説明

局側装置及びマルチキャスト制御方法

【課題】ONUの負荷が小さく、IPマルチキャストグループアドレスとIPソースアドレスの組による一意性を担保でき、IGMPv3やMLDv2のIPソースアドレスを含めたマルチキャストの識別が可能であり、過剰なマルチキャスト視聴開始要求によるDoS攻撃に対するセキュリティが強化されたOLT及びマルチキャスト制御方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るOLT及びマルチキャスト制御方法は、IPマルチキャストグループアドレスとIPソースアドレスをもとに静的または動的にマルチキャストチャネルを登録することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の端末側通信装置が1つの局側通信装置とパケット通信を行うネットワークで接続されたパケット通信システムにおいて、マルチキャスト通信を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のアクセス伝送方式では、IPv4、IPv6などの様々なプロトコルを転送するために、レイヤ3プロトコル種別に依存しないレイヤ2の転送機能を有する構成をとっている。レイヤ2の転送装置で構成されたネットワークにおいては、マルチキャスト通信のパケットは、ブロードキャストのパケットと同様に同一のセグメントに所属する端末全体に転送される。当該マルチキャストチャネルを視聴しない端末では、このようなマルチキャストパケットは端末にて破棄されるため、通常のLAN(Local Area Network)においては特に問題とならない。
【0003】
しかし、公衆網を構成するアクセスネットワークにおいては、他人が視聴中のマルチキャストパケットが、同一のアクセスネットワークに収容された他のユーザの端末まで転送されることとなる。このため、このような転送状況は、視聴行動を他人から秘匿する必要があるという観点、及びユーザ側ネットワークの帯域を無駄に消費するという観点から、好ましくない。
【0004】
そこで、マルチキャスト通信において、端末からの視聴要求に応じて転送を制御するために、第一の技術が提案されている(例えば、非特許文献1を参照。)。この第一の技術は、IPv4におけるIGMP(Internet Group Management Protocol)やIPv6におけるMLD(Multicast Listener Discovery)で視聴要求されたマルチキャストのみ当該要求を行った端末へ転送を行う。
【0005】
一方、上述のような転送状況は、広帯域公衆網において近年導入が進んでいるPON(Passive Optical Network)システムにおいても同様に発生する。
【0006】
従来の第一の技術をPONシステムに適用するには加入者側装置にレイヤ3機能であるIGMP/MLDプロキシ機能を配備する必要があり高価であるという課題を解決するため、第二の技術がある。
【0007】
第二の技術は、局舎側装置(OLT:Optical Line Terminal)がマルチキャスト管理テーブルを持つ。マルチキャスト管理テーブルは、マルチキャストMACアドレス、加入者側装置(ONU:Optical Network Unit)と接続される複数のPONポートを表すPONポート番号、VID(Virtual LAN ID)、ONUにおけるUNI(User Node Interface)ごとの論理リンクを表すLLID(Logical Link ID)の組が記載される。
【0008】
OLTとIPネットワークを接続するSNI(Service Node Interface)インタフェースからOLTにMAC(Media Access Control)フレームが入力されたとする。OLTは、MACフレームの宛先MACアドレスが上記マルチキャスト管理テーブルに記載されているマルチキャストアドレスならば、そのMACフレームに対応するVIDを付与し、そうでなければNull Tagを付与し、OLT内に具備されたレイヤ2スイッチを介しPONインタフェースのPONポートへブリッジ転送する。その後、OLTは、PONポートごとに、前記マルチキャスト管理テーブルに記載されているPONポートに対応するVIDのMACフレームもしくはNull TagのMACフレームのみを透過し、透過したMACフレームをONUへマルチキャストする。
【0009】
また、OLTは、ONUからのIGMP(Internet Group Management Protocol)などのマルチキャスト制御メッセージを覗き見(スヌーピング)して次のように動作する。
