説明

少なくとも1つのナノポアまたはマイクロポアを有するダイヤモンドフィルムを含む伝導度センサーデバイス

イオンチャネル記録;液‐液測定、および抵抗パルス粒子カウント(resistive pulse particle counting)のためのセンサーデバイスであって;少なくとも1つのセンサー素子を有し、この素子は、ダイヤモンド薄フィルム基材、およびこの基材に含まれるナノポアまたはマイクロポアであるポアを有する。このデバイスは分析に用いることができ、例えば、このデバイスは、分析物(例:DNA)の単分子検出、センサー素子と分析物との間の相互作用の分析、ポア形成要素の検出、またはイオン移動の測定のために用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサーデバイス、およびこのデバイスを用いる方法に関する。特に、本発明は、ダイヤモンド薄フィルム基材を含むデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
化学および生化学分析の改良は、感度、信頼度、および寿命を改良する新しい材料ならびに方法に依存している。時間および空間分解能の向上することで、単分子レベルおよび非常に短い時間スケールでの生物学的イベントの分析が可能となり、動力学的、熱力学的、および化学力学的な情報を得ることができる。このような利点を得るために、特にコストおよび生産性に重点を置いて、新しい方法および物質の探求が続けられている。このことを念頭に、大量生産用の小型分析デバイスを作製するために、シリコンおよび窒化シリコンの微細加工(非特許文献1)、ならびにガラス(程度はより少ない)(非特許文献2)に対して多大な労力が傾けられてきた。
【0003】
ナノポアおよびマイクロポアシステムは、単分子の検出(非特許文献3)、DNAの検出およびシークエンシング(非特許文献4)、粒子カウント(非特許文献5)、モデル薬物送達システム、液‐液分析、および新しい医薬品とヒトの体内に見られるタンパク質イオンチャネルとの相互作用のスクリーニング(非特許文献6)、を含む多くの種々の分析用途に用いられる。このような用途の大部分は、開口ポア、ポアの開口部に形成される液‐液界面、または二重層修飾ポアにわたる電気(もしくは電気化学)シグナルの測定(多くの場合減少(moderation))に依存している。大部分の場合では、ポアのサイズおよび形状、ならびにポアが形成される基材の電気的性質が、化学および生化学分析のためのデバイスの感度を制御する非常に重要な因子である。基材物質の化学的安定性によって、種々の環境下におけるデバイスの有用性が決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許 第2007017437号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Dekker, C. Solid State Nanopores, Nature Nanotechnology, 2007, 2, 209-215
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【非特許文献3】Deamer, D. W., Branton, D. Characterisation of Nucleic Acids by Nanopore Analysis, Acc. Chem. Res. 2002, 35, 817-825
【非特許文献4】Kasiananowicz, J. J., Branton, D., Deamer, D. W. Characterisation of Individual Polynucleotide Molecules Using a Membrane Channel, Proc. Natl. Acad. Sci. 1996, 93, 13770-13773
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【非特許文献8】White R. J. et al Single ion-channel recordings using glass nanopore membranes, J. Am. Chem. Soc. 2007, 129, 11766-11775
【非特許文献9】Leich, M. A., Richmond, G. L. Recent Advances in Studies of Liquid-Liquid Interfaces, Faraday Discussions 129 (2005) 1
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【非特許文献25】Giddings, J. C. Unified Separation Science. John Wiley & Sons, Inc. 1991
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ナノポアおよびマイクロポアシステムの具体的な用途のいくつかを、以下の段落で説明する。
【0007】
(i)ナノポアを用いたバイオポリマーのシークエンシング: DNAを例とするバイオポリマーの検出およびシークエンシングに、αヘモリジン(HL)を例とする生物学的ナノポアを用いることが最近報告された。実現可能であることを示すための実験により、一本鎖(ss)DNA中のヌクレオチドの数を、この鎖がチャネル内で要する時間の長さを測定することによって識別可能であることが示された(非特許文献4)。低い電位の印加により、脂質二重層に挿入されたイオンチャネルを通るDNA分子の移動が誘発された。この分子がポアを通過すると、電荷を持つ電解質イオンの動きをDNAがブロックすることによって電流が低下する。DNAがポアを通過する際の電流の変化を用いて、塩基配列が識別され得ることが示唆されている。実験上の限界のために、DNAまたはRNAの単分子における塩基配列の高速検出はできなかった(非特許文献4)。
【0008】
バイオセンサーおよび化学センサーでは、脂質二重層に挿入されたタンパク質を用いたイオンチャネル記録は、小分子の検出にも有用である。同一のシステムが、タンパク質分子相互作用の電気生理学的研究に用いられており、ここで、分子はトキシン、または開発中の新薬であってよい。
【0009】
従来から、タンパク質イオンチャネル記録は、薄いテフロン(登録商標)シートの直径約25〜100μmの開口部全体にかかる二重層の形成に依存してきた(非特許文献7)。このような測定は、新薬分子のスクリーニング、およびタンパク質生物理学の基礎的な測定に有用である。しかし、この手法には以下のようないくつかの欠点が存在する;(i)支持された二重層の面積が広いことは、この二重層が機械的に不安定となりやすく、寿命が短いことを意味する;(ii)二重層および支持体のキャパシタンスが高いため、非常に速い単一結合または転位のイベントの電気的読み取りが阻止され、ノイズが引き起こされる。例えば、α‐HLポアを通るssDNAの転位速度は、ヌクレオチドあたり1から20μsであると報告されており、これには、ほぼ106Hzのデータ取得速度が必要である。従って、より速い速度でのデータ収集のためには、システムのキャパシタンスを低下させることが望ましく;これは、二重層面積の低減、および全体のキャパシタンスが低くなる基材物質の使用によって達成することができる可能性がある。
【0010】
最近、より強固なガラスおよび石英のナノポアプラットフォームが導入され、ここでは極微小二重層領域が露出しており、それによって二重層の寿命が大きく延長され(約数週間)、電気キャパシタンスが大きく低下する(非特許文献8)。そのようなシステムでは、外側直径が100nm〜1μmである円錐形状のポアが、1つずつ製造する手法を用いてガラスまたは石英膜に形成される。ナノポア膜のプラットフォームを二重層の配置に用いることで、システムのキャパシタンスが大きく低下する。
【0011】
(ii)液‐液界面での検出。
液‐液界面でのイオンおよび分子の移動は、多くの種々の分野において影響を与えるものであり(非特許文献9)、最も重要なものは、恐らくバイオセンシング(薬物分析のモデル界面)および生分析(生物学的に重要なイオンであるK+、Na+、Cl-、および帯電した薬物分子のモニタリング−すなわち、電位差測定および電流測定イオン選択性電極)であるが、その他の有用な用途としては、溶媒抽出、物質合成および触媒、金属、ポリマー、および粒子の析出、が挙げられる。液‐液界面はまた、生物膜の単純化モデルとしても作用する(例えば、脂質および界面活性剤によって修飾可能)。従来から、このような界面は、表面第二高調波発生、振動和周波数分光(vibrational sum frequency spectroscopy)、全反射蛍光分光(total internal fluorescence spectroscopy)、ならびにX線および中性子散乱(非特許文献11)などの種々の表面技術を用いて分析される。
【0012】
