透明発熱フィルムなどとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例2において、各サンプルの、電極からの距離に対する輝度を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第一の態様の導電膜形成用感光材料は、支持体上に銀塩含有乳剤層を有する導電膜形成用感光材料であって、銀塩含有乳剤層または銀塩含有乳剤層側のいずれかの層に導電性微粒子及びバインダーを含有し、導電性微粒子及びバインダーの質量比(導電性微粒子/バインダー)が1/33〜1.5/1である。前記導電性微粒子及びバインダーの質量比(導電性微粒子/バインダー)は1/3〜1.5/1が好ましい。前記導電性微粒子及びバインダーの質量比が前記上限値を超えると、透明性が実用的に不十分となり、透明導電フィルムとして不適となる。また前記下限値を未満であると、面内の電気特性が不十分となり、例えば、EL素子に使用した場合には輝度が実用的に不十分となる。
本発明の第二の態様の導電膜形成用感光材料は、支持体上に銀塩含有乳剤層を有する導電膜形成用感光材料であって、銀塩含有乳剤層または銀塩含有乳剤層側のいずれかの層に導電性微粒子及びバインダーを含有し、前記導電性微粒子の含有量が0.05〜0.9g/m2である。前記導電性微粒子の含有量は、0.1〜0.6g/m2であることがより好ましく、0.1〜0.5g/m2であることがさらに好ましい。導電性微粒子の含有量が前記上限値を超えると、透明性が実用的に不十分となり、透明導電性フィルムとして不適となる。さらに、導電性微粒子の含有量が前記上限値を超えると、導電性微粒子の塗布工程において均一に分散させることが難しく、製造不良が増加する。また前記下限値未満であると、面内の電気特性が不十分となり、例えば、EL素子に使用した場合には輝度が実用的に不十分となる。
【0010】
導電性微粒子を含有させる層が銀塩含有乳剤層側のいずれかの層である場合、その層は導電性材料を製造後、その導電層と電気伝導性を有すればその位置は特に制限されない。銀塩含有剤層側のいずれかの層としては、銀塩含有乳剤層に隣接する層が好ましい。隣接する層でも、乳剤層の上層(例えば、保護層)又は下層(例えば、支持体側の下引層)があるが、導電性微粒子は上層(例えば、後述する保護層)に含有させる方が、電極などとして用いると導電性が有利となり、無機EL素子に組み込んだ際の輝度向上効果が大きくなる。
本発明の導電膜形成用感光材料の各層の構成について、以下に詳細に説明する。
【0011】
[支持体]
本発明の導電膜形成用感光材料に用いられる支持体としては、プラスチックフィルム、プラスチック板、およびガラス板などを挙げることができる。
支持体としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)(融点:258℃)、ポリエチレンナフタレート(PEN)(融点:269℃)、ポリエチレン(PE)(融点:135℃)、ポリプロピレン(PP)(融点:163℃)、ポリスチレン(融点:230℃)、ポリ塩化ビニル(融点:180℃)、ポリ塩化ビニリデン(融点:212℃)やトリアセチルセルロース(TAC)(融点:290℃)等の融点が約290℃以下であるプラスチックフィルム、またはプラスチック板が好ましく、特に透光性電磁波遮蔽膜用には光透過性や加工性などの観点から、PETが好ましい。透明導電性フィルムは透明性が要求されるため、支持体の透明性は高いことが好ましい。
上記支持体の全可視光透過率は、70%以上が好ましく、さらに好ましくは85%以上であり、特に好ましくは90%以上である。また、本発明では、支持体として本発明の目的を妨げない程度に着色したものを用いることもできる。
【0012】
[銀塩含有乳剤層]
本発明の導電膜形成用感光材料は、支持体上に、光センサーとして銀塩乳剤を含む乳剤層(銀塩含有感光層)を有する。銀塩含有感光層は、銀塩とバインダーの他、溶媒や染料などの添加剤を含有することができる。乳剤層の厚さは、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.1〜5μmである。
感光材料において、銀塩含有乳剤層は実質的に最上層に配置されている。ここで、「銀塩含有乳剤層が実質的に最上層である」とは、銀塩含有乳剤層が実際に最上層に配置されている場合のみならず、銀塩含有乳剤層の上に設けられた層の総膜厚が0.5μm以下であることを意味する。銀塩含有乳剤層の上に設けられた層の総膜厚は、好ましくは0.2μm以下である。
【0013】
本発明に用いられる銀塩としては、ハロゲン化銀などの無機銀塩および酢酸銀などの有機銀塩が挙げられる。本発明においては、光センサーとしての特性に優れるハロゲン化銀を用いることが好ましい。銀塩含有乳剤層の銀塩の塗布量は、特に制限しないが、銀に換算して0.5〜10g/m2が好ましく、0.5〜8g/m2が特に好ましい。銀量が少なすぎると十分な導電性が得られない場合がある。
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、VIII族、VIIB族に属する金属を含有してもよい。特に、高コントラスト及び低カブリを達成するために、ロジウム化合物、イリジウム化合物、ルテニウム化合物、鉄化合物、オスミウム化合物等を含有することが好ましい。これら化合物は、各種の配位子を有する化合物であってよい。
また、高感度化のためにはK4[Fe(CN)6]やK4[Ru(CN)6]、K3[Cr(CN)6]のような六シアノ化金属錯体のドープが有利に行われる。
上記ロジウム化合物としては、水溶性ロジウム化合物を用いることができる。水溶性ロジウム化合物としては、例えば、ハロゲン化ロジウム(III)化合物、ヘキサクロロロジウム(III)錯塩、ペンタクロロアコロジウム錯塩、テトラクロロジアコロジウム錯塩、ヘキサブロモロジウム(III)錯塩、ヘキサアミンロジウム(III)錯塩、トリザラトロジウム(III)錯塩、K3[Rh2Br9]等が挙げられる。
上記イリジウム化合物としては、K2[IrCl6]、K3[IrCl6]等のヘキサクロロイリジウム錯塩、ヘキサブロモイリジウム錯塩、ヘキサアンミンイリジウム錯塩、ペンタクロロニトロシルイリジウム錯塩等が挙げられる。
