説明

少なくとも1種類のα3β4nAChR拮抗薬又はその製薬的に受容される塩を含む方法及び組成物

本発明は、胃腸分泌と、該胃腸分泌を惹起する胃腸状態とを処置し、改変し、及び/又は管理するための方法及び製剤に関する。少なくとも1種類のα3β4nAChR拮抗薬を用いる方法と、少なくとも1種類のα3β4nAChR拮抗薬又はその製薬的に受容される塩を含む方法も包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許出願No.11/698,131(2007年1月26出願)に対する優先権を主張するものであり、該特許出願は、米国非仮特許出願No.10/798,421(2004年3月12日出願)と米国仮特許出願No.60/454,527(2003年3月14日出願)の一部継続出願であり、これらの出願の利益を主張するものである、これらの出願は、何らかの事情で、それらの全体において本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、治療を必要とする対象における、少なくとも1つの胃腸状態を治療するための方法及び製剤であって、少なくとも1種類のα3β4nAChR拮抗薬又はその製薬的に受容される塩の治療有効量を含む組成物を該対象に投与することを含む方法及び製剤を含む、この場合、少なくとも1種類のα3β4nAChR拮抗薬は、nAChRのα3β4サブタイプに対して1.0x10−6〜1x10−9の範囲のIC50値を示す、又はα3β4nAChRサブタイプに対して少なくとも1種類の他のnAChRサブタイプに比べて少なくとも2倍大きい効力を示す。本発明はさらに、胃腸分泌物の異常な増加に悩む対象における胃腸分泌物を低減する方法であって、N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミン又はその製薬的に受容される塩の胃腸分泌物低減量を該対象に投与することを含む方法に関する、この場合、該N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミン又はその製薬的に受容される塩は調節放出製剤の形態で投与される。
【背景技術】
【0003】
最近数年間に、ニューロン性アセチルコリン受容体(nAChR)の分子生物学及び薬理学が研究されている。これらのnAChRsは現在、それらの組織分布と機能的特性によって神経系、心臓血管系、免疫系及び神経筋系上のシナプスにおける迅速なシグナル伝達を差別的に調節するリガンドゲート化イオンチャンネル(ligand-gated ion channels)のファミリーとして認識されている。nAChRsは、それらのサブユニット成分に基づいて名づけられ、多様なサブユニットから形成されるペンタマー機能モチーフを有すると考えられる。現在までに、11のnAChRサブユニット(α2〜9とβ2〜4)が同定されている。G. Kenneth Llyod and Michael Williams, Neuronal Nicotinic Acetylcholine Receptors as Novel Drug Targets, 292 J. Pharmacology & Experimental Therapeutics, 461-67 (2000)。
【0004】
nAChRsの既知ネイティブ構築体の化学量論及び可能な機能に基づいて、これらの受容体の作用を利用するために新薬療法の推定標的が開発されつつある。現在までのこの研究の焦点は、種々な中枢神経系(CNS)状態(例えば、認識機能障害)、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、加齢関連記憶障害、疼痛、パーキンソン病、精神分裂病、うつ病及び不安症)、癲癇、注意欠乏/活動亢進障害(ADHD)、禁煙、神経学的状態(例えば、トゥーレット症状群)、肥満、炎症及び嗜癖(例えば、コカイン及びアルコール)の治療に関連して、nAChRサブタイプ(例えば、α4β2、α7及びα6β3)における選択的リガンドに主として向けられてきた。上記文献464-66頁参照。
【0005】
胃腸病学におけるnAChRに基づく療法の治療利益が、喫煙者における潰瘍性結腸炎の危険性が低下するという観察と、ニコチンそのものを含むニコチンアゴニストが効果的であると考えられるという提案に関連しうることを、幾つかの研究が示唆している。上記文献466頁。現在までに、胃腸(GI)障害を治療するために、nAChRサブタイプにおけるニコチンアゴニストの開発は成功していない。
【0006】
nAChR指向性化合物(nAChR directed compounds)の開発を専門にする企業であるTargaceptは、潰瘍性結腸炎に関するプログラムを2002年10月に発表した。米国特許No.6,166,048は、サイトカイン分泌と関連炎症過程を変えるためのnAChR指向性薬剤の可能な利益を開示する。しかし、この開示は、特定のnAChRサブタイプを胃腸状態に、又は腸運動性及び/又は下痢症状に影響を与えるためのこのような受容体の使用に結び付けていない。
【0007】
実際に、腸機能に対するnAChR遮断薬の効果は、歴史的に、当該技術分野では好ましくない効果と見なされており、例えば、心臓血管系、視力、膀胱機能、唾液及び汗に対する効果のような、他の末梢作用に関連付けられている。一般に、これらの効果は、“神経節遮断効果”によると見なされている。Laurence L. Brunton, John S. Lazo and Keith L. Parker, 9 Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics 181-84 (8th ed. 1990).。例えば、米国特許出願公開No.2005/0033522は、リガンド・ゲート化イオンチャンネルの分子モデルを作製するためのコンピューター・システムに関する。該公開は、α3β4サブユニットにおけるnAChRが心臓血管及び胃腸作用に役割を果たすことを述べている。しかし、このような胃腸作用は、“好ましくない副作用”と同定される、便秘を惹起する運動性に向けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許No.6,166,048
【特許文献2】米国特許出願公開No.2005/0033522
【特許文献3】WO 0033812
【特許文献4】米国特許出願公開No.2002/0016370
【特許文献5】米国特許出願公開No.2002/0016371
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】G. Kenneth Llyod and Michael Williams, Neuronal Nicotinic Acetylcholine Receptors as Novel Drug Targets, 292 J. Pharmacology & Experimental Therapeutics, 461-67 (2000)
【非特許文献2】Laurence L. Brunton, John S. Lazo and Keith L. Parker, 9 Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics 181-84 (8th ed. 1990).
【非特許文献3】Stone et al., J. Pharm. Exp. Ther., 117(2), 169-183 (1956)
【非特許文献4】Stone et al., J. Med. Pharm. Chem., 5(4), 655-90 (1962)
【非特許文献5】Papke et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 297(2), 646-656 (2001)
【非特許文献6】Stone et al., British Med. J., No. 5016, 422-425 (1957)
【非特許文献7】Braddom et al., Am. J.Phys. Med. Rehabil., 70(5), 234-240, 1991
【非特許文献8】Stolerman et al., Pyschopharmacoliga, 28, 247-259, 1973
【非特許文献9】Tennant et al., NIDA Res. Monograph, 291-297, 1984
【非特許文献10】Rose et al., Clin. Pharm. Ther., 56(1), 86-99, 1994
【非特許文献11】Rose et al., Exp. Clin. Pharmacol., 6(3), 331-343, 1998
【非特許文献12】Zevin et al., Clin Pham. & Therapeutics, 68(1), 58-66, 2000
【非特許文献13】Reid et al., Neuropsychopharmacology, 20(3), 297-307, 1999
【非特許文献14】Sandberg et al., Lancet, 352(9129), 705-706, 1998
【非特許文献15】Young et al., Clinical Therapeutics, 23(4), 2001
【非特許文献16】Silver et al., Child and Adolescent Psych., 40(9), 1103-1110, 2001
【非特許文献17】Bear et al.,Am.J.Physiol.,186,180-86,1956
【発明の概要】
【0010】
本発明は、α3β4含有サブユニット受容体(例えば、(α3)(β4)(αn)、この場合、n=0〜9、例えばn=5))でのnAChRの選択的阻害が例えば、心臓血管系、視力、膀胱機能、唾液及び汗に対する効果のような、他の効果の従来のプロフィル及び発生なしに、腸機能に対して選択的効果を達成することを意外にも提供する。
【0011】
腸機能に対する効果は、非GI患者若しくは対象における、腸液と電解質分泌を調節すること、例えば、下部腸液含量を低下させるような、腸分泌を低下させることであり、これは、例えば便秘を惹起する選択的効果として実証される。腸液及び電解質の分泌の調節は、腸運動性の変化を付随する可能性もある。
【0012】
α3β4nAChRサブタイプに作用する薬剤から利益を得るであろうGI状態は、通常は、癌関連下痢(例えば、大腸癌)、カルチノイド症候群、化学療法及び放射線療法関係下痢、後天性免疫不全症候群(AIDS)関連下痢、感染性下痢(例えば、細菌性及びウイルス性)、食物不耐性及び吸収不良関連下痢、抗生物質を含む医薬品関係下痢、セリアック病、及び内分泌性疾患(例えば、アジソン病関連下痢)又は例えば過敏性腸症候群(IBS)のような混合分泌/運動性基準の異常な亢進の状態、さらに例えば、下痢関連若しくは関係症状、慢性下痢、機能性下痢、炎症性腸疾患及び顕微鏡的大腸炎の下痢関連症状に関連する、腸分泌機能の亢進又は変化を伴う状態を包含する。
【0013】
例えば、メカミラミンHCl(N−2,3,3−テトラメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−アミン塩酸塩)が、当該技術分野で神経節遮断薬として知られる。Stone et al., J. Pharm. Exp. Ther., 117(2), 169-183 (1956); Stone et al., J. Med. Pharm. Chem., 5(4), 655-90 (1962)。これはまた、血液脳関門を横切って、選択的ニコチン受容体拮抗薬として機能することも認められている。Papke et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 297(2), 646-656 (2001)。該化合物は、例えば高血圧のような、心臓血管状態の治療薬として用いられている。Stone et al., British Med. J., No. 5016, 422-425 (1957)。これはまた、自律神経性還流不良(autonomic dysreflexia)の治療に(Braddom et al., Am. J.Phys. Med. Rehabil., 70(5), 234-240, 1991)に、禁煙の補助物質(an aid in smoking cessation)として(Stolerman et al., Pyschopharmacoliga, 28, 247-259, 1973; Tennant et al., NIDA Res. Monograph, 291-297, 1984; Rose et al., Clin. Pharm. Ther., 56(1), 86-99, 1994; Rose et al., Exp. Clin. Pharmacol., 6(3), 331-343, 1998; Zevin et al., Clin Pham. & Therapeutics, 68(1), 58-66, 2000; 及び WO 0033812)、コカイン依存症の軽減の補助物質として(Reid et al., Neuropsychopharmacology, 20(3), 297-307, 1999)にも用いられており、例えばトゥーレット症状群のような、ある一定のCNS状態の治療において研究されている(Sandberg et al., Lancet, 352(9129), 705-706, 1998; Young et al., Clinical Therapeutics, 23(4), 2001; Silver et al., Child and Adolescent Psych., 40(9), 1103-1110, 2001)。その上、胃腸の分泌又は分泌/運動性に対するメカミラミンの効果の可能な治療利益に関しては、何も述べられていない。
【0014】
さらに、米国特許出願公開No.2002/0016370とNo.2002/0016371は、それぞれ、例えば、物質嗜癖、禁煙、高血圧、高血圧性発症、トゥーレット症状群と他の振戦、癌、アテローム発生プロフィル(atherogenic profile)、神経精神障害、慢性疲労症候群、クローン病、自律神経性還流不良、及び痙攣発生的腸障害(spasmogenic intestinal disorders)のような医学的状態の治療に用いるためのエキソ−(R)−N−2,3,3−テトラメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−アミン又はその製薬的に受容される塩、及びエキソ−(S)−N−2,3,3−テトラメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−アミン又はその製薬的に受容される塩の使用を開示している。しかし、これらの公開は、特定受容体に関しても、GI状態に効果を及ぼすための特定受容体への薬剤アフィニティの利用に関しても教示していない。これらの公開はまた、該状態のどの状況(aspects)又は症状が治療されうるかに関する特異性を有さず、特定の標的としての下痢関連症状を同定していない。
【0015】
慣用的製剤を用いて、塩酸メカミラミンを経口投与すると、該化合物がほぼ完全にかつ迅速に胃腸管から吸収されて、最大血漿濃度の迅速な達成をもたらすことが知られている(Bear et al.,Am.J.Physiol.,186,180-86,1956)。例えば、Youngらは、慣用的製剤中での2.5mg用量の塩酸メカミラミンの成人への投与が、最大血漿濃度(Cmax)約7.89ng/ml及び最高血漿濃度に達するまでの時間(Tmax)3.11時間を生じることを報告している。さらに、慣用的製剤中での成人への塩酸メカミラミン7.5mg投与量が、Cmax23.68ng/ml及びTmax3.04時間を生じるので、該薬物動態学的パラメータが投与量に比例することが報告されている(Young et al.,Clinical Therapeutics,23(4),2001)。このレポートはまた、慣用的製剤を用いて投与されたメカミラミンの平均排出半減期が、2.5mg又は7.5mgの投与量レベルで約10.1時間〜約10.5時間であることを示している。Youngらは報告していないが、当業者は、このデータから、メカミラミンのピーク血漿濃度の、投与後24時間のメカミラミンの血漿濃度に対する予想比率が約4:1になることを算出することができる。さらに、メカミラミンのピーク血漿濃度の約50%が約14時間維持され、24時間血漿濃度レベルがピーク血漿濃度の約25%未満であることが予想される。高血圧対象の治療に用いられる典型的な用量は、約25mg/日であり、慣用的な製剤を用いて投与される。この用量から、当業者は、メカミラミンのピーク血漿濃度が約78.9ng/mlであると予想すると考えられる。
【0016】
しかし、この方法でのメカミラミンの1日1回投与は、性機能障害、毛様体筋麻痺、口腔乾燥症、発汗減少、体位性低血圧、低体温症、振戦(tremors)、抗利尿作用、痛覚抑制(antinociception)、視力障害、性的不能、排尿困難、振戦(tremor)、舞踏病型運動、精神異常、神経質、うつ病、不安、不眠症、不明瞭言語、衰弱、疲労、鎮静作用、頭痛、便秘及び腎不全を包含する、好ましくない副作用を惹起しうる血漿濃度レベルを生じる(Young et al.,Clinical Therapeutics,23(4),2001)。心臓血管状態、自律神経性還流不良を治療するため、禁煙を助成するため、コカインへの依存症とある一定のCNS状態(例えば、トゥーレット症状群)を軽減するためのメカミラミンの報告された臨床的有用性にも拘わらず、GI状態の治療に伝統的なやり方で用いられるメカミラミンは、好ましくない副作用をもたらす一次神経節遮断効果をまだ発揮するので、危険である。したがって、腸状態のために伝統的なやり方でメカミラミンによって治療される患者は、例えば、該薬物の心臓血管使用から連想されるような副作用を恐らく経験するであろう。さらに、上記で考察した参考文献は、幾つかの腸状態の治療におけるメカミラミンの使用について触れて述べているが、これらの参考文献のいずれも、該一次神経節遮断効果を低減する、予防する及び/又は最小にするために、このような腸状態に関連した該受容体サブタイプを標的にすることを追及していない。
【0017】
現在までに、当該技術分野は、例えば、癌関連下痢、カルチノイド症候群、化学療法関連下痢、放射線関連下痢、AIDs関連下痢、IBS及びIBDのような胃腸状態の効果的で、安全な、長期間治療法を有していない。例えば、化学療法関連下痢の治療では、ロペラミド(オピオイド剤)の短期間使用のみが認可されている。しかし、より大きく難治性の患者に対して、利用可能な療法は、オクトレオチド(ペプチド注射薬)の適応症認可外使用(off-label use)に限定され、このことは医療的な監視を必要とするのみでなく、費用もかかる可能性がある。したがって、効果的、便利、安全であると共に、対象のクォリティオブライフを改善する、多様な下痢関連状態の新しい治療法の緊急の必要性が存在する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、実施例3で得られた平均座位時収縮期/拡張期血圧のグラフである。
【図2】図2は、実施例3で得られた平均立位収縮期/拡張期血圧のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、少なくとも1種類のα3β4nAChR拮抗薬又はその製薬的に受容される塩の治療有効量を含む組成物を投与することを含む、少なくとも1つの胃腸状態を治療する方法であって、該組成物が調節放出製剤であり、該少なくとも1種類のα3β4拮抗薬がα3β4サブタイプnAChRに対して1.0x10−6〜1x10−9の範囲のIC50値を示す、又はnAChRのα3β4サブタイプに対して他のnAChRサブタイプよりも少なくとも2倍大きい効力を示す方法を開示する。
