説明

小児用下腿免荷装具

【課題】重量を出来るだけ軽減しながら構造が簡単、製作容易であって、コストもかからず、また、支柱の強度を弱めることなく、足部の前後動は阻止して安定支持でき、上下動のみフリーとしてソケット遠位部に荷重がかからない状態で歩行できるようにすること。
【解決手段】下腿を支持するソケットと、略U字状の支柱と、略U字状の靴支持体とから構成された小児用下腿免荷装具であって、滑動性に優れた合成樹脂製の摺動部材が、前記支柱を貫通するように設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下腿骨の損傷等の治療に用いる小児用下腿免荷装具に関する。
【背景技術】
【0002】
下腿骨の損傷(骨折など)の治療に用いる下腿用免荷装具としては、大人用或いは小児用に関わらず、大別すると、足部は直接接地させるが、ソケット遠位部に負荷がかからない又は負荷を軽減できるようにする方式と、足部を直接接地させず、膝や下腿上部で体重を支持し、ソケット遠位部に荷重をかけない方式がある。
【0003】
上述した従来技術としては、次の文献を挙げることができる。
【特許文献1】特開2004−147726。
【特許文献2】特開2004−166811。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記後者の方式、即ち、足部を接地させない下腿免荷装具の改良を目指すものである。
こうした装具は、一般に、図9乃至図10に示すように、下腿を支持する一般に樹脂などで構成されたソケット1と、該ソケット1の両側部に固定された正面視が略U字状の例えばアルミ合金製の支柱2と、該支柱2に内接して上下方向の摺動自在に設けられた、正面視が略U字状の例えば鋼材(或いはステンレス材など)で構成された靴支持体3とから構成されている。
尚、靴支持体3に固定される靴は、通常の靴であるが、患者によって選定される大きさのものであり、また、小児用としての運動靴などが含まれてよい。
【0005】
上述した上下変位可能な靴支持体3を設ける構造を採用している理由は次の通りである。即ち、膝下部位(脹脛)は、図9に示すように、ソケット1に支持されることになるが、膝下部位(脹脛)は剛体ではなく、変形する筋肉であり、従って、歩行に際してソケット1の中で変位し得るもので、結果として膝下は姿勢不安定となるもので、足部が前後動、上下動することになる。
【0006】
このような足部の不安定を回避するためには、靴を何らかの方法で支持させる必要があり、靴を支柱2の側に固定することは可能であるが、このような接地する支柱2に直接支持させ、前後動、上下動を阻止する方法であると、結果として、ソケット遠位部に荷重がかかることになり、下腿免荷の機能を発揮させることは出来ない。ここに言うソケット遠位部とは、ソケット下縁より患部を含む下腿を言う。
【0007】
そこで、ソケット遠位部に荷重がかからないように、上下動を許容して(フリーの状態)、足部の前後動を阻止できるようにすることが求められるのであり、その結果として、上述した支柱2に対する靴支持体3の上下摺動のみ自在の支持構造が採用されることになったものである。
【0008】
そして、靴支持体3の上下方向の摺動自在の構成としては、次の構造が用いられてきている。
即ち、前記支柱2を断面視逆C字状のチャネル材で構成し、そのチャネル溝内を転動するローラー6を前記靴支持体3に固定し、以って、該靴支持体3が上下の方向に移動できるようにして、ソケット遠位部に荷重がかからないようにしている。
【0009】
この従来構造は、上よりソケット1を固定するアルミ板材20、チャネル21、U字ステンレスアブミ材22の3部材で構成され、各部材はチャネル21にネジ止めされている。
しかし乍ら、このような構造は、成人用の下腿免荷装具であれば格別製作に問題はないが、小児用(3〜6歳程度)のような小型の装具(例えば、足部のサイズで示せば、約15〜22cm)を製作しようとすると問題を生じる。
即ち、下腿長による適合調節を行う場合に、長い場合はアルミ板材20で行い、短い場合はチャネル21の切断で対処している。
しかし、子どものように短すぎる場合は、チャネルを短く切りすぎているため、上下の部材(アルミ板〜ステンレスアブミ)を固定している間隔が短くなりすぎて、図9の該靴支持体3がソケット遠位部に荷重をかけない十分な滑動ストロークを得ることができなくなるという問題が生じるのである。
