説明

小型車両用スイングアーム

【課題】左右一対の角筒状のアームと、両アームの前部内側に溶接されるクロスメンバと、該クロスメンバの左右両端部に一体に連なって前方に延びる左右一対の軸受アームとを有し、アームの後端部に後輪の車軸を軸支する軸支部が設けられる小型車両用スイングアームにおいて、剛性の低下を極力抑えつつ取付け孔を形成する。
【解決手段】クロスメンバ44および両アーム43L,43Rの溶接部60L,60Rが前後方向で占める範囲内に位置する取付け孔56,57,58,59が、機能部品もしくは意匠部品を取付けることを可能として両アーム43L,43Rの少なくとも一方の上部壁50L,50Rに設けられ、両アーム43L,43Rが、両アーム43L,43Rおよびクロスメンバ44の溶接部60L,60Rよりも後方で後方に向かうにつれて肉厚を漸次小さくするように形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内側壁および外側壁、内側壁および外側壁の上端間を結ぶ上部壁ならびに内側壁および外側壁の下端間を結ぶ下部壁から成る矩形の横断面形状を有して前後方向に延びる左右一対の角筒状のアームと、それらのアームの前部内側に溶接されるクロスメンバと、該クロスメンバとともに前方に開いた略U字状をなすようにして前記クロスメンバの左右両端部に一体に連なって前方に延びる左右一対の軸受アームとを備え、前記アームの後端部に後輪の車軸を軸支する軸支部が設けられる小型車両用スイングアームに関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車のスイングアームが備える左右一対のアームの少なくとも後部を、スエージング加工によって後方に向かうにつれて上下幅および肉厚が小さくなるように形成したものが、特許文献1で知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−319966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スイングアームの上面には、ブレーキホースガイドやチェーンガイド等の機能部品が取付けられることが多く、それらの機能部品を取付けるための取付け孔がスイングアームの上面に設けられるので、特許文献1で開示されるようなスエージング加工によって肉厚減少が生じた部分では、締め代を充分に確保した取付け孔を設けることは難しく、また取付け孔の形成によってスイングアームの剛性低下を招くことになる。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、剛性の低下を極力抑えつつ、取付け孔を形成し得るようにした小型車両用スイングアームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、内側壁および外側壁、内側壁および外側壁の上端間を結ぶ上部壁ならびに内側壁および外側壁の下端間を結ぶ下部壁から成る矩形の横断面形状を有して前後方向に延びる左右一対の角筒状のアームと、それらのアームの前部内側に溶接されるクロスメンバと、該クロスメンバとともに前方に開いた略U字状をなすようにして前記クロスメンバの左右両端部に一体に連なって前方に延びる左右一対の軸受アームとを備え、前記アームの後端部に後輪の車軸を軸支する軸支部が設けられる小型車両用スイングアームにおいて、前記両アームおよび前記クロスメンバの溶接部が前後方向で占める範囲内に位置する取付け孔が、機能部品もしくは意匠部品を取付けるようにして前記両アームの少なくとも一方の上部壁に設けられ、前記アームが、前記両アームおよび前記クロスメンバの溶接部よりも後方で後方に向かうにつれて肉厚を漸次小さくするように形成されることを第1の特徴とする。
【0007】
本発明は、第1の特徴の構成に加えて、前記アームが、前記溶接部よりも後方では、その上下幅が後方に向かうにつれて漸次小さくなるように形成されることを第2の特徴とする。
【0008】
本発明は、第1または第2の特徴の構成に加えて、左右一対の前記アームの上部壁にそれぞれ設けられ、一方のアームの前記取付け孔には機能部品であるチェーンスライダが取付けられ、他方のアームの前記取付け孔には、他の機能部品であるブレーキホースガイドおよびブレーキホースクリップが取付けられることを第3の特徴とする。