【0020】
本発明はさらに、少なくとも1種類のα3β4nAChR拮抗薬又はその製薬的に受容される塩の治療有効量を含む組成物を対象に投与することを含む、治療を必要とする対象における腸分泌を調節及び/又は管理する方法であって、該組成物が調節放出製剤であり、該少なくとも1種類のα3β4nAChR拮抗薬がnAChRのα3β4サブタイプに対して1.0x10−6〜1x10−9の範囲のIC50値を示す、又はnAChRのα3β4nAChRサブタイプに対して、少なくとも1種類の他のnAChRサブタイプに比べて少なくとも2倍大きい効力を示す方法を提供する。
【0021】
本発明はさらに、N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミン又はその製薬的に受容される塩の治療有効量を含む組成物を投与することを含む、胃腸分泌の異常な亢進に悩む対象における胃腸分泌を低減する方法であって、該組成物が調節放出製剤であり、該N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミンがnAChRのα3β4サブタイプに対して1.0x10−6〜1x10−9の範囲のIC50値を示す、又はnAChRのα3β4nAChRサブタイプに対して、少なくとも1種類の他のnAChRサブタイプに比べて少なくとも2倍大きい効力を示す方法を提供する。
【0022】
本発明はさらになお、N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミン又はその製薬的に受容される塩の胃腸分泌低減量を対象に投与することを含む、胃腸分泌の異常な亢進に苦しむ対象における胃腸分泌を低減するための方法及び製剤であって、該N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミン又はその製薬的に受容される塩が調節放出製剤の形態で投与される方法及び製剤を提供する。
【0023】
本発明は、nAChRのα3β4受容体サブタイプを選択的に阻害して、腸機能に、即ち、例えば分泌のような胃腸機能に対する選択的効果を達成して、それによって、心臓血管系、視力、膀胱機能、唾液及び汗に対する他の効果の発生と、少なくとも1種類のα3β4拮抗薬を非GI方法で用いる場合に、例えばメカミラミンを心臓血管状態の治療として用いる場合に示される伝統的なプロフィルとを低減、管理及び/又は防止することによって、先行技術における欠陥と問題を克服する。
【0024】
胃腸分泌の変動(例えば、流体及び電解質の分泌の異常な亢進)を治療、調節及び/又は管理する方法は、少なくとも1種類のα3β4拮抗薬又はその製薬的に受容される塩の治療有効量を含む組成物を、このような治療、調節及び/又は管理を必要とする対象に投与することを包含する。胃腸分泌の変動は、少なくとも1種類の腸状態によって惹起される可能性がある。したがって、本発明は、胃腸分泌を減少させることによって、このような腸状態を直接又は間接的に軽減、防止及び/又は管理するためにも用いることができる。
【0025】
本発明によって治療、調節及び/又は管理することができる腸状態の例は、非限定的に、下痢関連若しくは関係症状、慢性下痢、機能性下痢、癌関連下痢(例えば、結腸癌)、カルチノイド症候群、炎症性腸疾患及び顕微鏡的大腸炎の下痢関連症状、化学療法及び放射線療法関係下痢、AIDS関連下痢、感染性下痢(例えば、細菌性及びウイルス性)、食物不耐性及び吸収不良関連下痢、抗生物質を含めた薬剤関与下痢、セリアック病、及び内分泌疾患(例えば、アジソン病関連下痢)、又は亢進した混合分泌/運動性基準の状態(conditions of an increased mixed secretory/motility basis)を包含する。さらに、例えば、亢進した分泌/運動性基準の状態は、非限定的に、機能性腸障害(過敏性腸症候群(IBS)、機能性腹部鼓脹、機能性下痢及び不特定の機能性腸障害を包含する);炎症性腸疾患(IBD);潰瘍性大腸炎;肉芽腫性腸炎;クローン病;小腸及び大腸の感染性疾患;幽門痙攣;腹部痙攣;軽度赤痢;憩室炎;急性全腸炎;神経原性腸障害(脾結腸曲症候群及び過敏結腸を包含する);痙攣性結腸炎;及び/又は上記状態のいずれかのの症状を包含する。当業者は、胃腸分泌及び/又は運動の異常な変化をもたらす、他の種類の腸及び/又は胃腸状態であって、本発明から利益を得る可能性があるものに熟知しているであろう。
【0026】
本明細書で用いる限り、“少なくとも1種類のα3β4拮抗薬”なるフレーズは、nAChRsに作用することができ、α3β4サブタイプに選択的であることができる、少なくとも1種類の薬剤を意味する。例えば、メカミラミン(N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミン)は、nAChRsに作用し、特に、α3β4サブタイプに作用する。
【0027】
本明細書で用いる限り、“胃腸分泌の異常な亢進”なる用語は、対象が、疾患又は異常な状態のために、胃腸管の流体及び電解質の分泌の亢進を経験する状況を意味する。このような状態は、非限定的に、下痢関連若しくは関係症状、慢性下痢、機能性下痢、癌関連下痢(例えば、結腸癌)、カルチノイド症候群、炎症性腸疾患及び顕微鏡的大腸炎の下痢関連症状、化学療法及び放射線療法関係下痢、AIDS関連下痢、感染性下痢(例えば、細菌性及びウイルス性)、食物不耐性及び吸収不良関連下痢、抗生物質を含めた薬剤関与下痢、セリアック病、及び内分泌疾患(例えば、アジソン病関連下痢)を包含する。さらに、現在認められていないが、IBS、IBD、クローン病又は潰瘍性大腸炎の同じ臨床症状、例えば、胃腸分泌の亢進、腹部不快感及び聞き取れる腸ノイズ、痙攣と腹痛、切迫排便、粘液で覆われた軟便排出、及び下痢を示すような状態又は疾患も包含される。本発明による胃腸分泌の変化は、当業者に知られた任意の方法で測定することができる。
【0028】
本明細書で用いる限り、“亢進した分泌/運動性基準”なる用語は、胃腸分泌の異常な亢進ばかりではなく、例えば、対象が疾患又は異常な状態のために胃腸運動性の亢進を経験する状況のような、胃腸運動性の亢進もの組み合わせを意味する。このような疾患及び/又は状態は、非限定的に、現在認められている疾患、例えば機能性腸障害(過敏性腸症候群(IBS)、機能性腹部鼓脹、機能性下痢及び不特定の機能性腸障害を包含する);炎症性腸疾患(IBD);潰瘍性大腸炎;肉芽腫性腸炎;クローン病;小腸及び大腸の感染性疾患;幽門痙攣;腹部痙攣;軽度赤痢;憩室炎;急性全腸炎;神経原性腸障害(脾結腸曲症候群及び過敏結腸を包含する);痙攣性結腸炎;及び/又は上記状態のいずれかの症状を包含する。
【0029】
本明細書で用いる限り、“N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミン”なる用語は、例えば、純粋なエキソ−(R)−N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミン、エキソ−(S)−N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミン、エンド−(R)−N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミン、及びエンド−(S)−N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミンのような、N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミンの純粋な立体異性体、又は特に指定しない限り、任意の及び全ての割合での、エキソ−(R)−N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミン、エキソ−(S)−N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミン、エンド−(R)−N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミン及びエンド−(S)−N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミンを包含する、N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミンの任意の及び全ての可能な立体異性体の混合物を包含する。さらに、この定義には、例えば、2つのエナンチオマー、エキソ−(R)−N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミンとエキソ−(S)−N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミンが等量で存在する、N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミンの立体異性体の混合物も包含される。このような混合物を、本明細書では、“ラセミ組成物”と呼ぶ。この定義には、さらに、1つの立体異性体が他の立体異性体よりも多い量で存在する、N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミンを含む混合物も包含される。例えば、該混合物は、エキソ−(R)−N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミン立体異性体が他の立体異性体よりも多い量で存在するN−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミンを含むことができる。このような混合物は、本明細書では、“富化(R)−N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミン”組成物と呼ばれる。或いは、該混合物は、エキソ−(S)−N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミン立体異性体が他の立体異性体よりも多い量で存在するN−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミンを含むことができる。このような製剤は、本明細書では、“富化(S)−N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミン”組成物と呼ばれる。さらに、富化混合物は、エキソ−(R)−N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミン立体異性体が、他方の立体異性体よりも90%以上多い量で存在する支配的異性体であるN−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミンを含むことができる。このような混合物は、本明細書では、“実質的に純粋な(R)−N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミン”組成物と呼ばれる。或いは、富化混合物は、エキソ−(S)−N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミン立体異性体が他の立体異性体よりも90%以上多い量で存在するN−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミンを含むことができる。このような製剤は、本明細書では、“実質的に純粋な(S)−N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミン”組成物と呼ばれる。当業者は、“富化”エキソ−(S)−N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミンが“実質的に純粋な”エキソ−(S)−N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミンを包含することを充分に理解するであろう。N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミンが本発明の任意の製剤中に1つ以上の製薬的に受容される塩として存在しうることも考えられる。
【0030】
本明細書で用いる限り、“調節放出”製剤若しくは投与形なる用語は、製剤からの薬物の好ましい放出を達成する医薬的製剤(pharmaceutical preparation)を包含する。“調節放出”なる用語は、“持続放出(extended-release)”及び“遅延放出(delayed-release)”製剤、並びに持続放出と遅延放出の両方の特徴を有する製剤を包含する。対象への調節放出製剤の投与は、医薬的活性化合物の放出速度に影響を与えることによって、対象における該化合物の多くの薬物動態パラメータの1つを変えるように設計することができる。このような薬物動態パラメータの例は、非限定的に、最大血漿濃度(Cmax)、製剤の投与後に最大血漿濃度に達するまでの時間(Tmax)、血漿濃度−時間曲線下面積(AUC)、ピーク:トラフ変動比率(ピーク:トラフ血漿比率又は変動指数(fluctuation index)(FI)とも呼ぶ)、見かけの排出半減期(t1/2)、見かけの排出速度(Kelim)、用量/AUCとして計算した見かけのクリアランス(Cl)及び見かけの分配量(apparent volume of distribution)(Vd)を包含する。
【0031】
“持続放出”製剤は、医薬的活性化合物のある一定血漿濃度が維持される時間、又は医薬的活性化合物の治療有効量の影響若しくは効果が対象において観察される時間を、慣用的製剤に比べて延長することができる。このような製剤は、本明細書では、“持続放出製剤”と呼ぶ。
“遅延放出”製剤は、医薬的活性化合物の放出を特定期間にわたって遅延させるように設計することができる。このような製剤は、本明細書では、“遅延放出”又は“遅延開始(delayed-onset)”製剤又は投与形と呼ぶ。
【0032】
本明細書で用いる限り、“即時放出製剤(immediate-release formulation)”なる用語は、少なくとも1種類のα3β4拮抗薬の約50%より多くが約2時間未満内に投与形から放出される、少なくとも1種類のα3β4拮抗薬を含む製剤を表す意味である。このような製剤は、本明細書では、“慣用的製剤(conventional formulations)”とも呼ぶ。
【0033】
本発明の方法及び製剤は、調節放出及び調節放出性と即時放出性との組み合わせを示す、成分のあらゆる可能な組み合わせを含有するものを包含する意味である。例えば、本発明の製剤及び方法は、持続放出性と即時放出性の両方、又は遅延放出性と即時放出性の両方、又は持続放出性と遅延放出性の両方、又は3種類の性質全ての組み合わせを示す、複数の成分を含有することができる。例えば、即時放出成分と持続放出成分の両方を含む製剤はカプセル内で一緒にすることができ、このカプセルを次に、遅延放出効果を与えるように腸溶性被膜で被覆する。
【0034】
本発明の製剤、即ち組成物と方法は、非限定的に、経口、鼻腔内、頬側、舌下、経皮及び直腸投与に適しており、これらの投与のいずれも、調節放出製剤又は複合調節放出/即時放出製剤(combined modified-release and immediate-release formulation)の形態をとることができる。
【0035】
本明細書で用いる限り、“鼻腔内”投与なる用語は、鼻腔の粘膜を通しての吸収を用いて対象に化合物を投与する形式、又は鼻腔を通してなされる、いずれの投与をも包含する意味である。
【0036】
本明細書で用いる限り、“経口”なる用語は、口腔を介して対象に化合物を投与するような形式を意味する。口腔なる用語は、“頬側投与”及び“舌下投与”なる用語を包含する意味であり、これらの用語は、口腔の粘膜を通しての吸収を用いて対象に化合物を投与するような形式、又は薬物が口腔から吸収される場合になされる、いずれの投与をも包含する意味である。
【0037】
本明細書で用いる限り、“経皮投与”なる用語は、皮膚を通しての吸収を用いて、対象に化合物を投与するような形式を包含する意味である。“経皮製剤”なる用語は、対象に化合物を経皮投与するために適しているような医薬的製剤、デバイス(device)及び投与形式を包含する意味である。このような製剤は、医薬的活性化合物の他に、適当である、医薬的に不活性なキャリヤー又は作用剤(agents)を含むことができる。
【0038】
本明細書で用いる限り、“直腸投与”なる用語は、直腸を通しての吸収を用いて、対象に化合物を投与するような形式を意味する。“直腸製剤”なる用語は、例えば座薬のような、直腸に適するような医薬的製剤を包含する、或いは、該製剤は浣腸剤として提供することもできる。
【0039】
本明細書で用いる限り、“製薬的に受容される賦形剤”なる用語は、医薬的製剤中の他の成分と相容性であり、治療的に受容される量で投与した場合に対象に有害でない化合物を包含する。
【0040】
本明細書で用いる限り、“製薬的に受容される塩”なる用語は、対象によって生理的に許容される塩を包含する。このような塩は、無機酸及び/又は有機酸から製造することができる。適当な無機酸の例は、非限定的に、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、及びリン酸を包含する。有機酸は、脂肪族酸、芳香族酸、カルボン酸及び/又はスルホン酸でありうる。適当な有機酸は、非限定的に、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、フマル酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、粘液酸、酒石酸、パラ−トルエンスルホン酸、グリコール酸、グルクロン酸、マレイン酸、フロ酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、サリチル酸、フェニル酢酸、マンデル酸、パモ酸(pamoic acid)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、パントテン酸、ベンゼンスルホン酸(ベシラート)、ステアリン酸、スルファニル酸、アルギニン酸、ガラクツロン酸等を包含する。
【0041】
本明細書で用いる“治療有効量(therapeutically effective amount)”なる用語は、単独で又は他の薬物と組み合わせたときに、非限定的に、腹部不快感及び聞き取れる腸ノイズ、痙攣と腹痛、切迫排便、粘液で覆われた軟便排出及び下痢を包含する、胃腸分泌の亢進を惹起する状態又は疾患の少なくとも1つの症状を軽減するために充分である、少なくとも1種類のα3β4拮抗薬若しくはその製薬的に受容される塩の量を意味する。
【0042】
本明細書で用いる“副作用”なる用語は、胃腸分泌の変化以外の、少なくとも1種類のα3β4拮抗薬の投与後に対象に見られる生理的効果を意味し、該生理的効果は自律神経系に対する効果に起因することも、しないこともありうる。例えば、このような効果は、非限定的に、対象の心拍数、血圧、視力及び膀胱機能に対する効果を包含する。
【0043】
本明細書で用いる限り、“最初の投与”なる用語は、本発明の製剤を対象に最初に投与することを意味する。或いは、この用語は、本発明の製剤を対象に単回投与することを意味する。
