説明

小型電子機器用防水ガスケット

【課題】小型電子機器の外殻ケースに装着される防水ガスケット1において、ガスケット保持溝内での倒れを生じにくくすると共に、コーナー部1Bでの圧縮反力の増大を防止する。
【解決手段】ストレート部1Aとコーナー部1Bを周方向交互に有し、メインシール部11と、ガスケット保持溝の底面に密接される着座シール部12が形成され、ストレート部1Aには、メインシール部11と着座シール部12との間で幅方向へ張り出してガスケット保持溝の溝肩の内側面に近接される肩部13が形成され、コーナー部1Bには、メインシール部11と着座シール部12との間が肩部13より相対的に幅方向へ後退した後退部14が形成されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モバイル機器やデジタルカメラなど、小型電子機器の外殻ケースに装着される防水ガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機などモバイル機器の外殻ケースは、その分割部の合わせ面間に、図6に示されるような防水ガスケット100が介装され、これによって防水が図られている。この種の防水ガスケット100はゴム状弾性材料(ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料)からなるものであって、外殻ケースの分割部の合わせ面形状に対応して、ストレート部101aとコーナー部101bを周方向交互に有する、たとえば角を丸めた長方形状に延びるエンドレス形状に形成されている。
【0003】
そしてこの種の防水ガスケット100は図7に示されるように、山形のメインシール部101とその反対側の複数の着座シール部102を有し、外殻ケースを構成する一方のケース部材(例えばケース本体)201にその外周に沿って形成されたガスケット保持溝201a内に保持され、外殻ケースの組立状態において、メインシール部101が他方のケース部材(例えばフロントパネル)202に密接されると共に、着座シール部102が、ガスケット保持溝201aの底面に密接状態に着座されることにより、外部のダストや水などに対する密封機能を発揮するものである。
【0004】
また、外殻ケース(ケース部材201とケース部材202)の組立過程などにおいて、防水ガスケット100がガスケット保持溝201a内で倒れたりすると密封性が損なわれ、僅かな水圧でも外部からの水の侵入を生じてしまうことから、従来、防水ガスケット100には、メインシール部101と着座シール部102との間の両側面部に、倒れを防止するための肩部103を全周連続して張り出し形成することが知られている(下記の特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−249139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記従来の防水ガスケット100によれば、図6に示される周方向複数個所に存在するコーナー部101bで圧縮に対する反力が大きくなる問題が指摘されている。しかも近年は、モバイル機器の小型化がますます進んでいるため、その外殻ケースも薄肉化による強度低下が避けられない状況にあり、防水ガスケット100の圧縮反力がそのコーナー部101bで部分的に大きい場合、それに起因して外殻ケース(ケース部材201及びケース部材202)に変形を生じやすくなる問題があった。
【0007】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、小型電子機器の外殻ケースに装着される防水ガスケットにおいて、ガスケット保持溝内での防水ガスケットの倒れを生じにくくすると共に、コーナー部での圧縮反力の部分的な増大を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、本発明に係る小型電子機器用防水ガスケットは、小型電子機器の外殻ケースを構成する第一及び第二ケース部材のうち一方に周設されたガスケット保持溝に保持されるものであって、前記第一及び第二ケース部材の外周形状に対応したストレート部とコーナー部を周方向交互に有し、前記第一及び第二ケース部材のうち他方に密接されるメインシール部と、前記ガスケット保持溝の底面に密接される着座シール部が形成され、前記ストレート部には、前記メインシール部と着座シール部との間で幅方向へ張り出して前記ガスケット保持溝の溝肩の内側面に近接される肩部が形成され、前記コーナー部には、前記メインシール部と着座シール部との間が前記肩部より相対的に幅方向へ後退した後退部が形成されたものである。
