説明

少なくとも1つのグリオキサールモノアセタール及びグリオキシル酸を主成分とするアミノ又はフェノール樹脂、並びにその使用

本発明は、置換若しくは非置換アミン誘導体又は置換若しくは非置換フェノール誘導体、少なくとも1つのグリオキサールモノアセタール、及びグリオキシル酸の反応生成物を含むアミノ又はフェノール樹脂に関し、さらに、それらを含む組成物及びそれらの接着剤又はバインダーとしての使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのグリオキサールモノアセタールを主成分とし、グリオキシル酸を含み、ホルムアルデヒドを含まないアミノ又はフェノール樹脂と、それらを含む組成物と、さらにそれらの接着剤又はバインダーとしての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
規制、特に環境及び健康保護に関する規制の変化は、工場廃液中及び周囲の環境中へのホルムアルデヒドの放出を制限する目的で、ホルムアルデヒドを含まない樹脂の開発を引き起こした。
【0003】
尿素又はメラミンのようなアミン誘導体及びアルデヒドを主成分とするアミノ樹脂、セルロース繊維を処理するためのこれらの使用が、例えば、欧州特許第0381905号明細書及び欧州特許第0698627号明細書に記載されている。
【0004】
欧州特許第0796288号明細書には、アミン誘導体及びグリオキサールモノアセタールを主成分とする、ホルムアルデヒドを含まない樹脂(その反応生成物はポリオールと混合される)、並びにそれの不織基材用バインダーとしての使用が記載されている。
【0005】
a)メラミン、b)少なくとも1つのアルデヒド、c)グリオキシル酸から構成されている架橋剤、及びd)2つ以上のヒドロキシル基を有する少なくとも1つのポリオールの反応生成物を含み、ホルムアルデヒドを含まない樹脂組成物が、欧州特許第1652868号明細書に記載されている。この組成物は、第一の工程では、メラミンとアルデヒドを縮合させ、それから第二の工程では、前の工程で得られた生成物をグリオキシル酸及びポリオールと縮合させることにより、調製される。この特許発明の応用例では、濾紙中のバインダーとして使われる、グリオキシル酸を含まない樹脂組成物が、グリオキシル酸とポリオールの双方を含む樹脂組成物の引張強度及び破断点伸びより低い引張強度及び破断点伸びを有することが示されている。
【0006】
しかし、これらの樹脂は、ホルムアルデヒドを含む樹脂と同等の全ての機械的利点、特に引張強度の特性を備えていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、解決しようとする技術的課題は、ホルムアルデヒドを含まないが、最新の規制に従いながら、ホルムアルデヒド系樹脂(例えば、メラミン‐ホルムアルデヒド、尿素‐ホルムアルデヒド又はフェノール‐ホルムアルデヒド樹脂)と同様の多くの効果を示す樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
少なくとも1つのグリオキサールモノアセタールを主成分とするアミノ又はフェノール樹脂にグリオキシル酸をその場で加えることによって、より高い分子量を具体化し、また組成物(その引張強度特性は改良されている)を製造することが今や見つかっている。
【0009】
これらの特性は、これらの組成物の、織物及び不織物を処理するための又は農業廃棄物若しくは木材(例えば、繊維板、パーティクルボード並びに他の類似の板及び合板)から木質物を製造するための使用に、特に有利である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
したがって、本発明の一の対象は、第一の態様によれば、
置換若しくは非置換アミン誘導体又は置換若しくは非置換フェノール誘導体、
少なくとも1つのグリオキサールモノアセタール、及び
グリオキシル酸
の反応生成物を含むアミノ又はフェノール樹脂である。
【0011】
用語「グリオキシル酸」は、本願明細書ではグリオキシル酸の遊離酸の形態と水和物の形態の双方、並びにグリオキシル酸の水溶性塩(例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属、特にナトリウム、カルシウム又はマグネシウムの塩、さらにはアミン又はアンモニウムの塩)を意味すると解する。
【0012】
置換若しくは非置換アミン誘導体又は置換若しくは非置換フェノール誘導体、
