説明

少なくとも3つの成分を含有する多成分系、その製造方法およびその使用

(I.1)イソシアネート反応性の官能基を有する少なくとも1のバインダーおよび(I.2)少なくとも1の有機溶剤を含有する(I)塩素化されたポリオレフィンを含有していない、ポリイソシアネートにより硬化可能な成分、(II.1)少なくとも1の塩素化されたポリオレフィンおよび(II.2)少なくとも1の有機溶剤を含有する(II)バインダー(I.1)を含有していない成分、(III)少なくとも1のポリイソシアネート(III.1)を含有するか、または該ポリイソシアネートからなる成分を含有する、少なくとも3つの成分を含有する多成分系、その製造方法およびその使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の、少なくとも3つの成分を含有する多成分系に関する。さらに本発明は、新規の、少なくとも3つの成分を含有する多成分系の製造方法に関する。さらに本発明は、接着促進およびエネルギーを吸収する被覆を製造するための新規の、すくなくとも3つの成分を含有する多成分系の使用に関する。
【0002】
− イソシアネート反応性の官能基を有する少なくとも1のバインダー、少なくとも1の塩素化されたポリオレフィンおよび少なくとも1の有機溶剤を含有するポリイソシアネートにより硬化可能な成分、
− 少なくとも1のポリイソシアネートを含有する成分および
− 少なくとも1の有機溶剤を含有する成分
を含有する多成分系はたとえば欧州特許出願EP0982353A1から公知である。しかし公知の多成分系は、主として接着促進剤またはプライマーとして、TPO、つまりマレイン化ポリプロピレン、エラストマーおよびアミン末端ポリエーテルからなるブレンドからなるプラスチック部材上で使用することができるにすぎないという欠点を有する。さらに、ポリイソシアネートにより硬化可能な成分の貯蔵安定性はなお改善の余地がある。たとえば該系は2〜3ヶ月の貯蔵後に著しい相分離を生じ、かつ塩素化されたポリオレフィンが、存在する添加物質、たとえば添加剤、顔料および充填材と一緒に分離する傾向がある。そもそも、なお使用可能であるためには、ポリイソシアネートにより硬化可能な成分は強力に攪拌することにより再び均質化しなくてはならず、このことは塗装工場では付加的なコストの原因となる。6〜8ヶ月の貯蔵後に、ムラ(Stippen)が不可逆的に形成され、これによりポリイソシアネートにより硬化可能な成分は完全に使用することができなくなる。
【0003】
従って本発明の課題は、従来技術の欠点をもはや有さず、ポリイソシアネートにより硬化可能な成分は貯蔵安定性であり、かつ3ヶ月以上の貯蔵後も相分離およびその成分の分離を示さず、ならびに8ヶ月以上の貯蔵後でさえ、不可逆的なムラの形成を示さない、新規の、少なくとも3つの成分を含有する多成分系を提供することである。さらに新規の、少なくとも3つの成分を含有する多成分系を容易な方法で製造することができ、被覆材料へと加工することができるべきである。該当する被覆材料は極めて良好に、接着促進および/またはエネルギーを吸収するプライマーおよび/またはサーフェイサー被覆を多種多様なプラスチック表面および塗料表面上に製造するために適切であり、従って自動車の大量生産の塗装および自動車の補修用の塗装において有利に使用することができるべきである。該当する被覆は湿分による負荷の後でも支持体に対する、および上塗りされる層に対する特に高い付着性を有しているべきである。
【0004】
上記課題に応じて、
(I)塩素化されたポリオレフィンを含有していない、ポリイソシアネートにより硬化可能な成分、これは
(I.1)イソシアネート反応性の官能基を有する少なくとも1のバインダーおよび
(I.2)少なくとも1の有機溶剤
を含有する、
(II)バインダー(I.1)を含有していない成分、これは
(II.1)少なくとも1の塩素化されたポリオレフィンおよび
(II.2)少なくとも1の有機溶剤
を含有する、
(III)少なくとも1のポリイソシアネート(III.1)を含有するか、または該ポリイソシアネートからなる成分
を含有する、新規の、すくなくとも3つの成分を含有する多成分系が判明し、これを以下では「本発明による多成分系」と称する。
【0005】
さらに、成分(I)、(II)および(III)ならびに場合により(IV)を相互に別々に、これらのそのつどの成分を混合し、かつ得られる混合物を均質化することにより製造する本発明による多成分系を製造する新規の方法が判明し、これを以下では「本発明による方法」と称する。
【0006】
