説明

導電路

【課題】ケーブルを配索する際の作業性を向上させると共に、省スペース化を実現することができ、また、ケーブル用固定金具に対してケーブルをしっかりと固定することが可能な導電路を提供する。
【解決手段】ケーブル用固定金具1は、断面視で三角状に配置された3本のケーブル2の外周に沿うように成形される1枚の金属板3と、金属板3の両端部を重ね合わせて形成される取付フランジ部4と、を備え、3本のケーブル2のうち2本のケーブル2は、一体ケーブル11として一体化するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3本のケーブルが配索される導電路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
3本のケーブルが配索される導電路では、所定箇所でケーブルを固定する必要がある。この際に用いられるケーブル用固定金具としては、従来から様々なタイプが開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1〜3に示すようなタイプ、即ち、3本のケーブルを断面視で一直線状に配列する直線状タイプや、特許文献4に示すようなタイプ、即ち、3本のケーブルを断面視で三角状に配列する三角状タイプのケーブル用固定金具がある。
【0004】
前者の直線状タイプのケーブル用固定金具では、ケーブルの配列方向に配索スペースが大きくなってしまうだけでなく、例えば、車体等に取り付ける際、ケーブルの配列方向における両端の2ヶ所に取付部を形成する必要があり、取付スペースが広くなってしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本出願人は、後者の三角状タイプのケーブル用固定金具に着眼し、検討を行った結果、当該三角状タイプのケーブル用固定金具は、車体等に取り付ける際、取付部を1ヶ所にすることができる点において、取付スペースの省スペース化を実現できるだけでなく、断面視で三角状というケーブルの配置が配索スペースの省スペース化の実現にも寄与している点において、有効だと考えた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−276738号公報
【特許文献2】特開2007−31057号公報
【特許文献3】特開2007−53886号公報
【特許文献4】特開2008−148446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の三角状タイプのケーブル用固定金具として、特許文献4があるが、特許文献4のケーブル用固定金具には、以下の問題点があった。特に、車両用として用いる場合には、その問題は顕著であった。
【0008】
特許文献4のケーブル用固定金具では、支持金具が2分割構成となっているため、支持金具の組み立てがある分、ケーブルの配索における作業性が悪かった。
【0009】
また、特許文献4のケーブル用固定金具では、支持金具に挟持されるケーブル支持部材のケーブル挿通孔にケーブルを挿通させる必要があり、ケーブルの配索における作業性が悪かった。
【0010】
さらに、特許文献4のケーブル用固定金具では、3本のケーブルの配置自体は三角状だが、支持金具やケーブル支持部材が円形状であるため、ケーブルを固定する部分であるケーブル用固定金具の部分における配索スペースが広く、省スペース化の観点で、改善の余地があった。
【0011】
また、車両用のケーブル用固定金具では、振動が問題となるが、特許文献4のケーブル用固定金具では、支持金具に挟持されるケーブル支持部材が円形状であるため、振動により、支持金具に対してケーブル支持部材が回転する場合もあり、ケーブルの位置決めの観点で、望ましいことではなかった。
【0012】
さらに、特許文献4のケーブル用固定金具では、ケーブル支持部材のケーブル挿通孔にケーブルを挿通させる構成であるため、ケーブル支持部材とケーブルとの間に隙間ができ、振動により、支持金具に対してケーブルがずれ易くなってしまい、ケーブルの位置決めの観点で、望ましいことではなかった。
【0013】
なお、ケーブルの位置決めがしっかりと為されていない場合、すなわち、ケーブル用固定金具に対してケーブルがしっかりと固定されていない場合、ケーブルに捻れが生じてしまい、ケーブルに不要な力が加わってケーブルが断線し易くなり、また、ケーブルの捻れにより配線レイアウトが意図したレイアウトから変わってしまい、ケーブルが周辺の部材に干渉するなどして不具合が生じるおそれがある。