【0044】
本発明によると、少なくとも1種類のα3β4拮抗薬によるα3β4受容体サブタイプの選択的阻害は、例えば分泌のような腸機能に対して選択的効果を達成して、例えば心臓血管系(例えば、血圧及び心拍数)、視力、膀胱機能、唾液及び汗に対するような、他の効果を軽減及び/又は防止することができる。
【0045】
例えば、メカミラミンは下記IC50値を有する:
【0046】
【化1】

【0047】
Roger L.Papke et al., Analysis of Mecamylamine Stereosiomers on Human Nicotinic Receptor Subtypes, 297 J. Pharmacology & Experimental Therapeutics 646, 648 Table 1 (2001)。このデータから、メカミラミンは、分析した他のnAChRサブタイプから考えて、α3β4受容体により大きい阻害を示す。例えば、α3β4受容体サブタイプにおいてラセミ・メカミラミンは640〜90nMのIC50値を有し、対照的に、α4β2受容体サブタイプにおいては、IC50値は2.5〜0.6μMであり;α3β2においては、IC50値は3.6〜1.2μMであり;α7においては、IC50値は6.9〜1.6μMであった。メカミラミンのR立体異性体とS立体異性体の両方は、試験した他の受容体(即ち、α4β2、α3β2、α7、及びα1β1δε)に比べて、α3β4受容体において同様なIC50値を示す。したがって、メカミラミン(ラセミと、R−及びS−立体異性体)は、nAChRのα3β4サブタイプに対して10−7〜10−9の範囲である、例えば420〜640nMの範囲であるIC50値を示す。さらに、メカミラミンはnAChRのα3β4サブタイプに対して、他のnAChRサブタイプの少なくとも1つの効力の少なくとも2倍の効力を示す(640〜90nMのIC50値によるα3β4サブタイプにおけるラセミ・メカミラミンを2.5〜0.6μMのIC50値によるα4β2サブタイプに比較する)。幾つかの実施態様では、メカミラミンはnAChRのα3β4サブタイプに対して、他のnAChRサブタイプの少なくとも1つの効力の少なくとも2.5倍の効力を示し、他の実施態様では、メカミラミンはnAChRのα3β4サブタイプに対して、他のnAChRサブタイプの少なくとも1つの効力の少なくとも3倍の効力を示す。
【0048】
受容体サブタイプの間に効力差があるとするならば、メカミラミンはα3β4受容体サブタイプの選択的阻害を立証する。メカミラミンのIC50値の比較は、医薬的化合物がα3β4拮抗薬であるかどうかを知るための可能な方法の1つを具体化することになる。
【0049】
選択的GI機能性(即ち、nAChR受容体系のα3β4サブタイプにおける作用)対一般的神経節遮断効果は、投与量と患者へのデリバリー速度によっても操作することができる。例えば、高血圧を治療するためのメカミラミンの伝統的な投与量約25mg/日に反して、メカミラミンの選択的GI機能性は、実質的に低い1日量で、例えば、約0.5mg〜約10mgの範囲で、さらに例えば、約1mg〜約6mgで達成することができる。さらに、本発明によるメカミラミンの投与量の吸収速度を調節することによって、伝統的なメカミラミンの投与量に比べて低いピーク血漿濃度を達成することができる。伝統的なメカミラミン治療よりも低い用量を投与すること並びにデリバリー速度を調節することは、選択的なGI機能性を得るためのさらなる方法を与える。
【0050】
さらに、本発明の方法は、N−2,3,3−テトラメチルビシクロ[2.1.1]ヘプタン−2−アミンのピーク:トラフ血漿レベル比率約4未満:1(less than about 4:1)を生じ、幾つかの実施態様では、約3未満:1を生じ、幾つかの実施態様では、約2未満:1を生じる。ピーク:トラフ比率に関して本明細書で用いる限り、“ピーク”は最大血漿濃度(又はCmax)を意味し、“トラフ”は最初の投与後24時間目の血漿レベルを意味し、該24時間期間中は、本発明の製剤の単回投与のみを対象に与える。
【0051】
本発明による少なくとも1種類のα3β4拮抗薬は、任意の方法によって得ることができる。例えば、少なくとも1態様では、該少なくとも1種類のα3β4拮抗薬は、メカミラミン若しくはその製薬的に受容される塩であり、このような方法は米国特許Nos.2,831,027、2,885,428及び5,986,142に記載されており、これらの特許の各々はこのために本明細書に援用される。これらの特許に記載されたプロトコルの改良並びに他の合成経路は、当業者に周知であり、本明細書によって用いることができる。
【0052】
N−2,3,3−テトラメチルビシクロ[2.1.1]ヘプタン−2−アミンのありとあらゆる可能な立体異性体又はその製薬的に受容される塩の混合物は、該目的に適した、任意の方法によって得ることができる。例えば、エキソ−(R)−N−2,3,3−テトラメチルビシクロ[2.1.1]ヘプタン−2−アミンとエキソ−(S)−N−2,3,3−テトラメチルビシクロ[2.1.1]ヘプタン−2−アミン、又はこれらの製薬的に受容される塩のラセミ混合物は、米国特許Nos.2,831,027、2,885,428及び5,986,142に開示された方法によって得ることができる。富化(R)−N−2,3,3−テトラメチルビシクロ[2.1.1]ヘプタン−2−アミン、富化(S)−N−2,3,3−テトラメチルビシクロ[2.1.1]ヘプタン−2−アミン、実質的に純粋な(R)−N−2,3,3−テトラメチルビシクロ[2.1.1]ヘプタン−2−アミン又は実質的に純粋な(S)−N−2,3,3−テトラメチルビシクロ[2.1.1]ヘプタン−2−アミン、或いはこれらの製薬的に受容される塩は、例えば、米国特許No.5,039,801又は米国特許出願公開No.20020016371 A1に開示された方法によって得ることができる。
【0053】
本明細書に述べる製薬的に受容される製剤は、本発明によって用いるための医薬的製剤の形態で提供することができる。このような製剤は、任意に、少なくとも1種類の製薬的に受容される賦形剤を包含する。適当な賦形剤の例は当業者に知られており、例えば、Handbook of Pharmaceutical Excipients(Kibbe (ed.), 3rd Edition (2000), American Pharmaceutical Association, Washington, D.C.);及びRemington:The Science and Practice of Pharmacy (Gennaro (ed.), 20th edition (2000), Mack Publishing, Inc., Easton, PA) (以下では “Remington”として参照)に記載されており、これらの文献の両方は、賦形剤及び投与形に関するそれらの開示のために、本明細書に援用される。
【0054】
適当な賦形剤は、非限定的に、澱粉、糖、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、着色剤、放出剤(release agents)、コーティング剤(coating agents)、甘味剤、フレーバー剤(flavouring agents)、芳香剤(perfuming agents)、保存剤、可塑剤(plasticizers)、ゲル化剤、増粘剤(thickeners)、硬膜剤(hardeners)、硬化剤(setting agents)、懸濁化剤、界面活性剤、フメクタント、キャリヤー、安定剤、アンチオキシダント、及びこれらの組み合わせを包含する。
【0055】
本発明の医薬的製剤は、対象への所望の経路による投与に適した投与形で提供することができる。幾つかの適当な投与形を以下に記載するが、この記載は、全ての可能な選択を包含する意味ではない。当業者は、例えば、その数部分が上記で援用されているRemingtonに記載されているような、本発明における使用に適する、種々な投与形に熟知している。いずれの特定の場合にも、最も適した投与形は、治療、改善及び/又は管理する状態の性質(nature)及び重症度に依存するであろう。本発明の医薬的製剤は、経口投与、鼻腔投与、頬側投与、舌下投与、直腸投与、膣内投与、非経口投与、槽内(intracisternally)投与、局所投与及び経皮投与のために処方することができる。
【0056】
経口投与に適した製剤は、非限定的に、カプセル剤、カシェ剤、ピル、錠剤、トローチ剤(通常は、スクロース及びアラビアゴム又はトラガカントガムである、フレーバー入り基剤(flavored base)を用いる)、粉末、顆粒、溶液、水性又は非水性液体中の懸濁剤、水中油滴又は油中水滴の液体エマルジョン、エリキシル剤、シロップ、香錠(pastilles)(例えばゼラチンとグリセリン、又はスクロースとアラビアゴムのような、不活性基剤を用いる)、マウスウォッシュ、ペースト等を包含し、各々は、1回以上の投与で薬物の治療量を与えるように、所定量の少なくとも1種類のα3β4拮抗薬又はその製薬的に受容される塩を含有する。
【0057】
経口投与のための投与形(カプセル剤、錠剤、ピル、粉末、顆粒等)の製造においては、該少なくとも1種類のα3β4拮抗薬又はその製薬的に受容される塩に、製薬的に受容される賦形剤を混合することができる。適当な賦形剤は、非限定的に、キャリヤー、例えばクエン酸ナトリウム及びリン酸二カルシウム;充填剤若しくは増量剤、例えば澱粉、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール又はケイ酸;結合剤、例えばヒドロキシメチル−セルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース又はアラビアゴム;フメクタント、例えばグリセロール;崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ澱粉若しくはタピオカ澱粉、アルギン酸、ある一定のシリケート、又は炭酸ナトリウム;溶解抑制剤(solution retarding agents)、例えばパラフィン;吸収促進剤、例えば第4級アンモニウム化合物;湿潤剤、例えばセチルアルコール又はグリセロール・モノステアレート;吸収剤、例えばカオリン及びベントナイト粘土;滑沢剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール及びラウリル硫酸ナトリウム;着色剤;緩衝剤;分散剤;保存剤;及び希釈剤を包含する。上記賦形剤は例としてのみ挙げたものであり、可能な選択の全てを包含する意味ではない。さらに、固体製剤は、例えばラクトース若しくは乳糖、高分子量ポリエチレングリコール等のような賦形剤を用いて、軟質及び硬質充填カプセル中の充填剤として用いることもできる。これらの投与形のいずれも、場合によっては、刻み目を入れるか、又は例えば腸溶性被膜及び放出速度を調節するための被膜のような、被膜及びシェル付きで製造することができ、これらの例は製薬的製剤化分野(pharmaceutical-formulating art)で周知である。
【0058】
このような被膜は、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、エチルセルロース、ゼラチン、製薬的グラッセ(pharmaceutical glaze)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタクリル酸コポリマー、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルアセテート・フタレート(polyvinyl acetate phthalate)、シェラク、スクロース、二酸化チタン、ワックス又はゼインを含むことができる。1実施態様では、コーティング物質はヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。コーティング物質はさらに、例えばタルクのような粘着防止剤(anti-adhesives);可塑剤(選択したコーティング物質の種類に依存する)、例えばひまし油、ジアセチル化モノグリセリド、ジブチルセバケート、ジエチルフタレート、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリアセチン、トリエチルシトレート;例えば二酸化チタンのような不透明剤(opacifiers);及び/又は着色剤及び/又は顔料を含むことができる。塗布工程は、例えばGLATTTM、ACCELACOTATM及び/又はHICOATERTM装置のような多孔パン系(perforated pan system)を用いることによるような、任意の適当な手段によって行なうことができる。
【0059】
本発明の製剤は、多粒子状製剤として存在することができる。本明細書で用いる“多粒子状”なる用語は、複数の個別の又は凝集した粒子、ビーズ、ペレット、顆粒、錠剤又はこれらの混合物を、それらのサイズ、形状又は形態に関係なく、意味する。
【0060】
錠剤は、任意の適当な方法によって成形することができ、このような方法の例は当業者に知られている。例えば、錠剤に成形する前に、成分を適当な装置内で混合することによって、乾式造粒又は湿式造粒することができる。錠剤に成形すべき、成分の顆粒を適当な噴霧/流動化又は押出/球形化(spheronisation)を用いて製造することもできる。
【0061】
口腔内で迅速溶解する及び/又は迅速溶融する錠剤として作用するように、錠剤を適当な賦形剤を用いて製剤化することができる。さらに、錠剤はチュワブル投与形又は発泡性投与形の形態であることができる。発泡性投与形では、錠剤を崩壊させ、溶解及び/又は分散させる、適当な液体中に錠剤を加えることができる。
【0062】
高速度で錠剤を製造する装置を用いて、工業的な規模での製造を容易にするために、適当な硬度及び破砕性を有するように、錠剤を設計することができる。さらに、錠剤を任意の種類の容器中に包装又は充填することができる。他の性質のなかでも、錠剤の硬度が錠剤の形状によって影響されうることを注目すべきである。本発明によると、多様な形状の錠剤を用いることができる。錠剤は円形、扁球、長楕円形、又は任意の他の形状であることができる。錠剤の形状は崩壊速度に影響を与えることもできる。
【0063】
本発明の製剤のいずれも、軟質及び硬質ゼラチン・カプセル中に封入することができ、これらのカプセルはまた、上記賦形剤のいずれをも包含することができる。例えば、カプセル封入投与形は、例えばラクトースのような充填剤、例えばコロイド状二酸化ケイ素及びタルクのような微結晶グライダント(glidant);例えばステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤;及び例えば澱粉(例えば、トウモロコシ澱粉)のような崩壊剤を含むことができる。カプセル充填装置を用いて、カプセル封入すべき成分を一緒に粉砕し、ふるいにかけ、混合し、一緒に包装し、その後にカプセル中にデリバーすることができる。滑沢剤は、約0.5%(w/w)〜約2.0%(w/w)の量で存在することができる。1実施態様では、滑沢剤はカプセルの内容物の約1.25%(w/w)である。
【0064】
少なくとも1種類のα3β4拮抗薬又はその製薬的に受容される塩を含む、本発明の製剤は、経口投与用の液体投与形に製剤化することもできる。適当な製剤は、エマルジョン、ミクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシル剤を包含しうる。少なくとも1種類のα3β4拮抗薬は、イオン交換樹脂複合体、ミクロカプセル封入粒子、リポソーム粒子、又はポリマー被覆粒子若しくは顆粒として製剤化することができる。これらの製剤は、場合によっては、例えば水又は他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤のような、当該技術分野で一般に用いられる希釈剤を含む。乳化剤は、非限定的に、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカーボネート、酢酸エチル、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタンの脂肪酸エステル、及びこれらの混合物を包含する。さらに、本発明の製剤は、例えば湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、甘味剤、フレーバー剤、着色剤、芳香剤及び保存剤のようなアジュバントを含むことができる。適当な懸濁化剤は、非限定的に、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレン・ソルビトールとソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天及びトラガカント、並びにこれらの混合物を包含する。液体製剤は、そのままデリバーすることができる、又は例えば硬質若しくは軟質カプセル入りで供給することができる。
【0065】
存在する懸濁化剤の量は、用いる特定の懸濁化剤に応じて、及び懸濁化剤として作用するか若しくは製剤の粘度に顕著に寄与する能力を有する他の成分の有無に応じて変化する。懸濁液はさらに、その味を改良する成分、例えば甘味剤;苦味遮蔽剤、例えば塩化ナトリウム;味遮蔽フレーバー、例えばコントラマルム(contramarum);フレーバー強化剤、例えばグルタミン酸一ナトリウム;及びフレーバー剤を含有することもできる。甘味剤の例は、バルク甘味料(bulk sweetener)、例えばスクロース、水素化グルコース・シロップ、糖アルコール ソルビトールとキシリトール;及び甘味剤、例えばシクラミン酸ナトリウム、サッカリン・ナトリウム、アスパルテーム及びグリシルリジン酸アンモニウムを包含する。液体製剤はさらに、所望のpHを維持するために、必要に応じて、1種類以上の緩衝剤を含むことができる。
【0066】
本発明の液体製剤は、軟質ゼラチン・カプセルに充填することもできる。該液体は、溶液、懸濁液、エマルジョン、ミクロエマルジョン、沈殿、又は医薬的活性化合物を含有する、任意の他の望ましい液体媒質を含むことができる。該液体は、放出時に医薬的活性化合物の溶解性を改良するように設計することができる、又は放出時に薬物含有エマルジョン若しくは分散相を形成するように設計することができる。このような方法の例は、当該技術分野で周知である。軟質ゼラチン・カプセルを必要に応じて機能性被膜で被覆することができる。このような機能性被膜は、一般に、薬物の放出を所定期間にわたって遅延させるという目的を果たす。例えば、このような被膜は、投与形を胃酸又は消化液にさらすことなく胃を通過させることができる。したがって、このような被膜は、例えば上部腸のような胃腸管中の所望の箇所に達すると溶解する又は浸食されることができる。
【0067】
本発明の製剤は、鼻腔内投与に適した形態で提供されることもできる。治療剤の鼻腔デリバリーは当該技術分野で知られている。例えば、本明細書に援用される、米国特許Nos. 4,428,883; 4,284,648, 4,394,390,及び 4,77810を参照のこと。鼻腔内投与に適した、本発明の製剤は、少なくとも1種類のα3β4拮抗薬又はその製薬的に受容される塩を含み、非限定的に、ゲル、スプレー及び、滴の形態で投与されることができる溶液を包含する、鼻腔内投与に適した任意の形態である。
【0068】
