説明

小型・卓上型液体現像装置

【課題】 従来の電子写真プロセスによる液体現像装置は、全て大型・高価格であり個人使用可能な小型・卓上型装置は存在していない。これは現像部で発生する余分な液体現像剤の処理機構が複雑・大型になることが主因である。
【解決手段】 液体現像剤を光感光体潜像面に送出する送出ダクト、感光体表面に付着した不要な液体現像剤を空気ダクトより発生する空気圧により吸引ダクト内に押し戻し、現像タンクに還流させることを可能とした積層ダクト型現像ヘッドにより、現像機構の大幅な小型化を可能とした。また現像装置全体の小型化に必要な低圧空気流で感光体潜像面に付着した液体現像剤を剥離させる材料物性条件を実験的に求め、本発明による小型・卓上型液体現像装置実用化の可能性を明らかにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来大型画像装置にのみに使用されていた液体現像方法を個人・SOHOの使用に適した小型・卓上型液体現像装置の実現を図る技術開発に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体現像剤に比して現像粒子サイズが約一桁小さい液体現像方式は、粉体現像方式より高画質のハードコピー出力に適した電子写真プロセスであるが、これまで装置の小型化が実現されず、一般に普及されていない。
【0003】
従来の液体現像装置が小型化を困難にしている最大の原因は、これまで一般に使用されている液体現像剤のキャリアー溶液が石油系あるいは油脂系であるため、光感光体表面との付着性が高く、剰余の現像剤を光感光体表面から除去することが困難で、この除去機構が複雑大型になることによる。実例として最も一般的に普及している現像ローラー型では、先ず剰余液体現像剤を吸引する吸引機構、次いでさらに残存している現像剤を拭き取る拭き取り機構が必要となり、これら吸引・拭き取り機構が複雑大型な機構となり、装置全体を大型化する主因となっている。(参照、特許文献1,2)
【特許文献1】USP5,596,396
【特許文献2】USP6,029,036
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液体現像装置の小型化実現には、先ず現像プロセスにおいて発生する、光感光体表面に残存する余剰液体現像剤の吸引・拭き取り機構を不要にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記目的を達成するために、(1)光感光体表面に残存する余剰液体現像剤全てを比較的低圧な空気圧により現像タンクに押し戻す液体現像剤循環型現像ヘッドの使用および、(2)該現像ヘッドが有効に機能するように、液体現像剤のキャリアー溶液とこれと接触する光感光体表面の各表面張力値の比率を規定し、この比率条件が実現できる各材料構成とすることにある。
【発明の効果】
【0006】
上述したように本発明により、従来装置の大型化の主因となっていた余剰現像剤吸引・拭き取り機構を不要とし得るので、大幅な小型・低価格化の液体現像装置の実現を可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実地の形態を図1から図3に基づいて説明する。
図1は光感光体に近接する現像ヘッド先端部の断面図および液体現像剤の流動経路と空気流経路を示し、図2は現像ヘッドを先端部上面から見た図、図3は本発明を応用した多色現像装置例の装置断面図。
【0008】
図1において、1は一定の速度をもって矢印方向に移動する光感光体。2は光感光体の静電潜像形成面。3は2の下面に一様な空隙をもって固定される積層ダクト5。6は液体現像剤タンク。7は6より5へ液体現像剤を送出する液体ポンプ。8は送出流路。9は余分な液体現像剤10を現像タンク6へ還流させる吸引ダクト。11は9内の液体現像剤を6に還流させる流体ポンプ。12は11の還流流路。13は2と3の空隙部に空気圧14を送出する空気ダクト。15は空気ポンプ。16は空気流経路。17は5の先端部に装着され、2に軽接触する高電気抵抗体より成る可撓性現像ブレードで、電源18より現像電圧が該ブレードに付与される。
【0009】
図2は上記積層ダクト型現像ヘッド先端部を先端側上面より見た図で、各ダクトの構成を示す。
【0010】
図3は本発明による現像装置を複数シリーズに配置し、重ね合わせ現像による多色現像装置の1例である。19は帯電器。20は光学系。21は転写ローラー。22はハードコピー媒体を示す。
【0011】
