説明

小モジュラー免疫薬タンパク質を精製する方法

【課題】中でも、タンパク質、特に、小モジュラー免疫薬(SMIP(商標))タンパク質を、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーに基づいて、高分子量(HMW)凝集物およびその他の不純物を含有するタンパク質調製物から精製または回収する方法を提供すること。
【解決手段】いくつかの実施形態では、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーを、アフィニティークロマトグラフィーおよび/またはイオン交換クロマトグラフィーと組み合わせて使用する。いくつかの実施形態では、本発明による方法は、3つ以下のクロマトグラフィーステップを含む。本発明はまた、本発明に従って精製されたSMIP(商標)などのタンパク質およびそれを含有する医薬組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2009年3月11日に出願された米国仮特許出願第61/159,347号の利益を主張し、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
一般に、タンパク質が、製薬用途で製造される場合には、タンパク質調製物から夾雑物が除去されなければならず、その後、それらを診断的適用、治療的適用、応用細胞生物学および機能研究において使用できる。例えば、培養細胞から収集されたタンパク質調製物は、細胞によって産生されたタンパク質の高分子量(HMW)凝集物などの不要な成分を含有することが多い。高分子量凝集物は、投与時に補体活性化またはアナフィラキシーを引き起こすことによって、製品の安全性に悪影響を及ぼし得る。さらに、凝集物は、生成物収率の低下、ピークの広がりおよび活性の喪失を引き起こすことによって製造工程を妨げる場合がある。
【0003】
小モジュラー免疫薬(SMIP(商標))タンパク質は、抗体およびその他の治療用タンパク質と比較して、比較的新しいクラスの医薬用タンパク質に属する。したがって、SMIP(商標)タンパク質の精製は、この型のタンパク質がよく知られていないために特に困難である。さらに、SMIP(商標)タンパク質は、高い凝集傾向を有する。例えば、細胞培養物中のHMW凝集物のパーセンテージは、50〜60%ほど高い場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、中でも、HMW凝集物を含有するタンパク質を精製する有効な方法を提供する。本発明は、小モジュラー免疫薬タンパク質を、3つ以下のクロマトグラフィーステップを用いて、高いパーセンテージのHMW凝集物を含有する(例えば、50〜60%を超える)タンパク質調製物から精製できるという発見を包含する。したがって、本発明による方法は、カラムステップの数を低減し、その結果、工程所要時間を大幅に短縮し、生成物収率を改善する。本発明は、小モジュラー免疫薬タンパク質を精製するために特に有用である。本発明の方法はまた、その他のタンパク質、特に、凝集傾向を有するタンパク質を精製するために使用することもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、本発明は、タンパク質調製物を、精製された小モジュラー免疫薬タンパク質が4%未満(例えば、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%、1%、0.8%、0.6%、0.5%、0.4%、0.2%または0.1%未満)の凝集物しか含有しないような操作条件下で、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーにかけるステップを含む、高分子凝集物を含有するタンパク質調製物から小モジュラー免疫薬タンパク質を精製する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、3つ以下のクロマトグラフィーステップを含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、操作条件は、リン酸バッファー中で、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーカラムから小モジュラー免疫薬タンパク質を溶出することを含む。いくつかの実施形態では、リン酸バッファーは、エンドトキシンを含まない。いくつかの実施形態では、リン酸バッファーの発熱物質が除去されている(depyrogenated)。いくつかの実施形態では、リン酸バッファーは、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムおよび/またはリン酸リチウムを含む。いくつかの実施形態では、適したリン酸バッファーは、1mM〜50mMの濃度のリン酸ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、適したリン酸バッファーは、100mM〜2.5Mの濃度の塩化ナトリウムをさらに含有する。いくつかの実施形態では、適したリン酸バッファーは、2mM〜32mMの濃度のリン酸ナトリウムおよび100mM〜1.6Mの濃度の塩化ナトリウムを含有する。いくつかの実施形態では、適したリン酸バッファーは、6.5〜8.5のpHを有する。
【0007】
いくつかの実施形態では、操作条件は、NaCl勾配によってヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーカラムから小モジュラー免疫薬タンパク質を溶出することを含む。いくつかの実施形態では、操作条件は、NaCl段階溶出法によってヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーカラムから小モジュラー免疫薬タンパク質を溶出することを含む。いくつかの実施形態では、操作条件は、リン酸勾配(例えば、直線リン酸勾配)によってヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーカラムから小モジュラー免疫薬タンパク質を溶出することを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーは、セラミックヒドロキシアパタイトI型またはII型樹脂を含有するカラムを使用する。いくつかの実施形態では、カラムは、セラミックヒドロキシアパタイトI型樹脂を含む。いくつかの実施形態では、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーに適した樹脂は、直径1μm〜1,000μmである。いくつかの実施形態では、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーに適した樹脂は、直径10μm〜100μmである。
【0009】
いくつかの実施形態では、その方法は、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーのステップの前にアフィニティークロマトグラフィーによってタンパク質調製物を精製するステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、アフィニティークロマトグラフィーステップは、定常免疫グロブリンドメインと結合するタンパク質吸収剤を使用する。いくつかの実施形態では、アフィニティークロマトグラフィーは、可変免疫グロブリンドメインと結合するタンパク質吸収剤を使用する。いくつかの実施形態では、本発明に適したタンパク質吸収剤は、VHドメインまたはVHと相同のドメイン(例えば、VHファミリーに由来するドメイン)と結合する。いくつかの実施形態では、本発明に適したタンパク質吸収剤は、プロテインAを含む。いくつかの実施形態では、アフィニティークロマトグラフィーステップは、MabSelect(商標)rプロテインA樹脂カラムを使用する。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、添加物(例えば、PEGおよび/またはその他の非イオン性有機ポリマー)を添加して、タンパク質吸着剤との結合を促進するステップをさらに含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、アフィニティークロマトグラフィーのステップは、Hepes、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、アルギニン、Tris、塩化マグネシウム、ヒスチジン、尿素、イミダゾール、1つまたは複数の有機溶媒(例えば、エタノール、メタノール、プロピレングリコール、エチレングリコール、プロパノール、イソプロパノールおよびブタノール)および/または界面活性剤(例えば、イオン性または非イオン性)を含む洗浄バッファーを用いてアフィニティークロマトグラフィーカラムを洗浄することを含む。いくつかの実施形態では、アフィニティークロマトグラフィーのステップは、Hepes、リン酸、グリシン、グリシルグリシン、塩化マグネシウム、尿素、プロピレングリコール、エチレングリコール、1つまたは複数の有機酸(例えば、酢酸、クエン酸、ギ酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、マロン酸、フタル酸およびサリチル酸)および/またはアルギニンを含む溶出バッファーを用いてアフィニティークロマトグラフィーカラムから小モジュラー免疫薬タンパク質を溶出することを含む。いくつかの実施形態では、溶出バッファーは、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムおよびそれらの組合せからなる群から選択される塩をさらに含む。いくつかの実施形態では、塩は、1mM〜1Mの濃度である。特定の実施形態では、塩は、1mM〜500mMの濃度である。特定の実施形態では、塩は、1mM〜100mMの濃度である。
【0011】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂を使用する陰イオン交換クロマトグラフィーによってタンパク質調製物を精製するステップをさらに含む。特定の実施形態では、本発明の方法は、アフィニティークロマトグラフィーの後であるが、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーステップの前に、陰イオン交換クロマトグラフィーによってタンパク質調製物を精製するステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、添加物を添加して、小モジュラー免疫薬タンパク質および/または不純物と陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂の結合を増強するステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、添加された添加物は、タンパク質調製物からの1つまたは複数の夾雑物または不純物の沈殿を誘導する。いくつかの実施形態では、沈殿した夾雑物を、濾過によってタンパク質調製物から除去する。いくつかの実施形態では、適した添加物は、非イオン性有機ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、セルロース、デキストラン、デンプンおよび/またはポリビニルピロリドン)である、または含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、その方法は、アフィニティーまたは陰イオン交換クロマトグラフィーの前に、タンパク質調製物をデプスフィルターに適用するステップをさらに含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、その方法は、1つまたは複数の濾過ステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の濾過ステップは、ウイルス保持濾過ステップを含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の濾過ステップは、限外濾過および/またはダイアフィルトレーションステップを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、タンパク質調製物は、培養細菌細胞、哺乳類細胞、植物細胞、酵母細胞、昆虫細胞、細胞を含まない培地、トランスジェニック動物または植物から調製する。いくつかの実施形態では、タンパク質調製物は、細胞培養培地調製物である。いくつかの実施形態では、培養培地調製物は、培養細胞から分泌された小モジュラー免疫薬タンパク質を含有する。特定の実施形態では、培養細胞は、CHO細胞である。特定の実施形態では、培養培地調製物は、大規模バイオリアクターから調製する。いくつかの実施形態では、精製されるべきタンパク質調製物は、細胞抽出物を含有する。いくつかの実施形態では、精製されるべきタンパク質調製物は、封入体から調製する。
【0015】
別の態様では、本発明は、タンパク質調製物を、精製された小モジュラー免疫薬タンパク質が、4%未満(例えば、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%、1%、0.8%、0.6%、0.5%、0.4%、0.2%、0.1%未満)の凝集物しか含有しないような操作条件下で、(a)アフィニティークロマトグラフィーおよび/またはイオン交換クロマトグラフィー(例えば、1つまたは2つのイオン交換クロマトグラフィーステップ)ならびに(b)ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーにかけることによって、高分子凝集物を含有するタンパク質調製物から小モジュラー免疫薬タンパク質を精製する方法を提供する。いくつかの実施形態では、タンパク質調製物を、(a1)アフィニティークロマトグラフィー、(a2)イオン交換クロマトグラフィーおよび(b)ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーにかける。いくつかの実施形態では、タンパク質調製物を、(a1)陽イオン交換クロマトグラフィー、(a2)陰イオン交換クロマトグラフィーおよび(b)ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーにかける。いくつかの実施形態では、アフィニティークロマトグラフィーは、プロテインAクロマトグラフィーである。いくつかの実施形態では、イオン交換クロマトグラフィーは、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィーである。いくつかの実施形態では、イオン交換クロマトグラフィー樹脂は、Q Sepharose(商標)FF、Q Sepharose(商標)XL、DEAE Sepharose(商標)FF、POROS(登録商標)HQ50、Toyopearl(登録商標)DEAE、Toyopearl(登録商標)GigaCap Q−650M、Toyopearl(登録商標)DEAE−650M、Capto(商標)Q、Capto(商標)DEAEおよびテンタクル陰イオン交換クロマトグラフィー(例えば、Fractogel(登録商標)TMAE HiCap(M)(商標)、Fractogel(登録商標)TMAE(S)(商標)またはFractoprep(登録商標)TMAE(商標))からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂は、帯電膜吸収体(例えば、Mustang(登録商標)Q、Mustang(登録商標)E、Sartobind(登録商標)および/またはChromasorb(登録商標))である。いくつかの実施形態では、イオン交換クロマトグラフィー樹脂は、帯電モノリス支持体(例えば、CIM(登録商標)−DISK)である。特定の実施形態では、アフィニティークロマトグラフィーは、MabSelect(商標)rプロテインAアフィニティークロマトグラフィーであり、イオン交換クロマトグラフィーは、テンタクル陰イオン交換クロマトグラフィーであり、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーは、I型セラミックヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーである。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、3つ以下のクロマトグラフィーステップを含む。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、1つまたは複数のクロマトグラフィーカラムを、再使用のために、ストリップおよび/または再生するステップをさらに含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、本発明を用いて、5%を超える(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%を超える、またはそれ以上)の高分子量凝集物を含有するタンパク質調製物を精製できる。いくつかの実施形態では、本発明を用いて、70%未満(例えば、60%、50%、40%、30%、20%、15%、10%または5%未満)の高分子量凝集物を含有するタンパク質調製物を精製できる。いくつかの実施形態では、本発明を用いて、4〜70%(例えば、4〜60%、4〜50%、4〜40%、4〜30%、4〜20%、4〜15%、4〜10%)の高分子量凝集物を含有するタンパク質調製物を精製できる。
【0017】
いくつかの実施形態では、本発明を用いて、CD20と特異的に結合する小モジュラー免疫薬タンパク質を精製する。いくつかの実施形態では、本発明を用いて、配列番号1〜59および67〜76のいずれか1つと少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む小モジュラー免疫薬タンパク質を精製する。
【0018】
さらに別の態様では、本発明は、20%を超える(例えば、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%を超える、またはそれ以上)の高分子量凝集物を含有するタンパク質調製物からタンパク質を精製するために使用され、タンパク質調製物を、精製されたタンパク質が4%未満(例えば、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%、1%、0.8%、0.6%、0.5%、0.4%、0.2%または0.1%未満)の凝集物しか含有しないような操作条件下で、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーにかけるステップを含む。特定の実施形態では、タンパク質調製物は、60%を超える高分子量凝集物を含有する。
【0019】
特定の実施形態では、操作条件は、リン酸バッファー中で、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーカラムからタンパク質を溶出することを含む。いくつかの実施形態では、リン酸バッファーは、エンドトキシンを含まない。いくつかの実施形態では、リン酸バッファーの発熱物質が除去されている。いくつかの実施形態では、リン酸バッファーは、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムおよび/またはリン酸リチウムを含む。いくつかの実施形態では、リン酸バッファーは、1mM〜50mMの濃度のリン酸ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、リン酸バッファーは、100mM〜2.5Mの濃度の塩化ナトリウムをさらに含む。特定の実施形態では、リン酸バッファーは、2mM〜32mMの濃度のリン酸ナトリウムおよび100mM〜1.6Mの濃度の塩化ナトリウムを含む。いくつかの実施形態では、リン酸バッファーは、6.5〜8.5のpHを有する。
【0020】
いくつかの実施形態では、精製されるべきタンパク質は、小モジュラー免疫薬ポリペプチドを含む。
【0021】
本発明は、本明細書に記載される方法を用いて精製された小モジュラー免疫薬タンパク質をさらに提供する。さらに、本発明は、小モジュラー免疫薬タンパク質と、薬学的に許容できる担体とを含む医薬組成物を提供し、小モジュラー免疫薬タンパク質は、4%未満(例えば、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%、1%、0.8%、0.6%、0.5%、0.4%、0.2%または0.1%)の凝集物しか含まない。
【0022】
本出願では、「または」の使用は、特に断りのない限り、「および/または」を意味する。本出願で使用される場合、用語「含む(comprise)」ならびに「含んでいる(comprising)」および「含む(comprises)」などのこの用語の変形は、その他の添加物、成分、整数またはステップを排除することを意図しない。本出願で使用される場合、用語「約(about)」および「約(approximately)」は、同等なものとして使用される。約(about)/約(approximately)を伴って、または伴わずに本出願において使用される任意の数字は、関連技術分野の当業者に理解される任意の正常変動を対象にすることを意味する。
【0023】
本発明のその他の特徴、目的および利点は、以下の詳細な説明、図面および特許請求の範囲において明らかである。しかし、詳細な説明、図面および特許請求の範囲は、本発明の実施形態を示すものの、限定ではなく単に例示として示すに過ぎないことを理解すべきである。本発明の範囲内の種々の変法および改変は、当業者には明らかとなろう。
【0024】
図面は、単に例示目的のためのものに過ぎず限定のためではない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】抗CD20小モジュラー免疫薬タンパク質の例示的構造を表す図である。
【図2】溶液中にあり得るSMIP(商標)分子の例示的立体配置を示す図である。
【図3−1】種々のドメイン交換機構が、SMIP(商標)分子の高分子量凝集物、例えば、三量体、四量体またはマルチマーの形成につながり得ることを示す図である。
【図3−2】種々のドメイン交換機構が、SMIP(商標)分子の高分子量凝集物、例えば、三量体、四量体またはマルチマーの形成につながり得ることを示す図である。
【図3−3】種々のドメイン交換機構が、SMIP(商標)分子の高分子量凝集物、例えば、三量体、四量体またはマルチマーの形成につながり得ることを示す図である。
【図4】例示的細胞培養および収集手順を示す模式図を表す図である。
