説明

少なくとも2つのサブアセンブリを3次元的に相互に位置合せする装置及びその方法

本発明は、少なくとも2つの大型のサブアセンブリを相互に組付けて1つのアセンブリを構成するために、より具体的には、例えば、少なくとも1つの胴体側面シェル(7、8)、少なくとも1つの胴体上面シェル(12)、少なくとも1つの胴体下面シェル(11)、及び/または、少なくとも1つの胴体床構造体を相互に組付けて航空機の1つの胴体セクションを構成するために、それら少なくとも2つのサブアセンブリを3次元的に相互に位置合せする装置(1)に関する。本装置は、a)各々が1つずつのサブアセンブリを把持する少なくとも2台のポジショニング装置を備えており、より具体的には、例えば、少なくとも2台の胴体側面シェル用ポジショニング装置(2、3)、少なくとも1台の胴体上面シェル用ポジショニング装置(5)、及び/または、少なくとも1台の胴体下面シェル用ポジショニング装置(4)を備えており、b)測定によって複数の測定データを取得するための、より具体的には、例えば、前記複数のサブアセンブリ及び/または前記複数台のポジショニング装置の位置データを取得するための、少なくとも1つの測定装置を備えており、c)少なくとも1つの制御及び/または調節装置(19)を備えており、より具体的には、例えば、少なくとも1つのCNC制御装置(コンピュータ数値制御装置)を備えており、d)少なくとも1つのニューラルネットワーク(20)を備えている。本発明に従って本装置に備えられているニューラルネットワーク(20)は、前記複数台のポジショニング装置を互いに同時に作動させて、短時間で、しかも高精度で前記複数のサブアセンブリの形状を夫々の所与の目標形状にすることを可能にするものである。また、前記制御及び/または調節装置(19)は、それに続いて、前記複数台のサブアセンブリに互いに同時に直線移動操作を行わせて、前記複数のサブアセンブリを相互に位置合せするものである。本発明は更に、複数のサブアセンブリを位置合せする方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの大型のサブアセンブリを相互に組付けて1つのアセンブリを構成するために、より具体的には、例えば、少なくとも1つの胴体側面シェル、少なくとも1つの胴体上面シェル、少なくとも1つの胴体下面シェル、及び/または、少なくとも1つの胴体床構造体を相互に組付けて航空機の1つの胴体セクションを構成するために、それら少なくとも2つのサブアセンブリを3次元的に相互に位置合せする装置に関する。
【0002】
本発明は更に、少なくとも2つのサブアセンブリを3次元的に相互に位置合せする方法に関する。
【背景技術】
【0003】
現代の航空機製造においては、航空機の胴体を製造する方法として、いわゆるセクション方式が広く採用されている。セクション方式では、先ず、複数のサブアセンブリを相互に組付けて1つの胴体セクションを構成する。サブアセンブリとしては、例えば、胴体側面シェル、胴体上面シェル、胴体下面シェル、胴体床構造体などがあり、また場合によっては、艤装機器ないし艤装システムの構成要素などをサブアセンブリとして胴体セクションに組込むこともある。そして、そのように構成した幾つもの胴体セクションを、次々と組付けて行くことによって、航空機の胴体を完成させる。
【0004】
最近の航空機の胴体セルの製造施設には、複数台のポジショニング装置が備えられており、それらポジショニング装置によって、複数のサブアセンブリを把持して3次元的に相互に位置合せするようにしている。また、その位置合せ作業に必要なデータは、適宜の測定装置によって取得されるようにしてある。ただし、位置合せの操作それ自体は手動操作であり、しかも移動操作を反復する方式で実行されている。しかるに、この方式では、その移動操作における移動経路に関して高精度が要求されることに加えて、更に、外部からサブアセンブリに作用する荷重によって大きさが不定の変形がサブアセンブリに生じるのを避けるために、サブアセンブリに作用する荷重が所定の上限値を超えないようにすることも要求される。しかしながら、これらの影響により、複数のサブアセンブリを所与の目標位置に位置付けるまでに、複数台のポジショニング装置で反復しなければならない移動操作の回数が極めて多くなっている。更には、位置合せを手動操作によって行うため、安全上の観点から、一般的に、常に、1台のポジショニング装置のみを移動操作している。航空機の胴体を組立てるために従来採用されていた方法、並びに、そのために従来使用されていた装置には、以上に述べた短所が付随していたことから、その組立作業には長時間を要していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、複数のサブアセンブリの形状を短時間で夫々の所与の目標形状にし、続いて、簡明な移動操作によりそれら複数のサブアセンブリを相互の仮止め及び/または接合のための相対位置に位置付けることができる装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は請求項1に記載の装置により達成され、同装置は以下の特徴を備えたものである。
a)各々が1つずつのサブアセンブリを把持する少なくとも2台のポジショニング装置を備えており、より具体的には、例えば、少なくとも2台の胴体側面シェル用ポジショニング装置、少なくとも1台の胴体上面シェル用ポジショニング装置、及び/または、少なくとも1台の胴体下面シェル用ポジショニング装置を備えていること。
b)測定によって複数の測定データを取得するための、より具体的には、例えば、前記複数のサブアセンブリ及び/または前記複数台のポジショニング装置の位置データを取得するための、少なくとも1つの測定装置を備えていること。
c)少なくとも1つの制御及び/または調節装置を備えており、より具体的には、例えば、少なくとも1つのCNC制御装置(コンピュータ数値制御装置)を備えていること。
d)少なくとも1つのニューラルネットワーク(20)を備えていること。
【0007】
本装置における前記複数台のポジショニング装置は、少なくとも2つのサブアセンブリを、より具体的には、例えば、胴体側面シェル、胴体上面シェル、胴体下面シェル、及び、少なくとも1つの胴体床構造体を、自動化した把持動作によって把持することができ、そして、把持したそれらサブアセンブリを3次元空間の任意の位置へ移動させる移動操作を行うことができるものである。これに関して考慮すべきことは、大型のサブアセンブリは、それをポジショニング装置が把持した時点で、また特にポジショニング装置に備えられている保持機構で把持した時点で、自重によって撓むために変形を生じることである。そのため、複数のサブアセンブリを把持したならば、先ず、把持したそれらサブアセンブリの形状を、正確に、設計書に示されているそれらサブアセンブリの夫々の目標形状にする必要がある。そして、それらサブアセンブリの形状を夫々の目標形状にしたならば、例えばポジショニング装置に移動操作を行わせることにより、それら複数のサブアセンブリを相互の仮止め及び接合のための相対位置に位置付ける。尚、ポジショニング装置がサブアセンブリを把持した時点で、その把持されたサブアセンブリが呈する形状は、非常に複雑な非線形数学アルゴリズムを用いなければ表すことのできない複雑な形状である。
【0008】
本装置は、以上を行うために少なくとも1つのニューラルネットワークを備えており、このニューラルネットワークによって、複数台のポジショニング装置を同時に作動させ、少なくとも2つのサブアセンブリの形状を設計書に示されたそれらサブアセンブリの夫々の目標形状にすることができるようにしている。このように、ニューラルネットワークの統御下において、複数台のポジショニング装置を同時に作動させることにより、複数のサブアセンブリの形状を夫々の目標形状にするために要する時間が格段に短縮される。
【0009】
