小型バルブ
【課題】形状記憶合金を使用した小型バルブにおいて、形状記憶合金を過負荷から守り、バルブの耐久性を向上し、信頼性を高める。
【解決手段】オリフィス2を内蔵するガイドパイプ1内に、ガイドパイプ1に内接しオリフィス2を封止する封止部5を有する可動自在な可動弁体3と、オリフィス2と可動弁体3の間に設けたバイアスコイル8と、ガイドパイプ1の固定電極11と可動弁体3の可動電極12間に保持される形状記憶合金のワイヤ9とを備え、ワイヤ9を加熱して形状記憶合金を変形させることにより可動弁体3を可動させてオリフィス2を封止し、可動弁体3に過負荷低減用のコイルバネ7を配設して弾性的変形を可能とすることにより、ワイヤ9の過剰収縮による可動弁体3への過負荷を可動弁体3自体の弾性変形により吸収する。これにより、形状記憶合金の過負荷を低減し、記憶形状の再現性の劣化を防ぎ、耐久性を向上し、信頼性を高めることができる。
【解決手段】オリフィス2を内蔵するガイドパイプ1内に、ガイドパイプ1に内接しオリフィス2を封止する封止部5を有する可動自在な可動弁体3と、オリフィス2と可動弁体3の間に設けたバイアスコイル8と、ガイドパイプ1の固定電極11と可動弁体3の可動電極12間に保持される形状記憶合金のワイヤ9とを備え、ワイヤ9を加熱して形状記憶合金を変形させることにより可動弁体3を可動させてオリフィス2を封止し、可動弁体3に過負荷低減用のコイルバネ7を配設して弾性的変形を可能とすることにより、ワイヤ9の過剰収縮による可動弁体3への過負荷を可動弁体3自体の弾性変形により吸収する。これにより、形状記憶合金の過負荷を低減し、記憶形状の再現性の劣化を防ぎ、耐久性を向上し、信頼性を高めることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状記憶合金を使用した気体や液体など各種流体を制御する小型バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の流体調整を行う小型バルブとして、例えば、特許文献1に示されるように、オリフィスを開閉する弁体のアクチュエータを形状記憶合金で形成し、このアクチュエータに通電することにより、弁体を変位させる常閉型及び常開型のバルブが知られている。このようなバルブの制御弁においては、オリフィスの密閉性を良くするために、オリフィスへの押圧を強くする必要性から、形状記憶合金のアクチュエータは、閉弁時、オリフィスに接触後も収縮し、さらにオリフィスを加圧している。また、アクチュエータの部品のバラツキによっても、同様にオリフィスが余分に加圧されることがある。しかしながら、この加圧によってオリフィスが圧接されることにより、逆に、アクチュエータは、バルブ本体に固定されているオリフィスから負荷を受けることになる。この負荷は、アクチュエータからオリフィスへの押圧が強いほど大きくなり、形状記憶合金に過負荷を与えることになる。
【0003】
一般に、通電加熱型の形状記憶合金では、通常、常温では全長が伸びる伸長形状となり、直流又は交流電圧が印加されて通電されると自己発熱し、その温度がある温度以上の高温になると予め形状記憶された収縮形状となる。そして、温度を初期の状態に戻せば、元の形状に回復し、形状記憶合金の性質である回復形状の再現性を示す。しかしながら、形状記憶合金は、記憶形状状態で過剰な圧力が加えられると、その記憶形状がずれてきて回復形状の再現性が損なわれ、この繰り返しによる経時変化により、元の記憶形状状態に完全に復帰しないという傾向を持っている。
【0004】
このため、上記特許文献1に示されるバルブにおいても、オリフィスへの過剰な押圧により、アクチュエータの形状記憶合金が過負荷を受け、これが繰り返されることにより経時劣化し、初期設定した記憶形状状態が変形されてしまい、元の記憶形状に復帰しなくなる可能性があった。これにより、形状記憶合金の回復形状の再現性が劣化し、バルブの弁制御性能を低下させる虞があった。また、上記特許文献1に示される常開型バルブでは、形状記憶合金のアクチュエータを2本必要とし、構造が複雑でコスト高になる欠点があった。
【0005】
なお、他の従来例として、特許文献2に示されるように、形状記憶合金で形成されたコイルバネが一定温度以上になると伸長し、バイアスバネのバイアス力に打ち勝って開弁状態にある弁体を押圧して、強制的に閉弁させるバルブがある。しかし、このバルブは、コイルバネ形状であるため、外形が大きくなり、小型化が困難であった。また、一定の力を出すために形状記憶合金のコイルバネの線形を太くすると、コイルバネの熱容量が増えるため、放熱時の応答性が悪くなる虞があった。さらに、他の従来例として、特許文献3に示すように、形状記憶合金製のワイヤを用いて、常開型のバルブの閉動作を実現する小型バルブが知られている。しかし、このバルブでは、ワイヤの折り返し部で温度分布が生じるため、熱応力による耐久性の劣化をもたらす虞があった。また、ワイヤが動作限まで動いた後は、形状記憶合金に過負荷が掛かるため、前述と同様に、形状記憶合金に経時劣化を発生させる問題があった。
【特許文献1】特開平05−99369号公報
【特許文献2】特開平09−313363号公報
【特許文献3】特開平11−153234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、筒形状でオリフィスを内蔵する固定構造物と、固定構造物に内接してオリフィスを封止する封止体を備える可動自在な可動構造体を備え、形状記憶合金のワイヤを加熱し変形してオリフィスを封止する小型バルブにおいて、封止体を含む可動構造体の長さを弾性的に変形可能とし、ワイヤの加熱時の応力負荷を可動構造体の弾性変形により低減することにより、形状記憶合金の再現性の経時劣化を無くして耐久性を維持し、信頼性の高い小型バルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、筒形状でオリフィスを有する固定構造物と、前記固定構造物に内接して可動自在に前記オリフィスを封止する封止体を有する可動自在な可動構造体と、通電用の電極となる第1電極及び第2電極と、前記第1電極と第2電極とによって保持される形状記憶合金のワイヤとを備え、前記第1電極と第2電極とに通電し、前記ワイヤを加熱して形状記憶合金を変形させることにより、前記可動構造体を可動させて、前記オリフィスを封止する小型バルブであって、前記封止体を含む可動構造体は、その長さが弾性的に変形可能に構成され、かつ、該可動構造体の弾性変形により前記形状記憶合金の加熱時の応力負荷が低減されるように構成されているものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の小型バルブにおいて、前記可動構造体の一部又は全部が弾性体材料からなるものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1に記載の小型バルブにおいて、前記可動構造体がバネ体を具備してなるものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3に記載の小型バルブにおいて、前記バネ体は、前記固定構造体に外接して配設されているものである。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の小型バルブにおいて、前記第2電極の一端が前記固定構造物に接続されるとともに、他端がワイヤに接続され、その両端の間で前記可動構造体に接触し、該電極が撓むことにより前記可動構造体を移動させるものである。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の小型バルブにおいて、前記第1電極は、前記固定構造物に固定された固定電極であり、前記第2電極は、前記可動構造体に接続された可動電極であるものである。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の小型バルブにおいて、前記第1電極は、前記固定構造物の所定部位に固定された固定電極であり、前記第2電極は、前記固定構造体の前記所定部位とは別の部位に固定された固定電極であり、前記ワイヤの中央部で前記可動構造体の端部を押圧し、前記ワイヤの伸縮方向が前記可動構造体の移動方向と直交するものである。
【0014】
請求項8の発明は、請求項7に記載の小型バルブにおいて、前記端部は、前記可動構造体とワイヤとに接触する接触部を有し、前記接触部は、樹脂を被覆した金属で構成されているものである。
【0015】
請求項9の発明は、請求項7又は請求項8に記載の小型バルブにおいて、前記第1電極および第2電極の表面に樹脂を被覆してなるものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、可動構造体の弾性変形によるクッション効果により、加熱時のバルブ閉鎖時の形状記憶合金への過負荷を低減することができる。これにより、形状記憶合金のワイヤへの過剰な加圧による過負荷を防止することができるので、形状記憶合金の形状記憶の再現性を損なわず、耐久性が維持され、小型バルブの信頼性を高めることができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、可動構造体と過負荷低減弾性体とを1つにすることができ、部品点数を低減することができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、可動構造体の弾性機能を弾性部品として弾性スペックが明確であるバネで形成することができるので、可動構造体の弾性機能の設計を精度良くすることができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、バネ体が固定構造体の外部に出るので、第1電極と第2電極間の形状記憶合金のワイヤをバネ体を通さずに接続でき、小型バルブの製造を容易にすることができる。
【0020】
請求項5の発明によれば、可動電極の一端が固定されているので、通電用のリード線と可動電極との接続を強化でき、接続の信頼性を高めることができる。
【0021】
請求項6の発明によれば、形状記憶合金のワイヤの一端を確実に固定位置に固定でき、他端で可動構造体を引っ張ることができるので、通電時の形状記憶合金の収縮変動を確実に可動構造体に伝達することができる。これにより、通電時にバルブを閉鎖し、非通電時にバルブを開放する構造(ノーマルオープン構造)をシンプルに構成することができる。
【0022】
請求項7の発明によれば、形状記憶合金のワイヤの少しの収縮で大きな可動構造体の変動のストロークを得ることができる。このため、可動構造体の必要ストロークに対し、形状記憶合金のワイヤの長さを短くできる。また、ワイヤの両端が接続される電極が可動せず固定されているので、電極に接続される通電用のリード線と電極との接続信頼性を向上することができる。
【0023】
請求項8の発明によれば、通電により発生したワイヤの熱の接触部へ熱伝導が低減され、ワイヤから固定構造物への熱放散を抑制することができるので、通電による形状記憶合金の収縮効率を向上し、可動構造体の可動応答速度を高めることができる。また、金属部材使用により、接触部の強度を確保できると共に、接触部を低価格化することができる。
【0024】
請求項9の発明によれば、ワイヤから固定構造物への熱放散をさらに抑制することができるので、通電による可動構造体の可動応答速度をさらに高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の第1の実施形態に係る小型バルブについて、図1及び図2(a)、(b)、(c)を参照して説明する。これらの図において、小型バルブ10は、金属製又は樹脂製の筒形状のガイドパイプ1(固定構造物)と、ガイドパイプ1に内蔵された金属製又は樹脂製のオリフィス2と、ガイドパイプ1に内接する第1可動部4と第2可動部6を有し可動自在にオリフィス2を封止する可動弁体3(可動構造体)と、ガイドパイプ1に内接し第1可動部4の一部に外接して可動弁体3とオリフィス2との間に設けられたバイアス用バネのバイアスコイル8(バイアス弾性体)と、第1可動部4と第2可動部6の間に設けられたガイドパイプ1に固定された固定電極11(第1電極)と、可動弁体3の第2可動部6側の端末に設置された可動電極12(第2電極)と、固定電極11と可動電極12とによって保持される形状記憶合金(または形状記憶樹脂、形状記憶ゴム等)のワイヤ9とを備える。ここでの形状記憶合金は、ある温度以上になると収縮する通電発熱型(例えば、Ti―Ni系形状記憶合金)のものが用いられる。
【0026】
可動弁体3は、第1可動部4のオリフィス2側の先端にオリフィス2を封止する樹脂又はゴム製の封止部5(封止体)を有し、第1可動部4と第2可動部6の間に加熱時のワイヤ9の形状記憶合金への応力負荷を低減するコイルバネ7(過負荷低減弾性体)を備えている。形状記憶合金は、ある温度以上になると収縮する仕様のものを用いているので、直流電圧を印加して通電すると、自己発熱して温度が上昇し、ある温度以上になると予め記憶された収縮形状に形状を回復する。この形状回復力は、バイアスコイル8及びコイルバネ7の弾発力に比べて著しく大きなものである。また、コイルバネ7の弾性係数k2は、後述するように、バイアスコイル8の弾性係数k1より小さく設定されている。
【0027】
第1可動部4は、ガイドパイプ1に内接する第1円柱部41と、第1円柱部41からオリフィス2の方向に伸びる第1円柱部41より小さい外形の第2円柱部42を備えている。第2円柱部42は、その先端にオリフィス2を封止するための樹脂製又はゴム製の封止部5を有する。第1円柱部41のオリフィス2側の側面は、バイアスコイル8によりオリフィス2と反対方向に押圧を受けて、第1可動部4がオリフィス2から離される。これにより、図2(a)に示すように、通常の通電が無い状態では、封止部5がオリフィス2を閉弁しないように、オリフィス2と封止部5の間に間隔が開けられる(常開型:ノーマリオープン)。
【0028】
上記構成において、固定電極11と可動電極12に通電してワイヤ9を加熱され、ある温度以上になると形状記憶合金のワイヤ9が収縮して変形する。このとき、ワイヤ9の一端は、ガイドパイプ1に固定の固定電極11に接続されて移動せず、ワイヤ9の他端は第2可動部6の可動電極12に接続されて、第2可動部6とともに移動する。従って、ワイヤ9の収縮により第2可動部6が移動し、この移動がコイルバネ7を圧迫し、さらにコイルバネ7が第1可動部4をオリフィス2側に押圧して移動させ、バイアスコイル8をオリフィス2側に押し付ける。そして、第1可動部4の先端の封止部5が、オリフィス2を圧接封止した状態で止まる。これにより、図2(b)に示すように、オリフィス2が閉弁される。
【0029】
一方、固定電極11と可動電極12間の通電を止めると、形状記憶合金のワイヤ9の温度が低下し、元の温度に戻るとワイヤ9が伸長し、前記と逆の作用により、図2(a)に示すように、第1可動部4が元の位置に戻り、封止部5がオリフィス2から離れ、オリフィス2が開放される。
【0030】