少なくとも1つのグリオキサールモノアセタール、及び
グリオキシル酸
の反応生成物は、本発明の以下の態様を示す新規生成物である。
【0013】
用語「グリオキサールモノアセタール」は、式(I)の化合物を意味すると解する。
【0014】
【化1】

【0015】
式中、R及びRは同一か又は異なっていて、直鎖又は分岐鎖C‐Cアルキル基を示すか、或いは、R及びRは結合して、所望により4位及び/若しくは5位が1つ又は複数のC‐Cアルキル置換基で置換された1,3‐ジオキソラン‐2‐イル基、又は所望により4位及び/若しくは5位及び/若しくは6位が1つ又は複数のC‐Cアルキル置換基で置換された1,3‐ジオキサン‐2‐イル基を形成している。
【0016】
残りの説明では、当然のことながら、上記式(I)のグリオキサールモノアセタールは、下記式で表されるその水和物の形態で存在してもよい。
【0017】
【化2】

【0018】
用語「直鎖又は分岐鎖C‐Cアルキル基」は、特にメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基及びオクチル基を意味すると解する。
【0019】
及びRは直鎖又は分岐鎖C‐Cアルキル基を示すことが好ましく、同一の基であり、特にメチル基であることが好ましい。
【0020】
及びRがメチルを示すときには、式(I)のモノアセタールは、好ましいグリオキサールモノアセタールであって登録商標ハイリンク(HIGHLINK)DMとしてクラリアント スペシャルティー ファイン ケミカルズ社(フランス)から市販されているジメトキシエタナール(DME)である。
【0021】
尿素、エチレン尿素、1,3-ジメチル尿素、メラミン、グリコールウリル、ベンゾグアナミン又はこれらの混合物を、例えば置換又は非置換アミン誘導体として使用する。メラミン、尿素又はこれらの混合物が好ましい。
【0022】
本発明のアミノ又はフェノール樹脂は、
置換若しくは非置換アミン誘導体又は置換若しくは非置換フェノール誘導体を少なくとも1つのグリオキサールモノアセタールと反応させる工程、次に
そのようにして得られた重縮合生成物にグリオキシル酸を加える工程
を含む方法により調製してよい。
【0023】
式(I)のグリオキサールモノアセタールによって上記で定義されたアミン誘導体の重縮合生成物を以下では「少なくとも1つのグリオキサールモノアセタールを主成分とするアミノ樹脂」という。
【0024】
少なくとも1つのグリオキサールモノアセタールを主成分とする有利なアミノ樹脂は、例えば、窒素含有化合物/ジメトキシエタナール(DME)混合物(好ましくは約1/1〜1/3、特に1/1.5〜1/2.5、特に1/2の比である)を主成分とするものである。
【0025】
好ましくは、少なくとも1つのグリオキサールモノアセタールを主成分とするアミノ樹脂は、クラリアント社(フランス)から市販されているハイリンク(登録商標)の内で尿素‐DME、メラミン‐DME又はメラミン‐尿素‐DME型の樹脂から選択する。
【0026】
フェノール、レゾルシノール、タンニン、リグニン又はこれらの混合物を、例えば置換又は非置換フェノール誘導体として使用する。フェノールが好ましい。
【0027】
フェノール誘導体と、上述の式(I)のグリオキサールモノアセタールの重縮合生成物を以下に「少なくとも1つのグリオキサールモノアセタールを主成分とするフェノール樹脂」という。
【0028】
少なくとも1つのグリオキサールモノアセタールを主成分とする有利なフェノール樹脂は、例えばフェノール/ジメトキシエタナール(DME)混合物(好ましくは、約1/1〜1/3、特に1/1.5〜1/2.5、特に1/2の比である)を主成分とするものである。
【0029】
好ましくは、少なくとも1つのグリオキサールモノアセタールを主成分とするフェノール樹脂は、クラリアント スペシャルティー ファイン ケミカルズ社(フランス)から市販されているハイリンク(登録商標)の内のフェノール‐DME型の樹脂から選択される。
【0030】
また、本発明のアミノ又はフェノール樹脂は、置換又は非置換アミン誘導体又は置換又は非置換フェノール誘導体を、少なくとも1つのグリオキサールモノアセタール及びグリオキシル酸と、同時に反応させる方法により調製してよい。
【0031】
