説明

少なくとも2つの巻き線を有する電磁アクチュエータ

【課題】高い電力効率を有する電磁アクチュエータを提供する。
【解決手段】電磁アクチュエータは、ヨークと、コアと、少なくとも2つの巻き線L1,L2と、直列の位置から並列の位置への、及びその逆への、巻き線L1,L2のスイッチ手段10と、巻き線L1,L2に流れる電流の調整手段22を有する制御手段20を備える。制御手段20は突入手段23B,24,21,22を備え、突入手段は、閉動作の間、巻き線L1,L2に供給されている電圧を制御し、且つ、スイッチ手段10を制御して巻き線L1,L2を並列モードにする。制御手段20は保持手段23B,24,21,22も備え、保持手段は、閉じた位置におけるアクチュエータの保持動作の間、巻き線L1,L2に供給されている電流を制御し、且つ、スイッチ手段10を制御して巻き線L1,L2を直列モードにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦軸に沿って伸びる強磁性のヨークと、ヨークの縦軸に沿ってスライドする軸に搭載されている強磁性の可動コアと、により形成されている磁気回路を備える電磁アクチュエータに関する。アクチュエータは、少なくとも2つの巻き線と、巻き線を直列の位置から並列の位置に及びその逆に変更する手段と、を備える。
【背景技術】
【0002】
少なくとも2つの異なる巻き線のタイプを電磁アクチュエータの突入(inrush)及び保持(holding)段階に用いることが知られている。電磁アクチュエータのパワー動作(power operation)の最適化は、実際上、多くの場合それらの設計段階で考慮に入れられる。周知の原理は、突入段階用に巻き線の第1タイプを用いて、保持段階用に巻き線の第2タイプを用いることにある。いくつかの特定の巻き線の使用は、特に次の特許、FR2290009、US4227231、US4609965、EP1009003に技術的に記述されている。一般に、突入段階用に用いられる巻き線は、突入電力の主要な部分に耐えるように寸法が決められ、保持段階用に用いられる巻き線は、閉じた位置(closed position)でコアを保持するのに必要なだけのアンペア・ターンを供給するように設計されている。各々の巻き線は、コアの位置に応じて作動させられる。
【0003】
さらに、広い供給電圧の範囲で電磁アクチュエータを使用する要求も優先事項になっている。次の文献、FR2568715、EP1009003、EP1009004で述べられているいくつかの解決策は、巻き線又は複数の巻き線の供給電圧を調整する手段を用いている。巻き線に供給されている電圧は、従来、パルス幅変調PWMで変調されている。
【0004】
最新技術の文献EP0998623に述べられているパルス電流の使用は、コイル又は複数のコイル中の電流の調整が行われるようにせず、電流が設定値(setpoint)の通りに維持されるようにする。さらに、パルス電流の使用は、十分な水準の調整が達成されるようにしない。パルス電流の使用は、実際上、固定のデューティーサイクルを意味し、電圧に応じて変調されるデューティーサイクルを意味しない。電流は、それゆえ直接的に電圧の関数であるか、又は固定の比で電圧に関連させられる。それゆえ、電圧と電流の分離はない。制御電圧と電流の独立は可能ではない。さらに、温度に対するコイルの抵抗値の増加の有害な影響が観測される。電力消費量に関して及び動作電圧範囲に関して両者で最善の動作を有する電磁アクチュエータを設計することは、とても困難なままである。2つの開発の方向性の内の1つでもたらされる進歩は、一般的に他の損失になる。さらに、ドロップ・アウト又は開段階の間の電磁アクチュエータの動作は、一般的に最適化されない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、従って、最新技術の欠点を除去して、それにより高い電力効率を有する電磁アクチュエータを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による電磁アクチュエータは、制御手段を備え、前記制御手段は、前記少なくとも2つの巻き線に流れる電流の調整手段と、突入手段であって、前記アクチュエータの閉動作(closing operation)の間、前記少なくとも2つの巻き線に供給されている電圧を制御し、且つ、前記スイッチ手段を制御することにより、前記少なくとも2つの巻き線を並列モードとして、第1突入磁束を生成し、前記アクチュエータを閉じる、ように構成されている、突入手段と、保持手段であって、前記閉じた位置における前記アクチュエータの保持動作の間、前記少なくとも2つの巻き線に供給されている前記電流を制御し、且つ、前記スイッチ手段を制御することにより、前記少なくとも2つの巻き線を直列モードとして、第2保持磁束を生成する、ように構成されている、保持手段と、を有する。