上記の構成において、オリフィス2が封止部5により接触されて封止された後、より強く密閉するために、さらにワイヤ9が収縮して封止部5がオリフィス2を圧接する。この圧接は、ワイヤ9の部品バラツキにより多少変化するので、この部品バラツキを含めワイヤ9の収縮を予め大きく設定する。そして、封止部5がオリフィス2を圧接されると、バイアスコイル8は、ガイドパイプ1のオリフィス2側の端面と第1可動部4の間に押さえつけられて、それ以上収縮できない状態になる。この時点で、バイアスコイル8に代わり、弾性係数k2の小さいコイルバネ7が収縮を始める。
【0031】
この様子を以下に説明する。ワイヤ9の収縮力をFとし、バネの収縮長さをxとし、弾性係数をkとし、外部圧力のない状態の長さをLとすると、収縮されたバネの長さLは、
L=−x+L0(L0は収縮前の長さ)
で表される。バイアスコイル8とコイルバネ7の各収縮後の長さL1及びL2とし、収縮前の長さをLa、Lbとし、それぞれのバネの弾性係数をk1、k2とすると、
F=−kxの関係より、
L1=−x+La=―F/k1+La
L2=−x+Lb=―F/k2+Lb
となる。このL1、L2と収縮力Fの関係を図2(c)に示す。ここで、バイアスコイル8の弾性係数k1は、コイルバネ7の弾性係数k2より大きくしている。これにより、バイアスコイル8は、コイルバネ7より先に収縮し、コイルバネ7は、封止部5がオリフィス2に接触するまでの収縮力Frまでは殆ど収縮せず、接触後、さらにオリフィス2に収縮力Fが加わると収縮を始める。
【0032】
このコイルバネ7の収縮は、ワイヤ9に直接に過負荷が掛かるのを緩和するクッション効果の役目を果し、ワイヤ9への過剰な負荷を低減することができる。このため、形状記憶合金への過負荷を避けることができるので、ワイヤ9の高温時に設定された記憶形状を変形させることを防止することができ、形状記憶合金は、常に元の記憶された形状に復帰することができ、ワイヤ9の経時劣化を無くすことができるので温度変化による形状記憶の再現性を良くすることができる。また、ワイヤ9の通電によるオリフィス2の開閉弁の再現性を精度良く行うことができる。
【0033】
このように、オリフィス2と可動弁体3の間に設けたバイアスコイル8と、可動弁体3の中に設けた過負荷低減用のコイルバネ7とを直列状に配設し、バイアスコイル8の弾性係数k1をコイルバネ7の弾性係数k2より大きくしたことにより、小型バルブ10の閉弁時に、可動弁体3を弾性変形させることができる。これにより、閉弁時のワイヤ9の収縮応力による形状記憶合金自身への過負荷を低減することができ、この形状記憶合金の記憶形状の再現性の経時劣化を防ぎ、その耐久性を向上し、小型バルブ10の信頼性を高めることができる。
【0034】
次に、本発明の第2の実施形態に係る小型バルブについて、図3(a)、(b)、(c)を参照して説明する。本実施形態の小型バルブ10は、可動弁体3の一部又は全部に弾性体材料を用いた点で前記実施形態と異なる。
【0035】
小型バルブ10は、金属製又は樹脂製の筒形状のガイドパイプ1(固定構造物)と、ガイドパイプ1に内蔵された金属製又は樹脂製のオリフィス2と、ガイドパイプ1に内接して可動自在にオリフィス2を封止する可動弁体3aと、ガイドパイプ1内の可動弁体3aと外接するバイアス用のコイルバネ8(バイアス弾性体)と、ガイドパイプ1に固定された固定電極11(第1電極)と、可動弁体3aにおけるオリフィス2と反対側の端部に設置された可動電極12(第2電極)と、固定電極11と可動電極12とによって保持される形状記憶合金のワイヤ9とを備える。この形状記憶合金は、ある温度以上になると収縮する上述と同様の通電発熱型のものが用いられる。可動弁体3aは、可動部4aとオリフィス2を封止する樹脂又はゴム製の封止部5を備える。
【0036】
可動部4aは、樹脂材やゴム材等の弾性体材料で構成され、その中心部でガイドパイプ1に内接する円筒部44と、円筒部44から両側に伸びる円筒部44より直径の小さい主円筒部43と、主円筒部43の一端からオリフィス2の方向に伸びる円柱部45とを備える。ガイドパイプ1は、可動弁体3aの中心部の円筒部44と内接する円筒の主空洞1aと、主空洞1a内からオリフィス2の方向に伸延してオリフィス2に連結する主空洞1aより小径の円筒の小空洞1bを有する。可動部4aの主円筒部43は、小空洞1bに内接し、その一端の円柱部45の先端には、オリフィス2を封止する封止部5を有する。バイアスコイル8は、ガイドパイプ1内の主空洞1aの小空洞1b側の端部と可動部4aの円筒部44との間に、主円筒部43に外接して設けられる。円筒部44のオリフィス2側の側面は、バイアスコイル8からのバイアス用の押圧を受けて、可動弁体3a全体をオリフィス2と反対側に押圧する。これにより、通常は、封止部5がオリフィス2を閉弁しないよう、図3(a)に示すように、オリフィス2と封止部5の間に間隔が空くように設定されている。また、可動部4aが、弾性体材料で形成されているので、押圧により、それ自体で収縮し、可動弁体3aは、全体として弾性を示すことになる。
【0037】
上記構成において、固定電極11と可動電極12に通電してワイヤ9を加熱すると、温度上昇により、通電発熱型の形状記憶合金のワイヤ9が変形し、ワイヤ9の長さが収縮する。このとき、ワイヤ9の一方が接続されている固定電極11は、ガイドパイプ1に固定されているので移動しないが、ワイヤ9の他方が接続されている可動電極12は、可動部4aに接続されているので、この可動部4aとともに移動する。従って、ワイヤ9の収縮により可動部4aは、バイアスコイル8を圧縮し、可動部4aの先端の封止部5が、オリフィス2を接触し封止した状態で止まる。これにより、図3(b)に示すように、オリフィス2が閉鎖される。
【0038】
一方、固定電極11と可動電極12間の通電を止めると、形状記憶合金のワイヤ9の温度が低下し、元の温度に戻るとワイヤ9が伸長し、前記と逆の作用により、図3(a)に示すように、弾性体の可動部4aが元の位置に戻り、封止部5がオリフィス2から離れ、オリフィス2が開放される。
【0039】
前述と同様に、バイアスコイル8の弾性係数k1を、可動部4aの弾性体の弾性係数k3より大きくする。これにより、バイアスコイル8は、弾性体の可動部4aより先に収縮し、弾性体の可動部4aは、封止部5がオリフィス2に接触するまでの収縮力では殆ど収縮せず、接触後、さらにオリフィス2に収縮力が加わると収縮を始める。
【0040】
そして、オリフィス2が封止部5により接触されて圧接された後、より強く密閉するために、さらにワイヤ9が収縮して封止部5がオリフィス2を圧迫すると、バイアスコイル8は、封止部5とオリフィス2とが既に接触しているのでそれ以上収縮できない。このとき、ワイヤ9の収縮の圧力を受けて、弾性体である可動部4aが収縮を始め、図3(c)に示すように、弓形のように曲がってオリフィス2を封止する。この変形により、ワイヤ9の収縮によるオリフィス2への過剰な圧力によるオリフィス2からのワイヤ9自身への過負荷を低減することができる。
【0041】
このように、可動部4aを弾性体材料で形成したことにより、過剰な負荷に対して可動部4a自体を収縮させることができ、可動部4aは、ワイヤ9に直接過負荷が掛かるのを緩和するクッション効果の役目を果し、ワイヤ9への過剰な負荷を低減することができる。従って、可動弁体3aを過負荷低減作用を兼ね備えるよう可動部4aの過負荷低減弾性体を一体化したことにより、小型バルブ10の信頼性を高めると共に、小型バルブの部品点数を低減することができる。ここでは、可動弁体3aの全体を弾性体材料で形成したが、その一部を弾性体材料で形成しても同様の効果を得ることができる。
【0042】
次に、本発明の第3の実施形態に係る小型バルブについて、図4(a)、(b)、(c)を参照して説明する。本実施形態の小型バルブ10は基本的には、前記実施形態の図3と同等であり、可動弁体3bの封止部5を弾性体材料を用いて形成した点で前記実施形態と異なる。
【0043】
図4(a)において、小型バルブ10は、金属製又は樹脂製の筒形状のガイドパイプ1(固定構造物)と、ガイドパイプ1に内蔵された金属製又は樹脂製のオリフィス2と、ガイドパイプ1に内接して可動自在にオリフィス2を封止する可動弁体3bと、この可動弁体3bと外接するバイアス用のバイアスコイル8(バイアス弾性体)と、ガイドパイプ1に固定された固定電極11(第1電極)と、可動弁体3bのオリフィス2と反対側の端部に設置された可動電極12(第2電極)と、固定電極11と可動電極12とによって保持される形状記憶合金のワイヤ9とを備える。可動弁体3bは、金属又は樹脂部材からなる可動部4bと、その先端にオリフィス2を封止する封止部5を備え、封止部5は、樹脂又はゴム製の弾性を持つ弾性体で形成される。
【0044】
この弾性体で形成された封止部5を備えたことにより、可動弁体3bは、全体として弾性を示す弾性体となる。従って、前述と同様に、可動弁体3b全体の弾性係数をk3とすると、前述と同様に、封止部5がオリフィス2に接触する時点のワイヤ9の収縮までは、バイアスコイル8が収縮し、それ以上収縮すると、封止部5の弾性体が収縮し始める。
【0045】
すなわち、通電によりワイヤ9の収縮の圧力を受けて、可動弁体3bがオリフィス2側に移動し、図4(b)に示すように、封止部5がオリフィス2に接触し、さらにワイヤ9が収縮すると、図4(c)に示すように、封止部5が圧縮変形されて薄くなる。この封止部5の変形により、ワイヤ9の過剰な収縮力が吸収される。即ち、ワイヤ9の過剰な収縮に伴う封止部5のオリフィス2への圧接は、オリフィス2からワイヤ9への反発力を生じ、この反発力によるワイヤ9自身への過負荷を封止部5の変形により低減している。
【0046】
一方、固定電極11と可動電極12間の通電を止めると、形状記憶合金のワイヤ9の温度が低下し、元の温度に戻るとワイヤ9が伸長し、前記と逆の作用により、図4(a)に示すように、可動部4aが元の位置に戻り、封止部5がオリフィス2から離れ、オリフィス2が開放される。
【0047】
このように、封止部5自体を弾性体材料で形成したことにより、過剰な負荷に対して封止部5自体が収縮することにより、可動弁対3bは、ワイヤ9に過負荷が掛かるのを緩和するクッション効果の役目を果し、ワイヤ9への過剰な負荷を低減することができる。このように、封止部5自体を弾性体材料で形成することにより、可動弁体3bを過負荷低減作用を兼ね備えた弾性体として簡単に形成でき、小型バルブの部品点数を低減することができる。
【0048】
次に、本発明の第4の実施形態に係る小型バルブについて、図5(a)、(b)、(c)を参照して説明する。本実施形態の小型バルブ10は基本的には、前記実施形態と同等であり、可動弁体3c(可動構造体)がバネ体を具備して形成された点で前記実施形態と異なる。
【0049】
図5(a)において、小型バルブ10は、金属製又は樹脂製の筒形状のガイドパイプ1(固定構造物)と、ガイドパイプ1に内蔵された金属製又は樹脂製のオリフィス2と、ガイドパイプ1に内接して可動自在にオリフィス2を封止する金属製又は樹脂製の可動弁体3cと、ガイドパイプ1に内接しオリフィス2と可動弁体3cとの間に設けられたバイアス用のバイアスコイル8(バイアス弾性体)と、ガイドパイプ1に固定された固定電極11(第1電極)と、可動弁体3cのオリフィス2と反対側の端部に設置された可動電極12(第2電極)と、固定電極11と可動電極12とによって保持される通電加熱型の形状記憶合金のワイヤ9とを備える。
【0050】
可動弁体3cは、その先端に円柱の円柱部45を持つ筒形状の可動部4cと、円柱部45の先端に接合されるオリフィス2を封止する封止部5と、可動電極12を保持する電極保持板13と、電極保持板13と可動部4cの端部とに挟持された過負荷低減用の小型のコイルバネ7a(バネ体)を備える。このコイルバネ7aを有することにより、可動弁体3cは、弾性特性を持つことができる。
【0051】
上記構成において、固定電極11と可動電極12に通電してワイヤ9を加熱され、ある温度以上になると形状記憶合金のワイヤ9が変形し、ワイヤ9の長さが収縮する。このとき、ワイヤ9の一方が接続されている固定電極11は、ガイドパイプ1に固定されて移動せず、ワイヤ9の他方が接続されている可動電極12は、可動部4cに接続され、この可動部4cと伴に移動する。ワイヤ9の収縮により可動部4cは、バイアスコイル8を圧迫し、バイアスコイル8をオリフィス2側に押圧して移動させ、バイアスコイル8をオリフィス2側に押し付ける。これにより、可動部4cの先端の封止部5が、オリフィス2を圧接封止し、オリフィス2が閉弁される。このとき、前述と同様に、バイアスコイル8の弾性係数k1は、コイルバネ7aの弾性係数k2より大きく設定されているため、コイルバネ7aより先に収縮し、コイルバネ7aは、封止部5がオリフィス2に接触するまで殆ど収縮しない。
【0052】
一方、固定電極11と可動電極12間の通電を止めると、形状記憶合金のワイヤ9の温度が低下し、元の温度に戻るとワイヤ9が伸長し、前記と逆の作用により、可動部4cが元の位置に戻り、封止部5がオリフィス2から離れ、オリフィス2が開放される。
【0053】
そして、オリフィス2が封止部5により接触されて封止された後、より強く密閉するために、さらにワイヤ9が収縮して封止部5がオリフィス2を圧接すると、バイアスコイル8は、ガイドパイプ1のオリフィス2側の端面と可動部4cの間に押さえつけられて、それ以上収縮できない状態になる。この時点で、バイアスコイル8に代わり、コイルバネ7aが収縮を始める。
【0054】
このように、本実施形態の小型バルブ10は、可動弁体3cに小型のコイルバネ7aを設けたことにより、可動弁体3cを加圧により全長が変動する小型で簡単な構成の弾性体として形成することができる。そして、可動弁体3cは、過負荷時のコイルバネ7aの収縮により、ワイヤ9に過負荷が掛かるのを緩和するクッション効果の役目を果し、過負荷低減弾性体として作用することができる。そして、ここでの小型バルブ10は、過負荷低減弾性体のコイルバネ7aや、バイアス用のバイアスコイル8を弾性係数の明確なバネ体を用いて構成することにより、バルブ弁を精度良く容易に設計することができる。また、前記同様に、形状記憶合金への過負荷を避けることができるので、形状記憶合金の温度変化に対する形状変化の再現性の劣化を防ぎ、ワイヤ9の耐久性が向上すると共に、ワイヤ9の通電によるオリフィス2の開閉を精度良く行うことができる。
【0055】
次に、図5(b)に可動弁体3d(可動構造体)がバネ体を具備する第4実施形態の変形例を示す。本変形例の小型バルブ10は、基本的には前記実施形態と同等であり、可動弁体3d(可動構造体)が可動体4dの中央部の側壁にコイルバネ7b(バネ体)を備えた点で前記実施形態と異なる。
【0056】
図5(b)において、可動弁体3dは、その中央部の側壁の一部にコイルバネ7bが組み込まれた可動部4dを備える。前述と同様に、コイルバネ7bの弾性係数k2は、バイアスコイル8の弾性係数k1より小さく設定されているため、バイアスコイル8が先に収縮し、コイルバネ7bは、封止部5がオリフィス2に接触するまで殆ど収縮しない。
【0057】