【0009】
本発明は、第1〜第3の特徴の構成のいずれかに加えて、前記アームが、前記内側壁の肉厚よりも前記外側壁の肉厚を薄くして形成されることを第4の特徴とする。
【0010】
さらに本発明は、第1〜第4の特徴の構成のいずれかに加えて、前記内側壁が前記上部壁および前記下部壁に第1の曲率半径で湾曲した第1湾曲部を介して連設され、前記外側壁が前記上部壁および前記下部壁に第1の曲率半径よりも3倍以上大きな第2の曲率半径で湾曲した第2湾曲部を介して連設され、前記アームの最後部の肉厚が、該アームの上下幅を最大とした部分の肉厚の60〜80%に設定されることを第5の特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の特徴によれば、機能部品もしくは意匠部品を取付けるための取付け孔が、両アームおよびクロスメンバの溶接部が前後方向で占める範囲内に位置するようにして両アームの少なくとも一方の上部壁に設けられ、両アームおよびクロスメンバの溶接部よりも後方ではアームが後方に向かうにつれて肉厚が漸次小さくなるように形成されるので、上下幅および肉厚が小さくなることがない部分でアームの上部壁に取付け孔が設けられ、スイングアーム全体として大きな剛性の低下を招くことはない。
【0012】
また本発明の第2の特徴によれば、両アームおよびクロスメンバの溶接部の後方でアームの上下幅および肉厚が漸次小さくなることによって適度なねじり剛性をスイングアームに持たせることができ、両アームおよびクロスメンバの溶接部の後方ではアームに加工孔を形成しないようにすることでアームの剛性の低下を抑制することができる。
【0013】
本発明の第3の特徴によれば、チェーンスライダと、ブレーキホースガイドおよびブレーキホースクリップとが、左右一対のアームの上部壁に取付けられるので、取付け孔が一方のアーム側だけに設けられることがないようにして左右のバランスを良好にすることができる。
【0014】
本発明の第4の特徴によれば、アームの内側壁の肉厚よりも外側壁の肉厚を薄くすることで、スイングアームに適度な撓りを持たせることができる。
【0015】
さらに本発明の第5の特徴によれば、アームにおける内側壁が上部壁および下部壁に第1湾曲部を介して連設され、外側壁が上部壁および下部壁に第1湾曲部よりも大きな曲率半径の第2湾曲部を介して連設され、アームの最後部の肉厚が上下幅を最大とした部分の肉厚の60〜80%に設定されることで、スイングアームのねじりにしなやかさを付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】自動二輪車の左側面図である。
【図2】図1の2矢視図である。
【図3】図2の3矢視図である。
【図4】スイングアームの平面図である。
【図5】図4の5矢視図である。
【図6】図4の6−6線断面図である。
【図7】図2の7−7線拡大断面図である。
【図8】ブレーキホースガイドの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について図1〜図8を参照しながら説明する。なお以下の説明で前後、上下および左右の各方向は自動二輪車に搭乗した乗員から見た方向を言うものとする。
【0018】
先ず図1において、この小型車両は、モトクロス競技用の自動二輪車であり、その車体フレームFは、前輪WFを軸支するフロントフォーク11およびバー状の操向ハンドル12を操向可能に支承するヘッドパイプ13と、該ヘッドパイプ13から後下がりに延びる左右一対のメインフレーム14…と、それらのメインフレーム14…よりも急角度で前記ヘッドパイプから後下がりに延びるダウンフレーム15と、該ダウンフレーム15の下端部に連設されて後方に延びる左右一対のロアフレーム16…と、前記メインフレーム14…の後端部に上端部が接合されて下方に延びるとともに前記両ロアフレーム16…の後端部が下端部に連設される左右一対のピボットプレート17…と、それらのピボットプレート17…の上端部間に設けられる上部クロスメンバ18と、前記両ピボットプレート17…の下端部間に設けられる下部クロスメンバ19と、前記上部クロスメンバ18に前端部が連結されて後方に延びる左右一対のシートレール20…と、前記両ピボットプレート17…の上下方向中間部および前記両シートレール20…の後部間を連結する左右一対のリヤフレーム21…と、前記ダウンフレーム15の下部および前記両メインフレーム14…間を結ぶ略U字状の補強フレーム22とを備える。