【0007】
好ましい実施形態によれば、前記調整手段は、前記少なくとも2つの巻き線に流れる電流の前記値を設定値と比較する比較器を備え、前記比較器は、スイッチを制御する増幅器に接続されている、補正器に接続されている。
【0008】
好ましくは、前記調整手段は制御手段を備え、それにより前記少なくとも2つの巻き線の前記供給電圧をパルス幅変調PWMで変調する。
【0009】
好ましくは、電磁アクチュエータは第1及び第2巻き線を備える。
【0010】
更なる本発明によれば、前記スイッチ手段は、前記第1巻き線の第1端子と第1電圧供給端子との間に直列に接続されている第1開手段を備え、前記第1巻き線の第2端子が第2電圧供給端子に前記制御トランジスタを介して接続されており、前記第1巻き線の前記第2端子と前記第2巻き線の第2端子との間に直列に接続されている第2開手段を備え、前記第2巻き線が、前記第1電圧供給端子に接続されている第1端子と、前記制御トランジスタを介して前記第2電圧供給端子に接続されている前記第2端子と、を有し、前記第2巻き線の前記第2端子と前記第1巻き線の前記第1端子の間に直列に直接接続されている第3開手段と、前記第1巻き線の前記第2端子と前記第2巻き線の前記第1端子の間に並列に逆接続されている少なくとも1つのフリー・ホイール ダイオードと、を備え、前記3つの開手段は、前記突入又は保持手段から命令を受け取るように構成されており、それによりそれら自身を各々開又は閉状態にして、前記巻き線は、前記第1及び第2開手段が開いており、且つ、前記第3開手段が閉じているとき、直列モードにあり、前記巻き線は、前記第1及び第2開手段が閉じており、且つ、前記第3開手段が開いているとき、並列モードにある。
【0011】
前記制御手段は、好ましくは、前記2つの巻き線を通って流れる前記電流を検出するように設計されている測定手段を備える。
【0012】
更なる本発明によれば、前記制御手段は、前記2つの巻き線に供給されている逆電圧を制御し、前記スイッチ手段を制御することにより、前記2つの巻き線を並列モードにして、第3ドロップ・アウト磁束を生成する、ように構成されているドロップ・アウト手段を備える。
【0013】
前記ドロップ・アウト手段は、好ましくは、前記フリー・ホイール ダイオードに直列に接続されている第4開手段と、前記フリー・ホイール ダイオードの前記端子に並列に逆接続されているツェナーダイオードと、を備え、前記第4開手段は、前記制御サブ・ユニットにより制御されるように構成され、それ自身を開状態にして、且つ、前記フリー・ホイール ダイオードを切断して、逆電圧が前記巻き線の前記端子に印加されている。
【0014】
前記制御手段は、好ましくは、前記閉動作の前に、前記第1及び第2電圧供給端子の間の前記電圧を検出でき、前記閉動作の間に検出された前記供給電圧に応じて、前記巻き線に供給されている前記電圧を制御できる、電圧測定手段を備える。
【0015】
電磁アクチュエータは、好ましくは同じオーム抵抗を有する第1及び第2巻き線を備える。
【0016】
前記巻き線は好ましくは等しく、且つ、同じインダクタンスと同じ巻き数を備える。
【0017】
好ましくは、前記巻き線は、2つの分離したコイルの上に構成されている。
【0018】
好ましくは、前記巻き線は円筒形であり、且つ、同じ縦軸に沿って並べられている。
【0019】
ある実施形態で、電磁アクチュエータは、保持段階の間、前記少なくとも2つの巻き線の構成の変化を周期的に制御するテスト手段を備え、前記テスト手段は、前記スイッチ手段に命令を送り、前記少なくとも2つの巻き線を一時的に並列にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
他の利点と特徴は、非限定的な例のみとして与えられ、添付の図面で表現される、以下の本発明のある実施形態の説明から、より明確になる。
【0021】
第1の形態の好ましい実施形態によれば、電磁アクチュエータは強磁性材料から作られる固定の磁気回路を備える。磁気回路は、縦軸Yに沿って伸びる強磁性のヨーク2を備える。可動の強磁性コア3は、ヨークに面して置かれる。そのコアは、ヨークの縦軸Yに沿ってスライドする軸に搭載されている。電磁アクチュエータは、少なくとも2つの巻き線L1,L2を備える。その少なくとも2つの巻き線は、好ましくは縦軸Yに沿って伸びる。