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ケーブルを配索する際の作業性を向上させると共に、省スペース化を実現することができ、また、ケーブル用固定金具に対してケーブルをしっかりと固定することが可能な導電路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、3本のケーブルと、該3本のケーブルを固定するケーブル用固定金具とを備えた導電路であって、前記ケーブル用固定金具は、断面視で三角状に配置された前記3本のケーブルの外周に沿うように成形される1枚の金属板と、前記金属板の両端部を重ね合わせて形成される取付フランジ部と、を備え、前記3本のケーブルのうち2本のケーブルは、一体ケーブルとして一体化することを特徴する。
【0016】
前記一体ケーブルに、係合溝を形成すると共に、前記ケーブル用固定金具の前記金属板に、前記係合溝に係合する係合突起を形成してもよい。
【0017】
前記一体ケーブルは、前記2本のケーブルの間に、対向する2つの平面部を有し、前記ケーブル用固定金具は、1本の前記ケーブルと前記一体ケーブルとの間に配置され、一本の前記ケーブルと前記一体ケーブルとをそれぞれ支持するケーブル支持部材をさらに備え、前記ケーブル支持部材は、側面視で、台形形状であり、その上底は、前記1本のケーブルの外周の一部と嵌合するように円弧状に形成され、前記上底より左右方向に幅広の下底は、前記一体ケーブルの前記平面部と接するように平面状に形成され、前記上底の両端と前記下底の両端をそれぞれ結ぶ2つの辺は、内側に向けてくびれるくびれ辺であり、前記金属板は、前記ケーブル支持部材と接しない側の前記平面部を含む前記一体ケーブルの外周に沿うように成形した後、前記ケーブル支持部材の前記くびれ辺に沿うように成形し、最後に、残り1本のケーブルの両側の外周に沿うように成形するようにしてもよい。
【0018】
前記取付フランジ部の取付面と反対側の面から、1本の前記ケーブル及び前記一体ケーブルの外周に沿う前記金属板に延びるように、前記取付フランジ部の変形を防止するための変形防止用リブが形成されてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ケーブルを配索する際の作業性を向上させると共に、省スペース化を実現することができ、また、ケーブル用固定金具に対してケーブルをしっかりと固定することが可能な導電路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態に係る導電路を示す図であり、(a)は斜視図、(b)はその1B−1B線断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る導電路を示す図であり、(a)は斜視図、(b)はその2B−2B線断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る導電路を示す図であり、(a)は斜視図、(b)はその3B−3B線断面図、(c)はケーブル支持部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0022】
図1は、本実施の形態に係る導電路を示す図であり、(a)は斜視図、(b)はその1B−1B線断面図である。
【0023】
図1(a),(b)に示すように、導電路10は、3本のケーブル2(2a,2b,2c)と、3本のケーブル2を固定するケーブル用固定金具1と、を備えている。
【0024】
3本のケーブル2は、例えば、車輪のホイール内に内蔵されたインホイールモータに電力を供給するものであり、ケーブル用固定金具1は、例えば、インホイールモータから延びる3本のケーブル2を車体に固定するために用いられる。
【0025】
ここでは、3本のケーブル2として、中心導体6と、中心導体6の周囲を覆う絶縁体7とからなるものを用いるが、これに限らず、シールド用の外部導体を備えたもの(つまり同軸ケーブル)を用いてもよい。
【0026】
ケーブル用固定金具1は、断面視で三角状に配置された3本のケーブル2の外周に沿うように成形される1枚の金属板3と、金属板3の両端部を重ね合わせて形成される取付フランジ部4と、を備えている。なお、詳細は後述するが、本発明の導電路10では、3本のケーブル2のうち2本のケーブル2を一体化するので、より詳細には、3本のケーブル2は、その中心導体6が断面視で三角状となるように配置される。
【0027】