電気化学もまた、イオンおよび分子のそのような界面を通過する移動の力学的研究にとっての強力な技術を代表するものである。しかし、そのような(速い)プロセスを実験的に定量するためには、形成される界面は、標準的な固体マイクロ電極と同様に、界面の安定化、iRの問題の最小化、および質量輸送の増加のために、マイクロスケールまたはそれより小さいスケールである必要があることが認識されている(非特許文献10)。通常、このような手法では、先端が細く引かれたガラスキャピラリーが用いられ、これに水溶液を満たして有機溶媒中に配置するか、またはその逆を行う。場合によっては、キャピラリーをシラン処理してその濡れ性を変化させることが必要である。サブミクロンのキャピラリーを用いる場合には、以下のような問題が生ずる:キャピラリーのサイズを定量することが難しい場合があること;脆弱であり、壊れる場合が多くあり得ること;ならびに、キャピラリーの内部抵抗の制御において役割を担う円錐角の制御が難しいこと、である。さらに、キャピラリー間での再現性を得ることも難しい。従って、液‐液に基づくセンサーを製造するための適切なシステムとして、絶縁性であり、強固であり、ミクロンおよびサブミクロンスケールにて再現可能に製造することができ、ならびにスケールアップすることで測定シグナルを増幅するためのポアのアレイを作製することが可能であるシステムが求められている。このようなセンサーの用途としては、上記で明らかにした分野であろう。
【0013】
ガラスキャピラリーに代わるものとして種々の方法が提案されている。これらとしては、フォトアブレーションおよびレーザーアブレーションによるポリマーフィルムの孔部(非特許文献11)、トラックエッチングされたポリカーボネート膜、ならびに非常に最近のものとしてシリコンマイクロリソグラフィー(非特許文献12)が挙げられる。これらの技術のほとんどは、ミクロンスケールで孔部を形成するものである。
【0014】
(iii)粒子カウント: 抵抗パルス検出(resistive pulse sensing)を用いた粒子のカウントは一般的な技術であり、コロイドおよび生物細胞のカウントおよびサイズ測定のための市販されているデバイスであるコールターカウンターが例示される(非特許文献13)。このデバイスは、通常、約20μmから2mmの範囲のサイズである孔部を有するサファイア膜を用いる。通常は、孔部径の2〜60%の範囲のサイズである粒子を検出することが可能である。定電流条件下にて、対象の種を含む電解質を膜の一方の側に配置する。圧力勾配を用いて溶液を膜透過させ、粒子の存在に起因する孔部抵抗の変化を、孔部両端の(trans-aperture)電圧の増加として検出する(すなわち、電圧パルス)。パルスの数を用いて、粒子の数を決定することができる。
【0015】
サイズが<500nmの粒子の検出では、明らかにより小さい孔部へと移行することが必要である。ポリカーボネート膜が研究されており(非特許文献14)、現在は、イオンビーム彫刻技術(ion beam sculpting techniques)を用いて作製される直径が3nmという小さい寸法である窒化シリコンナノポア(非特許文献15)など、なおさらに検出サイズを小さくするために用いられる非常に様々な膜が存在する。しかし、約10nm未満では、現在用いられているこれらの技術および物質では大きな再現性の問題が存在する。抵抗パルス検出を用いたナノメートルスケールの粒子のカウントおよび分析では、低ノイズおよび高速データ取得も必要である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第一の態様によると、従って、イオンチャネル記録;液‐液に基づくセンサー、および抵抗パルス粒子カウントのためのセンサーデバイスが提供され、このデバイスは;
少なくとも1つのセンサー素子;
を有し、この素子は、ダイヤモンド薄フィルム基材、およびこの基材に含まれるナノポアまたはマイクロポアであるポアを有する。
【0017】
イオンチャネル記録は、通常、単分子検出、バイオセンサー、およびDNAシークエンシングから選択される。
【0018】
上記の段落は、マイクロポアおよびナノポア分析デバイスの代表的な用途分野について説明するものである。これらのデバイスおよびそれに関連する方法は、基材物質としてダイヤモンドを使用することによって大きく向上させることができる。これらの用途に関連するダイヤモンド独特の特性としては以下のものが挙げられる:
(1) 化学的安定性および耐久性: 強酸および強アルカリ溶液による化学的侵食に対する極めて高い耐性。さらに、ダイヤモンド表面は、ガラスおよび石英を例とするシリケート主体の構造で生ずる水和現象が起こりにくい。
(2) 電気的性質(表1参照): 固有状態における非常に高い抵抗(1013〜1016Ωcm)、非常に低い誘電率(5.7)、低い誘電正接(30〜150GHzにおいて<1×10-5 (非特許文献16);良質のダイヤモンドにおけるMHz範囲での測定値は現在のところ存在しないが、高品質の単結晶物の誘電正接は、RF周波数にて石英と同等に良好であると出願者らは推定する)を有する。これらの性質により、ダイヤモンドは、マイクロ/ナノポアに基づく分析デバイスを用いる低ノイズ、高速データ取得のためのほぼ理想的な物質となっている。
(3) 光学的性質: 真性ダイヤモンドは、非常に優れた光学的性質を有し、紫外線(225nm)〜可視光線〜遠赤外線の領域で透明である。このような性質により、ポア伝導度の電気的検出と組み合わせての分光学的測定が可能となる。
(4) 製造: 多結晶合成ダイヤモンドは、化学蒸着法を用いてウエハスケールで成長させることができる。ホウ素などのドーパントを用いることにより、電気的性質の異なる交互層構造を作製することも可能である。ダイヤモンドに基づくデバイスを大量に同時に製造することも可能である。
(5) 生体適合性. ダイヤモンドは、すべて炭素であり(表面終端を除く)、従って生体適合性物質である。血液などの複雑な媒体中における汚損付着に対する耐性も示されている。
【0019】
【表1】

【0020】
ダイヤモンドは、その化学的および物理的性質により、マイクロおよびナノポアに基づく分析法における用途に対してほぼ理想的な基材となっている。3D構造のエッチングおよびダイヤモンド表面の化学修飾を含むダイヤモンド薄フィルムの加工に関する最近の取り組みにより、以下の本発明の開示事項が可能となる。
【0021】
ダイヤモンドは、種々の用途での使用に応じて多くの異なる形態に加工することができ、いくつかの説明のための例を以下に概説する:
【0022】
多結晶ダイヤモンドフィルム: 多結晶化学蒸着(CVD)ダイヤモンド材は、数十mm×mmの平面寸法にわたる厚さが10μmを例とする薄い自立フィルム、および数mmまでの厚さの100mm径ウエハの形態である厚いフィルムとして作製することができる。シリコンウエハ上のこれより薄い(1〜2μm)ナノ結晶ダイヤモンドフィルムが市販されており、シリコン基材の部分をエッチング除去することで、シリコンに支持されたナノ結晶ダイヤモンドフィルムを得ることができる。
【0023】
単結晶ダイヤモンド: 真性単結晶ダイヤモンドフィルムは市販されており、典型的なサイズとしては、約4.5×4.5×0.5mmであるが、当然、これより薄いサイズ、厚いサイズ、大きいサイズ、小さいサイズを作製することが可能である。
【0024】
ダイヤモンドの研磨、機械加工、およびエッチングの最近の進歩により、現在では平滑構造の表面を設計、製造することが可能である。特に:
(i)機械研磨: 単結晶および多結晶ダイヤモンド>10μm − 例えば、より専門的な技術により、数mmの厚みの機械研磨を、rms表面粗さ<5nm、さらには<1nmで行うことが可能である。
(ii)レーザードリル加工: ダイヤモンドにおよそミクロンレベルまでのドリル加
工による穴あけが可能である。最も小さい穴あけとしては、衝撃レーザードリル加工(percussion laser drilling)(例:集束レーザー光パルスを同一の地点に照射)を用いて、約300μmの厚さのダイヤモンドに出口直径が約10μm未満の穴あけが可能であり、例えば、アスペクト比は約30:1である。厚さ50μmを例とするこれよりも薄いダイヤモンド試料の場合は、出口直径1〜5μm(入り口直径5〜10μm)の穴あけが可能である。直径がより大きく(例:20〜500μm)真円度の高い穴あけは、レーザートレパニング(laser trepanning)によって可能である。
(iii)レーザーミリング: マイクロミリングを用いて、2.5次元(レーザー光が機械加工表面へ到達するための経路を切削する必要があるため、完全な3Dではない2.5D)の構造を、ダイヤモンドを含むほとんどの物質の表面に作製することができる。加工条件を適切に選択することによって1μm未満の表面粗さを達成することができ、厚さが約50μm未満までのダイヤモンドのレーザーミリングが可能なはずである。イオンミリングも、高精度の構造の作製のための1つの可能性であり得る。
(iv)ダイヤモンドエッチング: その硬さおよび化学的不活性さのために、ダイヤモンドのエッチング加工は技術的な課題を引き起こし得る。しかし、誘導結合プラズマ(ICP)エッチングがダイヤモンドで実証されている。ICP技術は、特にいくつかの利点を有する(例:表面下の損傷がないこと、サブnmのrms粗さである表面の作製)。反応性ガスの化学的種類を変化させることにより、等方性エッチング(Ar/Cl2)および異方性エッチング(Ar/O2)の間での変更が可能である(非特許文献17)(約0.2μm min-1までのICPエッチング速度の達成が可能である(非特許文献19))。標準的なフォトリソグラフィ手順をダイヤモンドに適用することができるが、マスキング材(例:フォトレジスト)の堅牢性によって構造のサイズ(例:深さ)が限定される。
【0025】