【0022】
図6に例示されるように、アクチュエータはEタイプである。Uタイプのアクチュエータのような、プランジャコア(plunger core)を備える他の形状のアクチュエータが予想され得る。アクチュエータは、磁極片(polar shoes)又は永久磁石を備えることがあり、または備えることはない。
【0023】
本発明の好ましい実施形態によれば、アクチュエータは第1及び第2巻き線L1,L2を備える。スイッチ手段10は、アクチュエータの動作段階に応じて、その少なくとも2つの巻き線L1,L2を直列に又は並列にする。
【0024】
その少なくとも2つの巻き線L1,L2は、アクチュエータが閉じる(close)間の突入段階の間、並列に接続されている。アクチュエータの閉動作の間、その少なくとも2つの巻き線L1,L2は、第1突入磁束φinrushを生成して可動コア3を第1位置P1から第2位置P2へ動かす。
【0025】
その少なくとも2つの巻き線は、アクチュエータが閉じた位置に保たれる間の保持段階の間、直列に接続されている。その少なくとも2つの巻き線L1,L2は、第2保持磁束φholdingを生成して可動コア16をその第2位置P2に保つ。
【0026】
制御手段20は、スイッチ手段10を制御してその少なくとも2つの巻き線L1,L2を並列モード又は直列モードにする。
【0027】
制御手段20は、その少なくとも2つの巻き線L1,L2に流れる電流の調整手段22を備える。
【0028】
突入及び/又は保持段階で、制御手段20はアクチュエータの2つの巻き線L1,L2に流れる電流Iを調整する。この時間ベース(time-based)の調整は、好ましくは、単独又は組み合わせで選ばれたいくつかの変数の関数であり得る設定値に依存する。
【0029】
設定値は、それの経時的な変化に応じて定められる電流プロファイルに応じて、定められ得る。
【0030】
設定値は時定数に応じて定められ得る。突入と保持段階の間の急な変化は、それゆえプリセット時間の後で観測される。
【0031】
設定値は、可動鉄片(movable armature)の位置に応じて定められ得る。突入と保持段階の間の急な変化は、それゆえアクチュエータの可動鉄片が設定位置に着いた時に観測される。
【0032】
設定値は、要求された閉じる時間(closing time)の関数として更に設定され得る。この閉じる時間は、突入でのソースパワーに依存する。この制約は、それゆえ保持段階での消費量に影響を有し得る。保持段階で消費量を限定することは、熱消費が限定されるようにする。
【0033】
図1に表されるように、この調整は、例えばPID(比例、積分、微分)コントローラであり得る補正器223により実行される。PIDコントローラは、アクチュエータの閉ループの調整が実行されるようにする制御装置であり、調整は、環境の条件が変化しても、特にアクチュエータの供給電圧の変化の場合に、動作しなければならない。コントローラは、例えばパルス幅変調(PWM)タイプの増幅器であり得る増幅器224と接続されている。この増幅器はスイッチ226を制御する。この電圧に応じたパルス幅変調は、電流値が設定値にできるだけ近く調整されるようにする。その少なくとも2つの巻き線L1,L2の実際の電流の流れは、電流センサ225により測定される。比較器222は、その実際の電流の値と設定値とを比較する。電流センサ225は、例えばその少なくとも2つの巻き線L1,L2に直列に接続されている抵抗R1のような測定シャント(measuring shunt)であり得る。抵抗は、好ましくは小さい、周知の抵抗値を有する。
【0034】
各々の動作サイクル(閉/保持)で、調整手段22は、再現可能な方法で安定した電流が供給されるようにする。図7Bに表されるように、電流はそれゆえ電圧及び温度の変化から独立している。アクチュエータは、それゆえ、できるだけ広い調整された電流ウィンドウを有して広い電圧範囲で動作する。さらに、動作は使用の条件に比較的影響を受けないように行われる。唯一の制限は、PWMタイプの調整に固有の制限に関係する。調整は、実際上、最小値と最大値の間の一定の電圧範囲内に制限される。
【0035】
2重の巻き線の原理は、電圧範囲、又は突入電流と保持電流の間の比が増加されるようにする。これらの量は、実際上、動作段階(突入又は保持)に応じて変更されるコイル抵抗により関連付けられる。
【0036】