上記構成により、可動弁体3dは、可動部4dが弾性を持つため、加圧により全長が変動する弾性体として動作することができる。そして、コイルバネ7bが可動部4d内に一体化されて内蔵されるため、小型でコンパクトな可動弁体3dを形成することができ、バルブ全体の小型化を可能にする。そして、前記同様に、可動弁体3dは、ワイヤ9に過負荷が掛かるのを緩和するクッション効果の役目を果し、ワイヤ9への過剰な負荷を低減することができる。
【0058】
次に、図5(c)に可動弁体3e(可動構造体)がバネ体を具備する第4実施形態の他の変形例を示す。本変形例の小型バルブ10は、基本的には、前記実施形態と同等であり、可動弁体3e(可動構造体)が、その可動部4cの円柱部45と封止部5の間にコイルバネ(バネ体)7aを備えた点で前記実施形態と異なる。
【0059】
図5(c)において、可動弁体3eの可動部4cは、その先端に円柱の円柱部45を持つ筒形状の可動部4cと、円柱部45の先端に接合されオリフィス2を封止する封止部5と、封止部5と可動部4cの円柱部45との間に設けられた過負荷低減用のコイルバネ7aとを備える。このように、コイルバネ7aを可動部4cの封止部5側に一体化することにより、可動弁体3eをコンパクトに形成することができる。また、閉弁時のオリフィス2からの過負荷を可動部4cより先に、封止部5を介してコイルバネ7aで直接受けることができる。従って、過負荷に対して可動部4cが樹脂製等で圧力伝達応答が遅い場合でも、可動部4cの伸縮の応答に関係なく、コイルバネ7aにより素早く過負荷低減作用を動作させることができ、過負荷低減応答を速めることができる。これにより前記同様に、可動弁体3eは、ワイヤ9に直接過負荷が掛かるのを緩和するクッション効果の役目を果すと共に、ワイヤ9への過負荷低減の応答を速めることができる。
【0060】
次に、本発明の第5の実施形態に係る小型バルブについて、図6(a)、(b)、(c)を参照して説明する。本実施形態の小型バルブ10は、基本的には前記実施形態と同等であり、可動弁体3fを構成するコイルバネ7と、バイアス機能のバイアスコイル8が、ガイドパイプ1(固定構造体)に外接して配設された点で前記実施形態と異なる。
【0061】
図6(a)において、小型バルブ10は、金属製又は樹脂製の筒形状のガイドパイプ1(固定構造物)と、ガイドパイプ1に内蔵された金属製又は樹脂製のオリフィス2と、可動自在にオリフィス2を封止する可動弁体3f(可動構造体)と、ガイドパイプ1に外接し可動弁体3fのバイアス用バネとなるバイアスコイル8(バイアス弾性体)と、ガイドパイプ1に固定された固定電極11(第1電極)と、可動弁体3fの端末に設置された可動電極12(第2電極)と、固定電極11と可動電極12とによって保持される形状記憶合金(または形状記憶樹脂、形状記憶ゴム等)のワイヤ9とを備える。ここでの形状記憶合金は、ある温度以上になると収縮する通電発熱型のものが用いられる。
【0062】
ガイドパイプ1は、内径の大きい筒形状の主空洞1aと、主空洞1aからオリフィス2側に伸延してオリフィス2を含み内径の小さい筒形状の小空洞1bと、ガイドパイプ1に外接するバイアスコイル8のストッパとなる鍔型の円形突起部1cを備えている。可動弁体3fは、ガイドパイプ1の小空洞1bに内接する第1可動部4eと、ガイドパイプ1に外接する第2可動部6aと、第1可動部4eのオリフィス2側の先端に設けられたオリフィス2を封止する樹脂又はゴム製の封止部5(封止体)と、ガイドパイプ1に外接し第1可動部4eと第2可動部6aの間に設けられたコイルバネ7(過負荷低減弾性体)とを備えている。
【0063】
第1可動部4eは、金属又は樹脂材料で構成され、ガイドパイプ1の小空洞1bに内接する主円筒部43と、主円筒部43からオリフィス2側に伸びる小径の円柱部45と、主円筒部43の第可動部6a側の端部からガイドパイプ1に垂直にその外部に出る突出部46を備えている。この突出部46とガイドパイプ1の円形突起部1cの間に、ガイドパイプ1に外接するバイアスコイル8が配設されている。
【0064】
第2可動部6aは、金属又は樹脂材料で構成され、その内面がガイドパイプ1に外接してガイドパイプ1の端末を封止し、その外部端面には、ワイヤ9への通電用の可動電極12が設けられている。この第2可動部6aの外接側壁厚と突出部46との間には、ガイドパイプ1に外接し、加熱時のワイヤ9の形状記憶合金への応力負荷を低減するコイルバネ7(過負荷低減弾性体)が配設されている。また、コイルバネ7の弾性係数k2は、前述と同様に、バイアスコイル8の弾性係数k1より小さく設定されている。
【0065】
上記構成において、固定電極11と可動電極12に通電してワイヤ9を加熱され、形状記憶合金のワイヤ9が収縮し、第2可動部6aがオリフィス2側に引っ張られると、第2可動部6aに接するコイルバネ7を押圧する。この押圧は、弾性係数(k2)の小さいコイルバネ7を収縮せずに、コイルバネ7を介して第1可動部4eに伝達され、第1可動部4eの押圧により弾性係数(k1)の大きいバイアスコイル8を収縮する。そして、図6(b)に示すように、第1可動部4eの先端の封止部5がオリフィス2を封止した状態で止まる。
【0066】
オリフィス2が封止部5により接触されて閉弁された後、より強く密閉するために、ワイヤ9の収縮が進み、封止部5がオリフィス2をさらに圧迫すると、封止部5とオリフィス2とは既に接触しているので、弾性係数の大きいバイアスコイル8は、それ以上収縮しない。従って、オリフィス2からの反発力がワイヤ9へ過負荷として掛かるが、ここで、第1可動部4eと第2可動部6a間のコイルバネ7が収縮を始め、これにより、ワイヤ9への過負荷が低減される。
【0067】
一方、固定電極11と可動電極12間の通電を止めると、形状記憶合金のワイヤ9の温度が低下し、元の温度に戻りワイヤ9が伸長し、前記と逆の作用により、図6(a)に示すように、第1可動部4eをはじめ可動弁体3f全体が元の位置に戻り、封止部5がオリフィス2から離れ、オリフィス2が開放される。
【0068】
このように、コイルバネ7及びバイアスコイル8をガイドパイプ1に外接させて設けたことにより、これらバネ部分が可動弁体3fの全長の長さ内に納まって配設されるので、小型バルブ10全体をさらに小型化することができる。また、形状記憶合金のワイヤ9をバネ部分の中を通さずに構成できるので、バルブ10の製造が容易になる。また、可動弁体3fは、全体として弾性を持つことができるので、前記同様に、ワイヤ9に過負荷が掛かるのを緩和するクッション効果の役目を果し、形状記憶合金への過剰な負荷を低減することができ、小型バルブ10の耐久性を高めることができる。
【0069】
次に、本発明の第6の実施形態に係る小型バルブについて、図7(a)、(b)を参照して説明する。本実施形態の小型バルブ10は、基本的には前記実施形態と同等であり、可動電極12(第2電極)の一端がガイドパイプ1に接続されると共に、ワイヤ9の収縮で可動電極12が撓むことにより、可動弁体3gを移動させる点で前記実施形態と異なる。
【0070】
図7(a)において、小型バルブ10は、金属製又は樹脂製の筒形状のガイドパイプ1(固定構造物)と、ガイドパイプ1に内蔵された金属製又は樹脂製のオリフィス2と、ガイドパイプ1に内接して可動自在にオリフィス2を封止する可動弁体3gと、ガイドパイプ1内の可動弁体3gの一部と外接するバイアス用のバイアスコイル8(バイアス弾性体)と、ガイドパイプ1の外部に固定された固定電極11(第1電極)と、一端がガイドパイプ1の外部に固定された可動電極12と、固定電極11と可動電極12とによって保持される形状記憶合金(または形状記憶樹脂、形状記憶ゴム等)のワイヤ9とを備える。ここでの形状記憶合金は、ある温度以上になると収縮する通電発熱型(例えば、Ti―Ni系形状記憶合金)のものが用いられる。固定電極11と可動電極12には、通電用のリード線15bとリード線15aがそれぞれ接続されている。
【0071】
ガイドパイプ1は、内部に可動弁体3gが内接する筒形状の内径の大きい主空洞1aと、この主空洞1aからオリフィス2側に伸びる筒形状の内径の小さい小空洞1bとを有する。可動弁体3gは、ガイドパイプ1に内接する第1可動部4fと、ガイドパイプ1に内接し可動電極12に接して押圧される第2可動部6bと、第1可動部4fのオリフィス2側の先端にオリフィス2を封止する樹脂又はゴム製の封止部(封止体)5と、可動弁体3gに弾性を持たせるコイルバネ7(過負荷低減弾性体)を備えている。
【0072】
第1可動部4fは、金属又は樹脂材料で構成され、ガイドパイプ1の小空洞1bに内接する主円柱部48と、主円柱部48からオリフィス2側に伸びる小径の円柱部45と、主円柱部48の端部でガイドパイプ1に内接する第2円柱部48を備えている。この第2円柱部48のオリフィス2側の側面とガイドパイプ1の主空洞1aのオリフィス2側の端部と間に、主円柱部48に外接するバイアスコイル8が配設されている。
【0073】
第2可動部6bは、金属又は樹脂材料で構成され、ガイドパイプ1に内接し可動電極12に接する突起部61を有している。可動電極12は、ガイドパイプ1に固定される固定端14aと、一端が固定電極11に接合されたワイヤ9の他端に接続される可動端14bを持ち、可動端14bは、ワイヤ9の収縮により移動する。固定端14aと可動端14bは、第2可動部6bが挿入されたガイドパイプ1の端面近傍の外部側面上において、互いに略円対称の位置関係に配設される。固定端14aと可動端14b間の可動電極12は、ワイヤ9で引っ張られて撓み、突起部61を覆って押さえる形で弓形に曲げられで配設される。第1可動部4fと第2可動部6bの間には、加熱時のワイヤ9の形状記憶合金への応力負荷を低減するコイルバネ7(過負荷低減弾性体)が配設され、コイルバネ7の弾性係数k2は、前述と同様に、バイアスコイル8の弾性係数k1より小さく設定されている。
【0074】
上記構成において、通電用のリード線15aとリード線15bにより、固定電極11と可動電極12に通電されると、加熱に伴うワイヤ9の収縮により可動電極12は、固定電極11側に引っ張られ、可動電極12の中央部付近で第2可動部6bの突起部61を押圧する。この押圧により、第2可動部6bがオリフィス側に移動され、第2可動部6bと直列的に圧接接触されているコイルバネ7、第1可動部4fが移動し、図7(b)に示すように、封止部5においてオリフィス2を封止する。バイアスコイル8は、前記と同様に、封止部5がオリフィス2に接触するまでは収縮され、第1可動部4fの先端の封止部5がオリフィス2を封止した状態で殆んど止まる。
【0075】
オリフィス2が封止部5により接触されて閉弁された後、より強く密閉するために、ワイヤ9の収縮が進み、封止部5がオリフィス2をさらに圧迫すると、封止部5とオリフィス2とは既に接触しているので、弾性係数の大きいバイアスコイル8は、それ以上収縮しない。従って、オリフィス2からの反発力がワイヤ9に過負荷として掛かる。このとき、第1可動部4fと第2可動部6a間のコイルバネ7が収縮を始め、これにより、ワイヤ9への過負荷が低減される。
【0076】
このように、可動弁体3fは、第1可動部4fと第2可動部6bの間にコイルバネ7を設けたことにより、弾性を持った可動弁体3fとなり、過負荷を低減することができる。そして、可動電極12が固定端14aを持つので、可動電極12への通電用のリード線15aと可動電極12の接合部分の強度を向上することができ、小型バルブの信頼性を高めることができる。
【0077】
次に、本発明の第7の実施形態に係る小型バルブについて、図8(a)、(b)を参照して説明する。本実施形態の小型バルブ10は、基本的には前記実施形態と同等であり、ガイドパイプ1(固定構造物)に固定された第1固定電極11a(第1電極)と、ガイドパイプ1の他の場所に固定された第2固定電極12a(第2電極)とを備え、第1固定電極11aと第2固定電極12aの間にワイヤ9を接続し、ワイヤ9の中央部で可動弁体3hを押圧し、ワイヤ9の伸縮方向が可動弁体3hの移動方向と直交する点で前記実施形態と異なる。
【0078】
図8(a)において、小型バルブ10は、金属製又は樹脂製の筒形状のガイドパイプ1と、ガイドパイプ1に内蔵された金属製又は樹脂製のオリフィス2と、ガイドパイプ1のオリフィス2と反対側の開放された端末においてガイドパイプ1に垂直に設けた中空円板状の鍔部1dと、ガイドパイプ1に内接して可動自在にオリフィス2を封止する可動弁体3hと、ガイドパイプ1内の可動弁体3hの一部と外接するバイアス用のバイアスコイル8(バイアス弾性体)と、ガイドパイプ1の鍔部1d上で円対称状に配置されて固定された第1固定電極11a(第1電極)及び第2固定電極12a(第2電極)と、第1固定電極11aと第2固定電極12aとによって保持される形状記憶合金(または形状記憶樹脂、形状記憶ゴム等)のワイヤ9とを備える。ここでの形状記憶合金は、ある温度以上になると収縮する通電発熱型のものが用いられる。ワイヤ9は、その中央部で可動弁体3hの端部を押圧している。
【0079】
可動弁体3hは、ガイドパイプ1に内接する第1可動部4gと、ガイドパイプ1に内接し、その末端でワイヤ9に接する第2可動部6cと、第1可動部4gのオリフィス2側の先端に設けられたオリフィス2を封止する樹脂又はゴム製の封止部(封止体)5と、第1可動部4gと第2可動部6cの間に設けられ可動弁体3hに弾性を持たせるコイルバネ7(過負荷低減弾性体)を備えている。
【0080】
第1可動部4gは、金属又は樹脂材料で構成され、ガイドパイプ1に内接する第1円柱部41と、第1円柱部41からオリフィス2の方向に伸びる第1円柱部41より小さい外形の第2円柱部42を備えている。第2円柱部42は、その先端にオリフィス2を封止するための樹脂製又はゴム製の封止部5を有し、その円筒側面はバイアスコイル8に内接する。バイアスコイル8は、第1円柱部41のオリフィス2側の側面と、ガイドパイプ1のオリフィス2側の端面との間に挟まれ、通電の無い状態では、封止部5がオリフィス2を閉弁しないように第1可動部4gを押圧している。コイルバネ7の弾性係数k2は、前記と同様に、バイアスコイル8の弾性係数k1より小さく設定されている。
【0081】
第2可動部6cは、ガイドパイプ1に内接する第1円柱部62と、第1円柱部62から第1可動部4gの方向に伸びる第1円柱部62より小さい外形の第2円柱部63を備え、第1円柱部62の中央部には、ワイヤ9の中央部分で接触して押圧される円柱形状の接触部64が設けられている。この接触部64は、回転自由で、ワイヤ9の伸縮によりガイドパイプ1の軸方向に押圧されて移動される。この結果、第2可動部6cは、ワイヤ9の伸縮方向に垂直に押圧されて、ガイドパイプ1内に沿って移動される。
【0082】
上記の構成において、第1固定電極11aと第2固定電極12aに通電されると、ワイヤ9が加熱され収縮される。これにより、第2可動部6cの接触部64がオリフィス2方向に押圧されて、可動弁体3h全体がオリフィス2方向に移動され、図8(b)に示すように、封止部5がオリフィス2と接触した時点で移動が止まる。ここで、ワイヤ9がさらに収縮して、封止部5でオリフィス2を圧接すると、弾性係数が大きいバイアスコイル8が先に収縮された後、オリフィス2からの逆負荷が可動弁体3hに掛かり、これにより、ワイヤ9に過負荷が掛かる。しかし、可動弁体3hは、コイルバネ7を含み弾性特性を持つので、前記と同様に、ワイヤ9への過負荷を低減することができ、ワイヤ9を保護することができる。