【0010】
本発明は、かかる問題点に鑑み、重量を出来るだけ軽減しながら構造が簡単、製作容易であって、コストもかからず、また、支柱の強度を弱めることなく、足部の前後動は阻止して安定支持でき、上下動のみフリーとしてソケット遠位部に荷重がかからない状態で歩行できるようにする小児用下腿免荷装具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかる小児用下腿免荷装具は、上記目的達成のために、下腿を支持するソケット(1)と、該ソケット(1)の両側部に固定された正面視が略U字状の支柱(2,2)と、該支柱(2,2)に内接して上下方向に摺動自在に設けられた正面視が略U字状の靴支持体(3)とから構成された小児用下腿免荷装具であって、前記靴支持体(3)の両上端部(3A,3A)に、滑動性に優れた合成樹脂製の摺動部材(4,4)が、前記支柱(2,2)を貫通するように設けられている、ことを特徴とする。
【0012】
本発明に言う小児用下腿免荷装具は、小児と脚寸法の近時した成人(小柄な婦女子など)にも適用できることは自明であり、その意味で、小児用という限定は排除されて理解されるべきである。
上記ソケットは、図1或いは図9に示すような構成のものの他にこれまでに一般に用いられている形状、形態のソケットは全て包含される。そして、その構成素材は、皮革、合皮・樹脂など適宜公知のものを用いてよい。
【0013】
また、上記支柱については、通常金属製素材が用いられるが、その素材(FRP、CFRPなど)及びその断面形状(矩形、長方形、丸形、三角形など)については、強度上に問題ない限り適宜のものを選択してよい。
そして、靴支持体についても、通常金属製素材が用いられるが、その素材(FRP、CFRPなど)及びその断面形状(矩形、長方形、丸形、三角形など)については、強度上に問題ない限り適宜のものを選択してよい。
【0014】
また、前記摺動部材が前記靴支持体の両上端部に設けられているとされているが、この両上端部とは、作用効果に差異のない限り、上端部近傍も含まれる概念である。
また、前記支柱と靴支持体とを内接して設けるとされているが、この内接とは、両者が摺接する場合、或いは実施例のように僅かに隙間がある場合も含まれるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、重量を出来るだけ軽減しながら構造が簡単、製作容易であって、コストもかからず、また、支柱の強度を弱めることなく、足部の前後動は阻止して安定支持でき、上下動のみフリーとしてソケット遠位部に荷重がかからない状態で歩行できるようにすることができる利点がある。
本発明のその他の具体的な利点は、以下の説明から明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施においては、前記摺動部材(4,4)の各々は、前記支柱(2)の一側に位置する本体部材(4A)と、他側に位置する蓋体部材(4B)とから構成され、前記本体部材(4A)には、前記支柱(2)を収める溝状部(4C)が形成され、前記蓋体部材(4B)は、この溝状部(4C)を閉じる状態に設けられ、これら本体部材(4A)と前記蓋体部材(4B)とに少なくとも2本のネジ孔(5a)が形成され、これらのネジ孔(5a,5a)に挿入されるネジ(5A,5A)が該摺動部材(4)の一体化組み付けを行う構成とされている。
【0017】
このように、摺動部材を二分割する構成であると、支柱に対して挟むように取り付けたり、分解して取り外したりすることが容易に行い得ると共に上下方向での摺動自在を確保できる。
そして、前記蓋体部材は、前記溝状部を閉じる状態に設けられていることにより、前記支柱に対する接当部分が、摺動部材だけとなって、靴支持体(鋼製)と支柱(アルミ合金)といった硬軟素材の直接摺動を回避させ、以って、両者の磨耗を低減させることができるのである。
【0018】
また、前記摺動部材(4)の本体部材(4A)は、直方体に構成され、前記溝状部(4C)の上下端近傍位置には、該本体部材(4A)の幅方向に形成された嵌入用溝(4a,4a)が夫々設けられており、該嵌入用溝(4a,4a)には、前記支柱(2)を貫通させる挿通孔(4b,4b)が形成されたシール部材(4c,4c)が嵌入され、外部からの塵埃の侵入を防止するように構成されているのが好ましい。