鼻腔内投与に適した製剤は、等張性水溶液、懸濁液、又は粘稠な製剤として提供されることができ、これらは特定のpHに緩衝化することができる。該製剤は、ゲル、ローション、軟膏、クリーム等の形態であることができ、約10,000cpsまでさえもの、より大きく粘稠な製剤が使用可能であるとしても、粘度が約2500〜約6500cpsであるような、充分な量の増粘剤を典型的に含有するであろう。
【0069】
鼻腔内投与用の製剤中の少なくとも1種類のα3β4拮抗薬の濃度は、例えば、対象の治療すべき状態、年齢及び体重(又は大きさ)のような要素によって変化しうる。本発明の製剤は、少なくとも1種類のα3β4拮抗薬又はその製薬的に受容される塩を約1mg/ml〜約2000mg/mlの濃度で含有することができる。投与単位の量は、約0.05ml〜約0.3mlであることができる。
【0070】
製剤の所望の等張性は、塩化ナトリウム、又は例えばデキストロース、ホウ酸、酒石酸ナトリウム、プロピレングリコール、又は他の無機若しくは有機溶質のような、他の製薬的に受容される作用剤を用いて得ることができる。
【0071】
製剤の粘度は、製薬的に受容される増粘剤を用いて、所望のレベルに維持することができる。適当な増粘剤は、非限定的に、メチルセルロース、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びカルボマー(carbomer)を包含する。
【0072】
鼻腔内投与に適した製剤はさらに、粘膜の乾燥を抑制し、刺激を防止するために製薬的に受容されるフメクタントを含有することもできる。用いることができる、製薬的に受容されるフメクタントは、非限定的に、ソルビトール・プロピレングリコール又はグリセロールを包含する。特定の(selected)フメクタントの濃度は、該選択した作用剤によって変化するであろう。
【0073】
鼻腔粘膜を通しての強化された吸収は、製薬的に受容される界面活性剤を用いることによって達成することができる。用いることができる、製薬的に受容される界面活性剤は、非限定的に、ソルビトール無水物の脂肪酸部分エステルのポリオキシエチレン誘導体、例えばTween 80、Polyoxyl 40 Stearate、Polyoxyethylene 50 Stearate 及びOctoxynolを包含する。これらの界面活性剤は、製剤の総重量を基準にして約1%〜約10%の範囲内で用いることができる。
【0074】
鼻腔内製剤はさらに、製薬的に受容される保存剤を含むこともできる。用いることができる保存剤は、非限定的に、ベンジルアルコール、パラベン、チメロサール、クロロブタノール及び塩化ベンザルコニウムを包含する。これらの保存剤は、製剤の総重量を基準にして、約0.02%〜約2%の範囲の量で用いることができる。
【0075】
頬側又は舌下投与のために、本発明の製剤は、錠剤、パッチ、トローチの形態で、又は例えばゲル、軟膏、クリーム若しくはガムのような自由形式で(in free form)提供されることができる。適当な頬側又は舌下製剤及びデバイスの例は、例えば、米国特許Nos. 5,863,555, 5,849,322, 5,766,620, 5,516,523, 5,346,701, 4,983,395, 及び4,849,224に開示されている。このような製剤及びデバイスは、デバイスを頬側粘膜に接触させて維持するために、適当な接着剤を用いることができる。適当な接着剤の例は、例えば米国Nos. 3,972,995, 4,259,314, 4,680,323; 4,740,365, 4,573,996, 4,292,299, 4,715,369, 4,876,092, 4,855,142, 4,250,163, 4,226,848, 及び4,948,580.に見出される。典型的に、該接着剤は、湿った粘膜表面に接着することができる、親水性、例えば水溶性又は膨潤性のポリマー又はポリマー混合物のマトリックスを含む。これらの接着剤は、軟膏、薄いフィルム、錠剤、トローチ及びその他の形態として製剤化することができる。
【0076】
直腸又は膣投与のためには、本発明の製剤は座薬として提供されることができる。座薬は、1種類以上の非刺激性賦形剤、例えばポリエチレングリコール、座薬ワックス又はサリチレートを含むことができる。このような賦形剤は、所望の物理的性質に基づいて選択することができる。例えば、室温では固体であるが体温では液体であるコンパウンド(compound)は、直腸又は膣腔内で溶融して、活性化合物を放出する。或いは、該製剤を直腸デリバリーのために浣腸剤として提供することができる。膣投与に適した製剤はさらに、その例が当該技術分野で知られているようなキャリヤーを含有する、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレー製剤を包含する。
【0077】
局所又は経皮投与に適した製剤は、非限定的に、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ、及び吸入剤(inhalant)を包含する。このような製剤は、例えば動物性及び植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、澱粉、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク、酸化亜鉛、又はこれらの混合物のような賦形剤を含有することができる。粉末及びスプレーはまた、例えばラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム及びポリアミド粉末のような賦形剤を含有することができる。さらに、スプレーは例えばクロロフルオロ炭化水素及び揮発性非置換炭化水素(例えば、ブタン及び/又はプロパン)のような噴射剤を含有することができる。
【0078】
経皮投与による医薬的活性化合物の全身デリバリーは、皮膚へのアクセス可能性並びに対象の受容性及びコンプライアンスという利点を有する。一般に、本発明の経皮デリバリー・デバイスは、非限定的に、膜−調節系、接着剤拡散−制御系、マトリックス分散−型系及びミクロレザバー(microreservoir)系を包含するカテゴリーに分類することができる。経皮デリバリー系に関する開示に関して、本明細書に援用されるRemington,Chapter 47,pp.903-929を参照のこと。
【0079】
膜−調節系に関して、薬物不透過性バッキングと律速ポリマー膜とから形成された、浅い区画に薬物レザバー(drug reservoir)が一般に封入される。少なくとも1種類のα3β4拮抗薬は、微孔質又は無孔質でありうる律速膜から放出される。該膜の外表面には、デリバリー・デバイスを対象の皮膚と接触させるために、薬物相容性で、低アレルゲン性の接着剤ポリマー層を加えることができる。薬物相容性で、低アレルゲン性の接着剤ポリマーの例は、非限定的に、シリコーン及びポリアクリレート接着剤を包含する。ポリマー組成、透過係数、又は律速膜と接着剤との厚さを変えることによって、薬物放出速度を変化させることができる。
【0080】
接着剤拡散−制御経皮系では、薬物レザバーは、一般に、接着剤ポリマーマトリックス中に薬物を直接分散させ、この分散系を薬物不透過性バッキングのフラットシート上に広げて、薄い薬物−レザバー層を形成することによって製造される。この層の上部には、一定の厚さの、薬物を含有しないさらなる接着剤ポリマー層が配置される。商業的に購入することができるか又は固体の接着剤を適当な溶媒中に溶解することによる接着剤ポリマーの溶液を、必要に応じて強化剤(enhancers)中に溶解したか又は一様に分散させた、少なくとも1種類のα3β4拮抗薬の溶液と混合することによって、接着剤マトリックスを製造することができる。この混合物は、型に注入するか又は単独で若しくは所望のバッキング材料上にキャストすることができる。このキャスチング(castings)を室温において又はやや高温のオーブン中で放置して、溶媒を蒸発させることができる。溶媒を蒸発させた後に、接着剤マトリックスは、約50〜100μmの範囲内の厚さを有することができる接着剤ポリマーフィルムの形態になる。
【0081】
マトリックス分散型経皮系は、一般に、薬物を疎水性又は親油性ポリマー中に分散させ、次にこれを、一定の表面積と制御された厚さを有するディスクに成形することによって形成される薬物レザバーを含む。場合によっては、薬物を均一に分散させることができる。該ディスクを、薬物不透過性バッキングから製造された区画中の閉塞性床板上に貼付することができる。該ディスクの周囲に沿ってリムを形成するように接着剤ポリマーを広げて、次に、これを対象の皮膚に貼付することができる。
【0082】
ミクロレザバー系では、薬物粒子を水溶性ポリマーの水溶液中に懸濁させ、次に、これを親油性ポリマー中に例えば高剪断機械力によって分散させて、薬物の非浸出性微視的球体を形成することによって、薬物レザバーを製造することができる。場合によっては、薬物を均一に分散させることができる。該球体は、所望の皮膚浸透速度に達するために充分な速度で、閉じ込められた薬物を放出するのに効果的である。このような粒子は、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、及びセルロースから選択された親水性ポリマーを含むことができる。粒子はリポソームであることができる。次に、ポリマーをその場で架橋させ、一定の表面積と決まった厚さを有する薬物含有ディスクを製造することによって、分散系を安定化させる。該ディスクを次に、接着剤リムで囲繞された経皮系の中心に配置することができる。
【0083】
本発明による経皮製剤では、経皮デリバリー・デバイスを構成する任意の層の中に医薬的活性化合物は存在することができる。各層中に存在する医薬的活性化合物の量は、それぞれの所望の放出速度に応じて変化することができる。例えば、接着剤マトリックス中に負荷される少なくとも1種類のα3β4拮抗薬の量は、キャスチング混合物中のその濃度と接着剤マトリックスの厚さを変えることによって、変化することができる。一定のパッチ面積の接着剤マトリックス中の少なくとも1種類のα3β4拮抗薬の量は、約4時間〜約7日間の範囲にわたって、又は約4時間〜約72時間の範囲にわたって、又は約4時間〜約48時間の範囲にわたって、又は約4時間〜約24時間の範囲にわたって、又は中間の任意の時間数にわたって胃腸分泌低減効果を及ぼすために充分であるべきである。
【0084】
本発明による経皮デバイスは、ミクロカプセル封入された形態又はリポソーム形態で、経皮系に処方され、組み込まれた、少なくとも1種類のα3β4拮抗薬を包含することができる。これらの形態は、該系の加工、安定性、耐用性又はデリバリー特徴を改良することができる。
【0085】
本発明による経皮デバイスはまた、少なくとも1種類のα3β4拮抗薬の皮膚浸透速度を高めるために有効な強化剤を含むこともできる。少なくとも1種類のα3β4拮抗薬のの経皮投与を強化するために有利に用いることができる強化剤は、非限定的に、脂肪酸、脂肪酸エステル及び脂肪アルコールを包含する。このような化合物は一般に、疎水性であるか、又は限られた水溶性を有し、該化合物は約150〜約300ダルトンの分子量を有することができる。脂肪アルコールは、非限定的に、ステアリルアルコール及びオレイルアルコールを包含する。脂肪酸は、非限定的に、オレイン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、カプリル酸、モノグリセリド、ジグリセリド、アシルコリン、カプリル酸、アシルカルニチン、カプリン酸ナトリウム、及びパルミトレイン酸を包含する。炭素10、11、12個又はそれ以上を含有する脂肪酸エステルも使用可能である。脂肪酸エステルの例は、非限定的に、イソプロピルミリステートと、オレイン酸及びラウリン酸のメチルエステル及びエチルエステルを包含する。
【0086】
イオン性強化剤も使用可能である。用いることができるイオン性強化剤は、非限定的に、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン20−セチルエーテル(polyoxyethylene20-cetyether)、laureth-9、ドデシル硫酸ナトリウム、及びスルホコハク酸ジオクチルナトリウムを包含する。
【0087】
胆汁酸塩も使用可能である。用いることができる胆汁酸塩は、非限定的に、グリココール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、タウロジヒドロフシジン酸ナトリウム、及びグリコジヒドロフシジン酸ナトリウムを包含する。
【0088】
キレート化剤も、強化剤として使用可能である。用いることができるキレート化剤の例は、非限定的に、EDTA、クエン酸及びサリチレートを包含する。
【0089】
強化剤の他のグループは、低分子量アルコールを包含する。このようなアルコールは、約200ダルトン未満、又は約150ダルトン未満、又は約100ダルトン未満の分子量を有することができる。これらはまた、親水性であることができ、一般に、室温において水中で2重量%、5重量%又は10重量%を超える溶解度を有する。このようなアルコールの例は、非限定的に、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロパンジオール、及びプロピレングリコールを包含する。
【0090】
スルホキシドも、強化剤として使用可能である。スルホキシドの例は、非限定的に、ジメチルスルホキシド及びデカメチルスルホキシドを包含する。
【0091】
使用可能である、他の強化剤は、非限定的に、尿素とその誘導体、不飽和環状尿素、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン、シクロデキストリン、エナミン誘導体、テルペン、リポソーム、アシルカルニチン、コリン、ペプチド(ポリアルギニン配列又はアルギニン富化配列を包含する)、ペプチドミメチック、ジエチルヘキシルフタレート、オクチルドデシルミリステート、イソステアリルイソステアレート、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、グリセリルオレエート、及び種々な油(例えば、冬緑油又はオイカリプトール)を包含する。
【0092】
本発明への使用に適した強化剤の他の例は、Santus,G.C.et al., Journal of Controlled Release,25:1-20(1993)、及びRemingtonによって与えられ、これらの両方が、強化剤についてのそれらの考察に関して、本明細書に援用される。
【0093】
接着剤マトリックス型経皮パッチに用いられる接着剤は、製薬的パッチに用いるために受容される、いずれの接着剤からも選択することができる。例えば、接着剤は、ポリイソブチレン、アクリル樹脂(acrylics)又はシリコーンに基づくものであることができる。接着剤の選択は、選択した強化剤(単数又は複数種類)、マトリックス中に負荷させた薬物量及び強化剤量に一部依存しうる。接着剤はこれらの添加物の存在下でその接着性を保持して、皮膚への良好な瞬間接着のための粘着、治療期間を通しての良好な接着、及び治療後の皮膚からのクリーンな除去を生じるべきである。幾つかの適当な接着剤は、Avery Chemical Corp.から及びNational Starch and Chemical Companyから入手可能なものを包含する。
【0094】
さらに、本発明の経皮パッチは、少なくとも1種類のα3β4拮抗薬のデリバリーを強化するために、エネルギー補助デバイス(energy-assisted device)と組み合わせて用いることができる。このようなエネルギー補助デバイスの例は、非限定的に、イオントフォレーゼ・デバイス、ソーラー・デバイス及び熱によるデバイスを包含する。
【0095】
イオントフォレーゼ薬物デリバリー・デバイスでは、バッテリーをデバイス中の2電極と、皮膚上に置かれた電極に接続することができる。薬物は1つの電極に接触させて配置する(例えば、陽性薬物(positive drug)は陽極に接触させて配置することができる)、低電圧の電流が電極を横断して与えられると、薬物は皮膚を通って対向電極方向に移動し、それによって身体に入る。デリバリーされる薬物量は、加える電流及び治療時間の関数であることができ、これらのパラメーターは当業者に知られている。イオントフォレーゼ及びイオントフォレーゼ・デバイスは、例えば、Ranade et al.,DRUG DELIVERY SYSTEMS,CRC Press,Chapter 6,(1996); Tyle,Pharmaceutical Res.,3:318(1986);及びBanga et al.,J.Controlled Release,7:1-24(1988)によって考察されており、これらの各々は、イオントフォレーゼ及びイオントフォレーゼ・デバイスについてのそれらの考察に関して、本明細書に援用される。
【0096】
本発明の経皮製剤の放出プロフィル及び皮膚浸透速度は、Franz, J.Invest.Dermatol.64:194-195(1975)及びGB-A-2098865から改変された方法によるin vitro拡散試験を用いて測定することができる。
【0097】
例えば注射(非限定的に、皮下、ボラス注射、筋肉内、腹腔内及び静脈内を包含する)による投与のような非経口投与のためには、医薬的製剤は、油性又は水性ビヒクル中の等張性懸濁液、溶液又はエマルジョンとして処方することができ、例えば懸濁化剤、安定剤又は分散剤のような処方剤(formulatory agents)を含有することができる。或いは、該製剤は、使用前に滅菌の、発熱性物質を含まない水又は等張性生理食塩水によって再構成するための、例えば粉末、結晶質又は凍結乾燥した固体のような乾燥形で提供することができる。これらは、例えば、滅菌したアンプル又はバイアルに入れて提示することができる。
【0098】
適当な水性及び非水性賦形剤の例は、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、油、注射可能な有機エステル、及びこれらの混合物を包含する。例えば、界面活性剤の使用によって、適当な流動性を維持することができる。
【0099】
これらの製剤はさらに、例えば保存剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤のようなアジュバントを含有することもできる。種々な抗菌剤及び/又は抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸等を含めることによって、微生物の作用を予防することもできる。例えば糖、塩化ナトリウム等のような等張剤(isotonic agent)を製剤中に含めることも、望ましいと考えられる。さらに、例えばモノステアリン酸アルミニウム及び/又はゼラチンのような、吸収を遅延させる作用剤を含めることによって、注射可能な薬剤形の持続性吸収(prolonged absorption)をもたらすことができる。
【0100】
薬物の治療効果を持続又は延長させるために、皮下注射又は筋肉内注射からの薬物の吸収を緩慢にすることが、しばしば望ましいと考えられる。これは、低い溶解性を有する結晶質又は非晶質物質の液体懸濁液の使用によって達成することができる。或いは、注射された形態の調節放出は、薬物の放出速度を制御する、生分解性又は生体適合性ポリマー中に少なくとも1種類のα3β4拮抗薬を封入することによって達成することができる。或いは、リポソーム製剤を用いることができる。この場合、薬物の吸収速度は一般に、その溶解速度に依存し、該溶解速度は、結晶サイズ及び結晶形に依存しうる。或いは、非経口投与される形態の遅延吸収は、油性ビヒクル中に薬物を溶解又は懸濁させることによって達成することができる。
【0101】