図2に示される実施形態として、調整手段22は、その少なくとも2つの巻き線L1,L2に供給されている電圧をパルス幅変調(PWM)で変調するための制御トランジスタTCを備える。コイルの電流の測定は、フィルタリング容量と接続されている抵抗R1を介して実行される。測定結果は比較器で比較され、パルス幅変調で変調して、且つ、電流調整が行われるようにする。
【0037】
制御手段20は、アクチュエータの閉動作の間、その少なくとも2つの巻き線L1,L2に供給されている電圧を制御するように構成されている突入手段23B,24,21,22を備える。
【0038】
制御手段20は、閉じた位置でのアクチュエータの保持動作の間、その少なくとも2つの巻き線L1,L2に供給されている電流を制御するように構成されている保持手段23B,24,21,22を備える。
【0039】
図1に表される本発明の第1の好ましい実施形態によれば、スイッチ手段10は、第1巻き線L1の第1端子L1aと、第1電圧供給端子Aとの間に直列に接続されている、第1開手段T1を備える。第1巻き線L1の第2端子L1bは、調整手段22の制御トランジスタTCを介して第2電圧供給端子Bに接続されている。
【0040】
スイッチ手段10は、第1巻き線L1の第2端子L1bと第2巻き線L2の第2端子L2bとの間に直列に接続されている第2開手段T2を備える。その第2巻き線L2は、第1電圧供給端子Aに接続されている第1端子L2aと、制御トランジスタTCを介して第2電圧供給端子Bに接続されている第2端子L2bとを備える。
【0041】
第3開手段T3は、第2巻き線L2の第2端子L2bと、第1巻き線L1の第1端子L1aと、の間に直列に直接接続されている。
【0042】
図1及び2に表されるように、少なくとも1つのフリー・ホイール(free-wheel)ダイオードD2は、第1巻き線L1の第2端子L1bと、第2巻き線L2の第1端子L2aとの間に、並列に逆接続されている。ダイオードD2は、それゆえ、第1電圧供給端子Aに正の電圧が供給されている時、導通していない。
【0043】
3つの開手段T1,T2,T3は制御サブ・ユニット24から命令を受け取るように構成されていて、それらを各々開状態及び閉状態、並びにその逆の状態にする。第1及び第2開手段T1,T2が開いており、且つ、第3開手段T3が閉じている時、巻き線L1,L2は直列モードにある。第1及び第2開手段T1,T2が閉じており、且つ、第3開手段T3が開いている時、巻き線L1,L2は並列モードにある。
【0044】
第1及び第2開手段T1,T2は、好ましくは各々が制御手段20の制御サブ・ユニット24により制御され得るトランジスタを備える。第3開手段T3は、更に好ましくは、制御サブ・ユニット24により制御されるトランジスタを備える。
【0045】
制御手段20は、2つの巻き線L1,L2を通って流れる電流を検出するように設計されている測定手段R1を備える。測定手段R1は、制御トランジスタTCと第2電圧供給端子Bとの間に直列に接続されている電流測定抵抗を備える。
【0046】
図3に表されるように、第1の好ましい実施形態の代わりの実施形態によれば、第3開手段T3は、第2巻き線L2に並列に逆接続されているスイッチングダイオードD1を備える。スイッチングダイオードD1を追加することは、第1及び第2開手段の作動が同期されていない時に、満足な動作を保証する。
【0047】
第1の好ましい実施形態のある実施形態によれば、電磁アクチュエータは第1及び第2コイルL1,L2を備える。2つのコイルL1,L2は、等しい巻き線を有し、それゆえ、実質的に等しいオーム抵抗、同じ巻き数及び同じインダクタンスを有す。コイルL1,L2は、好ましくは円筒形であり、同じ縦軸Yに沿って一列に並べられる。
【0048】
この構成を用いて、突入段階と保持段階とで直面される相反するストレスは分離され得る。さらに、本発明によるアクチュエータは、それをとても多用途にする、広い供給電圧の範囲で用いられ得る。
【0049】
使用される巻き線の最小及び最大の抵抗は、突入及び保持電流並びに調整制御デューティーサイクルに応じて、供給電圧範囲Umax/Uminの幅を固定する。突入及び保持の電流調整と共に単一の巻き線が使われる従来の構成で、最大サービス電圧と最小電圧との間の比は、次のように定義される。
【0050】
Umax/Umin=(τmax×Rcoilmin)/(τmin×Rcoilmax)×1/(Iinrush/Iholding)
【0051】