さらに本発明による多成分系の、被覆材料を製造するための使用が判明し、これを以下では「本発明による使用」と称する。
【0007】
従来技術を鑑みると、本発明の根底にある課題を、本発明による多成分系、本発明による方法および本発明による使用により解決することができたことは意外であり、当業者が容易に予想することができるものではなかった。
【0008】
特に、本発明による多成分系が従来技術の欠点をもはや有さず、ポリイソシアネートにより硬化可能な成分(I)が完全に貯蔵安定性であり、かつ3ヶ月以上の貯蔵の後でも、相分離およびその成分の分離を示さず、ならびに8ヶ月以上の貯蔵後でさえ不可逆的なムラの形成をもはや示さなかったことは意想外であった。
【0009】
さらに本発明による多成分系は本発明による方法を用いて特に容易な方法で極めて良好な再現性で製造することができた。
【0010】
さらに本発明による多成分系は本発明による使用の範囲で、極めて良好に被覆材料へと加工することができた。
【0011】
該当する被覆材料は極めて良好に接着促進および/またはエネルギーを吸収するプライマーおよび/またはサーフェイサー被覆を多種多様なプラスチック表面および塗料表面上に製造するために適切であり、従って自動車の大量生産(OME)の塗装および自動車の補修用塗装において有利に使用することができた。
【0012】
該当するプライマーおよびサーフェイサーの被覆は湿分による負荷後に支持体に対して、および上塗りされる層に対して特に高い付着性を有する。サーフェイサー被覆はさらに、機械的な作用、たとえば飛石による損傷に対して優れた保護をもたらす。
【0013】
本発明による多成分系は、少なくとも3つの、特に3つの成分(I)、(II)および(III)を含有する。
【0014】
成分(I)は、塩素化されたポリオレフィンを含有せず、かつポリイソシアネートにより硬化可能である。
【0015】
これは、少なくとも2個、有利には少なくとも3個および特に少なくとも4個のイソシアネート反応性の官能基を有する少なくとも1のオリゴマーもしくはポリマーのバインダー(I.1)を、少なくとも1の有機溶剤(I.2)中に溶解および/または分散して含有する。
【0016】
成分(I)中で使用するために適切なバインダー(I.1)の例は、ドイツ国特許出願
− DE4204518A1、第3頁第55行目〜第5頁第9行目、
− DE4421823A1、第4頁第4行目〜第11頁、第17行目;
− DE19855125A1、第3頁第14行目〜第4頁第1行目ならびに第4頁第2行目〜第11頁第39行目;
− DE19855167A1、第3頁、段落[0032]〜第12頁段落[0121];
− DE19904317A1、第3頁第6行目〜第12頁第19行目;または
− DE19914899A1、第3頁第15行目〜第8頁第32行目、ならびに第8頁第32行目〜第17頁第6行目、
− DE19924171A1、第5頁第54行目〜第7頁第34行目;
国際特許出願
− WO97/14731A1、第10頁第30行目〜第36頁第5行目;または
− WO98/38230A1、第10頁第15行目〜第13頁第20行目;または
米国特許
− US5,466,745A1、第5欄第43行目〜第7欄第6行目
から公知である。
【0017】
有利には成分(I)は、バインダー(I.1)を、そのつど成分(I)の固体に対して5〜50質量%、有利には10〜40質量%および特に15〜30質量%の量で含有している。
【0018】
成分(I)の製造、貯蔵およびその後の加工の条件下でバインダー(I.1)と反応しない全ての有機溶剤が適切である。以下に記載する成分(III)のポリイソシアネート(III.1)に関して有機溶剤は不活性であっても、反応性であってもよい、つまりイソシアネート反応性の官能基を有していてもよい。さらに溶剤は化学線による効果に関与する意味で反応性であってもよい。溶剤が反応性である場合、これはいわゆる反応性希釈剤である。有利には有機溶剤(I.2)は不活性である。
【0019】
化学線とは電磁線、たとえば近赤外線(NIR)、可視光、紫外線、X線またはγ線、特に紫外線、および粒子線、たとえば電子線、β線、中性子線、プロトン線、特に電子線であると理解する。
【0020】
適切な有機溶剤の例はDieter StoyeおよびWerner Freitag(編)の著書"Paints Coatings and Solvents"、Wiley−VCH、Weinheim、New York、第2版、"14.Solbents"、第277頁〜第373頁、ならびにドイツ特許出願DE19914899A1、第11頁第47行目〜第12頁第8行目に関連して第17頁第23行目〜33行目、またはDE10129970A1、ドイツ特許出願DE19818735A1、第7欄第1行目〜第25行目を参照する第11頁段落[0102]から公知である。有利にはエステルおよび芳香族化合物を使用する。