非常に薄い単結晶ダイヤモンドプレートおよび構造を、イオン注入、およびそれに続く例えば電気化学エッチングを用いるリフトオフプロセスを用いて製造することができる(非特許文献18)。イオン注入は、ダイヤモンドの表面下に損傷を発生させるが、表面最上部は、これに続くホモエピタキシャルダイヤモンド層を所望の厚さまでCVDによって成長させることが可能であるのに十分な程度で損傷を受けない。CVD成長および加工の後に、電気化学的もしくは乾式エッチングにより、または単純なアニーリング(非特許文献19)によってさえも下部に存在する損傷層をエッチング/除去し、厚さ数μm、平面寸法数mm×mmの自立プレートを得ることができる。
【0026】
ダイヤモンド表面の化学官能性も修飾を行いやすい。強酸による洗浄手順を用いることにより、親水性酸素終端表面が作られ、一方、水素プラズマへの曝露により、疎水性の水素終端表面が得られる。次に、このような表面を、多くの化学的または光化学的手法を用いるさらなる官能化プロセスのための出発点として用いることができる。
【0027】
まとめると、出願者らは、ダイヤモンドのフォーマットへ移行することにより、ダイヤモンドの優れた電気的性質(その他のすべての競合物質よりも抵抗が非常に高く、および誘電損失が低いことを含む)のために、イオンチャネル測定における時間分解能およびノイズレベルを改善することが可能であることを見出した。さらに、エッチングおよびミリングの技術を用いることにより、確定された再現可能である形状のより小さくより強固であるポア構造を、単一または複数のポアレベル(大量生産)にて製造することが可能である。ダイヤモンドはまた、液‐液電気化学デバイスおよび測定のための理想的な支持物質でもある。ポアは約nmのレベルまで作製することができ、円錐角、すなわち円錐を二等分する角度がより大きい構造を、ポア内の抵抗を(ガラスキャピラリーと比較して)低下させる目的で作製することができる。さらに、水素終端(疎水性)および酸素終端表面(親水性)の両方を単一のデバイス内に作製し、それによって、例えば油‐水系の測定に最適な環境を作り出すことも可能である。粒子サイズ分析については、開発されたエッチングおよびミリングの手順により、広範囲の制御可能なサイズを作製することが可能であり、それによって、10nm以下のレベルまでの種々の断面積を持つ広範囲にわたる種の検出が可能となる。その堅牢性のために、すべての場合において、ダイヤモンドデバイスは極端な温度、電圧、およびpHの条件下にて作動可能である。さらに、光学性能が優れているということは、光活性化プロセスの研究も可能であることを意味する。この目的に対して、出願者らは、ダイヤモンドが、化学、生化学、および電気化学分析の分野におけるさらなる進歩にとって理想的な基材物質であると考える。
【0028】
多くの態様では、ダイヤモンドフィルム基材は、厚さ、第一の面、および第二の面を有し、第一の面は第二の面の反対側にある。
【0029】
通常、ポアは、ダイヤモンドフィルム基材を貫通して延びている。一般的には、ポアの形状は、円錐状、先細り状、円柱状、額縁状(picture frame)(すなわち、4辺を有し、これらが先細り状となって角部にて鋭角な端部を形成している)、ダイヤモンド薄フィルム基材の[100]面中の[111]ファセット面のエッチングピットの形状、または半球状である。選択される形状は、センサーの意図される用途に応じて異なり、例えば、ポアは、低キャパシタンスが得られるデバイスを提供する形状を有していてよく、および/またはポアは、極低漏洩電流を提供する形状を有していてよい。
【0030】
ある態様では、デバイスは、2個以上のポアを有し、ちょうど2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10個のポアが存在してよく、またはこれを超える数で、例えば20から500、50から250、もしくは100から200個のポアが存在してもよい。ポアは、ダイヤモンド薄フィルム基材全体にランダムに分布していてよく、またはアレイ状に配列されていてもよい。さらに、ポアの一部またはすべてが、個々のチャンバー内に封入されていてよく、各チャンバーは、支持構造上にアレイ状のフォーマットで配列されていてよい。多くの例において、各ポアは封入されている。
【0031】
多くの場合、ポアは1nmから100μmの範囲のサイズである。多くの場合、ポアは、1nmから100nmの範囲のサイズのナノポアであり、時には、ポアサイズは5から50nm、多くの場合10から30nmの範囲である。
【0032】
多くの例では、ダイヤモンド薄フィルム基材の厚さは、10nmから1mmの範囲であり、多くの場合、20nmから500nmの範囲、または50nmから200nmの範囲である。いくつかの場合では、ダイヤモンド薄フィルム基材は、テンプレート構造または層状構造であり、層は、化学、生化学、および電気化学測定の目的で官能性を導入するために、ポアの内側表面が露出している。構造は、層状である場合、伝導度の異なるダイヤモンドの層を含むことが多い。多くの場合、表面性質の異なるダイヤモンドの層を含んでよく、それによって、分子と層のうちの1つとの選択的な化学的または物理的相互作用が可能となる。
【0033】
ダイヤモンド薄フィルム基材の表面を、例えばシリコンおよびシリカウエハの表面修飾について公知である手順を用いる広範囲にわたる種々の処理によって化学修飾してよい。いくつかの場合では、このような処理は、シラン処理(3‐シアノプロピルジメチルクロロシランによるシラン処理を含む)、オゾン処理、表面酸化、表面ハロゲン化、分子の光化学的結合、またはこれらの組み合わせから選択される。多くの態様では、化学修飾は、ダイヤモンド薄フィルム基材の3‐シアノプロピルジメチルクロロシランによるシラン処理を含む。ダイヤモンド薄フィルム基材の表面が親水性官能性および疎水性官能性を有する場合もあり得る。多くの場合、親水性官能性はダイヤモンド薄フィルム基材の第一の面に存在し、疎水性官能性は第二の面に存在し;ならびに、第一および第二の面の間の境界は、ポアに対して確定された位置に存在する。多くの場合、親水性官能性は、酸素終端表面を含み、および/または疎水性官能性は水素終端表面を含む。
【0034】
ある態様では、脂質二重層または単層をダイヤモンド薄フィルム基材の表面に堆積させてよい。脂質層が存在する場合、脂質二重層はポア全体に架かっている、または広がっている状態であることが好ましい。本明細書で用いる「センサー素子」という用語は、分析物を検出するように機能するデバイスの一部を意味することを意図しており、多くの場合、センサー素子は、単一もしくは複数のタンパク質イオンチャネルを含むか、または酵素、もしくは二重層の抵抗を制御する分子がポアの開口部に広がる二重層に挿入されている。別の選択肢としての例では、ダイヤモンド薄フィルム基材が2つのコンパートメントを分離し、各コンパートメントは電解質溶液を含んでいる。
【0035】
デバイスはまた、電場または電圧をダイヤモンド薄フィルム基材の第一の面および第二の面の間に印加するための手段;ナノポアを通る電流、またはダイヤモンド薄フィルム基材の第一の面および第二の面の間の抵抗をモニタリングするための手段、ならびに観測された電流または抵抗を処理して有用な結果を得るための手段を、含んでもよい。
【0036】
デバイスはまた、当業者に公知であるように、データの取得および/または解析のための支援素子も含んでいてよい。
【0037】
本発明の第二の態様によると、分析物の単分子検出、センサー素子と分析物との間の相互作用の分析、またはイオン移動の測定のための方法が提供され、この方法は:
分析物を含有する溶液を提供すること;
分析物を認識するセンサー素子を含むデバイスであって、ここで、このセンサー素子がダイヤモンド薄フィルム基材およびこの基材に含まれるナノポアまたはマイクロポアであるポアを有するデバイス、を提供すること;
このデバイスを溶液と接触させ、それによってセンサー素子の外側表面がその溶液に浸漬され、内側ポア表面がその溶液と接触するようにすること;
ダイヤモンド薄フィルム基材の両側に電圧を印加すること;ならびに、
観測された電気伝導度を用いて分析物の濃度を測定すること、
を含む。
【0038】
この方法は、本質的には、分析物を検出するための方法であり、多くの態様では、このセンサー素子が分析物と結合し、この結合イベントが、通常は、センサー素子を通る電流の減少または増加を引き起こし、一般的にはこの変化は、元の値の1から100%の範囲である。この方法のいくつかの用途では、ポアが溶液で充填される。多くの場合、この溶液は、少なくとも1つの分析物、ならびに電解質、有機溶媒、ゲル、生物サンプル、またはこれらの組み合わせから選択される連続相を含む。多くの用途では、分析物は、化学分子、生物分子、イオン、ポリマー、脂質、粒子、およびこれらの組み合わせから選択される。
【0039】
デバイスがダイヤモンド薄フィルム基材の表面に堆積された脂質二重層を含み、この脂質二重層がポア全体に架かった状態である態様では、センサー素子は、ポアの開口部に広がる単一のタンパク質イオンチャネルを含んでよい。多くの場合、膜全体にわたる圧力を用いて、タンパク質イオンチャネルが脂質二重層に挿入され、除去される速度が制御される。
【0040】
本発明のいくつかの用途では、分析物は、候補薬物であり、センサー素子は、薬物標的または修飾された薬物標的であり、方法は、薬物スクリーニングのためのものである。他の用途では、分析物は、DNAまたはRNA種であり、センサー素子は、特定のヌクレオチドの種類を認識し、方法は、核酸シークエンシングのためのものである。なおさらなる用途では、溶液は、2つの不混和性液体を含み、これらは、支持電解質を含有する有機溶媒と接触する電解質水溶液、およびイオン液体と接触する電解質水溶液から選択することができる。2つの不混和性液体が存在する場合、この不混和性液体間の界面は、金属ナノ粒子、半導体ナノ粒子、脂質、ポリマー、イオン性および両性イオン性界面活性剤、導電性ポリマー、酸化還元ポリマー、ならびにこれらの組み合わせから選択される修飾剤を用いて修飾してよい。なおさらなる用途では、分析物は、無機、金属、もしくは有機粒子、またはウイルスを例とする生物粒子である。