τmaxは、最大のパルス期間とパルス送出周期との間の比と等しい最大デューティーサイクルに相当する。τminは、最小のパルス期間とパルス送出周期との間の比と等しい最小デューティーサイクルに相当する。Rcoilmaxは、突入段階での巻き線の最大抵抗に等しく、Rcoilminは、保持段階での巻き線の最小抵抗に等しい。
【0052】
それゆえ、従来の構成で、巻き線抵抗の変化は基本的に温度に依存する。
【0053】
本発明によれば、最大サービス電圧と最小電圧との間の比は、次のように定義される。
【0054】
Umax/Umin=k×(τmax×Rcoilmin)/(τmin×Rcoilmax)×1/(Iinrush/Iholding)
【0055】
突入及び保持の巻き線の最大及び最小抵抗は調整可能であり、且つ、もはや単に温度に依存しないので、最大サービス電圧と最小電圧との間の比Umax/Uminは、係数kが乗じられる。例えば、2つの巻き線L1,L2の抵抗が等しければ、直列モードと並列モードとの間のスイッチングは、4に等しい係数kを得られるようにする。供給電圧範囲及び/又は突入/保持電流比の幅は、それゆえ、要求に応じて増加させられ、従って制御回路により認識されるインピーダンスに関するストレスを取り除く。
【0056】
更なる本発明によれば、最大突入電流は、最高動作温度及び最大デューティーサイクルについて、電圧範囲の最小電圧値Uminに応じて決定される。最大突入電流は、次の方程式によって表される。
【0057】
Iinrush=Umin×(τmax)×Rcoilmax
【0058】
Rcoilmaxは最高動作温度での巻き線の抵抗に等しく、Uminは動作範囲の最小電圧に等しい。
【0059】
更に、最小保持電流は、最低動作温度及び最大デューティーサイクルについて、電圧範囲の最大電圧値Umaxに応じて決定される。最小保持電流は、次の方程式によって表される。
【0060】
Iholding=Umax×(τmax)×Rcoilmin
【0061】
Rcoilminは、最低動作温度での巻き線の抵抗に等しい。Umaxは、動作範囲の最大電圧に等しい。
【0062】
図5の点線のプロット50は、巻き線のインピーダンスが突入段階と保持段階の間で変化する時の、電圧の比Umax/Uminに対する突入と保持電流の比Iinrush/Iholdingを表す。実線のプロット51は、巻き線のインピーダンスが変化しない時の、電圧の比Umax/Uminに対する突入と保持電流の比Iinrush/Iholdingを表す。
【0063】
それゆえ、図5に示されるように、電圧範囲の幅Umax/Umin及び/又は突入と保持電流の間の比Iinrush/Iholdingの何れかは増加され得る。最大電圧範囲Umax/Umin及びより大きいIinrush/Iholdingの電流比を得るために、突入で最小抵抗、及び保持で最大抵抗を有する巻き線を備えることが望ましい。ある実施形態によれば、突入と保持の間で抵抗は容易に4(K=4)で乗じられる。
【0064】
図2に示される、第2の好ましい実施形態によれば、電磁アクチュエータの制御手段20はドロップ・アウト手段23A,24を備える。ドロップ・アウト手段23A,24は以下のように構成される。即ち、その2つの巻き線L1,L2に供給されている逆電圧を制御し、且つ、スイッチ手段10を制御することにより、その2つの巻き線L1,L2を並列モードにして、第3ドロップ・アウト磁束φdrop-outを生成して、そのアクチュエータを開く。
【0065】
ドロップ・アウト手段23A,24は、フリー・ホイール ダイオードD2に直列に接続されている第4開手段T4を備える。それらは、フリー・ホイール ダイオードD2の端子に並列に逆接続されているツェナーダイオードDzを備える。第4開手段T4、好ましくはトランジスタは、制御サブ・ユニット24から命令を受けるように構成されていて、それによりそれらを開状態に置き、フリー・ホイール ダイオードD2を切断して、逆電圧が次に巻き線L1,L2の端子に供給される。
【0066】
ドロップ・アウト手段23A,24は、ツェナーダイオードDzに直列に接続されている第5開手段T5を備える。第5開手段T5は、制御サブ・ユニット24から命令を受けるように構成されていて、それによりドロップ・アウト動作の間にそれらを閉状態にして、アクチュエータの閉又は保持動作の間に第5開手段T5が開く。
【0067】