【0083】
このように、ワイヤ9の収縮方向の力を、これと垂直な可動弁体3hの移動方向に変換することにより、逆テコの原理により形状記憶合金のワイヤ9の少しの収縮で可動弁体3hを大きく変動させるストロークを得ることができる。このため、可動弁体3hの必要ストロークに対し、形状記憶合金のワイヤ9の長さを短くできる。また、ワイヤ9の両端が接続される電極を可動しない第1固定電極11a及び第2固定電極12aとしているので、これら電極に接続される通電用のリード線15a、15bと各固定電極11a、12aとの接続の信頼性を向上することができる。
【0084】
次に、上記第8の実施形態に係る小型バルブについて、図9を参照して説明する。本実施形態の小型バルブ10の構成は、基本的には前記第7の実施形態と同等であり、可動弁体3hの端部における第2可動部6cとワイヤ9とに接触する接触部64が、樹脂66を被覆した金属体65(金属)で構成されている点で異なる。なお、第1固定電極11a及び第2固定電極12aは、樹脂接着剤又は溶接等でガイドパイプ1の鍔部1dに固定され、それら固定電極11a、12aには、ワイヤ9の両端がそれぞれ固定されている。
【0085】
図9において、接触部64は、回転自由な円柱形状の金属体65からなり、その表面は熱伝導率の低い樹脂66で被覆されている。また、樹脂66は、耐熱性と耐摩耗性とが良好であって、潤滑性に富むものが望ましい。具体的には、PTFE樹脂があげられる。可動弁体3hの端部である第2可動部6cの第1円柱部62には、その中央部に接触部64の半径と略同径を成す半円形の断面を持つ溝62aがワイヤ9と略直交する方向に配設されている。また、接触部64は、その円柱側面の約半分が溝62a内に内接され、他の半分の側面でワイヤ9の中央部分と接触して押圧されて配設されている。このワイヤ9の伸縮により、接触部64はガイドパイプ1の軸方向に押圧されて、これにより第2可動部6cは、ワイヤ9の伸縮方向に垂直に押圧されて、ガイドパイプ1内に沿って移動される。
【0086】
このとき、接触部64は第2可動部6cとワイヤ9の双方に接触した状態で移動するため、ワイヤ9の通電により発熱された熱は、ワイヤ9から接触部64と第2可動部6cを経てコイルバネ7を介してガイドパイプ1に熱伝導され熱放散される。しかしながら、このワイヤ9の熱放散は、通電に対する形状記憶合金の収縮効率を低下させるために望ましくない。
【0087】
本実施形態の接触部64では、接触部64を金属体65の表面を樹脂66で被覆して構成したことにより、樹脂被覆による断熱効果が得られるので、これによりワイヤ9の熱の接触部64への熱伝導を低減でき、通電によるワイヤ9の発熱の熱放散を抑制することができる。従って、通電に対するワイヤ9の収縮効率が良くなり、可動弁体3hの可動応答速度を高めることができ、小型バルブ10の弁開閉の通電応答を良くすることができる。また、接触部64は、形状記憶合金のワイヤ9の収縮による強い押圧を受けるが、その本体を金属体65としたことにより、接触部64の強度を硬く強固にできるので、ワイヤ9からの押圧を直接的に可動弁体3hに伝達することができ、押圧の伝達効率が良くなる。また、接触部64用の部材全体を樹脂部材で形成することも可能であるが、耐熱性と耐摩耗性とが良好で、潤滑性に富む樹脂部材は高価であるので、本変形例のように接触部64の本体を金属で形成したことにより、接触部64を安価に製作することができる。
【0088】
このように本実施形態の小型バルブ10によれば、接触部64を樹脂66で被覆された金属体65で構成したことにより、簡単な構成でワイヤ9の熱収縮効率を向上し、通電による可動弁体3hの可動応答速度を高め、かつ接触部64を安価に形成できる。
【0089】
次に、上記第9の実施形態に係る小型バルブについて、図10を参照して説明する。本実施形態の小型バルブ10の構成は、基本的には前記第7の実施形態と同等であり、第1電極11aおよび第2電極12aの表面に樹脂11c、12cを被覆した点で異なる。
【0090】
図10において、第1固定電極11a及び第2固定電極12aは、ガイドパイプ1の鍔部1d上で円対称状に配置されて固定されると共に、両電極11a、12aによって形状記憶合金のワイヤ9を保持している。これらの第1固定電極11aと第2固定電極12aは、矩形の直方体からなる金属体11b、12bと、それら金属体11b、12bの表面の少なくとも鍔部1dとの接触面を含む表面を被覆する樹脂11c、12cとから成る。また、このように樹脂被覆された第1固定電極11a及び第2固定電極12aは、樹脂接着剤等により鍔部1dに固定される。
【0091】
この構成において、ワイヤ9は、その両端が第1固定電極11aと第2固定電極12aに固定され、各第1、第2の固定電極11a、12aがガイドパイプ1の鍔部1dに固定されているため、ワイヤ9の通電により発熱された熱は、ワイヤ9から各固定電極11a、12aを経てガイドパイプ1に熱伝導され熱放散される。
【0092】
しかしながら、本実施形態の接触部64では、第1固定電極11aと第2固定電極12aの表面を樹脂で被覆したことによる樹脂の断熱効果により、各固定電極11a、12aと鍔部1d間における熱伝導を低減することができ、ワイヤ9の熱がガイドパイプ1から熱放散することを抑制することができる。従って、通電に対するワイヤ9の収縮効率を向上できるので、可動弁体3hの可動応答速度を高めることができ、小型バルブ10の弁開閉の通電応答を良くすることができる。
【0093】
このように本実施形態の小型バルブ10によれば、第1固定電極11aと第2固定電極12aを樹脂11c、12cで被覆したことにより、簡単な構成で各固定電極11a、12aからの放熱を抑制することできるので、ワイヤ9の通電による収縮効率を向上し、通電による可動弁体3hの可動応答速度を高めることができる。また、その結果、小型バルブ10の弁開閉の通電応答を良くすることができる。
【0094】
次に、上記第8の実施形態に係る小型バルブの変形例について、図11を参照して説明する。本変形例の小型バルブ10の構成は、基本的には前記8の実施形態と同等であり、第1固定電極11a及び第2固定電極12aと、これら各固定電極11a、12aとによって保持される形状記憶合金のワイヤ9とを覆うカバー16を鍔部1d上に設けた点で異なる。
【0095】
このカバー16は、熱伝導性の低い樹脂部材を用いた矩形の空洞の筐体からなり、第1固定電極11a、第2固定電極12a及びワイヤ9を覆ってこれらを鍔部1d上で略密閉する形で鍔部1dに樹脂接着材等で取り付けられている。これにより、第1固定電極11aと第2固定電極12a及びワイヤ9は、外部空気と遮断される。この遮断により、通電により発熱したワイヤ9と、このワイヤ9からの熱伝導で加熱された第1固定電極11a及び第2固定電極12aとの熱は、それらの空気中へ熱放散が抑制される。従って、通電によるワイヤ9の発熱の空気中への熱放散が抑えられ、通電に対するワイヤ9の収縮効率が良くなり、可動弁体3hの可動応答速度をさらに高めることができる。
【0096】
次に、上記第8の実施形態に係る小型バルブの他の変形例について、図12(a)、(b)を参照して説明する。本変形例の小型バルブ10の構成は、基本的には前記第8の実施形態と同等であり、ガイドパイプ1の鍔部1d上で円対称状に配置されて溶接又は樹脂接着剤等により固定された第1固定電極11a及び第2固定電極12aにおいて、それら固定電極11a、12aに接続されたワイヤ9を引き出す各ワイヤの引出口11d、12dの表面から電極内部に略逆三角形のバリ取り孔11e、12eを彫り込んて開口周辺をバリ取りしたものである。
【0097】
図12(a)、(b)において、各固定電極11a、12aは、長方形の金属体11b、12bから成り、ワイヤ9の両端は、金属体11b、12b内に溶接等で固定されている。この各固定電極11a、12aの金属体11b、12bからワイヤ9を引き出す引出口11d、12dは、その表面にバリ取り孔11e、12eが形成されている。このバリ取り孔11e、12eを設けたことにより、引出口11d、12dでの金属体11b、12bとワイヤ9の接触を減らすことができる。また、金属体11b、12bは、その引出口11d、12dをワイヤ9の引き出す方向に合わせるように鍔面と傾斜を持って配設されている。これにより、ワイヤ9の引っ張り方向と、金属体11b、12bの引出口11d、12dの向きが略同じ方向となるので、ワイヤ9を金属体11b、12bにさらに接触し難くできる。
【0098】
このように、バリ取り孔11e、12eを設けたことにより、ワイヤ9の収縮による引出口11d、12dにおけるワイヤ9の位置変動に伴うワイヤ9との引出口11b、12bとの接触摩擦を軽減することができる。これにより、ワイヤ9の固定電極11a、12aとの摩擦による断線を防止することができ、信頼性を高めることができる。
【0099】
上述した各種実施形態及びそれらの変形例に係る小型バルブ10によれば、オリフィス2を内蔵するガイドパイプ1内に、ガイドパイプ1に内接してオリフィス2を封止する封止部5を有する可動自在な可動弁体3を設け、この可動弁体3に過負荷低減用のコイルバネ7を配設し、コイルバネ7の弾性係数k2をバイアスコイル8の弾性係数k1より小さくしたことにより、形状記憶合金のワイヤ9の収縮によるオリフィス2の閉弁時に、ワイヤ9の過剰収縮によるオリフィス2から過負荷を可動弁体3のコイルバネ7の弾性変形により吸収することができる。この可動弁体3の過負荷低減弾性体としてのクッション効果により、通電加熱時のバルブ閉弁における形状記憶合金への過負荷を低減することができる。従って、バルブ閉弁時の形状記憶合金への過負荷による記憶形状の変形を防止することができるので、過負荷の繰り返しによる形状記憶合金の形状記憶の再現性を経時劣化させることなく、形状記憶合金の耐久性を向上させ、小型バルブの信頼性を高めることができる。
【0100】
また、可動弁体の一部又は全部を弾性体材料で形成することにより、可動弁体を過負荷低減弾性体を兼ねて一体化形成することができ、コイルバネが不要となり、部品点数を低減することができる。また、バイアスコイルやコイルバネにより弾性体を全てバネ体で形成することにより、弾性係数のスペックが明確となり、バルブ制御設計の精度を高めることができる。また、バネ体を、ガイドパイプの外部に配設することにより、形状記憶合金のワイヤをバネ体を通さずに接続でき、小型バルブの製造を容易にすることができる。
【0101】
さらに、ワイヤの中央部で可動弁体の端部を押圧し、ワイヤの収縮方向を可動弁体の移動方向と直交させることにより、形状記憶合金のワイヤの少しの収縮で大きな可動弁体のストローク変動を得ることができる。このため、可動弁体の必要なストロークに対し、形状記憶合金のワイヤの長さを短くできる。また、端部や固定電極を樹脂被覆することにより、ワイヤからの放熱を抑制し、形状記憶合金によるバルブの開閉弁の通電応答感度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る小型バルブの断面図。
【図2】(a)、(b)は上記バルブのそれぞれバルブ開弁時及び閉弁時の断面図、(c)はコイルバネとバイアスコイルの収縮特性図。
【図3】(a)は本発明の第2の実施形態に係る小型バルブの断面図、(b)、(c)は同バルブの閉弁時及び過負荷閉弁時の断面図。
【図4】(a)は本発明の第3の実施形態に係る小型バルブの断面図、(b)、(c)は同バルブの閉弁時及び過負荷閉弁時の断面図。
【図5】(a)は本発明の第4の実施形態に係る小型バルブの断面図、(b)、(c)はそれぞれ同バルブの異なる変形例を示す断面図。
【図6】(a)は本発明の第5の実施形態に係る小型バルブの断面図、(b)は同バルブの閉弁時の断面図。
【図7】(a)は本発明の第6の実施形態に係る小型バルブの断面図、(b)は同バルブの閉弁時の断面図。
【図8】(a)は本発明の第7の実施形態に係る小型バルブの断面図、(b)は同バルブの閉弁時の断面図。
【図9】本発明の第8の実施形態に係る小型バルブの断面図。
【図10】本発明の第9の実施形態に係る小型バルブの断面図。
【図11】上記第8の実施形態の変形例に係る小型バルブの断面図。
【図12】(a)は上記第8の実施形態の他の変形例に係る小型バルブの断面図、(b)は(a)のA部の拡大図。
【符号の説明】
【0103】
1 ガイドパイプ(固定構造物)
2 オリフィス
3、3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、3h 可動弁体(可動構造体)
5 封止部(封止体)
7、7a、7b コイルバネ(過負荷低減弾性体、バネ体)
9 ワイヤ(形状記憶合金)
10 小型バルブ
11 固定電極部(第1電極)
12 可動電極部(第2電極)
11c、12c 樹脂
64 接触部
65 金属体(金属)
66、 樹脂
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状記憶合金を使用した気体や液体など各種流体を制御する小型バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の流体調整を行う小型バルブとして、例えば、特許文献1に示されるように、オリフィスを開閉する弁体のアクチュエータを形状記憶合金で形成し、このアクチュエータに通電することにより、弁体を変位させる常閉型及び常開型のバルブが知られている。このようなバルブの制御弁においては、オリフィスの密閉性を良くするために、オリフィスへの押圧を強くする必要性から、形状記憶合金のアクチュエータは、閉弁時、オリフィスに接触後も収縮し、さらにオリフィスを加圧している。また、アクチュエータの部品のバラツキによっても、同様にオリフィスが余分に加圧されることがある。しかしながら、この加圧によってオリフィスが圧接されることにより、逆に、アクチュエータは、バルブ本体に固定されているオリフィスから負荷を受けることになる。この負荷は、アクチュエータからオリフィスへの押圧が強いほど大きくなり、形状記憶合金に過負荷を与えることになる。
【0003】
一般に、通電加熱型の形状記憶合金では、通常、常温では全長が伸びる伸長形状となり、直流又は交流電圧が印加されて通電されると自己発熱し、その温度がある温度以上の高温になると予め形状記憶された収縮形状となる。そして、温度を初期の状態に戻せば、元の形状に回復し、形状記憶合金の性質である回復形状の再現性を示す。しかしながら、形状記憶合金は、記憶形状状態で過剰な圧力が加えられると、その記憶形状がずれてきて回復形状の再現性が損なわれ、この繰り返しによる経時変化により、元の記憶形状状態に完全に復帰しないという傾向を持っている。
【0004】