本装置は更に、少なくとも1つの制御及び/または調節装置を備えており、この制御及び/または調節装置を前記ニューラルネットワークと併用して、或いは、前記ニューラルネットワークを用いる替わりにこの制御及び/または調節を用いて、複数台のポジショニング装置の動作を制御できるようにしている。この制御及び/または調節装置は、例えば、公知のCNC制御装置(コンピュータ数値制御装置)などで構成することが好ましい。前記ニューラルネットワークによって複数のサブアセンブリの形状を夫々の所与の目標形状にしたならば、続いてこのCNC制御装置によって例えば簡明な移動操作を実行することで、それら複数のサブアセンブリを相互の仮止め及び接合のための相対位置に位置付けることができる。このように、先ず最初に、前記ニューラルネットワークを用いて複数のサブアセンブリの形状を夫々の所与の目標形状にすることによって、それら複数のサブアセンブリを相互の仮止め及び/または接合のための相対位置に位置付ける移動操作における制御及び/または調節の手間が格段に軽減される。
【0010】
本装置の特に有利な1つの構成例によれば、前記少なくとも1つの測定装置によって、前記複数のサブアセンブリ及び/または前記複数台のポジショニング装置の3次元的な位置ないし姿勢が測定される。
【0011】
この構成とすることで、相互に接合するサブアセンブリどうしの位置合せを高精度で行うことが可能となる。この構成例では、位置合せの工程は、前記少なくとも1つの制御及び/または前記調節装置によって、及び/または、前記少なくとも1つのニューラルネットワークによって、連続的に制御される。
【0012】
本装置の1つの構成例によれば、前記少なくとも1つの測定装置は、少なくとも1つのレーザトラッカー及び/または少なくとも1つの写真測量システムから成る。
【0013】
この構成とすることで、本装置における複数のサブアセンブリの夫々の3次元的な位置を0.1mm以内の良好な精度をもって、非接触方式で測定することができる。レーザトラッカーで測定してそれらサブアセンブリの3次元的な位置データを得るためには、各々のサブアセンブリにマーカーとして機能するリフレクタを少なくとも6個ずつ備えることが望ましい。写真測量方式の測定システムを用いる場合には、そのようなマーカーは必ずしも必要とされないが、ただしマーカーを備えるようにすれば、解析対象の画像のコントラストが増大するため、測定作業の高速化、及び/または、測定精度の向上という効果が得られる。また、1つの別構成例として、レーザ機器で構成し、基準レーザグリッドを生成することで測定を行うようにした、屋内利用に適したGPS的なシステム(いわゆる「屋内−GPS(登録商標)」)を、測定装置として用いることも可能である。
【0014】
本装置の1つの構成例によれば、前記ニューラルネットワークは、ハードウェア及び/またはソフトウェアで構成されており、より具体的には、例えば、前記少なくとも1つの制御及び/または調節装置の中に組込まれている。
【0015】
前記ニューラルネットワークをハードウェアで構成することにより得られる最大の利点は動作の高速性であるが、ただし、ハードウェアで構成するによってシステムが高コストになる。一方、前記ポジショニング装置の制御を行うためには、もとよりCNC制御装置が必要となるため、前記ニューラルネットワークをソフトウェアで構成する場合には、このCNC制御装置の中に、又はこの目的のために設けられた演算装置の中に、ソフトウェアによって前記ニューラルネットワークを直接組込むことができる。
【0016】
本発明の更に別の1つの構成例によれば、前記少なくとも1つの測定装置によって取得された前記複数のサブアセンブリの位置データが、前記制御及び/または調節装置並びに前記ニューラルネットワークへ供給される。
【0017】
このように、前記測定装置によって取得した空間座標を、前記少なくとも1つのニューラルネットワーク並びに前記制御及び/または調節装置にフィードバックするようにしているのは、制御及び/または調節を行うための閉回路(帰還回路)を形成するために必要だからである。この構成とすることで、前記制御及び/または調節装置並びに前記ニューラルネットワークは、サブアセンブリどうしの位置合せ誤差が存在する場合に、その誤差を殆ど時間遅れなく検出し、そして、前記ポジショニング装置を適切に作動させて目標位置からのずれを解消することができるようになる。
【0018】
本発明の特に有利な1つの構成例によれば、前記複数台のポジショニング装置の各々が少なくとも1つの保持機構を備えており、該少なくとも1つの保持機構は少なくとも1つのサブアセンブリの把持及び把持解除を行う機構であり、該少なくとも1つの保持機構は前記制御及び/または調節装置により制御可能である。
【0019】
この構成とすることで、前記ポジショニング装置が前記サブアセンブリを把持する動作を自動化することができ、また前記ポジショニング装置が前記サブアセンブリを把持解除する動作も自動化することができる。前記保持機構は、例えば、真空吸着パッドとしてもよく、また、互いに隙間なく嵌合する半球形ソケットと球形ヘッドとから成る機構としてもよい。
【0020】
本装置の更に別の特に有利な構成例によれば、前記ポジショニング装置が更に手動制御装置によっても制御可能である。
【0021】
この構成とすることで、位置合せ誤差が存在していた場合に、操作員がオーバーライド操作を行うことが可能となる。更に、場合によっては、前記ニューラルネットワークによって目標形状としたサブアセンブリのその形状に対して、前記手動制御装置を操作して更に精度を高めるための補正を加えることも可能となる。前記手動制御装置としては、例えば「ジョイスティック」などを用いることができる。また、前記手動制御装置が出力する電気信号(手動制御信号)は、直接、制御対象のポジショニング装置のアクチュエータへ供給されるようにし、そして、その手動制御信号が、前記ニューラルネットワークないし前記制御及び/または調節装置から供給される制御信号よりも優先されるようにしておくとよい。手動操作による位置合せを補助する手段として、更に、例えばレーザラインやそれと同等の手段を併用するのもよく、それによって、操作員が目視によって位置合せを行う際に達成可能な位置合せ精度を向上させることができる。尚、前記手動制御装置は、手動操作によってポジショニング装置を作動させる際に、同時に2台以上のポジショニング装置を作動させることなく、1台のポジショニング装置だけを、そのポジショニング装置に備えられている少なくとも1つのアクチュエータを駆動することで作動させる構成とすることが望ましい。
【0022】
本装置の1つの構成例によれば、少なくとも2つの前記サブアセンブリをそれらの相対位置に固定するために相互に仮止めする少なくとも1つの仮止め作業機を備えている。
【0023】
この構成とすることで、相互に適切に位置合せした複数のサブアセンブリを、そこから離れた場所に設置されている仮止め作業機及び/または接合作業機まで移動させずに済むようになる。そのような移動を行った場合には、サブアセンブリどうしの相対位置が変化するおそれがあり、ひいては、最終製品に寸法のばらつきや位置ずれが発生するおそれがある。
【0024】
本装置の特に有利な1つの構成例によれば、少なくとも2つの前記サブアセンブリを接合するための少なくとも1つの接合作業機を備えている。
【0025】
この構成とすることで、先ず最初に少なくとも2つのサブアセンブリの3次元的な形状を補正し、続いてそれらサブアセンブリを位置合せし、場合によってはそれらサブアセンブリを仮止めした後に、それらサブアセンブリを接合して1つのアセンブリとすることができる。
【0026】
本装置の更なる発展形態である1つの構成例によれば、少なくとも1台の前記ポジショニング装置の近傍に、更なる測定データを取得するための少なくとも1つの測定センサが配設されており、該測定センサは、前記少なくとも1つの制御及び/または調節装置並びに前記少なくとも1つのニューラルネットワークに接続されている。
【0027】
この構成とすることで、前記ポジショニング装置の近傍において直接測定を行って測定データを取得することが可能となり、例えば、前記ポジショニング装置における変位量及び/または前記ポジショニング装置に作用する荷重を直接測定することが可能となる。
【0028】
本装置の更に別の1つの構成例によれば、前記少なくとも1つの測定センサは、例えば前記サブアセンブリの変形量などを検出するための荷重センサ、例えば前記ポジショニング装置の位置データなどを取得するための距離センサ、回転角度センサ、速度センサ、加速度センサ、温度センサ、及び/または、湿度センサである。