【0019】
このように、シール部材を嵌入用溝に備えることで、支柱と本体部材との間に塵埃が侵入するのを阻止することができて、常にスムースな滑動が得られる利点があり、また、シール部材は、嵌入用溝に設置するだけであるので、ネジを分解して蓋体部材を外せば、シール部材の取替え、或いはメンテナンスを容易に行い得るものである。
【0020】
また、前記シール部材(4c,4c)の一側には略同形状の添板(4d,4d)が添えられて前記嵌入用溝(4a,4a)に設置されているのが好ましい。
【0021】
このように、シール部材に添板を添えることで、通常、合成樹脂(ゴム)のフィルム乃至シートで構成されるシール材(ラビリンス)の支柱に対する接当姿勢を適正に維持させ、常にシール効果を維持させることができる。
また、シール部材と添板とは別体として設置してもよいし、一部接着した状態として設置してもよく、このようにすれば、置換、設置が容易に行い得る。
【0022】
更に、前記本体部材(4A)の前記溝状部(4C)の底部(4f)及び前記蓋体部材(4B)の内面(4g)には、少なくとも一つのグリス充填用凹部(4e,4e)が夫々形成されているのが好ましい。
【0023】
このように、摺動部材にグリス充填用凹部を設けることで、支柱に対する摺動部材の滑動が常にスムースに行い得ることになる。
こうしたグリスの充填は、上述したネジを外すことで、随時容易に行い得るものである。
【0024】
また、前記溝状部(4C)の両側部(4h)が、上下の方向の略中間位置において、相互に近接する方向に僅かに膨出形成されているのが好ましい。
【0025】
この両側部(4h)を膨出形状としたのは、両側部(4h)を靴支持体(3)が前後に動いた際に初めて面で当るように台形形状にし、面接触による異常摩耗を軽減し、長期使用によるがたつきの軽減を図るようにするためである。即ち、前記両側部(4h)が、単なる並行面では、その端部分のみに支柱が接触し、その部分を異常摩耗してしまい、使用期間によりがたつきが増加してしまう。そこで、両側部(4h)を靴支持体(3)が前後に動いた際に初めて面で当るように台形形状にし、面接触による異常摩耗を軽減し、長期使用によるがたつきの軽減を図るようにしているのである。
【0026】
更に、前記摺動部材(4,4)の各々は、前記支柱(2)を貫通する貫通孔(4E)を有する一体成形の本体(4D)のみで構成され、該本体(4D)の一部が前記靴支持体(3)の両上端部(3A,3A)に接着固定されているのが好ましい。
【0027】
このように、摺動部材を一体物として構成すると、製作が容易と成り、コストも低減でき、また、前記靴支持体へは接着固定させるので、取り付けが容易となる。そして、この前記靴支持体への接着固定は、本来、設置に際してこの前記靴支持体に大きなソケット遠位部の荷重が加わる方式ではないので(ソケットで支持されるため)、接着手段であっても問題はない。
【0028】
また、前記本体(4D)の上下端面には、嵌入用溝(4a,4a)が形成され、該嵌入用溝(4a,4a)には、Oリングシール(4i,4i)が嵌合されており、且つ、前記貫通孔(4E)の内面には、少なくとも一つのグリス充填用凹部(4e)が設けられているのが好ましい。
【0029】
このように、前記本体に嵌入用溝を形成し、該嵌入用溝にOリングシールを設けることで、貫通孔への塵埃等の侵入を阻止できて常に円滑な滑動を確保できると共にグリス充填用凹部を備えていることで、支柱に対して常時円滑な上下摺動を行い得る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明にかかる小児用下腿免荷装具の全体の斜視図。
【図2】本発明にかかる小児用下腿免荷装具の要部の斜視図。
【図3】本発明にかかる小児用下腿免荷装具の要部の分解斜視図。
【図4】本発明にかかる小児用下腿免荷装具の要部の組み立て状態の外側面側からの斜視図。
【図5】本発明にかかる小児用下腿免荷装具の要部の組み立て状態の内側面側からの斜視図。
【図6】本発明にかかる小児用下腿免荷装具の実施例2の要部の外側面側からの斜視図。
【図7】本発明にかかる小児用下腿免荷装具の実施例2の要部の内側面側からの斜視図。
【図8】本発明にかかる小児用下腿免荷装具の実施例2の要部の縦断面図。