【0019】
前記メインフレーム14…、前記ダウンフレーム15、前記ロアフレーム16…および前記ピボットプレート17…で囲まれる空間には、エンジンEが配設されるものであり、このエンジンEの前部は第1のエンジンハンガ23を介して前記ダウンフレーム15に支持され、前記エンジンEの下部は前記ロアフレーム16…に設けられた第2のエンジンハンガ24…に支持され、前記エンジンEの上部は、前記ピボットプレート17…の上部に第3のエンジンハンガ25…を介して支持される。
【0020】
前記ピボットプレート17…の下部には、後輪WRを後端部で軸支するスイングアーム26の前端部が支軸27を介して上下揺動可能に支承されており、前記下部クロスメンバ19およびスイングアーム26間にはリンク機構28が設けられ、このリンク機構28の一部を構成するリンク部材29と、前記上部クロスメンバ13との間には、緩衝器30が設けられる。
【0021】
前記エンジンEが備えるクランクケース31内には、図示しない変速機が収容されており、その変速機の出力軸32は前記クランクケース31から左側方に突出され、その出力軸32に設けられた駆動スプロケット34と、前記後輪WRの車軸33に設けられた従動スプロケット35とには無端状のチェーン36が巻き掛けられる。
【0022】
また前記エンジンEの上方で両メインフレーム14…上には燃料タンク37が設けられ、その燃料タンク37の後方に、前記シートレール20…で支持されるようにして乗車用シート38が配置される。
【0023】
前記前輪WFの回転は、該前輪WFとともに回転するブレーキディスク39と、該ブレーキディスク39の外周を跨ぐようにして前記フロントフォーク11に支持されるキャリパ40とを備える前輪用ディスクブレーキBFで制動可能であり、前輪用ディスクブレーキBFは前輪WFの右側に配置される。
【0024】
図2および図3を併せて参照して、前記後輪WRの回転は、該後輪WRとともに回転するブレーキディスク41と、該ブレーキディスク41の外周を跨ぐようにして前記スイングアーム26に支持されるキャリパ42とを備える後輪用ディスクブレーキBRで制動可能であり、後輪用ディスクブレーキBRは後輪WRの右側に配置される。
【0025】
図4および図5をさらに併せて参照して、前記スイングアーム26は、前後方向に延びる左右一対のアーム43L,43Rと、それらのアーム43L,43Rの前部間を連結するクロスメンバ44と、該クロスメンバ44とともに前方に開いた略U字状をなすようにして前記クロスメンバ44の左右両端部に一体に連なって前方に延びる左右一対の軸受アーム45L,45Rと、前記後輪WRの車軸33を軸支する軸支部として前記アーム43L,43Rの後端部に溶接によって設けられるエンドピース46L,46Rとを有し、前記クロスメンバ44の左右両側部が前記両アーム43L,43Rの前部内側に溶接され、前記両軸受アーム45L,45Rの先端部には、車体フレームFのピボットプレート17…に支軸27を介して揺動可能に支承されるピボット部47L,47Rが設けられ、これらのピボット部47L,47Rは、前記支軸27(図1および図3参照)を挿通せしめるようにして円筒状に形成される。
【0026】
図6で示すように、前記アーム43L,43Rは、上下方向に平行な内側壁48L,48Rおよび外側壁49L,49Rと、内側壁48L,48Rおよび外側壁49L,49Rの上端間を結ぶ上部壁50L,50Rと、内側壁48L,48Rおよび外側壁49L,49Rの下端間を結ぶ下部壁51L,51Rとを有して角筒状に形成される。
【0027】