【図5】12〜14日の培養期間にかけての、2種の異なるCHO細胞クローンによって産生されたTRU−015の生産用バイオリアクターの例示的な1日力価測定値(μg/mL)を表す図である。ピーク力価値は、12日から14日の生産用バイオリアクター増殖の間に得た。ピーク力価値は、1500〜3000μg/mLの範囲であった。
【図6】バッチ結合機構を用いるハイスループットスクリーニングの例示的設計を表す図である。
【図7】プロテインAカラム操作およびハイスループットスクリーニングモデルの例示的設計を表す図である。
【図8】例示的プロテインAハイスループットスクリーニング結果を表す図である。
【図9】(A)セラミックヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーについての、ハイスループットスクリーニングにおいて試験した例示的変数の要約を示す図である。(B)種々の濃度のリン酸およびNaClをcHA精製の間に用いた場合の、HMW化合物パーセントを示す例示的結果プロットを示す図である。(C)約10のKp(または1のlog Kp)を示す例示的HMW対Log Kpプロットを示す図であり、HMW化合物のほとんどはサンプルから除去されている。
【図10】cHAクロマトグラフィーステップを開発するための、cHAカラムおよびNaCl勾配溶出を用いる例示的代替スクリーニングを表す図である。
【図11】例示的な代表的なcHAクロマトグラムを表す図である。
【図12】例示的TRU−015精製工程を表す図である。
【図13】CEXによるものとの、MabSelectプロテインAアフィニティークロマトグラフィーによるHMW凝集物量の減少の例示的比較を表す図である。
【図14】CEX樹脂のタンパク質産物結合特性を示す例示的結果を表す図である。
【図15】25対75mg/mLrのローディングチャレンジを用いたCEXピークを示す例示的結果を表す図である。
【図16】AEXカラムを用いたHMWの有効な除去を示す例示的結果を表す図である。集められたプールは88%純粋であり、「単量体」SMIP(商標)タンパク質の>95%収率であった。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、中でも、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーに基づいて、HMW凝集物およびその他の不純物を含有するタンパク質調製物から、タンパク質、特に、小モジュラー免疫薬タンパク質を精製または回収する方法を提供する。いくつかの実施形態では、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーを、アフィニティークロマトグラフィーおよび/またはイオン交換クロマトグラフィーと組み合わせて使用する。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、ウイルス性夾雑物をさらに除去するため、タンパク質を濃縮するため、および/またはバッファー交換のために1つまたは複数の濾過ステップをさらに含む。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、3つ以下のクロマトグラフィーステップ(例えば、2つのクロマトグラフィーステップまたは3つのクロマトグラフィーステップ)しか有さない。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、3つ以下の濾過ステップ(例えば、2つの濾過ステップ、3つの濾過ステップ)を有する。
【0027】
実施例の節に記載のとおり、本発明者らは、タンパク質調製物からのHMW凝集物およびその他の不純物(例えば、DNA、宿主細胞タンパク質、ウイルスおよびその他の夾雑物)の効率的な除去を可能にする、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーおよび/またはイオン交換クロマトグラフィーの適した操作条件を発見した。いくつかの実施形態では、HMW凝集物のパーセンテージを、出発調製物中の20%(例えば、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%またはそれ以上)から、精製されたタンパク質生成物中の4%未満(例えば、3.5%、3.0%、2.5%、2.0%、1.5%、1.0%、0.8%、0.6%、0.4%、0.2%、0.1%未満)に低減できる。いくつかの実施形態では、出発調製物中のHMW凝集物を、少なくとも約5倍または少なくとも約10倍または少なくとも約20倍または少なくとも約30倍または少なくとも約40倍または少なくとも約50倍または少なくとも約60倍または少なくとも約70倍または少なくとも約80倍または少なくとも約90倍または少なくとも約100倍低減できる。それに加えて、またはその代わりに、精製されたタンパク質中のその他の混入(例えば、HCP)のパーセンテージは、約10,000ppm以下または約5000ppm以下または約2500ppm以下または約400ppm以下または約360ppm以下または約320ppm以下または約280ppm以下または約240ppm以下または約200ppm以下または約160ppm以下または約140ppm以下または約120ppm以下または約100ppm以下または約80ppm以下または約60ppm以下または約40ppm以下または約30ppm以下または約20ppm以下または約10ppm以下である。
【0028】
いくつかの実施形態では、本発明による方法は、注目するタンパク質の少なくとも50%の回収(例えば、少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%)を提供する。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、少なくとも20%生成物収率(例えば、少なくとも22%、24%、26%、28%、30%、32%、34%、36%、38%、40%、42%、44%、46%、48%または50%)を提供する。
【0029】
本発明の種々の態様は、以下の節で詳細に記載されている。節の使用は、本発明を制限するものではない。各節は、本発明の任意の態様に適用してよい。本出願では、「または」の使用は、特に断りのない限り、「および/または」を意味する。
【0030】
定義
本発明がより容易に理解されるように、まず、特定の用語を定義する。以下の用語およびその他の用語のためにさらなる定義は、本明細書を通じて示される。
【0031】
吸収剤:吸収剤は、クロマトグラフィーを実施するために使用される、固相支持体に固定された少なくとも1種の分子またはそれ自体が固体である少なくとも1種の分子である。
【0032】
アフィニティークロマトグラフィー:アフィニティークロマトグラフィーは、等電点、疎水性または大きさなどの分子の一般的な特性というよりも、生体分子間の特異的な、可逆性の相互作用、例えば、プロテインAの、IgG抗体のFc部分と結合する能力を利用して、クロマトグラフィーによる分離を達成するクロマトグラフィーである。実際には、アフィニティークロマトグラフィーは、固相支持体に固定されたプロテインAなどの吸収剤を使用して、程度の差はあるが吸収剤と堅固に結合する分子をクロマトグラフィーによって分離することを含む。その全体が本明細書に組み込まれる、Guide to Protein Purification,Methods in Enzymology 182:357〜379中、Ostrove(1990年)参照のこと。
【0033】
約(Approximately):本明細書において、注目する1つまたは複数の値に適用される、用語「約(approximately)」または「約(about)」とは、記載された参照値と同様である値を指す。特定の実施形態では、用語「約(approximately)」または「約(about)」とは、特に断りのない限り、または文脈から明らかでない限り、記載された参照値のいずれの方向でも(より大きいまたはより小さい)25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%以下の範囲内に入る値の範囲を指す(このような数が、あり得る値の100%を超える場合は除く)。
【0034】
結合−溶出様式:用語「結合−溶出様式」(「結合様式」ともいわれる)とは、調製物中に含まれる少なくとも1種の生成物が、クロマトグラフィーの樹脂または媒体と結合する生成物調製分離技術を指す。この様式で結合している生成物は、溶出相の間に溶出される。
【0035】
クロマトグラフィー:クロマトグラフィーは、種々の分子を程度の差はあるが強く吸収または保持する吸収剤を介した混合物の透過による、互いからの混合物中の化学的に異なる分子の分離である。吸収剤に最も弱く吸収される、または保持される分子は、より強く吸収または保持されるものが放出されない条件下で吸収剤から放出される。
【0036】
定常免疫グロブリンドメイン:定常抗体免疫グロブリンドメインは、ヒトまたは動物起源のC、CH1、CH2、CH3またはCH4ドメインと同一または実質的に同様である免疫グロブリンドメインである。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、William E. Paul編、Fundamental Immunology、第2版、209、210〜218頁(1989年)中、Charles A Hasemann and J. Donald Capra、Immunoglobuins:Structure and Function参照のこと。CH2もしくはCH3ドメインまたはCH2もしくはCH3ドメインと実質的に同様である免疫グロブリンドメインはまた、抗体のF部分と呼ばれる。
【0037】
夾雑物または不純物:夾雑物または不純物とは、任意の外来の、または好ましくない分子、例えば、DNA、RNAまたは精製されている注目するタンパク質以外の、精製されている注目するタンパク質のサンプル中に同様に存在するタンパク質などの生体高分子を指す。不純物として、例えば、凝集したタンパク質、高分子量種、低分子量種および断片ならびに脱アミド種などのタンパク質変異体、精製されているタンパク質を分泌する宿主細胞に由来するその他のタンパク質(宿主細胞タンパク質)、先の精製ステップの間にサンプル中に浸出し得るアフィニティークロマトグラフィーに使用される吸収剤の一部であるタンパク質、例えば、プロテインA、内毒素、およびウイルスが挙げられる。
【0038】
フロースルー様式:用語「フロースルー様式」とは、通常、調製物中に含まれる少なくとも1種の生成物が、クロマトグラフィーの樹脂または媒体を通って流れ、一方で少なくとも1種の可能性ある夾雑物または不純物がクロマトグラフィーの樹脂または媒体と結合することが意図される生成物調製分離技術を指す。いくつかの実施形態では、フロースルー様式は、生成物が樹脂と弱く結合できながら、少なくとも1種の可能性ある夾雑物または不純物が、クロマトグラフィーの樹脂または媒体と、より優先的に結合する弱分配性クロマトグラフィー(WPC)である。通常、WPCは、従来のフロースルー様式においてよりも高い分配係数であるが、結合および溶出様式より低い分配係数で操作する。弱い分配では、大きなロードチャレンジおよびロード相後に適用される短い洗浄を用いて、高い回収率が達成され得る。
【0039】
宿主細胞タンパク質:宿主細胞タンパク質は、宿主細胞の天然に存在するゲノムによってコードされるタンパク質であり、これに、精製されるべきタンパク質をコードするDNAが導入される。宿主細胞タンパク質は、精製されるべきタンパク質の夾雑物であり得、そのレベルは、精製によって低減され得る。宿主細胞タンパク質は、中でも、ゲル電気泳動および染色および/またはELISAアッセイをはじめとする任意の適した方法によってアッセイできる。
【0040】
ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー:ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーとは、吸収剤としてセラミックヒドロキシアパタイトを用いるクロマトグラフィーである。例えば、その全体が本明細書に組み込まれる、Guide to Protein Purification、Murray P. Deutscher編、Methods in Enzymology 182:329〜339頁中の、Marina J. Gorbunoff(1990年)、Protein Chromatography on Hydroxyapatite Columns参照のこと。
【0041】
ロード:用語「ロード」とは、清澄化された細胞培養物もしくは発酵コンディショニング培地のいずれかに由来する生成物、またはクロマトグラフィーステップに由来する部分精製された中間体を含有する任意のロード物質を指す。用語「ロード液」とは、本発明の操作条件下で媒体に通すための、ロード物質を含有する液体を指す。
【0042】
「ロードチャレンジ」(LC):用語「ロードチャレンジ」とは、樹脂の単位容積あたりの生成物の質量の単位で測定された、クロマトグラフィーステップのロードサイクルにおいてカラムにロードされた、またはバッチ結合において樹脂に適用された生成物の全質量を指す。
【0043】
プロテインA:プロテインAは、抗体のF部分または可変ドメインと結合する、ブドウ球菌の細胞壁中で最初に発見されたタンパク質である。いくつかの実施形態では、プロテインAは、VHファミリー由来のドメイン(例えば、IgG抗体のVHドメイン)と結合する。本発明の目的上、「プロテインA」は、ブドウ球菌のプロテインAと同一であるか、または実質的に同様である任意のタンパク質、例えば、市販のおよび/または組換え型のプロテインAである。本発明の目的上、実質的類似性を調べる目的のプロテインAの生物活性は、IgG抗体のF部分または可変ドメイン(例えば、VH)と結合する能力である。
【0044】
プロテインG:プロテインGは、抗体(例えば、IgG)のF部分または可変ドメインと結合する、連鎖球菌の細胞壁において最初に発見されたタンパク質である。いくつかの実施形態では、プロテインGは、VHファミリー由来のドメイン(例えば、IgG抗体のVHドメイン)と結合する。本発明の目的上、「プロテインG」は、連鎖球菌のプロテインGと同一であるか、または実質的に同様である任意のタンパク質、例えば、市販のおよび/または組換え型のプロテインGである。本発明の目的上、実質的類似性を調べる目的のプロテインGの生物活性は、IgG抗体のF部分または可変ドメイン(例えば、VH)と結合する能力である。
【0045】
プロテインLG:プロテインLGは、プロテインG(上記の定義を参照のこと)およびプロテインLの両方の部分を含む、IgG抗体と結合する組換え融合タンパク質である。プロテインLは、ペプトストレプトコッカスの細胞壁から最初に単離された。プロテインLGは、プロテインLおよびG両方に由来するIgG結合ドメインを含む。その全体が本明細書に組み込まれる、Volaら(1994年)Cell.Biophys.24〜25:27〜36。本発明の目的上、「プロテインLG」は、プロテインLGと同一であるか、または実質的に同様である任意のタンパク質、例えば、市販のおよび/または組換え型のプロテインLGである。本発明の目的上、実質的類似性を調べる目的のプロテインLGの生物活性は、IgG抗体と結合する能力である。
【0046】
精製する:タンパク質を精製することとは、タンパク質のサンプル中に存在し得る、外来の、または好ましくない要素、特に、タンパク質またはDNAなどの生体高分子の量を低減することを意味する。外来のタンパク質の存在は、ゲル電気泳動および染色ならびに/またはELISAアッセイをはじめとする任意の適当な方法によってアッセイできる。DNAの存在は、ゲル電気泳動および染色ならびに/またはポリメラーゼ連鎖反応を使用するアッセイをはじめとする任意の適当な方法によってアッセイできる。
【0047】
可変抗体免疫グロブリンドメイン:可変抗体免疫グロブリンドメインとは、ヒトまたは動物起源のVまたはVドメインと同一であるか、または実質的の同様である、免疫グロブリンドメインである。本発明の目的上、実質的類似性を調べる目的の可変抗体免疫グロブリンドメインの生物活性は、抗原結合である。いくつかの実施形態では、可変抗体免疫グロブリンドメインは、VHドメインである。VHドメインとは、本明細書において、VH自体、またはVHドメインに対して相同性を有する任意のドメインを指す。
【0048】
小モジュラー免疫薬タンパク質
本明細書において、小モジュラー免疫薬(small modular immunopharmaceuticals)(SMIP(商標))タンパク質とは、以下の融合ドメイン:結合ドメイン、免疫グロブリンヒンジ領域またはそれらに由来するドメインならびに免疫グロブリン重鎖CH2定常領域またはそれに由来するドメインおよび免疫グロブリン重鎖CH3定常領域またはそれに由来するドメインであり得るエフェクタードメインのうち1種以上を含有するタンパク質を指す。SMIP(商標)タンパク質治療薬は、単一特異性(すなわち、それらは単一の抗原標的を認識し、結合して、生物活性を開始する)であることが好ましい。本発明はまた、多重特異的および/または多価分子、例えば、SMIP(商標)タンパク質を組み込み、分子のSMIP(商標)タンパク質部分のC末端に位置するさらなる結合ドメインも有するSCORPION(商標)治療薬に関する。SCORPION(商標)治療薬の結合ドメインは各々、異なる標的と結合することが好ましい。本発明に適した小モジュラー免疫薬のドメインは、ヒト遺伝子配列、任意のその他の天然または人工供給源の産物であるポリペプチド、例えば、遺伝子操作された、および/または突然変異したポリペプチドであるか、それらに由来する。小モジュラー免疫薬はまた、結合ドメイン−免疫グロブリン融合タンパク質としても知られる。
【0049】
いくつかの実施形態では、小モジュラー免疫薬に適したヒンジ領域は、IgG1、IgA、IgEなどといった免疫グロブリンに由来する。例えば、ヒンジ領域は、0、1または2個のシステイン残基のいずれかを有する変異株IgG1ヒンジ領域ポリペプチドであり得る。
【0050】
小モジュラー免疫薬タンパク質に適した結合ドメインは、同族生体分子、例えば、抗原、受容体(例えば、CD20)または2種以上の分子の複合体または集合体または凝集物を特異的に認識し、結合する能力を有する任意のポリペプチドであり得る。
【0051】
結合ドメインは、注目する抗原またはその他の所望の標的構造と特異的に結合できるという条件で、少なくとも1種の免疫グロブリン可変領域ポリペプチド、例えば、重鎖または軽鎖V領域のすべてまたは一部または断片を含み得る。その他の実施形態では、結合ドメインは、少なくとも1種の免疫グロブリン軽鎖V領域のすべてまたは一部および少なくとも1種の免疫グロブリン重鎖V領域のすべてまたは一部を含む場合があり、V領域と融合しているリンカーをさらに含む、一本鎖免疫グロブリン由来Fv生成物を含み得る。
【0052】
本発明は、種々の小モジュラー免疫薬に適用してよい。例示的小モジュラー免疫薬は、受容体またはその他のタンパク質、例えば、CD3、CD4、CD8、CD19、CD20およびCD34、EGF受容体、HER2、HER3またはHER4受容体などのHER受容体ファミリーのメンバー、LFA−1、Mol、p150,95、VLA−4、ICAM−1、VCAM、増殖因子、例えば、VEGFなどの細胞接着分子、IgE、血液型抗原、flk2/flt3受容体、肥満(OB)受容体、プロテインC、EGFR、RAGE、P40、Dkk1、NOTCH1、IL−13、IL−21、IL−4およびIL−22などを標的とし得る。
【0053】
いくつかの実施形態では、本発明を利用して、CD20を特異的に認識する小モジュラー免疫薬を精製する。CD20と特異的に結合する例示的小モジュラー免疫薬タンパク質が、図1に示されている。図1に示されるように、抗CD20 SMIP(商標)タンパク質は、通常、3つの別個のドメイン:(1)アミノ酸リンカー(例えば、15−アミノ酸リンカーによって連結されている可変重鎖(VH)および軽鎖(VL)断片を含有するキメラ(マウス/ヒト)CD20結合ドメイン(例えば、15アミノ酸リンカー)、(2)改変ヒト免疫グロブリン(例えば、IgG1)ヒンジドメインおよび(3)ヒトIgG1のCH2およびCH3ドメインなどのIgGエフェクタードメインからなる組換えホモ二量体融合タンパク質である。
【0054】
通常、SMIP(商標)タンパク質は、鎖間ジスルフィド結合された共有結合ホモ二量体(CD)と予測される、2つの明確に結合しているホモ二量体の形、および分子内ジスルフィド結合を有さないホモ二量体の形(解離可能な二量体、DD)で存在し得る。解離可能な二量体は、通常、十分に活性である。通常、二量体は、約106,000ダルトンという理論上の分子量を有する。SMIP(商標)タンパク質はまた、多価複合体を形成し得る。
【0055】
一般に、SMIP(商標)タンパク質は、糖タンパク質として存在する。例えば、図1に示されるように、抗CD20 SMIP(商標)タンパク質は、オリゴ糖を用いて、各タンパク質鎖のCH2ドメイン中のN結合型グリコシル化コンセンサス配列(例えば、327NST)で修飾され得る(図1参照のこと)。SMIP(商標)タンパク質はまた、コア−フコシル化アシアロ−アガラクト−二分岐N結合型オリゴ糖(G0F)、各鎖(G0F/G0F)上のCOOH末端Gly476およびNH2末端ピログルタミン酸を含み得る。2種の微量のグリコフォーム、G1F/G0FおよびG1F/G1Fならびにその他の予測される痕跡レベルのN結合型グリコフォームも存在し得る。さらに、SMIP(商標)タンパク質のヒンジ領域には、低レベルのコア1O−グリカン修飾も観察される。
【0056】
いくつかの実施形態では、SMIP(商標)タンパク質の等電点(pIまたはIEP)は、約7.0〜9.0の範囲(例えば、7.2、7.4、7.6、7.8、8.0、8.2、8.4、8.6、8.8)である。
【0057】
本発明を用いて、本明細書に記載されるような種々の形態(例えば、単量体ポリペプチド、ホモ二量体、解離可能な二量体または多価複合体)のSMIP(商標)タンパク質を精製できる。本発明を用いて、種々の修飾SMIP(商標)タンパク質、例えば、ヒト化SMIP(商標)またはキメラSMIP(商標)タンパク質を精製できる。本明細書において、用語「ヒト化SMIP(商標)タンパク質」とは、少なくとも1種のヒト化免疫グロブリン領域(例えば、ヒト化免疫グロブリン可変または定常領域)を含むSMIP(商標)タンパク質を指す。いくつかの実施形態では、ヒト化SMIP(商標)タンパク質は、ヒト免疫グロブリンに実質的に由来する可変フレームワーク領域(例えば、完全ヒトFR1、FR2、FR3および/またはFR4)を含みながら、標的特異的な1つまたは複数の相補性決定領域(CDR)(例えば、少なくとも1つのCDR、2つのCDRまたは3つのCDR)を維持するヒト化可変領域を含む。いくつかの実施形態では、ヒト化SMIP(商標)タンパク質は、1つまたは複数のヒトまたはヒト化定常領域(例えば、ヒト免疫グロブリンCH2および/またはCH3ドメイン)を含む。用語「ヒト免疫グロブリンまたは抗体に実質的に由来する」または「実質的にヒト」とは、比較目的で、ヒト免疫グロブリンまたは抗体アミノ配列に対してアラインされた場合に、その領域が、ヒトフレームワークまたは定常領域配列と、少なくとも80〜90%、好ましくは、90〜95%、より好ましくは、95〜99%の同一性(すなわち、局所配列同一性)を共有し、例えば、保存的置換、コンセンサス配列置換、生殖配列置換、逆突然変異などが可能となることを意味する。本明細書において、用語「キメラSMIP(商標)タンパク質」とは、その可変領域が、第1の種に由来し、その定常領域が、第2の種に由来するSMIP(商標)タンパク質を指す。キメラSMIP(商標)タンパク質は、例えば、異なる種に属する免疫グロブリン遺伝子セグメントから遺伝子工学によって構築できる。ヒト化およびキメラSMIP(商標)タンパク質は、参照により本明細書に組み込まれる国際出願公開番号WO2008/156713においてさらに記載されている。
