説明

小豆納豆の製造方法

【課題】納豆菌による十分な発酵を可能とすることにより、1回の発酵工程で十分な糸引き状態を実現し、さらには、味や匂いの劣化のない小豆納豆を製造することが可能な小豆納豆の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の小豆納豆の製造方法は、小豆を主成分とする小豆納豆の製造方法であって、小豆を煮たり蒸煮したりして煮小豆を製造する煮小豆製造工程と、前記煮小豆に焙煎大豆を添加した「大豆成分入り煮小豆」を納豆菌で発酵させる煮小豆発酵工程とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小豆納豆の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
納豆は、納豆菌を用いて大豆を発酵させることにより得られる食品である。納豆は、従来からご飯に付け合せる副食品として広く食されており、特に近年、栄養価の高い健康自然食品として注目されている。このような納豆において、大豆の代わりに小豆を原料とした小豆納豆が知られている(例えば、特許文献1又は2参照。)。
【0003】
小豆納豆は、小豆が大豆と比べて炭水化物の含有率が高く蛋白質の含有率が低いため、大豆から得られる納豆(大豆納豆)とは違った風味を有する一方、納豆菌による発酵が起こり難く、従来の納豆(大豆納豆)の製造方法をそのまま用いたのでは、小豆納豆を製造することができないという問題がある。
【0004】
このような問題に対し、特許文献2には、小豆納豆を製造することを可能とする「大豆以外の豆等を原料とする納豆の製造方法」が記載されている。
すなわち、特許文献2に記載の「大豆以外の豆等を原料とする納豆の製造方法」は、(1)大豆以外の豆等(例えば小豆)を水につけた後煮る工程と、(2)水で冷やす工程と、(3)蒸し器で蒸す工程と、(4)蒸したものをむろに入れ納豆菌を導入し醸す工程と、(5)醸した後、新しい納豆菌をさらに加え、蒸気を通して所定の温度と所定の湿度に保持する工程とをこの順序で含む製造方法である。
【0005】
特許文献2に記載の「大豆以外の豆等を原料とする納豆の製造方法」によれば、従来の納豆(大豆納豆)の製造方法と比較して、(5)の再度納豆菌を加えて醸成する工程が付加されているため、大豆以外の豆等を原料とする納豆(例えば小豆納豆)を製造することが可能となるとされている。
【0006】
【特許文献1】特開昭64−39959号公報
【特許文献2】特開昭57−186450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の「大豆以外の豆等を原料とする納豆の製造方法」においては、納豆菌による発酵工程を2回も行っているが、それでもなお発酵が不十分であるため、十分な糸引き状態が得られないという問題がある。また、特許文献2に記載の「大豆以外の豆等を原料とする納豆の製造方法」においては、発酵が不十分であるのを補うために納豆菌による発酵工程を2回行うこととしているが、その過程で小豆納豆の味や匂いが劣化してしまうという問題がある。このように味や匂いが劣化した小豆納豆は食用とするのに満足のいくものではない。
【0008】
そこで、本発明は、そのような問題を解決するためになされたもので、納豆菌による十分な発酵を可能とすることにより、1回の発酵工程で十分な糸引き状態を実現し、さらには、味や匂いの劣化のない小豆納豆を製造することが可能な小豆納豆の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の発明者らは、上記目的を達成するため鋭意努力を重ねた結果、煮小豆に焙煎大豆を添加した「大豆成分入り煮小豆」を納豆菌で発酵させることとすれば、小豆を主原料とした場合においても納豆菌による十分な発酵が可能となり、その結果、1回の発酵工程で十分な糸引き状態を実現し、さらには、味や匂いの劣化のない小豆納豆を製造することが可能となることを見出した。
【0010】
なお、煮小豆に焙煎大豆を添加した「大豆成分入り煮小豆」を納豆菌で発酵させた場合に、小豆を主原料とした場合においても納豆菌による十分な発酵が可能となる理由については定かではないが、大豆は元来小豆よりも納豆菌による発酵が起こり易く、さらには焙煎大豆を添加することによって「大豆成分入り煮小豆」と空気との接触面積が増え、このことが好気性菌である納豆菌による発酵を促進するためであると推測される。