しかも前記内側壁48L,48Rは、前記上部壁50L,50Rおよび前記下部壁51L,51Rに第1の曲率半径R1で湾曲した第1湾曲部52,53を介して連設され、前記外側壁49L,49Rは、前記上部壁50L,50Rおよび前記下部壁51L,51Rに第1の曲率半径R1よりも3倍以上大きな第2の曲率半径R2で湾曲した第2湾曲部54,55を介して連設されており、内側壁48L,48Rの肉厚d1よりも前記外側壁49L,49Rの肉厚d2が薄く設定される。
【0028】
ところで前記両アーム43L,43Rの前部内側と、前記クロスメンバ44の左右両端部とは溶接部60L,60Rで溶接されるものであり、前記両アーム43L,43Rのうち前記両アーム43L,43Rおよび前記クロスメンバ44の溶接部60L,60Rよりも後方の部分は、後方に向かうにつれて上下幅および肉厚を漸次小さくするように形成され、前記両アーム43L,43Rの最後部の肉厚d3は、アーム43L,43Rの上下幅を最大とした部分すなわち前記溶接部60L,60Rが前後方向で占める範囲A内に在る部分の肉厚d4の60〜80%となる。
【0029】
前記両アーム43L,43Rの少なくとも一方の上部壁、この実施の形態では両アーム43L,43Rの上部壁50L,50Rには、前記両アーム43L,43Rおよび前記クロスメンバ44の溶接部60L,60Rが前後方向で占める範囲A内に位置する取付け孔56;57,58,59が、機能部品もしくは意匠部品を取付けるようにして設けられる。而して左側のアーム43Lの上部壁50Lには、前記チェーン36を摺動させるようにして該アーム43Lの前部の上下両面に当接するように巻き付けられる機能部品としてのチェーンスライダ61を取付けるための取付け孔56が前記範囲A内に位置するようにして設けられ、前記チェーンスライダ61の後端上部に挿通されるねじ部材62が前記取付け孔56にねじ込まれる。また右側のアーム43Rの上部壁50Rには、機能部品であるブレーキホースガイド63を取付けるための取付け孔57と、機能部品であるブレーキホースクリップ64を取付けるための一対の取付け孔58,59とが、前記範囲A内で取付け孔57の後方に取付け孔58,59が位置するようにして設けられる。
【0030】
図2および図3に注目して、右側のピボットプレート17の下部には、マスタシリンダ65が取付けられるとともに該マスタシリンダ65にブレーキ操作力を入力するためのブレーキペダル66が回動操作可能に支承されており、前記マスタシリンダ65に一端部が接続されるブレーキホース67は、前記スイングアーム26における右側の軸受アーム45R、クロスメンバ44および右側のアーム43Rの上面に沿うように配索され、このブレーキホース67の他端部が、後輪用ディスクブレーキBRのキャリパ42に接続される。
【0031】
右側の軸受アーム45Rの上面には、前記ブレーキホース67を保持するブレーキホースクリップ68が取付けられるものであり、右側の軸受アーム45Rの上部壁に設けられる一対の取付け孔69,70に前記ブレーキホースクリップ68に挿通されるねじ部材71,72がねじ込まれる。また右側のアーム43Rの上部壁50Rに設けられる取付け孔58,59に前記ブレーキホースクリップ64に挿通されるねじ部材73,74がねじ込まれる。
【0032】
図7において、前記ブレーキホースガイド63は、前記クロスメンバ44および右側のアーム43Rの連設部で前記ブレーキホース67を跨ぐように配置されるものであり、右側のアーム43Rの上部壁50Rに設けられる取付け孔57、ならびに前記クロスメンバ44の上部壁44aに設けられる取付け孔75に、前記ブレーキホースガイド63に挿通されるねじ部材76,77がねじ込まれる。
【0033】
図8を併せて参照して、前記ブレーキホースガイド63は、一対である第1および第2の縦壁部分63aa,63abと、それらの縦壁部分63aa,63ab間を連結する連結部分63acとから成るガイド部63aを有して合成樹脂によって形成され、前記ガイド部63aの内側にブレーキホース67を挿通させるようにして、前記スイングアーム26における右側のアーム43Rおよび前記クロスメンバ44に締結される。
【0034】
