説明

小型コアレスモータ

【課題】本発明は、マグネットの位置ズレを確実に防止するようにした小型コアレスモータを提供する。
【解決手段】小型コアレスモータ1において、前側の軸受4のフランジ部4bは、ハウジング2の前端壁3における貫通孔3aの周縁部Aの外周面に当接され、ヨーク7の端面7cは周縁部Aの内周面に圧着され、周縁部Aは、軸受4のフランジ部4bとヨーク7の端面7cとで強く挟み込まれている。この小型コアレスモータ1では、ハウジング2と軸受4と筒状のヨーク7とが別の部品として採用され、ハウジング2の前端壁3における貫通孔3aの周縁部Aが、ヨーク7の端面7cと軸受4のフランジ部4bとで挟み込まれているので、ハウジング2の貫通孔3aの周縁部Aを、軸受4の軸線L方向の移動規制と、ヨーク7の軸線L方向の移動規制として利用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学機器レンズ駆動用アクチュエータ、ディスク記憶装置の書き込み、読み込みヘッド駆動用アクチュエータ、光学式及び磁気式読み取りセンサー、携帯電話の着信、各種医療機器等に用いられる小型コアレスモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特開2002−78274号公報がある。この公報に記載された小型のコアレスモータは、一端が開口された有底の円筒状のハウジングを有し、ハウジングの底壁に設けられた貫通孔内に円筒状のメタルホルダ(ヨーク)が圧入されている。このメタルホルダの両端には、メタルからなる軸受が圧入され、メタルホルダの外周にマグネットが嵌装されている。軸受によって、シャフトが回転自在に支持され、このシャフトにはロータが固定されている。ロータは、マグネットとハウジングの内壁との間隙に配置された円筒状のコアレス巻線と、ハウジングの開口側に配置された整流子とを備え、ハウジングの開口端には、整流子と摺接するブラシを備えたキャップが取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−78274号公報(図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来の小型のコアレスモータは、ハウジングの底壁に設けられた貫通孔内に円筒状のメタルホルダ(ヨーク)が圧入され、このメタルホルダの両端に、メタルからなる軸受が圧入され、メタルホルダの外周にマグネットが嵌装されている構成になっているので、落下時の衝撃などによって、軸線方向に軸受やヨークがズレたり、場合によっては抜けたりする虞がある。軸線方向にヨークが位置ズレすると、ヨークに固定されているマグネットに軸線方向の位置ズレが発生し、従来技術では、マグネットの位置ズレを防止するために、ハウジングの一部に突き当て部を形成しておく必要があり、ハウジング側にマグネットの位置ズレ防止対策が別途必要になって、ハウジングの形状を複雑化させる。小型のコアレスモータのハウジングの直径は、10mm程度しかなく肉厚も薄いので、複雑な形状を絞り加工で形成し難く、製造コストの観点からハウジングの形状はシンプルなほど良いと言える。
【0005】
本発明は、マグネットの位置ズレを確実に防止するようにした小型コアレスモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、筒状のハウジングと、
ハウジングの前端壁に設けられた貫通孔内に挿入されて、シャフトを支持する軸筒部と、軸筒部の端部に形成されたフランジ部とからなる前側の軸受と、
シャフトを包囲するように配置されると共に、軸受の軸筒部が一端部から挿入される筒状のヨークと、
ヨークの外周面に固定されたマグネットと、
シャフトに固定されると共に、マグネットとハウジングとの間に配置されたコイルと、
ハウジングの前端壁における貫通孔の周縁部は、ヨークの端面と軸受のフランジ部とで挟み込まれていることを特徴とする。
【0007】