上述の代替案のどちらかによって本発明のアミノ又はフェノール樹脂の調製が終わったときに、必要に応じて、塩基を用いてpHを中性又は塩基性のpHに調整してよい。その趣旨で、好ましいpHに応じて、例えば、トリエチルアミンのような弱塩基、或いは水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムのような強塩基を使用してよい。一般常識から、当業者は望ましい調整に適した塩基を決めることができる。
【0032】
グリオキシル酸は、例えば、アミン誘導体又はフェノール誘導体に対して0.01〜3モル当量、好ましくは0.1〜1.5モル当量、特に0.3モル当量の量で加えてよい。
【0033】
好ましい態様によれば、本発明のアミノ又はフェノール樹脂及びそれらを含む組成物は、アルコール、特にC‐Cアルコール又はポリオールを全く含まない。
【0034】
本発明は、次の態様によれば、上述の通り、少なくとも1つのグリオキサールモノアセタール及びグリオキシル酸を主成分とするアミノ又はフェノール樹脂を含むバインダー組成物にも関する。
【0035】
好ましい態様によれば、本発明は、上述の通り、少なくとも1つのグリオキサールモノアセタール及びグリオキシル酸を主成分とするアミノ又はフェノール樹脂を含むバインダー組成物であって、さらに、少なくとも1つのラテックスを含む組成物に関する。
【0036】
用語「ラテックス」は、水媒体中のポリマー粒子のエマルション又は懸濁液からなる水性組成物を意味すると解する。
【0037】
ラテックスは当業者によく知られていて、一般に水媒体中での少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマーの乳化又は懸濁(共)重合によって調製される。
【0038】
これらのモノマーは、
アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸又はフマル酸のようなエチレン性不飽和モノ‐及びジ‐カルボン酸、
スチレン、α‐メチルスチレン又はビニルトルエンのような芳香族ビニル、
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n‐ブチル、アクリル酸2‐エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n‐ブチル、メタクリル酸2‐エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸エトキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル又はメタクリル酸エトキシエチルのような(メタ)アクリル酸エステルなど(例えば、(メタ)アクリル酸アルキル又はヒドロキシアルキル又はアルコキシアルキル)、
マレイン酸ブチルのようなエチレン性不飽和ジカルボン酸のエステル、
酢酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ステアリン酸ビニル又はプロピオン酸ビニルのような直鎖又は分岐鎖カルボン酸のビニルエステル、
エチレン又はプロピレンのようなモノオレフィン、
ブタジエン又はイソプレンのような共役ジエン、
アクリルアミド、メタクリルアミド及び、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸又はN‐メチロール(メタ)アクリルアミドのようなこれらの誘導体、
アクリロニトリル又はメタクリロニトリル、並びに
塩化ビニル又は塩化ビニリデン
からなる群から選択してよい。
【0039】
重合されるモノマー混合物の組成は、ガラス転移温度(T)によって決め、それ故に形成されたポリマー(「ハード」ラテックス又は「ソフト」ラテックス)を与えるのに好ましい特徴によって決める。
【0040】
当業者に知られている(共)重合法によって、特にラジカル開始剤及び界面活性剤の存在下での重合性モノマーの水性エマルションによって、これらのラテックスを得てよい。この重合は、連続法、回分法又は半連続法による重合として行ってよい。
【0041】
恐らく本発明に使用されるであろうラテックスの例としては、
クラリアント社製のMOWILITH(登録商標)DM 777のようなアクリル酸エステルコポリマー(純アクリルラテックス)、
クラリアント社製のMOWILITH(登録商標)LDM 6636のようなスチレン/アクリル酸エステルコポリマー(スチレン/アクリルラテックス)、
クラリアント社製のMOWILITH(登録商標)LDM 2417のような酢酸エステル/バーサチック酸ビニルコポリマー(バーサチック酸ビニルラテックス)、
