説明

少数コンテナへの射出成形機の収容方法

【課題】射出成形機を分解した主要な各種装置を、コンテナ内に重量バランスが極端に偏らないように収容する。
【解決手段】単独のコンテナ内に射出成形機1の全体が収容できない際、射出成形機1を極力分解しないよう3つに分け、これらを第1〜第3のコンテナ13,14,15内に重量バランスが極端に偏らないように、第1のコンテナ13内の前後には、トグルリンク機構8を保持したテールストック9と移動ダイプレート3とを振り分けて収容し、第2のコンテナ14内の前後には、固定ダイプレート5を固定したフレーム6とトグルリンク機構8を覆うカバー11とを振り分けて収容し、第3のコンテナ15内の前後には、射出ユニット10とタイバー7とを振り分けて収容し、これにより、射出成形機1の主要な装置が収容された各々のコンテナの重量バランスが極端に偏らないよう安定させることができるから、安全にコンテナを吊り上げることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナに射出成形機を収容する際、極力原型を保つようにして射出成形機を分解し、これら分解した射出成形機に構成される主要な各種装置を重量バランスが崩れないよう安定させた状態で複数のコンテナ内に収容する収容方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックなどの成形体を成形する射出成形機においては、その構成を大別すると概ね、型締めユニットと及び射出ユニットから構成されており、型締めユニットにおいては、固定金型が固定される固定ダイプレート、可動金型が固定される可動ダイプレート、型開閉を行うためトグルリンク機構等が、射出ユニットにおいては、溶融樹脂を射出するための射出ノズルや、成形材料となるペレットを溶融するための加熱シリンダ等が構成されており、これらの装置が単独の機台上に固定するなどして設けられている。
【0003】
ところで、前述した各種装置を構成する比較的大型な射出成形機を、規格化された所定寸法のコンテナ内へ収容して輸送する際には、寸法上、射出成形機の全体を単独の搬送用コンテナ内に全てを収容することができない場合があるため、射出成形機を複数に分割し、分割した各種装置を複数の搬送用コンテナ内に分けて収容し、出荷先等に輸送することが必要となる。
【0004】
上記従来技術に関連するものとして、特許文献1には、2輪車両を保持した荷台としてのパレットを搬送用コンテナに収容し輸送することが開示されており、特許文献2には、縦型射出成形機を搬送するに際し、搬送用コンテナ内に収容できるよう、高さを低くできるようにした縦型射出成形機が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−253435号公報
【特許文献2】特開2007−069571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1においては、搬送対象が比較的小型である2輪車両であるため、2輪車両を分解するなどしなくても、簡単に搬送用コンテナ内に収容することができるが、特許文献2においては、比較的大型な射出成形機を搬送用コンテナ内に収容できるようにするため、射出成形機の高さ寸法を低くできるようになっている。しかしながら、大型な射出成形機を規格化された搬送用コンテナ内に収容する際には、その寸法如何によっては、射出成形機を構成する各種装置を分解し、それら分解したものを複数の搬送用コンテナに分けて収容しなければ、射出成形機を搬送できない場合が起こり得る。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、射出成形機を分解した主要な各種装置を、極力少数の3つのコンテナに分けて収容した際、各種装置を収容したコンテナの各々の重量バランスが極端に偏らないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る少数コンテナへの射出成形機の収容方法は、
可動金型が取り付けられる移動ダイプレートと、
固定金型が取り付けられる固定ダイプレートと、
該固定ダイプレートが上部に固定されたフレームと、
前記移動ダイプレートを型開閉方向に案内する複数のタイバーと、