【0011】
本発明の小豆納豆の製造方法は、小豆を主原料とする小豆納豆の製造方法であって、小豆を煮たり蒸煮したりして煮小豆を製造する煮小豆製造工程と、前記煮小豆に焙煎大豆を添加した「大豆成分入り煮小豆」を納豆菌で発酵させる煮小豆発酵工程を含むことを特徴とする。
【0012】
このため、本発明の小豆納豆の製造方法によれば、煮小豆に焙煎大豆を添加した「大豆成分入り煮小豆」を納豆菌で発酵させることとしているため、上記したように、小豆を主原料とした場合においても納豆菌による十分な発酵が可能となる。その結果、1回の発酵工程で十分な糸引き状態を実現し、さらには、味や匂いの劣化のない小豆納豆を製造することが可能となる。
【0013】
また、本発明の小豆納豆の製造方法によれば、言うまでもないことではあるが、大豆ではなく「大豆成分入り煮小豆」を原料としているため、通常の納豆(大豆納豆)とは違った風味の納豆(小豆納豆)を製造することが可能となる。
【0014】
さらにまた、小豆は、ビタミンB群(ビタミンB2,B6,B12,B27)、カルシウム、リン、鉄、サポニンの含有率が高いため、本発明の小豆納豆の製造方法によって製造される小豆納豆は、かっけを予防する作用、せきを鎮めたり痰をとったりする作用、便秘を予防したり解消したりする作用、二日酔いを予防したり解消したりする作用を有するとともに、ダイエット効果を有する。
【0015】
なお、本発明の小豆納豆の製造方法においては、焙煎大豆として、果粒状又は粉状の焙煎大豆(例えばきなこ)を好ましく用いることができる。「大豆成分入り煮小豆」と空気との接触面積がさらに増えるからである。
【0016】
なお、本発明の小豆納豆の製造方法において、「小豆」とは、小豆類の豆のことをいい、大納言、中納言、小納言、円葉、早生大粒、白小豆、緑豆、毛蔓小豆(ブラックマッペ)などを含む概念で用いている。
【0017】
(2)上記(1)に記載の小豆納豆の製造方法においては、前記「大豆成分入り煮小豆」として、前記煮小豆に、煮たり蒸煮したりした煮大豆をさらに添加したものを用いることが好ましい。
【0018】
このような方法とすることにより、煮小豆に比較的多量の大豆成分を添加することが可能となり、納豆菌によるさらに十分な発酵が可能となる。
【0019】
なお、本発明の小豆納豆の製造方法においては、煮たり蒸煮したりした煮大豆は、煮大豆のまま添加してもよいし、煮大豆を細かく潰した粒状のもの又はペースト状のものを添加してもよいし、煮大豆を細かく潰した粒状のもの又はペースト状のものに水を加えてクリーム状としたものを添加してもよい。
【0020】
(3)上記(1)に記載の小豆納豆の製造方法においては、前記焙煎大豆として、焙煎大豆を水に浸漬したものを用いることが好ましい。
【0021】
本発明の小豆納豆の製造方法においては、煮小豆に焙煎大豆のみを添加して発酵させると、煮小豆発酵工程において水分が若干不足気味になる場合がある。このような場合であっても、上記のような方法とすることにより、煮小豆発酵工程において水分が不足気味になることがなくなる。
【0022】
(4)上記(1)に記載の小豆納豆の製造方法においては、前記煮小豆製造工程においては、小豆とともに大豆を煮たり蒸煮したりして煮大豆入り煮小豆を製造することが好ましい。
【0023】
このような方法とすることによっても、上記(2)の場合と同様に、煮小豆に比較的多量の大豆成分を添加することが可能となり、納豆菌によるさらに十分な発酵が可能となる。
【0024】
(5)本発明の小豆納豆の製造方法は、小豆を主原料とする小豆納豆の製造方法であって、小豆を煮たり蒸煮したりして煮小豆を製造する煮小豆製造工程と、前記煮小豆に大豆納豆を添加した「大豆成分入り煮小豆」を発酵させる煮小豆発酵工程を含むことを特徴とする。
【0025】
上記(1)に記載したように、煮小豆に焙煎大豆を添加した「大豆成分入り煮小豆」を納豆菌で発酵させることとした場合には、小豆を主原料とした場合においても納豆菌による十分な発酵が可能となるのであるが、このように、煮小豆に大豆納豆を添加した「大豆成分入り煮小豆」を納豆菌で発酵させることとした場合にも、小豆を主原料とした場合においても納豆菌による十分な発酵が可能となる。その結果、1回の発酵工程で十分な糸引き状態を実現し、さらには、味や匂いの劣化のない小豆納豆を製造することが可能な小豆納豆の製造方法となる。