【図9】従来技術にかかる下腿免荷装具の全体の斜視図。
【図10】従来技術にかかる下腿免荷装具の図9におけるA−A矢視断面図。
【実施例】
【0031】
本発明にかかる小児用下腿免荷装具の第1の実施例を、図面を参照して以下詳述する。
【0032】
図1乃至図4に示すように、この小児用下腿免荷装具は、下腿を支持するソケット1と、該ソケット1の両側部に固定された正面視が略U字状の支柱2,2と、該支柱2,2に内接して上下方向に摺動自在に設けられた正面視が略U字状の靴支持体3とから構成されている。
【0033】
前記ソケット1は、ここでは樹脂で、上下に比較的長く構成されて、膝、脹脛を収容して支える形状で(装着時には略円筒状を呈する)、脚への装着を容易にするために、前方において左右に開くことができるように形成され、前部には面ファスナー12を備えた複数の、ここでは、3本の締め付けベルト11(図9のように4本、或いは逆に2本にしてもよい)がその一端で金具止めされて設けられている。このベルト11は、図1の右端においてソケット1に固定されており、他端は、ソケット1の前面内側に合わせて用いる樹脂性のプレート15に設けた係止部材18を通り、図示されていないソケット1の他側の係止部材を通って、折り返され、前記係止部材18の上を覆って、右端側の面ファスナー12に係止されて固定される。
【0034】
前記U字状の支柱2,2は、ここでは、上下2部材で構成されており、上部支柱21は、前記ソケット1に取り付け金具14で止め付けられ、下部支柱22は、アルミ合金製の板状材を下部においてU字に湾曲させて連続させたもので、下部近傍において、側面視で前方に曲げられ、しかる後にU字に湾曲されており、両者21,22は、相互に複数個のネジ13で分離可能に連結されている。尚、長さ調節は、前記下部支柱22の長さを、切断などにより調節して行うことができ、長く調節するには、上部支柱21を長いものとすることで行う。
【0035】
この支柱下部22の底部2Aは、下肢の荷重を支える接地部を構成するものであり、略扁平に形成され、平面視において、その中央部は、前後方向に突出した突起部2B,2Bを有する(図2参照)。ここでは、前記底部2Aには、ゴム製(合成樹脂製でもよい)のパッド23が嵌められ(図1参照)、これが接地することで、金属製の前記底部2Aが直接接地することの問題点、例えば、金属音の発生、木製床への接当損傷等の問題を解消できるようにしている。
尚、支柱2の素材については、鋼材を用いてもよく、或いはFRP、CFRPなどの素材を用いても良い。
【0036】
前記U字状の靴支持体3は、同様に、2本の支持体部分3B,3Bをその底部で湾曲させて、正面視がU字状を呈するように形成されたもので、ここでは、鋼材で構成されており、その底部3Cには、平面視で前方に突出する突出部3Dが備えられており(図2参照)、また、両上端部3A,3Aは、僅かに幅広に形成され、後述するネジ用の孔が、ここでは4個形成されている。尚、靴支持体3の素材については、支柱2と同様の素材を用いてもよい。前記底部3C及び突出部3Dに靴16が載せられ、固定ベルト17で、靴16を靴支持体3に着脱自在に固定できるようにしている。
【0037】
そして、前記靴支持体3の両上端部3A,3Aに、滑動性に優れた合成樹脂製の摺動部材4,4が、前記支柱2,2を貫通するように設けられている。この摺動部材4,4には、ここでは、4本のネジ5Aが設けられているもので、ここでは、前記摺動部材4が全体として直方体に、即ち、側面視で上下に長い長方形を呈する構成であり、その長方形の左右側部で、上下の略等間隔位置の2箇所に夫々ネジ5Aを止めるネジ孔5aが設けられている。
【0038】
また、前記摺動部材4,4の素材としては、ここでは、滑動性に優れた素材であるポリアセタールが用いられているが、これに均等な或いはナイロン・ポリエチレン等も用いてよい。
【0039】
更に、図1乃至図4に示すように、直方体の前記摺動部材4,4の各々は、前記支柱2の一側に位置する本体部材4Aと、他側に位置する蓋体部材4Bとから構成され、前記本体部材4Aには、前記支柱2を収める溝状部4Cが形成され、前記蓋体部材4Bは、この溝状部4Cを閉じる状態に設けられ、上述したように、これら本体部材4Aと前記蓋体部材4Bとに4本のネジ孔5aが形成され、これらのネジ孔5aに挿入されるネジ5Aが該摺動部材4の一体化組み付けを行う構成とされている。