【0029】
この構成とすることで、主データであるところの前記測定装置による非接触式測定で取得される前記サブアセンブリないし前記ポジショニング装置の位置データの他に、補助データとして例えば前記ポジショニング装置の正確な位置座標などの様々な物理量の測定値を前記ポジショニング装置において直接取得することができ、それによって、前記ニューラルネットワーク、及び/または、前記制御及び/または調節装置が行う前記ポジショニング装置の制御を更に向上させることができる。また特に、前記測定センサが距離センサである場合には、その距離センサと測定対象のポジショニング装置とを機械的に連結した構成とするとよい。
【0030】
また更に、本発明の目的は請求項12に記載の方法により達成され、同方法は以下のステップを含むものである。
a)前記少なくとも2台のポジショニング装置の各々に1つずつのサブアセンブリを装填することで、より具体的には、例えば、少なくとも1台の胴体側面シェル用ポジショニング装置、少なくとも1台の胴体上面シェル用ポジショニング装置、及び/または、少なくとも1台の胴体下面シェル用ポジショニング装置の各々に1つずつのサブアセンブリを装填することで、複数台のポジショニング装置に複数のサブアセンブリを装填するステップ。
b)少なくとも1つのニューラルネットワーク並びに少なくとも1つの測定装置の制御下において、前記複数台のポジショニング装置を同時に作動させて、所与の目標形状にするステップ。
c)前記少なくとも2つのサブアセンブリ及び/または前記少なくとも2台のポジショニング装置の位置を前記測定装置により測定することで、実測位置データを取得するステップ。
d)前記少なくとも1つの制御及び/または調節装置、及び/または、前記少なくとも1つのニューラルネットワークの制御下において、且つ、前記測定装置、及び/または、前記測定センサにより測定して取得する前記実測位置データに基づいて、前記複数台のポジショニング装置を同時に作動させることで、前記複数のサブアセンブリを位置合せするステップであって、その位置合せによって、例えば、前記複数のサブアセンブリを相互の仮止め及び/または接合のための目標位置に位置付ける、位置合せステップ。
【0031】
前記方法ステップa)では、先ず、複数台のポジショニング装置の各々に1つずつのサブアセンブリを把持させ、ないしは装填し、ないしは装着する。サブアセンブリを把持させるために、ポジショニング装置の各々に、少なくとも1つの、また好ましくは少なくとも2つの、遊びのない保持機構ないし連結機構を備えるようにしており、その保持機構を、前記ポジショニング装置の保持アームの先端に配設するようにしている。またその保持機構は、例えば、少なくとも部分的に互いに隙間なく嵌合する球形ヘッドと球面ソケットとから成る機構とすることができる。或いはまた、特にサブアセンブリが平滑な表面を有するものである場合には、その保持機構を、真空吸着パッドとしてもよい。前記保持機構がサブアセンブリを保持する保持動作と、保持したサブアセンブリを保持解除する解除動作とは、いずれも、前記制御及び/または調節装置によって集中制御するようにするとよい。
【0032】
前記ステップb)では、夫々にサブアセンブリを把持している複数台のポジショニング装置を、好ましくは少なくとも1つのニューラルネットワークの制御下において、互いに同時に作動させて、それら複数のサブアセンブリの形状を、CADの部品データに基づいて求めたそれらサブアセンブリの夫々の目標形状にする。サブアセンブリは、最初にポジショニング装置に把持された時点では、大きさが不定の変形を生じている。例えば、サブアセンブリが大型のものである場合には、そのサブアセンブリの自重によって変形が生じていることがある。また、温度の影響を受けて寸法が変化したことによって変形が生じていることもあり、更には、ポジショニング装置によって把持されている部分に製造誤差が存在しているために変形が生じていることもある。そのため、位置合せの工程を開始する前に、サブアセンブリのそのような変形を除去するようにしているのである。前記ステップb)を実行することによって実現するそれらサブアセンブリの目標形状は、CAD部品データに示された形状とすることが理想的である。これによって、複数台のポジショニング装置の動作を監視して、特にそれらポジショニング装置が複数のサブアセンブリを仮止め及び/または接合のための位置に位置付けるようにする際の、その監視に必要とされる制御及び/または調節が簡明化される。
【0033】
以上に説明した複数台のポジショニング装置の動作は、前記ニューラルネットワークを用いて制御する替わりに少なくとも1つの制御及び/または調節装置を用いて制御するようにしてもよく、或いは、前記ニューラルネットワークと少なくとも1つの制御及び/または調節装置とを併用して制御するようにしてもよい。
【0034】
あるサブアセンブリの形状を目標形状にするためには、そのサブアセンブリを変形させる必要があり、また、あるサブアセンブリを変形させるためには、一般的に、そのサブアセンブリに外部から荷重を作用させる必要がある。そこで、「荷重監視」のために、外部からサブアセンブリに作用する荷重の大きさ、即ち、ポジショニング装置からサブアセンブリに作用する荷重の大きさを、例えばポジショニング装置に備えた荷重センサなどの測定センサによって連続的に検出し、その検出した荷重の値を、前記ニューラルネットワーク、及び/または、前記制御及び/または調節装置へ供給して解析させている。また、前記ポジショニング装置に組込まれているアクチュエータ、前記保持アームに組込まれているアクチュエータ、及び、前記保持機構ないし連結機構に組込まれているアクチュエータを適宜に駆動することによって、相互に接合しようとするサブアセンブリに外部から作用する荷重が過大となることを防止するようにしており、もって、接合しようとするサブアセンブリが損傷すること、及び、位置合せしたサブアセンブリに過大な応力が発生することを回避するようにしている。尚、サブアセンブリの損傷、及び/または、サブアセンブリを把持しているポジショニング装置ないしその保持機構の損傷を防止するために、サブアセンブリに外部から作用する荷重の大きさに上限値を設定しておき、その荷重の大きさがこの上限値を超えたならば、ポジショニング装置の動作を停止させて、サブアセンブリの形状をそれ以上は変化させないようにするとよい。
【0035】
サブアセンブリの夫々の形状をリアルタイムで測定して実測形状データを取得するための測定装置としては、非接触式の測定装置を用いることが望ましく、例えば、レーザトラッカー、いわゆる「屋内GPS」、それに、写真測量方式の測定装置などを用いるとよい。レーザトラッカーを用いる場合には、測定対象の複数のサブアセンブリの複数の箇所に夫々にレーザリフレクタを取付けるようにし、それによって、それらサブアセンブリの表面の実測形状を正確に把握することができる。尚、これに続いて実行する、それらサブアセンブリを移動操作する工程において、複数のサブアセンブリ、及び/または、複数台のポジショニング装置の3次元的な位置の測定を行う際に、ポジショニング装置に備えられている例えば距離センサなどの測定センサによる測定とは別個に、前記測定装置による測定を併せて行うようにしてもよい。
【0036】
前記ステップb)において、少なくとも2つのサブアセンブリの形状を夫々の所与の目標形状にしたならば、続いて前記ステップc)において、それら少なくとも2つのサブアセンブリの位置、及び/または、それらを把持している少なくとも2台のポジショニング装置の位置を前記測定装置により測定して、それらの実測位置データを取得する。
【0037】
続いて、前記ステップd)では、前記少なくとも1つの制御及び/または調節装置、及び/または、前記少なくとも1つのニューラルネットワークの制御下において、且つ、前記測定装置、及び/または、前記測定センサにより測定して取得する前記実測位置データに基づいて、複数台のポジショニング装置を同時に作動させることで、複数のサブアセンブリを位置合せし、それによって、例えば、複数のサブアセンブリを仮止め及び/または接合のための目標位置に位置付ける。複数のサブアセンブリを目標位置に位置付けたならば、それらサブアセンブリの位置を固定するために仮止めし、また場合によっては更に、適当な接合装置を用いて接合することによってそれらサブアセンブリを最終的に結合する。また以上を行う際に、更に、ポジショニング装置に備えられた距離センサによる位置検出を行うようにしてもよい。