【0058】
また、本発明を用いて、エフェクター機能を変更する、ヒンジ、CH2および/またはCH3ドメインの改変されたグリコシル化パターンおよび/または突然変異を含むSMIP(商標)タンパク質を精製できる。いくつかの実施形態では、SMIP(商標)タンパク質は、受容体結合の親和性に影響を及ぼす、ヒンジ結合領域中の隣接する、または近接する部位に突然変異を含み得る。さらに、本発明を用いて、小モジュラー免疫薬ポリペプチドまたはその一部を含む融合タンパク質を精製できる。
【0059】
いくつかの実施形態では、本発明を用いて、配列番号1〜76のいずれか1つのアミノ酸配列を含むSMIP(商標)タンパク質(例示的SMIP(商標)配列の節を参照のこと)またはその変異体を精製できる。いくつかの実施形態では、本発明を用いて、配列番号1〜59またはその変異体のいずれか1つのアミノ酸配列を有する可変ドメインを含有するSMIP(商標)タンパク質を精製できる。いくつかの実施形態では、本発明を用いて、配列番号1〜59またはその変異体のいずれか1つのアミノ酸配列を有する可変ドメイン、配列番号60〜64またはその変異体のいずれか1つのアミノ酸配列を有するヒンジ領域および/または配列番号65もしくは66またはその変異体のアミノ酸配列を有する免疫グロブリン定常領域を含有するSMIP(商標)タンパク質を精製できる。いくつかの実施形態では、本発明を用いて、配列番号67〜76またはその変異体のいずれか1つのアミノ酸配列を有するSMIP(商標)タンパク質を精製できる。
【0060】
本明細書において、親配列の変異体は、それだけには限らないが、親配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%同一である、アミノ酸配列を含む。2種のアミノ酸配列の同一性パーセントは、目視検査および数学的計算によって求めることができ、または、より好ましくは、Genetics Computer Group(GCG;Madison、Wis.)Wisconsinパッケージバージョン10.0プログラム「GAP」(Devereuxら、1984年、Nucl.Acids Res.12:387頁)またはその他の同等のコンピュータプログラムなどのコンピュータプログラムを使用して配列情報を比較することによって比較を行う。「GAP」プログラムの好ましいデフォルトパラメータとして、(1)SchwartzおよびDayhoff編、Atlas of Polypeptide Sequence and Structure,National Biomedical Research Foundation、353〜358頁(1979年)によって記載される、GribskovおよびBurgessの重み付けアミノ酸比較マトリックス((1986年)、Nucl.Acids Res.14:6745頁)またはその他の同等の比較マトリックス、(2)各ギャップに対して30のペナルティーおよびアミノ酸配列の各ギャップ中の各記号に対して1のさらなるペナルティー、(3)末端ギャップに対するペナルティーなし、および(4)長いギャップに対する最大ペナルティーなしが挙げられる。配列比較の当業者によって使用されるその他のプログラムを使用することもできる。
【0061】
さらなる小モジュラー免疫薬は、例えば、US特許公報第20030133939号、同20030118592号、同20040058445号、同20050136049号、同20050175614号、同20050180970号、同20050186216号、同20050202012号、同20050202023号、同20050202028号、同20050202534号、同20050238646号および同20080213273号;国際特許公報WO02/056910、WO2005/037989およびWO2005/017148にさらに記載されており、それらはすべて、参照により本明細書に組み込まれる。
【0062】
タンパク質凝集
どんな理論にも拘束されるものではないが、ドメイン交換が、タンパク質凝集機序であり得ると考えられる。ドメイン交換は、区別して構築されたタンパク質のサブセクション(ドメイン)が、別の単量体のものと物理的に交換し、二量体またはより高次のオリゴマーを生成する場合に生じる。ドメイン交換したタンパク質では、各ドメインは、交換していない単量体におけるその構造と同等の、天然様の全体的な構造を維持する。複数のドメインを含有するフォールディングされたタンパク質が、低pH、高温または剪断力によってストレスを受けると、部分的にフォールディングされた、または「開いた」コンホメーション(解離しているがフォールディングしているドメインを特徴とする)が誘導され得る。いくつかの「開いた」分子は、フォールディングしているドメインの簡単な再結合によってその天然の構造に再フォールディングする。いくつかの場合には(通常、高いタンパク質濃度に有利に働く)、ドメイン再結合が、2つの隣接する分子間で生じ、その結果、ドメイン交換された二量体が生じる。このような分子間交換が、伝播し、大きな凝集物につながり得る。通常、ドメイン交換しているタンパク質は、天然様ドメインフォールディングおよびドメイン間接触を有する、非共有結合で(しかし安定に)結合している分子である。このような場合には、マルチマータンパク質は、普通は、分子間に存在する、極めて同様のドメイン間境界によってまとまる。
【0063】
SMIP(商標)タンパク質は、精製工程の前には、相当量(例えば、20〜60%)のHMWタンパク質(凝集物)を含有する。過剰のHMW含量は、SMIP(商標)の分子構造によるものであり得る。図1に示されるように、通常のSMIP(商標)二量体分子は、ヒトIgGl Fcドメインと融合している、フレキシブルリンカー(例えば、GGGSGGGGSGGS(配列番号77))によって接続されているVおよびVドメインを含む2つの同一の一本鎖−Fv領域を含有する(図1)。どんな理論にも拘束されるものではないが、SMIP(商標)分子は、各サブユニット中のフレキシブルリンカーのために、アンフォールディング(Fvの開いたコンホメーション)およびその後のドメイン交換、結果として生じるタンパク質凝集に対してより感受性が高いものであり得る。
【0064】
低温電子顕微鏡を使用する研究によれば、SMIP(商標)分子は、溶液中で、例えば、緻密型、混合型、伸展型、またはダイアボディー様の立体配置で存在し得る(図2)。どんな理論にも拘束されるものではないが、伸展した、または開いた鎖を有するSMIP(商標)分子の中には、フォールディングしているドメインの簡単な再結合によって、その天然構造へ再フォールディングしようとし得るものもあると考えられる。図3Aに示されるように、ドメイン再結合が、2つの隣接するSMIP(商標)分子間で生じ、その結果、ドメイン交換した二量体が生じ得る。このような分子間交換が伝播し、大きな凝集物、例えば、三量体、四量体またはマルチマーにつながり得る(図3Bおよび3C参照のこと)。
【0065】
タンパク質調製物
本明細書に記載される方法とともに使用されるタンパク質調製物は、任意のin vivoまたはin vitroタンパク質発現系から得ることができる。本発明に適したタンパク質調製物の例示的供給源として、それだけには限らないが、注目するタンパク質を発現する組換え細胞株を培養することから、あるいは、例えば、生成物産生細胞、細菌、真菌細胞、昆虫細胞、トランスジェニック植物もしくは植物細胞、トランスジェニック動物もしくは動物細胞の細胞抽出物または動物の血清、腹水、ハイブリドーマもしくは骨髄腫上清から得られるコンディショニング培養培地が挙げられる。適した細菌細胞として、それだけには限らないが、大腸菌(Escherichia coli)細胞が挙げられる。適した大腸菌株の例として、以下が挙げられる:HB101、DH5α、GM2929、JM109、KW251、NM538、NM539および外来DNAを切断できない任意の大腸菌株。使用してよい適した真菌宿主細胞として、それだけには限らないが、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)およびアスペルギルス(Aspergillus)細胞が挙げられる。適した昆虫細胞として、それだけには限らないが、S2 Schneider細胞、D.Mel−2細胞、SF9、SF21、High−5(商標)、Mimic(商標)−SF9、MG1およびKC1細胞が挙げられる。適した例示的組換え細胞株として、それだけには限らないが、BALB/cマウス骨髄腫株、ヒト網膜芽細胞(retinoblasts)(PER.C6)、サル腎臓細胞、ヒト胚性腎株(293)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、マウスセルトリ細胞、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76)、ヒト子宮頸癌細胞(HeLa)、イヌ腎臓細胞、バッファローラット肝臓細胞、ヒト肺細胞、ヒト肝臓細胞、マウス乳房腫瘍細胞、TRI細胞、MRC5細胞、FS4細胞およびヒト肝細胞腫株(Hep G2)が挙げられる。
【0066】
注目するタンパク質は、当技術分野で公知の種々のベクター(例えば、ウイルスベクター)を使用して発現させることができ、細胞は、当技術分野で公知の種々の条件下(例えば、フェドバッチ)で培養することができる。タンパク質を製造するために細胞を遺伝子操作する種々の方法は、当技術分野で周知である。例えば、Ausabelら編(1990年)、Current Protocols in Molecular Biology (Wiley、New York)参照のこと。
【0067】
SMIP(商標)タンパク質を発現する細胞は、当技術分野で公知の種々の細胞培養培地で培養してよい。例示的細胞培養培地は、DMEM、DMEM/F12、HamのF−10、HamのF−12、F−12K、Medium199、MEM、RPMI1640、Ames’、BGJb、Click’s、CMRL−1066、Fischers、GMEM、IMDM、L−15、McCoyの5A改変、NCTC、SwikのS−77、Waymouth、WilliamのMedium Eをベースとするものであり得る。適した細胞培養培地は、血清を含まないものであり得る。いくつかの実施形態では、適した細胞培養培地は、血清/培養培地添加剤、例えば、それだけには限らないが、ウシ胎児血清、新生仔ウシ血清、仔ウシ血清および成体ウシ血清、ニワトリ、ヤギ、ウマ、ブタ、ウサギ、ヒツジ、ヒト血清、血清代替品またはウシ胚性液を含み得る。適した細胞培養培地は、栄養補助剤および/または抗生物質、例えば、それだけには限らないが、L−グルタミン溶液、L−アルバニ(Albany)−L−グルタミン溶液、非必須アミノ酸溶液、ペニシリン、ストレプトマイシンをさらに含み得る。
【0068】
本発明を利用して、粗タンパク質調製物を精製できる。例えば、本発明を使用して、培養細胞から分泌されたタンパク質を含有するコンディショニング培養培地からタンパク質を直接精製できる。コンディショニング培養培地は、小規模培養物(例えば、振盪フラスコ、ウェーブバッグ)から、または播種用バイオリアクターまたは生産用バイオリアクター(例えば、250L、600L、2500Lまたは6000Lバイオリアクター)から得ることができる。いくつかの実施形態では、本発明を利用して、タンパク質含有細胞から調製した粗細胞溶解物から、細胞内に発現されたタンパク質を精製できる。いくつかの実施形態では、本発明を使用して、注目するタンパク質を含有する血清、乳またはその他の液体から、タンパク質を精製できる。いくつかの実施形態では、本発明を使用して、クロマトグラフィーカラムからの溶出液もしくはフロースルーなどの部分精製した調製物または貯蔵工程もしくは製剤工程から得られる中間タンパク質調製物から、タンパク質を精製できる。
【0069】
いくつかの実施形態では、本発明を使用して、封入体(例えば、細菌細胞、ウイルス細胞、植物細胞または任意のその他の型の封入体)中に発現されているタンパク質を精製できる。封入体中に発現されるタンパク質は、凝集物を形成し、これが精製にとって難題をもたらす。したがって、本発明は、封入体中に発現されるタンパク質を精製することにとって特に有用であり得る。封入体から得られるタンパク質の精製には、通常、まず、細菌またはその他の型の細胞から封入体を抽出すること、続いて、精製された封入体を可溶化することが必要である。種々の封入体抽出法および可溶化法が、当技術分野で周知であり、本発明において使用できる。例えば、中でも、強力な変性剤(例えば、尿素および塩酸グアニジン)、pHおよび/または温度の変更、物理的破壊、例えば、音波処理など)を使用して、封入体を抽出および/または可溶化できる。封入体抽出および/または可溶化工程は、ミスフォールディングされたタンパク質につながり得る。いくつかの実施形態では、封入体抽出物を、本発明のクロマトグラフィーカラムに直接ロードしてよい。いくつかの実施形態では、封入体から抽出されたタンパク質を、まず再フォールディング工程に、その後、本明細書に記載されるクロマトグラフィーステップにかける。いくつかの実施形態では、再フォールディング工程は、フォールディングバッファーへのタンパク質の透析または希釈を含み得る。種々のフォールディングバッファーは、当技術分野で周知であり、本発明において使用してよい。
【0070】
いくつかの実施形態では、本発明を使用して、種々の不純物、例えば、それだけには限らないが、凝集したタンパク質、例えば、高分子量種、低分子量種および断片ならびに脱アミド種、精製されるべきタンパク質を分泌する宿主細胞に由来するその他のタンパク質、宿主細胞DNA、細胞培養培地に由来する成分、先の精製ステップの間にサンプル中に浸出するアフィニティークロマトグラフィーに使用される吸収剤の一部である分子、例えば、プロテインAおよびプロテインG、エンドトキシン、核酸、ウイルスまたは前記のもののいずれかの断片などの望ましくないタンパク質変異体を含有する調製物からタンパク質を精製できる。
【0071】
本発明は、HMW凝集物を除去するために特に有用である。いくつかの実施形態では、出発タンパク質調製物は、少なくとも4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%のHMW凝集物を含み得る。いくつかの実施形態では、出発タンパク質調製物は、95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%未満のHMW凝集物を含み得る。いくつかの実施形態では、出発調製物は、上記のパーセンテージの組合せ(例えば、約4〜95%、5〜70%、10〜60%、4〜30%、4〜25%、4〜20%、4〜15%、4〜10%および上記で同定されたパーセンテージの任意の組合せ)の範囲でHMW凝集物を含み得る。本明細書において、用語「高分子量(HMW)凝集物」とは、少なくとも2つのタンパク質単量体の結合を指す。本発明の目的上、単量体とは、注目するタンパク質の任意の生物学的に活性な形態の単一の単位を指す。例えば、小モジュラー免疫薬タンパク質の単量体は、SMIP(商標)タンパク質の単量体ポリペプチドまたはホモ二量体もしくは解離可能な二量体もしくは多価複合体の単位であり得る。結合は、共有結合、非共有結合、ジスルフィド、非還元性架橋またはその他の機序によるものであり得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、適当なタンパク質調製物を、収集処理によって得ることができる。実施例において論じられるように、コンディショニング培地は、生産用バイオリアクターから遠心分離(例えば、ディスクスタック遠心分離(DSC)による)によって収集することができる。遠心分離ステップは、細胞および細胞片を分泌タンパク質(例えば、SMIP(商標))を含有するコンディショニング培地から分離できる。いくつかの実施形態では、DSC後、内容物をパッド濾過装置に適用し、次いで、濾液容器またはバッグ中に濾過してもよい。いくつかの実施形態では、Hepes/EDTAバッファー溶液を、濾過された濃縮プールに加え、DSCおよびアフィニティークロマトグラフィーステップの間の工程間保持期間の間の酸性種の生成を低減することができる。さらに、EDTAまたはイミダゾールなどのプロテアーゼ阻害剤を加えて、メタロプロテアーゼ活性、特定のセリンプロテアーゼまたはその他のプロテアーゼ活性を阻害してもよい。いくつかの実施形態では、タンパク質調製物に、約0.001μM〜約100mMの量の適したプロテアーゼ阻害薬を加えてもよい。プロテアーゼ阻害薬は、タンパク質調製物に、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーの前および/またはその間に加えてもよい。プロテアーゼ阻害剤(例えば、EDTA)を加えることはまた、プロテインA浸出を低減し得る。温度およびpHなどのその他の条件を調整してプロテインA浸出を低減してもよい。プロテインA浸出を低減するための方法および条件は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開第20050038231号に詳細に記載されている。
【0073】
精製方法
本発明の精製方法は、1以上のクロマトグラフィーステップ(例えば、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーまたはイオン交換クロマトグラフィー)を含む。いくつかの実施形態では、本発明の精製法は、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーのステップを含む。いくつかの実施形態では、本発明の精製法は、アフィニティークロマトグラフィーおよび/またはイオン交換クロマトグラフィーと組み合わせたヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーのステップを含む。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、膜濾過ステップ(例えば、限外濾過、ダイアフィルトレーションおよび/または最終濾過)をさらに含む。例示的精製工程は、実施例の節に詳細に記載されている。
【0074】
アフィニティークロマトグラフィー
アフィニティークロマトグラフィーステップの主な目的として、出発調製物(例えば、中でも、細胞を含まないコンディショニング培地、細胞溶解物、封入体抽出物)からの生成物捕獲および工程由来不純物(例えば、宿主細胞DNAおよび宿主細胞タンパク質、培地成分および外来物質)からの注目するタンパク質の分離が挙げられる。
【0075】
したがって、本発明に適したアフィニティークロマトグラフィーは、SMIP(商標)タンパク質と結合できる吸収剤を使用することを含む。例えば、適した吸収剤は、定常抗体免疫グロブリンドメインと結合するタンパク質であり得る。適した吸収剤は、プロテインG、プロテインLGまたはプロテインAであり得る。いくつかの実施形態では、適した吸収剤は、可変抗体免疫グロブリンドメイン(例えば、VHドメインまたはVHドメインと相同なドメイン)と結合するタンパク質である。吸収剤は、任意の適した固相支持体、例えば、アガロース、セファロース、シリカ、コロジオン炭、砂および任意のその他の適した材料に添加することができる。このような物質は、当技術分野で周知である。任意の適した方法を使用して、吸収剤を固相支持体に添加することができる。タンパク質を、適した固相支持体に添加するための方法は、当技術分野で周知である。例えば、Guide to Protein Purification,Methods in Enzymology、182:357〜371頁中、Ostrove(1990年)参照のこと。
【0076】
いくつかの実施形態では、適したアフィニティークロマトグラフィーステップは、プロテインAクロマトグラフィーカラムまたはプロテインGクロマトグラフィーカラムを使用し得る。プロテインAクロマトグラフィーカラムは、例えば、PROSEP−A(商標)(Millipore、U.K.)、プロテインAセファロースFAST FLOW(商標)(GE Healthcare、Piscataway、N.J.)、TOYOPEARL(商標)650MプロテインA(TosoHass Co.、Philadelphia、Pa.)またはMabSelect(商標)プロテインAカラム(GE Healthcare、Piscataway、N.J.)であり得る。
【0077】
タンパク質調製物を、アフィニティークロマトグラフィーカラムに適用する前に、pH、イオン強度および温度などのパラメータを調整すること、いくつかの例では、種々の種類の物質の添加が望ましい場合がある。したがって、溶液(例えば、pH、イオン強度などを調整するための、または界面活性剤の導入のためのバッファー)で洗浄することによって、アフィニティークロマトグラフィーカラムの平衡化を実施し、タンパク質生成物の結合および精製に適した特徴をもたらすことは任意選択のステップである。
【0078】
いくつかの実施形態では、プロテインAカラムは、塩、例えば、約100mM〜約150mMリン酸ナトリウム、約100mM〜約150mM酢酸ナトリウムおよび約100mM〜約150mM NaClを含有する溶液を使用して平衡化され得る。平衡バッファーのpHは、約6.0〜約8.0の範囲であり得る。一実施形態では、平衡バッファーのpHは、約7.5である。平衡バッファーはまた、約10mM〜約50mM Trisを含有し得る。別の実施形態では、バッファーは、約20mM Trisを含有し得る。
【0079】