Celanese社製のMOWILITH(登録商標)LD 167のような酢酸ビニルホモポリマー、
スチレン/ブタジエンコポリマー、及び
Celanese社製のMOWILITH(登録商標) LDM 1851のような酢酸ビニル/エチレンコポリマー
からなる群が挙げられる。
【0042】
本発明の組成物は、既知の混合法、例えば、上述の通り、少なくとも1つのグリオキサールモノアセタール及びグリオキシル酸を主成分とするアミノ又はフェノール樹脂を得てから、穏やかに攪拌しながら少なくとも1つのラテックスを加える方法によって調製してよい。
【0043】
通常、これらの成分は、最低量で存在する成分を最高量で存在する成分に加えるような添加順序に従ってミキサーに加える。
【0044】
ラテックスは、例えば、組成物の全成分の1〜99乾燥重量%、好ましくは10〜90乾燥重量%、特に15〜70乾燥重量%、特に20〜40乾燥重量%、より好ましくは25〜35乾燥重量%を示し得る。
【0045】
一般に、酸又は潜在的な酸の硬化触媒をバインダー組成物に、好ましくはそれを使う直前に添加することが望ましい。適切な触媒は、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、p‐トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、塩化アルミニウム及びヒドロキシ塩化アルミニウムのようなアルミニウム塩、塩化マグネシウム、硫酸アンモニウム、硫酸ジルコニウム、塩化亜鉛並びにこれらの混合物である。
【0046】
酢酸、グリオキシル酸、シュウ酸、クエン酸、さらにはこれらの混合物のようなモノ‐、ジ‐、トリ‐及びテトラカルボン酸を使用してもよい。
【0047】
好ましい実施形態では、本発明の組成物の架橋及び膜形成を引き起こす反応を促進するグリオキシル酸を使用する。
【0048】
この場合には、アミン又はフェノール誘導体の反応生成物(これらの誘導体のそれぞれは非置換であるか、又は少なくとも1つのグリオキサールモノアセタール及びグリオキシル酸で置換されていて、この反応生成物は、本発明のアミノ樹脂組成物又はフェノール樹脂組成物中に組み込まれている)を得た後に、グリオキシル酸を後添加で使用する。
【0049】
一般に、酸触媒は、組成物の(乾燥物を基準として)0.1〜15質量%、好ましくは1〜10質量%、より優先的には3〜7質量%の量で加える。
【0050】
また、ホルムアルデヒド系アミノ又はフェノール樹脂の用途に通常使用されていて、当業者に知られているもののような、他の添加剤を本発明の樹脂組成物に含めてよい。
【0051】
一般に、これらの添加剤は、組成物を使用する直前に、組成物に加える。したがって、この組成物は、充填剤、離型剤、染料又は顔料、安定剤、増粘剤、乳化剤、界面活性剤、補助溶剤、不凍剤、消泡剤、殺菌剤、防かび剤、殺虫剤、可塑剤、難燃剤、合体剤、タッキファイヤー、UV安定剤、粘度低下剤、香料、酸化防止剤、酸、塩基及び緩衝剤から選択される1つ又は複数の補助剤を含んでよい。
【0052】
本発明の組成物は、ホルムアルデヒドを含まず、長期的に安定であり、高い固形分を有し、加熱下の寸法安定性及び引張強度のような良好な機械的性質を有する。
【0053】
これらの性質は、本発明の樹脂又は組成物の、例えばガラス繊維、ナイロン繊維、及びポリエステル繊維、不織基材さらにはセルロース基材のような天然繊維又は合成繊維のバインダーとしての使用を可能にする。
【0054】
これらの性質は、上述の樹脂又は組成物の、ラミネート紙又は積層板及び特に化粧紙又は化粧板のシートなどの強固な基材を製造するための使用も可能にする。
【0055】
実際に、従来は、熱硬化性樹脂を用いる積層体の製造は、様々な樹脂(例えばフェノール系又はメラミン系樹脂)を紙支持体にしみ込ませ、次に乾燥させてトリミングすることによって行われていた。乾燥させてトリミングした後に、(事前にしみ込ませていた)コート紙を重ねて保管する。この積層段階は、これらのシートを重ねてホットプレスすることによって、樹脂の反応を止め、それによって最終生成物を製造することを可能にする。しみ込ませた後に、乾燥と積層の工程をまとめて行う方法もある。
【0056】
本発明の別の対象は、上述の樹脂又は組成物の、農業廃棄物及び木材(例えば、繊維板、パーティクルボード、配向性ストランドボード(OSB)、高質繊維板及び中質繊維板(MDF)、及び他の種類の類似の板及び合板)から木質物を製造するための使用である。
【0057】