ドロップ・アウト手段は、巻き線L1,L2が並列モードに切り替われるようにして、要求される逆電圧レベルを削減することにより、電磁石のドロップ・アウトを手助けする。より低い電圧で動作できる特定用途向け集積回路(Asics)の構成要素に関する限りでは、これは電気回路の単純化に帰着する。周知の解決策と比較して、同じ保持電流値及び逆電圧値については、並列モードへの巻き線のスイッチングは、それによってアクチュエータが消磁されることをより素早く、且つ、それゆえ開くことをより素早くできるようにする。さらに、同じ保持電流値については、同じ消磁時間については、巻き線を並列モードにすることは消磁をより低い逆電圧でできるようにする。例えば、その開く速度は2倍低い逆電圧値で得られる。
【0068】
第2の好ましい実施形態の他の代わりの実施形態によれば、第3開手段T3はスイッチングダイオードD1に直列に接続されているトランジスタを備える。
【0069】
図1及び2に表される実施形態によれば、制御手段20は、閉動作の前に、第1及び第2電圧供給端子A,Bの間の電圧UABを検出するように、且つ、閉動作の間に、検出された供給電圧UABに応じて巻き線L1,L2に供給されている電圧を制御するように、設計されている電圧測定手段25を備える。
【0070】
好ましい実施形態の代わりの実施形態によれば、各々の巻き線L1,L2は、これらの端子に並列に逆接続されているフリー・ホイール ダイオードを備え得る。
【0071】
アクチュエータに送られる制御命令が、特に保持段階の間、電線で長い距離を伝達されるとき、電線上の浮遊容量の存在はアクチュエータの端子に残留電圧を生成し得る。この残留電圧は、特にドロップ・アウト電圧の検出用に要求される時間を変更し得る。例示の目的では、ドロップ・アウト電圧の検出用に要求される時間は増加され得る。
【0072】
それゆえ、低電力消費量のアクチュエータで、且つ、とても長い電力供給線の存在で、供給電圧をキャンセルすることは、アクチュエータの開くことをすぐにもたらさない。浮遊容量は充電され、フィルタ又はシールドのように振舞う。アクチュエータが低消費量を有し、高電圧が供給されているときは、この問題は解決できない。
【0073】
アクチュエータの開く時間に関する浮遊容量の有害な効果は、電圧供給源から認識されるアクチュエータのインピーダンスを減らすことにより制限され得る。アクチュエータのインピーダンスを減らすことは、特に浮遊容量に含まれているエネルギーを吸収することにより、実際上、エネルギーのより大きな全体量が吸収されることを可能にする。
【0074】
これらの条件下で吸収されるエネルギーの量は、しかしながら、熱ストレスに耐えるアクチュエータの能力により制限される。浮遊容量の存在下での供給源の電圧変動によるエネルギーは、アクチュエータの過度の熱上昇を引き起こすことなしに、検出及び吸収され得なければならない。
【0075】
前述の形態のある実施形態によれば、電磁アクチュエータの制御手段20は、その少なくとも2つの巻き線L1,L2の構成の変化を周期的に制御するテスト手段を備える。保持段階の間、テスト手段はスイッチ手段10に命令を送り、その少なくとも2つの巻き線L1,L2を一時的に並列にする。アクチュエータのインピーダンス削減は、それゆえ、直列モードから並列モードへの巻き線の変化を通じて起こる。巻き線L1,L2を並列モードにすることは、アクチュエータのインピーダンスを係数kで削減する結果をもたらす。係数kは、直列モードでの巻き線L1,L2の抵抗と、並列モードでの巻き線の抵抗との比に等しい。
【0076】
巻き線L1,L2と浮遊容量により形成されているRLC電気回路の時定数も、係数kで削減される。その容量の端子での電圧降下は、それゆえ、より素早く、ドロップ・アウト電圧の検出時間は、それゆえ、係数kで削減される。電圧降下の速度は、コイルの調整設定値の電流のレベルを増加することにより、さらに増加され得る。後者の場合、我々はアクチュエータの熱しすぎの危険により制限されるであろう。直列・並列の変化は、好ましくは周期的な方法で実行される。巻き線が並列モードにされている間の、このテスト段階によって費やされる時間は、ドロップ・アウト電圧の検出時間に組み入れられなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1の好ましい実施形態による、少なくとも2つの巻き線を有する電磁アクチュエータの配線図を表す。
【図2】本発明の第2の好ましい実施形態による、少なくとも2つの巻き線を有する電磁アクチュエータの配線図を表す。
【図3】図1の第1の好ましい実施形態による、電磁アクチュエータのスイッチ手段の代わりの実施形態の配線図を表す。
【図4】図1及び2の実施形態による、電磁アクチュエータのスイッチ手段の代わりの実施形態の配線図を表す。