タンパク質調製物がロードされた後、洗浄溶液を使用して結合しているカラムを洗浄してもよい。適した洗浄溶液は、塩(例えば、Hepes、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム)、アルギニン、ヒスチジン、Trisおよび/またはその他の成分を含有し得る。いくつかの実施形態では、本発明に適した洗浄溶液は、アルギニンまたはアルギニン誘導体を含有し得る。適したアルギニン誘導体は、それだけには限らないが、アセチルアルギニン、アグマチン、アルギン酸、N−α−ブチロイル−L−アルギニンまたはN−α−ピバロイルアルギニンであり得る。洗浄溶液中のアルギニンまたはアルギニン誘導体の適した濃度は、約0.1Mから約2.0Mの間(例えば、0.1M、0.4M、0.5M、1.0M、1.5Mまたは2.0M)または約0.5Mから約1.0Mの間(例えば、0.5M、0.6M、0.7M、0.8M、0.9Mまたは1.0M)である。アフィニティークロマトグラフィーにおけるアルギニンまたはアルギニン誘導体の使用は、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、米国出願公開第2008/0064860号に記載されている。いくつかの実施形態では、本発明に適した洗浄溶液は、イミダゾールまたはイミダゾール誘導体を含有し得る。いくつかの実施形態では、適した洗浄溶液は、カオトロピック試薬(例えば、尿素、ナトリウムチオシネート(thiocynate)および/または塩酸グアニジン)を含有し得る。いくつかの実施形態では、適した洗浄溶液は、疎水性モディファイヤー(例えば、エタノール、メタノール、プロピレングリコール、エチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、プロパノール、ブタノールおよびイソプロパノールをはじめとする有機溶媒)を含有し得る。いくつかの実施形態では、本発明に適した洗浄溶液は、界面活性剤(例えば、非イオン性界面活性剤および/またはイオン性界面活性剤)を含有し得る。
【0080】
洗浄溶液のpHは、通常、約4.5から約8.0の間、例えば、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5および8.0である。いくつかの場合では、洗浄溶液のpHは、5.0より高く、約8.0未満、例えば、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5および8.0である。洗浄溶液は、20mMから50mM Tris(例えば、20mM、30mM、40mMまたは50mM)を含有し得る。
【0081】
生成物は、溶出バッファーによって、洗浄されたカラム、例えば、プロテインAカラムから溶出され得る。通常、適した溶出バッファーは、Hepes、リン酸、グリシン、グリシルグリシン、1つまたは複数の有機酸(例えば、酢酸、クエン酸、ギ酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、マロン酸、フタル酸、サリチル酸)、および/またはアルギニンを含有し得る。適した溶出バッファーは、塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸アンモニウム、カルシウム塩、および/またはマグネシウム塩)をさらに含有し得る。適した塩濃度は、0mM〜1Mの範囲(例えば、0mM〜500mM、0mM〜100mM、0mM〜50mM)の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、適した溶出バッファーは、約15mM〜約100mM NaClを含有する。いくつかの実施形態では、溶出バッファー中のNaCl濃度は、4レベル(例えば、0mM、15mM、30mMおよび50mM)であり得る。その他の実施形態では、溶出バッファーは、約20mM〜約200mMアルギニンまたはアルギニン誘導体を含有し得る。さらなる実施形態では、溶出バッファーは、20mM〜200mMのグリシンを含有し得る。溶出バッファーはまた、約20mM〜約100mMのHEPESを含有し得る。溶出バッファーはまた、約25mM〜約100mMの酢酸を含有し得る。いくつかの実施形態では、溶出バッファーは、クエン酸(例えば、約10mM〜約500mMのクエン酸)を含有し得る。いくつかの実施形態では、溶出バッファーは、グリシルグリシン(例えば、約10〜50mM、約50〜100mMまたは約100〜200mM)を含有し得る。いくつかの実施形態では、適した溶出バッファーは、カオトロピック試薬(例えば、尿素、ナトリウムチオシネート(thiocynate)および/または塩酸グアニジン)を含有し得る。いくつかの実施形態では、適した溶出バッファーは、アルキルグリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサエチレングリコール)を含有し得る。溶出バッファーのpHは、約2.5〜約4.0の範囲であり得る。一実施形態では、溶出バッファーのpHは、約3.0である。
【0082】
アフィニティークロマトグラフィーカラムからの溶出物は、中和バッファーによって中和してもよい。適した中和バッファーは、Tris、Hepesおよび/またはイミダゾールを含有し得る。
【0083】
溶出後、アフィニティークロマトグラフィーカラムは、清浄化、すなわち、タンパク質の溶出後にストリップおよび/または再生してもよい。この手順は、通常、固相の表面上の不純物の蓄積を最小化し、かつ/または微生物での生成物の汚染を避けるためにマトリックスを安定化するよう定期的に実施する。ストリップおよび/または再生されたカラムは、繰り返し使用してよい。
【0084】
バッファー成分は、当業者の知識によって調整できる。サンプルバッファー組成範囲は、以下の実施例に提供されている。バッファーまたはステップのすべてが必ずしも必要ではなく、単に例示のために提供される。実施例に記載されるハイスループットスクリーニングを用いて、プロテインAカラムクロマトグラフィーのためのバッファー条件を効率的に最適化してもよい。
【0085】
イオン交換クロマトグラフィー
イオン交換クロマトグラフィーステップの主な目的として、工程由来不純物(例えば、浸出したプロテインA、宿主細胞DNAおよび/またはタンパク質、外来物質)ならびにHMW凝集物などの生成物関連不純物の除去が挙げられる。
【0086】
いくつかの実施形態では、イオン交換クロマトグラフィーは、本発明のアフィニティークロマトグラフィーと併用する。いくつかの実施形態では、アフィニティークロマトグラフィーの代わりに、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、陽イオン交換および/または陰イオン交換クロマトグラフィー)を使用してもよい。
【0087】
種々の陰イオン性または陽イオン性置換基をマトリックスと結合し、クロマトグラフィーのための陰イオン性または陽イオン性支持体を形成してもよい。陰イオン交換置換基として、ジエチルアミノエチル(DEAE)、トリメチルアミノエチルアクリルアミド(TMAE)、第四級アミノエチル(QAE)および第四級アミン(Q)基が挙げられる。陽イオン交換置換基として、カルボキシメチル(CM)、スルホエチル(SE)、スルホプロピル(SP)、ホスフェート(P)およびスルホネート(S)が挙げられる。ポリエチレンイミン官能基を有するイオン交換樹脂、例えば、POROS(登録商標)HQ50は、Applied Biosystems,Foster City,CAから入手可能である。固定された組換えプロテインA官能基を有する交換樹脂、例えば、POROS(登録商標)A50は、Applied Biosystems,Foster City,CAから入手可能である。セルロースイオン交換樹脂、例えば、DE23、DE32、DE52、CM−23、CM−32およびCM−52は、Whatman Ltd. Maidstone,Kent,U.K.から入手可能である。Sephadexベースのイオン交換体および架橋イオン交換体も知られている。例えば、CAPTO Q、DEAE−、QAE−、CM−およびSP−SephadexならびにDEAE−、Q−、CM−およびS−Sepharose(例えば、DEAE Sepharose FF、Q Sepharose FFおよびQ Sepharose XL)およびSepharoseはすべて、GE Healthcare,Piscataway,N.J. Furtherから入手可能であり、DEAEおよびCM誘導体化エチレングリコール−メタクリレート共重合体の両方、例えば、TOYOPEARL(商標)DEAE−650SまたはM、TOYOPEARL(商標)CM−650SまたはM、TOYOPEARL(商標)GIGACAP Q−650およびTOYOPEARL(商標)GIGACAP CM−650は、Toso Haas Co.,Philadelphia,Paから入手可能である。また、本発明に従って、イオン交換モノリスクロマトグラフィー支持体、例えば、CIM(登録商標)−DISKを使用してもよく、Bia Separations,Austriaから入手可能である。イオン交換膜吸着体、例えば、Mustang(登録商標)QおよびMustang(登録商標)E(Pall Corporation、New York)、Sartobind(登録商標)Q(Sartorius Stedim Biotech S.A.、France)およびChromasorb(商標)(Millipore、Massachusetts)も本発明に従って使用してよい。
【0088】
いくつかの実施形態では、陰イオン交換カラムを使用する。イオン交換カラムは、まず、高塩バッファー、次いで、低塩バッファーを用いて平衡化し、その後、タンパク質と接触させる。通常、SMIP(商標)は、カラムと弱くしか結合せず、これによって、生成物の大部分が流れ、一方で、負の電荷を有する不純物、例えば、宿主細胞DNAおよびHCPは強力に結合し、保持されることが可能となる。次いで、カラムを平衡バッファーで洗浄し、樹脂に弱く結合されたさらなる生成物を収集する。生成物をカラムから除去した後で、高塩バッファーを使用して不純物をストリップすることができる。樹脂は再生、衛生化し、次いで、エタノール溶液中に保存できる。
【0089】
いくつかの実施形態では、イオン交換クロマトグラフィーに使用される樹脂の不純物容量および寿命を増大するために、イオン交換クロマトグラフィーの前に吸着性デプスフィルターを使用することが望ましい。例えば、Fractogel(登録商標)EMD TMAE Hi−Cap(M)樹脂は、合成メタクリレートポリマー塩基を有する強力な陰イオン交換体である。絡み合ったポリマー集塊物から形成される孔は、約800オングストロームの大きさを有する。ポリマー中のエーテル結合のために、表面は強い親水性である。長い、直鎖のポリマー鎖が、機能的リガンドを保有する。これらのポリマー鎖は、テンタクルとして知られている。すべてのテンタクルは、メタクリレート主鎖のヒドロキシル基に共有結合によって結合されている。さらなるテンタクル樹脂、例えば、Fractogel(登録商標)EMD TMAE(M)、Fractogel(登録商標)EMD TMAE(S)およびFractoprep(登録商標)TMAEも、本発明に従って使用してよい。吸着性デプスプレフィルターの使用によって、TMAEカラムをタンパク質ロード中の不純物(例えば、ProAピークプール)から保護してもよい。これらの不純物が、TMAEカラムの結合部位を使い果たし、またはブロックし、不純物に対する樹脂能を低下させる可能性がある。これらの不純物は、例えば、吸着性デプスフィルターを通すプレ濾過またはタンパク質の沈殿によって低減できる。
【0090】
溶出後、イオン交換クロマトグラフィーカラムは、清浄化してもよく、すなわち、タンパク質の溶出後、ストリップおよび/または再生してもよい。この手順は、通常、固相の表面上の不純物の蓄積を最小化し、かつ/または微生物での生成物の汚染の可能性を低減するために定期的に実施する。いくつかの実施形態では、イオン交換カラムは、10mM〜2M NaOHの濃度を用いるNaOH溶液での処理によって再生する。ストリップかつ/または再生されたカラムは、繰り返し使用してよい。
【0091】
上記のように、いくつかの実施形態では、デプス濾過を使用して、タンパク質調製物中の不純物を低減してもよい。いくつかの実施形態では、デプス濾過媒体は、セルロースファイバー、珪藻土および陽イオン性樹脂結合剤からなる高度に多孔性のフィルターである。デプスフィルターは、セルロースファイバーを通す篩い分けによって、珪藻土への疎水性吸着によって、および陽イオン結合剤へのイオン性吸着によって不純物を除去できる。デプスフィルターは、例えば、0.5cm、1cm、1.5cm、2.0cmの厚さであり得る。
【0092】
いくつかの実施形態では、タンパク質調製物に1つまたは複数の添加物を加え、沈殿を誘導し、かつ/またはイオン交換カラムへのプロテイン吸着を増強することができる。いくつかの実施形態では、タンパク質沈殿は、不純物の量を低減するための添加物によって誘導できる。種々のタンパク質沈殿法が、当技術分野で公知であり、本発明において使用できる。例えば、タンパク質は、塩析(例えば、中性塩を使用する)によって沈殿させることができる。いくつかの実施形態では、タンパク質を有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール)の添加によって沈殿させることができる。
【0093】
いくつかの実施形態では、非イオン性有機ポリマーを使用して、表面とのタンパク質結合および/またはタンパク質沈殿を促進することができる。種々の非イオン性有機ポリマーは、市販されており、本発明において使用してよい。例として、それだけには限らないが、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、セルロース、デキストラン、デンプンおよびポリビニルピロリドンが挙げられる。いくつかの実施形態では、添加物としてPEGを使用する。本発明において、種々の分子量を有するPEGを使用してよい。適したPEGは、例えば、約100〜約20,000ダルトンの平均ポリマー分子量を有し得る。いくつかの実施形態では、適したPEGは、200〜12,000、400〜20,000、400〜1000、200〜1000、400〜2000、1000〜5000、800〜8,000、1000〜10,000、2,000〜12,000ダルトンの間の平均重量を有し得る。いくつかの実施形態では、例示的PEGは、例えば、200、400、800、1000、2,000、4,000、6,000、8000、10,000、12,000、14,000、16,000、18,000、20,000ダルトンなどの平均分子量を有するPEGを含む。PEGは、種々の濃度で添加できる。低分子量PEGには、高分子量PEGと同様の効果を達成するために、通常、高濃度が必要となる。例示的な適したPEG濃度は、0〜25%(例えば、0〜6%、0〜9%、0〜12%、0〜15%、0〜18%、0〜20%、3〜9%、3〜15%、6〜12%、6〜20%または6〜25%の範囲であり得る)。PEGまたはその他の有機ポリマーは、直鎖ポリマーであっても、分岐ポリマーであってもよい。
【0094】
PEGの結合または沈殿効果は、通常、タンパク質の分子量に応じて変わると考えられる。通常、PEG効果は、大きなタンパク質に対してより大きい。例えば、通常、大きなタンパク質(例えば、HMW凝集物)ならびにウイルスの結合を増強するためには、単量体タンパク質またはLMW不純物の結合の増強の同量の結果をもたらすために必要とされるPEGの濃度と比較して、低濃度の所与の分子量のPEGが使用される。したがって、凝集物、複合体およびその他の大分子夾雑物の保持は、通常、それらが由来する凝集していない形態のタンパク質よりも大きな程度に増強される。したがって、PEGまたはその他の非イオン性ポリマー改変は、弱分配性クロマトグラフィーによる、不純物、特に、弱結合性HMW凝集物の除去の増強にとって特に有用である。いくつかの実施形態では、PEGは、陰イオン交換クロマトグラフィーの前であるが、アフィニティークロマトグラフィーステップの後に添加してもよい。
【0095】
いくつかの実施形態では、タンパク質沈殿のための非イオン性有機ポリマーの使用は、タンパク質変性を低減または排除するのに、ならびに界面活性剤およびその他の不純物を除去するのに役立ち得る。いくつかの実施形態では、添加物(例えば、ポリエチレングリコール)を使用して、生成物を濃縮することができる。
【0096】
いくつかの実施形態では、沈殿物は、遠心分離、濾過または当技術分野で公知のその他の分離法によって分離できる。いくつかの実施形態では、沈殿は、HMW凝集物などの夾雑物を含有する。いくつかの実施形態では、夾雑物含有沈殿を除去すること(例えば、濾過によって)が望ましい。いくつかの実施形態では、SMIP(商標)は沈殿中に存在する。いくつかの実施形態では、SMIP(商標)含有沈殿を再懸濁バッファーに溶解することが望ましい。いくつかの実施形態では、再懸濁バッファーは、イオン交換カラムへの直接ローディングに適したpHおよび/または伝導率を有する。
【0097】
実施例に記載されるハイスループットスクリーニングを用いて、イオン交換クロマトグラフィーのためのバッファー条件を効率的に最適化してもよい。
【0098】
ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー
セラミックヒドロキシアパタイト(cHA)ステップの主な目的は、高分子量(HMW)凝集物、浸出したプロテインA、沈殿または吸収剤への結合を促進するために使用される添加物(例えば、ポリエチレングリコール)および宿主細胞由来不純物、例えば、DNAおよびHCPの除去である。ほぼ中性のpHおよび低イオン強度のリン酸で帯電しているcHA樹脂を使用して、単量体タンパク質生成物(例えば、SMIP(商標))およびHMW凝集物の両方を結合することができる。HMW凝集物は、単量体よりもcHA樹脂とより堅固に結合するので、弱酸性〜弱塩基性pHの適したイオン強度を有する溶出バッファーを使用して単量体を選択的に溶出することができる。HMW凝集物は、中性pHのさらに高イオン強度および高リン酸濃度のバッファーを使用して、樹脂から、続いて、洗浄除去することができる。実施例に記載のとおり、本発明者らは、タンパク質調製物からHMW凝集物を効率的に除去するcHA操作条件を開発した。いくつかの実施形態では、HMW凝集物のパーセンテージを、ロード物質中、5%を超える(例えば、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%)から精製タンパク質生成物中、4%未満(例えば、3.5%、3.0%、2.5%、2.0%、1.5%、1.0%、0.8%、0.6%、0.4%、0.2%、0.1%未満)に低減できる。いくつかの実施形態では、HMW凝集物は、cHAクロマトグラフィー後に少なくとも約2倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍または少なくとも約100倍低減され得る。
【0099】
1.ヒドロキシアパタイト樹脂
種々のヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー樹脂は市販されており、本発明に使用してよい。例えば、ヒドロキシアパタイトは、結晶形態であり得る。いくつかの実施形態では、本発明に適したヒドロキシアパタイトは、凝集して粒子を形成し、高温で安定な多孔性セラミック塊に焼結するものであり得る。ヒドロキシアパタイトの粒径は広く変わり得るが、通常の粒径は、直径1μm〜1,000μmの範囲であり、10μm〜100μm(例えば、20μm、40μm、60μmまたは80μm)であり得る。
【0100】
cHAカラムの調製において、いくつかのクロマトグラフィー樹脂を使用してもよく、I型およびII型ヒドロキシアパタイトが最も広く用いられる。I型は、高いタンパク質結合能および産生タンパク質に対してより良好な能力を有する。I型は、小モジュラー免疫薬タンパク質の精製に特に適している。しかし、II型は、低いタンパク質結合能しか有さないものの、核酸と特定のタンパク質の良好な解離を有する。II型物質はまた、アルブミンに対して極めて低い親和性しか有さず、多数の種およびクラスの免疫グロブリンの精製に特に適している。特定のヒドロキシアパタイトの型の選択は、当業者によって決定できる。
【0101】
本発明は、容器に入っていない、カラムまたは連続アニュアルクロマトグラフ(continuous annual chromatograph)中に詰められたヒドロキシアパタイト樹脂とともに使用してもよい。本発明の一実施形態では、セラミックヒドロキシアパタイト樹脂を、カラムに詰める。カラム寸法の選択は、当業者によって決定できる。いくつかの実施形態では、小規模精製には、少なくとも0.5cmのカラム直径および約20cmの床高さを使用してよい。いくつかの実施形態では、約35cm〜約60cmのカラム直径を使用してよい。いくつかの実施形態では、60cm〜85cmのカラム直径を使用してよい。いくつかの実施形態では、pH9.0の200mM NaHPO溶液中のセラミックヒドロキシアパタイト樹脂のスラリーを使用して、約4cm/分の一定流速で、または重力を用いてカラムを充填してもよい。
【0102】
いくつかの実施形態では、ヒドロキシアパタイト樹脂は、清浄化、すなわち、タンパク質の溶出後にストリップおよび/または再生してもよい。ストリップおよび/または再生されたカラムは、繰り返し使用してよい。
【0103】
2.操作バッファーおよび条件
ヒドロキシアパタイト樹脂を、ロード物質と接触する前に、pH、イオン強度および温度などのパラメータを調整すること、いくつかの例では、種々の種類の物質の添加が重要である。したがって、ヒドロキシアパタイトマトリックスを溶液(例えば、pH、イオン強度などを調整するための、または界面活性剤の導入のためのバッファー)を用いて洗浄することによってヒドロキシアパタイトマトリックスの平衡化を実施し、注目するタンパク質(例えば、SMIP(商標)タンパク質)の精製に必要な特徴をもたらすことが最適ステップである。
【0104】
いくつかの実施形態では、ヒドロキシアパタイトマトリックスは、弱塩基性〜弱酸性のpHの0.01〜2.0M NaClを含有する溶液を使用して平衡化してもよい。いくつかの実施形態では、平衡バッファーは、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムおよび/またはリン酸リチウムを含有し得る。例えば、平衡バッファーは、1〜20mMのリン酸ナトリウム(例えば、1〜10mMのリン酸ナトリウム、2〜5mMのリン酸ナトリウム、2mMのリン酸ナトリウムまたは5mMのリン酸ナトリウム)を含有し得る。平衡バッファーは、0.01〜0.2M NaCl(例えば、0.025〜0.1M NaCl、0.05〜0.2M NaCl、0.05〜0.1M NaCl、0.05M NaClまたは0.1M NaCl)を含有し得る。ロードバッファーのpHは、6.2〜8.0(例えば、6.6〜7.7、6.5〜7.5、6.8、7.0、7.1、7.2または7.3)の範囲であり得る。平衡バッファーはまた、0〜200mMのアルギニン(例えば、50mM、100mM、120mMのアルギニン、140mM、160または180mMのアルギニン)を含有し得る。平衡バッファーは、0〜200mM HEPES(例えば、20mM、40mM、60mM、80mM、100mM、120mM、140mM、160mM、180mM HEPES)を含有し得る。2以上の平衡化ステップを実施してもよい。