【0014】
乳剤層に含有されるバインダーの含有量は、特に限定されず、分散性と密着性を発揮し得る範囲で適宜決定することができる。乳剤層の銀およびバインダーの含有量は、Ag/バインダー体積比で1/10以上が好ましく、1/4以上がより好ましく、1/2以上がさらに好ましく、1/1以上が特に好ましい。また、銀およびバインダーの含有量は、Ag/バインダー体積比で10/1以下であることが好ましく、5/1以下であることがさらに好ましい。ここでバインダー量が多い場合には、導電性が低下する要因となるのでバインダー量は少ないほうが好ましい。なお、Ag/バインダー体積比は、原料のハロゲン化銀量/バインダー量(質量比)を銀量/バインダー量(質量比)に変換し、さらに銀量/バインダー量(質量比)を銀量/バインダー量(体積比)に変換することで求めることができる。
乳剤層は銀塩含有量が同一又は異なる2層以上から構成されてもよい。
【0015】
<導電性微粒子とバインダー>
本発明で用いられる導電性微粒子は、SnO2,ZnO,TiO2,Al23,In23,MgO,BaO,およびMoO3などの金属酸化物ならびにこれらの複合酸化物、そしてこれらの金属酸化物にさらに異種原子を含む金属酸化物の粒子を挙げることができる。異種原子としては、アンチモンがあげられる。金属酸化物としては、SnO2,ZnO,TiO2,Al23,In23,MgOが好ましく、SnO2が特に好ましい。SnO2としては、アンチモンがドープされたSnO2が好ましく、特にアンチモンが0.2〜2.0モル%ドープされたSnO2が好ましい。本発明に用いる導電性微粒子の形状については特に制限はなく、粒状、針状等が挙げられる。導電性微粒子の粒子径は0.085〜0.12μmが好ましい。粒子径の下限値は、0.09μmがより好ましく、0.1μmがさらに好ましい。上記粒子径の条件を満たすことで、透明性に優れ、導電性の面内方向に均一な導電層を形成することができる。
導電性微粒子の粉体抵抗(9.8MPa圧粉体)の下限値は、0.8Ωcmが好ましく、1Ωcmがより好ましく、4Ωcmがさらに好ましい。導電性微粒子の粉体抵抗(9.8MPa圧粉体)の上限値は、35Ωcmが好ましく、20Ωcmがより好ましく、10Ωcmがさらに好ましい。上記粉体抵抗の条件を満たすことで、導電性の面内方向に均一な導電層を形成することができる。
比表面積(簡易BET法)は60〜120m/gが好ましく、70〜100m/gがより好ましい。
これらの中でも、上記好適な条件を全てを満たしているものが特に好ましい。
また、導電性微粒子が球形の粒子の場合、平均粒子径は0.085〜0.12μmが好ましい(一次粒子径)。その粉体抵抗は0.8〜7Ωcmが好ましく、1〜5Ωcmがより好ましい。
針状の場合は平均軸長が、長軸0.2〜20μm、短軸0.01〜0.02μmが好ましい。その粉体抵抗は3〜35Ωcmが好ましく、5〜30Ωcmがより好ましい。
上記特性を有する導電性微粒子としては、例えば、石原産業社製のSNシリーズ(商品名)や三菱マテリアル電子化成社より上市されている導電性材料が使用できる。
本発明における導電性微粒子には、カーボンナノチューブや金属ナノワイヤは含まない。
【0016】
銀塩含有乳剤層に導電性微粒子とバインダーを含有させる場合、導電性微粒子の塗布量が0.05〜0.9g/m2であることが好ましく、0.1〜0.6g/m2であることがより好ましく、0.1〜0.5g/m2であることがさらに好ましく、0.2〜0.4g/m2であることが特に好ましい。
導電性微粒子とバインダーを含有させる層が、銀塩含有乳剤層よりも上層(例えば、保護層)のときは、導電性微粒子の塗布量が0.1〜0.6g/m2であることが好ましく、0.1〜0.5g/m2であることがより好ましく、0.2〜0.4g/m2であることがさらに好ましい。
導電性微粒子とバインダーを含有させる層が、銀塩含有乳剤層よりも下層(例えば、下引層)のときは、導電性微粒子の塗布量が0.1〜0.6g/m2であることが好ましく、0.1〜0.5g/m2であることがより好ましく、0.16〜0.4g/m2であることがさらに好ましい。
導電性微粒子の塗布量が前記上限値を超えると、透明性が実用的に不十分となり、透明導電性フィルムとして不適となる傾向がある。さらに、導電性微粒子の塗布量が前記上限値を超えると、導電性微粒子の塗布工程において均一に分散させることが難しく、製造不良が増加する傾向がある。また前記下限値未満であると、面内の電気特性が不十分となり、例えば、EL素子に使用した場合には輝度が実用的に不十分となる傾向がある。
導電性微粒子とバインダーを含有させる層は、乳剤層側の上層、例えば保護層であることが好ましい。保護層に導電性微粒子を含有させる方が、電極などとして用いると導電性が有利となり、無機EL素子に組み込んだ際の輝度向上効果が大きくなる。
導電性微粒子とバインダーを含有させる層が保護層である場合、導電性微粒子の塗布量は上記好適な範囲と同様であるが、バインダーの塗布量は0.5g/m2以下であることが好ましく、0.3g/m2以下であることがより好ましく、0.1g/m2以下であることがさらに好ましい。バインダーの塗布量の下限値は、0.001g/m2であることが好ましい。バインダーの塗布量が少ないほど、導電性が向上し好ましい。またバインダーの塗布量が多い場合には、バインダー塗布液の残留溶剤量が多くなるため、それが他の機能層に悪影響を与えることがある。したがって、バインダーは保護層に含有させなくてもよい。なお、バインダー塗布量を少なくする場合、粘度を30cp以上とすることで導電性微粒子の塗布ムラを抑制することができる。粘度は、増粘剤の添加量により適宜調整することができる。
増粘剤としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の改質セルロース、アラビアガム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体等の高分子化合物、ビニルアリールスルホン酸(例えば、ビニルベンゼンスルホン酸塩)が挙げられる。
【0017】
導電性微粒子含有層には、導電性微粒子を支持体に密着させる目的でバインダーが付加的に用いられる。かかるバインダーとしては、水溶性ポリマーを用いることが好ましい。
