説明

尿検査試験紙

【課題】被験者が尿によって手を汚すことなく、且つ簡易な作業で高精度な尿検査を実施することができる尿検査試験紙を提供すること。
【解決手段】目視により判定する尿検査を行う為の尿検査試験紙1であって、少なくとも一つ以上の診断項目の判定の為の指標を検出する為に基板シート上に設けられた検出部6と、当該尿検査試験紙1が便器内壁面に設置された際に、該便器内壁面と上記検出部6とが接触しないように上記基板シート4の姿勢を支持する支持部10と、ユーザが当該尿検査試験紙1を保持する接着基板部4Bと、を具備し、水溶性材料から成ることを特徴とする尿検査試験紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査者等の目視により判定可能な尿検査を行う為の尿検査試験紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、一般的な健康診断方法として、尿中に含まれるブドウ糖、蛋白質、潜血、pH、アスコルギン酸、ケトン体、ウロビリノ−ゲン、及び亜硝酸塩等を検査し、該検査結果を病気の早期発見、診断、及び治療等に利用することが行われている。
【0003】
例えば、尿中のブドウ糖の量を測定することは、糖尿病の診断並びに管理に必要不可欠である。また、蛋白質の量の測定や潜血の有無を知ることは、肝臓疾患の早期発見、診断並びに治療に役立ち、pHについては、腎盂炎、膀胱炎等を引き起こす細菌の可能性を確認する有力な手段になると言われている。
【0004】
一般に尿中の各種成分を検査する方法としては、検尿容器に尿を採取し、尿成分と反応して発色する試薬を担持した尿検査試験紙を採取した尿に浸漬した後、当該尿検査試験紙の変色状態を肉眼で観察し、色見本(色調表)と比較して各種成分量を判定する方法が取られている。
【0005】
ところで、現在、尿成分の検査を家庭、ホテル、及び宿泊施設等のトイレ内において簡易に実施でき、且つ当該検査結果を即時に判断可能な尿検査器具及び方法が各種提案されている。
【0006】
例えば特許文献1には、尿中の複数の分析対象物を測定するために1個の支持体上に複数の試薬パッドを有して該複数の試薬パッドは支持体上に一列に配置されている多項目尿試験紙において、各試薬パッドに対応する判定時間が全ての試薬パッドで異なることを特徴とする多項目尿試験紙が提案されている。この特許文献1に開示された技術によれば、尿中の複数の分析対象物を測定するために1個の支持体上に複数の項目を一列に配置して有する多項目尿試験紙において、各項目の試薬パッドの呈色をあらかじめ規定された最適の判定時間で観察できる。
【0007】
また、特許文献2には、腰掛式水洗便器の便座の形状に倣って中央に開口部を形成した使い捨て便座シートの該開口部の放尿方向側の端縁部に帯状部を設け、該帯状部に尿が触れると発色反応する検査紙を貼着あるいは尿検査薬を塗布して便器内底部まで垂下させ、該便座に腰掛けて該垂下した帯状部に放尿して発色反応させることを特徴とする尿検査方法が提案されている。この特許文献2に開示された技術によれば、迅速に自己の健康状態を判断できる。
【特許文献1】特開平9−96635号公報
【特許文献2】特開2002−62291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に開示されている多項目尿試験紙によれば、被験者は棒状の支持体を手で把持し、該支持体上に設けられた試薬パッドに対して尿を掛けることで、各検査項目の検出を行う。または、上記支持体上に設けられた試薬パッドを、カップに採取した尿に漬けることにより、各検査項目の検出を行う。
【0009】
従って、特許文献1に開示されている多項目尿試験紙を用いる場合、尿を試験パッドに掛ける際、または尿をカップに採取する際に、当該尿が被験者の手に掛かる可能性がある。
【0010】
特許文献2に開示されている尿検査方法によれば、被験者は手を汚すこと無く尿検査を実施することができるものの、便器内に尿検査試験紙を設置する為、当該便器内の水によって尿検査試験紙が透けてしまう。つまり、使用する便器の色に応じて尿検査試験紙の色調が変化して見えてしまう為、検査結果の精度は良好であるとは言い難い。また、便座シートガイド板を用いる必要がある為、当該検査後における便座シートガイド板の洗浄等が必要となる。