【0105】
種々のタンパク質調製物を、ロード物質(例えば、アフィニティークロマトグラフィーからのピークプール、イオン交換クロマトグラフィーからのフロースルーまたは原料調製物)として使用してよい。いくつかの実施形態では、ロードは、適当なローディングバッファーにバッファー交換してよい。例えば、タンパク質調製物は、弱酸性〜弱塩基性pHの0.2〜2.5M NaClを含有するローディングバッファーにバッファー交換してよい。例えば、ローディングバッファーは、1〜20mMリン酸ナトリウム(例えば、2〜8mMリン酸ナトリウム、3〜7mMリン酸ナトリウムまたは5mMリン酸ナトリウム)を含有し得る。ローディングバッファーは、0.01〜0.2M NaCl(例えば、0.025〜0.1M NaCl、0.05〜0.2M NaCl、0.05〜0.1M NaCl、0.05M NaClまたは0.1M NaCl)を含有し得る。ローディングバッファーのpHは、6.4〜7.6(例えば、6.5〜7.0または6.6〜7.2)の範囲であり得る。
【0106】
ローディングは、タンパク質調製物を固相マトリックスを含有する充填床カラム、流動床/膨張床(expanded bed)に適用すること、および/または特定の時間の間、固相マトリックスが溶液と混合される簡単なバッチ操作において、タンパク質調製物をヒドロキシアパタイト樹脂と混合することによって実施してよい。
【0107】
ローディング後、ヒドロキシアパタイト樹脂を、洗浄バッファー(例えば、リン酸バッファー)を用いて洗浄し、ゆるく結合している不純物を除去してもよい。使用してよい洗浄バッファーは、ヒドロキシアパタイト樹脂の性質に応じて変わり、当業者によって決定できる。
【0108】
結合している生成物は、任意選択の洗浄手順後にカラムから溶出され得る。カラムからSMIP(商標)タンパク質の単量体を効率的に溶出するために、本発明は、弱酸性〜弱塩基性pHの高イオン強度リン酸バッファーを使用する。いくつかの実施形態では、溶出バッファーは、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムおよび/またはリン酸リチウムを含有し得る。例えば、適した溶出バッファーは、1〜100mMリン酸ナトリウム(例えば、2〜50mM、2〜40mM、2〜35mM、2〜32mM、2〜30mM、4〜35mM、4〜20mM、10〜40mM、10〜35mM、4〜10mMまたは2〜6mMリン酸ナトリウム)を含有し得る。いくつかの実施形態では、適した溶出バッファーは、2mM、3mM、6mM、8mM、10mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、55mMまたは60mMリン酸ナトリウムを含有し得る。
【0109】
適した溶出バッファーはまた、0.01〜2.5M NaCl(例えば、0.1〜2.5M、0.1〜2.0M、0.1〜1.6M、0.1〜1.2M、0.1〜1.0M、0.1〜0.8M、0.1〜0.5M、0.2〜2.5M、0.2〜1.5M、0.2〜1.2M NaCl、0.2〜1.0M、0.2〜0.8M、0.3〜1.1Mまたは0.2〜0.5M NaCl)を含有し得る。いくつかの実施形態では、適した溶出バッファーは、10mM、50mM、100mM、150mM、200mM、250mM、300mM、350mM、375mM、400mM、425mM、450mM、500mM、1.0M、1.5M、2.0Mまたは2.5M NaCl)を含有する。
【0110】
適した溶出バッファーのpHは、6.4〜8.5(例えば、6.4〜8.0、6.4〜7.8、6.5〜7.7または6.5〜7.3)の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、適した溶出バッファーのpHは、6.4、6.5、6.6、6.8、7.0、7.2、7.4、7.6、7.8、8.0、8.2、8.4または8.5)であり得る。
【0111】
いくつかの実施形態では、連続または段階的勾配での、結合している生成物のカラムからの溶出に、変更した塩濃度を含有する溶出バッファーを使用してもよい。
【0112】
例示的バッファーおよび操作条件は、実施例の節に記載されている。実施例に記載される、ハイスループットスクリーニングまたは代替スクリーニング(例えば、勾配溶出スクリーニング)を使用して、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーのバッファーおよび操作条件を効率的に最適化することができる。
【0113】
通常、本発明には、結合様式cHAクロマトグラフィーを用いる。あるいは、またはさらに、フロースルー様式を使用してもよい。フロースルー様式では、タンパク質調製物は、通常、本明細書に記載される適したロードバッファーにバッファー交換される。次いで、タンパク質調製物が、ヒドロキシアパタイトカラムを通って流れることが可能になる一方で、HMW凝集物などの不純物がカラムと結合することが可能となる。続いて、カラムを洗浄し、さらなる精製タンパク質がカラムを通って流れることを可能にしてもよい。
【0114】
組合せ結合/フロースルー様式では、タンパク質調製物が、ヒドロキシアパタイトカラムを通って流れることが可能となり、タンパク質単量体およびHMW凝集物の両方がまず結合する。しかし、ローディングを続けるにつれ、流入HMW凝集物は、タンパク質単量体よりも堅固に結合することができ、ひいては、結合している単量体と置き換わる。結果として、置換された単量体は、カラムを通って流れる。続いて、カラムを洗浄し、さらなる置換された単量体がカラムが通って流れることを可能にしてもよい。
【0115】
上記で具体的に論じられた塩およびバッファーに加えて、クロマトグラフィーおよびローディングは、種々のバッファーおよび/または塩、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、マグネシウム、カルシウム、塩化物、フッ化物、酢酸、リン酸、クエン酸および/またはTrisバッファーで起り得る。このようなバッファーの具体的な例として以下が挙げられる:Tris、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、フッ化ナトリウム物、フッ化カリウム、フッ化アンモニウム、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、クエン酸マグネシウム、クエン酸カリウム、クエン酸アンモニウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムまたは酢酸アンモニウム。実施例に記載されるハイスループットスクリーニングを使用して、cHAクロマトグラフィーのバッファーを効率的に最適化できる。
【0116】
さらに、本明細書に記載される種々のバッファーおよび溶液を使用して、確実にエンドトキシンおよび/または外毒素を含まないようにできる。特に、精製されたタンパク質調製物が製薬および/または臨床目的で使用されることが意図される場合には、エンドトキシンおよび/または外毒素を含まないバッファーを使用することが望ましい場合がある。バッファーまたは溶液から内毒素および/または外毒素を除去する種々の方法は、当技術分野で公知であり、本発明において使用できる。例えば、バッファーおよび溶液から発熱物質を除去できる。発熱物質除去は、中でも、例えば、酸ベースの加水分解、酸化、熱、水酸化ナトリウムによって達成され得る。
【0117】
さらなる濾過ステップ
膜濾過ステップを使用して、外来のウイルス性およびその他の夾雑物を低減、濃縮および/またはバッファー交換することができる。種々のウイルス保持フィルター、例えば、それだけには限らないが、中でも、Planova 20Nウイルス保持濾過(VRF)およびPlanova 35Nウイルス保持濾過(VRF)を本発明において使用してよい。種々の限外濾過および/またはダイアフィルトレーションスキッド(例えば、分子量カットオフ10kDa)を使用して、工程の流れを濃縮および/または製剤バッファーにバッファー交換できる。最終原薬を、例えば、使い捨て0.2pmフィルターを通して、任意の外来微生物夾雑物および特定の物質を除去できる。
【0118】
精製SMIP(商標)タンパク質を含有する医薬組成物
本明細書に記載される精製タンパク質調製物は、製薬学的用途のために製剤できる。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、4%未満(例えば、3.5%、3.0%、2.5%、2.0%、1.5%、1.0%、0.8%、0.6%、0.4%、0.2、0.1%未満)のHMW凝集物を含む精製されたSMIP(商標)タンパク質を含有し得る。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、精製SMIP(商標)タンパク質を含有し得、タンパク質の70%を超える(例えば、75%、80%、85%、90%、92%、94%、96%、98%、99%を超える)ものが、生物学的に活性な単量体の形態で存在する。
【0119】
本発明の医薬組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容できる担体を含有し得る。このような薬学的に許容できる担体は、医薬品投与と適合する、ありとあらゆる溶媒、分散媒、被膜、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含むよう意図される。医薬上活性な物質のための、このような媒体および薬剤の使用は、当技術分野で公知である。任意の従来媒体または薬剤が、活性化合物と不適合である場合を除いて、組成物中におけるその使用が考慮される。栄養補助剤的に活性な化合物(本発明によって同定される、かつ/または当技術分野で公知の)はまた、薬学/微生物学の技術分野で周知の任意の方法によって組成物中に組み込むことができる。
【0120】
本発明の医薬組成物は、その意図される投与経路と適合するよう製剤される。投与のために使用される溶液または懸濁液は、当技術分野で周知の公知の成分、中でも、例えば、注射水、生理食塩水、硬化油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールもしくはその他の合成溶剤などの滅菌希釈液、ベンジルアルコールもしくはメチルパラベンなどの抗菌薬、アスコルビン酸もしくは重亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤、エチレンジアミン四酢酸などのキレート化剤、酢酸、クエン酸もしくはリン酸などのバッファーならびに塩化ナトリウムもしくはデキストロースなどの張力の調整のための薬剤ならびに/または塩酸もしくは水酸化ナトリウムなどの酸もしくは塩基を含み得る。
【0121】
投与に適した本発明の製剤は、当技術分野で公知の任意の形態であり得る。例えば、経口投与のための適した製剤として、中でも、カプセル剤、ゼラチンカプセル剤、サシェ剤、錠剤、トローチ剤、ロゼンジ剤、散剤、顆粒剤、水性液または非水性液中の溶液または懸濁液または水中油型エマルジョンまたは油中水型エマルジョンであり得る。治療薬はまた、ボーラス、舐剤またはペースト剤の形態で投与してよい。別の実施例として、注射使用に適した製剤は、滅菌注射溶液または分散物の即時調製のための滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散物および滅菌散剤を含む。静脈内投与には、適した担体として、生理食塩水、静菌水、Cremophor ELTM(BASF、Parsippany,N.J.)またはリン酸緩衝溶液(PBS)が挙げられる。関節内投与に適した製剤は、微晶質の形態、例えば、水性微晶質懸濁液の形態であり得る治療薬の滅菌水性調製物の形態であり得る。リポソーム製剤または生分解性ポリマーシステムを使用して、関節内および眼部投与の両方のための治療薬を提示してもよい。眼の治療をはじめとする局所投与に適した製剤として、リニメント剤、ローション剤、ゲル剤、塗布剤、水中油型または油中水エマルジョン、例えば、クリーム、軟膏もしくはペースト、または溶液もしくは懸濁液、例えば、液滴などの液体または半液体の調製物が挙げられる。喘息のためなどの吸入治療には、スプレー缶、噴霧器またはアトマイザで分配される散剤(自己推進性またはスプレー製剤)の吸入を使用してもよい。このような製剤は、散剤吸入装置からの肺投与のための細かく粉砕された散剤の形態または自己推進性散剤分配製剤であり得る。
【0122】
全身投与はまた、経粘膜または経皮手段によるものであり得る。
【0123】
本発明によれば、精製されたタンパク質調製物を含む医薬組成物を、任意の経路によって哺乳類宿主に投与してよい。したがって、必要に応じて、投与は、経口または非経口、例えば、静脈内、皮内、吸入、経皮(局所)、経粘膜および直腸投与であり得る。
【0124】
このように一般的に記載された本発明は、例示として提供され、本発明を限定しようとするものではない以下の実施例を参照することによって、より容易に理解されるであろう。
【実施例】
【0125】
【実施例1】
【0126】
細胞培養および収集
抗CD20 SMIP(商標)タンパク質TRU−015を、懸濁培養で増殖させた組換えチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株を使用して製造した。TRU−015の製造のための例示的細胞培養および収集方法は、図4に示されている。本明細書に記載されるすべての細胞培養ステップについて、ステップに添加される液体は、添加に先立って少なくとも1回、0.2μmフィルターを通して濾過した。このようなフィルターを通過することができない消泡剤懸濁液は、添加前にオートクレーブ処理した。細胞を含有する培養ブロスは、ステップの間に濾過しなかった。
【0127】
TRU−015を発現するCHO細胞株を含有する細胞のバイアルを、解凍し、予加温した、選択圧のための0.45μMメトトレキサートを含む振盪フラスコ培地を入れた培養フラスコに移した。
【0128】
フラスコおよびウェーブバッグにおける細胞培養拡大および維持
細胞培養物を、まず、バッチリフィード法(batch−refeed process)を使用してディスポーザブル振盪フラスコ(最大作業容量1L)において拡大した。各培養フラスコを、バッチリフィードサイクルの間、制御温度およびCO雰囲気下で撹拌しながらインキュベートした。サイクルの最後に、培養物のすべてまたは一部を、1個以上のその他の振盪フラスコに移し(または、ウェーブバッグに対して十分な数の細胞がある場合には、以下を参照のこと)、振盪フラスコ培地で、予め定義された標的初期細胞密度に希釈した。リフィーディング後、各希釈培養物をインキュベーターに戻し、そこで、別のバッチリフィードサイクルの間、撹拌した。最終的なフェドバッチ培養のステップまでの使用したすべての細胞培養培地は、選択圧を維持するためにメトトレキサートを場合により含んでいた。
【0129】
振盪フラスコ中での増殖によって、十分な数の細胞が得られると、培養拡大は、ウェーブバッグにおいて継続した。増殖サイクルおよびインキュベーター条件は、ウェーブバッグが振盪される代わりに揺り動かされる点を除いて、フラスコについてと同様とした。ウェーブバッグ培地は、振盪フラスコ培地と同様とした。
【0130】
振盪フラスコおよびウェーブバッグ培養は、解凍から特定の最大世代数まで、必要な限りこの様式で継続した。通常、ウェーブバッグにおいて十分な数の細胞が得られるとすぐ、シードトレインバイオリアクターに播種し、少なくとも1つのウェーブバッグをシードトレインバイオリアクターのバックアップとして維持した。
【0131】
シードトレインバイオリアクターにおける細胞培養拡大および維持
シードトレインバイオリアクターにおいて播種物拡大を継続した。バイオリアクターに播種用バイオリアクター培地を加え、生理食塩水中、消泡剤のオートクレーブした懸濁液を補充した。ウェーブバッグから得た播種培養物を、予め定義された標的細胞密度に加え、各バッチリフィード継代を開始した。培養物を、継代の間中、制御された条件下で撹拌しながら維持し、その後、一部を採取し、次のバイオリアクターに播種するために使用するか、必要でない場合には、廃棄した。温度は37℃またはその付近で制御し、溶存酸素(DO)は、散布された0.2μmの濾過した空気、酸素または両方のガスのブレンドを使用して制御し、pHは、炭酸塩溶液(塩基性滴定剤)を使用して制御した。
【0132】
その後のシードトレインバイオリアクターバッチ−リフィード継代各々は、先行するサイクルから得た培養物の一部を保持し、播種用バイオリアクター培地で希釈し、消泡剤懸濁液を添加して開始した。シードトレインバイオリアクターおよびウェーブバッグは、両方とも必要に応じて、互いにバックアップとして役立つよう、複数の生産用バイオリアクターバッチに播種物を提供するよう、バッチリフィード操作で維持した。十分な数の細胞が得られるとすぐ、生産用バイオリアクターに播種した。
【0133】
生産用バイオリアクター
TRU−015を含有するコンディショニング培地を、10〜15日間持続する最終的なフェドバッチ工程を使用して生産用バイオリアクターにおいて作製した。シードトレインバイオリアクターから得た播種培養物を、生産用バイオリアクター中の最初の生産培地に加えた。消泡剤懸濁液を加えた。得られた培養物を、バッチの間中、制御された条件下で撹拌しながら維持した。播種の約4日後、温度設定を37℃から31℃に変えた。生産細胞培養工程の間中、DOは、散布された0.2μmの濾過した空気、酸素またはブレンドを使用して制御し、pHは、炭酸塩溶液(塩基性滴定剤)を使用して制御した。フェドバッチの間に、濃縮されたフィード培地溶液も加えた。播種後10から15日の間に、生産用バイオリアクター培養物の全容積を収集した。収集日は、スケジュールの考慮および/または培養生存力の考慮に基づいて選択した。
【0134】
図5は、14日の培養期間にかけて2種の異なるCHO細胞クローンによって産生されたTRU−015の生産用バイオリアクターの例示的1日力価測定値(μg/ml)を示す。ピーク力価値は、12から14日の生産用バイオリアクター増殖の間に得た。ピーク力価値の範囲は、1500〜3000μg/mlであった。
【0135】
ディスクスタック遠心分離(DSC)による収集
生産用バイオリアクターからのコンディショニング培地は、ディスクスタック型遠心機によって収集し、清澄化コンディショニング培地(CCM)を得た。DSCステップの1つの目的は、SMIP(商標)タンパク質を含有するコンディショニング培地からCHO細胞および細胞片を分離することであった。バイオリアクター容器の内容物を、圧力によってDSC、次いで、パッド濾過装置、次いで、0.2μmフィルターを通して、濾液容器またはバッグ中へ送った。収集処理が完了した後で、HEPES/EDTAバッファー溶液を、濾過された遠心分離物プール中にスパイクした。このスパイクの1つの目的は、DSCとその後のステップの間の工程間保持期間の間の酸性種の生成を低減することであった。EDTAも、プロテアーゼ活性を阻害し、プロテインA浸出を低減し得る。DSCステップは、室温で操作した。
【実施例2】
【0136】
クロマトグラフィー条件のハイスループットスクリーニング
ハイスループットスクリーニングを用いて、精製工程のための最適条件を開発した。クロマトグラフィー選択肢の初期ハイスループットスクリーニングによって、操作ウィンドウの迅速な同定が可能となる。データベースに対するハイスループットスクリーニング結果の比較によって、さらに、操作条件が狭まる。ハイスループットスクリーニングは、カラム実施の数および必要とされる工程間物質を最小化し、並行した開発努力を可能にする。
【0137】
プロテインAクロマトグラフィー
プロテインAクロマトグラフィーステップの主な目的として、細胞を含まない清澄化コンディショニング培地からの生成物捕獲および工程由来不純物(例えば、宿主細胞DNAおよび宿主細胞タンパク質[HCP]、培地成分および外来物質)からのTRU−015の分離が挙げられる。
【0138】
ハイスループットスクリーニングを実施して、プロテインAカラム条件を最適化し、生成物捕獲、不純物除去を増大し、溶出液沈殿を最小化した。バッチ結合機構を用いるハイスループットスクリーニングの例示的設計が、図6に示されており、プロテインAカラム操作の例示およびハイスループットスクリーニングモデルが図7に示されている。示されるように、賦形剤洗浄、溶出および中和条件の種々の組合せをスクリーニングした。特に、スクリーニングは、洗浄賦形剤として、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、アルギニンおよびTris、溶出バッファーとして、HEPES、酢酸およびグリシン、中和バッファーとして、Tris、HEPESおよびイミダゾールのレベル、および溶出における塩化ナトリウム濃度レベル(例えば、0mM、15mM、30mMおよび50mM)を少なくとも変更した。
【0139】
スクリーニングには、96ウェルを含有し、各ウェルが異なる条件を有するフィルタープレートを使用した。各ウェルは、約50μlの樹脂および300μlの液体を含んでいた。樹脂および液体を、Tecan Robot(Tecan US、Inc. 4022 Stirrup Creek Drive Suite 310 Durham、NC 27703、USA)を使用して、約20分間混合し、プレートを遠心分離して、上清を収集した。各ウェルからの上清を分析し、生成物の回収率、単量体および凝集物の量および宿主細胞タンパク質の存在を調べた。例えば、A280でのUV吸光度を使用して、全タンパク質濃度を調べた。濁度は、A320の吸光度によって測定した。単量体および凝集物の量は、サイズ排除HPLCによって測定した。宿主細胞タンパク質は、ELISAによって特性決定した。
【0140】
例示的プロテインAハイスループットスクリーニング結果は、図8に示されている。この実験において同定された1つの例示的な好都合な条件は、カルシウム洗浄、塩化ナトリウムを伴う酢酸溶出およびHEPES中和を含んでいた(図8参照のこと)。
【0141】
イオン交換クロマトグラフィー
イオン交換クロマトグラフィーの主な目的として、工程由来不純物(例えば、浸出したプロテインA、宿主細胞DNAおよびタンパク質ならびに外来物質)ならびに高分子量(HMW)種などの生成物関連不純物の除去が挙げられる。同様に、ハイスループットスクリーニングを使用して、不純物を除去するための陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)条件および陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)の可能性ある操作条件を同定した。試験した例示的変数が、表1に示されている。
【0142】
【表1】