(1)当該メッセージが視聴開始要求であり、当該マルチキャストアドレスが既にマルチキャスト管理テーブルに登録されているならば要求元LLIDを当該マルチキャストアドレス及びVIDに対応付けて登録する。
(2)当該メッセージが視聴開始要求であり、当該マルチキャストアドレスがマルチキャスト管理テーブルに登録されていないならば、要求されたマルチキャストアドレスに対応するVIDを新たに設定し、要求元LLIDと関連付けてマルチキャスト管理テーブルに登録する。
(3)当該メッセージが視聴離脱要求であり、当該マルチキャストアドレスを視聴中である他のLLIDがあるならば、マルチキャスト管理テーブルの要求されたマルチキャストアドレスの欄から要求元LLIDを削除する。
(4)当該メッセージが視聴離脱要求であり、当該マルチキャストアドレスを視聴中である他のLLIDがないならば、マルチキャスト管理テーブルの要求されたマルチキャストアドレスの欄を削除する。
【0010】
ONUは、LLIDと対応付けられたVIDフィルタリング部を有し、転送されてきたMACフレームに付与されたVIDが自身に設定されたVIDもしくはNull Tagである場合にそのMACフレームを受信する。OLTは、マルチキャスト管理テーブルに登録されたLLIDを有するONUに当該LLIDに対応付けられたVIDを持つMACフレームを透過するよう通知する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】RFC4605 Internet Group Management Protocol (IGMP) /Multicast Listener Discovery (MLD)−Based Multicast Forwarding (“IGMP/MLD Proxying”)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、IPv4やIPv6においては、IPマルチキャストグループアドレスの宛先MACアドレスへのマッピングにおいて一意性が保証されない。このため、第二の技術には、IPv4やIPv6において制御対象とするマルチキャストと異なるマルチキャストをUNI配下に転送すること、あるいは転送すべきマルチキャストを遮断してしまうこと、があるという第1の課題がある。
【0013】
また、IP通信においてはOSPF(Open Shortest Path First)、NTP(Network Time Protocol)、VRRP(Virtual Router Redundancy Protocol)、NDP(Neighbor Discovery Protocol)、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)など多数のプロトコルがマルチキャストを用いており、通常これらのマルチキャストに関してONUはマルチキャスト視聴開始要求信号及びマルチキャスト視聴離脱要求信号を送信しない。第二の技術は、視聴開始/離脱信号を発するマルチキャストに対してのみVID設定を行うので、上述のようなマルチキャストの転送を遮断することがあるという第2の課題がある。
【0014】
また、IGMPv3(IGMP version3)やMLDv2(Multicast Listener Discovery version2)では、IPマルチキャストグループアドレスとIPソースアドレスの組でマルチキャストチャネルを指定する。第二の技術は、SNIに入力されるMACフレームの宛先MACアドレスとVIDを対応づけるため、IGMPv3やMLDv2のIPソースアドレスを含めたマルチキャストの識別ができないという第3の課題がある。
【0015】
さらに、第二の技術は、マルチキャスト制御メッセージで要求されたマルチキャストを選別することなく新たにマルチキャスト管理テーブルに登録していく。このため、第二の技術は、過剰なマルチキャスト視聴開始要求などのDoS(Denial of Services)攻撃があった際にはテーブル溢れにより制御不能となる可能性があり、DoS攻撃に関わるセキュリティを強化しなければならないという第4の課題がある。
【0016】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、ONUの負荷が小さく、IPマルチキャストグループアドレスとIPソースアドレスの組による一意性を担保でき、IGMPv3やMLDv2のIPソースアドレスを含めたマルチキャストの識別が可能であり、過剰なマルチキャスト視聴開始要求によるDoS攻撃に対するセキュリティが強化されたOLT及びマルチキャスト制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明に係るOLT及びマルチキャスト制御方法は、IPマルチキャストグループアドレスとIPソースアドレスをもとに静的または動的にマルチキャストチャネルを登録することとした。