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたものであり、被験者が尿によって手を汚すことなく、且つ簡易な作業で高精度な尿検査を実施することができる尿検査試験紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の態様による尿検査試験紙は、目視により判定する尿検査を行う為の尿検査試験紙であって、少なくとも一つ以上の診断項目の判定の為の指標を検出する為に基板シート上に設けられた検出部と、当該尿検査試験紙が便器内壁面に設置された際に、該便器内壁面と上記検出部とが接触しないように上記基板シートの姿勢を支持する支持部と、ユーザが当該尿検査試験紙を保持する為の保持部と、を具備し、水溶性材料から成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被験者が尿によって手を汚すことなく、且つ簡易な作業で高精度な尿検査を実施することができる尿検査試験紙を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る尿検査試験紙について、図面を参照して説明する。
【0015】
[第1実施形態]
図1(a)は、本第1実施形態に係る尿検査試験紙の一構成例を示す上面図である。図1(b)は、本第1実施形態に係る尿検査試験紙の一構成例を示す側面図である。
【0016】
図1(a),(b)に示すように、尿検査試験紙1は、検査基板部4Aと接着基板部4Bとを具備する基板シート4から成る。ここで、上記検査基板部4Aは、検出部6と、色調表8と、支持部10とを有する。他方、上記接着基板部4Bは、接着部12を有する。
【0017】
上記基板シート4は、水溶性の材質から成るシート状の基板である。
【0018】
上記検出部6は、水溶性の材料から成り且つ尿検査試薬が塗布等されており、被験者により尿を掛けられることで呈色反応を生じる。
【0019】
上記色調表8は、上記検出部6における色調変化を評価する為の基準となる色調表であり、上記検出部6に隣接して設けられている。
【0020】
上記支持部10は、上記基板シート4において上記検出部6及び上記色調表8が設けられている面とは逆側の面に、上記検出部6及び上記色調表8を取り囲む様に設けられており、水溶性の材料から成る厚さ数百μm〜数mmの部材である。詳細は後述するが、当該尿検査試験紙1は、便器内壁面において上記支持部10によってその姿勢が保持される。
【0021】
上記接着部12は、詳細は後述するが当該尿検査試験紙1を使用する際に当該尿検査試験紙1を便座部に固定する為の接着機能を有する部材であり、上記基板シート4(接着基板部4B)における上記支持部10が設けられている側の面に設けられている。
【0022】
なお、被験者は上記接着基板部4Bをつまんで上記接着部12を便座部から乖離させることで、当該尿検査試験紙1の設置のし直しをすることができる。
【0023】
ここで、上記支持部10は、上記基板シート4、上記検出部6、及び上記色調表8よりも水に溶けにくい材料で構成されている。このような構成により、当該尿検査試験紙1を用いた尿検査が完了するまで上記支持部10により上記基板シート4の姿勢が保持される。
【0024】
具体的には、上述の各部材を構成する材料の組み合わせとしては、例えば以下のような材料の組み合わせ例を挙げることができる。
【0025】
(基板シート4、検出部6、及び色調表8の材料例)パルプ繊維の不織布
(支持部10の材料例)澱粉糊
このように、上記支持部10の材料として澱粉糊を用いることで、水等により濡れている便器内壁面に上記支持部10が接触した際に、上記支持部10において適度な粘着性が生じ、この粘着性を有する支持部10によって当該便器内壁面に当該尿検査試験紙1を或る程度固定することができる。
【0026】
なお、尿検査試験紙1を構成する各部材は水溶性の材料で構成されており、使用後は水洗トイレに流して破棄することができる。従って、被験者は当該尿検査試験紙1を破棄する為に手を汚すことが無い。
【0027】
以下、図2(a),(b)を参照して、尿検査試験紙1を用いた尿検査の実施方法について説明する。図2(a)は実際に尿検査を実施する際の尿検査試験紙1を示す側面断面図であり、図2(b)は同斜視図である。なお、本第1実施形態においては、当該尿検査を実施する為に用いる便器として所謂洋式便器を想定する。
【0028】
まず、上記支持部10が便器内壁面53内に接触し、且つ上記接着部12が便座51に接触するように、尿検査試験紙1を設置する。このように設置することにより、図2(a),(b)に示すように、尿検査試験紙1は上記接着部12によって便座51に対して固定され、便器内壁面53においては上記支持部10によって支持される。ここで、支持部10が便器に貯められた水面より上方となるように接着基板部4Bの長さや接着部12の取付位置を適宜調整するのが好ましい。
【0029】