このため、上記特許文献1に示されるバルブにおいても、オリフィスへの過剰な押圧により、アクチュエータの形状記憶合金が過負荷を受け、これが繰り返されることにより経時劣化し、初期設定した記憶形状状態が変形されてしまい、元の記憶形状に復帰しなくなる可能性があった。これにより、形状記憶合金の回復形状の再現性が劣化し、バルブの弁制御性能を低下させる虞があった。また、上記特許文献1に示される常開型バルブでは、形状記憶合金のアクチュエータを2本必要とし、構造が複雑でコスト高になる欠点があった。
【0005】
なお、他の従来例として、特許文献2に示されるように、形状記憶合金で形成されたコイルバネが一定温度以上になると伸長し、バイアスバネのバイアス力に打ち勝って開弁状態にある弁体を押圧して、強制的に閉弁させるバルブがある。しかし、このバルブは、コイルバネ形状であるため、外形が大きくなり、小型化が困難であった。また、一定の力を出すために形状記憶合金のコイルバネの線形を太くすると、コイルバネの熱容量が増えるため、放熱時の応答性が悪くなる虞があった。さらに、他の従来例として、特許文献3に示すように、形状記憶合金製のワイヤを用いて、常開型のバルブの閉動作を実現する小型バルブが知られている。しかし、このバルブでは、ワイヤの折り返し部で温度分布が生じるため、熱応力による耐久性の劣化をもたらす虞があった。また、ワイヤが動作限まで動いた後は、形状記憶合金に過負荷が掛かるため、前述と同様に、形状記憶合金に経時劣化を発生させる問題があった。
【特許文献1】特開平05−99369号公報
【特許文献2】特開平09−313363号公報
【特許文献3】特開平11−153234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、筒形状でオリフィスを内蔵する固定構造物と、固定構造物に内接してオリフィスを封止する封止体を備える可動自在な可動構造体を備え、形状記憶合金のワイヤを加熱し変形してオリフィスを封止する小型バルブにおいて、封止体を含む可動構造体の長さを弾性的に変形可能とし、ワイヤの加熱時の応力負荷を可動構造体の弾性変形により低減することにより、形状記憶合金の再現性の経時劣化を無くして耐久性を維持し、信頼性の高い小型バルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、筒形状でオリフィスを有する固定構造物と、前記固定構造物に内接して可動自在に前記オリフィスを封止する封止体を有する可動自在な可動構造体と、通電用の電極となる第1電極及び第2電極と、前記第1電極と第2電極とによって保持される形状記憶合金のワイヤとを備え、前記第1電極と第2電極とに通電し、前記ワイヤを加熱して形状記憶合金を変形させることにより、前記可動構造体を可動させて、前記オリフィスを封止する小型バルブであって、前記封止体を含む可動構造体は、その長さが弾性的に変形可能に構成され、かつ、該可動構造体の弾性変形により前記形状記憶合金の加熱時の応力負荷が低減されるように構成されているものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の小型バルブにおいて、前記可動構造体の一部又は全部が弾性体材料からなるものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1に記載の小型バルブにおいて、前記可動構造体がバネ体を具備してなるものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3に記載の小型バルブにおいて、前記バネ体は、前記固定構造体に外接して配設されているものである。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の小型バルブにおいて、前記第2電極の一端が前記固定構造物に接続されるとともに、他端がワイヤに接続され、その両端の間で前記可動構造体に接触し、該電極が撓むことにより前記可動構造体を移動させるものである。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の小型バルブにおいて、前記第1電極は、前記固定構造物に固定された固定電極であり、前記第2電極は、前記可動構造体に接続された可動電極であるものである。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の小型バルブにおいて、前記第1電極は、前記固定構造物の所定部位に固定された固定電極であり、前記第2電極は、前記固定構造体の前記所定部位とは別の部位に固定された固定電極であり、前記ワイヤの中央部で前記可動構造体の端部を押圧し、前記ワイヤの伸縮方向が前記可動構造体の移動方向と直交するものである。
【0014】
請求項8の発明は、請求項7に記載の小型バルブにおいて、前記端部は、前記可動構造体とワイヤとに接触する接触部を有し、前記接触部は、樹脂を被覆した金属で構成されているものである。
【0015】
請求項9の発明は、請求項7又は請求項8に記載の小型バルブにおいて、前記第1電極および第2電極の表面に樹脂を被覆してなるものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、可動構造体の弾性変形によるクッション効果により、加熱時のバルブ閉鎖時の形状記憶合金への過負荷を低減することができる。これにより、形状記憶合金のワイヤへの過剰な加圧による過負荷を防止することができるので、形状記憶合金の形状記憶の再現性を損なわず、耐久性が維持され、小型バルブの信頼性を高めることができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、可動構造体と過負荷低減弾性体とを1つにすることができ、部品点数を低減することができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、可動構造体の弾性機能を弾性部品として弾性スペックが明確であるバネで形成することができるので、可動構造体の弾性機能の設計を精度良くすることができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、バネ体が固定構造体の外部に出るので、第1電極と第2電極間の形状記憶合金のワイヤをバネ体を通さずに接続でき、小型バルブの製造を容易にすることができる。
【0020】
請求項5の発明によれば、可動電極の一端が固定されているので、通電用のリード線と可動電極との接続を強化でき、接続の信頼性を高めることができる。
【0021】
請求項6の発明によれば、形状記憶合金のワイヤの一端を確実に固定位置に固定でき、他端で可動構造体を引っ張ることができるので、通電時の形状記憶合金の収縮変動を確実に可動構造体に伝達することができる。これにより、通電時にバルブを閉鎖し、非通電時にバルブを開放する構造(ノーマルオープン構造)をシンプルに構成することができる。
【0022】
請求項7の発明によれば、形状記憶合金のワイヤの少しの収縮で大きな可動構造体の変動のストロークを得ることができる。このため、可動構造体の必要ストロークに対し、形状記憶合金のワイヤの長さを短くできる。また、ワイヤの両端が接続される電極が可動せず固定されているので、電極に接続される通電用のリード線と電極との接続信頼性を向上することができる。
【0023】
請求項8の発明によれば、通電により発生したワイヤの熱の接触部へ熱伝導が低減され、ワイヤから固定構造物への熱放散を抑制することができるので、通電による形状記憶合金の収縮効率を向上し、可動構造体の可動応答速度を高めることができる。また、金属部材使用により、接触部の強度を確保できると共に、接触部を低価格化することができる。
【0024】
請求項9の発明によれば、ワイヤから固定構造物への熱放散をさらに抑制することができるので、通電による可動構造体の可動応答速度をさらに高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の第1の実施形態に係る小型バルブについて、図1及び図2(a)、(b)、(c)を参照して説明する。これらの図において、小型バルブ10は、金属製又は樹脂製の筒形状のガイドパイプ1(固定構造物)と、ガイドパイプ1に内蔵された金属製又は樹脂製のオリフィス2と、ガイドパイプ1に内接する第1可動部4と第2可動部6を有し可動自在にオリフィス2を封止する可動弁体3(可動構造体)と、ガイドパイプ1に内接し第1可動部4の一部に外接して可動弁体3とオリフィス2との間に設けられたバイアス用バネのバイアスコイル8(バイアス弾性体)と、第1可動部4と第2可動部6の間に設けられたガイドパイプ1に固定された固定電極11(第1電極)と、可動弁体3の第2可動部6側の端末に設置された可動電極12(第2電極)と、固定電極11と可動電極12とによって保持される形状記憶合金(または形状記憶樹脂、形状記憶ゴム等)のワイヤ9とを備える。ここでの形状記憶合金は、ある温度以上になると収縮する通電発熱型(例えば、Ti―Ni系形状記憶合金)のものが用いられる。
【0026】
可動弁体3は、第1可動部4のオリフィス2側の先端にオリフィス2を封止する樹脂又はゴム製の封止部5(封止体)を有し、第1可動部4と第2可動部6の間に加熱時のワイヤ9の形状記憶合金への応力負荷を低減するコイルバネ7(過負荷低減弾性体)を備えている。形状記憶合金は、ある温度以上になると収縮する仕様のものを用いているので、直流電圧を印加して通電すると、自己発熱して温度が上昇し、ある温度以上になると予め記憶された収縮形状に形状を回復する。この形状回復力は、バイアスコイル8及びコイルバネ7の弾発力に比べて著しく大きなものである。また、コイルバネ7の弾性係数k2は、後述するように、バイアスコイル8の弾性係数k1より小さく設定されている。
【0027】
第1可動部4は、ガイドパイプ1に内接する第1円柱部41と、第1円柱部41からオリフィス2の方向に伸びる第1円柱部41より小さい外形の第2円柱部42を備えている。第2円柱部42は、その先端にオリフィス2を封止するための樹脂製又はゴム製の封止部5を有する。第1円柱部41のオリフィス2側の側面は、バイアスコイル8によりオリフィス2と反対方向に押圧を受けて、第1可動部4がオリフィス2から離される。これにより、図2(a)に示すように、通常の通電が無い状態では、封止部5がオリフィス2を閉弁しないように、オリフィス2と封止部5の間に間隔が開けられる(常開型:ノーマリオープン)。
【0028】
上記構成において、固定電極11と可動電極12に通電してワイヤ9を加熱され、ある温度以上になると形状記憶合金のワイヤ9が収縮して変形する。このとき、ワイヤ9の一端は、ガイドパイプ1に固定の固定電極11に接続されて移動せず、ワイヤ9の他端は第2可動部6の可動電極12に接続されて、第2可動部6とともに移動する。従って、ワイヤ9の収縮により第2可動部6が移動し、この移動がコイルバネ7を圧迫し、さらにコイルバネ7が第1可動部4をオリフィス2側に押圧して移動させ、バイアスコイル8をオリフィス2側に押し付ける。そして、第1可動部4の先端の封止部5が、オリフィス2を圧接封止した状態で止まる。これにより、図2(b)に示すように、オリフィス2が閉弁される。
【0029】
一方、固定電極11と可動電極12間の通電を止めると、形状記憶合金のワイヤ9の温度が低下し、元の温度に戻るとワイヤ9が伸長し、前記と逆の作用により、図2(a)に示すように、第1可動部4が元の位置に戻り、封止部5がオリフィス2から離れ、オリフィス2が開放される。
【0030】
上記の構成において、オリフィス2が封止部5により接触されて封止された後、より強く密閉するために、さらにワイヤ9が収縮して封止部5がオリフィス2を圧接する。この圧接は、ワイヤ9の部品バラツキにより多少変化するので、この部品バラツキを含めワイヤ9の収縮を予め大きく設定する。そして、封止部5がオリフィス2を圧接されると、バイアスコイル8は、ガイドパイプ1のオリフィス2側の端面と第1可動部4の間に押さえつけられて、それ以上収縮できない状態になる。この時点で、バイアスコイル8に代わり、弾性係数k2の小さいコイルバネ7が収縮を始める。
【0031】
この様子を以下に説明する。ワイヤ9の収縮力をFとし、バネの収縮長さをxとし、弾性係数をkとし、外部圧力のない状態の長さをLとすると、収縮されたバネの長さLは、
L=−x+L0(L0は収縮前の長さ)
で表される。バイアスコイル8とコイルバネ7の各収縮後の長さL1及びL2とし、収縮前の長さをLa、Lbとし、それぞれのバネの弾性係数をk1、k2とすると、
F=−kxの関係より、
L1=−x+La=―F/k1+La
L2=−x+Lb=―F/k2+Lb
となる。このL1、L2と収縮力Fの関係を図2(c)に示す。ここで、バイアスコイル8の弾性係数k1は、コイルバネ7の弾性係数k2より大きくしている。これにより、バイアスコイル8は、コイルバネ7より先に収縮し、コイルバネ7は、封止部5がオリフィス2に接触するまでの収縮力Frまでは殆ど収縮せず、接触後、さらにオリフィス2に収縮力Fが加わると収縮を始める。
【0032】
このコイルバネ7の収縮は、ワイヤ9に直接に過負荷が掛かるのを緩和するクッション効果の役目を果し、ワイヤ9への過剰な負荷を低減することができる。このため、形状記憶合金への過負荷を避けることができるので、ワイヤ9の高温時に設定された記憶形状を変形させることを防止することができ、形状記憶合金は、常に元の記憶された形状に復帰することができ、ワイヤ9の経時劣化を無くすことができるので温度変化による形状記憶の再現性を良くすることができる。また、ワイヤ9の通電によるオリフィス2の開閉弁の再現性を精度良く行うことができる。
【0033】
このように、オリフィス2と可動弁体3の間に設けたバイアスコイル8と、可動弁体3の中に設けた過負荷低減用のコイルバネ7とを直列状に配設し、バイアスコイル8の弾性係数k1をコイルバネ7の弾性係数k2より大きくしたことにより、小型バルブ10の閉弁時に、可動弁体3を弾性変形させることができる。これにより、閉弁時のワイヤ9の収縮応力による形状記憶合金自身への過負荷を低減することができ、この形状記憶合金の記憶形状の再現性の経時劣化を防ぎ、その耐久性を向上し、小型バルブ10の信頼性を高めることができる。
【0034】
次に、本発明の第2の実施形態に係る小型バルブについて、図3(a)、(b)、(c)を参照して説明する。本実施形態の小型バルブ10は、可動弁体3の一部又は全部に弾性体材料を用いた点で前記実施形態と異なる。
【0035】
小型バルブ10は、金属製又は樹脂製の筒形状のガイドパイプ1(固定構造物)と、ガイドパイプ1に内蔵された金属製又は樹脂製のオリフィス2と、ガイドパイプ1に内接して可動自在にオリフィス2を封止する可動弁体3aと、ガイドパイプ1内の可動弁体3aと外接するバイアス用のコイルバネ8(バイアス弾性体)と、ガイドパイプ1に固定された固定電極11(第1電極)と、可動弁体3aにおけるオリフィス2と反対側の端部に設置された可動電極12(第2電極)と、固定電極11と可動電極12とによって保持される形状記憶合金のワイヤ9とを備える。この形状記憶合金は、ある温度以上になると収縮する上述と同様の通電発熱型のものが用いられる。可動弁体3aは、可動部4aとオリフィス2を封止する樹脂又はゴム製の封止部5を備える。
【0036】