【0026】
また、本発明の小豆納豆の製造方法によれば、上記(1)に記載の小豆納豆の製造方法の場合と同様に、大豆ではなく「大豆成分入り煮小豆」を原料としているため、通常の納豆(大豆納豆)とは違った風味の納豆(小豆納豆)を製造することが可能となる。
【0027】
さらにまた、小豆は、ビタミンB群(ビタミンB2,B6,B12,B27)、カルシウム、リン、鉄、サポニンの含有率が高いため、本発明の小豆納豆の製造方法によって製造される小豆納豆は、上記(1)に記載の小豆納豆の製造方法の場合と同様に、かっけを予防する作用、せきを鎮めたり痰をとったりする作用、便秘を予防したり解消したりする作用、二日酔いを予防したり解消したりする作用を有するとともに、ダイエット効果を有する。
【0028】
なお、上記のように、煮小豆に大豆納豆を添加した「大豆成分入り煮小豆」を納豆菌で発酵させることとした場合に、小豆を主原料とした場合においても納豆菌による十分な発酵が可能となる理由については定かではないが、大豆は元来小豆よりも納豆菌による発酵が起こり易く、さらには大豆納豆を添加することによって「大豆成分入り煮小豆」と空気との接触面積が増え、このことが好気性菌である納豆菌による発酵を促進するためであると推測される。
【0029】
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の小豆納豆の製造方法においては、前記「大豆成分入り煮小豆」に含まれる小豆を乾燥小豆に換算した重量をM1とし、前記「大豆成分入り煮小豆」に含まれる大豆を乾燥大豆に換算した重量をM2としたとき、大豆含有率(M2/(M1+M2))が1%〜40%の範囲内にあることが好ましい。
【0030】
ここで、上記の大豆含有率を1%以上としたのは、納豆菌による十分な発酵を可能とするためである。この観点からは、大豆含有率を2%以上とすることがより好ましく、大豆含有率を3%以上とすることがさらに好ましい。
一方、上記の大豆含有率を40%以下としたのは、小豆納豆の風味を極力損ねないようにするためである。この観点からは、大豆含有率を20%以下とすることがより好ましく、大豆含有率を10%以下とすることがさらに好ましい。
【0031】
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の小豆納豆の製造方法においては、前記煮小豆製造工程においては、カルシウムを含有する活性水に所定時間浸漬した小豆を煮たり蒸煮したりして煮小豆を製造することが好ましい。
【0032】
本発明の発明者らの調査によれば、納豆菌は、所定濃度のカルシウムが存在しない場合には異常発酵を起こし、製造される小豆納豆の味や匂いが劣化する場合があることが明らかとなった。従って、上記のような方法とすることにより、所定濃度のカルシウムが存在する条件で納豆菌による正常な発酵が可能となり、常に安定して、味や匂いの劣化のない小豆納豆を製造することが可能となる。
【0033】
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の小豆納豆の製造方法においては、前記煮小豆製造工程においては、カルシウムを含有する活性水を用いて小豆を煮たり蒸煮したりして煮小豆を製造することが好ましい。
【0034】
このような方法とすることによっても、所定濃度のカルシウムが存在する条件で納豆菌による正常な発酵が可能となり、常に安定して、味や匂いの劣化のない小豆納豆を製造することが可能となる。
【0035】
(9)上記(3)に記載の小豆納豆の製造方法においては、前記煮たり蒸煮したりした大豆として、カルシウムを含有する活性水を用いて煮たり蒸煮したりした大豆を用いることが好ましい。
【0036】
このような方法とすることによっても、所定濃度のカルシウムが存在する条件で納豆菌による正常な発酵が可能となり、常に安定して、味や匂いの劣化のない小豆納豆を製造することが可能となる。
【0037】