本発明の別の対象は、上述の樹脂又は組成物の、材料をお互いに又は支持体に、それら全ての形態で結合させるための接着剤としての使用である。
【0058】
結合される材料は、紙、板、プラスチック及び木材を含む群から選択してよい。
【0059】
好ましくは、この材料は木材である。この材料は、化粧張りに使われる木材の薄板のような、木材の複数の平板層から作ってよい。
【0060】
接着剤は、紙のシートのような基材に塗布して、次に通常の手段で乾燥させてよい。
【実施例】
【0061】
本発明は、下記の実施例によって、非制限的に説明される。
【0062】
実施例1
メラミン/ジメトキシエタナール/グリオキシル酸(1/2.7/0.25の比)反応生成物の調製
170g(1.35mol)のメラミン(DSM)を629g(3.63mol)のジメトキシエタナール(クラリアント社製)60%水溶液に加えた。この混合物を、調整によって、必要な場合には、20%水酸化ナトリウム(約7g)しか使わずに、pHをほぼ9〜9.5に保ちながら、攪拌下において50〜55℃で2時間加熱した。
【0063】
2時間反応させた後、50g(0.34mol)のグリオキシル酸(クラリアント社製)50%水溶液を加え、混合物を攪拌下で約55〜60℃の温度で2時間加熱してから冷却し、pHを20%水酸化ナトリウム(64g)で7.5〜8に上げることにより安定化して、60%の活性体を得るために水(80g)で希釈した。
【0064】
得られた生成物は、215mPa・sのBrookfield粘度を有する、あまり粘着性ではない黄色の液体であった。
【0065】
実施例2
メラミン/ジメトキシエタナール/グリオキシル酸(1/2.1/0.3の比)反応生成物の調製
200gのメラミン(1.59mol)をジメトキシエタナール(3.35mol)の60%水溶液580gに加えた。この混合物を、調整によって、必要な場合には、20%水酸化ナトリウム(約7g)しか使わずに、pHをほぼ9〜9.5に保ちながら、攪拌下において50〜55℃で2時間加熱した。
【0066】
2時間反応させた後、グリオキシル酸(0.47mol)の50%水溶液69gを加え、混合物を攪拌下で約55〜60℃の温度で2時間加熱してから冷却し、pHを20%水酸化ナトリウム(83g)で7.5〜8に上げることにより安定化し、60%の活性体を得るために水(61g)で希釈した。
【0067】
得られた生成物は、750mPa・sのBrookfield粘度を有する、あまり粘着性ではない黄色の液体であった。
【0068】
実施例3
メラミン/ジメトキシエタナール/グリオキシル酸(1/2.1/0.3の比)反応生成物の調製
170gのメラミン(1.35mol)を、311.6gの15%グリオキシル酸ナトリウム一水和物(Sigma Aldrich社製、0.41mol)及び495gの60%ジメトキシエタナール(2.86mol)からなる水溶液に加えた。この混合物を、調整によって、必要な場合には、20%水酸化ナトリウム(約7g)しか使わずに、pHをほぼ9〜9.5に保ちながら、攪拌下において50〜55℃で2時間加熱した。
【0069】
2時間反応させた後、52%の活性体を得るために水(13g)で希釈した。得られた生成物は、あまり粘着性ではない黄色の液体であった。
【0070】
比較例1
メラミン/ジメトキシエタナール(1/2.1の比)反応生成物の調製
200gのメラミン(1.59mol)をジメトキシエタナール(3.35mol)の60%水溶液580gに加えた。この混合物を、調整によって、必要な場合には、20%水酸化ナトリウム(約7g)しか使わずに、pHをほぼ9〜9.5に保ちながら、攪拌下において50〜55℃で2時間加熱した。
【0071】
2時間反応させた後、それを55%の活性体を得るために水(213g)で希釈した。得られた生成物は、64mPa・sのBrookfield粘度を有する、あまり粘着性ではない薄黄色の液体であった。
【0072】
比較例2
メラミン/ジメトキシエタナール(1/2.4の比)反応生成物の調製
200gのメラミン(1.59mol)をジメトキシエタナール(3.81mol)の60%水溶液660gに加えた。この混合物を、調整によって、必要な場合には、20%水酸化ナトリウム(約7g)しか使わずに、pHをほぼ9〜9.5に保ちながら、攪拌下において50〜55℃で2時間加熱した。
【0073】
2時間反応させた後、60%の活性体を得るために、それを水(133g)で希釈した。得られた生成物は、110mPa・sのBrookfield粘度を有する、あまり粘着性ではない薄黄色の液体であった。