可動部4aは、樹脂材やゴム材等の弾性体材料で構成され、その中心部でガイドパイプ1に内接する円筒部44と、円筒部44から両側に伸びる円筒部44より直径の小さい主円筒部43と、主円筒部43の一端からオリフィス2の方向に伸びる円柱部45とを備える。ガイドパイプ1は、可動弁体3aの中心部の円筒部44と内接する円筒の主空洞1aと、主空洞1a内からオリフィス2の方向に伸延してオリフィス2に連結する主空洞1aより小径の円筒の小空洞1bを有する。可動部4aの主円筒部43は、小空洞1bに内接し、その一端の円柱部45の先端には、オリフィス2を封止する封止部5を有する。バイアスコイル8は、ガイドパイプ1内の主空洞1aの小空洞1b側の端部と可動部4aの円筒部44との間に、主円筒部43に外接して設けられる。円筒部44のオリフィス2側の側面は、バイアスコイル8からのバイアス用の押圧を受けて、可動弁体3a全体をオリフィス2と反対側に押圧する。これにより、通常は、封止部5がオリフィス2を閉弁しないよう、図3(a)に示すように、オリフィス2と封止部5の間に間隔が空くように設定されている。また、可動部4aが、弾性体材料で形成されているので、押圧により、それ自体で収縮し、可動弁体3aは、全体として弾性を示すことになる。
【0037】
上記構成において、固定電極11と可動電極12に通電してワイヤ9を加熱すると、温度上昇により、通電発熱型の形状記憶合金のワイヤ9が変形し、ワイヤ9の長さが収縮する。このとき、ワイヤ9の一方が接続されている固定電極11は、ガイドパイプ1に固定されているので移動しないが、ワイヤ9の他方が接続されている可動電極12は、可動部4aに接続されているので、この可動部4aとともに移動する。従って、ワイヤ9の収縮により可動部4aは、バイアスコイル8を圧縮し、可動部4aの先端の封止部5が、オリフィス2を接触し封止した状態で止まる。これにより、図3(b)に示すように、オリフィス2が閉鎖される。
【0038】
一方、固定電極11と可動電極12間の通電を止めると、形状記憶合金のワイヤ9の温度が低下し、元の温度に戻るとワイヤ9が伸長し、前記と逆の作用により、図3(a)に示すように、弾性体の可動部4aが元の位置に戻り、封止部5がオリフィス2から離れ、オリフィス2が開放される。
【0039】
前述と同様に、バイアスコイル8の弾性係数k1を、可動部4aの弾性体の弾性係数k3より大きくする。これにより、バイアスコイル8は、弾性体の可動部4aより先に収縮し、弾性体の可動部4aは、封止部5がオリフィス2に接触するまでの収縮力では殆ど収縮せず、接触後、さらにオリフィス2に収縮力が加わると収縮を始める。
【0040】
そして、オリフィス2が封止部5により接触されて圧接された後、より強く密閉するために、さらにワイヤ9が収縮して封止部5がオリフィス2を圧迫すると、バイアスコイル8は、封止部5とオリフィス2とが既に接触しているのでそれ以上収縮できない。このとき、ワイヤ9の収縮の圧力を受けて、弾性体である可動部4aが収縮を始め、図3(c)に示すように、弓形のように曲がってオリフィス2を封止する。この変形により、ワイヤ9の収縮によるオリフィス2への過剰な圧力によるオリフィス2からのワイヤ9自身への過負荷を低減することができる。
【0041】
このように、可動部4aを弾性体材料で形成したことにより、過剰な負荷に対して可動部4a自体を収縮させることができ、可動部4aは、ワイヤ9に直接過負荷が掛かるのを緩和するクッション効果の役目を果し、ワイヤ9への過剰な負荷を低減することができる。従って、可動弁体3aを過負荷低減作用を兼ね備えるよう可動部4aの過負荷低減弾性体を一体化したことにより、小型バルブ10の信頼性を高めると共に、小型バルブの部品点数を低減することができる。ここでは、可動弁体3aの全体を弾性体材料で形成したが、その一部を弾性体材料で形成しても同様の効果を得ることができる。
【0042】
次に、本発明の第3の実施形態に係る小型バルブについて、図4(a)、(b)、(c)を参照して説明する。本実施形態の小型バルブ10は基本的には、前記実施形態の図3と同等であり、可動弁体3bの封止部5を弾性体材料を用いて形成した点で前記実施形態と異なる。
【0043】
図4(a)において、小型バルブ10は、金属製又は樹脂製の筒形状のガイドパイプ1(固定構造物)と、ガイドパイプ1に内蔵された金属製又は樹脂製のオリフィス2と、ガイドパイプ1に内接して可動自在にオリフィス2を封止する可動弁体3bと、この可動弁体3bと外接するバイアス用のバイアスコイル8(バイアス弾性体)と、ガイドパイプ1に固定された固定電極11(第1電極)と、可動弁体3bのオリフィス2と反対側の端部に設置された可動電極12(第2電極)と、固定電極11と可動電極12とによって保持される形状記憶合金のワイヤ9とを備える。可動弁体3bは、金属又は樹脂部材からなる可動部4bと、その先端にオリフィス2を封止する封止部5を備え、封止部5は、樹脂又はゴム製の弾性を持つ弾性体で形成される。
【0044】
この弾性体で形成された封止部5を備えたことにより、可動弁体3bは、全体として弾性を示す弾性体となる。従って、前述と同様に、可動弁体3b全体の弾性係数をk3とすると、前述と同様に、封止部5がオリフィス2に接触する時点のワイヤ9の収縮までは、バイアスコイル8が収縮し、それ以上収縮すると、封止部5の弾性体が収縮し始める。
【0045】
すなわち、通電によりワイヤ9の収縮の圧力を受けて、可動弁体3bがオリフィス2側に移動し、図4(b)に示すように、封止部5がオリフィス2に接触し、さらにワイヤ9が収縮すると、図4(c)に示すように、封止部5が圧縮変形されて薄くなる。この封止部5の変形により、ワイヤ9の過剰な収縮力が吸収される。即ち、ワイヤ9の過剰な収縮に伴う封止部5のオリフィス2への圧接は、オリフィス2からワイヤ9への反発力を生じ、この反発力によるワイヤ9自身への過負荷を封止部5の変形により低減している。
【0046】
一方、固定電極11と可動電極12間の通電を止めると、形状記憶合金のワイヤ9の温度が低下し、元の温度に戻るとワイヤ9が伸長し、前記と逆の作用により、図4(a)に示すように、可動部4aが元の位置に戻り、封止部5がオリフィス2から離れ、オリフィス2が開放される。
【0047】
このように、封止部5自体を弾性体材料で形成したことにより、過剰な負荷に対して封止部5自体が収縮することにより、可動弁対3bは、ワイヤ9に過負荷が掛かるのを緩和するクッション効果の役目を果し、ワイヤ9への過剰な負荷を低減することができる。このように、封止部5自体を弾性体材料で形成することにより、可動弁体3bを過負荷低減作用を兼ね備えた弾性体として簡単に形成でき、小型バルブの部品点数を低減することができる。
【0048】
次に、本発明の第4の実施形態に係る小型バルブについて、図5(a)、(b)、(c)を参照して説明する。本実施形態の小型バルブ10は基本的には、前記実施形態と同等であり、可動弁体3c(可動構造体)がバネ体を具備して形成された点で前記実施形態と異なる。
【0049】
図5(a)において、小型バルブ10は、金属製又は樹脂製の筒形状のガイドパイプ1(固定構造物)と、ガイドパイプ1に内蔵された金属製又は樹脂製のオリフィス2と、ガイドパイプ1に内接して可動自在にオリフィス2を封止する金属製又は樹脂製の可動弁体3cと、ガイドパイプ1に内接しオリフィス2と可動弁体3cとの間に設けられたバイアス用のバイアスコイル8(バイアス弾性体)と、ガイドパイプ1に固定された固定電極11(第1電極)と、可動弁体3cのオリフィス2と反対側の端部に設置された可動電極12(第2電極)と、固定電極11と可動電極12とによって保持される通電加熱型の形状記憶合金のワイヤ9とを備える。
【0050】
可動弁体3cは、その先端に円柱の円柱部45を持つ筒形状の可動部4cと、円柱部45の先端に接合されるオリフィス2を封止する封止部5と、可動電極12を保持する電極保持板13と、電極保持板13と可動部4cの端部とに挟持された過負荷低減用の小型のコイルバネ7a(バネ体)を備える。このコイルバネ7aを有することにより、可動弁体3cは、弾性特性を持つことができる。
【0051】
上記構成において、固定電極11と可動電極12に通電してワイヤ9を加熱され、ある温度以上になると形状記憶合金のワイヤ9が変形し、ワイヤ9の長さが収縮する。このとき、ワイヤ9の一方が接続されている固定電極11は、ガイドパイプ1に固定されて移動せず、ワイヤ9の他方が接続されている可動電極12は、可動部4cに接続され、この可動部4cと伴に移動する。ワイヤ9の収縮により可動部4cは、バイアスコイル8を圧迫し、バイアスコイル8をオリフィス2側に押圧して移動させ、バイアスコイル8をオリフィス2側に押し付ける。これにより、可動部4cの先端の封止部5が、オリフィス2を圧接封止し、オリフィス2が閉弁される。このとき、前述と同様に、バイアスコイル8の弾性係数k1は、コイルバネ7aの弾性係数k2より大きく設定されているため、コイルバネ7aより先に収縮し、コイルバネ7aは、封止部5がオリフィス2に接触するまで殆ど収縮しない。
【0052】
一方、固定電極11と可動電極12間の通電を止めると、形状記憶合金のワイヤ9の温度が低下し、元の温度に戻るとワイヤ9が伸長し、前記と逆の作用により、可動部4cが元の位置に戻り、封止部5がオリフィス2から離れ、オリフィス2が開放される。
【0053】
そして、オリフィス2が封止部5により接触されて封止された後、より強く密閉するために、さらにワイヤ9が収縮して封止部5がオリフィス2を圧接すると、バイアスコイル8は、ガイドパイプ1のオリフィス2側の端面と可動部4cの間に押さえつけられて、それ以上収縮できない状態になる。この時点で、バイアスコイル8に代わり、コイルバネ7aが収縮を始める。
【0054】
このように、本実施形態の小型バルブ10は、可動弁体3cに小型のコイルバネ7aを設けたことにより、可動弁体3cを加圧により全長が変動する小型で簡単な構成の弾性体として形成することができる。そして、可動弁体3cは、過負荷時のコイルバネ7aの収縮により、ワイヤ9に過負荷が掛かるのを緩和するクッション効果の役目を果し、過負荷低減弾性体として作用することができる。そして、ここでの小型バルブ10は、過負荷低減弾性体のコイルバネ7aや、バイアス用のバイアスコイル8を弾性係数の明確なバネ体を用いて構成することにより、バルブ弁を精度良く容易に設計することができる。また、前記同様に、形状記憶合金への過負荷を避けることができるので、形状記憶合金の温度変化に対する形状変化の再現性の劣化を防ぎ、ワイヤ9の耐久性が向上すると共に、ワイヤ9の通電によるオリフィス2の開閉を精度良く行うことができる。
【0055】
次に、図5(b)に可動弁体3d(可動構造体)がバネ体を具備する第4実施形態の変形例を示す。本変形例の小型バルブ10は、基本的には前記実施形態と同等であり、可動弁体3d(可動構造体)が可動体4dの中央部の側壁にコイルバネ7b(バネ体)を備えた点で前記実施形態と異なる。
【0056】
図5(b)において、可動弁体3dは、その中央部の側壁の一部にコイルバネ7bが組み込まれた可動部4dを備える。前述と同様に、コイルバネ7bの弾性係数k2は、バイアスコイル8の弾性係数k1より小さく設定されているため、バイアスコイル8が先に収縮し、コイルバネ7bは、封止部5がオリフィス2に接触するまで殆ど収縮しない。
【0057】
上記構成により、可動弁体3dは、可動部4dが弾性を持つため、加圧により全長が変動する弾性体として動作することができる。そして、コイルバネ7bが可動部4d内に一体化されて内蔵されるため、小型でコンパクトな可動弁体3dを形成することができ、バルブ全体の小型化を可能にする。そして、前記同様に、可動弁体3dは、ワイヤ9に過負荷が掛かるのを緩和するクッション効果の役目を果し、ワイヤ9への過剰な負荷を低減することができる。
【0058】
次に、図5(c)に可動弁体3e(可動構造体)がバネ体を具備する第4実施形態の他の変形例を示す。本変形例の小型バルブ10は、基本的には、前記実施形態と同等であり、可動弁体3e(可動構造体)が、その可動部4cの円柱部45と封止部5の間にコイルバネ(バネ体)7aを備えた点で前記実施形態と異なる。
【0059】
図5(c)において、可動弁体3eの可動部4cは、その先端に円柱の円柱部45を持つ筒形状の可動部4cと、円柱部45の先端に接合されオリフィス2を封止する封止部5と、封止部5と可動部4cの円柱部45との間に設けられた過負荷低減用のコイルバネ7aとを備える。このように、コイルバネ7aを可動部4cの封止部5側に一体化することにより、可動弁体3eをコンパクトに形成することができる。また、閉弁時のオリフィス2からの過負荷を可動部4cより先に、封止部5を介してコイルバネ7aで直接受けることができる。従って、過負荷に対して可動部4cが樹脂製等で圧力伝達応答が遅い場合でも、可動部4cの伸縮の応答に関係なく、コイルバネ7aにより素早く過負荷低減作用を動作させることができ、過負荷低減応答を速めることができる。これにより前記同様に、可動弁体3eは、ワイヤ9に直接過負荷が掛かるのを緩和するクッション効果の役目を果すと共に、ワイヤ9への過負荷低減の応答を速めることができる。
【0060】
次に、本発明の第5の実施形態に係る小型バルブについて、図6(a)、(b)、(c)を参照して説明する。本実施形態の小型バルブ10は、基本的には前記実施形態と同等であり、可動弁体3fを構成するコイルバネ7と、バイアス機能のバイアスコイル8が、ガイドパイプ1(固定構造体)に外接して配設された点で前記実施形態と異なる。
【0061】
図6(a)において、小型バルブ10は、金属製又は樹脂製の筒形状のガイドパイプ1(固定構造物)と、ガイドパイプ1に内蔵された金属製又は樹脂製のオリフィス2と、可動自在にオリフィス2を封止する可動弁体3f(可動構造体)と、ガイドパイプ1に外接し可動弁体3fのバイアス用バネとなるバイアスコイル8(バイアス弾性体)と、ガイドパイプ1に固定された固定電極11(第1電極)と、可動弁体3fの端末に設置された可動電極12(第2電極)と、固定電極11と可動電極12とによって保持される形状記憶合金(または形状記憶樹脂、形状記憶ゴム等)のワイヤ9とを備える。ここでの形状記憶合金は、ある温度以上になると収縮する通電発熱型のものが用いられる。
【0062】
ガイドパイプ1は、内径の大きい筒形状の主空洞1aと、主空洞1aからオリフィス2側に伸延してオリフィス2を含み内径の小さい筒形状の小空洞1bと、ガイドパイプ1に外接するバイアスコイル8のストッパとなる鍔型の円形突起部1cを備えている。可動弁体3fは、ガイドパイプ1の小空洞1bに内接する第1可動部4eと、ガイドパイプ1に外接する第2可動部6aと、第1可動部4eのオリフィス2側の先端に設けられたオリフィス2を封止する樹脂又はゴム製の封止部5(封止体)と、ガイドパイプ1に外接し第1可動部4eと第2可動部6aの間に設けられたコイルバネ7(過負荷低減弾性体)とを備えている。
【0063】