以下、上記構成の動作を説明する。積層ダクト型現像ヘッド3の送出ダクトより光感光体潜像面2に送出・接触された液体現像剤4は帯電現像微粒子が現像された後、2に付着したまま移動する。2表面に付着した余分な液体現像剤10は空気ダクト13先端部より感光体潜像面2と現像ヘッド3の隙間に空気ポンプ15より送出される空気圧14により現像ヘッド3の外部に流出することが阻止され、吸引ダクト9内に導入される。9内に流入した液体現像剤10は還流用液体ポンプ11により現像タンク内に戻され再生される。
【0012】
17は液体現像剤内の帯電現像微粒子を効率よく光感光体表面の潜像に運ぶ電界を形成する電極機能と共に、液体現像剤を2の面に一様に安定供給する接触ブレードである。安定よく一定の電界を付与するためには10Ω・cm以上の高い体積固有抵抗を持ち、かつ既に現像されている現像微粒子を除去しない低圧接触を必要とする。
【0013】
以上の原理で小型・軽量の卓上型現像装置を実現するには、空気ポンプ15はできるだけ小型・軽量であることが必要であり、従って実用化には使用空気圧の限界値を想定しておく必要がある。例えば0.2MPa程度の低圧空気で感光体潜像面2に付着した液体現像剤4を剥離させるには、2と4間の付着性が規定される材料条件、すなわち液体現像剤キャリアー溶液の表面張力(Tc)と、潜像面2を構成する固体物質の表面張力(Ts)の比、すなわちTc/Tsの値が1以上を必要とすることを実験で確認し、これらの条件を満たす構成材料が既存材料より選択し得ることを確かめた。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】 本発明の実地形態を示す積層ダクト型現像ヘッドおよびにこれに近接する光感光体一部を含む部分断面図および液体現像剤の循環流路
【図2】 同積層ダクト型現像ヘッド先端部を上面から見た図
【図3】 同本発明を応用した多色現像装置例の断面図
【符号の説明】
【0015】
2 光感光体潜像面
3 積層ダクト型現像ヘッド
4 液体現像剤
5 送出ダクト
9 吸引ダクト
13 空気ダクト
17 現像ブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電微粒子をキャリアー溶液の中に分散懸濁させた液体現像剤を画像情報に従って形成された静電潜像を有する光感光体表面に接触させ、該帯電微粒子を選択付着させた現像画像を、記録媒体に転写させてハードコピー画像を形成する液体現像装置において、液体現像剤を光感光体に配給する液体現像ヘッドは、感光体のほぼ幅方向の長さを有しかつ感光体の進行方向にほぼ直行する直線状をなし、その中央部に液体現像剤を送出する送出ダクト、この片側あるいは両側に不要な液体現像剤を吸引し現像タンクに戻す吸引ダクト、吸引ダクトの片側あるいは両側に液体現像剤の外部流出を阻止する空気圧流を発生する空気ダクトより構成された積層ダクト型現像剤ヘッドを用いることを特徴とする液体現像装置。
【請求項2】
請求項1に記載する液体現像装置に使用される液体現像剤キャリアー溶液の表面張力(Tc)を該キャリアー溶液と接触する光感光体表面の固体表面張力(Ts)で除した比(Tc/Ts)の値が1以上となる液体現像剤キャリアー溶液と該キャリアー溶液と接触する光感光体表面を用いることを特徴とする液体現像装置。
【請求項3】
請求項1に記載の積層ダクト型現像ヘッドにおいて、液体現像剤タンクより送出ダクトにより光感光体表面に送出される液体現像剤の余分量が吸引ダクトにより現像剤タンクに戻される循環流を有することを特徴とする液体現像装置。
【請求項4】
請求項1に記載の積層ダクト型現像ヘッドにおいて、送出ダクト先端部に液体現像剤を光感光体表面に一様に塗布し得る軟質、可撓性、高電圧抵抗のブレードを設け、該ブレードに現像電圧を印加することを特徴とする液体現像装置。
【請求項5】
請求項1に記載の積層ダクト型現像ヘッドを光感光体の移動方向に複数個配列し、各該現像ヘッドの前段に各帯電器および記録光学ヘッドを設けることにより重ね合わせカラー現像を可能とすることを特徴とする液体現像装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−156372(P2007−156372A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−380749(P2005−380749)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(502175181)
【出願人】(391065884)株式会社サンケン (5)
【Fターム(参考)】