金属板3は、帯状であり、この帯状の金属板3の両端部を板状に重ね合わせた取付フランジ部4と、取付フランジ部4の基端側に形成され、断面視で三角状に配置された3本のケーブル2のうち1本のケーブル(図1(b)では上側の1本のケーブル)2aを挟持する第1挟持部3aと、第1挟持部3aの取付フランジ部4と反対側に形成され、一体化された残りの2本のケーブル(図1(b)では下側の2本のケーブル)2b,2cを挟持する第2挟持部3bと、を有している。
【0028】
第1挟持部3aは、ケーブル2aの外周に沿うように断面視で略円形状に形成され、第2挟持部3bは、ケーブル2b,2cの外周に沿うよう断面視で略長円形状(2つの平行な直線と両直線の端部同士を接続する2つの円弧状の曲線とからなる形状)に形成される。両挟持部3a,3bの間には、くびれ部3cが形成され、くびれ部3cにて両挟持部3a,3bが滑らかに接続されるようになっている。ここでは、くびれ部3cを形成する両側の金属板3の間に隙間を形成し、この隙間を介して、ケーブル2aが挟持される空間と、ケーブル2b,2cが挟持される空間とを連通させるようにしている。
【0029】
取付フランジ部4は、第1挟持部3aから第2挟持部3bと反対側(図1(b)では上方)に延びるように、すなわち、三角状に配置されたケーブル2における三角状の1つの頂部から外方に突出するように設けられる。なお、取付フランジ部4の位置はこれに限定されるものではなく、例えば、取付フランジ部4を第2挟持部3bから下方(図1(b)における下方)に延びるように設けてもよいし、ケーブル用固定金具1を取り付ける取付スペースの形状等に応じて適宜変更可能である。
【0030】
取付フランジ部4には、固定用のボルト(図示せず)を通すための貫通孔8が形成される。この貫通孔8にボルトを通し、当該ボルトを取り付け対象の構造物(車体等)にナット等を用いて固定することにより、ケーブル用固定金具1が取り付け対象の構造物に固定される。
【0031】
本実施の形態に係る導電路10では、3本のケーブル2a〜2cのうち2本のケーブル2b,2cが、一体ケーブル11とされる。
【0032】
ここでは、2本のケーブル2b,2cの長手方向にわたって全体を一体ケーブル11とする場合を説明するが、これに限らず、少なくともケーブル用固定金具1に固定される部分が一体とされていればよい。
【0033】
一体ケーブル11は、2本のケーブル2b,2cの絶縁体7を共通としたものであり、2本の中心導体6を共通の絶縁体7で覆った構造となっている。一体ケーブル11は、断面視で略長円形状(2つの平行な直線と両直線の端部同士を接続する2つの円弧状の曲線とからなる形状)に形成され、2つの中心導体6間は、対向する2つの平面部を有する絶縁体7で埋められた状態となっている。つまり、一体ケーブル11は、2本のケーブル2b,2cの間に、対向する2つの平面部を有する。
【0034】
一体ケーブル11の断面視での大きさは、第2挟持部3bで囲まれた空間よりも若干大きく形成されることが望ましい。これにより、一体ケーブル11を第2挟持部3bで挟持したときに、一体ケーブル11の絶縁体7が金属板3により圧迫されて、金属板3に対して一体ケーブル11をしっかりと固定することが可能になる。
【0035】
一体ケーブル11には、一体ケーブル11の長手方向に沿って係合溝12が形成される。係合溝12は、中心導体6の配列方向であって、絶縁体7の中央部の一側(図1(b)では下側)に形成される。つまり、係合溝12は、2本のケーブル2b,2cの間の対向する2つの平面部のうち金属板3と接する側の平面部に形成される。また、金属板3の第2挟持部3bには、金属板3の一部を折り曲げ加工して、一体ケーブル11の係合溝12に係合する係合突起13が形成される。係合溝12と係合突起13は、金属板3に対する一体ケーブル11の位置ずれを抑制するためのものである。
【0036】
なお、インホイールモータなどの機器に接続する際には、一体ケーブル11を2本のケーブル2b,2cに分割する必要があるが、導電路10では、この係合溝12を基準に、即ち、係合溝12に沿って一体ケーブル11を分割することで、容易に一体ケーブル11を分割できる。つまり、係合溝12には、ケーブル分割機能と、位置ずれ抑制機能の両方を備えている。
【0037】