【0009】
上記構成によれば、小型電子機器の外殻ケースの組立過程などにおいて、ガスケット保持溝に収容した防水ガスケットに倒れる方向の外力が作用しても、この防水ガスケットは、そのストレート部においてメインシール部と着座シール部との間に張り出し形成された肩部が、ガスケット保持溝の溝肩の内側面に接触することにより支持され、防水ガスケットのコーナー部は大きく曲がっていることによって倒れにくいものとなっていることから、ガスケット保持溝内での防水ガスケットの倒れが抑制され、メインシール部の所要のシール面圧が確保される。
【0010】
また、一般的にこの種のガスケットは圧縮を受けた時の反力がストレート部よりもコーナー部で大きくなるが、上記構成によれば、前記コーナー部ではメインシール部と着座シール部との間がストレート部における肩部より相対的に幅方向へ後退した後退部となっているため、その分、ガスケット保持溝内での充填率が低くなり、圧縮に対する反力が抑制される。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る小型電子機器用防水ガスケットによれば、ストレート部に設けた肩部によって、ガスケット保持溝内での防水ガスケットの倒れが生じにくくなり、しかもコーナー部での圧縮反力の増大を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る小型電子機器用防水ガスケットをその圧縮方向から見た平面図である。
【図2】本発明に係る小型電子機器用防水ガスケットにおける周方向複数個所の断面形状を示す断面斜視図平面図である。
【図3】本発明に係る小型電子機器用防水ガスケットをストレート部で切断して示す装着状態の部分断面図である。
【図4】本発明に係る小型電子機器用防水ガスケットをコーナー部で切断して示す装着状態の部分断面図である。
【図5】図3の断面形状としたストレート部と図4の断面形状としたコーナー部を圧縮したときの反力をFEM解析した結果を示す線図である。
【図6】従来の小型電子機器用防水ガスケットをその圧縮方向から見た平面図である。
【図7】従来の小型電子機器用防水ガスケットを示す装着状態の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る小型電子機器用防水ガスケットを実施するための好ましい形態について、図面を参照しながら説明する。図1及び図2に示される防水ガスケット1は、図3及び図4に示される第一ケース部材2と第二ケース部材3との間に適当に圧縮された状態で介装されることにより、防水機能及び外部ダストの侵入防止機能を奏するものである。
【0014】
詳しくは、第一ケース部材2と第二ケース部材3は、外周部が互いに衝合した状態に組み立てられることによって、携帯電話機などの下部ユニットや上部ユニットの外殻ケースを構成するものである。第一ケース部材2における第二ケース部材3との対向面には、その外周に沿って、角を丸めた長方形状に延びるガスケット保持溝21が形成されている。したがって、このガスケット保持溝21に保持される防水ガスケット1もこれに対応して、図1に示されるように、ストレート部1Aと湾曲したコーナー部1Bを周方向交互に有する、角を丸めた長方形状のエンドレス形状に延びるものである。
【0015】
防水ガスケット1は、ゴム状弾性材料(ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料)からなるものであって、ガスケット保持溝21に遊嵌可能な幅で形成され、図3及び図4に示されるように、ガスケット保持溝21の外側へ突出して第二ケース部材3に密接される断面山形のメインシール部11と、その反対側を向き、ガスケット保持溝21の底面21aに着座される内外周一対の断面円弧形の互いに平行な着座シール部12を有する。
【0016】
防水ガスケット1における各ストレート部1Aには、図2に示されるように、メインシール部11と着座シール部12との間で幅方向両側へ張り出した内外周一対の肩部13が形成されている。この肩部13は、図3に示されるように、ガスケット保持溝21における溝肩21bと近似した高さに形成され、外側面13aが着座シール部12の外側面と略同一平面をなしている。したがって防水ガスケット1をガスケット保持溝21に保持した状態では、肩部13は溝肩21bの内側面に対して僅かな隙間をもって近接されるようになっている。
【0017】