【0041】
Taylor et al.の文献より、負に帯電した窒素欠陥(NV-)などのダイヤモンド内の単一色中心(single colour centres)をナノ磁気測定に用いることができることが公知である(引用文献19)。本発明の適用では、NV-中心を光学的に認識し、それによって局所磁場との相互作用を確認する。従って、本発明の態様では、センサー素子は、NV-中心である。そのような方法では、「ポアイオン電流」を、光学分光法を用い、電気的な接続をまったく必要とせずに、それが作り出す磁場を介して測定することができる。他所で説明されるように、ポアは、「未処理の(bare)」ダイヤモンドポアであってよく、またはダイヤモンドポアおよび脂質二重層をポア中に挿入されたイオンチャネルと共に用いて作製されたポアであってもよい。さらに、NV−中心を用いて、ポアを通過する分子、またはさらには開口もしくはブロックされたポア中に補足された分子さえも、その磁気的性質を測定することが可能である。NV-中心を、イオン注入を含む技術によってポアの近傍に配置してよく、またはポアを既にNV-中心が存在するダイヤモンドの領域内に作り出してもよい。局所磁場、電流などの測定に加えて、単一色中心プローブを用いることにより、電子常磁性共鳴(EPR)を用いた不対電子を持つ系に対する磁気共鳴分光を行うことが可能であり、または、さらには、十分に小さいポアにおける対象である分子/種からの核磁気共鳴(NMR)の直接検出さえも可能である。
【0042】
NV-中心を、イオン注入を含む技術によってポアの近傍に配置してよく、またはポアを既にNV-中心が存在するダイヤモンドの領域内に作り出してもよい。
【0043】
好ましい電圧は、1マイクロボルトから5ボルトの範囲であるが、1ミリボルトから1ボルトの範囲である場合が多い。電圧は、DCシグナルとして印加しても、またはACシグナルとして印加してもよい。電流は、一般的には100フェムトアンペアから1ミリアンペアの範囲であるが、最も典型的には、1ピコアンペアから1マイクロアンペアまでの範囲である。
【0044】
本発明の上記のおよびさらなる適用において、電気化学分析を分光測定と組み合わせて分析物の同定および検出を行うことができる。
【0045】
本発明の1つの例では、方法は、ポア形成要素の検出のための方法である。この態様では、分析物は、ポア形成要素であり、デバイスは、ナノポアもしくはマイクロポアであるポア、およびこのポアに広がる橋渡し手段を含むが、センサー素子は含まず;ならびに、ここで、この方法は、ポアを溶液に浸漬させ、それによって、ポアの外側表面が溶液に浸漬され、ポアの内側が溶液で充填される工程を含む。
【0046】
好ましい電圧は、1マイクロボルトから5ボルトの範囲であるが、1ミリボルトから1ボルトの範囲である場合が多い。電圧は、DCシグナルとして印加しても、またはACシグナルとして印加してもよい。電流は、100フェムトアンペアから1ミリアンペアの範囲であるが、最も典型的には、1ピコアンペアから1マイクロアンペアまでの範囲である。
【0047】
本発明の第三の態様は、本発明の第一の態様のデバイスを用いることを含む分析の方法を提供する。この方法を用いて、細胞;細菌;ウイルス;ポリマー粒子;イオン、分子;ならびに小分子、ペプチド、または高分子薬物の製剤および送達に用いられるナノ粒子を含む種々の分析物を分析することができる。本発明の分析方法はまた、単分子の検出、DNAの検出およびシークエンシング、粒子カウント、薬物送達システムのモデリング、液‐液界面プロセスの研究、血液分析、イオン移動ボルタンメトリーもしくは電位差測定分析、および/またはタンパク質イオンチャネルによる新薬のスクリーニングのために用いることもできる。用途としては、環境水分析、国土安全保障のためのセンサー(homeland
security sensors)における分析、および/または軍事用途における分析の分野での用途が挙げられる。
【0048】
ここで、単なる例として、添付の図面を参照して本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、ガラス基材のナノポア全体に架かった状態の脂質二重層の概略図を示し、ダイヤモンド表面は、3‐シアノプロピルジメチルクロロシランで化学修飾されており、および1つのα‐HLが挿入されている;
【図2】図2は、ダイヤモンド薄フィルム基材に作製されたナノポアを示す図である;
【図3】図3は、ダイヤモンド薄フィルム基材のポア全体における電流もしくは電圧の印加、または測定に用いることができる電極および補助電子機器を示す図であり、類似の電子機器は、ダイヤモンド薄フィルム基材のポアのアレイまで延長することが可能である;
【図4】図4は、ダイヤモンド薄フィルム基材の[100]面上のエッチングピットナノポア構造を示す図であり、ポアはICPを用いて作製される;
【図5】図5は、以下の工程を含む半球形状のダイヤモンドナノポアの製造のための手順を示す図である。工程1.ダイヤモンド基材を据え付ける(最終的なリフトオフのために)。2.所望の厚さのダイヤモンド(例:1〜10μm)をCVD成長させる。3.フォトレジストのスピン塗布またはマスク材の堆積を行い、パターン形成する。4.エッチングし、パターンをダイヤモンドへ移す。5.ダイヤモンド層のリフトオフを行う。6.裏面をエッチングして損傷したダイヤモンドを除去する(図示せず);
【図6】図6は、シリコンテンプレートからのダイヤモンドナノポアの作製の概略図を示す;
【図7】図7は、ダイヤモンドナノポアで形成された環状電極デバイスを示す図であり、中心層はホウ素をドーピングした領域を表し、外側層は絶縁領域である;
【図8】図8は、ダイヤモンド薄フィルム基材のナノポア全体に架かった状態の脂質二重層を示す図であり、ダイヤモンド表面は、3‐シアノプロピルジメチルクロロシランで化学修飾されている;
【図9】図9は、ダイヤモンド薄フィルム基材のナノポア全体に架かった状態の脂質二重層の概略図を示す。この図示した例では、ダイヤモンド表面は、3‐シアノプロピルジメチルクロロシランで化学修飾されており、および1つのα‐HLが挿入されている;
【図10】図10(a)および(b)は、薄フィルムダイヤモンド基材のナノポアまたはマイクロポアに基づくDMNP粒子アナライザーの概略図を示す;図10(c)は、粒子が薄フィルムダイヤモンド基材のポアを通過して一時的な抵抗パルスを発生させる際の電流‐時間応答の概略図を示す;
【図11】図11は、本発明のデバイスへの磁気測定の適用の概略図を示す;
【図12a】図12aは、多結晶真性ダイヤモンドによる水滴形成(a)を示す;
【図12b】図12bは、および単層官能化多結晶真性ダイヤモンドによる水滴形成(b)を示す;
【図13】図13は、本発明による円錐形状ポアの顕微鏡画像である;
【図14】図14は、図13のポアに対する電流‐電圧曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
本明細書で用いられる「センサー素子」および「検出要素(sensing entity)」という用語は、交換可能に用いられ、デバイスの同一の構成成分を意味することを意図している。同様に、「薄フィルムダイヤモンド基材」および「膜」という用語、ならびに「側(side)」および「面(face)」という用語(薄フィルムダイヤモンド基材の説明に適用される場合)は、同一の意味を有し、デバイスの同一の構成成分を意味することを意図している。
【0051】
本明細書で用いられるナノポアという用語は、半径が1μmもしくはそれ未満である小開口部を有するポアを意味することを意図しており、マイクロポアという用語は、半径が1μm超の範囲であるポアを意味することを意図している。
【0052】
上述のように、本発明は、イオンチャネル記録(単分子検出、バイオセンサー、およびDNAシークエンシングを含む);液‐液測定(バイオセンシングおよびイオン選択性電極)、ならびに抵抗パルス粒子カウントのための、ナノポアまたはマイクロポアセンサーデバイスを提供する。ナノポアまたはマイクロポアデバイスは、1つのナノポアもしくはマイクロポアセンサー素子、または複数のナノポアもしくはマイクロポアセンサー素子を含むものとして説明することができる。図2のように、この素子は、ダイヤモンド薄フィルム基材、およびその基材中に含有されるナノポアまたはマイクロポアを含む。ポアは、円錐形状であることが理想的であるが、円柱形状または半球形状であってもよい。ポアの寸法は、約1nmから100μmまで制御することができる。ポアが形成されるダイヤモンド薄フィルムの厚さも、10nmから1mmの範囲にわたって制御することができるが、重要なのはそのアスペクト比(長さに対する孔部直径)である。例えば、小孔部は、より薄いフィルムの方がその作製が容易である。種々の用途に応じて特定の形状が選択される。低キャパシタンスが得られる形状は、速いデータ取得の測定のために作製され得る(例:イオンチャネル記録またはナノメートルスケールの粒子カウント)。超低漏洩電流が得られる形状は、イオン選択性電極デバイスのために作製され得る。
【0053】