本明細書に述べる本発明の投与形の他に、本発明の製剤は、少なくとも1種類のα3β4拮抗薬の放出を調節する経口投与形に製剤化することができる。調節放出製剤の例は、当該技術分野で知られており、例えば、米国特許Nos.3,845,770; 3,916,899; 3,536,809; 3,598,123; 4,008,719; 5,674,533; 5,059,595; 5,591,767; 5,120,548; 5,073,543; 5,639,476; 5,354,556;及び5,733,566.に記載されている。調節放出製剤の利点は、薬物の活性延長(extended activity)、投与回数の減少及び患者コンプライアンスの向上を包含しうる。
【0102】
使用に適した、幾つかの調節投与形を以下に記載する。このような投与形のより詳細な考察は、例えば、The handbook of Pharmaceutical Controlled Release Technology, D.L.Wise(ed), Marcel Dekker,Inc.,New York(2000)に;及びさらに、Treatise on Controlled Drug Delivery: Fundamentals, Optimization,and Applications, A.Kydonieus(ed),Marcel Dekker,Inc.,New York(1992)に見出すことができ、これらの文献の各々の関連する内容は、この目的のために、本明細書に援用される。
【0103】
調節又は持続放出投与形の例は、非限定的に、拡散制御系、マトリックス系、浸透圧系、及びイオン交換系を包含する。これらは、単一(モノリシック)投与形又は多重単位投与形(multiunit dosage form)であることができる。拡散制御持続放出投与形では、問題の有効物質を含有する製剤を半浸透膜によって囲むことができる。半浸透膜は、水と溶質の両方に対して多かれ少なかれ(to a greater or lesser extent)透過性であるものを包含する。この膜は、水不溶性及び/又は水溶性ポリマーを含むことができ、pH依存性及び/又はpH非依存性の溶解特徴を示すことができる。これらの種類のポリマーは、以下で詳細に説明する。一般に、ポリマー膜の特徴(例えば、膜の組成)が、投与形からの放出の性質を決定するであろう。
【0104】
マトリックスに基づく投与形
マトリックス型系は、水溶性、例えば親水性ポリマー又は水不溶性、例えば疎水性ポリマーのどちらかと混合して、問題の有効物質を含む。一般に、調節放出投与形に用いるポリマーの性質は、放出機構に影響する。例えば、親水性ポリマーを含有する投与形からの有効成分の放出は、表面拡散及び/又は浸食の両方によって進行することができる。製薬的系からの放出機構は、当業者に周知である。マトリックス型系はモノリシック又は多重単位であることもでき、水溶性及び/又は水不溶性ポリマー膜で被覆することができ、これらの膜の例は、上述してある。
【0105】
本発明のマトリックス製剤は、例えば、直接圧縮成形又は湿式造粒を用いて製造することができる。次に、上述した機能性被膜を本発明によって付加することができる。さらに、機能性被膜を付加する前に、マトリックス錠剤コア上にバリヤー塗膜又はシーラント塗膜を塗布することができる。バリヤー塗膜又はシーラント塗膜は、有効成分を、該有効成分と相互作用する可能性がある機能性被膜から分離するという目的を果たすことができる、又は該塗膜は、水分が有効成分に接触するのを防ぐことができる。バリヤー及びシーラントの詳細は、以下に述べる。
【0106】
本発明によるマトリックスに基づく投与形では、典型的に1種類以上の水溶性ポリマー及び/又は1種類以上の水不溶性ポリマーを含むポリマーマトリックス中に、少なくとも1種類のα3β4拮抗薬と、任意の、製薬的に受容される賦形剤(単数又は複数種類)を分散させる。薬物は、この投与形から拡散及び/又は浸食によって放出されることができる。このようなマトリックス系は、WiseとKydonieusの上記文献に詳述されている
適当な水溶性ポリマーは、非限定的に、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はポリエチレングリコール、及び/又はこれらの混合物を包含する。
【0107】
適当な水不溶性ポリマーは、非限定的に、エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、セルローストリアセテート、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)、ポリ(エチレン)、低密度ポリ(エチレン)、高密度ポリ(エチレン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニルイソブチルエーテル)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(塩化ビニル)、ポリウレタン、及び/又はこれらの混合物を包含する。
【0108】
適当な、製薬的に受容される賦形剤は、非限定的に、キャリヤー、例えばクエン酸ナトリウム及びリン酸二カルシウム;充填剤若しくは増量剤、例えばステアレート、シリカ、石膏、澱粉、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、タルク及びケイ酸;結合剤、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース及びアラビアゴム(acacia);フメクタント、例えばグリセロール;崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ澱粉とタピオカ澱粉、アルギン酸、ある一定のシリケート、EXPLOTABTM、クロスポビドン及び炭酸ナトリウム;溶解抑制剤、例えばパラフィン;吸収促進剤、例えば第4級アンモニウム化合物;湿潤剤、例えばセチルアルコール及びグリセロール・モノステアレート;吸収剤、例えばカオリン及びベントナイト粘土;滑沢剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール及びラウリル硫酸ナトリウム;安定剤、例えばフマル酸;着色剤;緩衝剤;分散剤;保存剤;有機酸;並びに有機塩基を包含する。上記賦形剤は、例としてのみ挙げたものであり、可能な選択の全てを包含する意味ではない。さらに、多くの賦形剤は二つ以上の役割若しくは機能(more than one role or function)を有することができる、又は二つ以上のグループ(more than one group)に分類されることができる;分類は記述的であるにすぎず、特定の賦形剤の任意の使用を限定することを意図するものではない。
【0109】
例えば、マトリックスに基づく投与形は、少なくとも1種類のα3β4拮抗薬;充填剤、例えば澱粉、ラクトース若しくは微結晶性セルロース(AVICELTM);結合剤/制御放出ポリマー、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース若しくはポリビニルピロリドン;崩壊剤、例えばEXPLOTABTM、クロスポビドン若しくは澱粉;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム若しくはステアリン酸;界面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム若しくはポリソルベート;及びグライダント、例えばコロイド状二酸化ケイ素(AEROSILTM)若しくはタルクを含むことができる。
【0110】
本発明の製剤中のポリマーの量及び種類と、水溶性ポリマーの水不溶性ポリマーに対する比率は、一般に、少なくとも1種類のα3β4拮抗薬の望ましい放出プロフィルを得るように選択される。例えば、水溶性ポリマーの量に対して水不溶性ポリマーの量を高めることによって、薬物の放出を遅延させる又は緩慢にすることができる。これは、一部には、ポリマー・マトリックスの不透過性の増強によるものであり、ある場合には、胃腸管を通る移送中の浸食速度の低下によるものである。
【0111】
浸透圧ポンプ投与形
他の実施態様において、本発明の調節放出製剤は、浸透圧ポンプ投与形として提供される。浸透圧ポンプ投与形では、少なくとも1種類のα3β4拮抗薬と任意に1種類以上の浸透性賦形剤を含有するコアを、典型的に、少なくとも1つのオリフィスを有する選択的透過膜で包むことができる。選択的透過膜は、一般に、水に対して透過性であるが、薬物に対しては不透過性である。該系が体液に暴露されると、水が該選択的透過膜を透過して、薬物と任意の浸透性賦形剤を含有するコアに入る。投与形内の浸透圧は上昇する。その結果、該選択的透過膜を横切る浸透圧を等しくしようとして、薬物がオリフィス(単数又は複数)を通して放出される。
【0112】
より複雑なポンプでは、該投与形はコア中に2つの内部区画を含有することができる。第1区画は薬物を含有することができ、第2区画は、水性流体と接触すると膨潤するポリマーを含有することができる。摂取後に、このポリマーは膨潤して、薬物含有区画に入り、該薬物が占める容積を減少させ、それによって、制御された速度で長期間にわたってデバイスから薬物を押し出す。このような投与形は、ゼロ次放出プロフィル(zero order release profile)が望ましい場合に、しばしば、用いられる。
【0113】
浸透圧ポンプは当該技術分野で周知である。例えば、米国特許No.4,088,864、No.4,200,098及びNo.5,573,776(これらの各々は、このために本明細書に援用される)は、浸透圧ポンプとそれらの製造方法を述べている。本発明によって有用な浸透圧ポンプは、浸透的活性薬物の錠剤、又は浸透的活性剤と組み合わせた浸透的不活性薬物の錠剤を圧縮成形し、次に該錠剤を、外部水性流体に対して透過性であるが薬物及び/又は浸透圧剤に対して不透過性である選択的透過膜によって被覆することによって形成することができる。
【0114】
少なくとも1つのデリバリー・オリフィスを、該選択的透過膜壁を通して掘削することができる。或いは、浸出性の孔形成物質を該壁に組み込むことによって、該壁に少なくとも1つのオリフィスを形成することができる。作用中に、外部水性流体が該選択的透過膜壁を通して吸収されて、薬物と接触して、該薬物の溶液又は懸濁液を形成する。次に、新たな流体が該選択的透過膜を通して吸収されると、該薬物溶液若しくは懸濁液が該オリフィスを通って排出される。
【0115】
該選択的透過膜のための典型的な物質は、例えば、浸透膜及び逆浸透膜に有用であると当該技術分野で知られた選択的透過性ポリマー、例えば、セルロースアシレート(cellulose acylate)、セルロースジアシレート(cellulose diacylate)、セルローストリアシレート(cellulose triacylate)、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、寒天アセテート、アミローストリアセテート、βグルカンアセテート、アセトアルデヒド・ジメチルアセテート、セルロースアセテート・エチルカルバメート、ポリアミド、ポリウレタン、スルホン化ポリスチレン、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテート・メチルカルバメート、セルロースアセテートスクシネート、セルロースアセテート・ジメチルアミノアセテート、セルロースアセテート・エチルカルバメート、セルロースアセテート・クロルアセテート、セルロースジパルミテート、セルロースジオクタノエート、セルロースジカプリレート、セルロースジペンタンレート(cellulose dipentanlate)、セルロースアセテートバレレート、セルロースアセテートスクシネート、セルロースプロピオネートスクシネート、メチルセルロース、セルロースアセテートp−トルエンスルホネート、セルロースアセテートブチレート、軽度に架橋したポリスチレン誘導体、架橋ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム)、ポリ(ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド)、セルロースアセテート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、及び/又はこれらの混合物を包含する。
【0116】
該ポンプに使用可能である浸透圧剤(osmotic agents)は、典型的に、投与後にデバイスに入る流体に溶解性であり、その結果、外部流体に対して選択的透過膜壁を横切る浸透圧勾配が生じることになる。適当な浸透圧剤は、非限定的に、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、硫酸カリウム、炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、硫酸リチウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、d−マンニトール、尿素、ソルビトール、イノシトール、ラフィノース、スクロース、グルコース、例えばセルロースポリマーのような親水性ポリマー、及び/又はこれらの混合物を包含する。
【0117】
上記で考察したように、浸透圧ポンプ投与形は、膨潤性ポリマーを含有する第2区画を含むことができる。適当な膨潤性ポリマーは、該ポリマーを平衡状態になるまで膨潤又は膨張させる水及び/又は水性生物学的流体と典型的に相互作用する。受容されるポリマーは、水中及び/又は水性生物学的流体中で膨潤する能力を有し、該投与形内の静水圧を高めるように、それらのポリマー構造内に吸収した該流体のかなりの部分を保持する。該ポリマーは、非常に高度に膨潤又は膨張することができ、通常は、2倍〜50倍の体積増大を示すことができる。該ポリマーは非架橋性である(be non-cross-linked)ことも、架橋性(cross-linked)であることも可能である。1実施態様では、膨潤性ポリマーは親水性ポリマーである。
【0118】
適当なポリマーは、非限定的に、30,000〜5,000,000ダルトンの分子量を有するポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート);カッパ−カラゲナン;10,000〜360,000ダルトンの分子量を有するポリビニルピロリドン;アニオン及びカチオン・ヒドロゲル;ポリ電解質複合体;低量のアセテートを有し、グリオキサール、ホルムアルデヒド若しくはグルタルアルデヒドによって架橋し、200〜30,000ダルトンの重合度を有するポリ(ビニルアルコール);メチルセルロースと架橋寒天とカルボキシメチルセルロースを含む混合物;微粉状無水マレイン酸と、スチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン又はイソブチレンとの分散系を形成することによって得られる、水不溶性で水膨潤性のコポリマー;N−ビニルラクタムの水膨潤性ポリマー;及び/又は上記のいずれかの混合物を包含する。
【0119】
本明細書で用いる“オリフィス”なる用語は、投与形から薬物を放出するために適した手段及び方法を含む。該表現は、選択的透過膜に機械的手段によって開けられている1つ以上の開口又はオリフィスを包含する。或いは、選択的透過膜中に、例えばゼラチンプラグのような、浸食性要素を組み込むことによって、オリフィスを形成することもできる。このような場合には、選択的透過膜の孔が、薬物が通過するための“通路”を形成する。このような“通路”製剤は、例えば米国特許No.3,845,770及びNo.3,916,899に記載されており、これらの特許の関連する開示は、このために、本明細書に援用される。
【0120】
本発明によって有用な浸透圧ポンプは、既知手法で製造することができる。例えば、薬物とその他の成分を一緒に磨砕して、所望の寸法(例えば、第1区画に対応する)を有する固体にプレス成形することができる。次に、膨潤性ポリマーを成形して、薬物と接触させて配置し、両方を選択的透過剤(selectively permeable agent)によって囲む。望ましい場合には、薬物成分とポリマー成分とを一緒にプレス成形してから、選択的透過膜を加えることができる。選択的透過膜は任意の適当な方法によって、例えば、成形、吹き付け又は浸漬によって加えることができる。
【0121】
膜調節投与形(membrane-modified dosage forms)
本発明の調節放出製剤は、膜調節製剤として提供することも可能である。本発明の膜調節製剤は、モノリシック型(例えば、錠剤)又は複合単位型(例えば、ペレット)であることができる迅速放出コアを作製し、該コアを膜で被覆することによって製造することができる。次に、該膜調節コア(membrane-controlled core)をさらに、機能的被膜によって被覆することができる。膜調節コアと機能的被膜との間に、バリヤー又はシーラントを加えることができる。膜調節投与形の詳細は、以下に記載する。
【0122】
例えば、少なくとも1種類のα3β4拮抗薬を多粒子状膜調節製剤中で提供することができる。少なくとも1種類のα3β4拮抗薬を約0.4〜約1.1mm又は約0.85〜約1.00mmの範囲内の平均直径を有するノンパレイル・シード(nonpareil seed)に加えること(applying)によって、該薬物を活性コアに形成することができる。少なくとも1種類のα3β4拮抗薬を付加的な賦形剤と共に又は付加的な賦形剤なしで、不活性コア上に加えることができ、そして溶液又は懸濁液から流動床コーター(例えば、Wursterコーティング)又はパンコーティング系を用いて吹き付けることができる。或いは、少なくとも1種類のα3β4拮抗薬をコア上に結合させるために結合剤を用いて、該少なくとも1種類のα3β4拮抗薬を不活性コア上に粉末として加えることができる。コアを適当な可塑剤(以下で説明)と必要に応じて、任意の他の加工助剤と共に押出成形(extrusion)することによって、活性コアを形成することもできる。
【0123】
本発明の調節放出製剤は、薬物含有コアに膜コーティングとして加えられる、少なくとも1種類のポリマー物質を含む。適当な水溶性ポリマーは、非限定的に、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、及び/又はこれらの混合物を包含する。
【0124】
適当な水不溶性ポリマーは、非限定的に、エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、セルローストリアセテート、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)及びポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)、ポリ(エチレン)、低密度ポリ(エチレン)、高密度ポリ(エチレン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニルイソブチルエーテル)、ポリ(ビニルアセテート)、ポリ(塩化ビニル)、ポリウレタン、及び/又はこれらの混合物を包含する。
【0125】
EUDRAGITTMポリマー(Rohm Pharmaから入手可能)は、アクリレート及び/又はメタクリレートに基づくポリマー・ラッカー物質である。有効成分と水に対して自由に透過性である、適当なポリマーは、EUDRAGITTMRLである。有効成分と水に対して弱透過性である、適当なポリマーは、EUDRAGITTMRSである。有効成分と水に対して弱透過性であり、pH依存性透過性を示す、他の適当なポリマーは、非限定的に、EUDRAGITTML、EUDRAGITTMS及びEUDRAGITTMEを包含する。