続いて、被験者は、上記検出部6に対して放尿する。その後、上記検出部6の色が変化して色調診断可能な状態になるまで待つ。そして、色調診断可能となるだけの時間が経過した後、被験者は、上記検出部6の色調を、上記検出部6に隣接して設けられた上記色調表8と比較することで診断を行う。
【0030】
上述した診断を終えると、被験者は、上記接着部12を上記便座51から剥がし、当該便器内に尿検査試験紙1全体を投入し、水を流して破棄する。
【0031】
以上説明したように、本第1実施形態によれば、被験者が尿によって手を汚すことなく、且つ簡易な作業で高精度な尿検査を実施することができる尿検査試験紙を提供することができる。
【0032】
より詳細には、本第1実施形態に係る尿検査試験紙によれば、被験者の放尿前に便器内に尿検査試験紙を設置でき、検査後も手で触れる作業を行わずに破棄できる為、尿が被験者の手に掛かる(付着する)可能性が無い。
【0033】
また、本第1実施形態に係る尿検査試験紙によれば、検出部6に隣接して設けられた色調表8によって、放尿後に検出部6の色調変化を、手を用いずに確認できる為、尿が被験者の手に付着する可能性が無い。
【0034】
さらには、本第1実施形態に係る尿検査試験紙によれば、上記支持部10によって上記基板シート4が上記便器内壁面53に対して密着せず、上記検出部6を目視する際に上記便器内壁面53の色の影響を受けない為、被験者の尿以外の要因によって上記検出部6の色調が変化して見えることがない。従って、高精度な尿検査を実施することができる。
【0035】
[第2実施形態]
以下、図3(a),(b),(c)を参照して、本発明の第2実施形態に係る尿検査試験紙を説明する。図3(a)は、本第2実施形態に係る尿検査試験紙の構成を示す上面図であり、図3(b),(c)は同側面図である。なお、説明の重複を避ける為、上記第1実施形態に係る尿検査試験紙との相違点を中心に説明する。
【0036】
上記第1実施形態に係る尿検査試験紙と本第2実施形態に係る尿検査試験紙との主な相違点は、上記接着基板部4B及び上記接着部12の有無である。
【0037】
すなわち、図3(a)乃至に(c)に示すように尿検査試験紙70は、基板シート4(第1実施形態に係る尿検査試験紙1における検査基板部4Aのみに相当)と、検出部6と、色調表8と、支持部10と、を具備する。
【0038】
上記検出部6と、上記色調表8とは、上記基板シート4上の同一の面に、互いに隣接するように設けられている。上記支持部10は、上記検出部6及び上記色調表8が設けられている面とは逆側の面に設けられている。
【0039】
ここで、上記支持部10は、被験者による放尿の勢いによって便器内壁面における設置位置がずれることが無い程度の粘着力を有する。
【0040】
そして、実際に当該尿検査試験紙70を便器内壁面53上に設置する際には、被験者は、図3(c)に示すように上記基板シート4の両端を指150でつまみ、上記支持部10を上記便器内壁面53上の所望の位置に当接させて設置する。
【0041】
以上説明したように、本第2実施形態によれば、上記第1実施形態に係る尿検査試験紙と同様の効果を奏する上に、より簡易に設置でき且つ小型化可能な尿検査試験紙を提供することができる。
【0042】
具体的には、本第2実施形態に係る尿検査試験紙70は、上記支持部10が、被験者の放尿時の尿によって上記便器内壁面53における設置位置からずれることが無い程度の粘着力を有している為、上記第1実施形態に係る尿検査試験紙1が具備する上記接着基板部4B及び接着部12を必要としない。これにより、上記第1実施形態に係る尿検査試験紙1に比べてより簡易な形状を採り且つ簡易に便座に設置することができ、更には小型化することも可能となる。
【0043】
[第3実施形態]
以下、図4を参照して、本発明の第3実施形態に係る尿検査試験紙を説明する。本第3実施形態に係る尿検査試験紙は、所謂和式便器を用いて尿検査を実施可能なように構成されている。
【0044】
図4は、本第3実施形態に係る尿検査試験紙の構成を示す側面図である。なお、説明の重複を避ける為、上記第2実施形態に係る尿検査試験紙との相違点を中心に説明する。
【0045】
上記第2実施形態に係る尿検査試験紙と本第3実施形態に係る尿検査試験紙との主な相違点は、上記支持部10の厚みである。すなわち図4に示すように、本第3実施形態に係る尿検査試験紙80では、上記支持部10の厚みは、当該便器内水溜り部に溜まった水55に上記検出部6が接触しない程度の厚みとなっている。例えば、上記支持部10の厚みは1cm程度とすればよい。
【0046】
以上説明したように、本第3実施形態によれば、所謂和式便器を用いて尿検査を行う場合であっても、上記第2実施形態に係る尿検査試験紙と同様の効果を奏する尿検査試験紙を提供することができる。
