説明

導風板を用いたシェルフの冷却装置、冷却装置を持つシェルフ、及び冷却方法

【課題】一般的な収容ラックは、その両側面は閉塞しており、電子装置の吸気や排気の通風抵抗になっていた。更に、排気が収容ラックの側面に当たり、電子装置が排気した熱が収容ラックの内部で循環し、その高い熱を持った空気を再びシェルフ内部へ取り込んでしまい、効率よくパッケージを冷却することができないという課題があった。
【解決手段】パッケージが略水平に搭載されるシェルフに組み込まれる冷却装置において、前記パッケージの両側であって、前記シェルフに正面から正対した場合の右側及び左側に通風路を備え、シェルフ前面部のうち、一方の前記通風路に面する部分に吸気口を備え、シェルフ背面部のうち、前記一方の前記通風路とは他方の前記通風路に面する部分に排気口を備え、前記通風路の片方に導風板が配置されていることを特徴とする冷却装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージを収容するシェルフの冷却装置、冷却装置を持つシェルフ、及び冷却方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通信装置などの電子装置は、シェルフと、そのシェルフ内の収納部に搭載されたパッケージ等を備えている。通常、パッケージは動作時に発熱する。そのため、パッケージを強制的に冷却するために、収納部と排気口の間に送風ファンユニットが設けられる。
【0003】
近年の電子装置に対しては、小型化が要求されている。例えば、通信装置では、シェルフを搭載する収容ラックとして19インチタイプが一般的になっている。これに伴って、シェルフの幅を450mm以下にすることが要求されている。一方で、パッケージに対しては高機能化が要求されているため、パッケージの占める領域を小さくすることは困難である。更に、パッケージの外形寸法は通信業界等により規格化されることが多い。通信装置の高機能化に伴い高密度化が進む収容ラックの容積を有効に使うためには、収容ラックの幅方向のサイズ制限からおおよそ6枚までのパッケージは電子装置に水平に搭載するほうが効率がよい場合が多い。一方、おおよそ7枚以上のパッケージは電子装置に垂直に搭載したほうが効率がよい場合が多い。本発明の電子装置は、おおよそ6枚までのパッケージを水平に搭載するものに関する。
【0004】
従来のパッケージを水平に搭載する電子装置は、例えば図6(特許文献の図1に相当する)に記載されるように、シェルフの収納部へパッケージを水平に搭載し、シェルフの一側面部に収納部へつながる吸気口を設け、シェルフの対向側面部に収納部からつながる排気口を設け、収納部と排気口との間に送風ファンユニットを設ける構造となっていた。つまり、シェルフに水平に搭載されるパッケージへ吸気口から直線的に空気を取り入れ、更に直線的に空気を排気口から排気させる構造となっている。
【0005】
特許文献1においては、シェルフの側面部の一部にファンユニットを設けるとともに、前記側面部において、前記ファンユニットに隣り合うように誘導板を設け、ファンユニットから漏れ出た風を誘導板でパッケージ実装領域に導く発明が開示されている。
【0006】
特許文献2においては、電子機器の筐体の側面部に、開閉自在の蛇腹を設けて、通風路の個々の冷却空気流を個別に独立して遮断する発明が開示されている。
【0007】
特許文献3においては、ケースの側板に空気流通用の切欠穴を設け、更に前記側板に空冷式ファンユニットの設けられた対流案内板を取り付けることにより、ケースの後面をコネクタの取り付け等に使用することを可能とする発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−206168号公報
【特許文献2】実開昭59−081080号公報
【特許文献3】実公昭62−021035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、一般的な収容ラックは、その両側面は閉塞しており、電子装置の吸気や排気の通風抵抗になっていた。更に、排気が収容ラックの側面に当たり、電子装置が排気した熱が収容ラックの内部で循環し、その高い熱を持った空気を再びシェルフ内部へ取り込んでしまい、効率よくパッケージを冷却することができないという課題があった。
【0010】
そこで、本発明は、両側面が閉塞している収容ラックに搭載した場合であっても効率よくパッケージを冷却することが可能な、導風板を用いたシェルフの冷却装置、冷却装置を持つシェルフ、及び冷却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の観点によれば、