【0074】
応用例
実施例2の樹脂を比較例1及び2のメラミン/ジメトキシエタナール樹脂と比べて、またクラリアント社から市販されているPRINTOFIX(登録商標)FIXATEUR WBのエーテル化メラミン/ホルムアルデヒド液状樹脂(約8のpH、100〜200mPa・sのBrookfield粘度)と比べて評価した。
【0075】
塩化マグネシウムを触媒として使用した。
【0076】
グリオキシル酸の50%水溶液を補助触媒として、後添加で反応槽(処方2)に加えた。
【0077】
処方を表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
50%酢酸を反応槽1、3及び4に加えて、pHを反応槽2のものに合わせた。
【0080】
パジング(P=2bar、速度=2.5m/分)によってWhatman濾紙の試験片(120×15mm、60g/m)にしみ込ませ、120℃で2分間、次に150℃で2分間乾燥して架橋させ、25℃及び相対湿度65%に調整した部屋に3日間置いた。
【0081】
次に、室温でZwick引張試験機(引張速度:100mm/分)を用いて引張強度及び破断点伸びを測定した。
【0082】
破断点伸び=(Fmax×dN×1000)/(坪量(g/m)×9.81×幅(nm))
【0083】
結果を表2に示す。
【0084】
【表2】

【0085】
これらの結果から、本発明のメラミン/ジメトキシエタナール/グリオキシル酸の樹脂によって、メラミン/ジメトキシエタナール樹脂のものより大きな、さらにメラミン/ホルムアルデヒド樹脂のものより大きな、濾紙用バインダーとしての性能を得ることができると分かる。
【0086】
その調製中に含浸させたグリオキシル酸を含む樹脂については、触媒としてグリオキシル酸を後添加したものと比べて、引張強度に著しい改善も見られる。
【0087】
本発明の樹脂は、ホルムアルデヒドを用いることなく、これらの性能を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
置換若しくは非置換アミン誘導体又は置換若しくは非置換フェノール誘導体、
少なくとも1つのグリオキサールモノアセタール、及び
遊離酸の形態、水和物の形態又は水溶性塩の形態であるグリオキシル酸
の反応生成物を含むアミノ又はフェノール樹脂。
【請求項2】
前記グリオキサールモノアセタールが式(I)
【化1】

(式中、R及びRは同一か又は異なっていて、直鎖又は分岐鎖C‐Cアルキル基を示すか、或いは、R及びRは結合して、所望により4位及び/若しくは5位が1つ又は複数のC‐Cアルキル置換基で置換された1,3‐ジオキソラン‐2‐イル基、又は所望により4位及び/若しくは5位及び/若しくは6位が1つ又は複数のC‐Cアルキル置換基で置換された1,3‐ジオキサン‐2‐イル基を形成している)
の化合物であることを特徴とする請求項1に記載のアミノ又はフェノール樹脂。
【請求項3】
式(I)中、R及びRが同一か又は異なっていて、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基及びオクチル基から選択される直鎖又は分岐鎖C‐Cアルキル基を示すことを特徴とする請求項2に記載のアミノ又はフェノール樹脂。
【請求項4】
及びRが同一か又は異なっていて、直鎖又は分岐鎖C‐Cアルキル基を示すことを特徴とする請求項2又は3に記載のアミノ又はフェノール樹脂。
【請求項5】
及びRがメチル基を示すことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のアミノ又はフェノール樹脂。
【請求項6】
置換又は非置換アミン誘導体が、尿素、エチレン尿素、1,3‐ジメチル尿素、ジヒドロキシエチレン尿素、メラミン、グリコールウリル、ベンゾグアナミン及びこれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のアミノ又はフェノール樹脂。
【請求項7】
置換又は非置換フェノール誘導体が、フェノール、レゾルシノール、タンニン、リグニン及びこれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のアミノ又はフェノール樹脂。
【請求項8】
グリオキサールモノアセタールがジメトキシエタナール(DME)である請求項6又は7に記載のアミノ又はフェノール樹脂。
【請求項9】