ダイヤモンドマイクロポアおよびナノポア(DMNP)の薬物スクリーニング、DNAシークエンシング、粒子カウント、血液分析などにおけるセンサーとしての用途では、分析物のナノポアとの相互作用を測定するための電子回路が追加で必要である。そのようなシステムの概略図を図3に示す。そのようなシステムでは、膜の反対側に配置された2つのAg/AgCl電極、または2つのIrO2電極、または1つのAg/AgCl電極および1つのIrO2電極、または2つのその他のタイプの電極(同一または異なる)を用いて、ナノポア内の電流、またはナノポア両端の電圧を測定することができる。電流および電圧の読み取りは、分析物のポアとの相互作用に従って、公知の制御された形で変化する。例えば、粒子がナノポアを通過すると、電流は一時的に減少する場合があり(抵抗パルスカウント)、またはナノポアをイオン選択性電極の基材として用いる場合は、電圧が変化し得る。
【0054】
DMNPの表面は、化学修飾することにより、例えば、ポア構造をさらに発展させたり、または分析測定のための官能性を付与したりすることができる。ナノポアに架かった状態の二重層の形成では、ダイヤモンド表面の化学を十分に制御して、脂質が単層を形成するだけでなく、ポアの内側表面を水溶液で十分に湿潤させることが必要である場合が多い。これを達成するためには、種々の表面官能化処理を用いることができ、これらに限定されないが、例えば、3‐シアノプロピルジメチルクロロシランによるシラン処理、オゾン処理、表面酸化もしくはハロゲン化、分子の光化学的結合、または表面化学修飾の組み合わせ、が挙げられる。平坦なダイヤモンド表面を3‐シアノプロピルジメチルクロロシランでシラン処理することにより、適度に疎水性である表面(約55度の接触角)が得られることが示されており、これは、ナノポア開口部に架かった状態の二重層を作製するのに理想的である(非特許文献10)。液‐液実験の場合は、エッチングおよび加工工程に異なる手法を適用して、親水性および疎水性の両方の官能性を持つデバイスが作製され、ここでもこれらに限定されないが、例えば酸素‐および水素‐終端表面が挙げられる。電解質含有溶液、または有機溶媒、またはゲル、または血液を例とする実際の生物サンプルが、ダイヤモンドデバイスの液相として用いられる。
【0055】
ナノポアの形状および製造方法の具体的な例としては、これらに限定されないが、以下の例が挙げられる:
・ ダイヤモンドの単一のまたはアレイ状の孔部(円柱形状および円錐形状)は、出口直径≧1μm、アスペクト比(長さ/直径)≧約30にてレーザードリル加工することができる。間隔は正確に制御することができる(1μm以内まで)。
【0056】
より薄い構造に関しては、ダイヤモンドをレーザーミリングまたはエッチングすることで、上述のような「額縁状」構造を作製することができ、これは、最も薄い地点でおよそ<50μmの厚さであってよい。必要に応じて、エッチング技術を用いて表面をさらに平滑にしてよい。次に、レーザードリル加工/ミリングの手順を用いて、<50μmの厚さのダイヤモンドを貫通する約1μmもしくはそれより大きい(出口地点にて)チャネルを作製する。
・ 欠陥部位にてICPエッチング技術を用いることにより、ダイヤモンドの[100]面上に[111]ファセット面を持つ確定された形状のエッチングピットを作製。
【0057】
エッチングピット密度は、ダイヤモンドの厚さおよびエッチング時間を変えることで制御することができ、図4に示すように、確定されたポア開口部を有する確定された形状の構造が可能である。
・ 100nm(またはこれより小さい)から1μmの範囲の開口部、μmレベルの深さ、および数十μmのレベルに及ぶ幅を有するDMNPを作製することができる。例えば、以下の工程を用いてよい:1.ダイヤモンド基材を据え付ける(最終的なリフトオフのために)。2.所望の厚さのダイヤモンド(例:1〜10μm)をCVD成長させる。3.フォトレジストのスピン塗布またはマスク材の堆積を行い、パターン形成する。4.エッチングし、パターンをダイヤモンドへ移す。5.ダイヤモンド層のリフトオフを行う。6.裏面をエッチングして損傷したダイヤモンドを除去する(図5)。
【0058】
この方法では、1つもしくは多くのチャネルをダイヤモンド層に作製することができる。最終デバイスは、支持構造を必要とする場合がある。この技術を用いることにより、官能化ダイヤモンド表面を作製することができる(両側の異なる官能化を含む)。
・ パターン形成された基材上での多結晶ダイヤモンドまたはナノダイヤモンドのテンプレート成長(templated growth)(図6)。シリコン(または酸化シリコン)の多岐にわたるピラミッド状先端構造を、標準的なフォトリソグラフィ手順を用いて作製することが可能である。このような表面は、ダイヤモンドの過成長のための基材として用いることができる。
【0059】
成長するダイヤモンドフィルムの厚さは、先端部全体を覆うか、または先端部の確定された高さを覆うように制御することができる。基材をエッチング除去することにより(例えばHFを用いて)、確定された形状およびポアサイズを有するダイヤモンド構造が現れる。
・ 層構造. CVD技術を用いて、真性、ホウ素ドーピング、真性で種々の厚さ(厚さが数nmという薄さの導電層)を例とする種々の導電性のダイヤモンド層を交互に堆積させることが可能である。これらの構造は、上述のエッチング/ミリング技術と組み合わせて用いて、ホウ素ドーピング層を埋め込んだ層状ダイヤモンドを作製し、例えば図7のように、裏面電極(back electrodes)またはチャネル環状電極(channel ring electrodes)を形成することができる。
【0060】
上述の構造は、表面の化学修飾、ポア全体にわたる二重層構造の堆積、ゲルおよびポリマーおよび官能性を導入するその他の化学物質のポアへの充填により、種々の分析用途に用いられる。
【0061】
このような用途に対してその構造が独特で理想的となるダイヤモンドの重要な性質としては:化学的安定性および耐久性;優れた電気的性質(非常に高い電気抵抗、適度な誘電率、低い誘電正接);紫外線(225nm)から遠赤外線の領域において透明;生体適合性、ならびに再現可能な大量生産、が挙げられる。
【0062】
本発明の用途として多くの可能性があり、いくつかの例を以下に述べる:
【0063】
イオンチャネル記録およびDNAシークエンシング: 特定の態様では、脂質の層または二重層を効果的にダイヤモンド膜上に堆積させるために、DMNPの外側および/または内側表面を化学修飾して、適度な疎水性表面を得ることが必要であり得る。例えば、ダイヤモンド表面を、表面の酸化に続いて、ダイヤモンド表面の−OH基と反応する3‐シアノプロピルジメチルクロロシランを例とする種々のダイヤモンド反応性種で修飾してよい。表面の性質を未処理のダイヤモンドのもの、疎水性(水素終端)または親水性(酸素終端)、から、適度に疎水性である表面へ変化させることにより、脂質分子が表面上に堆積された際に、その疎水性部分が表面の方向へ向くように誘導される。特に、DMNPの内側および外側表面を部分的に疎水性とすると、脂質単層のダイヤモンド表面への堆積により、ナノポアの開口部全体にわたる二重層が自然発生的に得られる。すなわち、ポアの開口部において、脂質単層が脂質二重層へと発達し、一方、外側表面および内側表面上に堆積された脂質はそのまま単層構造を呈している。外側表面上の脂質単層とナノポア開口部にわたる脂質二重層との間のこの移行は、表面の化学修飾の結果である(図8)。
【0064】
特定の態様では、上述のように、本発明は、分析物の単分子検出のための方法、または検出要素と分析物との間の相互作用の分析のための方法を提供する。この方法は:対象である分析物を含有するサンプル溶液を提供すること;分析物を認識する検出要素を含むナノポアデバイスを提供すること;ナノポアデバイスをこの溶液と接触させ、それによって、いずれの溶液が対象である分子または分析物を含有するかに関わらず、ナノポアの外側表面が溶液に浸漬され、内側ナノポア表面が溶液と接触するようにすること;膜の両側に適切な電圧を印加すること;ならびに、電気伝導度を分析して対象である分析物の濃度を測定すること、を含んでいてよい。
【0065】
分析物は、検出要素によって認識可能であるいかなる要素であってもよい。そのような分析物としては、これらに限定されないが、化学もしくは生物分子、イオン、ポリマー、脂質、粒子などを挙げることができる。検出要素が分析物と結合する場合、この結合イベントが検出要素を通る電流の低下を引き起こす。要素検出手段を通る電流の測定は、交流(AC)または直流(DC)測定のいずれを用いて測定してもよい。
【0066】
本発明は、DMNP膜上に形成された二重層の非常に高い機械的および電気的安定性により、検出およびシークエンシングの用途において基本的な利点を提供する。例えば、ガラス製ナノポアでは、脂質二重層で支持されたイオンチャネルを検出要素として有するデバイスに高電圧(〜1V)を印加することができ、従来のイオンチャネル記録セル(〜0.24Vが限界)を用いては測定することができない用途を可能とする。機械的な安定性により、脂質二重層で支持されたイオンチャネルを有するデバイスの輸送、およびマイクロ流体システムでの使用が可能となる。これらの利点は、ダイヤモンド基材に拡張される。化学安定性および生体適合性を有するDMNP膜上に形成された二重層の非常に高い機械的および電気的安定性の組み合わせにより、数多くの用途においてデバイスの寿命が大きく延長される。
【0067】