前記ブレーキホースガイド63は、第1および第2の縦壁部分63aa,63abの少なくとも一方である特定の縦壁部分である第1の縦壁部分63aaに連設されるとともに第1の縦壁部分63aaよりも前記ガイド部63aの内側に一部が張り出すように形成される第1の取付け部63bと、車幅方向一側で右側のアーム43Rの上部壁50Rに取付けられる第1の取付け部63bから車幅方向他側に離隔した位置に配置されて前記クロスメンバ44の上部壁44aに取付けられるようにして前記ガイド部63aにおける第2の縦壁部分63abに連設される第2の取付け部63cとを一体に有する。第1の取付け部63bは、第1の縦壁部分63aaに直角に連設され、第2の取付け部63cは、第2の縦壁部分63abに直角に連設される。
【0035】
第1の取付け部63bには、取付け孔57にねじ込まれるねじ部材76を挿通させる第1の締結孔79が設けられるのであるが、この第1の締結孔79の少なくとも一部が、前記ブレーキホースガイド63の前記スイングアーム26への締結方向78から見て第1の縦壁部分63aaの外側の端部よりも内側に配置される。すなわち第1の縦壁部分63aaの外側の端部を通って前記締結方向78と平行に延びる仮想直線Lよりも内側に第1の締結孔79が配置されるものであり、特に、第1の締結孔79の中心軸線Cが、前記締結方向78から見て第1の縦壁部分63aaの外側の端部よりも内側に配置されることが望ましい。
【0036】
また第1の締結孔79の中心軸線Cの延長線上で前記ガイド部63aには、前記ねじ部材76が貫通し得るようにした開口部80が設けられており、この実施の形態では、前記開口部80が、前記ガイド部63aの内外および上方に開放するようにガイド部63aの一部を切欠くようにして形成されているが、第1の締結孔79と同軸の孔であってもよい。
【0037】
また第1の取付け部63bには、第1の締結孔79に挿通されるねじ部材76の拡径頭部76aが前記ガイド部63aの内側に突出することを避けるために、第1の締結孔79に同軸に連なる座ぐり部81が前記拡径頭部76aを収容可能として設けられる。
【0038】
第2の取付け部63cには、取付け孔75にねじ込まれるねじ部材77を挿通させる第2の締結孔82と、そのねじ部材77の拡径頭部77aの一部を収容する座ぐり部83とが設けられる。
【0039】
次にこの実施の形態の作用について説明すると、スイングアーム26は、前後方向に延びる左右一対の角筒状のアーム43L,43Rと、それらのアーム43L,43Rの前部内側に溶接されるクロスメンバ44と、該クロスメンバ44とともに前方に開いた略U字状をなすようにしてクロスメンバ44の左右両端部に一体に連なって前方に延びる左右一対の軸受アーム45L,45Rとを備えており、両アーム43L,43Rおよびクロスメンバ44の溶接部60L,60Rが前後方向で占める範囲A内に位置する取付け孔56,57,58,59が、機能部品もしくは意匠部品を取付けるようにして両アーム43L,43Rの少なくとも一方の上部壁50L,50Rに設けられ、両アーム43L,43Rが、両アーム43L,43Rおよびクロスメンバ44の溶接部60L,60Rよりも後方で後方に向かうにつれて上下幅および肉厚を漸次小さくするように形成されるので、上下幅および肉厚が小さくなることがない部分でアーム43L,43Rの上部壁50L,50Rに取付け孔56〜59が設けられることになり、スイングアーム26全体として大きな剛性の低下を招くことはなく、また両アーム43L,43Rおよびクロスメンバ44の溶接部60L,60Rの後方でアーム43L,43Rの上下幅および肉厚が漸次小さくなることによって適度なねじり剛性をスイングアーム26に持たせることができ、両アーム43L,43Rおよびクロスメンバ44の溶接部60L,60Rの後方ではアーム43L,43Rに加工孔を形成しないようにすることによってアーム43L,43Rの剛性の低下を抑制することができる。
【0040】
また前記取付け孔56〜59が、左右一対のアーム43L,43Rの上部壁50L,50Rにそれぞれ設けられ、左側のアーム43Lの取付け孔56にはチェーンスライダ61が取付けられ、右側のアーム43Rの取付け孔57,58,59には、他の機能部品であるブレーキホースガイド63およびブレーキホースクリップ64が取付けられるので、取付け孔が一方のアーム側だけに設けられることがないようにして左右のバランスを良好にすることができる。