ケーブル用固定金具1に3本のケーブル2a〜2cを固定する際には、まず、金属板3の両端部(つまり取付フランジ部4)が開口した状態とし、ケーブル2b,2cを一体とした一体ケーブル11の平面部が金属板3と接するように配置し、その後、金属板3の両端部を引き合わせることで、該開口を閉鎖し、一体ケーブル11を第2挟持部3b内に収容する。さらに、金属板3の両端部を引き合わせる途中で、第1挟持部3a内にケーブル2aを収容し、この状態で、金属板3の両端部(取付フランジ部4)を閉口させる。
【0038】
このとき、一体ケーブル11に平面部があるので、一体ケーブル11が金属板3に接し易くなり、結果として、金属板3の両端部を引き合わせ易くなる。
【0039】
その後、金属板3の両端部(取付フランジ部4)を閉口させると、第2挟持部3b内の空間が狭まるように金属板3が変形するので、第2挟持部3bにより一体ケーブル11(ケーブル2b,2c)が挟持され、一体ケーブル11(ケーブル2b,2c)が金属板3に対してしっかりと固定される。同様に、第1挟持部3aにはケーブル2aが挟持され、ケーブル2aが金属板3に対してしっかりと固定される。なお、貫通孔8に通したボルトを締結することで、ケーブル用固定金具1を取り付け対象の構造物に固定すると同時に、金属板3の両端部(取付フランジ部4)を閉口させることができる。
【0040】
要するに、本実施の形態に係る金属板3では、一体ケーブル11を挟持するための第2挟持部3bを形成するために、一体ケーブル11の外周に沿うように成形した後、残り1本のケーブル2aを挟持するための第1挟持部3aを形成するために、ケーブル2aの両端の外周に沿うように成形している。
【0041】
この様に構成することで、3本のケーブル2を金属板3に対してしっかりと固定できるだけでなく、3本のケーブル2を金属板3に対して別々に配置するときに比べ、格段に作業性が向上する。
【0042】
さらに、本発明は、2本のケーブル2b,2cを一体化した一体ケーブル11と、1本のケーブル2aというケーブルの組み合わせに1つ特徴がある。この様なケーブルの組み合わせとすることで、図1(b)に示すように、各ケーブル(一体ケーブル11,ケーブル2a)に対し金属板3が左右方向(両端側)から挟持することができるようになるため、各ケーブルをしっかりと固定することが可能となる。
【0043】
本実施の形態の作用を説明する。
【0044】
本実施の形態に係る導電路10では、断面視で三角状に配置された3本のケーブル2の外周に沿うように成形される1枚の金属板3と、金属板3の両端部を重ね合わせて形成される取付フランジ部4と、を備えたケーブル用固定金具1を用い、かつ、3本のケーブル2のうち2本のケーブル2b,2cを、一体ケーブル11としている。
【0045】
ケーブル2b,2cを一体ケーブル11とすることで、中心導体6間の絶縁体7がケーブル2b,2cを金属板3との間で支持する役割を果たし、一体ケーブル11(ケーブル2b,2c)を金属板3に対してしっかりと固定することが可能となる。よって、導電路10を車両用に用いた場合であっても、振動によりケーブル2b,2cの位置ずれが発生してしまうことを抑制できる。
【0046】
また、ケーブル2b,2cを一体ケーブル11とすることで、ケーブル2b,2cを一体としない場合と比較して、ケーブル2の取扱いが容易となり、ケーブル2をケーブル用固定金具1に固定する作業が容易となる。よって、ケーブル2を配索する際の作業性を向上できる。
【0047】
なお、ケーブル2b,2cを一体とせず、ケーブル2b,2cを、金属板3の一部をC字状に成形して形成した挟持部に個別に挟持させる構成も考えられるが、この場合、金属板3の両端部(取付フランジ部4)を閉口させても、ケーブル2b,2cが十分に挟持されず、振動によりケーブル2b,2cの位置ずれが発生してしまうおそれがある。これは、ケーブル2を三角状に配置しているために、金属板3の両端部(取付フランジ部4)を閉口させても、その閉口による変形がケーブル2b,2cを挟持する方向に働かない場合があるためである。
【0048】
また、ケーブル2b,2cを一体とせず、ケーブル2b,2cを第2挟持部3bで直接挟持させることも考えられるが、この場合、ケーブル2b,2cが過度に変形してしまうおそれがあり、当該変形によりケーブル2b,2cが断線したり、ケーブル2b,2cの電気的特性が悪化したりするおそれがある。
【0049】
さらに、ケーブル2b,2cを一体とせず、金属板3のみでケーブル2を固定する場合、外力による金属板3の変形、あるいは金属板3の加工不良によりケーブル2がしっかりと固定されないおそれが生じるが、本発明の導電路10によれば、ケーブル2b,2cを一体ケーブル11とすることでケーブル2b,2cをより強固に固定することができるため、外力による金属板3の変形や、金属板3の加工不良があった場合でも、形状を保持し、ケーブル2をしっかりと固定できる。よって、信頼性を向上できる。