【0038】
ここでは、前記少なくとも1つの測定装置、及び/または、前記測定センサにより測定して取得する3次元空間内の位置座標を、位置合せの過程を制御している前記少なくとも1つの制御及び/または調節装置、及び/または、前記少なくとも1つのニューラルネットワークへ連続的に供給するようにしているため、位置合せを高速且つ高精度で行えるようになっている。
【0039】
複数のサブアセンブリの位置、及び/または、複数台のポジショニング装置の位置を測定してそれらの位置データを取得するための測定装置としては、上でも簡単に触れたように、レーザトラッカー、写真測量式の測定システム、及び/または、屋内GPSなどを用いることができ、それらを用いることで、通常、0.1mm以内の良好な測定精度を得ることができる。レーザトラッカーを用いる場合には、測定対象のサブアセンブリ上の複数の基準箇所の夫々にいわゆるマーカーを配設する必要があり、それら複数の基準箇所は、サブアセンブリの位置を測定するのに適しており、しかも、サブアセンブリに変形が発生したときにその変形を検出できる箇所とする。また、前記ポジショニング装置の移動位置を併せてレーザトラッカーで測定する場合には、ポジショニング装置にもマーカーを取付けておくようにする。
【0040】
前記ポジショニング装置に備える測定センサのうちには、例えば、インクリメンタル式またはアブソリュート式の、直線距離センサ及び/または回転角度センサなどがある。適当な距離センサ、即ち、擾乱を受けにくく、耐摩耗性に優れ、メンテナンスフリーの距離センサとしては、例えば、誘導形や光学式の距離センサなどがある。前記ポジショニング装置には、距離センサの他に更に少なくとも荷重センサを備えることが望ましく、その荷重センサによって、前記ポジショニング装置がサブアセンブリの移動操作を行っているときにそのサブアセンブリに作用する荷重を、また更に、その荷重によって通常発生するそのサブアセンブリの変形量を測定することができ、ひいては、それら荷重及び変形量を小さく抑えることができる。更に、前記ポジショニング装置、前記保持アーム、及び/または、前記保持機構ないし連結機構に、回転角度センサ、速度センサ、加速度センサ、温度センサ、湿度センサ、等々の測定センサを備えるようにするのもよい。
【0041】
温度センサが意味を持つのは、温度の影響によって通常は大型のサブアセンブリに発生し、また前記ポジショニング装置にも発生する、寸法の変化を補償する場合である。温度が分かれば、その温度の値に基づいて、前記ポジショニング装置の動作に補償を加えることも、また、サブアセンブリを把持するために前記ポジショニング装置に備えられている前記保持機構に再調節を施すこともでき、それらによって、サブアセンブリに応力が発生するのを回避し、また、考えられるあらゆる環境条件において高精度の位置合せを確実に行うことができるようになる。尚、温度の影響の他にも、前記ポジショニング装置の動作の精度にそれなりの大きさの影響を及ぼし得る様々な擾乱要因が存在する。
【0042】
レーザトラッカー、距離センサ、荷重センサ、並びに、オプションとして用いられるその他の様々な測定センサはいずれも、位置データなどの物理量の測定データを、直接にデジタル型式のデータとして出力するものとすることが望ましく、そうすれば、出力されたデータをなんら劣化させることなく、前記制御及び/または調節装置、並びに、前記ニューラルネットワークへ供給して、それらにおいて高速でデータ処理を行うことができる。
【0043】
前記制御及び/または調節装置は、例えば、複数台の標準的なPC(パーソナル・コンピュータ)から成るPCクラスタ、及び/または、少なくとも1台のプロセス・コンピュータで構成された、公知の構成のCNC制御装置などとするとよい。また更に、そのCNC制御装置は、位置合せしようとする複数のサブアセンブリを表しているCAD設計データに直接アクセスすることができるものとすることが望ましい。また、前記少なくとも1つのニューラルネットワークは、ハードウェアだけで構成したものとすることもでき、或いは、少なくとも1台の標準的なPC上に、または複数台の標準的なPCから成る高能力のPCクラスタ上に、ソフトウェアで構成したものとすることもでき、或いは、ハードウェアとソフトウェアを併用して構成したものとすることもできる。
【0044】
本方法の1つの発展形態の構成例によれば、学習フェーズにおいて、前記ニューラルネットワークに学習を行わせることによって、十分な予測精度を達成し、もって、前記ニューラルネットワークを初めて実地使用するときに用いる初期データ集合を生成する。
【0045】
こうして得られた初期データ集合は、これ以後の実地作業において最初に用いられるデータ集合であり、別の種類のサブアセンブリに対して適用する場合には、再度、試験使用を経る必要がある。
【0046】
ポジショニング装置及びサブアセンブリの実測位置データ、並びに、ポジショニング装置及びサブアセンブリに関するその他の様々な物理量の測定データが、ニューラルネットワークへフィードバックされているため、ニューラルネットワークの初期データ集合は、後の実地作業が実行される度に進化し、そのため、外部から手を加えずとも、短期間のうちに複数のサブアセンブリの相互の位置合せの精度が高まる。更に、この学習は実際のサブアセンブリを用いて行われ、即ち、後の実地作業において、所要の複数台のポジショニング装置によってそれらの形状を夫々の所与の目標形状にすると共に相互に位置合せするところのサブアセンブリを用いて行われる。尚、試験フェーズにおいて、手動制御装置を用いて手動補正を加えることにより、ニューラルネットワークの学習効果を向上させることができる。
【0047】
以上の説明において、「ニューラルネットワークの予測精度」とは、本装置における学習フェーズの完了後に、複数のサブアセンブリの形状を夫々の設計形状である所与の目標形状にすること、ないしは、複数のサブアセンブリを相互に位置合せすることに関する初期精度のことである。
【0048】
一方、前記制御及び/または調節装置は、公知の解析的方法に従って作成されたプログラムに従って動作するものである。そのプログラムは、例えば、いわゆる「ティーチイン法」を用いて作成するようにしてもよく、或いは、サブアセンブリ及び/またはポジショニング装置に関する所与のCAD座標値に基づいて数値処理のみによって作成するようにしてもよい。
【0049】
本方法の別の特に有利な構成例によれば、実地作業の実行中に、例えば前記少なくとも1つの測定装置により測定して取得する位置データ、及び/または、前記少なくとも1つの測定センサにより測定して取得する測定データを、前記少なくとも1つのニューラルネットワークへ連続的に供給することなどによって、前記初期データ集合を次第に進化させる。
【0050】
この場合、前記測定装置により測定して取得する位置データ、ないし、その他の測定センサにより測定して取得する測定データが、常時、前記ニューラルネットワークへ供給されるため、学習フェーズが、実地作業における前記ニューラルネットワークの通常動作の中にまで持ち込まれることになり、それによって、位置合せ精度が継続的に向上して行くと同時に、位置合せに要する時間も最適な時間にまで短縮される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本装置の概念図である。
【図2】本装置に好適に用いられるニューラルネットワーク模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
尚、添付図面においては、同一の構成要素には同一の参照符号を付してある。
【0053】
図1に示したのは、本発明に係る装置の模式図である。
【0054】