屈曲されることにより前記移動ダイプレートを前記型開閉方向に進退させ、前記固定金型に対して前記可動金型を型開閉するトグルリンク機構と、
該トグルリンク機構を保持する保持プレートと、
前記トグルリンク機構を少なくとも覆うカバーと、
前記可動金型と前記固定金型との型閉じ時に形成されるキャビティに溶融樹脂を射出する射出ユニットとを主要な装置として備え、
これら主要な各種装置を規格化された3つのコンテナに全て収容する際、該3つのコンテナの各々の重量バランスが崩れないように、
第1のコンテナ内の前後には、前記トグルリンク機構を保持した保持プレートと、前記移動ダイプレートとを振り分けて収容し、
第2のコンテナ内の前後には、前記固定ダイプレートを固定したフレームと、前記トグルリンク機構を少なくとも覆うカバーとを振り分けて収容し、
第3のコンテナ内の前後には、前記射出ユニットと、前記複数のタイバーとを振り分けて収容することで、前記主要な各種装置を収容した第1〜第3のコンテナの前後の重量バランスが極端に偏らないようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、射出成形機を輸送等するに際し、単独のコンテナ内に射出成形機の全体が収容できない寸法の際には、この射出成形機を極力分解しないよう3つに大きく分け、これらを第1〜第3のコンテナ内に重量バランスが極端に偏らないように、第1のコンテナ内の前後には、トグルリンク機構を保持した保持プレートと、移動ダイプレートとを振り分けて収容し、さらに、第2のコンテナ内の前後には、固定ダイプレートを固定したフレームと、前記トグルリンク機構を少なくとも覆うカバーとを振り分けて収容し、さらに、第3のコンテナ内の前後には、射出ユニットと、複数のタイバーとを振り分けて収容する。これにより、射出成形機の主要な装置が収容された各々のコンテナの前後の重量バランスが極端に偏らないよう安定させることができる。よって、例えば、物品の収容に伴い、コンテナの重量バランスが極端に偏っている場合には、そのコンテナを輸送等のために吊り上げたり、或いは、フォークリフトで運搬する際に、コンテナが傾いてしまい、落下や荷崩れの原因になるが、こうした不具合を解消でき、安全にコンテナの搬送を行なうことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための最良の形態としての実施例を図1〜図5により以下に説明する。もちろん、本発明は、その発明の趣旨に反しない範囲で、実施例において説明した以外の構成のものに対しても容易に適用可能なことは説明を要するまでもない。
【0011】
図1は射出成形機を左側から視た状態を示す構成図である。同図に示すように、射出成形機1には、可動金型2が取り付けられる移動ダイプレート3、固定金型4が取り付けられる固定ダイプレート5、固定ダイプレート5が上部に固定されたフレーム6、移動ダイプレート3を型開閉方向に案内する4本の円柱状のタイバー7、固定ダイプレート5に固定された固定金型4に対して可動金型2を型開閉するトグルリンク機構8、このトグルリンク機構8を保持する保持プレートとしてのテールストック9、及び可動金型2と固定金型4との型閉じ時に形成されるキャビティに溶融樹脂を射出する射出ユニット10、射出成形機1の外観を覆う後述するカバー11を、少なくとも主要な装置として備えている。
【0012】
前記トグルリンク機構8には、複数の連結アームが構成されており、これらの連結アームが屈曲されることにより、可動金型2の取り付けられた移動ダイプレート3を型開閉方向に進退させ、固定金型4と可動金型2による型開閉が行われるようになっており、また、トグルリンク機構8は外部に露出しないようカバー11で覆われており、移動ダイプレート3等はフレーム6にスライド自在に取り付けられた安全ドア12により外部に露出しないように覆われている。
【0013】
図2は規格化された所定寸法を有する箱型の第1のコンテナ内にトグルリンク機構を保持したテールストックと移動ダイプレートとを収容した状態を示す断面図、図3は規格化された所定寸法を有する箱型の第2のコンテナ内に固定ダイプレートを上部に固定したフレームとカバーとを収容した状態を示す断面図、図4は規格化された所定寸法を有する箱型の第3のコンテナ内に射出ユニットとタイバーを収容した状態を示す断面図、図5はタイバーを収容した状態の第3のコンテナを示すA−A線断面図であり、これらの図を基に以下に説明する。