パッケージが略水平に搭載されるシェルフに組み込まれる冷却装置において、
前記パッケージの両側であって、前記シェルフに正面から正対した場合の右側及び左側に通風路を備え、
シェルフ前面部のうち、一方の前記通風路に面する部分に吸気口を備え、
シェルフ背面部のうち、前記一方の前記通風路とは他方の前記通風路に面する部分に排気口を備え、
前記通風路の片方に導風板が配置されていることを特徴とする冷却装置が提供される。
【0012】
また、本発明の第2の観点によれば、
パッケージの両側であって、シェルフに正面から正対した場合の右側及び左側に通風路を備え、
シェルフ前面部のうち、一方の前記通風路に面する部分に吸気口を備え、
シェルフ背面部のうち、前記一方の前記通風路とは他方の前記通風路に面する部分に排気口を備え、
排気口に面して送風ファンユニットが設置されており、
前記通風路の片方に導風板が配置されていることを特徴とする電子装置の冷却方法において、
前記送風ファンユニットを回転させるステップと、
前記吸気口から取り込まれた空気を前記導風板により分散させ、前記パッケージ上を均一に流れさせるステップとを含むことを特徴とする電子装置の冷却方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電子装置においては、一般的な収容ラックは前面及び背面が開口面となっていることに着目し、この開口面と一致するように電子装置のシェルフの前面部に吸気口を、またシェルフの背面部に排気口を設けた。このため、常に収容ラック外部の空気をシェルフ内部へ取り込むことができるので、効率のよい冷却が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態による前面方向から見た電子装置から、導風板10、11を除去した斜視図である。
【図2】本発明の実施形態による背面方向から見た電子装置の斜視図である。
【図3】本発明の実施形態による前面方向から見た電子装置で、シェルフ1を透過した斜視図である。
【図4】上面から見た電子装置の断面図で、導風板10、11がない場合の風の流れAa、Ab、Acを示した図である。
【図5】本発明の実施形態による上面から見た電子装置の断面図で、導風板10、11を設置した場合の風の流れAa、Ab、Acを示した図である。
【図6】特許文献1の図1に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施形態1]
(構成の説明)
図1において、シェルフ1の収納部1bには前面方向から水平にパッケージ2を複数枚搭載している。なお、パッケージ2はバックボード3を介し、電源部5から電力の供給を受けて動作しながら発熱するが、ある一定の温度を超えると機能を著しく低下させるため、冷却する必要がある。シェルフ1の前面部には吸気口1aが設置されている。ここで、吸気口1aと、シェルフ1の収納部1bは通風可能につながっている。
【0016】
図2において、シェルフ1の背面部には排気口1cが設置されている。ここで、シェルフ1の収納部1bと排気口1cは通風可能につながっている。
【0017】
図1と図2から明らかなように、シェルフ1の収納部1bと排気口1cの間には送付ファンユニット4が設けられている。
【0018】
図4により、以上の構成によるパッケージ2を通解する風の流れを説明する。シェルフ1の収納部1bにはパッケージ2が水平に搭載されており、動作により発熱している。シェルフ1の前後方向の吸排気に対し、パッケージ2には横方向に空気を流す必要がある。送風ファンユニット4のファンの回転によって送風力が発生すると、吸気口1aから空気Aaが取り込まれ、シェルフ1の収納部1bへ送り込まれる。収納部1bに取り込まれた空気Abは、パッケージ2を奪熱しながら通過する。ここで、パッケージ2を通過する空気Abは、吸気口1aから送風ファンユニット4へ向かって最短距離で流れようとするため、横方向には流れず、パッケージ2を斜めに流れる。これにより、パッケージ2には風の流れの少ない部分が発生し、空気Abによる奪熱ができずに冷却不十分となる高温エリアHa、Hbが発生する。その後、送風ファンユニット4によって排気口1cからシェルフ1の背面方向へ空気Acが排気される。なお、高温エリアHa、Hbが発生すると、パッケージ2の機能は著しく低下してしまう。
【0019】
これを解決するため、図3に示すように、収納部1bの吸気口1a側に導風板10を、排気口1c側に導風板11を設けている。なお、導風板10、11は、収納部1bの導風方向に対して抵抗となるように複数枚を斜めに取り付けている。また、導風板10、11は、収納部1bに対して両方取り付けてもよいし、一方だけ取り付けてもよい。