【0126】
EUDRAGITTMRL及びRSは、第4級アンモニウム基の低い含量を有する、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルとのコポリマーを含むアクリル樹脂である。該アンモニウム基は塩として存在して、該ラッカーフィルムの透過性をもたらす。EUDRAGITTMRL及びRSは、それぞれ、pHに関係なく、自由に透過性(RL)及び弱透過性(RS)である。これらのポリマーは水中及び消化液中でpH非依存的に(in a pH-independent manner)膨潤する。膨潤した状態で、該ポリマーは水及び溶解した活性化合物に対して透過性である。
【0127】
EUDRAGITTMLは、メタクリル酸とメタクリル酸メチルエステルから合成されたアニオンポリマーである。これは、酸及び純粋な水中に不溶性である。これは、中性〜弱アルカリ性条件下では(in neutral to weekly alkaline conditions)溶解性になる。EUDRAGITTMLの透過性は、pH依存性である。pH5.0を超えると、該ポリマーはますます透過性になる。
【0128】
膜調節投与形を含む1実施態様では、ポリマー物質は、メタクリル酸コポリマー、アンモニオメタクリレート・コポリマー又はこれらの混合物を含む。メタクリル酸コポリマー、例えばEUDRAGITTMS及びEUDRAGITTML(Rohm Pharma)は、本発明の調節放出製剤に用いるために特に適する。これらのポリマーは、胃耐性で腸溶性のポリマーである。これらのポリマーフィルムは、純粋な水及び希薄な酸中に不溶性である。これらのフィルムは、それらのカルボン酸含量に依存して、高いpHにおいて溶解する。EUDRAGITTMS及びEUDRAGITTMLは、ポリマー・コーティング中に単独の成分として又は任意の比率で組み合わせて用いることができる。これらのポリマーの組み合わせを用いることによって、該ポリマー物質は、EUDRAGITTML及びEUDRAGITTMSが別々に溶解性であるpH値間のpHにおいて溶解性を示すことができる。
【0129】
膜コーティングは、大きい割合(即ち、総ポリマー含量の50%超)の少なくとも1種類の製薬的に受容される水溶性ポリマーと、任意に、小さい割合(即ち、総ポリマー含量の50%未満)の少なくとも1種類の製薬的に受容される水不溶性ポリマーを含むポリマー物質を含むことができる。或いは、該膜コーティングは、大きい割合(即ち、総ポリマー含量の50%超)の少なくとも1種類の製薬的に受容される水不溶性ポリマーと、任意に、小さい割合(即ち、総ポリマー含量の50%未満)の少なくとも1種類の製薬的に受容される水溶性ポリマーを含むポリマー物質を含むことができる。
【0130】
例えばEUDRAGITTMRS及びEUDRAGITTMRL(Rohm Pharma)のようなアンモニオメタクリレート・コポリマーは、本発明の調節放出製剤に用いるために適する。これらのポリマーは、純粋な水、希薄な酸、バッファー溶液又は消化液中で全生理的pH範囲にわたって不溶性である。これらのポリマーは、pHに関係なく、水及び消化液中で膨潤する。膨潤した状態で、次に、これらのポリマーは、水と、溶解した活性剤(dissolved actives)に対して透過性である。該ポリマーの透過性は、該ポリマー中のエチルアクリレート(EA)基、メチルメタクリレート(MMA)基及びトリメチルアンモニオエチルメタクリレート・クロリド(TAMCl)基の比率に依存する。1:2:0.2のEA:MMA:TAMCl比率を有するポリマー(EUDRAGITTMRL)は、1:2:0.1の比率を有するポリマー(EUDRAGITTMRS)よりも大きく透過性である。EUDRAGITTMRLのポリマーは、高い透過性の不溶性ポリマーである。EUDRAGITTMRSのポリマーは、低い透過性の不溶性フィルムである。
【0131】
アンモニオメタクリレート・コポリマーは、任意の望ましい比率で組み合わせることができる。例えば、EUDRAGITTMRS:EUDRAGITTMRLの比率(90:10)を用いることができる。さらに、これらの比率を調節して、薬物の放出を遅延させることができる。例えば、EUDRAGITTMRS:EUDRAGITTMRLの比率は、約100:0〜約80:20、又は約100:0〜約90:10、又は中間の任意の比率であることができる。このような製剤において、弱透過性ポリマーEUDRAGITTMRSが一般に、ポリマー物質の大部分を占めると考えられる。
【0132】
薬物の放出を望ましく遅延させるために、ポリマー物質内でアンモニオメタクリレート・コポリマーをメタクリル酸コポリマーと組み合わせることができる。約99:1〜約20:80の範囲内のアンモニオメタクリレート・コポリマー(例えば、EUDRAGITTMRS)のメタクリル酸コポリマーに対する比率を用いることができる。該2種類のポリマーを組み合わせて、同じポリマー物質にすることもできる、又はコアに加えられる別々の被膜として供給することもできる。
【0133】
上記EUDRAGITTMポリマーの他に、幾つかの他のこのようなコポリマーを用いて、薬物放出を制御することができる。これらには、メタクリレートエステル・コポリマー(例えば、EUDRAGITTM NE 30D)が包含される。EUDRAGITTMポリマーに関するさらなる情報は、“Chemistry and Application Properties of Polymethacrylate Coating Systems,” in Aqueous Polymeric Coatings for Pharmaceutical Dosage Forms( ed. James McGinity, Marcel Dekker Inc., New York, pg 109-114)に見出すことができる。
【0134】
コーティング膜はさらに、ポリマー物質の透過性を高めるために、1種類以上の溶解性賦形剤を含むことができる。適当には、該溶解性賦形剤を溶解性ポリマー、界面活性剤、アルカリ金属塩、有機酸、糖(sugar)、及び糖アルコールのなかから選択する。このような溶解性賦形剤は、非限定的に、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、塩化ナトリウム、例えばラウリル硫酸ナトリウム及びポリソルベートのような界面活性剤、例えば酢酸、アジピン酸、クエン酸、フマル酸、グルタル酸、リンゴ酸、コハク酸及び酒石酸のような有機酸、例えばデキストロース、フルクトース、グルコース、ラクトース及びスクロースのような糖、例えばラクチトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール及びキシリトールのような糖アルコール、キサンタンガム、デキストリン、並びにマルトデキストリンを包含する。幾つかの実施態様では、ポリビニルピロリドン、マンニトール及び/又はポリエチレングリコールを溶解性賦形剤として、用いることができる。該溶解性賦形剤(単数又は複数)は、ポリマーの総乾燥重量に基づいて、約1〜約10重量%の量で用いることができる。
【0135】
他の実施態様では、ポリマー物質は、胃腸液中でも不溶性である少なくとも1種類の水不溶性ポリマーと、少なくとも1種類の水溶性孔形成化合物を含む。例えば、水不溶性ポリマーは、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセテート及び/又はポリビニルアルコールのターポリマー(terpolymer)を含むことができる。適当な水溶性孔形成化合物は、非限定的に、サッカロース、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ポリビニルピロリドン、及び/又はポリエチレングリコールを包含する。孔形成化合物は、水不溶性ポリマーの全体にわたって均一に又はランダムに分布することができる。典型的に、孔形成化合物は、水不溶性ポリマーのそれぞれ約1〜約10部に対して約1部〜約35部を占める。
【0136】
このような投与形が溶解媒質(例えば、腸液)に接触すると、該ポリマー物質内の孔形成化合物が溶解して、孔構造を生じ、それを通って薬物が拡散する。このような製剤は、米国特許No.4,557,925により詳細に記載されており、この特許の関連部分はこのために本明細書に援用される。この多孔質膜を、本明細書に記載するように、腸溶性被膜で被覆して、胃での放出を抑制することもできる。
【0137】
例えば、このような孔形成性調節放出投与形は、少なくとも1種類のα3β4拮抗薬;例えば澱粉、ラクトース若しくは微結晶性セルロース(AVICELTM)のような充填剤;例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース若しくはポリビニルピロリドンのような結合剤/調節放出ポリマー;例えばEXPLOTABTM、クロスポビドン若しくは澱粉のような崩壊剤;例えばステアリン酸マグネシウム若しくはステアリン酸のような滑沢剤;例えばラウリル硫酸ナトリウム若しくはポリソルベートのような界面活性剤;及び例えばコロイド状二酸化ケイ素(AEROSILTM)若しくはタルクのようなグライダントを含むことができる。
【0138】
該ポリマー物質は、さらに、少なくとも1種類の補助剤、例えば充填剤、可塑剤及び/又は消泡剤を含むことができる。代表的な充填剤は、タルク、ヒュームド・シリカ、グリセリルモノステアレート、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、カオリン、コロイド状シリカ、石膏、微粉状シリカ及び三ケイ酸マグネシウムを包含する。充填剤の使用量は、典型的に、該ポリマーの総乾燥重量に基づいて、約2〜約300重量%の範囲であり、そして約20〜約100重量%の範囲であることができる。1実施態様では、タルクが充填剤である。
【0139】
コーティング膜は、そして機能的被膜も同様に、該ポリマーの加工(processing)を改良する物質を含むことができる。このような物質は、一般に、可塑剤と呼ばれ、例えば、アジペート、アゼレート、ベンゾエート、シトレート、イソエブケート(isoebucates)、フタレート、セバケート、ステアレート及びグリコールを包含する。代表的な可塑剤は、アセチル化モノグリセリド、ブチルフタリルブチルグリコレート、ジブチルタルトレート、ジエチルフタレート、ジメチルフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリアセチンシトレート、トリアセチン、トリプロピノイン、ジアセチン、ジブチルフタレート、アセチルモノグリセリド、ポリエチレングリコール、ひまし油、トリエチルシトレート、多価アルコール、アセテートエステル、グリセロールトリアセテート、アセチルトリエチルシトレート、ジベンジルフタレート、ジヘキシルフタレート、ブチルオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ブチルオクチルフタレート、ジオクチルアゼレート、エポキシ化タレート(epoxidised tallate)、トリイソオクチルトリメリテート、ジエチルヘキシルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジ−i−オクチルフタレート、ジ−i−デシルフタレート、ジ−n−ウンデシルフタレート、ジ−n−トリデシルフタレート、トリ−2−エチルヘキシルトリメリテート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート、ジブチルセバケート、グリセリルモノカプリレート、及びグリセリルモノカプレートを包含する。1実施態様では、可塑剤はジブチルセバケートである。ポリマー物質中の可塑剤の使用量は、典型的に、乾燥ポリマーの重量に基づいて、約10%〜約50%の範囲であり、例えば、約10%、20%、30%、40%又は50%である。
【0140】
消泡剤も含めることができる。1実施態様では、消泡剤はシメチコンである。消泡剤の使用量は、典型的に、最終製剤の約0%〜約0.5%を占める。
【0141】
膜調節製剤中のポリマー使用量は、典型的に、デリバリーすべき薬物量、薬物デリバリーの速度と位置、薬物放出の時間遅延、及び製剤中の多粒子のサイズを含めた、望ましい薬物デリバリー特性を得るように調節される。ポリマーの付加量は、典型的に、コアに約10%〜約100%の重量増加を与える。1実施態様では、該ポリマー物質からの重量増加は約25%〜約70%の範囲である。
【0142】
コポリマー、充填剤、可塑剤、及び任意の賦形剤と加工助剤を含めた、ポリマー物質の全ての固体成分の組み合わせは、典型的に、コアに約10%〜約450%の重量増加を与える。1実施態様において、該重量増加は約30%〜約160%である。
【0143】
該ポリマー物質は、任意の既知方法によって、例えば、流動床コーター(例えば、Wursterコーティング)又はパンコーティング系を用いて吹き付けることによって、付加することができる。ポリマー物質の付加後に(after application of the polymeric material)、被覆されたコアを典型的に乾燥又は硬化させる。硬化(curing)は、多粒子が、安定な放出速度を与えるために充分な時間、制御された温度に維持されることを意味する。硬化は、例えば、オーブン又は流動床ドライヤー内で行なうことができる。硬化は、室温を超える任意の温度で行なうことができる。
【0144】
該ポリマー被膜にシーラント又はバリヤーを加えることも可能である。ポリマー物質を加える前に、コアにシーラント又はバリヤー層を加えることもできる。シーラント又はバリヤー層は該少なくとも1種類のα3β4拮抗薬の放出を調節することを意図するものではない。適当なシーラント又はバリヤーは、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース及びキサンタンガムのような、透過性又は溶解性の作用剤である。
【0145】
シーラント又はバリヤー層の加工性を改良するために、他の作用剤を加えることも可能である。このような作用剤は、タルク、コロイド状シリカ、ポリビニルアルコール、二酸化チタン、微粉状シリカ、ヒュームドシリカ、グリセロール・モノステアレート、三ケイ酸マグネシウム及びステアリン酸マグネシウム又はこれらの混合物を包含する。シーラント又はバリヤー層は、溶液(例えば、水溶液)又は懸濁液から、任意の既知手段、例えば流動床コーター(例えば、Wursterコーティング)又はパンコーティング系を用いて、加えることができる。適当なシーラント又はバリヤーは、例えば、OPADRY WHITE Y-1-7000及びOPADRY OY/B/28920 WHITEを包含し、これらの各々はColorcon Limited,Englandから入手可能である。
【0146】
本発明は、さらに、キャプレット、カプセル剤、投与前に懸濁させるための粒子(particles for suspension prior to dosing)、サシェ(sachets)又は錠剤の形態で、上記で定義した多粒子状のα3β4拮抗薬の製剤を含有する経口投与形を提供する。該投与形が錠剤の形態である場合には、錠剤は、崩壊性錠剤、迅速溶解性錠剤、発泡性錠剤、迅速溶融錠剤、及び/又はミニ錠剤であることができる。該投与形は、例えば球状、立方体状、卵形状又は長円形状のような、薬物の経口投与に適した、任意の形状であることができる。該投与形は、任意の既知方法で、多粒子状物質から作製することができ、付加的な、製薬的に受容される賦形剤を含むことができる。
【0147】
非限定的に、マトリックスに基づく形、浸透圧ポンプに基づく形、軟質ゼラチンカプセル及び/又は膜調節形を含めた上記特定実施態様の全て(これらは、さらにモノリシック投与形及び/又は複合単位投与形の形をとることができる)は、機能的被膜を有することができる。このような被膜は、一般に、薬物の放出を所定の時間遅らせるという目的を果たす。例えば、このような被膜は、投与形に、胃酸又は消化液にさらさずに、胃を通過させることができる。したがって、このような被膜は、例えば、上部腸のような、胃腸管中の所望の位置に達すると、溶解する又は浸食されることができる。
【0148】
このような機能的被膜は、pH依存性又はpH非依存性の溶解プロフィルを示すことができる。pH非依存性プロフィルを有する機能的被膜は、一般に、所定期間後に浸食される又は溶解する、そして該期間は、一般に、該被膜の厚さに直接比例する。他方では、pH依存性プロフィルを有する機能的被膜は、胃の酸性pH中にある間はそれらの完全性(integrity)を維持することができるが、より大きく塩基性である上部腸に入ると直ちに浸食される又は溶解する。
【0149】
したがって、マトリックスに基づく製剤、浸透圧ポンプに基づく製剤、又は膜調節製剤を、薬物の放出を遅らせる機能的被膜でさらに被覆することができる。例えば、膜調節製剤は、上部腸に達するまで膜調節製剤の露出を遅らせる腸溶性被膜によって被覆することができる。酸性の胃を出て、より大きく塩基性の腸に入ると、該腸溶性被膜は溶解する。その時に、膜調節製剤は胃腸液に暴露されて、本発明によって、少なくとも1種類のα3β4拮抗薬を長時間にわたって放出する。例えばこれらのような機能的被膜の例は、当業者に周知である。
【0150】
製剤におけるポリマーの厚さ、ポリマーの量と種類、及び調節放出製剤における水溶性ポリマーの、水不溶性ポリマーに対する比率は、一般に、少なくとも1種類のα3β4拮抗薬の所望の放出プロフィルを達成するように選択される。例えば、水溶性ポリマーに対して水不溶性ポリマーの量を高めることによって、薬物の放出を遅延させる又は緩慢にすることができる。
【0151】
本発明の任意の製剤は、少なくとも1種類のα3β4拮抗薬の吸収を強化する、適当な化合物を含有することもできる。これらの強化剤は、非限定的に、細胞エンベロープ障害性化合物(cell envelope disordering compounds)、溶媒、ステロイド系界面活性剤(steroidal detergents)、胆汁酸塩、キレーター(chelators)、界面活性剤、ノン−サーファクタント(non-surfactants)、脂肪酸及びこれらの混合物を包含する。有機溶媒は、非限定的に、C若しくはCアルコール、C若しくはCジオール、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、1−n−ドデシル−シクラアザシクロ−ヘプタン−2−オン、N−メチルピロリドン、N−(2−ヒドロキシエチル)ピロリドン、トリアセチン、プロピレンカーボネート及びジメチルイソソルビド並びにこれらの混合物から選択することができる。用いることができる細胞エンベロープ障害性化合物は、非限定的に、イソプロピルミリステート、メチルラウレート、オレイン酸、オレイルアルコール、グリセロールモノオレエート、グリセロールジオレエート、グリセロールトリオレエート、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノラウレート、プロピレングリコール・モノラウレート、ドデシル硫酸ナトリウム、及びソルビタンエステル、並びにこれらの混合物を包含する。用いることができる胆汁酸塩は、非限定的に、天然及び合成のコラン酸塩と、これらの混合物を包含する。
【0152】