【0018】
具体的には、本発明に係るOLTは、IPネットワークに接続するSNIと、複数のONUに接続するポートと、前記ONUが複数含まれるIPマルチキャストグループアドレスとIPソースアドレスの組からなるマルチキャストチャネルを設定し、予め指定された範囲の前記マルチキャストチャネル毎に予め定められたVIDを割り当て(静的設定)、他の範囲の前記マルチキャストチャネルに対して予め定められた範囲のVIDのいずれかを割り当て(動的設定)、前記マルチキャストチャネル毎に前記SNIと前記ポートとの間で信号を転送する制御部と、を備える。
【0019】
本発明に係るマルチキャスト制御方法は、ONUが複数含まれるIPマルチキャストグループアドレスとIPソースアドレスの組からなるマルチキャストチャネルを設定し、予め指定された範囲の前記マルチキャストチャネル毎に予め定められたVIDを割り当て(静的設定)、他の範囲の前記マルチキャストチャネルに対して予め定められた範囲のVIDのいずれかを割り当てる(動的設定)。
【0020】
OLTは、ONUに対しVIDフィルタを制御し、これにより転送制御を行うため、ONUにプロキシを搭載する必要がなくなる。従って、本願のOLT及びマルチキャスト制御方法もONUの負荷を減少することができる。
【0021】
本願のOLT及びマルチキャスト制御方法は、IPマルチキャストグループアドレスとIPソースアドレスの組によりマルチキャストチャネル識別を行い、それらIPマルチキャストグループアドレスとIPソースアドレスの組に対応付けられたVIDを用いてONUのVIDフィルタを制御するという転送制御を行う。この転送制御は、制御対象とするマルチキャストと異なるマルチキャストをUNI配下に転送すること、及び転送すべきマルチキャストを遮断することを防止する。
【0022】
さらに、本願のOLT及びマルチキャスト制御方法の前記転送制御は、マルチキャスト視聴開始要求信号及びマルチキャスト視聴離脱要求信号を送信しないマルチキャストの転送の遮断を防ぐことができる。
【0023】
さらに、本願のOLT及びマルチキャスト制御方法の前記転送制御は、IPソースアドレスを含めたマルチキャストの識別が可能である。
このように、本願のOLT及びマルチキャスト制御方法は、第1から第3の課題を解決することができる。
【0024】
特定のマルチキャストチャネルへは静的にVIDを割当て、別の特定のマルチキャストチャネルへはVIDの範囲を限定してVIDを割り当てることで、過剰なマルチキャスト視聴要求があっても、あらかじめ指定された範囲を超えてVIDは増大せず、過剰なマルチキャスト視聴開始要求によるDoS攻撃に対するセキュリティが強化されたマルチキャスト転送を実現することができる。
このように、本願のOLT及びマルチキャスト制御方法は、第4の課題を解決できる。
【0025】
従って、本発明は、ONUの負荷が小さく、IPマルチキャストグループアドレスとIPソースアドレスの組による一意性を担保でき、IGMPv3やMLDv2のIPソースアドレスを含めたマルチキャストの識別が可能であり、過剰なマルチキャスト視聴開始要求によるDoS攻撃に対するセキュリティが強化されたOLT及びマルチキャスト制御方法を提供することができる。
【0026】
本発明に係るOLT及びマルチキャスト制御方法は、前記ONUからの設定要求で前記マルチキャストチャネルを設定し、前記ONUからの離脱要求で前記マルチキャストチャネルを解除することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、ONUの負荷が小さく、IPマルチキャストグループアドレスとIPソースアドレスの組による一意性を担保でき、IGMPv3やMLDv2のIPソースアドレスを含めたマルチキャストの識別が可能であり、過剰なマルチキャスト視聴開始要求によるDoS攻撃に対するセキュリティが強化されたOLT及びマルチキャスト制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係るOLTを説明する図である。
【図2】マルチキャスト視聴管理情報テーブルを説明する図である。
【図3】マルチキャストチャネル設定管理情報テーブルを説明する図である。
【図4】本発明に係るマルチキャスト制御方法を説明するフロー図である。