上記バインダーとしては、例えば、ゼラチン、カラギナン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロースおよびその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリサッカライド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。これらは、官能基のイオン性によって中性、陰イオン性、陽イオン性の性質を有する。
なお、銀塩含有乳剤層には、導電性微粒子を含有させなくても、銀塩粒子を均一に分散させ、かつ乳剤層と支持体との密着を補助する目的で上記と同様のバインダーを用いる。本発明における質量比(導電性微粒子/バインダー)は、導電性微粒子を含有する層におけるバインダーに対する導電性微粒子の質量比である。
【0018】
<溶媒>
上記乳剤層の形成に用いられる溶媒は、特に限定されるものではないが、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノール等アルコール類、アセトンなどケトン類、ホルムアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、酢酸エチルなどのエステル類、エーテル類等)、イオン性液体、およびこれらの混合溶媒を挙げることができる。
本発明の乳剤層に用いられる溶媒の含有量は、前記乳剤層に含まれる銀塩、バインダー等の合計の質量に対して30〜90質量%の範囲であり、50〜80質量%の範囲であることが好ましい。
<その他の添加剤>
本発明に用いられる各種添加剤に関しては、特に制限は無く、公知のものを好ましく用いることができる。例えば、増粘剤、酸化防止剤、マット剤、滑剤、帯電防止剤、造核促進剤、分光増感色素、界面活性剤、カブリ防止剤、硬膜剤、黒ポツ防止剤などが挙げられる。また誘電率の高い物質を添加したり、表面を疎水性にするためにバインダーに疎水性基の導入・疎水性化合物を添加剤として添加したりしてもよい。
【0019】
[その他の層構成]
上述したように乳剤層の上に保護層を設けても良い。本発明において「保護層」とは、ゼラチンや高分子ポリマーといったバインダーからなる層を意味し、擦り傷防止や力学特性を改良する効果を発現するために感光性を有する乳剤層上に形成される。その厚みは0.2μm以下が好ましく、0.05〜0.1μmがより好ましい。保護層の塗布方法及び形成方法は特に限定されず、公知の塗布方法及び形成方法を適宜選択することができる。また、銀塩含有乳剤層よりも下に、例えば下引層を設けることもできる。
【0020】
本発明においては、導電性微粒子とバインダーを、銀塩含有乳剤層以外の層を設けて含有させることもでき、銀塩含有乳剤層より上層でも下層でもよい。また、銀塩含有乳剤層と隣接する層に導電性微粒子とバインダーを含有させることも好ましい。
導電性微粒子含有層を保護層や下引層とは別に独立して設けた場合の本発明における感光材料の層構成としては、支持体側から(1)下引層/乳剤層/導電性微粒子含有層/保護層またはシリカを含有する密着性付与層、(2)下引層/乳剤層/導電性微粒子含有層、(3)導電性微粒子含有層/乳剤層/保護層、(4)下引層/第一乳剤層/第二乳剤層/導電性微粒子含有層/保護層(乳剤層の銀塩含有量が異なる)などが挙げられる。なお、(2)のように、保護層がなく導電性微粒子含有層が最上層となる形態でもよい。
上記感光材料は、支持体上に乳剤層形成用塗布液、導電性微粒子含有層形成用塗布液などの各層を形成しうる塗布液を同時重層塗布することにより形成することができる。このように重層塗布して後述する露光現像処理を施すことで導電膜が製造でき、これにより製造工程を簡略化して歩留まりを向上させることもできる。またメッシュ形状の導電膜に導電性微粒子含有層形成用塗布液を塗布する場合には、導電性微粒子が均一に分散せずに、メッシュ上に凝集するなどの問題が生じることがあるが、同時重層塗布によれば、そのような問題が生じず、導電性微粒子の分散性が高い導電膜を得ることができる。
【0021】
〔導電膜(導電性材料)〕
本発明の導電膜は、支持体上に導電層を有する導電膜であって、導電層または導電層側のいずれかの層に導電性微粒子及びバインダーを含有し、前記導電性微粒子及びバインダーの質量比(導電性微粒子/バインダー)が1/33〜1.5/1である。前記導電性微粒子及びバインダーの質量比(導電性微粒子/バインダー)が1/3〜1.5/1が好ましい。
本発明の導電性材料は、上記導電膜形成用感光材料をパターン露光し、現像処理して得られるものが好ましいが、これに限定されるものではない。すなわち、本発明の導電膜は、導電層(第一導電層)または導電層(第一導電層)側のいずれかの層に導電性微粒子及びバインダーを含有し、前記導電性微粒子及びバインダーの質量比(導電性微粒子/バインダー)が1/33〜1.5/1である第二導電層(導電性微粒子及びバインダーを含有する導電層側のいずれかの層、例えば上述した保護層や下引層)を有するものであればよい。第一導電層としては、銅箔メッシュパターンを有する層、印刷方式により形成されたメッシュパターンを有する層、導電性ポリマーを含有する層、第二導電層に含有される導電性微粒子と異なる導電性微粒子を含有する層、ITOからなる層が挙げられる。
本発明の導電膜では、全光線透過率は81%以上が好ましく、82%以上がより好ましく、83%以上がさらに好ましく、84%以上がよりさらに好ましく、85%以上が特に好ましく、90%以上が最も好ましい。本発明の導電膜では、メッシュパターンを含まない開口部の透過率は81%以上が好ましく、82%以上がより好ましく、83%以上がさらに好ましく、84%以上がよりさらに好ましく、85%以上が特に好ましく、90%以上が最も好ましい。導電性微粒子として、銀粒子や銅粒子などの金属粒子を使用した場合には開口部の透過率が低下するため透明性が実用的に不十分となる場合がある。本発明の導電膜では透明性の観点から上述した金属酸化物及びこれらの複合酸化物の導電性微粒子を使用することが好ましい。
本発明の導電性材料の第二導電層は、上記本発明の導電膜形成用感光材料におけるものと同様の構成をとることができる。