【0020】
(動作の説明)
次に、第1の実施形態の動作を説明する。
【0021】
図1に示すように、電子装置のシェルフ1の収納部1bには水平にパッケージ2が複数枚搭載されており、また、パッケージ2はバックボード3を介し、電源部5から電力の供給を受けて動作しながら発熱している。
【0022】
図5において、まず、送風ファンユニット4のファンの回転によって送風力が発生すると、吸気口1aから空気Aaが取り込まれ、シェルフ1の収納部1bへ送り込まれる。このとき、空気Aaは一旦、複数の導風板10に当たり、分散されながら風の向きが変えられる。
【0023】
収納部1bに取り込まれた空気Abは、パッケージ2上を略均一に流れ、奪熱しながら通過する。
【0024】
更に空気Abは、収納部1bの排気口1c側にある複数の導風板11に当たり、分散されながら風の向きが変えられる。
【0025】
その後、送風ファンユニット4によって排気口1cからシェルフ1の背面方向へ空気Acが排気される。
【0026】
電子装置は通常、収容ラックに搭載されて使用される。収容ラックは一般的に前面、及び背面に通風可能な開口面を備えており、左右両側面は通風が塞がれた閉塞面となっている。上述したように本発明の一実施例の電子装置においては、一般的な収容ラックの開口面、すなわち前面及び背面と一致するようにシェルフ1に吸気口1aと排気口1cを設けている。更にシェルフ1には導風板10、11を取り付けている。そのため、常に収容ラック外部の空気を電子装置の前面側からシェルフ1へ取り込み、導風板10、11によってその風を横方向に変えながら収納部1bを略均一に流し、再び収容ラック外部へ空気を電子装置の背面側から排気することが可能である。そして、確実に、効率よくパッケージ2の冷却が実現でき、冷却不十分となる高温エリアの発生を抑えることができる。
【0027】
本発明の電子装置においては、一般的な収容ラックは前面及び背面が開口面となっていることに着目し、この開口面と一致するように電子装置のシェルフの前面部に吸気口を、またシェルフの背面部に排気口を設けた。このため、常に収容ラック外部の空気をシェルフ内部へ取り込むことができるので、効率のよい冷却が実現できる。
【0028】
但し、パッケージに対しては横方向に空気を流す必要がある。単に前面から空気を取り入れ、背面から排気したのでは、吸気口と排気口が対角位置になるように配置されているため、空気はパッケージ上を最短距離で、すなわち斜めに流れてしまい、部分的に高温となり、著しく機能を低下させてしまう。そこで、本発明の電子装置においては、シェルフに取り込んだ空気の流れを、横方向へ変える導風板を、収納部に取り付けた。これにより、常に収容ラック外部の空気をシェルフ内部へ取り込むことが可能であるとともに、パッケージに対しては空気を横方向に均一に流し、パッケージの確実な冷却を実現するものである。
【0029】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0030】
(付記1)
パッケージが略水平に搭載されるシェルフに組み込まれる冷却装置において、
前記パッケージの両側であって、前記シェルフに正面から正対した場合の右側及び左側に通風路を含み、
シェルフ前面部のうち、一方の前記通風路に面する部分に吸気口を含み、
シェルフ背面部のうち、前記一方の前記通風路とは他方の前記通風路に面する部分に排気口を含み、
前記通風路の片方に導風板が配置されていることを特徴とする冷却装置。
【0031】
(付記2)
前記通風路の双方に導風板が配置されていることを特徴とする、付記1に記載の冷却装置。
【0032】
(付記3)
前記導風板は、一つの通風路に単数設けられていることを特徴とする付記1又は2に記載の冷却装置。
【0033】
(付記4)
前記導風板は、一つの通風路に複数設けられていることを特徴とする付記1又は2に記載の冷却装置。
【0034】
(付記5)
前記導風板は、その長手方向が前記パッケージの平面とは垂直方向であることを特徴とする付記1乃至4に記載の冷却装置。
【0035】
(付記6)
排気口に面して送風ファンユニットが設置されていることを特徴とする付記1乃至5に記載の冷却装置。
【0036】
(付記7)
パッケージが略水平に搭載されるシェルフにおいて、付記1乃至6の何れか1に記載の冷却装置を搭載したシェルフ。
【0037】
(付記8)
パッケージの両側であって、シェルフに正面から正対した場合の右側及び左側に通風路を含み、