【0040】
そして、前記摺動部材4の本体部材4Aは、上述した通り直方体に構成されているが、前記溝状部4Cの上下端近傍位置には、該本体部材4Aの幅方向に形成された嵌入用溝4aが夫々設けられており、該嵌入用溝4aには、前記支柱2を貫通させる挿通孔4bが形成されたシール部材4c(ゴムシート乃至樹脂シート)が嵌入され、外部からの塵埃の侵入を防止するように構成されている。
【0041】
上記シール部材4cの設置構造として、ここでは、前記蓋体部材4Bにも嵌入用貫通孔4jが設けられており、ここに前記シール部材4cの他辺が貫通状態で設置され、位置固定される構成とされている。そして、この蓋体部材4Bの嵌入用貫通孔4jは、この摺動部材4が上述した靴支持体3の上端部3Aに固定されることで閉鎖されることになる。
【0042】
更に、前記シール部材4cの一側には略同形状の添板4dが添えられて前記嵌入用溝4aに設置されている。勿論、略同形と言っても、前記シール部材4cの挿通孔4bの方が添板4dのそれよりも僅かに小さく、前記支柱2に摺接してラビリンスのようにシール機能をする構成とされている。この添板4dは、前記シール部材4cと同様に前記嵌入用貫通孔4jにも挿入設置される。この添板4dは、ここでは摺動部材4を構成するものと同じ素材で構成されているが、シール部材4cの補強機能(姿勢支持)があれば、紙、フェルト、皮革等の適宜の素材を選択してよい。尚、この実施例では、前記シール部材4cは添板4dと分離されているが、一体に貼着されていてもよい。
【0043】
また、前記本体部材4Aの前記溝状部4Cの底部4f及び前記蓋体部材4Bの内面4gには、グリス充填用凹部4eが夫々形成されている。ここでは、グリス充填用凹部4eは、前記溝状部4Cの底部4fの多数の円形状の窪みと、前記蓋体部材4Bの内面4gに形成された複数の円形状の窪みとで構成されている。
【0044】
更に、前記溝状部4Cの両側部4hが、上下の方向の略中間位置において、相互に近接する方向に僅かに膨出形成されている(高低差が0.1mm乃至0.25mm)。
この両側部4hの構造の目的は、次の理由による。即ち、支柱2と溝状部4Cは、クリアランスのために隙間を形成しているため、摺動時、溝状部4Cと支柱2の隙間により靴支持体3は若干前後に動くので、前記両側部4hが、単なる並行面では、その端部分のみに支柱が接触し、その部分を異常摩耗してしまい、使用期間によりがたつきが増加してしまう。そこで、両側部4hを靴支持体3が前後に動いた際に初めて面で当るように台形形状にし、面接触による異常摩耗を軽減し、長期使用によるがたつきの軽減を図るようにしている。ただ、そのままでは摩擦が大きくなるため、この実施例では、前記溝状部4Cの両側部4hには、上下の方向に所定の間隔をもって、凹部が形成されており、支柱2の側部に対する摺動面積を小さくして滑動性を高めるようにしている。
【実施例】
【0045】
次に摺動部材4の別の態様について、図6及び図8に基づいて詳述する。尚、実施例1と基本的に同じ構造については、実施例1を参照することで、ここでの説明は省略する。
この実施例では、前記摺動部材4の各々は、前記支柱2を貫通する貫通孔4Eを有する一体成形の本体4Dのみで構成され、該本体4Dの一部が前記靴支持体3の両上端部3Aに接着固定されている。
【0046】
上記接着固定の手段を採用しているが冒頭にも言及したように、ソケット遠位部に加わる体重はソケット1を介して支柱2に直接作用し、地面に接地しているため、足部そのものは宙に浮いた状態であり、従って、大きな荷重が該接着部に加わることは無く、ネジ等を用いなくとも問題はない。
尚、靴を設けて足部を保持するのは、足首から先の姿勢を安定させるために過ぎず、この点からも、接着手段の採用に問題ないことが分かる。
【0047】
そして、前記本体4Dの上下端面には、嵌入用溝4aが形成され、該嵌入用溝4aには、Oリングシール4iが嵌合されており、且つ、前記貫通孔4Eの内面には、上下方向に伸びる溝状の2本のグリス充填用凹部4eが刻設されている。
このグリス充填用凹部4eへのグリス注入によって、摺動部材4と支柱との滑動が常にスムースに行い得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、小児用下腿免荷装具として開発されたが、脚寸法の近似した婦女子等への適用が可能であり、また、足部を接地させない方式の装具であるので、装着患者の対象も広がるものであり、その適用範囲は広い。