第1可動部4eは、金属又は樹脂材料で構成され、ガイドパイプ1の小空洞1bに内接する主円筒部43と、主円筒部43からオリフィス2側に伸びる小径の円柱部45と、主円筒部43の第可動部6a側の端部からガイドパイプ1に垂直にその外部に出る突出部46を備えている。この突出部46とガイドパイプ1の円形突起部1cの間に、ガイドパイプ1に外接するバイアスコイル8が配設されている。
【0064】
第2可動部6aは、金属又は樹脂材料で構成され、その内面がガイドパイプ1に外接してガイドパイプ1の端末を封止し、その外部端面には、ワイヤ9への通電用の可動電極12が設けられている。この第2可動部6aの外接側壁厚と突出部46との間には、ガイドパイプ1に外接し、加熱時のワイヤ9の形状記憶合金への応力負荷を低減するコイルバネ7(過負荷低減弾性体)が配設されている。また、コイルバネ7の弾性係数k2は、前述と同様に、バイアスコイル8の弾性係数k1より小さく設定されている。
【0065】
上記構成において、固定電極11と可動電極12に通電してワイヤ9を加熱され、形状記憶合金のワイヤ9が収縮し、第2可動部6aがオリフィス2側に引っ張られると、第2可動部6aに接するコイルバネ7を押圧する。この押圧は、弾性係数(k2)の小さいコイルバネ7を収縮せずに、コイルバネ7を介して第1可動部4eに伝達され、第1可動部4eの押圧により弾性係数(k1)の大きいバイアスコイル8を収縮する。そして、図6(b)に示すように、第1可動部4eの先端の封止部5がオリフィス2を封止した状態で止まる。
【0066】
オリフィス2が封止部5により接触されて閉弁された後、より強く密閉するために、ワイヤ9の収縮が進み、封止部5がオリフィス2をさらに圧迫すると、封止部5とオリフィス2とは既に接触しているので、弾性係数の大きいバイアスコイル8は、それ以上収縮しない。従って、オリフィス2からの反発力がワイヤ9へ過負荷として掛かるが、ここで、第1可動部4eと第2可動部6a間のコイルバネ7が収縮を始め、これにより、ワイヤ9への過負荷が低減される。
【0067】
一方、固定電極11と可動電極12間の通電を止めると、形状記憶合金のワイヤ9の温度が低下し、元の温度に戻りワイヤ9が伸長し、前記と逆の作用により、図6(a)に示すように、第1可動部4eをはじめ可動弁体3f全体が元の位置に戻り、封止部5がオリフィス2から離れ、オリフィス2が開放される。
【0068】
このように、コイルバネ7及びバイアスコイル8をガイドパイプ1に外接させて設けたことにより、これらバネ部分が可動弁体3fの全長の長さ内に納まって配設されるので、小型バルブ10全体をさらに小型化することができる。また、形状記憶合金のワイヤ9をバネ部分の中を通さずに構成できるので、バルブ10の製造が容易になる。また、可動弁体3fは、全体として弾性を持つことができるので、前記同様に、ワイヤ9に過負荷が掛かるのを緩和するクッション効果の役目を果し、形状記憶合金への過剰な負荷を低減することができ、小型バルブ10の耐久性を高めることができる。
【0069】
次に、本発明の第6の実施形態に係る小型バルブについて、図7(a)、(b)を参照して説明する。本実施形態の小型バルブ10は、基本的には前記実施形態と同等であり、可動電極12(第2電極)の一端がガイドパイプ1に接続されると共に、ワイヤ9の収縮で可動電極12が撓むことにより、可動弁体3gを移動させる点で前記実施形態と異なる。
【0070】
図7(a)において、小型バルブ10は、金属製又は樹脂製の筒形状のガイドパイプ1(固定構造物)と、ガイドパイプ1に内蔵された金属製又は樹脂製のオリフィス2と、ガイドパイプ1に内接して可動自在にオリフィス2を封止する可動弁体3gと、ガイドパイプ1内の可動弁体3gの一部と外接するバイアス用のバイアスコイル8(バイアス弾性体)と、ガイドパイプ1の外部に固定された固定電極11(第1電極)と、一端がガイドパイプ1の外部に固定された可動電極12と、固定電極11と可動電極12とによって保持される形状記憶合金(または形状記憶樹脂、形状記憶ゴム等)のワイヤ9とを備える。ここでの形状記憶合金は、ある温度以上になると収縮する通電発熱型(例えば、Ti―Ni系形状記憶合金)のものが用いられる。固定電極11と可動電極12には、通電用のリード線15bとリード線15aがそれぞれ接続されている。
【0071】
ガイドパイプ1は、内部に可動弁体3gが内接する筒形状の内径の大きい主空洞1aと、この主空洞1aからオリフィス2側に伸びる筒形状の内径の小さい小空洞1bとを有する。可動弁体3gは、ガイドパイプ1に内接する第1可動部4fと、ガイドパイプ1に内接し可動電極12に接して押圧される第2可動部6bと、第1可動部4fのオリフィス2側の先端にオリフィス2を封止する樹脂又はゴム製の封止部(封止体)5と、可動弁体3gに弾性を持たせるコイルバネ7(過負荷低減弾性体)を備えている。
【0072】
第1可動部4fは、金属又は樹脂材料で構成され、ガイドパイプ1の小空洞1bに内接する主円柱部48と、主円柱部48からオリフィス2側に伸びる小径の円柱部45と、主円柱部48の端部でガイドパイプ1に内接する第2円柱部48を備えている。この第2円柱部48のオリフィス2側の側面とガイドパイプ1の主空洞1aのオリフィス2側の端部と間に、主円柱部48に外接するバイアスコイル8が配設されている。
【0073】
第2可動部6bは、金属又は樹脂材料で構成され、ガイドパイプ1に内接し可動電極12に接する突起部61を有している。可動電極12は、ガイドパイプ1に固定される固定端14aと、一端が固定電極11に接合されたワイヤ9の他端に接続される可動端14bを持ち、可動端14bは、ワイヤ9の収縮により移動する。固定端14aと可動端14bは、第2可動部6bが挿入されたガイドパイプ1の端面近傍の外部側面上において、互いに略円対称の位置関係に配設される。固定端14aと可動端14b間の可動電極12は、ワイヤ9で引っ張られて撓み、突起部61を覆って押さえる形で弓形に曲げられで配設される。第1可動部4fと第2可動部6bの間には、加熱時のワイヤ9の形状記憶合金への応力負荷を低減するコイルバネ7(過負荷低減弾性体)が配設され、コイルバネ7の弾性係数k2は、前述と同様に、バイアスコイル8の弾性係数k1より小さく設定されている。
【0074】
上記構成において、通電用のリード線15aとリード線15bにより、固定電極11と可動電極12に通電されると、加熱に伴うワイヤ9の収縮により可動電極12は、固定電極11側に引っ張られ、可動電極12の中央部付近で第2可動部6bの突起部61を押圧する。この押圧により、第2可動部6bがオリフィス側に移動され、第2可動部6bと直列的に圧接接触されているコイルバネ7、第1可動部4fが移動し、図7(b)に示すように、封止部5においてオリフィス2を封止する。バイアスコイル8は、前記と同様に、封止部5がオリフィス2に接触するまでは収縮され、第1可動部4fの先端の封止部5がオリフィス2を封止した状態で殆んど止まる。
【0075】
オリフィス2が封止部5により接触されて閉弁された後、より強く密閉するために、ワイヤ9の収縮が進み、封止部5がオリフィス2をさらに圧迫すると、封止部5とオリフィス2とは既に接触しているので、弾性係数の大きいバイアスコイル8は、それ以上収縮しない。従って、オリフィス2からの反発力がワイヤ9に過負荷として掛かる。このとき、第1可動部4fと第2可動部6a間のコイルバネ7が収縮を始め、これにより、ワイヤ9への過負荷が低減される。
【0076】
このように、可動弁体3fは、第1可動部4fと第2可動部6bの間にコイルバネ7を設けたことにより、弾性を持った可動弁体3fとなり、過負荷を低減することができる。そして、可動電極12が固定端14aを持つので、可動電極12への通電用のリード線15aと可動電極12の接合部分の強度を向上することができ、小型バルブの信頼性を高めることができる。
【0077】
次に、本発明の第7の実施形態に係る小型バルブについて、図8(a)、(b)を参照して説明する。本実施形態の小型バルブ10は、基本的には前記実施形態と同等であり、ガイドパイプ1(固定構造物)に固定された第1固定電極11a(第1電極)と、ガイドパイプ1の他の場所に固定された第2固定電極12a(第2電極)とを備え、第1固定電極11aと第2固定電極12aの間にワイヤ9を接続し、ワイヤ9の中央部で可動弁体3hを押圧し、ワイヤ9の伸縮方向が可動弁体3hの移動方向と直交する点で前記実施形態と異なる。
【0078】
図8(a)において、小型バルブ10は、金属製又は樹脂製の筒形状のガイドパイプ1と、ガイドパイプ1に内蔵された金属製又は樹脂製のオリフィス2と、ガイドパイプ1のオリフィス2と反対側の開放された端末においてガイドパイプ1に垂直に設けた中空円板状の鍔部1dと、ガイドパイプ1に内接して可動自在にオリフィス2を封止する可動弁体3hと、ガイドパイプ1内の可動弁体3hの一部と外接するバイアス用のバイアスコイル8(バイアス弾性体)と、ガイドパイプ1の鍔部1d上で円対称状に配置されて固定された第1固定電極11a(第1電極)及び第2固定電極12a(第2電極)と、第1固定電極11aと第2固定電極12aとによって保持される形状記憶合金(または形状記憶樹脂、形状記憶ゴム等)のワイヤ9とを備える。ここでの形状記憶合金は、ある温度以上になると収縮する通電発熱型のものが用いられる。ワイヤ9は、その中央部で可動弁体3hの端部を押圧している。
【0079】
可動弁体3hは、ガイドパイプ1に内接する第1可動部4gと、ガイドパイプ1に内接し、その末端でワイヤ9に接する第2可動部6cと、第1可動部4gのオリフィス2側の先端に設けられたオリフィス2を封止する樹脂又はゴム製の封止部(封止体)5と、第1可動部4gと第2可動部6cの間に設けられ可動弁体3hに弾性を持たせるコイルバネ7(過負荷低減弾性体)を備えている。
【0080】
第1可動部4gは、金属又は樹脂材料で構成され、ガイドパイプ1に内接する第1円柱部41と、第1円柱部41からオリフィス2の方向に伸びる第1円柱部41より小さい外形の第2円柱部42を備えている。第2円柱部42は、その先端にオリフィス2を封止するための樹脂製又はゴム製の封止部5を有し、その円筒側面はバイアスコイル8に内接する。バイアスコイル8は、第1円柱部41のオリフィス2側の側面と、ガイドパイプ1のオリフィス2側の端面との間に挟まれ、通電の無い状態では、封止部5がオリフィス2を閉弁しないように第1可動部4gを押圧している。コイルバネ7の弾性係数k2は、前記と同様に、バイアスコイル8の弾性係数k1より小さく設定されている。
【0081】
第2可動部6cは、ガイドパイプ1に内接する第1円柱部62と、第1円柱部62から第1可動部4gの方向に伸びる第1円柱部62より小さい外形の第2円柱部63を備え、第1円柱部62の中央部には、ワイヤ9の中央部分で接触して押圧される円柱形状の接触部64が設けられている。この接触部64は、回転自由で、ワイヤ9の伸縮によりガイドパイプ1の軸方向に押圧されて移動される。この結果、第2可動部6cは、ワイヤ9の伸縮方向に垂直に押圧されて、ガイドパイプ1内に沿って移動される。
【0082】
上記の構成において、第1固定電極11aと第2固定電極12aに通電されると、ワイヤ9が加熱され収縮される。これにより、第2可動部6cの接触部64がオリフィス2方向に押圧されて、可動弁体3h全体がオリフィス2方向に移動され、図8(b)に示すように、封止部5がオリフィス2と接触した時点で移動が止まる。ここで、ワイヤ9がさらに収縮して、封止部5でオリフィス2を圧接すると、弾性係数が大きいバイアスコイル8が先に収縮された後、オリフィス2からの逆負荷が可動弁体3hに掛かり、これにより、ワイヤ9に過負荷が掛かる。しかし、可動弁体3hは、コイルバネ7を含み弾性特性を持つので、前記と同様に、ワイヤ9への過負荷を低減することができ、ワイヤ9を保護することができる。
【0083】
このように、ワイヤ9の収縮方向の力を、これと垂直な可動弁体3hの移動方向に変換することにより、逆テコの原理により形状記憶合金のワイヤ9の少しの収縮で可動弁体3hを大きく変動させるストロークを得ることができる。このため、可動弁体3hの必要ストロークに対し、形状記憶合金のワイヤ9の長さを短くできる。また、ワイヤ9の両端が接続される電極を可動しない第1固定電極11a及び第2固定電極12aとしているので、これら電極に接続される通電用のリード線15a、15bと各固定電極11a、12aとの接続の信頼性を向上することができる。
【0084】
次に、上記第8の実施形態に係る小型バルブについて、図9を参照して説明する。本実施形態の小型バルブ10の構成は、基本的には前記第7の実施形態と同等であり、可動弁体3hの端部における第2可動部6cとワイヤ9とに接触する接触部64が、樹脂66を被覆した金属体65(金属)で構成されている点で異なる。なお、第1固定電極11a及び第2固定電極12aは、樹脂接着剤又は溶接等でガイドパイプ1の鍔部1dに固定され、それら固定電極11a、12aには、ワイヤ9の両端がそれぞれ固定されている。
【0085】
図9において、接触部64は、回転自由な円柱形状の金属体65からなり、その表面は熱伝導率の低い樹脂66で被覆されている。また、樹脂66は、耐熱性と耐摩耗性とが良好であって、潤滑性に富むものが望ましい。具体的には、PTFE樹脂があげられる。可動弁体3hの端部である第2可動部6cの第1円柱部62には、その中央部に接触部64の半径と略同径を成す半円形の断面を持つ溝62aがワイヤ9と略直交する方向に配設されている。また、接触部64は、その円柱側面の約半分が溝62a内に内接され、他の半分の側面でワイヤ9の中央部分と接触して押圧されて配設されている。このワイヤ9の伸縮により、接触部64はガイドパイプ1の軸方向に押圧されて、これにより第2可動部6cは、ワイヤ9の伸縮方向に垂直に押圧されて、ガイドパイプ1内に沿って移動される。
【0086】
このとき、接触部64は第2可動部6cとワイヤ9の双方に接触した状態で移動するため、ワイヤ9の通電により発熱された熱は、ワイヤ9から接触部64と第2可動部6cを経てコイルバネ7を介してガイドパイプ1に熱伝導され熱放散される。しかしながら、このワイヤ9の熱放散は、通電に対する形状記憶合金の収縮効率を低下させるために望ましくない。
【0087】
本実施形態の接触部64では、接触部64を金属体65の表面を樹脂66で被覆して構成したことにより、樹脂被覆による断熱効果が得られるので、これによりワイヤ9の熱の接触部64への熱伝導を低減でき、通電によるワイヤ9の発熱の熱放散を抑制することができる。従って、通電に対するワイヤ9の収縮効率が良くなり、可動弁体3hの可動応答速度を高めることができ、小型バルブ10の弁開閉の通電応答を良くすることができる。また、接触部64は、形状記憶合金のワイヤ9の収縮による強い押圧を受けるが、その本体を金属体65としたことにより、接触部64の強度を硬く強固にできるので、ワイヤ9からの押圧を直接的に可動弁体3hに伝達することができ、押圧の伝達効率が良くなる。また、接触部64用の部材全体を樹脂部材で形成することも可能であるが、耐熱性と耐摩耗性とが良好で、潤滑性に富む樹脂部材は高価であるので、本変形例のように接触部64の本体を金属で形成したことにより、接触部64を安価に製作することができる。
【0088】