【0041】
ところで左右一対の前記アーム43L,43Rは、上下方向に平行な内側壁48L,48Rおよび外側壁49L,49R、内側壁48L,48Rおよび外側壁49L,49Rの上端間を結ぶ上部壁50L,50Rならびに内側壁48L,48Rおよび外側壁49L,49Rの下端間を結ぶ下部壁51L,51Rから成る矩形の横断面形状を有する矩形の筒状に形成されており、そのアーム43L,43Rが、内側壁48L,48Rの肉厚d1よりも外側壁49L,49Rの肉厚d2を薄くして形成されるので、スイングアーム26に適度な撓りを持たせることができる。
【0042】
さらに内側壁48L,48Rが上部壁50L,50Rおよび下部壁51L,51Rに第1の曲率半径R1で湾曲した第1湾曲部52,53を介して連設され、外側壁49L,49Rが上部壁50L,50Rおよび下部壁51L,51Rに第1の曲率半径R1よりも3倍以上大きな第2の曲率半径R2で湾曲した第2湾曲部54,55を介して連設され、アーム43L,43Rの最後部の肉厚d3が、該アーム43L,43Rの上下幅を最大とした部分の肉厚d4の60〜80%に設定されるので、スイングアーム26のねじりにしなやかさを付与することができる。
【0043】
また内側にブレーキホース67を挿通させるガイド部63aを有するブレーキホースガイド63がスイングアーム26に締結されるのであるが、前記ガイド部63aは、第1および第2の縦壁部分63aa,63abと、それらの縦壁部分63aa,63ab間を連結する連結部分63acとから成るものであり、第1および第2の縦壁部分63aa,63abのうち第1の縦壁部分63aaには、第1の縦壁部分63aaよりも前記ガイド部63aの内側に一部が張り出すように形成される第1の取付け部63bが一体に連設され、ねじ部材76を挿通させるようにして第1の取付け部63bに設けられる第1の締結孔79の少なくとも一部が、締結方向78から見て第1の縦壁部分36aaの外側の端部よりも内側に配置されるので、スイングアーム26へのブレーキホースガイド63の取付けスペースが小さくてもブレーキホースガイド63を取付けることが可能となる。
【0044】
また第2の締結孔79の中心軸線Cの延長線上でガイド部63aに、ねじ部材76が貫通し得るようにした開口部80が設けられるので、第1の取付け部63bをスイングアーム26における右側のアーム43Rに当接させた状態でガイド部63a側からねじ部材76の締結操作を行うことが可能であり、ブレーキホースガイド63の取付け作業が容易となる。
【0045】
また第1の締結孔79の中心軸線Cが、締結方向78から見て第1の縦壁部分63aaの外側の端部よりも内側に配置されるので、スイングアーム26へのブレーキホースガイド63の取付けスペースがより小さくてもブレーキホースガイド63を取付けることが可能となる。
【0046】
また第1の取付け部63bに、第1の締結孔79に挿通されるねじ部材76の拡径頭部76aが前記ガイド部63aの内側に突出することを避けるために、第1の締結孔79に同軸に連なる座ぐり部81が拡径頭部76aを収容可能として設けられるので、座ぐり部81に収容される拡径頭部76aがガイド部63aの内側に突出することはなく、ガイド部63aに挿通されるブレーキホース67を前記拡径頭部76aが傷つけ難くすることができる。
【0047】
さらにブレーキホースガイド63は、車幅方向一側に配置される第1の取付け部63bに加えて、前記車幅方向他側に配置されるとともに第2の締結孔82が設けられる第2の取付け部63cを一体に有するので、ブレーキホースガイド63を取付けるためにスイングアーム26側で必要とされるスペースを小さくしながら、ブレーキホース67の支持幅を広くすることができる。
【0048】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0049】
たとえば上記実施の形態では、自動二輪車用スイングアームについて説明したが、自動二輪車や自動三輪車を含む小型車両用のスイングアームに関連して本発明を広く実施することができる。
【符号の説明】
【0050】
26・・・スイングアーム
33・・・車軸
43L,43R・・・アーム