この小型コアレスモータでは、ハウジングと軸受と筒状のヨークとが別の部品として採用され、ハウジングの前端壁における貫通孔の周縁部が、ヨークの端面と軸受のフランジ部とで挟み込まれているので、ハウジングの貫通孔の周縁部を、軸受の軸線方向の移動規制と、ヨークの軸線方向の移動規制として利用することができる。従って、落下時の衝撃などによって、軸線方向に軸受やヨークがズレたり、場合によっては抜けたりし難く、その結果、ヨークの位置ズレによるマグネットの位置ズレを確実に防止することができる。また、ハウジングの形状を複雑化させる必要がないので、径が小さくて肉厚が薄いハウジングに、複雑な形状の絞り加工を施す必要なく、コスト低減や歩留まりの向上を図ることができる。さらに、ハウジングとヨークとが別の部品になっているので、トルクアップやコスト低減などを行う際、ハウジングの材質とヨークの材質とを容易に異ならせることができる。また、ハウジングにヨークが当接されて磁気回路が構成されるので、軸受を、軽量化のために樹脂材で形成することもできる。
【0008】
また、ヨークは、内周面側でシャフトに向けて突出する膨出部を有し、この膨出部は、前側の軸受とヨークの他端部から挿入された後側の軸受との間に配置されていると好適である。
このような構成を採用すると、ヨークとシャフトと軸受とで囲まれた空間を有効活用して、ヨークの磁路の拡大を図ることができ、これによって、モータを大型化することなく、トルクアップを容易に図ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、マグネットの位置ズレを確実に防止することができ、マグネットの位置ズレによって起こるロータの回転ムラやトルクダウンなどを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る小型コアレスモータの第1の実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明に係る小型コアレスモータの第2の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る小型コアレスモータの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0012】
図1に示すように、小型コアレスモータ1は、一端に前端壁3が形成された円筒状の金属製ハウジング2を有している。ハウジング2の外径は、3mm〜10mm程度であり、ハウジング2の前端壁3の中央には、貫通孔3aが形成されている。貫通孔3aには、前側の軸受4が圧入されている。焼結含油メタルからなる軸受4は、貫通孔3aに圧入されると共に、軸線Lに沿って延在するシャフト6を支持するための軸筒部4aと、軸筒部4aの端部に形成されたフランジ部4bとからなる。この軸受4は、軽量化のために樹脂で形成されてもよい。
【0013】
軸受4の軸筒部4aは、円筒状のヨーク7の前端開口7a内に圧入され、ヨーク7の後端開口7b内には後側の軸受8が圧入されている。ヨーク7の外周面には、接着剤又は圧入によって円筒状のマグネット9が固定されている。ステータは、マグネット9とヨーク7とで構成されている。
【0014】
シャフト6の後端には、略円筒状の樹脂製コミテータホルダ10が圧入によって固定され、このコミテータホルダ10は、シャフト6に圧入された円板状のコイルベース11に固定されている。このコイルベース11の外周端には、樹脂内にコイルが封入されてなる円筒状のコイルアッシ12が固定され、コイルアッシ12のコイルは、マグネット9とハウジング2との間に配置されている。そして、コミテータホルダ10の外周にはコミテータ13が固定される。ロータは、コミテータホルダ10とコミテータ13とコイルベース11とコイルアッシ12とで構成されている。
【0015】
なお、シャフト6にワッシャ15が圧入され、このワッシャ15は、コイルベース11と後側の軸受8との間に配置されることで、コイルベース11がマグネット9に当たることなく、ロータのスムーズな回転を可能にしている。
【0016】
ハウジング2の後端側開口2aには、樹脂製のブラシホルダ14が挿入され、ブラシホルダ14には、給電端子16に接続されたブラシ17が固定されている。このブラシ17は、櫛歯状に形成されてコミテータ13に圧接されている。
【0017】
さらに、コアレスモータ1において、前側の軸受4のフランジ部4bは、ハウジング2の前端壁3における貫通孔3aの周縁部Aの外周面に圧着され、ヨーク7の端面7cは周縁部Aの内周面に圧着され、周縁部Aは、軸受4のフランジ部4bとヨーク7の端面7cとで強く挟み込まれている。
【0018】