投与される投与量並びに投与回数は、用いる特定の投与形及び投与経路に依存して変化する。投与量及び投与回数は、個々の対象の年齢、体重及び反応によっても変化する。典型的な投与計画(dosing regimen)は、資格のある医師によって、過度の実験なしに容易に決定することができる。臨床医又は治療する医師が、個々の対象の反応に関連して、療法を中断、調節又は停止するべき方法及び時を知るであろうことも注目される。
【0153】
一般に、本発明による製剤のいずれかによって胃腸運動性の異常な亢進及び/又は、同亢進をもたらす腸状態を治療、緩和及び/又は管理するための総1日量は、少なくとも1種類のα3β4拮抗薬、例えば、N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミン又はその製薬的に受容される塩約0.2mg〜約40mg、又は約0.5mg〜約20mg、又は約1mg〜約15mg、又は約2mg〜約12mg、又は中間のいずれかの量である。例えば、N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミン又はその製薬的に受容される塩の経口投与される投与形では、総1日量は、約0.5mg〜約20mg、又は約1mg〜約15mg、又は約2mg〜約12mgの範囲でありうる。したがって、単回経口投与量は、N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミン又はその製薬的に受容される塩約0.2mg、0.5mg、1mg、2mg、2.5mg、3mg、4mg、5mg、6mg、8mg、10mg、12mg、15mg、20mg、又は中間のいずれかの量を含有するように処方することができる。
【0154】
経皮製剤の場合には、経皮吸収のための効果的な濃度勾配を保証するために、経皮系中に過剰な、少なくとも1種類のα3β4拮抗薬を組み込むことができる。したがって、経皮単位は、約0.2mg〜約120mg、又は約0.5mg〜約100mg、又は約1mg〜約80mg、又は約2mg〜約60mg、又は中間のいずれかの量の、例えばN−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミンを含有することができる。
【0155】
本明細書に述べる医薬的製剤は、少なくとも1種類のα3β4拮抗薬の最大血漿濃度が、本発明の製剤の最初の投与後の約3.5、4、5、6、7、8、9、10、12、14、18又は24時間又は中間のいずれかの時間で達成されうるように、処方することができる。
【0156】
少なくとも1種類のα3β4拮抗薬又はその製薬的に受容される塩を含有する医薬的製剤は、毎日単回量で又は分割量で、1、2、3、4若しくはそれ以上の回数で投与することができる。或いは、投与量を2日、3日、4日、5日、6日、7日毎に又はそれ以上の日数毎に1回以上の回数でデリバリーすることができる。1実施態様では、該医薬的製剤を1日1回投与する。
【0157】
さらに、経口、鼻腔内、頬側又は舌下投与に適した、本発明の方法は、例えば、米国薬局方(USP)タイプ1装置(バスケット)又は米国薬局方(USP)タイプ2装置(パドル)によって37℃及び50rpm以上においてpH6.8以上のリン酸塩緩衝液中で測定期間にわたって測定したときに、下記溶解プロフィル:2時間:約60%以下;4時間:約70%以下;8時間:約50%以上;12時間:約65%以上;及び24時間:約80%以上を示すことができるin vitro放出プロフィルを生じる。他の実施態様では、経口製剤は下記プロフィル:2時間:約50%以下;4時間:約65%以下;8時間:約60%以上;12時間:約70%以上;及び24時間:約80%以上を示すことができる。さらに他の実施態様では、経口製剤は下記プロフィル:2時間:約40%以下;4時間:約20%〜約60%;8時間:約70%以上;12時間:約75%以上;及び24時間:約80%以上を示すことができる。
【0158】
例えば、本発明による経皮製剤は、ヒト表皮の改良Franz拡散セルを用いて(Franz, J. Invest. Dermatol. 64:194-195 (1975) 及び GB-A-2 098 865から適応させた方法によって)、pH4.0以上のリン酸アンモニウム緩衝液中で、受け入れコンパートメントを例えば300rpmで撹拌しながら、そして試験期間にわたって32℃を維持しながら試験したときに、下記溶解プロフィル:2時間:約40%以下;4時間:約10%〜約70%;8時間:約20%〜約80%;12時間:約40%以上;及び24時間:約70%以上を示すことができる。他の実施態様では、経皮製剤は、下記プロフィル:2時間:約30%以下;4時間:約15%〜約60%;8時間:約30%〜約70%;12時間:約50%以上;及び24時間:約75%以上を示すことができる。さらに他の実施態様では、経皮製剤は、下記プロフィル:2時間:約25%以下;4時間:約20%〜約50%;8時間:約40%〜約70%;12時間:約55%以上;及び24時間:約80%以上を示すことができる。
【0159】
本明細書に記載する医薬的製剤及び投与形のいずれも、少なくとも1種類のα3β4拮抗薬又はその製薬的に受容される塩以外の少なくとも1種類の医薬的活性化合物をさらに含むことができる。このような化合物は、少なくとも1種類のα3β4拮抗薬又はその製薬的に受容される塩によって軽減(reduced)、予防及び/又は管理される胃腸分泌、又はこれ以外の症状を治療、緩和(modify)及び/又は管理するために、含めることができる。当業者は、少なくとも1種類のα3β4拮抗薬又はその製薬的に受容される塩を含む製剤中に、付加的な有効成分を組み入れるための方法の例に精通している。或いは、このような付加的な医薬的活性化合物を、別の製剤中で与えて、本発明による製剤と一緒に、対象に共投与することができる。このような別の製剤は、少なくとも1種類のα3β4拮抗薬又はその製薬的に受容される塩を含有する本発明の製剤の投与の前に、後に又は該投与と同時に投与することができる。
【0160】
用いることができる、付加的な医薬的活性化合物は、非限定的に、他の神経節遮断薬及び/又はニコチン受容体アンタゴニスト(例えば、ヘキサメトニウム、トリメタファン、クロロイソンダミン、エリソジン、β−ジヒドロエリトロジン、アマンチジン、ペルピジン、スクシニルコリン、デカメトニウム、ツボクラリン(例えばd−ツボクラリンのような、その異性体を含む)、アトラクリウム、ドキサクリウム、ミビクリウム、パンクロニウム、ロクロニウム、及びベンクロニウム)、胃腸運動性を改変する作用剤、鎮痙薬、抗ムスカリン様作用薬、グリコピロレート、アトロピン、ヒスコミン、スコポラミン、アヘン剤(例えば、ロペラミド、ジフェノキシレート、ジフェノキシン、コデイン、モルヒネ、オキシモルホン、オキシコンチン、ジヒドロコデイン、及びフェンタニル)、5−HT受容体アゴニスト、5−HT受容体アンタゴニスト(例えば、塩酸アロセトロン)、カルシウム・チャンネル遮断薬(例えばベラパミル、その腸選択性異性体を包含)、β遮断薬(神経原性活性を通して胃腸機能に効果を及ぼすβ遮断薬を包含)、腸を横切っての又は胃腸細胞中へ若しくは胃腸細胞からの流体輸送を改変する作用剤を含めた、種々な胃腸症状及び疾患の治療に用いる作用剤、利尿薬(例えば、アミロリド及びフロセミド)、下痢止め(例えば、ビスマス及びサンドスタチン)、H2−抗ヒスタミン薬、プロトンポンプ阻害剤、制酸薬、抗炎症薬、スルファサラジン、ステロイド(例えば、ミネラロコルチコイド、コルチコステロイド/グルココルチコステロイド、エストロゲン、プレドニゾン、プレドニゾロン、コルチゾル、コルチゾン、フルチカゾン、デキサメタゾン及びベタメタゾン)、5−アミノサリチル酸、抗感染薬(例えば、メトロニダゾール、シプロフロキサシン及びアザチオプリン)、免疫調整剤(例えば、6−メルカプトプリン、サイクロスポリン及びメトトレキセート)、魚油、レミケード、ヘパリン、ニコチン、オクトレオチド、及びこれらの組み合わせを包含する。
【0161】
少なくとも1種類のα3β4拮抗薬又はその製薬的に受容される塩と、少なくとも1種類の他の医薬的活性化合物とが同一の投与形に含有されるように、組み合わせを投与することができる。或いは、少なくとも1種類のα3β4拮抗薬と少なくとも1種類の付加的な医薬的活性化合物とが別々の投与形に含有されて、同時に又は連続的に投与されるように、組み合わせを投与することができる。上記に挙げた医薬的活性化合物と少なくとも1種類のα3β4拮抗薬との組み合わせは、例えば、ラセミ体、富化形、実質的に純粋な形のような、異なる立体異性体であることができる、又はその製薬的に受容される塩も具体的に考慮される。
【0162】
下記実施例を参照することによって、本発明をさらに説明する。本発明の目的及び範囲から逸脱せずに、物質及び方法の両方に対して多くの改変を行なうことができることは、当業者に明らかであろう。
【実施例1】
【0163】
接着剤拡散制御経皮製剤の製造
メカミラミン経皮製剤は、経皮パッチを作製するためにプリント・バッキング(printed backing)上に塗布されたアクリル接着剤とブレンドされたメカミラミンを含有する経皮パッチである。この研究で評価した経皮パッチは、24時間の適用期間中に2mg、4mg又は6mgのメカミラミンのデリバリーを可能にする、メカミラミン5.2mg、10.4mg及び15.6mgの負荷を有する。
【0164】
【化2】

【0165】
アクリル接着剤ブレンドの製造 ステンレススチール混合容器中に2種類の異なるアクリル接着剤を加えることによって、該ブレンドを製造する。該接着剤を一緒にブレンドする。該湿ったブレンドをポリエステル剥離ライナー上に塗布する。該湿った接着剤フィルムを熱風によって乾燥させた。乾燥した接着剤フィルムをオーブンから出して、ペーパー剥離ライナーに接触させて、ラミネーターに通した。間に乾燥アクリル接着剤を挟んだ該ポリエステルとペーパー剥離ライナーを次に、主巻き取りロール上に巻き取った。
【0166】
メカミラミン接着剤ブレンドの製造 シリコーン接着剤とメカミラミンとを圧力容器内で混合することによって、該ブレンドを製造した。
【0167】
メカミラミン接着剤ラミネートの製造 メカミラミン接着剤ブレンドを、ロール式ナイフ塗布ヘッド(knife-over-roll coating head)を用いてプリント・バッキング上に塗布した。該湿った接着剤フィルムを熱風によって乾燥させた。乾燥した接着剤フィルムをオーブンから出して、ペーパー剥離ライナーと接触させて、ラミネーターに通した。間に乾燥アクリル接着剤を挟んだ該ポリエステルとペーパー剥離ライナーを次に、主巻き取りロール上に巻き取った。放出プロフィルを調節するために、付加的な接着剤層を加えることができる。この系から、カットしたパッチの表面積を反映する強度と投与量で、個々の経皮パッチをカットした。
【実施例2】
【0168】
臨床試験
経皮メカミラミンによる臨床経験を評価するために、実施例1の経皮形によってメカミラミンを製造した。該経皮パッチを喫煙者(但し、他の点では健康な対象)に投与して、プラセボ対照群と対比させたときに、下記パターンの効果が実証された。
【0169】
【化3】

【0170】
治療中発生効果(treatment emergent effects)のリストから、他の効果と比較した便秘の発生率によって、GI運動性が明らかである。例えば、メカミラミンがnAChRのα3β4サブタイプの選択性(α3β4に対するIC50値を他のnAChRサブタイプと比較して)を示すという観察と共に生じる重要な効果としての便秘の発生(患者の42%が副作用としての便秘を報告した)は、nAChRのα3β4サブタイプが胃腸状態に役割を果たし、腸運動性及び/又は下痢症状に影響を与えるためのこのような受容体の使用が胃腸状態の治療オプションでありうることを実証する。
【0171】
第2臨床試験では、“神経節遮断”活性に典型的に関連した治療中発生効果の頻度を評価した。下記治療中発生効果が発見された:
【0172】
【化4】

【0173】
このリストから、さらに、例えば便秘のようなGI効果を除いて、観察された他の重要な効果は存在しなかったこと、特に、非選択性神経節遮断活性に伝統的に関連した効果のいずれも存在しなかったことも実証される。
【実施例3】
【0174】
臨床試験
選択性α3β4サブタイプnAChR拮抗薬の治療利益を実証するために、主要な慢性的下痢症状(例えば、機能性下痢)を有する患者にメカミラミンを投与した。該臨床試験は、無作為化二重盲検プラセボ対照付き、並行群、強制投与量エスカレーション試験であり、この試験は、8〜14日間ならし期間後の12週間期間にわたってプラセボに対比してメカミラミンの効力を評価した。メカミラミンを最初の4週間は2mg/日で1日1回投与し、次の4週間は、4mg/日まで強制的滴定(forced titration)し(前回投与量が良好に耐容されることを条件とする)、さらに、治療の最後の4週間に、6mg/日までに投与量をエスカレートした(前回投与量が良好に耐容されることを条件とする)。
【0175】
機能的下痢に関するROME II基準を満たす82患者(男性と女性の両方)をこの試験において無作為化した。包括解析(intent-to-treat)分析と、全12週間の投与量エスカレーション療法を用いた場合に、メカミラミン治療患者は、利用可能な日誌の少なくとも50%での陽性反応に基づくと、第4週(即ち、2mg/日治療期間)の便コンシステンシーの改善を除いて、第1終点及び第2終点においてプラセボからの統計的有意差を示すことができなかった。
【0176】
しかし、より小さい改変プロトコル当たり集団(a smaller modified per-protocol population)(n=35)では、全投与量エスカレーション段階並びに各投与量治療段階に関して、プラセボに比べて、メカミラミン治療による便コンシステンシーの有意な改善が認められた。
【0177】
機能性下痢の主要な特徴は運動性の変化であるが、腸分泌の変化の寄与も存在した、そしてメカミラミンの治療利益は便コンシステンシーの改善に示された(即ち、便の75%未満が、Bristol Stool Scaleで、6又は7(緩い/柔らかい又は水っぽい便)と記録される)。
【0178】
例えば、下記表は便コンシステンシーの“改善”を示した患者数を要約する。治療前に、患者はかれらの1日便の少なくとも75%において、>50%の時間で柔らかい/水っぽい便コンシステンシーを経験していた。“改善”は、患者が1日便の少なくとも75%において、<50%の時間で柔らかい/水っぽい便コンシステンシーを経験することを表す。例えば、メカミラミン治療群の第4週では、18人中の8人(即ち、44.4%)の患者がかれらの便コンシステンシーの“改善”を経験した。
【0179】
【化5】

【0180】
メカミラミン治療患者とプラセボ治療患者の両方で、不利なイベント(AE’s)の総発生率は小さかった。例えば、図1と図2で説明するように、血圧の臨床的に有意な変化は存在せず、このことは、腸分泌に対する選択的効果が、例えば血圧降下活性のような、メカミラミンの伝統的な活性とは解離していることをさらに実証する。
【0181】
図1から、試験の過程にわたって、いずれの治療群にも、平均座位収縮期血圧又は平均座位拡張期血圧に顕著な変化は観察されず、全ての試験訪問時に両群において平均座位収縮期血圧値は約124mmHg〜129mmHgに留まり、平均座位拡張期血圧値は約78mmHg〜81mmHgに留まった。
【0182】
図2から、試験の過程にわたって、いずれの治療群にも、平均立位収縮期血圧又は平均立位拡張期血圧に顕著な変化は観察されず、全ての試験訪問時に両群において平均立位収縮期血圧値は約124mmHg〜130mmHgに留まり、平均立位拡張期血圧値は約79mmHg〜82mmHgに留まった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療を必要とする対象における、少なくとも1つの胃腸状態を治療するための方法であって、少なくとも1種類のα3β4nAChR拮抗薬又はその製薬的に受容される塩の治療有効量を含む組成物を該対象に投与することを含み、この場合、該少なくとも1種類のα3β4nAChR拮抗薬が、nAChRのα3β4サブタイプに対して1.0x10−6〜1x10−9の範囲のIC50値を示す、又はα3β4nAChRサブタイプに対して、少なくとも1種類の他のnAChRサブタイプに比べて少なくとも2倍大きい効力を示す方法。
【請求項2】
該少なくとも1種類の拮抗薬が、競合的又は非競合的/アロステリック阻害剤である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
該少なくとも1つの胃腸状態が、胃腸分泌の異常な亢進である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
該少なくとも1つの胃腸状態が、胃腸の分泌と運動性の異常な亢進である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
該少なくとも1つの胃腸状態が、下痢関連若しくは関係症状、慢性下痢、機能性下痢、癌関連下痢、カルチノイド症候群、炎症性腸疾患及び顕微鏡的大腸炎の下痢関連症状、化学療法及び放射線療法関係下痢、AIDS関連下痢、感染性下痢、食物不耐性及び吸収不良関連下痢、薬剤関与下痢、セリアック病、及び内分泌疾患、機能性腸障害、潰瘍性大腸炎、肉芽腫性腸炎、クローン病、小腸及び大腸の感染性疾患、幽門痙攣、腹部痙攣、軽度赤痢、憩室炎、急性全腸炎、神経原性腸障害、痙攣性結腸炎、及び上記状態のいずれかの下痢関連若しくは関与症状から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
該状態が下痢関連状態である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
該状態が化学療法関連下痢である、請求項5記載の方法。
【請求項8】
該少なくとも1種類のα3β4拮抗薬がN−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミン又はその製薬的に受容される塩である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
該少なくとも1つの胃腸状態が、胃腸分泌の異常な亢進であり、該胃腸分泌の異常な亢進が低減され、その上、N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミン又はその製薬的に受容される塩の従来の製剤の投与に付随する、少なくとも1つの副作用が最小化される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
該少なくとも1つの副作用が、対象の心拍数、血圧、視力及び膀胱機能に対する効果から選択される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
N−2,2,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミン又はその製薬的に受容される塩の治療有効量が、約0.2mg〜約40mgの範囲の量で存在する、請求項8記載の方法。
【請求項12】
N−2,2,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミン又はその製薬的に受容される塩が、約0.5mg〜約20mgの範囲の量で存在する、請求項11記載の方法。
【請求項13】
N−2,2,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミン又はその製薬的に受容される塩が、約1mg〜約15mgの範囲の量で存在する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