【0047】
具体的には、本第3実施形態に係る尿検査試験紙80では、上記支持部10の厚みが、便器内水溜り部に溜まった水55に上記検出部6が接触しない程度の厚みに構成されている為、例えば和式便器のように当該尿検査試験紙の設置部位に水が溜まっている場合であっても、上記検出部6が水に浸かることがなく、精度の良い尿検査を実施することができる。
【0048】
つまり、本第3実施形態に係る尿検査試験紙80では、例えば和式便器等の水溜り部を有する便器を用いて尿検査を行う場合であっても、高精度の尿検査を容易に実施することが可能となる。
【0049】
以上、第1実施形態乃至第3実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、種々の変形及び応用が可能なことは勿論である。
【0050】
例えば、上述した形態の便器以外の便器、すなわち他のあらゆる形態の便器に対しても第1実施形態乃至本第3実施形態を適用することができる。
【0051】
また、上述した第1実施形態乃至第3実施形態に係る尿検査試験紙の主旨に沿って適宜設計変更を行っても勿論よい。
【0052】
さらに、上述した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】(a)は本発明の第1実施形態に係る尿検査試験紙の一構成例を示す上面図、(b)は同側面図。
【図2】(a)は実際に尿検査を実施する際の尿検査試験紙を示す側面断面図、(b)は同斜視図。
【図3】(a)は、本発明の第2実施形態に係る尿検査試験紙の構成を示す上面図、(b),(c)は同側面図。
【図4】本発明の第3実施形態に係る尿検査試験紙の構成を示す側面図。
【符号の説明】
【0054】
1,70,80…尿検査試験紙、 4A…検査基板部、 4B…接着基板部、 4…基板シート、 6…検出部、 8…色調表、 10…支持部、 12…接着部、 51…便座、 53…便器内壁面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目視により判定する尿検査を行う為の尿検査試験紙であって、
少なくとも一つ以上の診断項目の判定の為の指標を検出する為に基板シート上に設けられた検出部と、
当該尿検査試験紙が便器内壁面に設置された際に、該便器内壁面と上記検出部とが接触しないように上記基板シートの姿勢を支持する支持部と、
ユーザが当該尿検査試験紙を保持する為の保持部と、
を具備し、
水溶性材料から成ることを特徴とする尿検査試験紙。
【請求項2】
上記検出部と上記支持部とは、上記基板シート上において互いに逆側の面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の尿検査試験紙。
【請求項3】
上記支持部は、上記検出部の周囲を取り囲む様に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の尿検査試験紙。
【請求項4】
上記支持部を構成する材料は、上記基板シートを構成する材料よりも水に溶けにくい材料であることを特徴とする請求項1に記載の尿検査試験紙。
【請求項5】
上記基板シートはパルプ繊維の不織布によって構成され、上記支持部は澱粉糊によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の尿検査試験紙。
【請求項6】
上記検出部近傍には、上記判定に用いる基準指標が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の尿検査試験紙。
【請求項7】
上記基準指標は色調表であることを特徴とする請求項6に記載の尿検査試験紙。
【請求項8】
上記保持部は、当該尿検査試験紙を便座に固定する為の接着部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の尿検査試験紙。
【請求項9】
上記支持部は、当該尿検査試験紙が便器内に設置された際に、該便器内に溜まった水と上記検出部とが接触しないように上記基板シートの姿勢を支持することを特徴とする請求項1に記載の尿検査試験紙。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−229214(P2009−229214A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−74365(P2008−74365)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】