【図5】本発明に係るマルチキャスト制御方法を説明するフロー図である。
【図6】本発明に係るマルチキャスト制御方法を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0030】
図1は、OLT301を説明する図である。OLT301は、IPネットワークに接続するSNI11と、複数のONU(不図示)に接続するポート12と、ONUが複数含まれるIPマルチキャストグループアドレスとIPソースアドレスの組からなるマルチキャストチャネルを設定し、予め指定された範囲の前記マルチキャストチャネル毎に予め定められたVIDを割り当て、他の範囲の前記マルチキャストチャネルに対して予め定められた範囲のVIDのいずれかを割り当て、前記マルチキャストチャネル毎に前記SNIと前記ポートとの間で信号を転送する制御部(不図示)と、を備える。
【0031】
OLT301は、制御部の指示に基づき動作する、ポート12を含むONU側インタフェース13、SNI11、マルチキャスト視聴要求信号読み取り機能14、マルチキャスト設定管理情報テーブル15、マルチキャストチャネル判定機能16、マルチキャスト視聴管理情報テーブル17、VLANタグ設定機能18、及びVIDフィルタ設定機能19を有する。なお、ONU側インタフェース13は、単一のポート12の場合と複数のポート12の場合がある。さらに、ポート12は、単一のONUが接続する場合と、複数のONUの光信号が光スプリッタで合分岐する構造のPONが接続する場合がある。
【0032】
マルチキャスト視聴要求信号読み取り機能14は、ONU側からのマルチキャスト制御信号を読み取る。マルチキャスト設定管理情報テーブル15は、IPマルチキャストグループアドレス(以下Gと表す)とIPソースアドレス(以下Sと表す)の範囲に対しあらかじめ設定されたVIDを管理する。
【0033】
ONUは、自身のLLID、SとGの組(以下<S、G>と表す)を用いた視聴開始要求または視聴離脱要求のマルチキャスト制御信号を送信する。マルチキャストチャネル判定機能16は、このマルチキャスト制御信号に含まれるLLID及び<S、G>とマルチキャスト設定管理情報テーブル15に保存されている<S、G>とを比較し、マルチキャスト視聴管理情報テーブル17に書き込む。
【0034】
マルチキャスト視聴管理情報テーブル17は、宛先IPアドレス(以下DAと表す)、送信元IPアドレス(以下SAと表す)、VID、LLIDの組を対応付けて管理する。VLANタグ設定機能18は、マルチキャスト視聴管理情報テーブル17で保存されている情報をもとにSNI11から入力されたパケットにVLANタグを設定する。
【0035】
VIDフィルタ設定機能19は、マルチキャスト視聴管理情報テーブル17で保存されている情報をもとにONUが有するVIDフィルタの動作を制御する。VIDフィルタ設定機能19の制御で、視聴開始要求をしたONU以外のONUに転送されたパケットはVIDフィルタで廃棄されるため、視聴開始要求をしたONUのみ前記パケットを受信できる。
【0036】
図2は、マルチキャスト視聴管理情報テーブル17の例である。図2において、iiii:iiii:iiii:iiiiからxxxx:xxxx:xxxx:xxxxはIPアドレスを表している。マルチキャスト視聴管理情報テーブル17は、DA及びSAの組に対しVIDを対応付け、さらに、当該マルチキャストを視聴中のLLIDも対応付けて管理する。
【0037】
VLANタグ設定機能18は、SNI11から入力されたパケットのDA及びSAがマルチキャスト視聴管理情報テーブル17に記憶されているならば、対応するVIDをもつVLANタグを当該パケットに設定し、そうでなければNullタグを設定する。
【0038】
VIDフィルタ設定機能19は、マルチキャスト視聴管理情報テーブル17で記載されているLLIDに対応するVIDをもつパケットを透過設定とするよう当該LLIDと対応するONUへ通知する。
【0039】
マルチキャスト視聴要求信号読み取り機能14は、ONU側インタフェース13から入力されたマルチキャスト視聴要求信号を読み取る。そして、マルチキャスト視聴要求信号読み取り機能14は、当該マルチキャスト視聴要求信号を送出したONUに対応するLLIDと、制御対象の<S、G>と、視聴開始要求または視聴離脱要求である制御内容をマルチキャストチャネル判定機能16へ出力する。
【0040】
図3は、マルチキャストチャネル設定管理情報テーブル15の例である。図3において、aaaa:aaaa:aaaa:aaaaからzzzz:zzzz:zzzz:zzzzはIPアドレスを表す。本例では、
Gが
aaaa:aaaa:aaaa:aaaa〜hhhh:hhhh:hhhh:hhhh