【0050】
また、導電路10では、ケーブル2b,2cを一体ケーブル11とし、2つの中心導体6を絶縁体7で覆って一体ケーブル11を形成しているため、ケーブル挿通孔にケーブルを挿通させる従来のケーブル用固定金具のように、ケーブルの周囲に隙間が形成されない。よって、ケーブル2b,2cをしっかりと固定し、位置決めすることができる。また、従来のようにケーブル挿通孔にケーブルを挿通させる作業が不要となるので、ケーブル2の配索における作業性を向上できる。
【0051】
さらに、導電路10では、金属板3が分割構成となっていないため、従来のような組み立て作業が不要となり、ケーブル2の配索における作業性を向上できる。
【0052】
さらにまた、導電路10では、金属板3を、断面視で三角状に配置した3本のケーブル2の外周に沿うように成形するため、ケーブル用固定金具1全体を小型化し、ケーブル用固定金具1の部分における配索スペースを小さくすることができ、省スペース化に寄与する。また、一体ケーブル11が振動により回転してしまうこともないので、ケーブル2b,2cをしっかりと固定し、位置決めすることができる。
【0053】
また、導電路10では、一体ケーブル11に係合溝12を形成すると共に、ケーブル用固定金具1の金属板3に、係合溝12に係合する係合突起13を形成しているため、金属板3に対する一体ケーブル11の位置ずれを抑制することができる。
【0054】
次に、本発明の他の実施の形態を説明する。
【0055】
図2(a),(b)に示す導電路20は、基本的に図1の導電路10と同じ構成であり、くびれ部3cを形成する両側の金属板3の間に隙間が形成されないようにし、ケーブル2aが挟持される空間と、ケーブル2b,2cが挟持される空間とを分割させるようにしたケーブル用固定金具21を用いた点が異なる。このように、くびれ部3cにより、ケーブル2aが挟持される空間と、ケーブル2b,2cが挟持される空間とを分割しても、上述の導電路10と同様の効果が得られる。
【0056】
図3(a)〜(c)に示す導電路30は、基本的に図1の導電路10と同じ構成であり、1本のケーブル2aと一体ケーブル11との間に配置され、一本のケーブル2aと一体ケーブル11とをそれぞれ支持するケーブル支持部材32を備えたケーブル用固定金具31を用いた点が異なる。
【0057】
ケーブル支持部材32は、金属板3の幅(図3(a)における上下方向の長さ)と略同じ長さに形成され、ケーブル2aと一体ケーブル11の外周に沿い、かつ、金属板3の内周面に沿う形状(つまり、ケーブル2aと一体ケーブル11との間の空間を埋める形状)に形成される。ケーブル支持部材32は、アルミニウムなどの金属、樹脂、あるいはゴムなどからなる。
【0058】
より詳しくは、ケーブル支持部材32は、図3(b)に示すように、側面視で、台形形状であり、その上底は、1本のケーブル2aの外周の一部と嵌合するように円弧状に形成され、上底より左右方向に幅広の下底は、一体ケーブル11の平面部と接するように平面状に形成され、上底の両端と前記下底の両端をそれぞれ結ぶ2つの辺は、内側に向けてくびれるくびれ辺である。そして、このくびれ辺に、金属板3のくびれ部3cが合致するように構成されている。
【0059】
本実施の他の形態である図3(a)〜(c)に示す金属板3では、一体ケーブル11を挟持するための第2挟持部3bを形成するために、ケーブル支持部材32と接しない側の平面部を含む一体ケーブル11の外周に沿うように成形した後、ケーブル支持部材32のくびれ辺に沿うように成形し、最後に、残り1本のケーブル2aを挟持するための第1挟持部3aを形成するために、ケーブル2aの両端の外周に沿うように成形している。
【0060】
導電路30によれば、ケーブル支持部材32により、ケーブル2aと一体ケーブル11、すなわち、3本のケーブル2a〜2c全てを金属板3に対してしっかりと固定することが可能となる。
【0061】
なお、図3(a)〜(c)に示す構成において、ケーブル支持部材32のくびれ辺に金属板3のくびれ部3cを合致させる際、ケーブル支持部材32に下向きの力、即ち、一体ケーブル11に向けて力が加わるように、金属板3の形状を設計しても良い。この様に構成することにより、より強固に、一体ケーブル11をケーブル用固定金具30に固定することができる。
【0062】