この小型コアレスモータ1では、ハウジング2と軸受4と筒状のヨーク7とが別の部品として採用され、ハウジング2の前端壁3における貫通孔3aの周縁部Aが、ヨーク7の端面7cと軸受4のフランジ部4bとで挟み込まれているので、ハウジング2の貫通孔3aの周縁部Aを、軸受4の軸線L方向の移動規制と、ヨーク7の軸線L方向の移動規制として利用することができる。
【0019】
従って、落下時の衝撃などによって、軸線L方向に軸受4やヨーク7がズレたり、場合によっては抜けたりし難く、その結果、ヨーク7の位置ズレによるマグネット9の位置ズレを確実に防止することができる。また、ハウジング2の形状を複雑化させる必要がないので、径が小さくて肉厚が薄いハウジング2に、複雑な形状の絞り加工を施す必要なく、コスト低減や歩留まりの向上を図ることができる。
【0020】
さらに、ハウジング2とヨーク7とが別の部品になっているので、トルクアップやコスト低減などを行う際、ハウジング2の材質とヨーク7の材質とを容易に異ならせることができる。また、ハウジング2にヨーク7が当接されて磁気回路が構成されるので、軸受4を、軽量化のために樹脂材で形成することもできる。
【0021】
さらに、ハウジング2の前端壁3は、ドーナツ板形状になっているので、相手側の機器へのネジ止めを可能にするネジ穴19の形成が容易であり、ハウジング2の径が小さくても、ネジ穴19のスペースが十分確保される。
【0022】
また、前端壁3の外側に軸受4のフランジ部4bが突出しているので、相手側機器に設けられた円形の開口内にこのフランジ部4bを嵌め込むことで、相手側機器に対するモータ1の位置決めが達成される。
【0023】
本発明は、前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0024】
図2に示された他の実施形態に係るコアレスモータ20は、ヨークの形状以外で、図1のコアレスモータ1と同一の構成を有しているので、共通の構成には、同一符号を付し、その説明は省略する。
【0025】
図2に示すように、円筒状のヨーク21は、この内周面側でシャフト6に向けて突出する膨出部21aを有し、この膨出部21aは、前側の軸受4と後側の軸受8との間に配置されている。ヨーク21の一端側には、拡径された前端開口21bが形成され、この前端開口21bに前側の軸受4の軸筒部4aが圧入されている。同様に、ヨーク21の他端側には、拡径された後端開口21cが形成され、この後端開口21cに後側の軸受8が圧入されている。
【0026】
このような構成を採用すると、ヨーク21とシャフト6と軸受4,8とで囲まれた空間を有効活用して、ヨーク21の磁路の拡大を図ることができ、これによって、モータ20は、大型化されることなく、トルクアップが容易に図られる。
【符号の説明】
【0027】
A…貫通孔の周縁部、L…軸線、1,20…小型コアレスモータ、2…ハウジング、3…前端壁、3a…貫通孔、4,8…軸受、4a…軸筒部、4b…フランジ部、6…シャフト、7,21…ヨーク、9…マグネット、12…コイルアッシ、21a…膨出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のハウジングと、
前記ハウジングの前端壁に設けられた貫通孔内に挿入されて、シャフトを支持する軸筒部と、前記軸筒部の端部に形成されたフランジ部とからなる前側の軸受と、
前記シャフトを包囲するように配置されると共に、前記軸受の前記軸筒部が一端部から挿入される筒状のヨークと、
前記ヨークの外周面に固定されたマグネットと、
前記シャフトに固定されると共に、前記マグネットと前記ハウジングとの間に配置されたコイルと、
前記ハウジングの前記前端壁における前記貫通孔の周縁部は、前記ヨークの端面と前記軸受の前記フランジ部とで挟み込まれていることを特徴とする小型コアレスモータ。
【請求項2】
前記ヨークは、内周面側で前記シャフトに向けて突出する膨出部を有し、この膨出部は、前記前側の軸受と前記ヨークの他端部から挿入された後側の軸受との間に配置されていることを特徴とする請求項1記載の小型コアレスモータ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−114975(P2011−114975A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270173(P2009−270173)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】