【0143】
セラミックヒドロキシアパタイト(cHA)クロマトグラフィー
セラミックヒドロキシアパタイト(cHA)クロマトグラフィーの主な目的として、高分子量(HMW)凝集物、浸出したプロテインAならびにDNAおよびHCPなどの宿主細胞由来不純物の除去が挙げられる。
【0144】
また、ハイスループットスクリーニングを実施して、セラミックヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーの操作条件を最適化した。スクリーニングは、少なくともpH、塩濃度およびリン酸濃度を変更した。例示的変数が図9に示されている。HMW凝集物の除去に関する例示的結果が、図9に示されている。
【実施例3】
【0145】
cHAクロマトグラフィーステップの開発
ハイスループットスクリーニングによって、カラム精製スキームにおける適した単量体回収およびHMW凝集物除去条件を定性的に予測することができた。例えば、ハイスループットスクリーニングによって、cHAクロマトグラフィーステップは、HMW凝集物の除去において有効であることが同定された。HMW凝集物を除去するのに適した塩またはバッファー条件のおよその範囲も予測された(図9参照のこと)。代替スクリーニングを使用して、ハイスループットスクリーニングによって同定された条件をさらに精密にしてもよい。
【0146】
cHAカラムおよび塩化ナトリウム勾配溶出を使用する代替スクリーニングを実施した。例示的スキームおよび結果は、図10に示されている。
【0147】
ハイスループットおよび代替スクリーニングに基づく可能性ある溶出バッファーを、段階溶出様式でさらに評価した。例えば、60%HMW凝集物、6000ppm HCPを含むプロテインAカラムピークプールを、表2に示されるリン酸およびNaCl濃度の種々の組合せを用い、cHAカラムを使用して精製した。
【0148】
【表2】