一方、防水ガスケット1における各コーナー部1Bには、図2及び図4に示されるように、メインシール部11と着座シール部12との間で上述の肩部13より幅方向に対して相対的に後退した内外周一対の後退部14が形成されている。またこの後退部14は、メインシール部11の幅方向両側の斜面からの延長面として形成され、ストレート部1Aにおける肩部13と後退部14との境界はなだらかに形成され、言い換えれば肩部13の端部13bはコーナー部1B側へ向けて隆起高さが漸次低くなっている。このため図2に示されるように、ストレート部1Aとコーナー部1Bとの間で、防水ガスケット1の断面形状が連続的に変化している。
【0018】
なお、防水ガスケット1の断面積は、第一ケース部材2におけるガスケット保持溝21の底面21aと第二ケース部材3との間で圧縮されたときの、前記ガスケット保持溝21に対する防水ガスケット1の充填率が100%を越えず、両側面がガスケット保持溝21の両内側面に可及的に接近した状態となる大きさとすることが好ましい。これは、圧縮によってガスケット保持溝21内の防水ガスケット1の充填率が100%に達すると、その時点で圧縮反力が著しく大きくなってしまうからである。
【0019】
上述の構成を備える小型電子機器用防水ガスケット1によれば、携帯電話機などの外殻ケースの組立過程などにおいて、ガスケット保持溝21内の防水ガスケット1にストレート部1Aを倒す方向の外力が加わった場合、このストレート部1Aは、内外周に形成された肩部13,13のうち一方が、ガスケット保持溝21における一方の溝肩21bの内側面に接触することによって支持される。このため、ストレート部1Aの倒れが抑制され、メインシール部11の所要のシール面圧が確保される。
【0020】
また、ガスケット保持溝21内の防水ガスケット1にコーナー部1Bを倒す方向の外力が加わった場合、このコーナー部1Bは、円弧状に湾曲しながら90度にカーブしているため、もともと倒れにくいものとなっていることから、コーナー部1Bの倒れも小さく抑制される。
【0021】
このため、防水ガスケット1の倒れに起因するメインシール部11のシール面圧の低下が抑制され、所要の防水性を確保することができる。また、防水ガスケット1の幅はガスケット保持溝21の幅より僅かに小さく、すなわち防水ガスケット1はガスケット保持溝21に遊嵌されるものであるため、装着の容易性も確保される。
【0022】
また、この種の防水ガスケット1は、全周にわたって断面が同形同大である場合、圧縮を受けた時の反力がストレート部1Aよりもコーナー部1Bで大きくなることが知られている。しかしながら、上記構成によれば、コーナー部1Bではメインシール部11と着座シール部12との間がストレート部1Aにおける肩部13より相対的に幅方向へ後退した後退部14となっているため、その分ボリュームが小さくなり、言い換えればガスケット保持溝21内での充填率が低くなり、圧縮反力が抑制される。
【0023】
したがって、防水ガスケット1の圧縮反力がそのコーナー部1Bで部分的に大きくなることに起因して外殻ケース(第一ケース部材2及び第二ケース部材3)に変形を生じてしまうのを防止することができる。
【0024】
なお図5は、図3の断面形状としたストレート部と図4の断面形状としたコーナー部を圧縮したときの反力を、FEM解析した結果を示すものである。この結果から、本発明によればコーナー部の圧縮反力を有効に抑制できることが確認された。
【符号の説明】
【0025】
1 防水ガスケット
1A ストレート部
1B コーナー部
11 メインシール部
12 着座シール部
13 肩部
14 後退部
2 第一ケース部材
21 ガスケット保持溝
21a 底面
21b 溝肩
3 第二ケース部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小型電子機器の外殻ケースを構成する第一及び第二ケース部材のうち一方に周設されたガスケット保持溝に保持されるものであって、前記第一及び第二ケース部材の外周形状に対応したストレート部とコーナー部を周方向交互に有し、前記第一及び第二ケース部材のうち他方に密接されるメインシール部と、前記ガスケット保持溝の底面に密接される着座シール部が形成され、前記ストレート部には、前記メインシール部と着座シール部との間で幅方向へ張り出して前記ガスケット保持溝の溝肩の内側面に近接される肩部が形成され、前記コーナー部には、前記メインシール部と着座シール部との間が前記肩部より相対的に幅方向へ後退した後退部が形成されたことを特徴とする小型電子機器用防水ガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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