【0014】
図2〜図4に示す、第1のコンテナ13、第2のコンテナ14、第3のコンテナ15はそれぞれ同寸(高さ2896mm×長さ12192mm×幅2438mm)となっており、また、本実施例における射出成形機1は、総重量が55トン〜65トン程度の比較的大型で、移動ダイプレート3、固定ダイプレート5、フレーム6、4本の円柱状のタイバー7、トグルリンク機構8、テールストック9、射出ユニット10、カバー11、及び安全ドア12が、ボルトなどの固定手段の着脱により組み立て・分解可能に構成されており、射出成形機1を搬送する際には、単独のコンテナ内に射出成形機1の全体を収容することが、寸法上物理的に困難なため、前述した第1〜第3のコンテナ13,14,15内に分解した主要な装置を収容し、搬送先にて分割した装置の組み立て作業を行なう。
【0015】
第1〜第3のコンテナ13,14,15内に射出成形機1を分解して収容する際には、第1のコンテナ13においては、図2に示すように、その内部の前後に、トグルリンク機構8を保持したテールストック9と、移動ダイプレート3を配設すると、空の状態の第1のコンテナ13の重心C1は、移動ダイプレート3よりも、トグルリンク機構8を保持したテールストック9の方がやや重量が重いため、これらを収容したときの重心G1は、第1のコンテナ13の重心C1よりもテールストック9側へと移動することになるがそれは僅かに過ぎず、極端に重心G1が偏ることを回避することができる。
【0016】
また、第2のコンテナ14においては、図3に示すように、その内部の前後に、固定ダイプレート5を上部に固定したフレーム6と、カバー11とを配設すると、空の状態の第2のコンテナ14の重心C2は、固定ダイプレート5を固定したフレーム6がカバー11よりも重量が重いが、図3に示すように、第2のコンテナ14の前後方向のほぼ中心に固定ダイプレート5を起立させた状態で配設することで、固定ダイプレート5を固定したフレーム6と、カバー11とを第2のコンテナ14内に収容したときの重心G2は、空の状態の第2のコンテナ14の重心C2とほぼ同じ重心位置となる。
【0017】
また、第3のコンテナにおいては、図4及び図5に示すように、その内部の前後に、射出ユニット10と4本のタイバー7とを配設すると、これらを第3のコンテナ15内に収容したときの重心G3は、空の状態の第3のコンテナ15の重心C3から射出ユニット10側へと移動することになるがそれは僅かに過ぎず、極端に重心G3が偏ることを回避することができる。
【0018】
以上のように、本発明の一例によれば、可動金型2が取り付けられる移動ダイプレート3、固定金型4が取り付けられる固定ダイプレート5、固定ダイプレート5が上部に固定されたフレーム6、移動ダイプレート3を型開閉方向に案内する複数のタイバー7、屈曲されることにより移動ダイプレート3を型開閉方向に進退させ、固定金型4に対して可動金型2を型開閉するトグルリンク機構8、トグルリンク機構8を保持する保持プレートたるテールストック9、可動金型2と固定金型4との型閉じ時に形成されるキャビティに溶融樹脂を射出する射出ユニット10、及びトグルリンク機構8を少なくとも覆うカバー11を、主要な装置として射出成形機1に備え、これら主要な各種装置を規格化された所定寸法の3つのコンテナ(第1〜第3のコンテナ13,14,15)に全て収容した際、3つのコンテナの各々の重量バランスが崩れないように、第1のコンテナ13内の前側には、トグルリンク機構8を保持したテールストック9を、後側には、移動ダイプレート3を、振り分けて収容し、さらに、第2のコンテナ14内の前側には、固定ダイプレート5を固定したフレーム6を、後側には、トグルリンク機構8等を覆うカバー11を、を振り分けて収容し、さらに、第3のコンテナ15内の前側には射出ユニット10を、後側には複数のタイバー7を、振り分けて収容したものである。