【0149】
59%HMWおよび290ppm HCPを含む陰イオン交換クロマトグラフィープールを、表3に示されるリン酸およびNaCl濃度の種々の組合せを用いcHAカラムを使用して精製した。
【0150】
【表3】

【0151】
本明細書に記載される実験に基づいて開発された例示的な通常のcHAクロマトグラフィーステップは、図11に示されている。
【実施例4】
【0152】
TRU−015の精製法
上記の実験に基づいて、SMIP(商標)タンパク質の精製法を開発した。TRU−015の例示的精製法は、図12に示されている。この方法は、3つのクロマトグラフィーステップおよび3つの膜濾過ステップを含む。すべてのステップは、特に断りのない限り、室温で実施した。
【0153】
実施例1に記載されるように調製した、清澄化された細胞を含まないコンディショニング培地を、まず、MabSelect(商標)プロテインAアフィニティークロマトグラフィーにかけた。組換えプロテインA樹脂(GE Healthcare、Piscataway、NJ)を含むA17.7L(直径30cm×高さ25cm)を含むMabSelect(商標)カラムを使用した。プロテインAカラムは、Hepes緩衝生理食塩水を用いて平衡化し、清澄化コンディショニング培地をロードした。ロードされた樹脂を、塩化カルシウムを含有するHepesバッファーで、続いて、低濃度のHepesバッファーおよび塩化ナトリウムを含有する洗浄によって洗浄し、不純物のレベルをさらに低減した。結合している生成物を、低pH酢酸バッファーを用いてカラムから溶出した。
【0154】
生成物プールは、18℃から24℃で、pH≦4.1で、約1.5±0.5時間保持した。低pH保持は、エンベロープ型ウイルスを不活化するために設計された。次いで、濃Hepesバッファーを用いて溶出プールを中和した。樹脂を再生、衛生化し、次いで、エタノール溶液中で保存した。
【0155】
TMAE HiCap(M)カラムを、まず、高塩バッファーで、次いで、低塩バッファーを用いて平衡化した。カラムに中和したMabSelect rプロテインAピークをロードした。1つまたは複数の中和したMabSelect rプロテインAピークプールをTMAE HiCap(M)カラムにロードした。TRU−015は、カラムと弱くしか結合せず、これによって、生成物の大部分が流れ、一方で、負の電荷を有する不純物、例えば、宿主細胞DNAおよびHCPが強力に結合し、保持されることが可能となる。次いで、TMAE HiCap(M)カラムを、平衡バッファーで洗浄し、樹脂に弱く結合されたさらなる生成物を収集する。生成物をTMAE HiCap(M)カラムから除去した後で、高塩バッファーを使用して不純物をストリップした。樹脂は再生、衛生化し、次いで、エタノール溶液中に保存した。
【0156】
cHAカラムは、まず高塩バッファー、続いて、低塩バッファーを用いて平衡化した。次いで、TMAEフロースループールを、cHAカラムに適用した。ローディング後、カラムを低塩平衡バッファーを用いて洗浄し、高塩バッファーを使用してTRU−015を回収した(実施例3参照のこと)。かなり高い塩およびリン酸濃度でHMW種およびその他の不純物をカラムから除去した。カラムは再生し、次いで、水酸化ナトリウム溶液中で保存した。
【0157】
Planova 20Nウイルス保持濾過(VRF)ステップによって、外来ウイルス性夾雑物の可能性を表し得るウイルス性粒子の除去による、生成物の安全性の保障のための相当なレベルのウイルスのクリアランスが提供される。使い捨てPlanova 20N VRF装置を平衡化し、cHA生成物プールをロードした。TRU−015タンパク質を透過流中で収集した。ロードを処理した後、平衡バッファーフラッシュを用いて、系中に残っているさらなる生成物を回収した。
【0158】
限外濾過/ダイアフィルトレーションスキッド(分子量カットオフ10kDa)を使用して、工程流を濃縮し、製剤バッファーにバッファー交換した。平衡化後、ロード溶液を、まず、約8倍濃縮し、次いで、製剤バッファー(例えば、20mM L−ヒスチジン、4%マンニトール、1%スクロース、pH6.0)を用いて少なくとも10倍ダイアフィルトレーションした。さらなる濃縮後、製剤バッファーフラッシュを用いて系からプールを回収した。
【0159】
原薬を、使い捨て0.2μmフィルターに通して、任意の可能性ある外来の微生物夾雑物および特定の物質を除去した。
【0160】
濾過したTRU−015原薬を、例えば、ステンレス鋼容器に詰め、凍結し、−50℃±10℃で保存した。
【0161】
各ステップでのカラム性能を分析して、生成物回収率および不純物除去効率を求めた。例示的結果が表4に要約されている。
【0162】
【表4】

【0163】
表4で示されるように、cHAクロマトグラフィーステップは、HMW凝集物のほとんどを効率的に除去した。注目する生成物の総工程回収率は、51〜73%の範囲であり、生成物収率は、約23〜32%であった。表4に示される結果は、実験室規模精製工程に基づくものとした。臨床製造工程について同等の結果が得られた。例えば、複数の臨床規模工程に基づいて、平均収率は約28%であり、精製生成物中のHMW凝集物のパーセンテージは、約0.8%以下であった(出発物質中の50〜60%から低減した)。既存の工程と比較して、タンパク質発現/収集および精製収率の増大によって、生産性の8倍を超える増大がある。
【実施例5】
【0164】
ロード物質のパッド濾過
ロード物質は、不純物に対する能力および陰イオン交換カラムの寿命を増大するために、パッド濾過にかけてもよい。例えば、TMAE Hi−cap樹脂は、合成メタクリレートポリマー塩基を含む強力な陰イオン交換体である。絡み合ったポリマー集塊物から形成される孔は、約800オングストロームの大きさを有する。ポリマー中のエーテル結合のために、表面は強い親水性である。テンタクルとして知られる長い、直鎖のポリマー鎖が、機能的リガンドを保有する。テンタクルは、共有結合によってメタクリレート主鎖のヒドロキシル基と結合している。不純物が、TMAEカラムの結合表面を使い果たし、またはブロックし、能力を低下させる可能性がある。
【0165】
吸着性デプスプレフィルターの使用によって、TMAEカラムなどのカラムが、ロード物質中の不純物(例えば、MabSelect(商標)ProAピークプール)から保護され得る。デプス濾過媒体は、通常、セルロースファイバー、珪藻土および陽イオン性樹脂結合剤からなる高度に多孔性の1cmの厚さのフィルターである。デプスフィルターは、セルロースファイバーを通す篩い分けによって、珪藻土への疎水性吸着によって、および陽イオン結合剤へのイオン性吸着によって不純物を除去できる。
【0166】
TRU−015の精製の間、Millistack A1HC PADフィルター(Millipore、Billerica、MA)を用いて、TMAEカラムへのローディングに先立ってMabSelect ProAピークプールから不純物を除去し、TMAE能を少なくとも2倍改善した。例えば、吸着性デプスフィルターMillistack AIHCを用いる生成物ロードのプレ濾過によって、その後のTMAE Hi−Cap樹脂カラムへのロードチャレンジの100から200mg/mLへ増大が提供されることが、夾雑物の二次的ブレークスルーによって示される。AIHCを、1時間当たり平方メートルあたり200リットルの流束で実施し、平方メートルあたり200リットルにロードした。
【実施例6】
【0167】
陽イオン交換クロマトグラフィーを用いるSBI−087の捕獲
この実施例は、アフィニティークロマトグラフィーの代わりにCEXを使用して、効率的にSMIP(商標)を捕獲できることを実証する。CEXを使用することは、中でも、低い捕獲費用、特定のアフィニティーカラムよりも高い可能性がある能力、HMW低減のための固体の可能性およびcHAまたは陰イオン交換ステップの除去の可能性をはじめとする種々の利益を有し得ると考えられる。
【0168】
この実験ではSBI−087を使用した。CEXのためのロード物質は、任意の適した酸を使用して酸性化してもよい。例示的酸性化条件は、表5に示されている。
【0169】
【表5】

【0170】
MabSelect(商標)プロテインAアフィニティークロマトグラフィーによるHMW凝集物の量の低減を、バッチ結合法を用いたCEXによるものと比較した。図13に示されるように、CEXによるHMW凝集物の除去は、MabSelect(商標)アフィニティークロマトグラフィーと同等であるか、より良好であり、このことは、CEXは、タンパク質調製物からのHMW凝集物の除去のために、アフィニティークロマトグラフィーを置換するために使用できることを示す。
【0171】
例示的CEXステップは、ロードおよび溶出を含む。CEX捕獲操作条件は、ハイスループットスクリーニング法を使用して最適化した。例えば、2種のCEX樹脂、GigaCap(登録商標)およびCapto(商標)Sを使用した。25mg/mLr対75mg/mLrのロードチャレンジを使用した。ロードpH(1M酢酸で調整した)は、4.25、4.5、4.75または5.0であった。溶出条件は以下のとおりとした:
溶出(総mM Na+):
pH5(酢酸):100、125、150、175mM
pH6.5(MES):40、65、90、115
pH8.0(Tris):20、40、60、80
50mMバッファーと見なす
【0172】
室温での2時間のインキュベーションでの結合能を示す例示的結果が、図14に示されている。また、高いまたは長いチャレンジが、溶出されたプール中のより多くのLMW種につながり得ることも観察された。25対75mg/mLr LCでロードされたカラムから溶出されたCEXピークを示す例示的結果が、図15に示されている。使用した例示的ストリップ条件は、8M尿素、2M NaCl、pH6であった。CEX樹脂は、ストリップおよび/または再利用できる。
【実施例7】
【0173】
陰イオン交換クロマトグラフィーを用いるHMWの除去
この実施例は、陰イオン交換クロマトグラフィーを使用して、SMIP(商標)調製物からHMW不純物を効率的に除去できるということを実証する。この実験では、SBI−087を例示的SMIP(商標)タンパク質として使用した。
【0174】
陰イオン交換クロマトグラフィーステップは、表1に概説されるハイスループットスクリーニングアプローチを使用して開発した。そのスクリーニングから導いたクロマトグラフィー条件を、37%HMWを含むプロテインAピークプールを含有するロードを使用する例示的実施において使用した。Fractogel(登録商標)TMAE HiCapの充填したカラムを、それぞれ、100および93mg/mLのロードチャレンジへの弱分配性クロマトグラフィー様式で実施した。図16は、HMWの例示的な有効な除去を示す。収集したプールは、88%純粋であり、「単量体」SMIP(商標)の収率>95%であった。ロード後洗浄によって、「単量体」SMIP(商標)タンパク質のより多くの回収が可能となった。
【0175】
これらの結果は、第2のカラム(例えば、AEX)クロマトグラフィーが、HMVの実質的な除去を達成でき、これによって、下流cHAステップの開発および実施における、より柔軟で、低い費用が可能となることを実証した。さらに、これらの結果はまた、2−カラム(例えば、プロテインAからAEX)工程を開発し、タンパク質調製物からHMW不純物の実質的な量を除去することが実現可能であることを示す。
【0176】
例示的SMIP(商標)配列
イタリック体:リンカー配列
下線:CDR配列
【0177】
【表6−1】