【0022】
本発明の導電性材料の第一導電層と第二導電層とは、以下の関係を満たすことが好ましい。このような関係を満たすことで、導電性材料の面内の電気特性がより均一となり、無機EL素子としたときに面内全体で十分な輝度が得られる。
(1)第一導電層と第二導電層とでは、第一導電層の表面抵抗(surface resistivity)が小さい。
(2)第一導電層の表面抵抗は、200Ω/sq以下(0.01Ω/sq以上)であり、第二導電層の表面抵抗は1×103Ω/sq以上(1×1014Ω/sq以下)である。
上記第一導電層の表面抵抗の上限値は、150Ω/sqであることがさらに好ましい。また上記第一導電層の表面抵抗の下限値は、0.1Ω/sqであることがさらに好ましく、1Ω/sqであることが特に好ましい。
上記第二導電層(導電性微粒子含有層)の表面抵抗の上限値は、1×1013Ω/sqであることがさらに好ましく、また上記第二導電層の表面抵抗の下限値は、1×105Ω/sqであることがさらに好ましく、1×106Ω/sqであることが特に好ましい。
本発明において表面抵抗は、低抵抗率計ロレスターGP(商品名,三菱化学社製)、NON-CONTACT CONDUCTANCE MONITOR MODEL 717B(商品名、DELCOM社製)やデジタル超高抵抗/微少電流計8340A(商品名、株式会社エーディーシー社製)により測定できる。
【0023】
また、第一導電層の表面抵抗により、第二導電層の導電性微粒子の含有量を調整することが好ましい。
第一導電層の表面抵抗が0.01〜50Ω/sqである場合(例えば、現像銀メッシュパターン)、前記導電性微粒子及びバインダーの質量比(導電性微粒子/バインダー)が1/3〜1.5/1が好ましい。
第一導電層の表面抵抗が70〜200Ω/sqである場合(例えば、ITO)、前記導電性微粒子及びバインダーの質量比(導電性微粒子/バインダー)が1/33〜1/1が好ましい。
【0024】
以下、上記本発明の導電膜形成用感光材料をパターン露光し、現像処理して得られる導電膜の実施形態について詳述する。
本発明において、パターン露光・現像処理によって形成する形状は、メッシュ状で、直線が直交している格子状、交差部間が少なくとも1つの湾曲を有する波線形状などがあるが、例えば格子状メッシュでは、ライン/スペースが20〜1000μmであることが好ましく、20〜300μmがさらに好ましい。このときピッチは200〜1000μmが好ましく、200〜600μmがさらに好ましい。
なお、本発明では、導電性が確保される範囲内で導電性ポリマーを塗布することにより、さらに導電層を形成してもよい。
【0025】
[露光]
銀塩含有乳剤層をパターン状に露光する方法は、フォトマスクを利用した面露光で行ってもよいし、レーザービームによる走査露光で行ってもよい。この際、レンズを用いた屈折式露光でも反射鏡を用いた反射式露光でもよく、コンタクト露光、プロキシミティー露光、縮小投影露光、反射投影露光などの露光方式を用いることができる。
[現像処理]
本発明の感光材料の現像処理は、銀塩含有層を露光した後、さらに現像処理が施される。上記現像処理は、銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる通常の現像処理の技術を用いることができる。
本発明では、上記の露光および現像処理を行うことにより露光部にパターン状の金属銀部が形成されると共に、未露光部に後述する光透過性部が形成される。
本発明の感光材料の現像処理は、未露光部分の銀塩を除去して安定化させる目的で行われる定着処理を含むことができる。本発明の感光材料に対する定着処理は、銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる定着処理の技術を用いることができる。
このようにして得られた本発明の導電性材料は、銀塩含有乳剤層に導電性微粒子が入っている場合には、銀塩が抜けた光透過部に導電性微粒子が分散し、金属銀部よりも高抵抗の導電層が形成される。銀塩含有乳剤層以外の層に導電性微粒子が入っている場合にも、同様に光透過部に導電性微粒子が分散した導電層が形成される。
【0026】
以上、上述した本発明の感光材料および導電性材料では、以下に列挙する公知文献を適宜組み合わせて使用することができる。
特開2004-221564号公報,特開2004-221565号公報,特開2007-200922号公報,特開2006-352073号公報,WO2006/001461A1号パンフレット,特開2007-129205号公報,特開2007-235115号公報,特開2007-207987号公報,特開2006-012935号公報,特開2006-010795号公報,特開2006-228469号公報,特開2006-332459号公報,特開2007-207987号公報,特開2007-226215号公報,WO2006/088059A1号パンフレット,特開2006-261315号公報,特開2007-072171号公報,特開2007-102200号公報,特開2006-228473号公報,特開2006-269795号公報,特開2006-267635号公報,特開2006-267627号公報,WO2006/098333号パンフレット,特開2006-324203号公報,特開2006-228478号公報号公報,特開2006-228836,特開2006-228480号公報,WO2006/098336A1号パンフレット,WO2006/098338A1号パンフレット,特開2007-009326号公報,特開2006-336057号公報,特開2006-339287号公報,特開2006-336090号公報,特開2006-336099号公報,特開2007-039738号公報,特開2007-039739号公報,特開2007-039740号公報,特開2007-002296号公報,特開2007-084886号公報,特開2007-092146号公報,特開2007-162118号公報,特開2007-200872号公報,特開2007-197809号公報,特開2007-270353号公報,特開2007-308761号公報,特開2006-286410号公報,特開2006-283