【0021】
適切なイソシアネート反応性の官能基の例はヒドロキシル基、チオール基および第一および第二アミノ基、特にヒドロキシル基である。
【0022】
その他に、成分(I)は通例かつ公知の添加剤(I.3)、たとえば前記のバインダー(I.1)とは異なる、物理的に硬化可能なバインダー;顔料および充填材;分子分散性の可溶性着色剤;光安定剤;たとえばUV吸収剤および可逆的な遊離基捕捉剤(HALS);酸化防止剤;湿潤剤;乳化剤;スリップ助剤;重合防止剤;熱による架橋のための触媒、熱不安定性ラジカル開始剤;光開始剤および補助開始剤;接着促進剤;レベリング剤;塗膜成形助剤;レオロジー助剤またはレオロジー調節剤(増粘剤および構造粘性サグコントロール剤、SCA);難燃剤;腐食防止剤;ワックス;乾燥剤;殺生物剤および/または艶消し剤を有効量で含有していてもよい。適切な添加剤の別の例はドイツ特許出願
− DE4421823A1、第11頁第18行目〜第30行目および第11頁第35行目〜第12頁第3行目;
− DE19914899A1、第17頁第35行目〜第43行目、第17頁第39行目〜第18頁第37行目および第19頁第10行目〜第66行目;
− DE10129970A1、第11頁段落[0106]〜第12頁段落[0121]、ならびに第12頁段落[0123];または
− Johan Bielemanの教科書"Lackadditive"、Wiley−VCH、Weinheim、New York、1998年
に記載されている。
【0023】
成分(II)はバインダー(I.1)を含有しない。該成分は有利には添加剤(I.3)を含有しない。該成分は少なくとも1の塩素化されたポリオレフィン(II.1)および少なくとも1の有機溶剤(II.2)、有利には少なくとも2の、および特に2の有機溶剤(II.2)を含有する。有利には該成分はこれらの成分からなる。
【0024】
有利には塩素化されたポリオレフィン(II.1)はそのつどその全量に対して塩素を10〜45質量%、有利には10〜25質量%および特に15〜20質量%含有し、かつ7000〜200000および有利には8000〜50000ダルトンの数平均分子量を有する。適切な塩素化ポリオレフィンの例はたとえばドイツ特許DE19646610C1、第3欄第2行目〜第34行目に記載されている。有利には成分(II)は、そのつどその全量に対して、塩素化ポリオレフィン(II.1)を5〜40質量%および有利には10〜35質量%含有している。
【0025】
適切な有機溶剤(II.2)の例は前記の有機溶剤(I.2)である。
【0026】
驚くべきことに、成分(II)は極めて貯蔵安定性であり、かつそのままで、プラスチック上に15μmまで、特に10μmまでの層厚さの接着促進プライマー被覆を製造するために使用することができ、このことは付加的な重要な特徴である。
【0027】
本発明による多成分系はさらに少なくとも1のポリイソシアネート(III.1)を含有する成分(III)を含有している。有利には成分(III)は液状である。したがって有利には成分(III)は少なくとも1の不活性有機溶剤(III.2)を含有する。特に有利にはこの目的のために前記の不活性有機溶剤(I.2)を使用する。
【0028】
ポリイソシアネート(III.1)は、化学線により活性化可能であり、従って化学線による硬化に関与することができる反応性の官能基を有していてもよい。このようなポリイソシアネート(III.1)を以下では「デュアル・キュア−ポリイソシアネート(III.1)」と称する。
【0029】
成分(III)中で使用するために適切なポリイソシアネート(III.1)の例は、ドイツ特許出願:
− DE4421823A1、第12頁第4行目〜第35行目;または
− DE19914899A1、第18頁第40行目〜第19頁第9行目および第19頁第67行目〜第20頁第12行目
から公知である。
【0030】
成分(III)中で使用するために適切なデュアル・キュア−ポリイソシアネート(III.1)の例は、ドイツ特許出願DE10129970A1、欧州特許出願EP0928800を参照する第2頁段落[0008]、ならびに第6頁段落[0042]〜第11頁段落[0099]から公知である。
【0031】
さらに成分(III)はなお少なくとも1の、イソシアネートに対して、製造条件および加工条件下で不活性であるが、しかし架橋または硬化に関して触媒作用のある添加剤(I.3)、たとえばジブチルスズジラウレートを含有していてもよい。