【0178】
【表6−2】

【0179】
【表7−1】

【0180】
【表7−2】

【0181】
【表7−3】

【0182】
【表7−4】

【0183】
【表7−5】

【0184】
【表7−6】

【0185】
【表7−7】

【0186】
【表7−8】

【0187】
【表7−9】

【0188】
【表7−10】

【0189】
【表7−11】

【0190】
【表7−12】

【0191】
【表7−13】

【0192】
【表7−14】

【0193】
【表8−1】

【0194】
【表8−2】

【0195】
【表8−3】

【0196】
【表8−4】

【0197】
等価物
前記は、本発明の特定の非限定的な実施形態の説明であった。当業者ならば、日常の実験程度のものを使用して、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態の多数の等価物を認識するか、確認できるであろう。当業者には当然のことながら、以下の特許請求の範囲で定義される本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、この記載に種々の変更および改変を行うことができる。
【0198】
特許請求の範囲では、「a」、「an」および「the」などの冠詞は、文脈から反対である、または別に明らかであると示されない限り、1種よりも1つまたは複数を意味し得る。1つまたは複数の群のメンバー間に「または」を含む特許請求の範囲または説明は、文脈から反対である、または別に明らかであると示されない限り、群メンバーのうち1種、2種以上またはすべてが、所与の生成物または工程中に存在する、所与の生成物または工程において使用される、またはそうでなければ所与の生成物または工程と関連している場合に沿っていると考えられる。本発明は、群の正確に1種のメンバーが所与の生成物または工程中に存在する、所与の生成物または工程において使用される、またはそうでなければ所与の生成物または工程と関連している実施形態を含む。本発明はまた、群のメンバーのうち2種以上またはすべてが、所与の生成物または工程中に存在する、所与の生成物または工程において使用される、またはそうでなければ所与の生成物または工程と関連している実施形態を含む。さらに、本発明が、1以上の特許請求の範囲に由来するか、説明の関連部分に由来する、1以上の制限、要素、条項、記述用語などが別の特許請求の範囲に導入されるすべての変形、組合せおよび順列を包含することは理解されるべきである。例えば、別の特許請求の範囲に応じて変わる任意の特許請求の範囲を、同じ基本クレームに応じて変わる任意のその他の特許請求の範囲に見られる1以上の制限を含むよう改変してよい。さらに、特許請求の範囲が組成物を列挙する場合は、特に断りのない限り、または矛盾もしくは不一致が生じると当業者に明らかでない限り、本明細書に開示される目的のいずれかのために組成物を使用する方法が含まれ、本明細書に開示される作製方法のいずれかに従って組成物を作製する方法または当技術分野で公知のその他の方法が含まれると理解されるべきである。さらに、本発明は、本明細書に開示される組成物を調製するための方法のいずれかに従って作製された組成物を包含する。
【0199】
要素が、例えば、マーカッシュ群形式で一覧として提示される場合は、要素の各サブグループも開示され、任意の要素(複数可)が群から除去されていてもよいと理解されるべきである。また、用語「含む(comprising)」とは、オープンであり、さらなる要素またはステップを含むことを許可することも留意される。一般に、発明または発明の態様が、特定の要素、特徴、ステップなどを含むといわれる場合には、本発明の特定の実施形態または態様は、このような要素、特徴、ステップなどからなる、本質的に、それらからなると理解されるべきである。簡単にする目的で、それらの実施形態は、これらの言葉では具体的に示していない。したがって、1以上の要素、特徴、ステップなどを含む本発明の各実施形態について、本発明はまた、それらの要素、特徴、ステップなどからなる、または本質的にそれらからなる実施形態を提供する。
【0200】
範囲が与えられる場合には、端点は含まれる。さらに、文脈から特に断りのない限り、または文脈および/もしくは当業者の理解から別に明らかでない限り、範囲として表現される値は、本発明の異なる実施形態において、記載された範囲内の任意の特定の値を、文脈が明確に別に示さない限り、下限の単位の1/10まで仮定できると理解されるべきである。また、特に断りのない限り、または文脈および/または当業者の理解から別に明らかでない限り、範囲として表現される値は、所与の範囲内の任意の部分範囲を仮定でき、部分端点が、下限の単位の1/10と同程度の正確さで表現されるということも理解されるべきである。
【0201】
さらに、本発明の任意の特定の実施形態が、任意の1つまたは複数の特許請求の範囲から明確に除外され得ることが理解されるべきである。本発明の組成物および/または方法の任意の実施形態、要素、特徴、適用または態様が、1つまたは複数の特許請求の範囲から除外され得る。簡潔さを目的として、1以上の要素、特徴、目的または態様が排除される実施形態のすべてが、本明細書に明確に示されるわけではない。
【0202】
参照文献の組み込み
本出願に列挙されるすべての刊行物および特許文書は、各個々の刊行物または特許文書が本明細書に組み込まれるのと同程度に、その全体が参照により組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子量凝集物を含有するタンパク質調製物から小モジュラー免疫薬タンパク質を精製する方法であって、タンパク質調製物を、精製された小モジュラー免疫薬タンパク質が、4%未満の凝集物しか含有しないような操作条件下で、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーにかけるステップを含む方法。
【請求項2】
3つ以下のクロマトグラフィーステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
操作条件が、リン酸バッファー中で、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーカラムから小モジュラー免疫薬タンパク質を溶出することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
リン酸バッファーが、エンドトキシンを含まない、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
リン酸バッファーの発熱物質が除去されている、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
リン酸バッファーが、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムおよび/またはリン酸リチウムを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
リン酸バッファーが、1mM〜50mMの濃度のリン酸ナトリウムを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
リン酸バッファーが、100mM〜2.5Mの濃度の塩化ナトリウムをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
リン酸バッファーが、2mM〜32mMの濃度のリン酸ナトリウムおよび100mM〜1.6Mの濃度の塩化ナトリウムを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
リン酸バッファーが、6.5〜8.5のpHを有する、請求項3から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
操作条件が、NaCl勾配によってヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーカラムから小モジュラー免疫薬タンパク質を溶出することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
操作条件が、NaCl段階溶出法によってヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーカラムから小モジュラー免疫薬タンパク質を溶出することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
操作条件が、リン酸勾配によってヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーカラムから小モジュラー免疫薬タンパク質を溶出することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
リン酸勾配が、直線勾配である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
リン酸勾配が、段階勾配である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーが、セラミックヒドロキシアパタイトI型またはII型樹脂を含有するカラムを使用する、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
カラムが、セラミックヒドロキシアパタイトI型樹脂を含有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
樹脂が、直径1μm〜1,000μmである、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
樹脂が、直径10μm〜100μmである、請求項16または17に記載の方法。
【請求項20】
ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーの前にアフィニティークロマトグラフィーによってタンパク質調製物を精製するステップをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
アフィニティークロマトグラフィーが、定常免疫グロブリンドメインと結合するタンパク質吸収剤を使用する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
アフィニティークロマトグラフィーが、可変免疫グロブリンドメインと結合するタンパク質吸収剤を使用する、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
タンパク質吸収剤が、VHドメインと結合する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
タンパク質吸収剤が、プロテインAを含む、請求項21から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
アフィニティークロマトグラフィーが、MabSelect rプロテインA樹脂カラムを使用する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
アフィニティークロマトグラフィーのステップが、Hepes、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、アルギニン、Tris、塩化マグネシウム、ヒスチジン、尿素、イミダゾール、1つまたは複数の有機溶媒、イオン性および/または非イオン性界面活性剤を含む洗浄バッファーを使用してアフィニティークロマトグラフィーカラムを洗浄するステップを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
1つまたは複数の有機溶媒が、エタノール、メタノール、プロピレングリコール、エチレングリコール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
アフィニティークロマトグラフィーのステップが、Hepes、リン酸、グリシン、グリシルグリシン、塩化マグネシウム、尿素、プロピレングリコール、エチレングリコール、1つまたは複数の有機酸および/またはアルギニンを含む溶出バッファーを使用してアフィニティークロマトグラフィーカラムから小モジュラー免疫薬タンパク質を溶出するステップを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項29】
1つまたは複数の有機酸が、酢酸、クエン酸、ギ酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、マロン酸、フタル酸およびサリチル酸からなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
溶出バッファーが、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムおよびそれらの組合せからなる群から選択される塩をさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
塩が、1mM〜1Mの濃度である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
塩が、1mM〜500mMの濃度である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
塩が、1mM〜100mMの濃度である、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
添加物を添加して、吸着剤との結合を促進するステップをさらに含む、請求項20から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
タンパク質調製物を、陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂を使用する陰イオン交換クロマトグラフィーによって精製するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
タンパク質調製物を、アフィニティークロマトグラフィーの後であるが、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーの前に、陰イオン交換クロマトグラフィーによって精製するステップをさらに含む、請求項20から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
添加物を添加して、小モジュラー免疫薬タンパク質および/または不純物と陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂の結合を増強するステップをさらに含む、請求項35または36に記載の方法。
【請求項38】
添加物が、非イオン性有機ポリマーを含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
非イオン性有機ポリマーが、ポリエチレングリコール(PEG)である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
陰イオン交換クロマトグラフィーの前にデプスフィルターステップをさらに含む、請求項35から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
1つまたは複数の濾過ステップをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
1つまたは複数の濾過ステップが、ウイルス保持濾過ステップを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
1つまたは複数の濾過ステップが、限外濾過および/またはダイアフィルトレーションステップを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
小モジュラー免疫薬タンパク質を夾雑物からさらに分離できるように、添加物を添加して、タンパク質調製物からの1つまたは複数の夾雑物のタンパク質沈殿を誘導するステップをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
添加物が、非イオン性有機ポリマーを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
非イオン性有機ポリマーが、ポリエチレングリコール(PEG)である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
沈殿が、陰イオン交換クロマトグラフィーの前に誘導され、沈殿した夾雑物を、濾過によってタンパク質調製物から除去するステップをさらに含む、請求項44から46に記載の方法。
【請求項48】
精製された小モジュラー免疫薬タンパク質が、2%未満の凝集物しか含有しない、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
精製された小モジュラー免疫薬タンパク質が、1%未満の凝集物しか含有しない、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
タンパク質調製物が、10%を超える高分子量凝集物を含有する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
タンパク質調製物が、20%を超える高分子量凝集物を含有する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
タンパク質調製物が、30%を超える高分子量凝集物を含有する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
タンパク質調製物が、60%を超える高分子量凝集物を含有する、請求項1から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
タンパク質調製物が、30%未満の高分子量凝集物しか含有しない、請求項1から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
タンパク質調製物が、20%未満の高分子量凝集物しか含有しない、請求項1から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
タンパク質調製物が、15%未満の高分子量凝集物しか含有しない、請求項1から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
タンパク質調製物が、10%未満の高分子量凝集物しか含有しない、請求項1から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
タンパク質調製物が、5%未満の高分子量凝集物しか含有しない、請求項1から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
小モジュラー免疫薬タンパク質が、CD20と特異的に結合する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
小モジュラー免疫薬タンパク質が、配列番号1〜59および67〜76のいずれか1つと少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
タンパク質調製物を、培養細菌細胞、哺乳類細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母細胞、細胞を含まない培地、トランスジェニック動物または植物から調製する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
タンパク質調製物が、細胞培養培地調製物である、請求項1から60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
培養培地調製物が、培養細胞から分泌される小モジュラー免疫薬タンパク質を含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
培養細胞が、CHO細胞である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
培養培地調製物を、大規模バイオリアクターから調製する、請求項62に記載の方法。
【請求項66】
タンパク質調製物が、細胞抽出物を含む、請求項1から61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
タンパク質調製物を、封入体から調製する、請求項1から61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
高分子量凝集物を含有するタンパク質調製物から小モジュラー免疫薬タンパク質を精製する方法であって、タンパク質調製物を、精製された小モジュラー免疫薬タンパク質が4%未満の凝集物しか含有しないような操作条件下で、(a)アフィニティークロマトグラフィーおよび/またはイオン交換クロマトグラフィー、ならびに(b)ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーにかけるステップを含む方法。
【請求項69】
タンパク質調製物を、(a1)アフィニティークロマトグラフィー、(a2)イオン交換クロマトグラフィーおよび(b)ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーにかける、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
タンパク質調製物を、(a1)陽イオン交換クロマトグラフィー、(a2)陰イオン交換クロマトグラフィーおよび(b)ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーにかける、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
3つ以下のクロマトグラフィーステップを含む、請求項68から70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
アフィニティークロマトグラフィーが、プロテインAクロマトグラフィーである、請求項68または69に記載の方法。
【請求項73】
イオン交換クロマトグラフィーが、陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂を使用する陰イオン交換クロマトグラフィーである、請求項68または69に記載の方法。
【請求項74】
陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂が、Q Sepharose FF、Q Sepharose XL、DEAE Sepharose FF、POROS(登録商標)HQ50、POROS(登録商標)A50、Toyopearl(登録商標)DEAE、Toyopearl(登録商標)GigaCap Q−650M、Toyopearl(登録商標)DEAE−650M、Capto(商標)Q、Capto(商標)DEAEおよびテンタクル陰イオン交換クロマトグラフィーからなる群から選択される、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂が、帯電膜吸収体である、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
陰イオン交換クロマトグラフィーが、Mustang(登録商標)Q、Mustang(登録商標)E、Sartobind(登録商標)QおよびChromasorb(商標)からなる群から選択される、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
陰イオン交換クロマトグラフィー樹脂が、帯電モノリス支持体である、請求項73に記載の方法。
【請求項78】
陰イオン交換クロマトグラフィーが、CIM(登録商標)−DISKである、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
アフィニティークロマトグラフィーが、MabSelect(商標)rプロテインAアフィニティークロマトグラフィーであり、イオン交換クロマトグラフィーが、テンタクル陰イオン交換クロマトグラフィーであり、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーが、I型セラミックヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーである、請求項69に記載の方法。
【請求項80】
テンタクル陰イオン交換クロマトグラフィーが、Fractogel(登録商標)TMAE HiCap(M)(商標)Fractogel(登録商標)TMAE(S)(商標)およびFractoprep(登録商標)TMAE(商標)からなる群から選択される、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
再使用のために、1つまたは複数のクロマトグラフィーカラムをストリップおよび/または再生するステップをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
精製された小モジュラー免疫薬タンパク質が、2%未満の凝集物しか含有しない、請求項68から81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
精製された小モジュラー免疫薬タンパク質が、1%未満の凝集物しか含有しない、請求項68から81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項84】
タンパク質調製物が、20%を超える高分子量凝集物を含有する、請求項68から81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
タンパク質調製物が、60%を超える高分子量凝集物を含有する、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
タンパク質調製物が、30%未満の高分子量凝集物しか含有しない、請求項68から81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
小モジュラー免疫薬タンパク質が、CD20と特異的に結合する、請求項68から86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
小モジュラー免疫薬タンパク質が、配列番号1〜59および67〜76と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
請求項1から88のいずれか一項に記載の方法を用いて精製された小モジュラー免疫薬タンパク質。
【請求項90】
20%を超える高分子量凝集物を含有するタンパク質調製物からタンパク質を精製する方法であって、タンパク質調製物を、精製されたタンパク質が、4%未満の凝集物しか含有しないような操作条件下で、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーにかけるステップを含む方法。
【請求項91】
タンパク質調製物が、60%を超える高分子量凝集物を含有する、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
操作条件が、リン酸バッファー中で、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーカラムからタンパク質を溶出することを含む、請求項90に記載の方法。
【請求項93】
リン酸バッファーが、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムおよび/またはリン酸リチウムを含む、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
リン酸バッファーが、1mM〜50mMの濃度のリン酸ナトリウムを含む、請求項92に記載の方法。
【請求項95】
リン酸バッファーが、100mM〜2.5Mの濃度の塩化ナトリウムをさらに含む、請求項92に記載の方法。
【請求項96】
リン酸バッファーが、2mM〜32mMの濃度のリン酸ナトリウムおよび100mM〜1.6Mの濃度の塩化ナトリウムを含む、請求項92に記載の方法。
【請求項97】
リン酸バッファーが、6.5〜8.5のpHを有する、請求項92から96のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
タンパク質が、小モジュラー免疫薬ポリペプチドを含む、請求項90に記載の方法。
【請求項99】
小モジュラー免疫薬タンパク質と、薬学的に許容できる担体とを含み、小モジュラー免疫薬タンパク質が、4%未満の高分子量凝集物しか含まない医薬組成物。
【請求項100】
小モジュラー免疫薬タンパク質が、3%未満の高分子量凝集物しか含まない、請求項99に記載の医薬組成物。
【請求項101】
小モジュラー免疫薬タンパク質が、2%未満の高分子量凝集物しか含まない、請求項99に記載の医薬組成物。
【請求項102】
小モジュラー免疫薬タンパク質が、1%未満の高分子量凝集物しか含まない、請求項99に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−209068(P2010−209068A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−54170(P2010−54170)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(309040701)ワイス・エルエルシー (181)
【Fターム(参考)】