特定の態様では、修飾されたDMNPは、ダイヤモンドナノポア開口部に広がる脂質二重層領域内に検出要素として単一タンパク質イオンチャネル、例えば、α‐ヘモリジン(αHL)を包含する。二重層構造は、修飾されたダイヤモンドナノポア全体に広がっていてよく、図9は、それによって、電流がタンパク質イオンチャネルしか流れることができないようになっている。図1は、公知のガラスによる技術を用いた同等のシステムを示す。タンパク質イオンチャネルは、ポア開口部上の二重層中に拡散することができるが、この領域から出て脂質単層に入り込むことはできない。分析物は、イオンチャネルによって認識され、および/またはイオンチャネルを通過(「移動」)する際、ポアを通るイオン電流を部分的にブロックする。このブロックが、一時的なイオン抵抗の増加(またはイオン電流の減少)によって測定される。分析物の結合速度から、分析物の濃度、および/または分析物の検出要素との親和性のデータを提供することができる。
【0068】
特定の態様では、White et al.による考察(非特許文献8)のように、膜間差圧を用いて、DMNP膜上に堆積された脂質二重層へのタンパク質イオンチャネルの挿入および除去の速度を制御することができる。この圧力を用いて、イオンチャネルの数(単一チャネル 対 複数チャネル)の制御、および予め選択された時間でのチャネルの挿入/除去を行うことができる。この能力により、共通の溶液と接触するように配置された場合、または時間によって順に異なる溶液と接触するように配置された場合、異なるタンパク質イオンチャネルをDMNPに基づくアレイセンサー中の異なる場所に挿入させることができる。
【0069】
上述のように、特定の態様では、本発明は、薬物スクリーニングのための方法を提供する。この方法は、薬物候補を含有するサンプル溶液を提供すること;薬物標的または修飾された薬物標的である検出要素を含むナノポアデバイスを提供すること;このナノポアデバイスを溶液と接触させ、それによってナノポアの外側表面が溶液に浸漬され、およびナノポアが溶液で充填されるようにすること;膜の両側に適切な電圧を印加すること;ならびに、電気伝導率を分析して、薬物標的と薬物候補との間に相互作用が発生したかどうか、および/または薬物候補と薬物標的との親和性を判定すること、を含んでよい。
【0070】
さらに述べる態様では、本発明は、核酸シークエンシングのための方法を提供し、この方法は:DNAもしくはRNA種を含有するサンプル溶液を提供すること;特定のヌクレオチドの種類を認識する検出要素を含むナノポアデバイスを提供すること;ナノポアデバイスをこの溶液と接触させ、それによってナノポアの外側表面が溶液に浸漬され、ナノポアが溶液で充填されるようにすること;膜の両側に適切な電圧を印加すること;ならびに、電気伝導度を分析してDNAもしくはRNA分子の配列を決定すること、を含んでいてよい。例えば、DNA分子がナノポア検出デバイスに含まれるタンパク質イオンチャネルを通過する際に、イオンチャネルコンダクタンスの特徴的な変化が種々のヌクレオチドと関連付けられる。DNAがそれを通過する際のタンパク質の経時でのコンダクタンスをモニタリングすることにより、ナノポア検出デバイスは、ほんの1対の塩基長さから何十万の塩基長さまで、DNA鎖のシークエンシングを行うことができる。
【0071】
特定の態様では、本発明は、上述のように、ポア形成要素の検出のための方法を提供し、この方法は:ポア形成要素を含有していてよいサンプル溶液を提供すること;ナノポア全体に広がっているが検出要素は含有しない手段を含むナノポアデバイスを提供すること;ナノポアデバイスをこの溶液と接触させ、それによってナノポアの外側表面が溶液に浸漬され、ナノポアが溶液で充填されるようにすること;膜の両側に適切な電圧を印加すること;ならびに、電気伝導度を分析して溶液中にポア形成要素が存在するかどうか、および/または溶液中のポア形成要素の量を測定すること、を含んでいてよい。ポア形成要素が存在すると、ナノポアの両側にわたる電気伝導度が上昇する。
【0072】
ナノおよびマイクロ粒子カウントおよび分析: 抵抗パルスカウントに基づく粒子カウント(または「エレクトロゾーンセンシング(electrozone sensing)」)は、粒子分析の一般的な方法であり、市販のコールターカウンターの基礎である。1970年代に、DeBlois et al.は、プラスチック膜にエッチングされたサブμmの円柱形状ポアを、ナノメートルサイズの粒子(半径45nm)の検出に初めて使用したことを報告した(非特許文献20)。より最近では、Crooksのグループが、単体の多層カーボンナノチューブ(半径約65nm)を含む、Si34またはPDMSで支持されたエポキシ膜の適用を報告しており;サイズおよび表面電荷の異なる粒子を同時に分析した(非特許文献21)。Sohnのグループは、石英基材/PDMS膜に微細加工されたナノポア/チャネルを、ナノ粒子(半径43nm程度、約0.16pM)および生物分子のカウント、ならびに生物学的相互作用の検出へ適用することに成功したことを示した(非特許文献22)。動的光散乱法(非特許文献23)および電界中流体分離法(FFF)(非特許文献24)などのその他の技術が、ナノ粒子の分析への適用に成功している。
【0073】
本明細書ではまた、粒子のカウントおよび分析のためのダイヤモンドナノポアデバイスについても述べ、このデバイスは多くの場合:厚さを有し、第一および第二の側を有していて、第一の側が第二の側の反対側にあり、ならびに膜の厚さ全体にわたって膜を通って伸びるナノポアを有するダイヤモンド膜、を含む。通常、ナノポアを含むダイヤモンド膜が2つのコンパートメントを分離しており、この2つのコンパートメントには、通常、電解質溶液が含まれている。このデバイスは、膜の第一の側と第二の側との間に電界を印加するための手段;ナノポアを通る電流、または膜の第一の側と第二の側との間の抵抗をモニタリングするための手段、ならびに観測された電流または抵抗を処理して有用な結果を得るための手段、をさらに含んでいてよい。ナノポアデバイスの種々の態様を、例えばデータの取得および解析のための支援素子を提供するより大きなデバイス構造に組み込んでよい。膜は、2つ以上のナノポアまたはナノポアのアレイを含むように構成してよい。個々のナノポアの各々は、個々のチャンバーに封入されていてよく、そのような個々のチャンバーは、適切な支持構造上のアレイフォーマットに配列されていてよい。
【0074】
図10は、DMNP粒子アナライザーの概略図である。ダイヤモンド膜は、多くの場合、チャンバーの一体化された部分である。ナノポアは、ダイヤモンド膜に含まれていることが一般的であり、通常は、円錐形状をしており、分析すべき粒子を含有するサンプルと接触するナノポアの開口部の方が小さい。ナノポアの小さい方の開口部は2nmから500nmの範囲である。電圧を電極間に印加して、ナノポアを通るイオン電流を発生させる。ナノポアを通過する粒子は、ナノポアの電気抵抗または電気伝導度の一時的な変化を測定することによって容易に検出される。粒子がナノポアを通過すると、電流の一時的な短い減少が観測される。このような抵抗パルスの周波数は、粒子濃度に比例しており、一方、パルスの大きさおよび形状は、ナノ粒子の形状およびサイズを提供する。パルスの形状および持続時間を用いて、粒子の形状、サイズ、および/または電荷を測定することができる。パルスの周波数もまた、粒子の濃度を示し得る。この方法を用いて、粒子の濃度、形状、サイズ、および電荷を測定することができる。電場印加手段を介して、DCまたはAC電圧を印加してよい。典型的なDC電圧は、約10から約500mVの範囲である。典型的なAC電圧は、約2から約25mV rmsの範囲である。
【0075】
ダイヤモンドに基づくナノポア粒子アナライザーは、2〜100nmの範囲の粒子の分析に理想的であるが、2nmよりも小さい粒子、または100nmよりも大きい粒子の測定にも用いることができる。細胞、細菌、ウイルス、ポリマー粒子、イオン、分子、ならびに小分子、ペプチド、または高分子薬物の製剤および送達に用いられるナノ粒子が挙げられるがこれらに限定されない種々の粒子の試験が可能である。ナノポア粒子アナライザーはまた、環境水分析に、ならびに国土安全保障および軍事用途におけるセンサーとして用いることもできる。本発明の利用は、ナノ粒子に基づく新技術の爆発的な成長、および環境モニタリングにおける新しい規制によって推進されるであろう。
【0076】
ナノ磁気測定: 磁気測定を用いて、ダイヤモンドの負に帯電した窒素中心(NV-中心)を識別することができ、図11は、センサーデバイスのポアに局所的な磁場の概略図である。ダイヤモンド構造内の矢印は、局所磁場を表し、ポアを通る矢印は、ポアを流れるイオン電流を表す。ポアを通過する磁性/常磁性分子の概略を示す。この技術は、NV-中心が光学分光法によって識別され、従って、ポア電流を電気的な接続の必要なしに測定することができるという利点を有する。ポア電流は、ポアを通過する磁気的性質を有する分子によって改変されるため、このような分子の存在を測定し、その動きを研究することができる。
【0077】
液/液界面における電気分析: ダイヤモンド膜の重要な特徴は、一方の面を疎水性に、他方を親水性にし、この2つの間の界面をポアに対して定められた場所に作製する可能性である(例えば、膜のいずれかの面、ポアの入り口、またはポアの長さ方向のどこか)。これにより、非常に明確な安定した液/液界面のアレイを得ることができる。ポアは、特定の用途に応じて、円錐形状または先細り形状(上記参照)のいずれかであってよい。膜は、支持電解質を含有する有機溶媒またはゲル(例:ニトロベンゼン、もしくは1,2‐ジクロロエタン、もしくはその他の有機溶媒)と接触する電解質水溶液;イオン液体と接触する電解質水溶液などの、広範囲に及ぶ互いに不混和性である液体と共に用いてよい。通常の手法では、有機相/イオン液体によって1つの面およびポアの内側全体が湿潤されるような配置とする。有機層またはイオン液体相をゲル化して、さらなる機械的安定性を提供してもよい。水性サンプルは、血液、血漿、尿、唾液などの生物学的液体であってもよい。