133号公報,特開2006-283137号公報,特開2006-348351号公報,特開2007-270321号公報,特開2007-270322号公報,WO2006/098335A1号パンフレット,特開2007-088218号公報,特開2007-201378号公報,特開2007-335729号公報,WO2006/098334A1号パンフレット,特開2007-134439号公報,特開2007-149760号公報,特開2007-208133号公報,特開2007-178915号公報,特開2007-334325号公報,特開2007-310091号公報,特開2007-311646号公報,特開2007-013130号公報,特開2006-339526号公報,特開2007-116137号公報,特開2007-088219号公報,特開2007-207883号公報,特開2007-207893号公報,特開2007-207910号公報,特開2007-013130号公報,WO2007/001008号パンフレット,特開2005-302508号公報,特開2005-197234号公報。
【0027】
本発明の導電性材料は、EL素子の透明電極として好適である。分散型エレクトロルミネッセンス素子は、交流で駆動される。典型的には、100Vで50Hz〜400Hzの交流電源を用いて駆動される。輝度は面積が小さい場合には、印加電圧並びに周波数にほぼ比例して増加する。しかしながら、0.25m2以上の大面積素子の場合、素子の容量成分が増大し、素子と電源のインピーダンスマッチングがずれたり、素子への蓄電荷に必要な時定数が大きくなったりするため、高電圧化や特に高周波化しても電力供給が十分に行われない状態になり易い。特に、0.25m2以上の素子では、500Hz以上の交流駆動に対しては、しばしば駆動周波数の増大に対して印加電圧の低下が起こり、低輝度化が起こることがしばしば起こる。
これに対し、本発明の導電性材料を電極として使用したエレクトロルミネッセンス素子は、0.25m2以上の大サイズでも高い周波数の駆動が可能で、高輝度化することができる。この場合、500Hz以上5kHz以下での駆動が好ましく、800kHz以上3kHz以下の駆動がより好ましい。
【実施例】
【0028】
以下に本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
(乳剤Aの調製)
・1液:
水 750ml
ゼラチン(フタル化処理ゼラチン) 8g
塩化ナトリウム 3g
1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−チオン 20mg
ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム 10mg
クエン酸 0.7g
・2液
水 300ml
硝酸銀 150g
・3液
水 300ml
塩化ナトリウム 38g
臭化カリウム 32g
ヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム
(0.005%KCl 20%水溶液) 5ml
ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム
(0.001%NaCl 20%水溶液) 7ml
【0029】
3液に用いるヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム(0.005%KCl 20%水溶液)及びヘキサクロロロジウム酸アンモニウム(0.001%NaCl 20%水溶液)は、それぞれの錯体粉末をそれぞれKCl 20%水溶液、NaCl 20%水溶液に溶解し、40℃で120分間加熱して調製した。
38℃、pH4.5に保たれた1液に、2液と3液の各々90%に相当する量を攪拌しながら同時に20分間にわたって加え、0.16μmの核粒子を形成した。続いて下記4液、5液を8分間にわたって加え、さらに、2液と3液の残りの10%の量を2分間にわたって加え、0.21μmまで成長させた。さらに、ヨウ化カリウム0.15gを加え5分間熟成し粒子形成を終了した。
【0030】
・4液
水 100ml
硝酸銀 50g
・5液
水 100ml
塩化ナトリウム 13g
臭化カリウム 11g
黄血塩 5mg
【0031】
その後、常法に従ってフロキュレーション法によって水洗した。具体的には、温度を35℃に下げ、硫酸を用いてハロゲン化銀が沈降するまでpHを下げた(pH3.6±0.2の範囲であった)。
次に、上澄み液を約3リットル除去した(第一水洗)。さらに3リットルの蒸留水を加えてから、ハロゲン化銀が沈降するまで硫酸を加えた。再度、上澄み液を3リットル除去した(第二水洗)。第二水洗と同じ操作をさらに1回繰り返して(第三水洗)、水洗・脱塩行程を終了した。
【0032】
水洗・脱塩後の乳剤をpH6.4,pAg7.5に調整し、ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム10mg、ベンゼンチオスルフィン酸ナトリウム3mg、チオ硫酸ナトリウム15mgと塩化金酸10mgを加え55℃にて最適感度を得るように化学増感を施し、安定剤として1,3,3a,7−テトラアザインデン100mg、防腐剤としてプロキセル(商品名,ICI Co.,Ltd.製)100mgを加えた。最終的に塩化銀を70モル%、沃化銀を0.08モル%含む平均粒子径0.22μm、変動係数9%のヨウ塩臭化銀立方体粒子乳剤を得た。最終的に乳剤として、pH=6.4,pAg=7.5,電導度=40μS/m,密度=1.2×103kg/m3,粘度=60mPa・sとなった。
【0033】
(塗布液の調製)
上記乳剤Aに増感色素(SD−1)5.7×10-4モル/モルAgを加えて分光増感を施した。さらにKBr3.4×10-4モル/モルAg、化合物(Cpd−3)8.0×10-4モル/モルAgを加え、よく混合した。