このように本実施形態の小型バルブ10によれば、接触部64を樹脂66で被覆された金属体65で構成したことにより、簡単な構成でワイヤ9の熱収縮効率を向上し、通電による可動弁体3hの可動応答速度を高め、かつ接触部64を安価に形成できる。
【0089】
次に、上記第9の実施形態に係る小型バルブについて、図10を参照して説明する。本実施形態の小型バルブ10の構成は、基本的には前記第7の実施形態と同等であり、第1電極11aおよび第2電極12aの表面に樹脂11c、12cを被覆した点で異なる。
【0090】
図10において、第1固定電極11a及び第2固定電極12aは、ガイドパイプ1の鍔部1d上で円対称状に配置されて固定されると共に、両電極11a、12aによって形状記憶合金のワイヤ9を保持している。これらの第1固定電極11aと第2固定電極12aは、矩形の直方体からなる金属体11b、12bと、それら金属体11b、12bの表面の少なくとも鍔部1dとの接触面を含む表面を被覆する樹脂11c、12cとから成る。また、このように樹脂被覆された第1固定電極11a及び第2固定電極12aは、樹脂接着剤等により鍔部1dに固定される。
【0091】
この構成において、ワイヤ9は、その両端が第1固定電極11aと第2固定電極12aに固定され、各第1、第2の固定電極11a、12aがガイドパイプ1の鍔部1dに固定されているため、ワイヤ9の通電により発熱された熱は、ワイヤ9から各固定電極11a、12aを経てガイドパイプ1に熱伝導され熱放散される。
【0092】
しかしながら、本実施形態の接触部64では、第1固定電極11aと第2固定電極12aの表面を樹脂で被覆したことによる樹脂の断熱効果により、各固定電極11a、12aと鍔部1d間における熱伝導を低減することができ、ワイヤ9の熱がガイドパイプ1から熱放散することを抑制することができる。従って、通電に対するワイヤ9の収縮効率を向上できるので、可動弁体3hの可動応答速度を高めることができ、小型バルブ10の弁開閉の通電応答を良くすることができる。
【0093】
このように本実施形態の小型バルブ10によれば、第1固定電極11aと第2固定電極12aを樹脂11c、12cで被覆したことにより、簡単な構成で各固定電極11a、12aからの放熱を抑制することできるので、ワイヤ9の通電による収縮効率を向上し、通電による可動弁体3hの可動応答速度を高めることができる。また、その結果、小型バルブ10の弁開閉の通電応答を良くすることができる。
【0094】
次に、上記第8の実施形態に係る小型バルブの変形例について、図11を参照して説明する。本変形例の小型バルブ10の構成は、基本的には前記8の実施形態と同等であり、第1固定電極11a及び第2固定電極12aと、これら各固定電極11a、12aとによって保持される形状記憶合金のワイヤ9とを覆うカバー16を鍔部1d上に設けた点で異なる。
【0095】
このカバー16は、熱伝導性の低い樹脂部材を用いた矩形の空洞の筐体からなり、第1固定電極11a、第2固定電極12a及びワイヤ9を覆ってこれらを鍔部1d上で略密閉する形で鍔部1dに樹脂接着材等で取り付けられている。これにより、第1固定電極11aと第2固定電極12a及びワイヤ9は、外部空気と遮断される。この遮断により、通電により発熱したワイヤ9と、このワイヤ9からの熱伝導で加熱された第1固定電極11a及び第2固定電極12aとの熱は、それらの空気中へ熱放散が抑制される。従って、通電によるワイヤ9の発熱の空気中への熱放散が抑えられ、通電に対するワイヤ9の収縮効率が良くなり、可動弁体3hの可動応答速度をさらに高めることができる。
【0096】
次に、上記第8の実施形態に係る小型バルブの他の変形例について、図12(a)、(b)を参照して説明する。本変形例の小型バルブ10の構成は、基本的には前記第8の実施形態と同等であり、ガイドパイプ1の鍔部1d上で円対称状に配置されて溶接又は樹脂接着剤等により固定された第1固定電極11a及び第2固定電極12aにおいて、それら固定電極11a、12aに接続されたワイヤ9を引き出す各ワイヤの引出口11d、12dの表面から電極内部に略逆三角形のバリ取り孔11e、12eを彫り込んて開口周辺をバリ取りしたものである。
【0097】
図12(a)、(b)において、各固定電極11a、12aは、長方形の金属体11b、12bから成り、ワイヤ9の両端は、金属体11b、12b内に溶接等で固定されている。この各固定電極11a、12aの金属体11b、12bからワイヤ9を引き出す引出口11d、12dは、その表面にバリ取り孔11e、12eが形成されている。このバリ取り孔11e、12eを設けたことにより、引出口11d、12dでの金属体11b、12bとワイヤ9の接触を減らすことができる。また、金属体11b、12bは、その引出口11d、12dをワイヤ9の引き出す方向に合わせるように鍔面と傾斜を持って配設されている。これにより、ワイヤ9の引っ張り方向と、金属体11b、12bの引出口11d、12dの向きが略同じ方向となるので、ワイヤ9を金属体11b、12bにさらに接触し難くできる。
【0098】
このように、バリ取り孔11e、12eを設けたことにより、ワイヤ9の収縮による引出口11d、12dにおけるワイヤ9の位置変動に伴うワイヤ9との引出口11b、12bとの接触摩擦を軽減することができる。これにより、ワイヤ9の固定電極11a、12aとの摩擦による断線を防止することができ、信頼性を高めることができる。
【0099】
上述した各種実施形態及びそれらの変形例に係る小型バルブ10によれば、オリフィス2を内蔵するガイドパイプ1内に、ガイドパイプ1に内接してオリフィス2を封止する封止部5を有する可動自在な可動弁体3を設け、この可動弁体3に過負荷低減用のコイルバネ7を配設し、コイルバネ7の弾性係数k2をバイアスコイル8の弾性係数k1より小さくしたことにより、形状記憶合金のワイヤ9の収縮によるオリフィス2の閉弁時に、ワイヤ9の過剰収縮によるオリフィス2から過負荷を可動弁体3のコイルバネ7の弾性変形により吸収することができる。この可動弁体3の過負荷低減弾性体としてのクッション効果により、通電加熱時のバルブ閉弁における形状記憶合金への過負荷を低減することができる。従って、バルブ閉弁時の形状記憶合金への過負荷による記憶形状の変形を防止することができるので、過負荷の繰り返しによる形状記憶合金の形状記憶の再現性を経時劣化させることなく、形状記憶合金の耐久性を向上させ、小型バルブの信頼性を高めることができる。
【0100】
また、可動弁体の一部又は全部を弾性体材料で形成することにより、可動弁体を過負荷低減弾性体を兼ねて一体化形成することができ、コイルバネが不要となり、部品点数を低減することができる。また、バイアスコイルやコイルバネにより弾性体を全てバネ体で形成することにより、弾性係数のスペックが明確となり、バルブ制御設計の精度を高めることができる。また、バネ体を、ガイドパイプの外部に配設することにより、形状記憶合金のワイヤをバネ体を通さずに接続でき、小型バルブの製造を容易にすることができる。
【0101】
さらに、ワイヤの中央部で可動弁体の端部を押圧し、ワイヤの収縮方向を可動弁体の移動方向と直交させることにより、形状記憶合金のワイヤの少しの収縮で大きな可動弁体のストローク変動を得ることができる。このため、可動弁体の必要なストロークに対し、形状記憶合金のワイヤの長さを短くできる。また、端部や固定電極を樹脂被覆することにより、ワイヤからの放熱を抑制し、形状記憶合金によるバルブの開閉弁の通電応答感度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る小型バルブの断面図。
【図2】(a)、(b)は上記バルブのそれぞれバルブ開弁時及び閉弁時の断面図、(c)はコイルバネとバイアスコイルの収縮特性図。
【図3】(a)は本発明の第2の実施形態に係る小型バルブの断面図、(b)、(c)は同バルブの閉弁時及び過負荷閉弁時の断面図。
【図4】(a)は本発明の第3の実施形態に係る小型バルブの断面図、(b)、(c)は同バルブの閉弁時及び過負荷閉弁時の断面図。
【図5】(a)は本発明の第4の実施形態に係る小型バルブの断面図、(b)、(c)はそれぞれ同バルブの異なる変形例を示す断面図。
【図6】(a)は本発明の第5の実施形態に係る小型バルブの断面図、(b)は同バルブの閉弁時の断面図。
【図7】(a)は本発明の第6の実施形態に係る小型バルブの断面図、(b)は同バルブの閉弁時の断面図。
【図8】(a)は本発明の第7の実施形態に係る小型バルブの断面図、(b)は同バルブの閉弁時の断面図。
【図9】本発明の第8の実施形態に係る小型バルブの断面図。
【図10】本発明の第9の実施形態に係る小型バルブの断面図。
【図11】上記第8の実施形態の変形例に係る小型バルブの断面図。
【図12】(a)は上記第8の実施形態の他の変形例に係る小型バルブの断面図、(b)は(a)のA部の拡大図。
【符号の説明】
【0103】
1 ガイドパイプ(固定構造物)
2 オリフィス
3、3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、3h 可動弁体(可動構造体)
5 封止部(封止体)
7、7a、7b コイルバネ(過負荷低減弾性体、バネ体)
9 ワイヤ(形状記憶合金)
10 小型バルブ
11 固定電極部(第1電極)
12 可動電極部(第2電極)
11c、12c 樹脂
64 接触部
65 金属体(金属)
66、 樹脂
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒形状でオリフィスを有する固定構造物と、
前記固定構造物に内接して可動自在に前記オリフィスを封止する封止体を有する可動自在な可動構造体と、
通電用の電極となる第1電極及び第2電極と、
前記第1電極と第2電極とによって保持される形状記憶合金のワイヤとを備え、
前記第1電極と第2電極とに通電し、前記ワイヤを加熱して形状記憶合金を変形させることにより、前記可動構造体を可動させて前記オリフィスを封止する小型バルブであって、
前記封止体を含む可動構造体は、その長さが弾性的に変形可能に構成され、かつ、該可動構造体の弾性変形により、前記形状記憶合金の加熱時の応力負荷が低減されるように構成されていることを特徴とする小型バルブ。
【請求項2】
前記可動構造体の一部又は全部が弾性体材料からなることを特徴とする請求項1に記載の小型バルブ。
【請求項3】
前記可動構造体がバネ体を具備してなることを特徴とする請求項1に記載の小型バルブ。
【請求項4】
前記バネ体は、前記固定構造体に外接して配設されていることを特徴とする請求項3に記載の小型バルブ。
【請求項5】
前記第2電極の一端が前記固定構造物に接続されるとともに、他端がワイヤに接続され、その両端の間で前記可動構造体に接触し、該電極が撓むことにより前記可動構造体を移動させることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の小型バルブ。
【請求項6】
前記第1電極は、前記固定構造物の固定された固定電極であり、前記第2電極は、前記可動構造体に接続された可動電極であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の小型バルブ。
【請求項7】
前記第1電極は、前記固定構造物の所定部位に固定された固定電極であり、前記第2電極は、前記固定構造体の前記所定部位とは別の部位に固定された固定電極であり、前記ワイヤの中央部で前記可動構造体の端部を押圧し、前記ワイヤの伸縮方向が前記可動構造体の移動方向と直交することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の小型バルブ。
【請求項8】
前記端部は、前記可動構造体とワイヤとに接触する接触部を有し、
前記接触部は、樹脂を被覆した金属で構成されていることを特徴とする請求項7に記載の小型バルブ。
【請求項9】
前記第1電極および第2電極の表面に樹脂を被覆してなることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の小型バルブ。
【請求項1】
筒形状でオリフィスを有する固定構造物と、
前記固定構造物に内接して可動自在に前記オリフィスを封止する封止体を有する可動自在な可動構造体と、
通電用の電極となる第1電極及び第2電極と、
前記第1電極と第2電極とによって保持される形状記憶合金のワイヤとを備え、
前記第1電極と第2電極とに通電し、前記ワイヤを加熱して形状記憶合金を変形させることにより、前記可動構造体を可動させて前記オリフィスを封止する小型バルブであって、
前記封止体を含む可動構造体は、その長さが弾性的に変形可能に構成され、かつ、該可動構造体の弾性変形により、前記形状記憶合金の加熱時の応力負荷が低減されるように構成されていることを特徴とする小型バルブ。
【請求項2】
前記可動構造体の一部又は全部が弾性体材料からなることを特徴とする請求項1に記載の小型バルブ。
【請求項3】
前記可動構造体がバネ体を具備してなることを特徴とする請求項1に記載の小型バルブ。
【請求項4】
前記バネ体は、前記固定構造体に外接して配設されていることを特徴とする請求項3に記載の小型バルブ。
【請求項5】
前記第2電極の一端が前記固定構造物に接続されるとともに、他端がワイヤに接続され、その両端の間で前記可動構造体に接触し、該電極が撓むことにより前記可動構造体を移動させることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の小型バルブ。
【請求項6】
前記第1電極は、前記固定構造物の固定された固定電極であり、前記第2電極は、前記可動構造体に接続された可動電極であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の小型バルブ。
【請求項7】
前記第1電極は、前記固定構造物の所定部位に固定された固定電極であり、前記第2電極は、前記固定構造体の前記所定部位とは別の部位に固定された固定電極であり、前記ワイヤの中央部で前記可動構造体の端部を押圧し、前記ワイヤの伸縮方向が前記可動構造体の移動方向と直交することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の小型バルブ。
【請求項8】
前記端部は、前記可動構造体とワイヤとに接触する接触部を有し、
前記接触部は、樹脂を被覆した金属で構成されていることを特徴とする請求項7に記載の小型バルブ。
【請求項9】
前記第1電極および第2電極の表面に樹脂を被覆してなることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の小型バルブ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−57089(P2007−57089A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−120351(P2006−120351)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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