(10)上記(7)〜(9)のいずれかに記載の小豆納豆の製造方法においては、前記カルシウムを含有する活性水として、pHが1〜5の温泉水、鉱泉水その他の天然水に貝殻、珊瑚、卵殻又は石灰を添加してpHが5〜9になったもの又はそれを希釈したものをを用いることが好ましい。
【0038】
このような方法とすることにより、所定濃度のカルシウムを含有する活性水を比較的安価な製造コストで安定して製造することが可能となる。
【0039】
本発明の小豆納豆の製造方法においては、天然水は、二酸化炭素、硫酸イオン、二価鉄イオン、アルミニウムイオン、塩化物イオンその他の成分を含有していてもよい。
【0040】
(11)上記(1)〜(10)のいずれかに記載の小豆納豆の製造方法においては、前記小豆は、毛蔓小豆又は緑豆であることが好ましい。
【0041】
このような方法とすることにより、比較的小粒で食べ易い小豆納豆を比較的安価な製造コストで製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明の小豆納豆の製造方法について、実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0043】
[実施形態1]
実施形態1に係る小豆納豆の製造方法は、活性水準備工程と、浸漬工程と、煮小豆製造工程と、焙煎大豆添加工程と、納豆菌接種工程と、煮小豆発酵工程とをこの順序で含む。以下、実施形態1に係る小豆納豆の製造方法を工程順に説明する。
【0044】
1.活性水準備工程
強酸性の温泉水(pH約2)に貝殻を添加してpHが約7になったものを製造し、これをさらに4000倍に希釈して「カルシウムを含有する活性水」を製造する。
2.浸漬工程
次に、小豆(毛蔓小豆)及び大豆を「カルシウムを含有する活性水」にそれぞれ12時間〜24時間浸漬する。
【0045】
3.煮小豆製造工程
次に、「カルシウムを含有する活性水」に浸漬した小豆を、「カルシウムを含有する活性水」を用いて煮て煮小豆を製造する。また、「カルシウムを含有する活性水」に浸漬した大豆を、「カルシウムを含有する活性水」を用いて蒸煮して煮大豆を製造する。
【0046】
4.焙煎大豆添加工程
次に、煮小豆に、煮大豆をミキサーですり潰してペースト状にしたものとともに、焙煎大豆としてのきなこを添加して「大豆成分入り煮小豆」を製造する。
【0047】
このとき、「大豆成分入り煮小豆」に含まれる小豆を乾燥小豆に換算した重量をM1とし、「大豆成分入り煮小豆」に含まれる大豆を乾燥大豆に換算した重量をM2としたとき、大豆含有率(M2/(M1+M2))を5%とする。5%の内訳は、煮大豆に含まれる大豆による大豆含有率を2.5%とし、きなこに含まれる大豆による大豆含有率を2.5%とする。
【0048】
5.納豆菌接種工程
次に、「大豆成分入り煮小豆」に納豆菌を振り掛ける。
【0049】
6.煮小豆発酵工程
そして、「大豆成分入り煮小豆」を40℃の発酵槽に入れ、24時間静置して発酵させる。
【0050】
以上の工程を実施することにより、十分な糸引き状態を実現し、さらには、味や匂いの劣化のない小豆納豆を製造することができた。
【0051】
以上のように、実施形態1に係る小豆納豆の製造方法によれば、焙煎大豆(きなこ)を添加した「大豆成分入り煮小豆」を納豆菌で発酵させることとしているため、上記したように、小豆を主原料とした場合においても納豆菌による十分な発酵が可能となる。その結果、1回の発酵工程で十分な糸引き状態を実現し、さらには、味や匂いの劣化のない小豆納豆を製造することが可能となる。
【0052】
また、実施形態1に係る小豆納豆の製造方法によれば、言うまでもないことではあるが、大豆ではなく「大豆成分入り煮小豆」を原料としているため、通常の納豆(大豆納豆)とは違った風味(ほのかな甘み)の納豆(小豆納豆)を製造することが可能となる。
【0053】
また、小豆は、ビタミンB群(ビタミンB2,B6,B12,B27)、カルシウム、リン、鉄、サポニンの含有率が高いため、実施形態1に係る小豆納豆の製造方法によって製造される小豆納豆は、かっけを予防する作用、せきを鎮めたり痰をとったりする作用、便秘を予防したり解消したりする作用、二日酔いを予防したり解消したりする作用を有するとともに、ダイエット効果を有する。
【0054】