シェルフ前面部のうち、一方の前記通風路に面する部分に吸気口を含み、
シェルフ背面部のうち、前記一方の前記通風路とは他方の前記通風路に面する部分に排気口を含み、
排気口に面して送風ファンユニットが設置されており、
前記通風路の片方に導風板が配置されていることを特徴とする電子装置の冷却方法において、
前記送風ファンユニットを回転させるステップと、
前記吸気口から取り込まれた空気を前記導風板により分散させ、前記パッケージ上を均一に流れさせるステップとを含むことを特徴とする電子装置の冷却方法。
【0038】
(付記9)
前記通風路の双方に導風板が配置されていることを特徴とする、付記8に記載の電子装置の冷却方法。
【0039】
(付記10)
前記導風板は、一つの通風路に単数設けられていることを特徴とする付記8又は9に記載の電子装置の冷却方法。
【0040】
(付記11)
前記導風板は、一つの通風路に複数設けられていることを特徴とする付記8又は9に記載の電子装置の冷却方法。
【0041】
(付記12)
前記導風板は、その長手方向が前記パッケージの平面とは垂直方向であることを特徴とする付記8乃至11に記載の電子装置の冷却方法。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上詳述したように、本発明は、パッケージの収容された電子装置を均一に冷却するための構造であり、本発明を用いることで、側面部の閉塞された収容ラックでも、パッケージを効率よく確実に冷却することが出来る。
【符号の説明】
【0043】
1 シェルフ
2 パッケージ
3 バックボード
4 送風ファンユニット
5 電源部
10 導風板
11 導風板
1a 吸気口
1b 収納部
1c 排気口
Aa 空気の流れ
Ab 空気の流れ
Ac 空気の流れ
Ha 高温エリア
Hb 高温エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッケージが略水平に搭載されるシェルフに組み込まれる冷却装置において、
前記パッケージの両側であって、前記シェルフに正面から正対した場合の右側及び左側に通風路を備え、
シェルフ前面部のうち、一方の前記通風路に面する部分に吸気口を備え、
シェルフ背面部のうち、前記一方の前記通風路とは他方の前記通風路に面する部分に排気口を備え、
前記通風路の片方に導風板が配置されていることを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記通風路の双方に導風板が配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記導風板は、一つの通風路に単数設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記導風板は、一つの通風路に複数設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記導風板は、その長手方向が前記パッケージの平面とは垂直方向であることを特徴とする請求項1乃至4に記載の冷却装置。
【請求項6】
排気口に面して送風ファンユニットが設置されていることを特徴とする請求項1乃至5に記載の冷却装置。
【請求項7】
パッケージが略水平に搭載されるシェルフにおいて、請求項1乃至6の何れか1項に記載の冷却装置を搭載したシェルフ。
【請求項8】
パッケージの両側であって、シェルフに正面から正対した場合の右側及び左側に通風路を備え、
シェルフ前面部のうち、一方の前記通風路に面する部分に吸気口を備え、
シェルフ背面部のうち、前記一方の前記通風路とは他方の前記通風路に面する部分に排気口を備え、
排気口に面して送風ファンユニットが設置されており、
前記通風路の片方に導風板が配置されていることを特徴とする電子装置の冷却方法において、
前記送風ファンユニットを回転させるステップと、
前記吸気口から取り込まれた空気を前記導風板により分散させ、前記パッケージ上を均一に流れさせるステップとを含むことを特徴とする電子装置の冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−156367(P2012−156367A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15255(P2011−15255)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(390001074)NECネットワークプロダクツ株式会社 (23)
【Fターム(参考)】