44・・・クロスメンバ
45L,45R・・・軸受アーム
46L,46R・・・軸支部であるエンドピース
48L,48R・・・内側壁
49L,49R・・・外側壁
50L,50R・・・上部壁
51L,51R・・・下部壁
52,53・・・第1湾曲部
54,55・・・第2湾曲部
56,57,58,59・・・取付け孔
60L,60R・・・溶接部
61・・・チェーンスライダ
63・・・ブレーキホースガイド
64・・・ブレーキホースクリップ
d1・・・内側壁の肉厚
d2・・・外側壁の肉厚
WR・・・後輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側壁(48L,48R)および外側壁(49L,49R)、内側壁(48L,48R)および外側壁(49L,49R)の上端間を結ぶ上部壁(50L,50R)ならびに内側壁(48L,48R)および外側壁(49L,49R)の下端間を結ぶ下部壁(51L,51R)から成る矩形の横断面形状を有して前後方向に延びる左右一対の角筒状のアーム(43L,43R)と、それらのアーム(43L,43R)の前部内側に溶接されるクロスメンバ(44)と、該クロスメンバ(44)とともに前方に開いた略U字状をなすようにして前記クロスメンバ(44)の左右両端部に一体に連なって前方に延びる左右一対の軸受アーム(45L,45R)とを備え、前記アーム(43L,43R)の後端部に後輪(WR)の車軸(33)を軸支する軸支部(46L,46R)が設けられる小型車両用スイングアームにおいて、前記両アーム(43L,43R)および前記クロスメンバ(44)の溶接部(60L,60R)が前後方向で占める範囲内に位置する取付け孔(56,57,58,59)が、機能部品もしくは意匠部品を取付けるようにして前記両アーム(43L,43R)の少なくとも一方の前記上部壁(50L,50R)に設けられ、前記両アーム(43L,43R)が、前記両アーム(43L,43R)および前記クロスメンバ(44)の溶接部(60L,60R)よりも後方で後方に向かうにつれて肉厚を漸次小さくするように形成されることを特徴とする小型車両用スイングアーム。
【請求項2】
前記アーム(43L,43R)が、前記溶接部(60L,60R)よりも後方では、その上下幅が後方に向かうにつれて漸次小さくなるように形成されることを特徴とする請求項1記載の小型車両用スイングアーム。
【請求項3】
前記取付け孔(56〜59)が、左右一対の前記アーム(43L,43R)の前記上部壁(50L,50R)にそれぞれ設けられ、一方のアーム(43L)の前記取付け孔(56)には機能部品であるチェーンスライダ(61)が取付けられ、他方のアーム(43R)の前記取付け孔(57,58,59)には、他の機能部品であるブレーキホースガイド(63)およびブレーキホースクリップ(64)が取付けられることを特徴とする請求項1または2記載の小型車両用スイングアーム。
【請求項4】
前記アーム(43L,43R)が、前記内側壁(48L,48R)の肉厚(d1)よりも前記外側壁(49L,49R)の肉厚(d2)を薄くして形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の小型車両用スイングアーム。
【請求項5】
前記内側壁(48L,48R)が前記上部壁(50L,50R)および前記下部壁(51L,51R)に第1の曲率半径で湾曲した第1湾曲部(52,53)を介して連設され、前記外側壁(49L,49R)が前記上部壁(50L,50R)および前記下部壁(51L,51R)に第1の曲率半径よりも3倍以上大きな第2の曲率半径で湾曲した第2湾曲部(54,55)を介して連設され、前記アーム(43L,43R)の最後部の肉厚が、該アーム(43L,43R)の上下幅を最大とした部分の肉厚の60〜80%に設定されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の小型車両用スイングアーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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