【符号の説明】
【0049】
1:ソケット
2:支柱
3:靴支持体
3A:靴支持体の上端部
4:摺動部材
4A:本体部材
4B:蓋体部材
4C:溝状部
4a:嵌入用溝
4b:挿通孔
4c:シール部材
4d:添板
4e:グリス充填用凹部
4f:底部
4g:内面
4h:両側部
4i:Oリングシール
5A:ネジ
5a:ネジ孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下腿を支持するソケット(1)と、該ソケット(1)の両側部に固定された正面視が略U字状の支柱(2,2)と、該支柱(2,2)に内接して上下方向に摺動自在に設けられた正面視が略U字状の靴支持体(3)とから構成された小児用下腿免荷装具であって、
前記靴支持体(3)の両上端部(3A,3A)に、滑動性に優れた合成樹脂製の摺動部材(4,4)が、前記支柱(2,2)を貫通するように設けられている、ことを特徴とする小児用下腿免荷装具。
【請求項2】
前記摺動部材(4,4)の各々は、前記支柱(2)の一側に位置する本体部材(4A)と、他側に位置する蓋体部材(4B)とから構成され、前記本体部材(4A)には、前記支柱(2)を収める溝状部(4C)が形成され、前記蓋体部材(4B)は、この溝状部(4C)を閉じる状態に設けられ、これら本体部材(4A)と前記蓋体部材(4B)とに少なくとも2本のネジ孔(5a)が形成され、これらのネジ孔(5a,5a)に挿入されるネジ(5A,5A)が該摺動部材(4)の一体化組み付けを行うように構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の小児用下腿免荷装具。
【請求項3】
前記摺動部材(4)の本体部材(4A)は、直方体に構成され、前記溝状部(4C)の上下端近傍位置には、該本体部材(4A)の幅方向に形成された嵌入用溝(4a,4a)が夫々設けられており、該嵌入用溝(4a,4a)には、前記支柱(2)を貫通させる挿通孔(4b,4b)が形成されたシール部材(4c,4c)が嵌入され、外部からの塵埃の侵入を防止するように構成されている、ことを特徴とする請求項2に記載の小児用下腿免荷装具。
【請求項4】
前記シール部材(4c,4c)の一側には略同形状の添板(4d,4d)が添えられて前記嵌入用溝(4a,4a)に設置されている、ことを特徴とする請求項3に記載の小児用下腿免荷装具。
【請求項5】
前記本体部材(4A)の前記溝状部(4C)の底部(4f)及び前記蓋体部材(4B)の内面(4g)には、少なくとも一つのグリス充填用凹部(4e,4e)が夫々形成されている、ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の小児用下腿免荷装具。
【請求項6】
前記溝状部(4C)の両側部(4h)が、上下の方向の略中間位置において、相互に近接する方向に僅かに膨出形成されている、ことを特徴とする請求項2乃至請求項5の何れか一項に記載の小児用下腿免荷装具。
【請求項7】
前記摺動部材(4,4)の各々は、前記支柱(2)を貫通する貫通孔(4E)を有する一体成形の本体(4D)のみで構成され、該本体(4D)の一部が前記靴支持体(3)の両上端部(3A,3A)に接着固定されている、ことを特徴とする請求項1に記載の小児用下腿免荷装具。
【請求項8】
前記本体(4D)の上下端面には、嵌入用溝(4a,4a)が形成され、該嵌入用溝(4a,4a)には、Oリングシール(4i,4i)が嵌合されており、且つ、前記貫通孔(4E)の内面には、少なくとも一つのグリス充填用凹部(4e)が設けられている、ことを特徴とする請求項7に記載の小児用下腿免荷装具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−250000(P2012−250000A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134606(P2011−134606)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(509278210)サカモト有限会社 (6)
【出願人】(398055439)株式会社洛北義肢 (10)
【Fターム(参考)】