【図5】最大及び最小供給電圧の比に対する突入及び保持電流の比をプロットしている曲線を表す。
【図6】図1及び2の実施形態による、アクチュエータのある実施形態の斜視図である。
【図7A】周知の実施形態による、突入段階の巻き線中の電流に対する供給電圧を表すプロットを表す。
【図7B】本発明の実施形態による、突入段階の巻き線中の電流に対する供給電圧を表すプロットを表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
‐ 縦軸(Y)に沿って伸びる強磁性のヨーク(2)と、前記ヨークの前記縦軸(Y)に沿ってスライドする軸に搭載されている可動強磁性コア(3)と、により形成されている磁気回路と、
‐ 少なくとも2つの巻き線(L1,L2)と、
‐ 直列の位置から並列の位置への、及びその逆への、前記巻き線(L1,L2)のスイッチ手段(10)と、
を備える電磁アクチュエータであって、
制御手段(20)を備え、
前記制御手段は、
‐ 前記少なくとも2つの巻き線(L1,L2)に流れる電流の調整手段(22)と、
‐ 突入手段(23B,24,21,22)であって、
‐ 前記アクチュエータの閉動作の間、前記少なくとも2つの巻き線(L1,L2)に供給されている電圧を制御し、且つ、
‐ 前記スイッチ手段(10)を制御することにより、前記少なくとも2つの巻き線(L1,L2)を並列モードとして、第1突入磁束(φinrush)を生成し、前記アクチュエータを閉じる、
ように構成されている、突入手段と、
‐ 保持手段(23B,24,21,22)であって、
‐ 前記閉じた位置における前記アクチュエータの保持動作の間、前記少なくとも2つの巻き線(L1,L2)に供給されている前記電流を制御し、且つ、
‐ 前記スイッチ手段(10)を制御することにより、前記少なくとも2つの巻き線(L1,L2)を直列モードとして、第2保持磁束(φholding)を生成する、
ように構成されている、保持手段と、
を有する
ことを特徴とする電磁アクチュエータ。
【請求項2】
前記調整手段(22)は、前記少なくとも2つの巻き線(L1,L2)に流れる電流の前記値を設定値と比較する比較器(222)を備え、
前記比較器(222)は、スイッチ(226)を制御する増幅器(224)に接続されている、補正器(223)に接続されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項3】
前記調整手段(22)は制御トランジスタ(TC)を備え、それにより前記少なくとも2つの巻き線(L1,L2)の前記電圧供給をパルス幅変調PWMで変調する
ことを特徴とする請求項2に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項4】
第1及び第2巻き線(L1,L2)を備える
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項5】
前記スイッチ手段(10)は、
‐ 前記第1巻き線(L1)の第1端子(L1a)と第1電圧供給端子(A)との間に直列に接続されている第1開手段(T1)を備え、前記第1巻き線(L1)の第2端子(L1b)が第2電圧供給端子(B)に前記制御トランジスタ(TC)を介して接続されており、
‐ 前記第1巻き線(L1)の前記第2端子(L1b)と前記第2巻き線(L2)の第2端子(L2b)との間に直列に接続されている第2開手段(T2)を備え、前記第2巻き線(L2)が、前記第1電圧供給端子(A)に接続されている第1端子(L2a)と、前記制御トランジスタ(TC)を介して前記第2電圧供給端子(B)に接続されている前記第2端子(L2b)と、を有し、
‐ 前記第2巻き線(L2)の前記第2端子(L2b)と、前記第1巻き線(L1)の前記第1端子(L1a)と、の間に直列に直接接続されている第3開手段(T3)と、
‐ 前記第1巻き線(L1)の前記第2端子(L1b)と前記第2巻き線(L2)の前記第1端子(L2a)の間に並列に逆接続されている少なくとも1つのフリー・ホイール ダイオード(D2)と、
を備え、
前記3つの開手段(T1,T2,T3)は、前記突入又は保持手段(23B,24,21,22)から命令を受け取るように構成されており、それによりそれら自身を各々開又は閉状態にして、
‐ 前記巻き線(L1,L2)は、前記第1及び第2開手段(T1,T2)が開いており、且つ、前記第3開手段(T3)が閉じているとき、直列モードにあり、
‐ 前記巻き線(L1,L2)は、前記第1及び第2開手段(T1,T2)が閉じており、且つ、前記第3開手段(T3)が開いているとき、並列モードにある、