次いで1,3,3a,7−テトラアザインデン1.2×10-4モル/モルAg、ハイドロキノン1.2×10-2モル/モルAg、クエン酸3.0×10-4モル/モルAg、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−1,3,5−トリアジンナトリウム塩を90mg/m2、ゼラチンに対して15wt%の粒径10μmのコロイダルシリカ、水性ラテックス(aqL−6)を50mg/m2、ポリエチルアクリレートラテックスを100mg/m2、メチルアクリレートと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩と2−アセトキシエチルメタクリレートのラテックス共重合体(質量比88:5:7)を100mg/m2、コアシェル型ラテックスコア:スチレン/ブタジエン共重合体質量比37/63)、シェル:スチレン/2−アセトキシエチルアクリレート(質量比84/16、コア/シェル比=50/50)を100mg/m2、ゼラチンに対し4wt%の化合物(Cpd−7)を添加し、クエン酸を用いて塗布液pHを5.6に調整した。
【0034】
(下引層)
下記のようにして支持体上に下引層を設けた(支持体としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)(厚さ100μm)を用いた。PETにはあらかじめ表面親水化処理したものを用いた。)。
下記の説明により形成する乳剤A層の下引層として、乳剤Aの1液のゼラチンを20gにして、乳剤層のAg/バインダー体積比率(銀/GEL比(vol))が1.0/0.9、Ag1.0g/m2、ゼラチン0.11g/m2になるように層を設けた
【0035】
(ハロゲン化銀乳剤層)
乳剤Aを用いて、上記のように調製した乳剤層塗布液を上記下引層上にAg4.5g/m2、ゼラチン0.25g/m2になるように塗布した。
【0036】
(保護層)
下記のようにして上記ハロゲン化銀乳剤層上部に下記1液を20ml/m2塗布して保護層を設けた。
・1液:
水 943ml
ゼラチン 33g
Sbドープ酸化スズ(石原産業社製、商品名 SN100P) 20g
その他適宜、界面活性剤、防腐剤、ph調節剤を添加した。
このようにして得られた塗布品を乾燥後試料Aとする。
試料Aは保護層に導電性微粒子が0.4g/m2で、導電性微粒子/バインダー比は0.6/1(質量比)で導電性微粒子を塗布している。なお、導電性微粒子単独の抵抗(導電膜抵抗)を調べるために、この塗布試料Aを露光・現像処理せず、定着処理のみ行いハロゲン化銀を抜いて表面抵抗を測定したところ、107Ω/□であった。表面抵抗(Ω/□)は、デジタル超高抵抗/微少電流計8340A(商品名、株式会社エーディーシー社製)により測定した。
【0037】
保護層のSbドープ酸化スズの量を変えたこと以外は塗布試料Aと同様にして塗布試料Bを得た。試料Bは導電性微粒子が0.22g/m2で、導電性微粒子/バインダー比(質量比)は1.2/1であった。なお、この塗布膜を現像処理せず、定着処理のみ行いハロゲン化銀を抜いて表面抵抗を測定したところ、109Ω/□であった。
また、保護層のSbドープ酸化スズを抜き、下引層の乳剤にSbドープ酸化スズを0.3g/m2になるように添加し乾燥して試料Cを得た。下引層の導電性微粒子/バインダー比は1.48/1であった。なお、この塗布膜を現像処理せず、定着処理のみ行いハロゲン化銀を抜いて表面抵抗を測定したところ、1012Ω/□であった。
【0038】
【化1−1】

【化1−2】

【0039】
(露光・現像処理)
次いで、前記で調製した試料A〜Cにライン/スペース=5μm/295μmの現像銀像を与えうる格子状のフォトマスクライン/スペース=295μm/5μm(ピッチ300μm)の、スペースが格子状であるフォトマスクを介して高圧水銀ランプを光源とした平行光を用いて露光し、下記の現像液で現像し、さらに定着液(商品名:CN16X用N3X−R:富士フイルム社製)を用いて現像処理を行った後、純水でリンスし、サンプルA〜Cを得た。
【0040】
[現像液の組成]
現像液1リットル中に、以下の化合物が含まれる。
ハイドロキノン 0.037mol/L
N−メチルアミノフェノール 0.016mol/L
メタホウ酸ナトリウム 0.140mol/L
水酸化ナトリウム 0.360mol/L
臭化ナトリウム 0.031mol/L
メタ重亜硫酸カリウム 0.187mol/L
【0041】
(カレンダー処理)
上記のように現像処理したサンプルをカレンダー処理した。カレンダーロールは金属ロール(鉄芯+ハードクロムメッキ、ロール直径250mm)からなり、線圧力400kgf/cmをかけてローラー間にサンプルを通し、表面抵抗率(オーム/sq、Ω/□)を測定した。
サンプルA、B、Cはカレンダー処理400kgf/cmを行い、サンプルA、B、Cにカレンダー処理をしなかったサンプルをそれぞれ、サンプルD、E、Fとした。
【0042】
(比較例)
比較例として、ハロゲン化銀乳剤塗布品(富士フイルム社製)でライン/スペース=10μm/295μmになるように現像処理し、表面抵抗が30Ω/□であるサンプルと、それにさらにめっき処理をして表面抵抗が0.4Ω/□としたサンプルに対し、ティーエーケミカル株式会社(TA Chemical Co.)の導電性ポリマーBaytron PEDOT (商品名、ポリエチレンジオキシチオフェン)をメッシュ上に塗布したサンプルG、Hを作製した。導電性ポリマー単独の抵抗は、PETベースに塗布し、抵抗測定すると106Ω/□であった。
また、試料Hと同様に現像、めっき処理したあと、何も塗布しない試料をサンプルIとして作製した。
従来使用されている中で、最も導電性が高く、且つ、光透過性の高い技術と比較すべく、ITOフィルムを使用してライン/スペース=10μm/295μmになるようにメッシュパターンを形成してサンプルを作製し、比較例のサンプルJ、Kとした。ここでサンプルJとサンプルKは抵抗値のみが異なる試料で、それぞれ20Ω/□、80Ω/□である。
【0043】
(エレクトロルミネセンス素子の作製)
上記のように作製されたサンプルA〜Kを分散型無機EL(エレクトロルミネッセンス)素子に組み込み、発光テストを行った。
平均粒子サイズが0.03μmの顔料を含む反射絶縁層と蛍光体粒子が50〜60μmの発光層を背面電極となるアルミニウムシート上に塗布し、温風乾燥機を用いて110℃で1時間乾燥した。
その後、サンプルA〜Kを蛍光体層、背面電極の誘電体層面上に重ね、熱圧着してEL素子を形成した。素子を2枚のナイロン6からなる吸水性シートと2枚の防湿フィルムと挟んで熱圧着した。EL素子のサイズは、3cm×5cmであった。