【0032】
さらに本発明による多成分系はなお、有利に前記の有機溶剤(I.2)および/または前記の添加剤(I.3)を含有してるか、またはこれらからなっていてもよい、少なくとも1の成分(IV)を含有していてもよい。
【0033】
成分(I)、(II)および(III)ならびに場合により(IV)は無水である。つまり該成分は水を含有しないか、または成分の製造の際におよび/または取り扱いの際に意図せず持ち込まれる水の痕跡を含有していてもよい。
【0034】
有利には本発明による多成分系の製造は、本発明による方法により行う。このために成分(I)、(II)および(III)ならびに場合により(IV)を相互に別々に、所望の量で、これらのそのそれぞれの成分を混合し、かつ得られた混合物を均質化することにより製造される。このために通例かつ公知の混合法および装置、たとえば攪拌容器、攪拌ミル、押出機、混練機、ウルトラツラックス、インライン溶解機、スタチックミキサー、歯車式分散機、放圧ノズルおよび/またはマイクロ流動化装置を使用することができる。場合によりその製造は、得られる成分(I)〜(III)ならびに場合により(IV)が、化学線により活性化可能な成分を含有している場合には、化学線の排除下に行う。
【0035】
本発明による多成分系の成分(I)、(II)および(III)ならびに場合により(IV)は、これらを本発明により使用するまで、相互に別々に貯蔵される。その際、これらの成分、特に成分(I)および(II)は極めて貯蔵安定性であるために、9ヶ月以上の貯蔵後でも相分離および不可逆的なムラの形成をもはや生じないことが判明した。
【0036】
本発明による多成分系は多様に、たとえば接着層およびシーラントを製造するために使用される接着剤および封止材料を製造するために使用することができる。特に本発明によれば被覆材料を製造するために使用される。
【0037】
被覆材料を製造するために、成分(I)、(II)および(III)ならびに場合により(IV)を所望の量で相互に混合し、その後、得られる混合物を均質化する。この目的のために前記の装置および方法を使用することができる。
【0038】
有利には成分(I)、(II)および(III)ならびに場合により(IV)を、得られる被覆材料が、イソシアネート反応性の官能基対イソシアネート基の当量比が1:2〜2:1、有利には1:1.5〜1.5:1および特に1:1.2〜1.2:1であるような比率で相互に混合する。
【0039】
有利には成分(I)、(II)および(III)ならびに場合により(IV)は、得られる被覆材料が、そのつどその固体に対して、少なくとも1の塩素化されたポリオレフィン(II.1)を0.5〜15質量%、特に有利には1〜12質量%およびとりわけ1.5〜10質量%含有するような比率で相互に混合する。
【0040】
得られる被覆材料は熱により硬化可能である。このことは、該被覆材料を室温で、または高めた温度で硬化することができることを意味する。その際、通例かつ公知の装置、たとえば強制通風炉、熱風送風機または放射加熱装置、特にNIRまたはIR線またはマイクロ波放射器を使用することができる。
【0041】
得られる被覆は熱により、および化学線により硬化可能であってもよく、これは専門業界ではデュアル・キュアと称する。硬化のために通例かつ公知の装置、たとえばUVランプまたは電子線放射源を使用することができる(ドイツ特許出願DE10129970A1、第13頁段落[0132]を参照のこと)。
【0042】
有利には被覆材料は熱硬化性である。
【0043】
被覆材料は容易な方法で極めて良好な再現性で製造することができる。該被覆材料は塗装分野において十分である以上に確実で、快適な加工のための可使時間またはポットライフを有する。
【0044】
有利には該被覆材料を、多種多様な支持体上での接着促進および/またはエネルギーを吸収する被覆の製造のために、特に10〜25μm、有利には15〜20μmの層厚さのプライマー被覆、および/または25〜45μm、有利には30〜40μmの層厚さのサーフェイサー被覆の製造のために使用する。
【0045】