アルコール又はポリオールを含まないことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のアミノ又はフェノール樹脂。
【請求項10】
グリオキシル酸が、アミン誘導体又はフェノール誘導体に対して0.01〜3モル当量、好ましくは0.1〜1.5モル当量の量で加えられることを特徴とする請求項9に記載のアミノ又はフェノール樹脂。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のアミノ又はフェノール樹脂を含むことを特徴とするバインダー組成物。
【請求項12】
アルコール又はポリオールを含まないことを特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
さらに、少なくとも1つのラテックスを含むことを特徴とする請求項11又は12に記載の組成物。
【請求項14】
ラテックスが、アクリル酸エステルコポリマー、スチレン/アクリル酸エステルコポリマー、酢酸エステル/バーサチック酸ビニルコポリマー、酢酸ビニルホモポリマー、スチレン/ブタジエンコポリマー及び酢酸ビニル/エチレンコポリマーから選択されることを特徴とする請求項11〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
ラテックスが、組成物の全成分の1〜99乾燥重量%、好ましくは10〜90乾燥重量%の割合で存在することを特徴とする請求項13又は14に記載の組成物。
【請求項16】
ラテックスが、組成物の全成分の20〜40乾燥重量%、好ましくは25〜35乾燥重量%の割合で存在することを特徴とする請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
さらに、塩酸、硫酸、リン酸、p‐トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、アルミニウム塩、塩化マグネシウム、硫酸アンモニウム、硫酸ジルコニウム、塩化亜鉛、酢酸、グリオキシル酸、シュウ酸及びクエン酸から選択される少なくとも1つの触媒を含むことを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
さらに、充填剤、離型剤、染料又は顔料、安定剤、増粘剤、乳化剤、界面活性剤、補助溶剤、不凍剤、消泡剤、殺菌剤、防かび剤、殺虫剤、可塑剤、難燃剤、合体剤、タッキファイヤー、UV安定剤、粘度低下剤、香料、酸化防止剤、酸、塩基及び緩衝剤から選択される1つ又は複数の補助剤を含むことを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の樹脂又は組成物の、繊維板、パーティクルボード、配向性ストランドボード又は高質及び中質繊維板を製造するための使用。
【請求項20】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の樹脂又は組成物の、ラミネート紙又は積層板を含む強固な基材を製造するための使用。
【請求項21】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の樹脂又は組成物の、材料をお互いに又は支持体に結合させる接着剤としての使用。
【請求項22】
結合させる前記材料が、紙、板、プラスチック及び木材から選択されることを特徴とする請求項21に記載の使用。
【請求項23】
請求項1〜18のいずれか1項に記載の組成物の、天然繊維又は合成繊維のバインダーとしての使用。
【請求項24】
置換若しくは非置換アミン誘導体又は置換若しくは非置換フェノール誘導体、
少なくとも1つのグリオキサールモノアセタール、及び
遊離酸の形態、水和物の形態又は水溶性塩の形態であるグリオキシル酸
の反応生成物。

【公表番号】特表2009−537685(P2009−537685A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−511486(P2009−511486)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【国際出願番号】PCT/EP2007/054846
【国際公開番号】WO2007/135108
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(508346594)クラリアント スペシャルティー ファイン ケミカルズ(フランス) (4)
【Fターム(参考)】