【0078】
多くの用途において、設定は、一方がいずれかの液相中に配置される2つの電極を含み、これを用いて界面両側に電位を印加することができる。これらの電極は、電流測定にも用いられる。電流が比較的大きい状況では(例:>1〜10μAもしくはそれを超える電流)、4電極システムを用いてよく、ここで、各相の全体部分中の1つの電極を電流の測定/発生に用い、各相中の別の電極(界面近傍)を、界面電位の低下の測定に用いる。
【0079】
これらの膜の主たる用途は、イオン移動ボルタンメトリーによるイオン移動の測定である。この場合、有機またはイオン液体相がDMNPの一方の側であることが多く、第二の相は、分析すべき溶液である(天然水、湖水、海水、廃水などを例とする水性サンプル;上述のような生物学的液体)。有機相は、対象であるイオンと相互作用を起こす特定のイオノフォア、またはその他の錯体化剤(例:クラウンエーテルまたはその他のリガンド)、ならびに支持電解質を含んでよいが、含まなくてもよい(用途に応じる)。一定の電位を印加するか、または電位を任意の波形を有する走査またはパルスの形として、水性サンプルから有機相へのイオンの移動を誘発し、電流を測定する(時間および/または電位の関数として)。電流測定分析を、所定の時間の間イオンが水性サンプルから有機/イオン液体相へ蓄積され、次に、電位の変化によってストリッピングされる条件下で実施してもよい。このデバイスは、静止溶液または流動条件下にて用いてよい。この分析は、Ca2+、K+、Na+などの単純イオン(および全塩分析)およびイオン性薬物分子などのより複雑なイオン、DNA断片、ならびにタンパク質に適用可能である。特定の例では、イオンは界面を越えて移動する必要はなく、界面で蓄積される。ここで、一般的にはストリッピング分析プロトコル(またはインピーダンス分析)を用いて、堆積した物質の量を測定する。この手法は、いくつかの複雑なイオンに、また、帯電粒子にも用いることができ、既述の手法を補完する粒子カウントの手段を提供する。
【0080】
類似の装置を用いて、2つの不混和性電解質溶液間の界面を通る電子移動反応を実施することが可能である。この場合、有機相またはイオン液体相は、電子ドナーまたは電子アクセプターを含有する。界面の両側に印加される電位を調整することにより、有機(またはイオン液体)相のこれらの分子と水相中の特定の分析物との間の選択的界面電子移動プロセスを発生させることが可能である。対応する電流の応答が分析に用いられる。例えば、このようにして種々の抗酸化剤およびその他の分子の分析を行うことができる。例えば、対象である分析物が親油性有機分子であるいくつかの場合では、この分析物は有機相中に存在してよく、水相は、電子ドナーもしくはアクセプター(電子移動による検出のため)を含むか、またはイオン移動を介する検出のためのシンク(sink)として作用する。
【0081】
説明した界面を修飾して、選択性を高め、検出可能な分子およびイオンの範囲を広げることができる。修飾剤としては:金属ナノ粒子(予め形成されたもの、または膜のポアに金属イオンから直接堆積させたもの);半導体ナノ粒子;脂質;ポリマー;イオン性および両性イオン性界面活性剤;導電性ポリマー;酸化還元ポリマーが挙げられる。金属および半導体ナノ粒子を用いて、説明した分析のいくつかのために液/液界面を通る電子移動を高めることができ、例えば酸素の検出が促進される。分光電気化学による分析を実施するためのさらなる範囲があり、ここでは、電流応答が、紫外可視分光法および蛍光(共焦点測定を含む)を含む分光測定と組み合わされる。電気化学発光による光の発生(例:種々の抗酸化剤の検出のため)と組み合わされた電気化学分析は、既に強調したダイヤモンド膜の優れた光学的性質のために、強力で高感度である。
【0082】
電位差測定も、既述の2相液/液配置のタイプ、または膜中のポアがイオン選択性ポリマーマトリックス(もしくは有機溶液)で修飾され、参照電極(例:Ag/Ag/Cl)を含む水溶液が第二の参照電極によって接触される分析物溶液から分離されている3相システムにより、このダイヤモンド膜で実現することができる(非特許文献25)。この2つの電極間の電位を測定することにより、サンプル中のイオン濃度に関する情報を得ることができる。このタイプのデバイスにより、電流/電位差測定の組み合わせを実施することもできる。
【実施例】
【0083】
実施例1:ダイヤモンド表面の官能化
接触角測定および共焦点顕微鏡法を用いることで、ダイヤモンド表面を正しく修飾することができることが示された。本実施例では、表面修飾は、シラン処理剤3‐シアノプロピルジメチルクロロシランを用いて行った。
【0084】
観測技術は、当業者に公知の標準的な技術を用いた。
【0085】
図12aおよび12bは、多結晶真性ダイヤモンドに対する、官能化前(31.3°)および3‐シアノプロピルジメチルクロロシランによる官能化後(52.4°)の水の接触角を示す写真であり、この接触角の変化は、ダイヤモンド表面での3‐シアノプロピルジメチルクロロシランの単層の形成に起因するものである。
【0086】
実施例2:ポア形成
多結晶真性ダイヤモンドに、衝撃レーザードリル加工によるポアの作製も行った。本実施例では、図13の顕微鏡画像から分かるように、作製したポアは円錐形状であり、円錐の最も広い部分で約6〜8μm、出口部で約1μmのサイズである。
【0087】
このシステムに対する電流‐電圧曲線を作成し、図14に示した。この曲線は、円錐形状ポアシステムに対して予想される曲線と相関しており、ポアの各々の側に配置した2つの銀/塩化銀参照電極を用いて得られ、1M KClおよび10mM リン酸緩衝生理食塩水溶液(PBS)を含有する溶液中にて、ポアを通る電流を印加した電圧の関数として測定した。
【0088】
ポアを通る電流を測定する能力により、移行の過程で電流を変化させることから、ポアを通過する広範囲におよぶ分析物を検出することが可能となる。
【0089】
本発明のデバイスおよび方法は、様々な態様の形態に組み込むことが可能であり、そのうちのいくつかを上記で実証し、説明したに過ぎないことは理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンチャネル記録;液‐液に基づくセンサー、および抵抗パルス粒子カウント
のためのセンサーデバイスであって;
少なくとも1つのセンサー素子;
を有し、
前記素子は、ダイヤモンド薄フィルム基材、および前記基材に含まれるナノポアまたはマイクロポアであるポアを有する、センサーデバイス。
【請求項2】
前記イオンチャネル記録が、単分子検出、バイオセンサー、およびDNAシークエンシングから選択される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記ダイヤモンド薄フィルム基材が、厚さ、第一の面、および第二の面を有し、前記第一の面は前記第二の面の反対側にある、請求項1または請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記ポアが、前記ダイヤモンド薄フィルム基材を貫通して延びている、請求項1から3のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記ポアが、円錐状、先細り状、円柱状、額縁状(picture frame)、前記ダイヤモンド薄フィルム基材の[100]面中の[111]ファセット面のエッチングピット、または半球状の形状を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記ポアが、低キャパシタンスおよび/または極低漏洩電流が得られるデバイスを提供する形状を有する、請求項1から5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項7】
2つ以上のポアを有する、請求項1から6のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項8】
ポアのアレイを有する、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
各ポアが、個々のチャンバー内に封入されており、各チャンバーは、支持構造上にアレイ状のフォーマットで配列されている、請求項7または請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記ポアが、1nmから100μmの範囲のサイズである、請求項1から9のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記ダイヤモンド薄フィルム基材の厚さが、10nmから1mmの範囲である、請求項3に記載のデバイス。
【請求項12】
前記ダイヤモンド薄フィルム基材が、テンプレート構造または層状構造を有する、請求項1から11のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記層状構造が、導電性の異なるダイヤモンドの層を有する、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記ダイヤモンド薄フィルム基材の表面が、3‐シアノプロピルジメチルクロロシランまたはその他のシランによるシラン処理、オゾン処理、表面酸化、表面ハロゲン化、分子の光化学的結合、またはこれらの組み合わせから選択される処理によって化学修飾されたものである、請求項1から13のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項15】