N−2,2,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミン又はその製薬的に受容される塩が、約2mg〜約12mgの範囲の量で存在する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
N−2,3,3−テトラメチルビシクロ[2.1.1]ヘプタン−2−アミンが、ラセミN−2,3,3−テトラメチルビシクロ[2.1.1]ヘプタン−2−アミン、富化(R)−N−2,3,3−テトラメチルビシクロ[2.1.1]ヘプタン−2−アミン、富化(S)−N−2,3,3−テトラメチルビシクロ[2.1.1]ヘプタン−2−アミン、実質的に純粋な(R)−N−2,3,3−テトラメチルビシクロ[2.1.1]ヘプタン−2−アミン、実質的に純粋な(S)−N−2,3,3−テトラメチルビシクロ[2.1.1]ヘプタン−2−アミン、又は上記のいずれかの製薬的に受容される塩を含むものである、請求項8記載の方法。
【請求項16】
N−2,3,3−テトラメチルビシクロ[2.1.1]ヘプタン−2−アミンが、ラセミN−2,3,3−テトラメチルビシクロ[2.1.1]ヘプタン−2−アミン又はその製薬的に受容される塩を含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
N−2,3,3−テトラメチルビシクロ[2.1.1]ヘプタン−2−アミンが、富化N−2,3,3−テトラメチルビシクロ[2.1.1]ヘプタン−2−アミン又はその製薬的に受容される塩を含む、請求項15記載の方法。
【請求項18】
N−2,3,3−テトラメチルビシクロ[2.1.1]ヘプタン−2−アミンが、実質的に純粋なN−2,3,3−テトラメチルビシクロ[2.1.1]ヘプタン−2−アミン又はその製薬的に受容される塩を含む、請求項15記載の方法。
【請求項19】
該組成物が、経口投与、鼻腔内投与又は経皮投与に適したものである、請求項1記載の方法。
【請求項20】
該組成物が、頬側投与又は舌下投与に適したものである、請求項19記載の方法。
【請求項21】
該組成物が調節放出製剤である、請求項1記載の方法。
【請求項22】
該組成物が、即時放出製剤と組み合わせて、調節放出製剤を含む、請求項1記載の方法。
【請求項23】
少なくとも1種類の拮抗薬又はその製薬的に受容される塩の投与が、最初の投与後約3.5時間以降に該少なくとも1種類の拮抗薬の最大血漿濃度を生じる、請求項1記載の方法。
【請求項24】
該少なくとも1種類の拮抗薬の最大血漿濃度が最初の投与後約6時間以降に生じる、請求項23記載の方法。
【請求項25】
該少なくとも1種類の拮抗薬又はその製薬的に受容される塩が1日1回投与される、請求項1記載の方法。
【請求項26】
該少なくとも1種類の拮抗薬又はその製薬的に受容される塩が、少なくとも1種類の他の医薬的活性化合物と組み合わせて、投与される、請求項1記載の方法。
【請求項27】
該少なくとも1種類の他の医薬的活性化合物が、神経節遮断薬、ニコチン受容体アンタゴニスト、胃腸運動性を改変する作用剤、鎮痙薬、抗ムスカリン様作用薬、アヘン剤、5−HT受容体アゴニスト、5−HT受容体アンタゴニスト、カルシウム・チャンネル遮断薬、βアドレナリン性受容体遮断薬、腸を通しての流体輸送を改変する作用剤、胃腸細胞中へ若しくは胃腸細胞からの流体輸送を改変する作用剤、利尿薬、下痢止め、H2−抗ヒスタミン薬、プロトンポンプ阻害剤、制酸薬、抗炎症薬、ステロイド、ミネラロコルチコイド、コルチコステロイド、抗感染薬、免疫調整剤、及び魚油から選択される、請求項26記載の方法。
【請求項28】
該少なくとも1種類の他の医薬的活性化合物が、ヘキサメトニウム、トリメタファン、クロロイソンダミン、エリソジン、β−ジヒドロエリトロジン、アマンチジン、ペルピジン、スクシニルコリン、デカメトニウム、ツボクラリン、アトラクリウム、ドキサクリウム、ミビクリウム、パンクロニウム、ロクロニウム、ベンクロニウム、グリコピロレート、アトロピン、ヒスコミン、スコポラミン、ロペラミド、ジフェノキシン、コデイン、モルヒネ、オキシモルホン、オキシコンチン、ジヒドロコデイン、フェンタニル、塩酸アロセトロン、ベラパミル、アミロリド、フロセミド、ビスマス、サンドスタチン、スルファサラジン、エストロゲン、プレドニゾン、プレドニゾロン、コルチゾル、コルチゾン、フルチカゾン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、5−アミノサリチル酸、メトロニダゾール、シプロフロキサシン、アザチオプリン、6−メルカプトプリン、サイクロスポリン、メトトレキセート、魚油、レミケード、ヘパリン、及びニコチンから選択される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
該組成物が、持続放出成分又は遅延放出成分又は持続放出成分と遅延放出成分の両方を含む、請求項1記載の方法。
【請求項30】
該組成物がさらに、少なくとも1種類の即時放出成分を含む、請求項1記載の方法。
【請求項31】
該組成物が、約4:1未満の、該少なくとも1種類の拮抗薬のピーク−トラフ血漿レベル比率を生じる、請求項1記載の方法。
【請求項32】
該ピーク−トラフ血漿レベル比率が約3:1未満である、請求項31記載の方法。
【請求項33】
該ピーク−トラフ血漿レベル比率が約2:1未満である、請求項32記載の方法。
【請求項34】
該組成物の投与が、最初の投与後の少なくとも約24時間目に、投与後に達成されるピーク血漿濃度の約25%以上である、該少なくとも1種類の拮抗薬の血漿濃度を生じる、請求項1記載の方法。
【請求項35】
最初の投与後の少なくとも約24時間目の少なくとも1種類の拮抗薬の血漿濃度が、投与後に達成されるピーク血漿濃度の約50%以上である、請求項34記載の方法。
【請求項36】
該組成物の投与が、ピーク血漿濃度の約50%以上である、該少なくとも1種類の拮抗薬の血漿濃度を、最初の投与後の約14時間以上の間与える、請求項1記載の方法。
【請求項37】
該少なくとも1種類の拮抗薬の血漿濃度が、最初の投与後の約16時間以上の間、ピーク血漿濃度の約50%以上である、請求項36記載の方法。
【請求項38】
該少なくとも1種類の拮抗薬の血漿濃度が、最初の投与後の約18時間以上の間、ピーク血漿濃度の約50%以上である、請求項37記載の方法。
【請求項39】
該少なくとも1種類の拮抗薬の前記血漿濃度が、最初の投与後の約24時間以上の間、ピーク血漿濃度の約50%以上である、請求項38記載の方法。
【請求項40】
該組成物が、米国薬局方(USP)タイプ2装置で、37℃において、50rpm及びpH6.8リン酸塩緩衝液中で撹拌して試験したときに、約2時間未満の間に該少なくとも1種類の拮抗薬の約60%未満、約12時間以上の間に約40%以上、及び約24時間以上の間に約70%以上を放出する、請求項1記載の方法。
【請求項41】
該少なくとも1種類の拮抗薬の約60%以下が約2時間の間に放出され、約70%以下が約4時間の間に放出され、約50%以上が約8時間の間に放出され、約65%以上が約12時間の間に放出され、そして約80%以上が約24時間の間に放出される、請求項40記載の方法。
【請求項42】
該少なくとも1種類の拮抗薬の約50%以下が約2時間の間に放出され、約65%以下が約4時間の間に放出され、約60%以上が約8時間の間に放出され、約70%以上が約12時間の間に放出され、そして約80%以上が約24時間の間に放出される、請求項41記載の方法。
【請求項43】
該少なくとも1種類の拮抗薬の約40%以下が約2時間の間に放出され、約20%〜約60%が約4時間の間に放出され、約70%以上が約8時間の間に放出され、約75%以上が約12時間の間に放出され、そして約80%以上が約24時間の間に放出される、請求項42記載の方法。
【請求項44】
少なくとも1種類のα3β4nAChR拮抗薬又はその製薬的に受容される塩の治療有効量を含む組成物を対象に投与することを含む、治療を必要とする対象における腸分泌を調節及び/又は管理する方法であって、該少なくとも1種類のα3β4nAChR拮抗薬がnAChRのα3β4サブタイプに対して1.0x10−6〜1x10−9の範囲のIC50値を示す、又はnAChRのα3β4サブタイプに対して、少なくとも1つの他のnAChRサブタイプに比べて、少なくとも2倍大きい効力を示す方法。
【請求項45】
該少なくとも1つの拮抗薬が競合的又は非競合的/アロステリック阻害剤として作用する、請求項44記載の方法。
【請求項46】
該少なくとも1種類の胃腸障害が胃腸分泌の異常な亢進である、請求項44記載の方法。
【請求項47】
該少なくとも1つの胃腸状態が、下痢関連若しくは関係症状、慢性下痢、機能性下痢、癌関連下痢、カルチノイド症候群、炎症性腸疾患及び顕微鏡的大腸炎の下痢関連症状、化学療法及び放射線療法関係下痢、AIDS関連下痢、感染性下痢、食物不耐性及び吸収不良関連下痢、薬剤関与下痢、セリアック病、及び内分泌疾患、並びに上記状態のいずれかの下痢関連若しくは関与症状から選択される、請求項44記載の方法。
【請求項48】
該状態が下痢関連状態である、請求項47記載の方法。
【請求項49】
該状態が化学療法関連状態である、請求項47記載の方法。
【請求項50】
該少なくとも1種類の拮抗薬がN−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミン又はその製薬的に受容される塩である、請求項44記載の方法。
【請求項51】
該組成物が調節放出製剤である、請求項44記載の方法。
【請求項52】
N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミン又はその製薬的に受容される塩の治療有効量を含む組成物を投与することを含む、胃腸運動性の異常な亢進に苦しむ対象における胃腸運動性を低減する方法であって、該N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミンがnAChRのα3β4サブタイプに対して1.0x10−6〜1x10−9の範囲のIC50値を示す、又はα3β4nAChRサブタイプに対して、少なくとも1種類の他のnAChRサブタイプに比べて少なくとも2倍大きい効力を示す方法。
【請求項53】
該N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミンが競合的又は非競合的/アロステリック阻害剤として作用する、請求項52記載の方法。
【請求項54】
該少なくとも1種類の胃腸障害が胃腸分泌の異常な亢進である、請求項52記載の方法。
【請求項55】
該少なくとも1種類の胃腸障害が、機能的腸障害、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、肉芽腫性腸炎、クローン病、小腸及び大腸の感染性疾患、幽門痙攣、腹部痙攣、軽度赤痢、憩室炎、急性全腸炎、神経原性腸障害、痙攣性結腸炎、並びに上記状態のいずれかの下痢関連若しくは関係症状から選択される、請求項52記載の方法。
【請求項56】
該状態が下痢関連状態である、請求項55記載の方法。
【請求項57】
少なくとも1種類の胃腸状態が化学療法関連状態である、請求項52記載の方法。
【請求項58】
該組成物が調節放出製剤である、請求項52記載の方法。
【請求項59】
N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミン又はその製薬的に受容される塩の胃腸分泌低減量を対象に投与することを含む、胃腸分泌の異常な亢進に苦しむ対象における胃腸分泌を低減する方法であって、該N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミン又はその製薬的に受容される塩が調節放出製剤の形態で投与される方法。
【請求項60】
N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミン又はその製薬的に受容される塩の慣用的製剤の投与に付随する少なくとも1つの副作用を最小にしながら、胃腸分泌の異常な亢進が低減される、請求項59記載の方法。
【請求項61】
該少なくとも1つの作用が、対象の心拍数、血圧、視力及び膀胱機能に対する作用から選択される、請求項60記載の方法。
【請求項62】
該調節放出製剤が、経口投与、鼻腔内投与又は経皮投与に適している、請求項59記載の方法。
【請求項63】
該調節放出製剤を即時放出製剤と組み合わせる、請求項59記載の方法。
【請求項64】
N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミン又はその製薬的に受容される塩の胃腸分泌低減量が、約0.2mg〜約40mgの範囲である、請求項59記載の方法。
【請求項65】
該胃腸分泌低減量が、約0.5mg〜約20mgの範囲である、請求項64記載の方法。
【請求項66】
該胃腸分泌低減量が、約1mg〜約15mgの範囲である、請求項65記載の方法。
【請求項67】
該胃腸分泌低減量が、約2mg〜約12mgの範囲である、請求項66記載の方法。
【請求項68】
N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミン又はその製薬的に受容される塩の投与が、最初の投与後約3.5時間以降にN−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミンの最大血漿濃度を生じる、請求項59記載の方法。
【請求項69】
N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミンの最大血漿濃度が、最初の投与後約6時間以降に達成される、請求項68記載の方法。
【請求項70】
前記N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミン又はその製薬的に受容される塩を1日1回投与する、請求項59記載の方法。
【請求項71】
該N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミンが、ラセミN−2,3,3−テトラメチルビシクロ[2.1.1]ヘプタン−2−アミン、富化(R)−N−2,3,3−テトラメチルビシクロ[2.1.1]ヘプタン−2−アミン、富化(S)−N−2,3,3−テトラメチルビシクロ[2.1.1]ヘプタン−2−アミン、実質的に純粋な(R)−N−2,3,3−テトラメチルビシクロ[2.1.1]ヘプタン−2−アミン、実質的に純粋な(S)−N−2,3,3−テトラメチルビシクロ[2.1.1]ヘプタン−2−アミン、又はこれらの製薬的に受容される塩を含むものである、請求項59記載の方法。
【請求項72】
該N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミンが、ラセミN−2,3,3−テトラメチルビシクロ[2.1.1]ヘプタン−2−アミン又はその製薬的に受容される塩を含む、請求項71記載の方法。
【請求項73】
該N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミンが、富化N−2,3,3−テトラメチルビシクロ[2.1.1]ヘプタン−2−アミン又はその製薬的に受容される塩を含む、請求項71記載の方法。
【請求項74】
該N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミンが、実質的に純粋なN−2,3,3−テトラメチルビシクロ[2.1.1]ヘプタン−2−アミン又はその製薬的に受容される塩を含む、請求項71記載の方法。
【請求項75】
該N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミン又はその製薬的に受容される塩を、少なくとも1種類の医薬的活性化合物と組み合わせて投与する、請求項59記載の方法。
【請求項76】
該少なくとも1種類の他の医薬的活性化合物が、神経節遮断薬、ニコチン受容体アンタゴニスト、胃腸運動性を改変する作用剤、鎮痙薬、抗ムスカリン様作用薬、アヘン剤、5−HT受容体アゴニスト、5−HT受容体アンタゴニスト、カルシウム・チャンネル遮断薬、βアドレナリン性受容体遮断薬、腸を通しての流体輸送を改変する作用剤、胃腸細胞中へ若しくは胃腸細胞からの流体輸送を改変する作用剤、利尿薬、下痢止め、H2−抗ヒスタミン薬、プロトンポンプ阻害剤、制酸薬、抗炎症薬、ステロイド、ミネラロコルチコイド、コルチコステロイドとグルココルチコステロイド、抗感染薬、免疫調整剤、魚油並びにこれらの組み合わせから選択される、請求項75記載の方法。
【請求項77】
該少なくとも1種類の他の医薬的活性化合物が、ヘキサメトニウム、トリメタファン、クロロイソンダミン、エリソジン、β−ジヒドロエリトロジン、アマンチジン、ペルピジン、スクシニルコリン、デカメトニウム、ツボクラリン、アトラクリウム、ドキサクリウム、ミビクリウム、パンクロニウム、ロクロニウム、ベンクロニウム、グリコピロレート、アトロピン、ヒスコミン、スコポラミン、ロペラミド、ジフェノキシン、コデイン、モルヒネ、オキシモルホン、オキシコンチン、ジヒドロコデイン、フェンタニル、塩酸アロセトロン、ベラパミル、アミロリド、フロセミド、ビスマス、サンドスタチン、スルファサラジン、エストロゲン、プレドニゾン、プレドニゾロン、コルチゾル、コルチゾン、フルチカゾン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、5−アミノサリチル酸、メトロニダゾール、シプロフロキサシン、アザチオプリン、6−メルカプトプリン、サイクロスポリン、メトトレキセート、魚油、レミケード、ヘパリン、ニコチン、オクトレオチド、ジフェノキシレート、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項28記載の方法。
【請求項78】
該調節放出製剤が、米国薬局方(USP)タイプ1装置(バスケット)又は米国薬局方(USP)タイプ2装置(パドル)によって37℃及び50rpm以上においてpH6.8以上のリン酸塩緩衝液中で測定期間にわたって測定したときに、下記in vitro放出プロフィル:
2時間:約60%以下;4時間:約70%以下;8時間:約50%以上;12時間:約65%以上;及び24時間:約80%以上を生じる、請求項59記載の方法。
【請求項79】
N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミン又はその製薬的に受容される塩の治療有効量を対象に投与することを含む、胃腸の分泌と運動性の異常な亢進に苦しむ対象における胃腸の分泌と運動性を低減する方法であって、該N−2,3,3−テトラメチルビシクロ−[2.1.1]ヘプタン−2−アミン又はその製薬的に受容される塩を調節放出製剤の形態で投与する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−516751(P2010−516751A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546837(P2009−546837)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【国際出願番号】PCT/IB2008/000905
【国際公開番号】WO2008/090471
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(506377248)エイジーアイ・セラピューティクス・リサーチ・リミテッド (8)
【Fターム(参考)】