及び
yyyy:yyyy:yyyy:yyyy〜zzzz:zzzz:zzzz:zzzz
の範囲を制御対象外としている。また、Gが
iiii:iiii:iiii:iiii〜jjjj:jjjj:jjjj:jjjj
であり、Sが
pppp:pppp:pppp:pppp〜uuuu:uuuu:uuuu:uuuu
である<S、G>を静的設定対象とし、それぞれに100〜199のVIDをあらかじめ設定している。Gが
kkkk:kkkk:kkkk:kkkk〜xxxx:xxxx:xxxx:xxxx
であり、Sが
pppp:pppp:pppp:pppp〜uuuu:uuuu:uuuu:uuuu
である<S、G>を動的設定対象とし、200〜299のいずれかのVIDを設定することが可能である。
【0041】
図2のマルチキャスト視聴管理情報テーブル17は、図3のマルチキャスト設定管理情報テーブル15の静的設定対象の<S、G>とVIDとの組を登録している。また、図2のマルチキャスト視聴管理情報テーブル17は、図3のマルチキャスト設定管理情報テーブル15の動的設定対象の<S、G>に設定されたVIDの組も登録している。
【0042】
図4〜図6は、OLT301のマルチキャスト制御方法を説明するフロー図である。このマルチキャスト制御方法はマルチキャストチャネル判定機能16が行う。マルチキャストチャネル判定機能16は、マルチキャスト視聴要求信号読み取り機能14からマルチキャスト視聴制御信号が入力されたとき(ステップS01)、制御対象の<S、G>をマルチキャスト設定管理情報テーブル15で検索する(ステップS02)。マルチキャストチャネル判定機能16は、制御対象の<S、G>に対応するVIDがNullであるならば処理を終了する(ステップS03、S99)。
【0043】
ステップS03でVIDがNullでない場合、マルチキャストチャネル判定機能16は、制御対象の<S、G>に対応するVIDが静的設定対象か静的設定対象かを判断する(ステップS11)。静的設定対象である場合、マルチキャストチャネル判定機能16は、視聴開始要求か視聴離脱要求かを判断する(ステップS12)。視聴開始要求であるならば、マルチキャストチャネル判定機能16は、マルチキャスト視聴管理情報テーブル17の当該<S、G>欄に要求元LLIDを書き込み、処理を終了する(ステップS13、S99)。一方、視聴離脱要求であるならば、マルチキャストチャネル判定機能16は、マルチキャスト視聴管理情報テーブル17の当該<S、G>欄から要求元LLIDを削除し、処理を終了する(ステップS14、S99)。
【0044】
ステップS11で制御対象の<S、G>に対応するVIDが動的設定対象である場合、マルチキャストチャネル判定機能16は、視聴開始要求か視聴離脱要求かを判断する(ステップS21)。視聴開始要求であるならば、マルチキャストチャネル判定機能16は、要求された<S、G>を視聴中のほかのLLIDがあるかマルチキャスト視聴管理情報テーブルを検索する(ステップS22)。ステップS23で当該<S、G>を視聴中のほかのLLIDがあるならば、マルチキャストチャネル判定機能16は、マルチキャスト視聴管理情報テーブル17が要求した<S、G>欄に要求元LLIDを書き込み、処理を終了する(ステップS24、S99)。一方、ステップS23で当該<S、G>を視聴中のほかのLLIDがないならば、マルチキャストチャネル判定機能16は、マルチキャスト設定管理情報テーブル15で指定されている動的設定対象のVIDの範囲で未使用のVIDがあるかマルチキャスト視聴管理情報テーブル17を検索する(ステップS25)。
【0045】
ステップS26で未使用の動的設定対象のVIDがあれば、マルチキャストチャネル判定機能16は、未使用の動的設定対象のVIDのうち一つを選び、当該<S、G>、VID、LLIDの組を視聴管理情報テーブルに書き込み、処理を終了する(ステップS26、S27、S99)。ステップS26で未使用の動的設定対象のVIDがなければ、マルチキャストチャネル判定機能16は処理を終了する(ステップS99)。
【0046】
ステップS21で視聴離脱要求であるならば、マルチキャストチャネル判定機能16は、要求された<S、G>を視聴中のほかのLLIDがあるかマルチキャスト視聴管理情報テーブル17を検索する(ステップS28)。ステップS29で当該<S、G>を視聴中のほかのLLIDがあるならば、マルチキャストチャネル判定機能16は、マルチキャスト視聴管理情報テーブル17の要求された<S、G>欄から要求元LLIDを削除し、処理を終了する(ステップS30、S99)。ステップS29で当該<S、G>を視聴中のほかのLLIDがないならば、マルチキャストチャネル判定機能16は、マルチキャスト視聴管理情報テーブルから<S、G>欄を削除し、終了する(ステップS31、S99)。