支持体は平坦であるか、または立体的に成形されていてもよい。支持体は金属製であってもよい。さらに支持体は、熱可塑性プラスチックまたは熱硬化性プラスチック材料、たとえば塗料からなる表面被覆を有しているか、あるいはこれらの熱可塑性プラスチックまたは熱硬化性プラスチック材料からなっていてもよい。プラスチックとしてたとえばABS、AMMA、ASA、CA、CAB、EP、UF、CF、MF、MPF、PF、PAN、PA、PE、HDPE、LDPE、LLDPE、UHMWPE、PC、PC/PBT、PC/PA、PET、PMMA、PP、PS、SB、PUR、PVC、RF、SAN、PBT、PPE、POM、PUR−RIM、SMC、BMC、PP−EPDMおよびUP(略称はDIN7728T1による)が考えられる。その際、プラスチックは火炎処理またはコロナ処理もしくはプラズマ処理により表面を粗面化する必要はなく、プラスチックを適切な溶剤で洗浄し、目の細かい紙ヤスリまたは研磨パッドで研磨して溶剤で後洗浄するだけで十分である。このことは本発明による多成分系、本発明による多成分系から製造される被覆材料およびその本発明による使用の特別な利点である。
【0046】
従って被覆材料、接着剤および封止材料は特に、電動および/または筋力で運転される移動手段を含む移動手段、たとえば乗用車、輸送用車両、バス、自転車、鉄道車両、船舶および航空機の車体およびその部材、建築物およびその部材、ドア、窓、家具、工業用の小部品、機械的、光学的および電子的な部材、コイル、コンテナ、包装材料、ガラス中空体および日用品の被覆、接着および封止のために使用することができる。
【0047】
前記の支持体上での被覆材料、接着剤および封止材料、特に被覆材料の適用は、全ての通例の適用法、たとえば噴霧塗布、ナイフ塗布、刷毛塗り、流し塗り、浸漬塗り、含浸塗布、散布塗布またはローラー塗りにより行うことができる。この場合、被覆すべき支持体自体はそのまま静止しており、その場合、適用装置が移動する。あるいは被覆すべき支持体、特にコイルが移動し、その場合、適用装置は支持体に対して静止しているか、または適切な方法で移動する。
【0048】
その際、被覆材料が特に容易かつ確実に適用可能であることが判明した。得られる湿潤層をその硬化前にウェット・オン・ウェット法により上塗りし、かつその後、上塗りした層と一緒に硬化させることができる(ウェット・オン・ウェット法)。
【0049】
しかしまた被覆材料、接着剤および封止材料、特に被覆材料は直接、その適用後に前記の装置および方法を用いて硬化することもできる。
【0050】
得られる接着層は接着すべき支持体の間に耐久性の強固な接着をもたらし、これは湿分、光および/または著しく変化する温度による負荷によっても剥離しない。
【0051】
得られるシーラントは機械的、化学的および熱による作用に対して安定しており、かつ従って支持体を持続的に封止する。
【0052】
得られる被覆、特にプライマー被覆およびサーフェイサー被覆は同様に極めて良好に上塗りすることができる。
【0053】
被覆は湿分による負荷の後でも、支持体に対して、および上塗りすべき層に対して特に高い付着性を有する。特にサーフェイサー被覆は、機械的な作用、たとえば飛石による損傷に対して優れた保護をもたらす。被覆の品質は優れているので、自動車の大量生産の塗装および自動車の補修用の塗装に使用することができる。
【0054】

例1および例2
多成分系1および2の製造
1. 成分(I)の製造:
1. 1成分(Ia)の製造:
成分(Ia)を製造するために、まずヒドロキシル基を有するメタクリレートコポリマー(Hoechst社のMacrynal(R)SM515)25.9質量部(固体として計算)およびDisperbyk(R)110(Byk Chemie社の分散剤)0.46質量部およびByk(R)P104S(Byk Chemie社の表面に作用する添加剤)0.28質量部を相互に混合し、その後、得られる混合物を均質化した。
【0055】
均質化した混合物へ、溶解機中へRheox社のBentone(R)34(有機変性されたスメクタイトおよびベントナイト)0.93質量部およびDegussa社のAerosil(R)R972(熱分解法ケイ酸)0.46質量部を均質に攪拌導入し、かつ、レオロジー助剤が溶解するまで溶解した。
【0056】
その後、Degussa社のNero Flammruss 101 0.37質量部、Millennium社の二酸化チタンTiona(R)RCL−472 13質量部、Langer社のケイ酸アルミニウムASP600 6.5質量部、Waardals社のリン酸亜鉛ZP−BS−M 7.4質量部およびHeubach社のHalox(R)SZP−391(カルシウム−ストロンチウム−亜鉛−リン−ケイ酸塩)13質量%を攪拌導入し、その後、得られる混合物を攪拌ミル(Naintzsch社のZMW)で15〜18μmの微細度になるまで粉砕した。
【0057】