また、導電路30のケーブル用固定金具31では、取付フランジ部4の取付面と反対側の面、換言すれば、ボルトを取り付けた際にボルトの頭部が位置する側の面(図3(a)では右手前の面)から、3本のケーブル2a〜2c(1本のケーブル2a及び一体ケーブル11)の外周に沿う金属板3に延びる(ここでは、第2挟持部3bまで延びる)ように、変形防止用リブ33が形成されている。変形防止用リブ33は、取付フランジ部4の変形を防止するためのものであり、取付フランジ部4に対して垂直に延びるように形成される。なお、上述の図1,2の導電路10,20においては言及しなかったが、導電路10,20のケーブル用固定金具1,21においても、取付フランジ部4の変形を防止するために、変形防止用リブ33を形成することが可能である。
【0063】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0064】
例えば、上記実施の形態では、2本のケーブル2b,2cの絶縁体7を共通として一体ケーブル11を形成したが、これに限らず、2本のケーブル2b,2cを樹脂でモールドして一体化することで、一体ケーブル11を形成するようにしてもよい。
【0065】
また、例えば、上記実施の形態では、一体ケーブル11は、2本のケーブル2b,2c(より正確には、中心導体6のみだが、多層又は単層の被覆付きの中心導体6でも良い)を共有の絶縁体7で一体化し、尚且つ、ケーブル2b,2cと絶縁体7との間は、屈曲させても、相対的に動かない程度に、強く密着させていたが、これに限らず、一体ケーブルを屈曲させた際、ケーブル2b,2cと絶縁体7との間を意図的に、相対的に動く程度に、弱く密着させるという構成であってよい。このように構成することにより、例えば、図1(b)で言えば、一体ケーブルを左右方向、どちらかの方向に屈曲させた際、外側に位置するケーブルと絶縁体7との間で、ストレスがかからないので、例えば、絶縁体7が裂けるとか、伸びるといった不具合が発生するおそれが無くなる。
【符号の説明】
【0066】
1 ケーブル用固定金具
2 ケーブル
3 金属板
4 取付フランジ部
5 ケーブル支持部材
10 導電路
11 一体ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3本のケーブルと、該3本のケーブルを固定するケーブル用固定金具とを備えた導電路であって、
前記ケーブル用固定金具は、
断面視で三角状に配置された前記3本のケーブルの外周に沿うように成形される1枚の金属板と、
前記金属板の両端部を重ね合わせて形成される取付フランジ部と、を備え、
前記3本のケーブルのうち2本のケーブルは、一体ケーブルとして一体化することを特徴とする導電路。
【請求項2】
前記一体ケーブルに、係合溝を形成すると共に、
前記ケーブル用固定金具の前記金属板に、前記係合溝に係合する係合突起を形成した請求項1記載の導電路。
【請求項3】
前記一体ケーブルは、前記2本のケーブルの間に、対向する2つの平面部を有し、
前記ケーブル用固定金具は、
1本の前記ケーブルと前記一体ケーブルとの間に配置され、一本の前記ケーブルと前記一体ケーブルとをそれぞれ支持するケーブル支持部材をさらに備え、
前記ケーブル支持部材は、
側面視で、台形形状であり、
その上底は、前記1本のケーブルの外周の一部と嵌合するように円弧状に形成され、
前記上底より左右方向に幅広の下底は、前記一体ケーブルの前記平面部と接するように平面状に形成され、
前記上底の両端と前記下底の両端をそれぞれ結ぶ2つの辺は、内側に向けてくびれるくびれ辺であり、
前記金属板は、
前記ケーブル支持部材と接しない側の前記平面部を含む前記一体ケーブルの外周に沿うように成形した後、
前記ケーブル支持部材の前記くびれ辺に沿うように成形し、
最後に、残り1本のケーブルの両側の外周に沿うように成形する請求項1または2記載の導電路。
【請求項4】
前記取付フランジ部の取付面と反対側の面から、1本の前記ケーブル及び前記一体ケーブルの外周に沿う前記金属板に延びるように、前記取付フランジ部の変形を防止するための変形防止用リブが形成される請求項1〜3いずれかに記載の導電路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−100468(P2012−100468A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247414(P2010−247414)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】