また、実施形態1に係る小豆納豆の製造方法によれば、大豆成分入り煮小豆として、煮小豆に、焙煎大豆に加えて、煮たり蒸煮したりした煮大豆をさらに添加したものを用いているため、煮小豆に比較的多量の大豆成分を添加することが可能となり、納豆菌によるさらに十分な発酵が可能となる。
【0055】
また、実施形態1に係る小豆納豆の製造方法によれば、上記した大豆含有率が1〜40%の範囲内にあるため、納豆菌による十分な発酵が可能であるとともに、小豆納豆の風味を損ねることもない。
【0056】
また、実施形態1に係る小豆納豆の製造方法によれば、煮小豆製造工程においては、カルシウムを含有する活性水に所定時間浸漬した小豆を煮たり蒸煮したりして煮小豆を製造することとしているため、所定濃度のカルシウムが存在する条件で納豆菌による正常な発酵が可能となり、常に安定して、味や匂いの劣化のない小豆納豆を製造することが可能となる。
【0057】
また、実施形態1に係る小豆納豆の製造方法によれば、煮小豆製造工程においては、カルシウムを含有する活性水を用いて小豆を煮たり蒸煮したりして煮小豆を製造することとしているため、所定濃度のカルシウムが存在する条件で納豆菌による正常な発酵が可能となり、常に安定して、味や匂いの劣化のない小豆納豆を製造することが可能となる。
【0058】
また、実施形態1に係る小豆納豆の製造方法によれば、煮たり蒸煮したりした煮大豆として、カルシウムを含有する活性水を用いて煮たり蒸煮したりした大豆を用いることとしているため、所定濃度のカルシウムが存在する条件で納豆菌による正常な発酵が可能となり、常に安定して、味や匂いの劣化のない小豆納豆を製造することが可能となる。
【0059】
また、実施形態1に係る小豆納豆の製造方法においては、カルシウムを含有する活性水として、強酸性の温泉水(pH約2)に貝殻を添加してpHが7になったものを4000倍に希釈したものを用いているため、所定濃度のカルシウムを含有する活性水を比較的安価な製造コストで安定して製造することが可能となる。
【0060】
また、実施形態1に係る小豆納豆の製造方法によれば、小豆として、毛蔓小豆を用いているため、比較的小粒で食べ易い小豆納豆を比較的安価な製造コストで製造することが可能となる。
【0061】
[実施形態2]
実施形態2に係る小豆納豆の製造方法は、活性水準備工程と、浸漬工程と、煮小豆製造工程と、焙煎大豆添加工程と、納豆菌接種工程と、煮小豆発酵工程とをこの順序で含む。実施形態2に係る小豆納豆の製造方法は、実施形態1に係る小豆納豆の製造方法とよく似た工程を有するが、焙煎大豆以外の大豆成分を添加する時期が実施形態1に係る小豆納豆の製造方法の場合とは異なる。
【0062】
すなわち、実施形態2に係る小豆納豆の製造方法においては、煮小豆製造工程中に、焙煎大豆以外の大豆成分を添加することとしている。以下、実施形態2に係る小豆納豆の製造方法を工程順に説明する。
【0063】
1.活性水準備工程
強酸性の温泉水(pH約2)に貝殻を添加してpHが約7になったものを製造し、これをさらに4000倍に希釈して「カルシウムを含有する活性水」を製造する。
2.浸漬工程
次に、小豆(毛蔓小豆)及び大豆を「カルシウムを含有する活性水」にそれぞれ12時間〜24時間浸漬する。
【0064】
3.煮小豆製造工程
次に、小豆及び大豆を「カルシウムを含有する活性水」を用いて一緒に煮て煮小豆(煮大豆入り煮小豆)を製造する。
【0065】
4.焙煎大豆添加工程
次に、煮小豆(煮大豆入り煮小豆)に焙煎大豆としてのきなこを添加して「大豆成分入り煮小豆」を製造する。
【0066】
このとき、「大豆成分入り煮小豆」に含まれる小豆を乾燥小豆に換算した重量をM1とし、「大豆成分入り煮小豆」に含まれる大豆を乾燥大豆に換算した重量をM2としたとき、大豆含有率(M2/(M1+M2))を5%とする。5%の内訳は、煮大豆に含まれる大豆による大豆含有率を2.5%とし、きなこに含まれる大豆による大豆含有率を2.5%とする。
【0067】
5.納豆菌接種工程
次に、「大豆成分入り煮小豆」に納豆菌を振り掛ける。
【0068】
6.煮小豆発酵工程
そして、「大豆成分入り煮小豆」を40℃の発酵槽に入れ、24時間静置して発酵させる。
【0069】
以上の工程を実施することにより、十分な糸引き状態を実現し、さらには、味や匂いの劣化のない小豆納豆を製造することができた。