引き続きエステル22.5質量部および芳香族化合物2質量部を添加し、その後、成分(Ia)をBaysilon(R)OL44(Borchers社のレベリング剤)1.9質量部、Wolff社のニトロセルロースChips E510の有機溶液0.5質量部(固体樹脂として計算)およびジブチルスズジラウレートの10%有機溶液0.1質量部を添加した。
【0058】
得られる成分(Ia)は極めて貯蔵安定性であり、かつ9ヶ月の貯蔵後にも相分離およびムラの形成を示さなかった。
【0059】
1.2 成分(Ib)の製造:
成分(Ib)を製造するために、まず、ヒドロキシル基を有するメタクリレートコポリマー(Hoechst社のMacrynal(R)SM515)25.41質量部(固体樹脂として計算)およびDisperbyk(R)111(Byk Chemie社の分散剤)0.28質量部およびByk(R)P104S(Byk Chemie社の表面に作用する添加剤)0.23質量部を相互に混合し、その後、得られた混合物を均質化した。
【0060】
均質化した混合物へ、溶解機中でRheox社のBentone(R)34(有機変性されたスメクタイトおよびベントナイト)0.9質量部およびDegussa社のAerosil(R)R972(熱分解法ケイ酸)0.46質量部を均質に攪拌導入し、かつ、レオロジー助剤が溶解するまで溶解した。
【0061】
その後、Bayer AG社のBayferrox(R)316 0.037質量部、Millennium社の二酸化チタンTiona(R) RCL−472 12.9質量部、Langer社のケイ酸アルミニウムASP 600 6.5質量部、Talc de Luzenac社のLuzenac(R) 4.6質量部、Heubach社のHeucophos(R)ZPA(リン酸亜鉛)7.4質量部およびHeubach社のHeucophos(R)CAPP(カルシウム−ポリリン酸ケイ酸アルミニウム水和物)5.5質量部を攪拌導入し、その後、得られる混合物を攪拌ミル(Naintzsch社のZWM)で15〜18μmの微細度になるまで粉砕した。
【0062】
引き続きエステル25質量部および芳香族化合物2質量部を添加し、その後、成分(Ib)をBaysilon(R)OL44(Borchers社のレベリング剤)1.9質量部、Wolff Walsrode社のニトロセルロースチップスE510の有機溶液0.53質量部(固体樹脂として計算)およびジブチルスズジラウレートの10%有機溶液0.1質量部を添加した。
【0063】
得られる成分(Ib)は、極めて貯蔵安定性であり、かつ9ヶ月の貯蔵の後でも相分離およびムラの形成を示さなかった。
【0064】
2. 成分(II)の製造:
2. 1成分(IIa)の製造:
成分(IIa)を、エステル62質量部、芳香族化合物18質量部およびEastman社の塩素化ポリオレフィンCP343.3 20質量部の混合および得られた混合物の均質化により製造した。
【0065】
2.2 成分(IIb)の製造:
成分(IIb)を、エステル54.4質量部、芳香族化合物10.5質量部およびEastman社の塩素化ポリオレフィンCP343.3 35質量部の混合および得られた混合物の均質化により製造した。
【0066】
成分(IIa)および(IIb)は貯蔵安定性であり、かつ8ヶ月以上の貯蔵後でも相分離およびムラの形成を示さなかった。意外なことに、該成分は直接、プラスチック上での15μmまでの層厚さの接着促進プライマー被覆の製造のために使用することができた。
【0067】
3. 成分(III)の製造:
成分(III)をBASF社のBasonat(R)HI 190/B/S(ヘキサメチレンジイソシアネートをベースとするイソシアヌレート)30質量部、イソホロンジイソシアネートをベースとするイソシアヌレート8.4質量部、有機溶剤(エステルと芳香族化合物とからなる混合物)61.2質量部および有機溶剤中のジブチルスズジラウレートの10%溶液から製造した。
【0068】
4. 多成分系1:
例1の多成分系1は成分(Ia)、(IIa)および(III)からなっていた。
【0069】
5. 多成分系2:
例2の多成分系2は成分(Ib)、(IIb)および(III)からなっていた。
【0070】
多成分系1および2は被覆材料を製造するために好適であった。
【0071】
例3および4
多成分系1および2を使用した被覆の製造
例3のために例1の多成分系1を使用した。
【0072】
例4のために例2の多成分系2を使用した。
【0073】
例3の被覆材料1は、成分(Ia)、(IIa)および(III)を2:1:1の質量比で相互に混合し、かつ得られる混合物を均質化することにより、多成分系1を使用して製造した。
【0074】