【0044】
(評価)
発光輝度を測定させるために用いた電源は、定周波定電圧電源 CVFT−Dシリーズ(東京精電株式会社製、商品名)を用いた。また、輝度(cd/m)の測定には、輝度計 BM−9(株式会社トプコンテクノハウス製、商品名)を用いた。
【0045】
(結果)
無機EL素子にピーク電圧100V、周波数1000Hz、2000Hzで駆動させ輝度を測定した。その結果を表1に示す。
【表1】

【0046】
また、表2に、各サンプルの構成を整理して示す。
【表2】

【0047】
本発明例であるサンプルA〜Fではメッシュ開口部の導電膜の表面抵抗が107Ω/□以上の高抵抗であるにもかかわらず、輝度低下なく開口部も光った。また、ハロゲン化銀で作製したメッシュ抵抗が8Ω/□と16Ω/□であっても輝度に影響はほぼなかった。それに対し、比較例のサンプルG、Hは全面発光し、透過率の等しいサンプルAとサンプルGを比較してもほぼ変わらない輝度であるが、サンプルGはメッシュ形成後にポリマーを付与していることもあり、工程数が増える問題がある。さらに、サンプルB、Cではメッシュ開口部の導電膜の表面抵抗が高いにもかかわらず輝度が高い結果になっており、本発明の優位性を確認した。
導電性膜を付与しないサンプルIでは、メッシュ近傍しか光らなかった。
また、比較例のサンプルJは輝度が低い結果になっており、サンプルKでは輝度が高いが、実施例2で述べるように長尺サンプルになると輝度が低下する問題が出てくる。
本発明のサンプルは、実用的に十分な透明性であり、導電性微粒子の塗布工程において均一に分散させることができ、製造不良がほとんどなかった。一方、導電性微粒子の塗布量を本発明の範囲外、例えば、3g/m2とした場合には塗布液作製の際に分散に時間がかかり、さらに塗布工程での製造不良が増加した。
【0048】
[実施例2]
次に、実施例1で作製したサンプルと同様にして、ハロゲン化銀乳剤のメッシュ表面抵抗が30、16、8Ω/□の試料をサンプルA2、B2、C2とし、保護層に導電性微粒子を付与して、開口部の導電性微粒子(酸化スズ)の導電膜単独の表面抵抗が109Ω/□であるサンプルを作製した。
比較例として、表面抵抗が30Ω/□の銀メッシュをハロゲン化銀乳剤塗布品で作製し、その後、開口部に導電性ポリマーPedotを付与させ、単独膜抵抗が106Ω/□になるように試料D2を作製した。また、従来使用されている中で、最も導電性が高く、且つ、光透過性の高い技術と比較すべく、ITOフィルムを使用してサンプルを作製し、比較例のサンプルE2、F2とした。ここでE2、F2は抵抗値のみが異なる試料で、それぞれ20Ω/□、80Ω/□である。
上述のようにして作製したサンプルのうち、巾14cm、長さ85cmのサンプルを作製し、ピーク電圧100V、周波数1.4kHzにて駆動し、Agペーストによるバスバーに取出し電極を設け、取出し電極からの距離を変化させて輝度の測定を行った。測定点は、バスバーから5mm、100mm、200mm、300mm、400mm、500mm、600mm、700mm、800mmとした。
【0049】
測定結果を図1に示す。
この結果から、比較例のサンプルE2、F2のITOを使用した試料では、電極からの距離が離れると輝度が低下することが分かる。それに対し、本発明例のC2は電極からの距離が離れても輝度低下なく発光しているのが分かる。メッシュ抵抗が16Ω/□である試料B2はITO表面抵抗20Ω/□のサンプルEとほぼ同じ輝度であるが、表面抵抗20Ω/□のITOは高価かつ枯渇の恐れのある素材であるため、本発明例のほうがよい。
また、メッシュを形成後、導電膜を付与したサンプルD2はサンプルAと同じ輝度であるが、実施例1で述べた通り、メッシュ形成後に導電膜を付与する点で工数が増えるために、本発明の優位性が確認できた。
【0050】
[実施例3]
実施例1のサンプルAの現像銀メッシュからなる導電層をITOからなる導電層に変更し、保護層に含有される導電性微粒子の含有量、導電性微粒子/バインダー質量比を表3のように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてサンプル3−1〜3−3を得た。サンプル3−1〜3−3はライン/スペース=5μm/295μmの格子状パターンであった。得られたサンプルを実施例1のサンプルAと同様にして分散型無機EL素子に組み込み、発光テストを行い評価した。得られた結果を表4に示す。また、サンプル3−1〜3−3について、実施例2と同様にして電極からの距離に対する輝度を測定したところ、電極からの距離が20cm、30cm、40cmでも実用的に十分な輝度を有することがわかった。
【0051】
【表3】

【0052】
【表4】

【0053】
[実施例4]
実施例1のサンプルAの保護層に含有される導電性微粒子の含有量、導電性微粒子/バインダー質量比を表5のように変更したこと以外は、実施例1と同様にしてサンプル4−1〜4−4を得た。サンプル4−1〜4−4はライン/スペース=5μm/295μmの格子状パターンであった。得られたサンプルを実施例1のサンプルAと同様にして分散型無機EL素子に組み込み、発光テストを行い評価したところ、実施例1と同様に十分な輝度を有することがわかった。また、タッチパネルの透明導電膜として使用した場合、ペン入力で文字などの入力情報が途切れることなく直線性に優れることがわかった。
【0054】
【表5】

【0055】
[実施例5]
実施例1のサンプルAの保護層に含有される導電性微粒子の含有量、導電性微粒子/バインダー質量比を表6のように変更(塗布量やバインダ量などを変更して調整)したこと以外は、実施例1と同様にして表6のサンプル5−1〜5−20を得た。なお、この実施例では、保護層にさらに増粘剤(ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム)を添加し、粘度を30cp以上に調整した。