【0047】
以上の動作により、特定の静的制御対象である<S、G>に対してはあらかじめ対応するVIDが割り当てられ、当該<S、G>に対する視聴開始要求に応じて対応するLLIDに対してのみ当該<S、G>に対応するSA、DAをもつパケットがUNIから転送される。このとき、静的制御対象の<S、G>についてのVID数に関わるマルチキャスト視聴管理情報テーブル17のテーブル規模は、登録されたLLID数によるものを除き視聴開始要求に依存しない。
【0048】
一方、動的制御対象の<S、G>についてのVID数に関わるマルチキャスト視聴管理情報テーブル17のテーブル規模は、視聴開始要求に依存する。すなわち、視聴開始要求された<S、G>が多いほど、特に過剰な視聴開始要求によるDoS攻撃があった場合には必要なVID数が多くなる。しかし、OLT301は、動的制御対象である<S、G>に対応するVIDの範囲を限定している。このため、VID数に関わるマルチキャスト視聴管理情報テーブル17のテーブル規模が制限され、VIDの範囲内で視聴開始要求に応じて対応可能なLLIDに対してのみ当該<S、G>に対応するSA、DAをもつパケットがUNIから転送される。
【0049】
例えば、OLT301は、必ず転送しなければならない優先度の高いマルチキャストチャネルには静的にVIDを割当て、場合によっては配信できなくともよい優先度の低いマルチキャストチャネルには動的にVIDを割り当てるといった利用方法が可能となる。
【0050】
以上のように、OLT301は、視聴状態であるマルチキャストのみを視聴要求対象のUNI配下から転送し、特定のマルチキャストチャネルへは静的にVIDを割当て、別の特定のマルチキャストチャネルへは範囲を限定してVIDを割り当てることで、過剰なマルチキャスト視聴要求によるDoS攻撃に対するセキュリティが強化されたマルチキャスト転送を実現することができる。
【符号の説明】
【0051】
11:SNI
12:ポート
13:ONU側インタフェース
14:マルチキャスト視聴要求信号読み取り機能
15:マルチキャスト設定管理情報テーブル
16:マルチキャストチャネル判定機能
17:マルチキャスト視聴管理情報テーブル
18:VLANタグ設定機能
19:VIDフィルタ設定機能
301:OLT

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IPネットワークに接続するサービスノードインタフェース(SNI:Service Node Interface)と、
複数の加入者側装置(ONU:Optical Network Unit)に接続するポートと、
前記ONUが複数含まれるIPマルチキャストグループアドレスとIPソースアドレスの組からなるマルチキャストチャネルを設定し、予め指定された範囲の前記マルチキャストチャネル毎に予め定められたVID(Virtual LAN ID)を割り当て、他の範囲の前記マルチキャストチャネルに対して予め定められた範囲のVIDのいずれかを割り当て、前記マルチキャストチャネル毎に前記SNIと前記ポートとの間で信号を転送する制御部と、
を備える局側装置(OLT:Optical Line Terminal)。
【請求項2】
前記制御部は、
前記ONUからの設定要求で前記マルチキャストチャネルを設定し、前記ONUからの離脱要求で前記マルチキャストチャネルを解除することを特徴とする請求項1に記載のOLT。
【請求項3】
ONUが複数含まれるIPマルチキャストグループアドレスとIPソースアドレスの組からなるマルチキャストチャネルを設定し、予め指定された範囲の前記マルチキャストチャネル毎に予め定められたVIDを割り当て、他の範囲の前記マルチキャストチャネルに対して予め定められた範囲のVIDのいずれかを割り当てるマルチキャスト制御方法。
【請求項4】
前記ONUからの設定要求で前記マルチキャストチャネルを設定し、前記ONUからの離脱要求で前記マルチキャストチャネルを解除することを特徴とする請求項3に記載のマルチキャスト制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−4915(P2012−4915A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138680(P2010−138680)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】