例4の被覆材料2は、成分(Ib)、(IIb)および(III)を2:1:1の質量比で相互に混合し、かつ得られる混合物を均質化することにより、多成分系2を使用して製造した。
【0075】
多成分系1および2の成分は、短時間で問題なく相互に混合することができた。得られる被覆材料1および2は、液状の有機化合物(揮発性有機化合物、VOC)を含有しており、これはVOC<540g/lまたは4.5lab/galの実地の要求を満足していた。被覆材料1および2は、数時間の可使時間またはポットライフを有しており、従って問題なくその後の加工が可能であった。特に該材料は通例かつ公知の噴霧塗布法を用いて極めて容易に適用することができた。
【0076】
被覆材料1および2は噴霧ガンSATA(R)No.2000−1.3mmを使用して2バールの噴霧圧力で、湿潤層1および2の乾燥および硬化後に乾燥膜厚30μmを有するサーフェイサー被覆1および2が得られるような湿潤膜厚でプラスチック支持体上に塗布した。
【0077】
プラスチック支持体はEPDM−ゴムを用いて耐衝撃性に変性したポリプロピレン、ポリカーボネートおよび白色および黒色に着色したTPO(マレイン化したポリプロピレン、エラストマーおよびアミン末端ポリエーテルからなるブレンド)からなっており、その表面は単に適切な溶剤により前洗浄し、目の細かいサンドペーパーで研磨し、かつ溶剤で後洗浄したのみであった。
【0078】
湿潤層1および2により被覆したプラスチック支持体を第一の系列でウェット・オン・ウェット法によりBASF Coatings社の通例かつ公知の2成分系ソリッドカラーコートで上塗りした。第二の系列で、該被覆をウェット・オン・ウェット法により、通例かつ公知のメタリック・ベースコートおよび通例かつ公知の2成分クリアコート(いずれもBASF Coatings社の製品)により上塗りした。引き続き湿潤層を一緒に硬化させた(ウェット・オン・ウェット)。得られた全てのコーティングは、ムラのような表面欠陥を有していなかった。
【0079】
全てのコーティングは、全てのプラスチック支持体上で優れた付着性を有しており(DIN EN ISO2409による碁盤目試験;Gt 0;メルセデス・ベンツ LPV 2200.40100、ナイフを用いる:申し分なし)、これは湿分(噴霧水試験BASF目録番号1490、240時間、DIN EN ISOによる噴霧水試験および240hの一定気候試験)による負荷および該負荷に続く1時間および24時間の静止時間ならびに低温(−40℃)でも低下しなかった。トップコーティングの目視により優れた全体の印象(外観)もまた完全に維持されていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)塩素化されたポリオレフィンを含有していない、ポリイソシアネートにより硬化可能な成分、これは
(I.1)イソシアネート反応性の官能基を有する少なくとも1のバインダーおよび
(I.2)少なくとも1の有機溶剤
を含有する、
(II)バインダー(I.1)を含有していない成分、これは
(II.1)少なくとも1の塩素化されたポリオレフィンおよび
(II.2)少なくとも1の有機溶剤
を含有する、
(III)少なくとも1のポリイソシアネート(III.1)を含有するか、または該ポリイソシアネートからなる成分
を含有する、少なくとも3つの成分を含有する多成分系。
【請求項2】
成分(II)が、その全量に対して、
(II.1)少なくとも1の塩素化されたポリオレフィンを固体として計算して5〜40質量%
含有することを特徴とする、請求項1記載の多成分系。
【請求項3】
成分(II)が、その全量に対して、
(II.1)少なくとも1の塩素化されたポリオレフィンを10〜35質量%
含有することを特徴とする、請求項2記載の多成分系。
【請求項4】
塩素化されたポリオレフィン(II.1)が、その全量に対して、塩素を10〜45質量%含有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の多成分系。
【請求項5】
塩素化されたポリオレフィン(II.1)が、その全量に対して、塩素を15〜20質量%含有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の多成分系。
【請求項6】
成分(I)が、
(I.3)少なくとも1の添加剤
を含有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の多成分系。
【請求項7】