表6のサンプルはライン/スペース=5μm/295μmの格子状パターンであった。得られたサンプルを実施例1のサンプルAと同様にして分散型無機EL素子に組み込み、発光テストを行い評価したところ、実施例1と同様に十分な輝度を有することがわかった。但し、導電性微粒子含有量が少ない場合には、発光輝度が低下することが確認された(サンプル5−18)。また、タッチパネルの透明導電膜として使用した場合、ペン入力で文字などの入力情報が途切れることなく直線性に優れることがわかった。なお、ペン入力の評価は、10×10cmの導電膜を作製し、それに5Vの電圧をかけ、リニアリティを評価した。この評価は、サンプル5-1〜5-7、サンプル5-12〜5-16に対して行った。ここでリニアリティの測定原理を説明する。たとえば、垂直なX,Y電極のリニアリティを測定する場合、X電極に電圧Eを印加すると
リニアリティ(%)=ΔE / E×100 ・・・・・・・(1)
と表すことができる。
ここでは、リニアリティに関する評価を次のような手順で行った。まず、X軸およびY軸を各々等間隔に10分割した。X軸方向およびY軸方向に流す電流値を一定とし、各測定点の電圧を測定した。また、(X1,Y1)、(X10,Y10)を直線で結び、この直線からの各測定点のずれΔEを測定し、(1)式より、リニアリティを評価した。この評価方法で作成した各サンプルの導電膜の出力を測定したリニアリティのX軸,Y軸それぞれの平均値は1%であった。
【0056】
【表6】

【0057】
[実施例6]
実施例1のサンプルAのハロゲン化銀乳剤層の銀/バインダー体積比を1/4、1/3、1/2、2/1、3/1、5/1に変更したこと以外は、実施例1と同様にして各サンプルを得た。各サンプルはライン/スペース=5μm/295μmの格子状パターンであった。得られたサンプルを実施例1のサンプルAと同様にして分散型無機EL素子に組み込み、発光テストを行い評価したところ、実施例1と同様に十分な輝度を有することがわかった。また、タッチパネルの透明導電膜として使用した場合、ペン入力で文字などの入力情報が途切れることなく直線性に優れることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に銀塩含有乳剤層を有する導電膜形成用感光材料であって、
前記銀塩含有乳剤層または銀塩含有乳剤層側のいずれかの層に導電性微粒子及びバインダーを含有し、
前記導電性微粒子及びバインダーの質量比(導電性微粒子/バインダー)が1/33〜1.5/1であることを特徴とする導電膜形成用感光材料。
【請求項2】
前記導電性微粒子及びバインダーの質量比(導電性微粒子/バインダー)が1/3〜1.5/1であることを特徴とする請求項1記載の導電膜形成用感光材料。
【請求項3】
前記導電性微粒子及びバインダーを含有させた層が、前記銀塩含有乳剤層に隣接する層であることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電膜形成用感光材料。
【請求項4】
前記導電性微粒子の塗布量が、0.05〜0.9g/m2であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電膜形成用感光材料。
【請求項5】
前記導電性微粒子の塗布量が、0.2〜0.4g/m2であることを特徴とする請求項4に記載の導電膜形成用感光材料。
【請求項6】
前記導電性微粒子が、SnO2,ZnO,TiO2,Al23,In23,MgO,BaO,およびMoO3からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物、これらの複合金属酸化物、または、これらの金属酸化物に異種原子を含む金属酸化物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電膜形成用感光材料。
【請求項7】
前記導電性微粒子が、アンチモンがドープされたSnO2であることを特徴とする請求項6に記載の導電膜形成用感光材料。
【請求項8】
前記導電性微粒子が球状であるときは平均粒子径が0.085〜0.12μmであり、針状のときは平均軸長が長軸0.2〜20μm,短軸0.01〜0.02μmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の導電膜形成用感光材料。
【請求項9】
前記銀塩含有乳剤層側に、前記銀塩含有乳剤層に隣接する保護層を有し、前記保護層に導電性微粒子及びバインダーを含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の導電膜形成用感光材料。
【請求項10】
支持体上に銀塩含有乳剤層を有する導電膜形成用感光材料であって、
前記銀塩含有乳剤層または銀塩含有乳剤層側のいずれかの層に導電性微粒子及びバインダーを含有し、
前記導電性微粒子の含有量が0.05〜0.9g/m2であることを特徴とする導電膜形成用感光材料。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の導電膜形成用感光材料をパターン露光し、現像処理して得た導電性材料。
【請求項12】
支持体上に導電層を有する導電性材料であって、
前記導電層または導電層側のいずれかの層に導電性微粒子及びバインダーを含有し、
前記導電性微粒子及びバインダーの質量比(導電性微粒子/バインダー)が1/33〜1.5/1であることを特徴とする導電性材料。
【請求項13】
前記導電性微粒子及びバインダーの質量比(導電性微粒子/バインダー)が1/3〜1.5/1であることを特徴とする請求項12記載の導電性材料。
【請求項14】
前記導電性微粒子の塗布量が、0.05〜0.9g/m2であることを特徴とする請求項12又は13に記載の導電性材料。
【請求項15】
前記導電層の表面抵抗が0.01Ω/□以上であることを特徴とする請求項12〜14のいずれか1項に記載の導電性材料。

【図1】
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【公開番号】特開2010−165659(P2010−165659A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142621(P2009−142621)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】