本装置1は、その特に重要な構成要素として、2台の胴体側面シェル用ポジショニング装置2、3と、胴体下面シェル用ポジショニング装置4と、胴体上面シェル用ポジショニング装置5とを備えている。また、それらに加えて、更に少なくとも1台の別のポジショニング装置を備えている。そのポジショニング装置は、図1では不図示とした少なくとも1つの胴体床構造体のためのポジショニング装置であって、そのポジショニング装置をもって表示領域とすることがある。更に、図の見やすさを考慮して図1では不図示としてあるが、胴体上面シェル用ポジショニング装置5には、その両側に作業台又はブーム・リフトが1台ずつ備えられており、操作員が手動操作を行う際には、それら作業台が利用される。図1に示した構成要素はいずれも、その3次元空間内の位置を、座標系6によって表すようにしている。尚、ポジショニング装置2〜5が把持するサブアセンブリは、いずれも大型であるため、本装置1の好適な1つの構成例では、図示した夫々のポジショニング装置の背後に、それらポジショニング装置からx軸方向に離隔させて、更に少なくとも1台ずつのポジショニング装置を備えるようにしている。
【0055】
胴体側面シェル7、8用の2台の胴体側面シェル用ポジショニング装置2、3は、その各々が3本ずつの保持アームを備えており、図1ではそれら3本のうちの最上部の1本の保持アームにだけ、それらの代表として参照符号9、10を付してある。3本の保持アーム9、10はそれらの先端に夫々に不図示の保持機構ないし連結機構を備えており、2台の胴体側面シェル用ポジショニング装置2、3は、それら保持機構ないし連結機構を介して夫々に胴体側面シェル7、8を把持する。
【0056】
同様に、胴体下面シェル11用の胴体下面シェル用ポジショニング装置4も、3本の保持アームを備えており(ただしそれら保持アームには参照符号を付していない)、それら3本の保持アームは、それらの先端に夫々に保持機構を備えている。胴体下面シェル用ポジショニング装置4のそれら保持機構には、胴体下面シェル11が連結される。胴体上面シェル用ポジショニング装置5は、強固に補強された2本の保持アームを備えており、それら2本の保持アームはそれらの先端に夫々に保持機構を備えている。それら保持機構によって胴体上面シェル12が把持され、その把持された胴体上面シェル12は、胴体上面シェル用ポジショニング装置5によって、上方から本装置1の中へ吊下げられる。ポジショニング装置2〜5には、作業台や表示フレームが設けられることもある。ポジショニング装置2〜5は、座標系6における、x軸方向の平行移動操作と、y軸方向の平行移動操作と、z軸方向の平行移動操作との、少なくとも3自由度の移動操作が可能であるように構成されている。ただし、ポジショニング装置2〜5の各々が4自由度以上の移動操作が可能であるように構成してもよく、そのような構成は更に望ましいものである。
【0057】
2台の胴体側面シェル用ポジショニング装置2、3は、少なくともx軸方向の平行移動操作が可能なように構成されており、更に、それら胴体側面シェル用ポジショニング装置2、3の保持アームは、少なくともy軸方向の平行移動操作及びz軸方向の平行移動操作が可能なように構成されている。胴体上面シェル用ポジショニング装置5は、ラチス材で強固に補強された2本の保持アームと協働して、胴体上面シェル12の3次元的なポジショニングを行うことができるように構成されており、その3次元的なポジショニングは、少なくとも、座標系6の3本の座標軸の夫々の軸方向の平行移動操作を含むものである。別構成例として、回転移動操作が可能な構成とするのもよく、また場合によっては、平行移動操作と回転移動操作とを組合せた移動操作が可能な構成とするのもよい。
【0058】
胴体下面シェル11の移動操作を行う胴体下面シェル用ポジショニング装置4も、同様の移動操作が可能なように構成されており、更には、不図示の胴体床構造体の3次元的な位置ないし姿勢を操作するための不図示のポジショニング装置も、同様の移動操作が可能なように構成されている。従って、以上に述べたように、本装置における複数台のポジショニング装置は、デカルト座標6の3本の座標軸の夫々の軸方向における純粋な平行移動操作が可能なように構成されており、それら3方向の平行移動操作の夫々が、各々のポジショニング装置の3自由度の夫々に対応している。これに加えて、各々のポジショニング装置が更なる自由度を持つようにするのもよく、例えば、各々のポジショニング装置が3自由度の平行移動操作に加えて更に3自由度の回転移動操作を行えるように構成するのもよい。そうすることで、本装置1において複数のサブアセンブリの移動操作を実行する際に、それらサブアセンブリをより複雑な移動経路に沿って、また特に任意の曲線移動経路に沿って移動させる移動操作が可能となり、それによって3次元的な位置合せを更に迅速に行えるようになる。ポジショニング装置及びその保持アームを、以上に述べた移動操作が可能なように構成することに加えて、更にその保持機構ないし連結機構も、ある程度の自由度を備えた構成とするとよく、それによってサブアセンブリの移動操作における可能性を更に広げることができる。
【0059】
2つの胴体側面シェル7、8と、胴体下面シェル11と、胴体上面シェル12と、不図示の胴体床構造体とは、本装置1によって最終的に相互に位置合せされ、それによってそれら複数のサブアセンブリは、暫定的な仮止めと、最終的な接合との、少なくとも一方を行うための所定の目標相対位置に位置付けられ、そして、その仮止めないし接合により、それらサブアセンブリが相互に組付けられて航空機の1つの胴体セクションが形成される。
【0060】
2つの胴体側面シェル7、8と、胴体下面シェル11と、胴体上面シェル12とは、それらの各々に夫々複数のリフレクタが取付けられている。それらリフレクタは、夫々のサブアセンブリの位置をレーザトラッカー13で測定して実測位置データを取得するために必要なマーカーとして機能するものであり、それらレフレクタの取付位置は、夫々のサブアセンブリに変形が発生したときにその変形を検出できる位置としてある。また、図では、それら複数のリフレクタのうちの1つにだけ、代表として参照符号「14」を付してある。図中、両端に矢印を有する点線は、レーザトラッカー13から射出され、そしてリフレクタで反射して戻るレーザビーム(レーザパルス)を表している。このレーザトラッカー13によって、本装置1におけるサブアセンブリの正確な位置を測定することができ、また場合によっては、ポジショニング装置の座標値も間接的に測定することができ、しかもその測定精度は、数十分の1mmという良好な精度とすることができる。尚、レーザトラッカー11を用いる替わりに、或いは、それと併用して、写真測量方式の測定装置などを用いるようにするのもよい。
【0061】
更に、2台の胴体側面シェル用ポジショニング装置2、3と、胴体上面シェル用ポジショニング装置5と、胴体下面シェル用ポジショニング装置4と、胴体床構造体用ポジショニング装置とは、それらの各々に夫々複数の測定センサが備えられている。図では、それら測定センサのうち、胴体側面シェル用ポジショニング装置2、3に備えられている測定センサにだけ、代表として参照符号「15」、「16」を付してある。それら測定センサのうちには、例えばサブアセンブリに作用する荷重を差分方式で測定する荷重センサなどがある。サブアセンブリに作用する荷重には、ポジショニング装置が位置合せのためにサブアセンブリを移動操作することによって発生する荷重や、そのサブアセンブリの自重によって発生する荷重などがあり、更には、サブアセンブリが変形した結果として発生する荷重もある。荷重測定用の測定センサに加えて更に、例えば距離センサ、速度センサ、加速度センサ、回転角度センサなどのその他の測定センサを備えるようにしてもよい。更には、温度センサや、湿度センサを備えるようにしてもよく、それによって例えば、温度に起因するサブアセンブリ及び/またはポジショニング装置の寸法ないし形状の変化を測定することができ、また場合によっては、その変化を補償することも可能となる。
【0062】