これにより、射出成形機1を輸送等するに際し、コンテナの前後の寸法よりも射出成形機1の寸法が長く、単独のコンテナ内に射出成形機1の全体を収容して搬送できない場合が生じても、前述したように、射出成形機1を極力分解しないよう3つに分け、これらを、第1〜第3のコンテナ13,14,15の前後の重量バランスが極端に偏らないように、これらにバランス良く振り分けて収容することができるので、射出成形機1の主要な装置が収容された各々のコンテナ13,14,15の前後の重量バランスが極端に偏らず安定させることができる。従って、物品の収容に伴い、コンテナの前後の重量バランスが極端に偏っている場合には、そのコンテナを輸送等のために吊り上げたり、或いは、フォークリフトで運搬する際に、コンテナが傾いてしまい、落下や荷崩れする虞があるが、こうした不具合を解消でき、安全にコンテナを搬送することができる。
【0019】
また、図2、図4及び図5に示すように、テールストック9、移動ダイプレート3、4本のタイバー7などを、コンテナ13,15の底面に設置した架台16を介して動かぬよう保持した場合には、コンテナを搬送するに際し、保持したタイバー等の表面に傷が付かないよう防止することができると共にコンテナ13,15のバランスが崩れないよう確実に防止することができ、また、本実施例の射出成形機1においては、平板状で厚さの薄い軽量な安全ドア12を備えていることから、これをフレーム6の上部に載せることで第2のコンテナ14内に収容してもよい。なお、そのようにした際は、安全ドア12は軽量なため重心G2はそれほど変わらないものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】射出成形機を左側から視た状態を示す構成図である。
【図2】規格化された所定寸法を有する箱型の第1のコンテナ内にトグルリンク機構を保持したテールストックと移動ダイプレートとを収容した状態を示す断面図である。
【図3】規格化された所定寸法を有する箱型の第2のコンテナ内に固定ダイプレートを上部に固定したフレームとカバーとを収容した状態を示す断面図である。
【図4】規格化された所定寸法を有する箱型の第3のコンテナ内に射出ユニットとタイバーを収容した状態を示す断面図である。
【図5】タイバーを収容した状態の第3のコンテナを示すA−A線断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 射出成形機
2 可動金型
3 移動ダイプレート
4 固定金型
5 固定ダイプレート
6 フレーム
7 タイバー
8 トグルリンク機構
9 テールストック(保持プレート)
10 射出ユニット
11 カバー
13 第1のコンテナ(コンテナ)
14 第2のコンテナ(コンテナ)
15 第3のコンテナ(コンテナ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動金型が取り付けられる移動ダイプレートと、
固定金型が取り付けられる固定ダイプレートと、
該固定ダイプレートが上部に固定されたフレームと、
前記移動ダイプレートを型開閉方向に案内する複数のタイバーと、
屈曲されることにより前記移動ダイプレートを前記型開閉方向に進退させ、前記固定金型に対して前記可動金型を型開閉するトグルリンク機構と、
該トグルリンク機構を保持する保持プレートと、
前記トグルリンク機構を少なくとも覆うカバーと、
前記可動金型と前記固定金型との型閉じ時に形成されるキャビティに溶融樹脂を射出する射出ユニットとを主要な装置として備え、
これら主要な各種装置を規格化された3つのコンテナに全て収容する際、該3つのコンテナの各々の重量バランスが崩れないように、
第1のコンテナ内の前後には、前記トグルリンク機構を保持した保持プレートと、前記移動ダイプレートとを振り分けて収容し、
第2のコンテナ内の前後には、前記固定ダイプレートを固定したフレームと、前記トグルリンク機構を少なくとも覆うカバーとを振り分けて収容し、
第3のコンテナ内の前後には、前記射出ユニットと、前記複数のタイバーとを振り分けて収容することで、前記主要な各種装置を収容した第1〜第3のコンテナの前後の重量バランスが極端に偏らないようにしたことを特徴とする少数コンテナへの射出成形機の収容方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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