【0070】
実施形態2に係る小豆納豆の製造方法は、上記したように、焙煎大豆以外の大豆成分を添加する時期が実施形態1に係る小豆納豆の製造方法の場合とは異なるが、実施形態1に係る小豆納豆の製造方法の場合と同様に、焙煎大豆(きなこ)を添加した「大豆成分入り煮小豆」を納豆菌で発酵させることとしているため、小豆を主原料とした場合においても納豆菌による十分な発酵が可能となる。その結果、1回の発酵工程で十分な糸引き状態を実現し、さらには、味や匂いの劣化のない小豆納豆を製造することが可能となる。
【0071】
また、実施形態2に係る小豆納豆の製造方法によれば、言うまでもないことではあるが、大豆ではなく「大豆成分入り煮小豆」を原料としているため、通常の納豆(大豆納豆)とは違った風味(ほのかな甘み)の納豆(小豆納豆)を製造することが可能となる。
【0072】
また、小豆は、ビタミンB群(ビタミンB2,B6,B12,B27)、カルシウム、リン、鉄、サポニンの含有率が高いため、実施形態2に係る小豆納豆の製造方法によって製造される小豆納豆は、かっけを予防する作用、せきを鎮めたり痰をとったりする作用、便秘を予防したり解消したりする作用、二日酔いを予防したり解消したりする作用を有するとともに、ダイエット効果を有する。
【0073】
また、実施形態2に係る小豆納豆の製造方法によれば、煮小豆製造工程においては、小豆とともに大豆を煮たり蒸煮したりして煮大豆入り煮小豆を製造することとしているため、煮小豆に比較的多量の大豆成分を添加することが可能となり、納豆菌によるさらに十分な発酵が可能となる。
【0074】
なお、実施形態2に係る小豆納豆の製造方法は、焙煎大豆以外の大豆成分を添加する時期以外の点においては、実施形態1に係る小豆納豆の製造方法と同様の工程を有するため、実施形態1に係る小豆納豆の製造方法が有する効果のうち該当する効果を同様に有する。
【0075】
以上、本発明の小豆納豆の製造方法を上記の各実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0076】
(1)上記の各実施形態においては、小豆として毛蔓小豆を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、小豆として緑豆を用いることもできるし、大納言、中納言、小納言、円葉、早生大粒、白小豆その他の小豆を用いることもできる。
【0077】
(2)上記の各実施形態においては、焙煎大豆としてきなこを用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、きなこ以外の焙煎大豆を用いることもできる。この場合、焙煎大豆は、果粒状又は粉状のものを用いることが好ましい。
【0078】
(3)上記の実施形態1においては、「大豆成分入り煮小豆」として、煮小豆に、大豆成分として、焙煎大豆と煮大豆とを添加したものを用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、煮小豆に、大豆成分として、焙煎大豆のみを添加したものを用いることもできる。この場合、焙煎大豆は、水に浸漬したものを用いることが好ましい。
【0079】
(4)上記の各実施形態においては、煮小豆に焙煎大豆を添加した「大豆成分入り煮小豆」を納豆菌で発酵させることとしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、煮小豆に大豆納豆を添加した「大豆成分入り煮小豆」を納豆菌で発酵させてもよい。
【0080】
(5)上記の各実施形態においては、大豆含有率(M2/(M1+M2))が5%の「大豆成分入り煮小豆」を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、大豆含有率(M2/(M1+M2))が1%〜40%の範囲内にある「大豆成分入り煮小豆」を用いることもできる。
【0081】