ことを特徴とする請求項4に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項6】
前記制御手段(20)は、前記2つの巻き線(L1,L2)を通って流れる前記電流を検出するように設計されている測定手段(R1)を備える
ことを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項7】
前記制御手段(20)は、
ドロップ・アウト手段(23A,24,30)であって、
‐ 前記2つの巻き線(L1,L2)に供給されている逆電圧を制御し、
‐ 前記スイッチ手段(10)を制御することにより、前記2つの巻き線(L1,L2)を並列モードにして、第3ドロップ・アウト磁束(φdrop-out)を生成する、
ように構成されている、ドロップ・アウト手段を備える
ことを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1項に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項8】
前記ドロップ・アウト手段(23A,24,30)は、
‐ 前記フリー・ホイール ダイオード(D2)に直列に接続されている第4開手段(T4)と、
‐ 前記フリー・ホイール ダイオード(D2)の前記端子に並列に逆接続されているツェナーダイオード(Dz)と、を備え、
前記第4開手段(T4)は、前記制御サブ・ユニット(24)により制御されるように構成され、それによりそれ自身を開状態にして、且つ、前記フリー・ホイール ダイオード(D2)を切断して、
逆電圧が前記巻き線(L1,L2)の前記端子に印加されている
ことを特徴とする請求項7に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項9】
前記制御手段(20)は、
電圧測定手段(25)であって、
‐ 前記閉動作の前に、前記第1及び第2電圧供給端子(A,B)の間の前記電圧(UAB)を検出でき、
‐ 前記閉動作の間に検出された前記供給電圧(UAB)に応じて、前記巻き線(L1,L2)に供給されている前記電圧を制御できる、
電圧測定手段を備える
ことを特徴とする請求項1から請求項8の何れか1項に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項10】
同じオーム抵抗を有する第1及び第2巻き線(L1,L2)を備える
ことを特徴とする請求項1から請求項9の何れか1項に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項11】
前記巻き線(L1,L2)は等しく、且つ、同じインダクタンスと同じ巻き数を備える
ことを特徴とする請求項10に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項12】
前記巻き線(L1,L2)は、2つの分離したコイルの上に構成されている
ことを特徴とする請求項10から請求項11の何れか1項に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項13】
前記巻き線(L1,L2)は円筒形であり、且つ、同じ縦軸(Y)に沿って並べられている
ことを特徴とする請求項10から請求項12の何れか1項に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項14】
保持段階の間、前記少なくとも2つの巻き線(L1,L2)の構成の変化を周期的に制御するテスト手段を備え、
前記テスト手段は、前記スイッチ手段(10)に命令を送り、前記少なくとも2つの巻き線(L1,L2)を一時的に並列にする、
ことを特徴とする請求項1から請求項13の何れか1項に記載の電磁アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【公開番号】特開2009−27178(P2009−27178A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−190274(P2008−190274)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(594083128)シュネーデル、エレクトリック、インダストリーズ、エスアーエス (52)
【氏名又は名称原語表記】SCHNEIDER ELECTRIC INDUSTRIES SAS
【Fターム(参考)】