更に、以上の複数台のポジショニング装置は、それらの各々に、電動式駆動機構や油圧式駆動機構などから成る少なくとも1つのアクチュエータが備えられており、そのアクチュエータによって、ポジショニング装置を3次元的に移動させることができるようにしている。図ではそれらアクチュエータのうち、2台の胴体側面シェル用ポジショニング装置2、3に備えられている2つのアクチュエータにだけ、代表として参照符号「17」、「18」を付してある。ポジショニング装置のそれらアクチュエータは、本装置1において行うポジショニング装置の移動操作を、3自由度の、遊びのない、高精度の移動操作とし得るアクチュエータであることが望ましい。それらアクチュエータは、例えば、油圧式、空圧式、及び/または、電動式のアクチュエータとすることができ、特に好ましいのは、電動式の精密スピンドルドライブである。
【0063】
更に、本装置は、少なくとも1つの制御及び/または調節装置19を備えると共に、この制御及び/または調節装置19に組み合わされた少なくとも1つのニューラルネットワーク20を備えている。制御及び/または調節装置19とニューラルネットワーク20とは、それらの間でデータ交換が行えるように、常時、双方向データバス22を介して相互に接続されている。このデータバス22によって、制御及び/または調節装置19とニューラルネットワーク20との間での完全なデータ交換が可能となっている。そして、これによって、制御及び/または調節装置19からも、また、ニューラルネットワーク20からも、アクチュエータを駆動して、サブアセンブリを3次元空間内で自由に移動させることが可能となっている。更に、レーザトラッカー13により測定して取得したサブアセンブリの位置データ、並びに、ポジショニング装置ないし保持機構により取得されたその他の物理量データの全てが、制御及び/または調節装置19並びにニューラルネットワーク20へ供給されて、更なる処理のために利用される。
【0064】
様々な測定センサで測定して取得するその他の物理量データとしては、例えば、ポジショニング装置ないしサブアセンブリの荷重測定値、速度測定値、加速度測定値、及び/または、回転角度測定値などがある。レーザトラッカー13で測定して得られたサブアセンブリの位置データ、並びに、それら測定センサで測定して得られたその他の物理量データは、それらの全てが、図中に線で示したように、制御及び/または調節装置19へ供給されており、それによってニューラルネットワーク20がそれらデータを取り扱えるようになっている。これとは逆方向の信号の流れとして、ポジショニング装置に装備されている全てのアクチュエータは、選択的に、制御及び/または調節装置19、及び/または、ニューラルネットワーク20から、様々な制御信号を受取るようにしてあり、これを図中に矢印で示した。
【0065】
従って、制御及び/または調節装置19は、常時、移動操作ないし位置合せのために、本装置1における全てのポジショニング装置を3次元的に自由に制御できる状態にある。
【0066】
制御及び/または調節装置19及びニューラルネットワーク20の機能を補助する補助手段として、更に手動制御装置21が備えられている。これにより、操作員は、本装置1において完全自動方式で実行されている位置合せ作業に対して、手動で介入することができる。図中、手動制御装置21と制御及び/または調節装置19とを結んでいる両端矢印の線は、制御及び/または調節装置19ないしニューラルネットワーク20の側から手動制御装置21の側へも、作用を及ぼし得ることを表したものである。この作用は、例えば、あるサブアセンブリを把持しているポジショニング装置を作動させているときに、そのサブアセンブリないしポジショニング装置が障害物ないし別のサブアセンブリに衝突しそうになった場合に、及び/または、そのサブアセンブリないしポジショニング装置に過大な荷重が作用した場合に、操作員に触覚フィードバックを提供するような作用であり、これによって、例えば、位置合せ誤差が存在している場合に、操作員が目視していなくても、そのことを操作員に十分に間に合ううちに知覚させることができる。操作員に提供する触覚フィードバックは、例えば機械的振動によって発生させることができ、その場合に、その機械的振動の周波数及び/または振幅を例えば位置合せ誤差が存在する場合にポジショニング装置に作用する荷重の大きさに比例させることができる。別構成例として、手動制御装置を操作するために必要とされる力の大きさを所定の変化量で段階的に増大させるようにするのもよい。
【0067】
手動操作装置21から出力される信号は、ニューラルネットワーク20ないしは制御及び/または調節装置19から出力されてポジショニング装置のアクチュエータへ供給されている制御信号よりも、基本的に優先される。これに関して、安全上の観点から、操作員が手動制御装置21を操作することで作動させるポジショニング装置については、同時に2台以上のポジショニング装置を作動させずに1台だけのポジショニング装置を作動させるようにすることが好ましく、即ち、作動させるただ1台のポジショニング装置に備えられている少なくとも1つのアクチュエータ以外にはアクセスできないように、手動制御装置21を構成しておくことが好ましい。手動制御モードでポジショニング装置を作動させるときには、通常、操作員が状況を目視しながら操作を行う。手動制御装置21の操作によって生じたサブアセンブリ及びポジショニング装置の位置の変化、並びに、ポジショニング装置の作動によって生じたサブアセンブリの形状の変化は、例えばレーザトラッカー13などによって測定されて、その測定値が、制御及び/または調節装置19及びニューラルネットワーク20へ供給されるようにしてあり、これによって、本装置1の現在状態が、常時、以上に説明した制御のための構成要素に供給されるようになっている。
【0068】
ポジショニング装置にサブアセンブリを把持させたならば、また特に、ポジショニング装置の保持アームに装備されている保持機構にサブアセンブリを把持させたならば、本装置1においてそのポジショニング装置を適切に動作させて、大型であるために一般的に取扱い中に撓みを生じるサブアセンブリの形状を、設計書に指定されている通りの目標形状にする。サブアセンブリの変形は非常に複雑な非線形の数式に従うものであるため、この段階では、ポジショニング装置をニューラルネットワーク20だけで制御することが好ましい。更に加えて、測定センサを利用して、サブアセンブリに加わる荷重の大きさとサブアセンブリに発生する変形量とを、それらが所与の限界値を超えないように連続的に制御することで、サブアセンブリに不可逆的変形を生じないようにする。またその場合に、荷重の測定は、様々な箇所に設けた測定点において行うようにし、それら測定点は、例えば、ポジショニング装置の保持アームや、保持機構の領域に設けることが好ましい。
【0069】
複数のサブアセンブリの夫々の形状(3次元的形状)を、設計書に示されている夫々の目標形状にしたならば、続いて、それらサブアセンブリを把持している複数台のポジショニング装置を作動させてそれらサブアセンブリの移動操作を行わせることで、それらサブアセンブリを相互の仮止め及び/または接合のための目標相対位置に位置付ける。このサブアセンブリの移動操作は、制御及び/または調節装置19だけで好適に制御することができる。このようにニューラルネットワーク20を用いて、複数のサブアセンブリの形状を、夫々の所与の目標形状にした後に、それらサブアセンブリを相互の仮止め及び/または接合のための相対位置に位置付ける移動操作を行うようにしているため、その移動操作は、複数台のポジショニング装置を同時に作動させて実行でき、しかもサブアセンブリを直線移動操作だけで実行できるため、制御及び/または調節に要する手間が顕著に軽減される。目標形状とされたサブアセンブリは(仮想的に)剛体と見なすことが可能であり、それゆえ制御及び/または調節装置19は、一般的に、その剛体と見なし得るサブアセンブリの直線移動を監視するだけでよい。
【0070】
ただし、複数のサブアセンブリを相互の仮止め及び/または接合のための相対位置に位置付けるこの移動操作の制御は、補助的に、あるいは選択的にニューラルネットワーク20を用いて行うようにしてもよい。いずれの場合も、位置合せに要する時間を短縮するために、全てのポジショニング装置を常に同時に動かすようにすることが好ましい。そのため、制御及び/または調節装置19並びにニューラルネットワーク20が送出する、複数台のポジショニング装置に備えられている複数のアクチュエータを制御するための夫々の制御信号を、信号切換回路ないし信号混合回路(図1では不図示)によって、切換ないし混合できるようにしてある。