(6)上記の各実施形態においては、カルシウムを含有する活性水として、強酸性の温泉水(pH約2)に貝殻を添加してpHが約7になったものさらに希釈したもの用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。カルシウムを含有する活性水として、例えば、鉱泉水、地下水その他の天然水に貝殻その他のカルシウム成分を添加してpHが約7になったもの又はそれをさらに希釈したものを用いてもよいし、人工的に製造したミネラル水を用いてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小豆を主原料とする小豆納豆の製造方法であって、
小豆を煮たり蒸煮したりして煮小豆を製造する煮小豆製造工程と、
前記煮小豆に焙煎大豆を添加した「大豆成分入り煮小豆」を納豆菌で発酵させる煮小豆発酵工程とを含むことを特徴とする小豆納豆の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の小豆納豆の製造方法において、
前記「大豆成分入り煮小豆」として、前記煮小豆に前記焙煎大豆を添加するのに加えて、煮たり蒸煮したりした煮大豆をさらに添加したものを用いることを特徴とする小豆納豆の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の小豆納豆の製造方法において、
前記焙煎大豆として、焙煎大豆を水に浸漬したものを用いることを特徴とする小豆納豆の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の小豆納豆の製造方法において、
前記煮小豆製造工程においては、小豆とともに大豆を煮たり蒸煮したりして煮大豆入り煮小豆を製造し、前記「大豆成分入り煮小豆」として、前記煮大豆入り煮小豆に焙煎大豆を添加したものを用いることを特徴とする小豆納豆の製造方法。
【請求項5】
小豆を主原料とする小豆納豆の製造方法であって、
小豆を煮たり蒸煮したりして煮小豆を製造する煮小豆製造工程と、
前記煮小豆に大豆納豆を添加した「大豆成分入り煮小豆」を発酵させる煮小豆発酵工程を含むことを特徴とする小豆納豆の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の小豆納豆の製造方法において、
前記「大豆成分入り煮小豆」に含まれる小豆を乾燥小豆に換算した重量をM1とし、前記「大豆成分入り煮小豆」に含まれる大豆を乾燥大豆に換算した重量をM2としたとき、大豆含有率(M2/(M1+M2))が1%〜40%の範囲内にあることを特徴とする小豆納豆の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の小豆納豆の製造方法において、
前記煮小豆製造工程においては、カルシウムを含有する活性水に所定時間浸漬した小豆を煮たり蒸煮したりして煮小豆を製造することを特徴とする小豆納豆の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の小豆納豆の製造方法において、
前記煮小豆製造工程においては、カルシウムを含有する活性水を用いて小豆を煮たり蒸煮したりして煮小豆を製造することを特徴とする小豆納豆の製造方法。
【請求項9】
請求項2に記載の小豆納豆の製造方法において、
前記煮たり蒸煮したりした大豆として、カルシウムを含有する活性水を用いて煮たり蒸煮したりした大豆を用いることを特徴とする小豆納豆の製造方法。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれかに記載の小豆納豆の製造方法において、
前記カルシウムを含有する活性水として、pHが1〜5の温泉水、鉱泉水その他の天然水に貝殻、珊瑚、卵殻又は石灰を添加してpHが5〜9になったもの又はそれを希釈したものを用いることを特徴とする小豆納豆の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の小豆納豆の製造方法において、
前記小豆は、毛蔓小豆又は緑豆であることを特徴とする小豆納豆の製造方法。

【公開番号】特開2009−153461(P2009−153461A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336461(P2007−336461)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(508001280)
【出願人】(502094561)
【Fターム(参考)】