前記ダイヤモンド薄フィルム基材の前記表面が、親水性官能性および疎水性官能性を有
する、請求項14または請求項15に記載のデバイス。
【請求項16】
前記親水性官能性が、前記ダイヤモンド薄フィルム基材の第一の面に存在し、前記疎水性官能性が、第二の面に存在し;ならびに、前記第一および第二の面の間の境界は、前記ポアに対して確定された位置に存在する、請求項16に記載のデバイス。
【請求項17】
前記親水性官能性が、酸素終端表面を含み、および/または前記疎水性官能性が、水素終端表面を含む、請求項15または請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
脂質二重層または単層が、ダイヤモンド薄フィルム基材の表面に堆積されている、請求項1から17のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項19】
前記脂質二重層が、ポア全体に架かっている状態である、請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
前記センサー素子が、前記ポアの開口部に広がる単一のタンパク質イオンチャネルを含む、請求項1から19のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項21】
前記ダイヤモンド薄フィルム基材が、2つのコンパートメントを分離し、各コンパートメントは電解質溶液を含んでいる、請求項1から20のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項22】
電場を前記ダイヤモンド薄フィルム基材の前記第一の面および前記第二の面の間に印加するための手段;前記ナノポアを通る電流、または前記ダイヤモンド薄フィルム基材の前記第一の面および前記第二の面の間の抵抗をモニタリングするための手段、ならびに観測された電流または抵抗を処理して有用な出力を得るための手段、をさらに含む、請求項3から21のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項23】
データの取得および/または解析のための支援素子をさらに含む、請求項1から22のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項24】
分析物の単分子検出、センサー素子と分析物との間の相互作用の分析、またはイオン移動の測定のための方法であって、前記方法が:
分析物を含有する溶液を提供すること;
前記分析物を認識するセンサー素子を含むデバイスであって、ここで、前記センサー素子がダイヤモンド薄フィルム基材および前記基材に含まれるナノポアまたはマイクロポアであるポアを有するデバイス、を提供すること;
前記デバイスを前記溶液と接触させ、それによって前記センサー素子の外側表面が前記溶液に浸漬され、内側ポア表面が前記溶液と接触するようにすること;
前記ダイヤモンド薄フィルム基材の両側に電圧を印加すること;ならびに、
観測された電気伝導度を用いて前記分析物の濃度を測定すること、
を含む、方法。
【請求項25】
前記センサー素子が前記分析物と結合し、前記結合イベントが、前記センサー素子を通る電流の減少を引き起こす、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ポアが前記溶液で充填される、請求項24または請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記溶液が、少なくとも1つの分析物、および電解質、有機溶媒、ゲル、生物サンプル、またはこれらの組み合わせから選択される連続相を含む、請求項24から26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記分析物が、化学分子、生物分子、イオン、ポリマー、脂質、粒子、およびこれらの組み合わせから選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
脂質二重層がダイヤモンド薄フィルム基材の表面に堆積されている、請求項24から28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記脂質二重層が、ポア全体に架かった状態である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記センサー素子が、前記ポアの開口部に広がる単一のタンパク質イオンチャネルを含む、請求項24から30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
タンパク質イオンチャネルが前記脂質二重層に挿入、除去される速度が、圧力を用いて制御される、請求項24から31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記分析物が、候補薬物であり、前記センサー素子が、薬物標的または修飾された薬物標的であり、および、前記方法が、薬物スクリーニングのためのものである、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
前記分析物が、DNAまたはRNA種であり、前記センサー素子が、特定のヌクレオチドの種類を認識するものであり、前記方法が、核酸シークエンシングのためのものである、請求項24から33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記溶液が、2つの不混和性液体を含む、請求項24から34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記不混和性液体が、支持電解質を含有する有機溶媒と接触する電解質水溶液、およびイオン液体と接触する電解質水溶液から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記不混和性液体の間の界面が、金属ナノ粒子、半導体ナノ粒子、脂質、ポリマー、イオン性および両性イオン性界面活性剤、導電性ポリマー、酸化還元ポリマー、ならびにこれらの組み合わせから選択される修飾剤を用いて修飾される、請求項35または請求項36に記載の方法。
【請求項38】
電気化学分析が分光測定と組み合わされる、請求項34から37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記分析物が、ポア形成要素であり、前記デバイスが、ナノポアもしくはマイクロポアであるポア、および前記ポアに広がる橋渡し手段を含むが、センサー要素は含まず;ならびに、前記方法が、前記ポアを前記溶液に浸漬させ、それによって、前記ポアの外側表面が前記溶液に浸漬され、前記ポアの内側が前記溶液で充填される工程を含む、請求項24から38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
請求項1から23のいずれか1項に記載のデバイスを用いることを含む分析の方法。
【請求項41】
細胞;細菌;ウイルス;ポリマー粒子;イオン、分子;ならびに小分子、ペプチド、または高分子薬物の製剤および送達に用いられるナノ粒子、を分析するためのものである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
単分子の検出、DNAの検出およびシークエンシング、粒子カウント、薬物送達システ
ムのモデリング、液‐液界面プロセスの研究、血液分析、イオン移動ボルタンメトリーもしくは電位差測定分析、ならびに/またはタンパク質イオンチャネルによる新薬のスクリーニング、のためのものである、請求項40または請求項41に記載の方法。
【請求項43】
環境水分析、国土安全保障のためのセンサーにおける分析、および/または軍事用途における分析、に用いるためのものである、請求項40から請求項43のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12a】
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【図12b】
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【図13】
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【図14】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−521222(P2011−521222A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509002(P2011−509002)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際出願番号】PCT/GB2009/001229
【国際公開番号】WO2009/138760
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(501335276)ザ ユニバーシティ オブ ワーウィック (5)
【出願人】(510302881)ユニバーシティ オブ ユタ (1)
【Fターム(参考)】