【0071】
更に加えて、本装置1は、制御及び/または調節装置19並びにニューラルネットワーク20によって制御される、望ましくは全自動式の仮止め作業機(不図示)を備えているようにするとよい。複数のサブアセンブリを、互いの仮止めのための目標位置に位置付けたならば、即座に、この仮止め作業機によって、それらサブアセンブリの仮止め作業を実行する。この位置の固定は、例えば、仮止め用リベット、永久磁石、及び/または、電磁石などによって行なうことができる。
【0072】
更なる発展形態として、自動化のレベルを向上させるために、本装置1が更に、接合作業機(不図示)を備えているようにするのもよい。仮止め作業機と接合作業機との両方を備えるようにした場合には、複数のサブアセンブリから航空機の1つの胴体セクションを完成させる全作業を、本装置1により、完全自動化作業として実行することができる。
【0073】
以下に、本発明にかかる方法の手順を詳細に説明する。
【0074】
先ず、2つの胴体側面シェル7、8と、胴体下面シェル11と、胴体上面シェル12と、不図示の少なくとも1つの胴体床構造体とを、夫々、胴体側面シェル用ポジショニング装置2、3と、胴体下面シェル用ポジショニング装置4と、胴体上面シェル用ポジショニング装置5と、基準位置を提供するポジショニング装置である胴体床構造体用ポジショニング装置とに把持させて固定し、この把持及び固定は、それらポジショニング装置に備えられている保持アーム並びにそれら保持アームの先端に装備されている保持機構によって行われる。
【0075】
続いて、複数台のポジショニング装置を作動させて、それらサブアセンブリの形状を、CADの設計データに示されているそれらサブアセンブリの夫々の目標形状にする。このときのポジショニング装置の作動の制御は、ニューラルネットワークによって行うようにすることが望ましい。この状態とされたサブアセンブリは、近似的に剛体と見なすことができるため、それらサブアセンブリを相互の仮止め及び/または接合のための相対位置に位置付ける際には、複数台のポジショニング装置によってそれらサブアセンブリを直線的に平行移動させるだけで位置付けを行うことができ、ポジショニング装置の制御及び/または調節が容易である。
【0076】
続いて、それらサブアセンブリが仮止め及び/または接合のための相対位置に到達するまで移動操作を行なう。一般的に、この移動操作は、単なる直線的な平行移動操作とすることができるため、この移動操作は、通常、制御及び/または調節装置19のみによって好適に制御することができる。ただし別法として、このように複数のサブアセンブリを相互の仮止め及び/または接合のための相対位置に位置付ける移動操作の制御を、補助的に、あるいは排他的にニューラルネットワーク20を用いて行うようにしてもよい。
【0077】
ニューラルネットワーク20を用いて本装置1における様々な動作シーケンスを制御及び/または調節するためには、前もって、ニューラルネットワーク20に試験フェーズないし学習フェーズを十分に実行させる必要がある。
【0078】
それには、先ず、後の実地作業においてニューラルネットワーク20を用いて位置合せをする複数のサブアセンブリと同じものを、複数台のポジショニング装置の夫々に把持させる。続いて、ニューラルネットワーク19の制御下において、それらポジショニング装置を作動させて、それらポジショニング装置に把持されている複数のサブアセンブリの形状を夫々の所与の目標形状にし、或いは更に、少なくとも2つのサブアセンブリを相互の仮止めまたは接合のための相対位置に位置付ける。またその際に、レーザトラッカー13により測定して取得するサブアセンブリの位置データ、並びに、測定センサにより測定して取得するその他の物理量データを、連続的にニューラルネットワーク20へ供給する。そして、以上の「試行錯誤プロセス」を反復して実行することにより、ニューラルネットワーク20の制御及び/または調節特性を、サブアセンブリどうしの位置合せを可及的に短時間でしかも高い位置合せ精度で行うことのできる最適特性へと次第に近付けてゆく。制御及び/または調節装置19とは異なり、ニューラルネットワーク20は、試験フェーズないし学習フェーズにおいて以上に説明したプロセスを実行することによって、最終的に、「自己プログラム化」、即ち、自己組織化を達成するものである。
【0079】
尚、場合によっては、以上に説明したニューラルネットワーク20の試験フェーズないし学習フェーズにおいて、前記手動制御装置21を用いて、手動操作による補正を加えることが必要なこともある。
【0080】
以上の試験フェーズないし学習フェーズが終了したならば、その時点で、ニューラルネットワーク20の中に初期データ集合が生成されている。これ以後、同じ設計のサブアセンブリの位置合せ作業を実行する際には、このデータ集合に基づいてその位置合せ作業が行われる。
【0081】
図2は、ニューラルネットワークの1つの構成例を示した概念図である。
【0082】
ニューラルネットワーク20は、入力層23と、中間層24と、出力層25とを備えている。各層は複数のニューロンで構成されており、図2では、各層を構成する複数のニューロンのうち、最上方のニューロンにだけ、代表として参照符号「26」〜「28」を付してある。ニューロンとニューロンとの間には、夫々に重み結合が存在しており、それら重み結合のうちの2つにだけ、代表として参照符号「29」及び「30」を付してある。入力層23へ入力している一連の入力信号31は、ニューラルネットワーク20によって一連の出力信号32に変換され、それら出力信号32は出力層25に発生し、そこから出力されて更なる処理を加えてもよい。
【0083】
複数の重み結合の積に重み付けがなされて、中間層24に含まれるニューロンが活性化されることにより、一連の入力信号31から、一連の複雑な関数に従って、一連の出力信号32が生成され、それら関数のうちの1つにだけ、代表として参照符号「33」を付してある。
【0084】
ニューラルネットワーク20へ入力する一連の入力信号31は、様々な物理量の測定データであり、入力信号とするのに特に適した測定データとしては、本装置1における複数台のポジショニング装置の夫々の位置データ、及び/または、それらポジショニング装置に把持されている複数のサブアセンブリの夫々の位置データ、それに、それらサブアセンブリに作用している荷重の測定データなどがある。更に、それらサブアセンブリの速度、及び/または、加速度の測定データなども、ニューラルネットワーク20へ入力する一連の入力信号31とするのに適したものである。尚、出力層25に発生する一連の出力信号32は、場合によってはそれらに更に測定方法などに関連した補正を加えた上で、ポジショニング装置の移動操作に必要なアクチュエータの制御信号として使用される。
【符号の説明】
【0085】
1 本装置
2 胴体側面シェル用ポジショニング装置
3 胴体側面シェル用ポジショニング装置
4 胴体下面シェル用ポジショニング装置
5 胴体上面シェル用ポジショニング装置
6 座標系
7 胴体側面シェル
8 胴体側面シェル
9 保持アーム
10 保持アーム
11 胴体下面シェル
12 胴体上面シェル
13 レーザトラッカー
14 リフレクタ(マーカー)
15 胴体側面シェル用ポジショニング装置に備えられた測定センサ
16 胴体側面シェル用ポジショニング装置に備えられた測定センサ
17 胴体側面シェル用ポジショニング装置に備えられたアクチュエータ
18 胴体側面シェル用ポジショニング装置に備えられたアクチュエータ
19 制御及び/または調節装置
20 ニューラルネットワーク
21 手動制御装置
22 データバス
23 入力層
24 中間層
25 出力層
26 ニューロン
27 ニューロン
28 ニューロン
29 結合
30 結合
31 入力信号
32 出力信号
33 関数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの大型のサブアセンブリを相互に組付けて1つのアセンブリを構成するために、より具体的には、例えば、少なくとも1つの胴体側面シェル(7、8)、少なくとも1つの胴体上面シェル(12)、少なくとも1つの胴体下面シェル(11)、及び/または、少なくとも1つの胴体床構造体を相互に組付けて航空機の1つの胴体セクションを構成するために、それら少なくとも2つのサブアセンブリを3次元的に相互に位置合せする装置(1)において、