添加剤(I.3)が、前記のバインダー(I.1)とは異なる物理的に硬化可能なバインダー;顔料;分子分散性の可溶性着色剤;光安定剤、たとえばUV吸収剤および可逆性の遊離基捕捉剤(HALS);酸化防止剤;湿潤剤;乳化剤;スリップ助剤;沈殿防止剤;重合防止剤;熱による架橋のための触媒;熱不安定性ラジカル開始剤;光開始剤および補助開始剤;接着促進剤;レベリング剤;塗膜形成助剤;レオロジー助剤またはレオロジー調節剤(増粘剤および構造粘性のサグコントロール剤、SCA);難燃剤;腐食防止剤;ワックス;乾燥剤;殺生物剤および/または艶消し剤からなる群から選択されていることを特徴とする、請求項6記載の多成分系。
【請求項8】
有機溶剤(I.2)および(II.2)がイソシアネート反応性の基を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の多成分系。
【請求項9】
イソシアネート反応性の官能基が、ヒドロキシル基、チオール基および第一および第二アミノ基からなる群から選択されていることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の多成分系。
【請求項10】
成分(III)が少なくとも1の不活性有機溶剤(III.2)を含有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の多成分系。
【請求項11】
さらに少なくとも1の別の成分(IV)を含有することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の多成分系。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項記載の少なくとも3つの成分を含有する多成分系を製造する方法において、成分(I)、(II)および(III)ならびに場合により(IV)を相互に別々に、これらのそのつどの成分を混合し、かつ得られる混合物を均質化することにより製造することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の多成分系の製造方法。
【請求項13】
請求項1から11までのいずれか1項記載の少なくとも3つの成分を含有する多成分系および請求項12記載の方法により製造される少なくとも3つの成分を含有する多成分系の、被覆材料を製造するための使用。
【請求項14】
被覆材料を成分(I)、(II)および(III)ならびに場合により(IV)の混合および得られる混合物の均質化により製造することを特徴とする、請求項13記載の使用。
【請求項15】
成分(I)、(II)および(III)ならびに場合により(IV)を、得られる被覆材料中で、イソシアネート反応性の官能基対イソシアネート基の当量比が1:2〜2:1であるような比率で相互に混合することを特徴とする、請求項14記載の使用。
【請求項16】
得られる被覆材料が、その固体に対して、少なくとも1の塩素化されたポリオレフィン(II.1)を0.5〜15質量%含有していることを特徴とする、請求項13から15までのいずれか1項記載の使用。
【請求項17】
被覆材料を、接着促進および/またはエネルギーを吸収する被覆を支持体上に製造するために使用することを特徴とする、請求項13から16までのいずれか1項記載の使用。
【請求項18】
支持体が、熱可塑性プラスチックまたは熱硬化性プラスチック材料からなる表面被覆を有するか、またはこれらの材料からなることを特徴とする、請求項17記載の使用。
【請求項19】
請求項1から5までのいずれか1項記載の成分(II)および請求項12記載の方法により製造された成分(II)の、15μmまで、特に10μmまでの層厚さの接着促進プライマー被覆をプラスチック上に製造するための使用。

【公表番号】特表2007−532740(P2007−532740A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507796(P2007−507796)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【国際出願番号】PCT/EP2005/051530
【国際公開番号】WO2005/100494
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス アクチェンゲゼルシャフト (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings AG
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】