a)各々が1つずつのサブアセンブリを把持する少なくとも2台のポジショニング装置を備えており、より具体的には、例えば、少なくとも2台の胴体側面シェル用ポジショニング装置(2、3)、少なくとも1台の胴体上面シェル用ポジショニング装置(5)、及び/または、少なくとも1台の胴体下面シェル用ポジショニング装置(4)を備えており、
b)測定によって複数の測定データを取得するための、より具体的には、例えば、前記複数のサブアセンブリ及び/または前記複数台のポジショニング装置の位置データを取得するための、少なくとも1つの測定装置を備えており、
c)少なくとも1つの制御及び/または調節装置(19)を備えており、より具体的には、例えば、少なくとも1つのCNC制御装置(コンピュータ数値制御装置)を備えており、
d)少なくとも1つのニューラルネットワーク(20)を備えている、
ことを特徴とする装置(1)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの測定装置によって、前記複数のサブアセンブリ及び/または前記複数台のポジショニング装置の3次元的な位置ないし姿勢が測定されることを特徴とする請求項1記載の装置(1)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの測定装置は、少なくとも1つのレーザトラッカー(13)及び/または少なくとも1つの写真測量システムから成ることを特徴とする請求項2記載の装置(1)。
【請求項4】
前記ニューラルネットワーク(20)は、ハードウェア及び/またはソフトウェアで構成されており、より具体的には、例えば、前記少なくとも1つの制御及び/または調節装置(19)の中に組込まれていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の装置(1)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの測定装置によって取得された前記複数のサブアセンブリの位置データが、前記制御及び/または調節装置(19)並びに前記ニューラルネットワーク(20)へ供給されることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の装置(1)。
【請求項6】
前記複数台のポジショニング装置の各々が、少なくとも1つの保持機構を備えており、該少なくとも1つの保持機構は少なくとも1つのサブアセンブリの把持及び把持解除を行う機構であり、該少なくとも1つの保持機構は前記制御及び/または調節装置(19)及び/または前記ニューラルネットワーク(20)により制御可能であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載の装置(1)。
【請求項7】
前記ポジショニング装置が手動制御装置(21)により制御可能であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項記載の装置(1)。
【請求項8】
少なくとも2つの前記サブアセンブリをそれらの相対位置に固定するために相互に仮止めする少なくとも1つの仮止め作業機を備えていることを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項記載の装置(1)。
【請求項9】
少なくとも2つの前記サブアセンブリを接合するための少なくとも1つの接合作業機を備えていることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項記載の装置(1)。
【請求項10】
少なくとも1台の前記ポジショニング装置の近傍に、更なる測定データを取得するための少なくとも1つの測定センサが配設されており、該測定センサは、前記少なくとも1つの制御及び/または調節装置(19)並びに前記少なくとも1つのニューラルネットワーク(20)に接続されていることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項記載の装置(1)。
【請求項11】
前記少なくとも1つの測定センサは、例えば前記サブアセンブリの変形量などを検出するための荷重センサ、例えば前記ポジショニング装置の位置データなどを取得するための距離センサ、回転角度センサ、速度センサ、加速度センサ、温度センサ、及び/または、湿度センサであることを特徴とする請求項10記載の装置(1)。
【請求項12】
少なくとも2台のポジショニング装置を用いて、より具体的には、例えば、請求項1乃至11の何れか1項記載の装置(1)などを用いて、1つのアセンブリを構成するために少なくとも2つのサブアセンブリを相互に位置合せする方法において、
a)前記少なくとも2台のポジショニング装置の各々に1つずつのサブアセンブリを装填することで、より具体的には、例えば、少なくとも1台の胴体側面シェル用ポジショニング装置(2、3)、少なくとも1台の胴体上面シェル用ポジショニング装置(5)、及び/または、少なくとも1台の胴体下面シェル用ポジショニング装置(4)の各々に1つずつのサブアセンブリを装填することで、複数台のポジショニング装置に複数のサブアセンブリを装填するステップと、
b)少なくとも1つのニューラルネットワーク(20)並びに少なくとも1つの測定装置の制御下において、前記複数台のポジショニング装置を同時に作動させて、所与の目標形状にするステップと、
c)前記少なくとも2つのサブアセンブリ及び/または前記少なくとも2台のポジショニング装置の位置を前記測定装置により測定することで、実測位置データを取得するステップと、
d)前記少なくとも1つの制御及び/または調節装置、及び/または、前記少なくとも1つのニューラルネットワーク(20)の制御下において、且つ、前記測定装置、及び/または、前記測定センサにより測定して取得する前記実測位置データに基づいて、前記複数台のポジショニング装置を同時に作動させることで、前記複数のサブアセンブリを位置合せするステップであって、その位置合せによって、例えば、前記複数のサブアセンブリを仮止め及び/または接合のための目標位置に位置付ける、位置合せステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
試験フェーズにおいて、前記少なくとも1つのニューラルネットワーク(20)に学習を行わせることによって、該ニューラルネットワーク(20)が十分な予測精度を持つようにし、また、該ニューラルネットワーク(20)を初めて実地使用するときに用いる初期データ集合を生成することを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
実地作業の実行中に、例えば前記少なくとも1つの測定装置により測定して取得する位置データ、及び/または、前記少なくとも1つの測定センサにより測定して取得する測定データを、前記少なくとも1つのニューラルネットワーク(20)へ連続的に供給することなどによって、前記初期データ集合を次第に進化させることを特徴とする請求項12又は13記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−525266(P2012−525266A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507776(P2012−507776)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/055878
【国際公開番号】WO2010/125172
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(506261453)エアバス・オペレーションズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (7)
【住所又は居所原語表記】Kreetslag 10,D−21129 Hamburg,Deutschland
【Fターム(参考)】