説明

局所使用のためのバンコマイシン及びテイコプラニン無水製剤

本発明は、バンコマイシン、塩酸バンコマイシン、又はテイコプラニン、及びジメチルスルホキシドを含む局所使用のための医薬用無水製剤に関する。好ましい実施形態において、製剤は、さらに、1つ以上のグリコール及び/又はそのエーテル、及び場合により1つ以上のトリグリセリド脂肪酸及び/又はそのポリオキシエチレン誘導体を含む。局所使用のための無水製剤におけるジメチルスルホキシドの使用は、必要に応じて、高濃度及び高均質のバンコマイシン、塩酸バンコマイシン、又はテイコプラニンによって特徴付けられる製剤をもたらす。これらジメチルスルホキシド含有製剤は、また、経時的に非常に安定している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は局所使用のためのテイコプラニン、バンコマイシン及び塩酸バンコマイシンに基づく無水製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
バンコマイシン、塩酸バンコマイシン及びテイコプラニンは広い抗菌スペクトルを有する糖ペプチド抗生物質である。
【0003】
バンコマイシン及び塩酸バンコマイシンは、Mycropolysproa orientalis種の菌株により産生され、及びそれが産生される発酵もろみ液から分離される。これらの物質は、遊離塩基の形態でまたは塩酸塩の形態で治療に有効である。バンコマイシン及び塩酸バンコマイシンは、グラム陽性菌において適切な細胞壁合成を阻害することによって作用する。
【0004】
テイコプラニンは、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌及び大便連鎖球菌を含む、グラム陽性菌によって引き起こされる重篤感染症の治療及び予防において使用される抗生物質である。それは、類似のバンコマイシン抗菌スペクトルを有する、Actinoplanes teichomyceticusから抽出される糖ペプチド抗生物質である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO 02/04012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
テイコプラニン及び塩酸バンコマイシンは、水に非常に溶けやすく、有機溶媒にほとんど溶けない。この事実は、局所使用のための無水医薬組成物の調製を困難にし、これまで、高濃度及び高均質に分散して存在する抗生物質としてのテイコプラニン及び塩酸バンコマイシンの局所製剤は存在しない。
【0007】
WO 02/04012は、バンコマイシン及び塩酸バンコマイシン、1つ以上のグリコール及び/又はそのエーテル、1つ以上のトリグリセリド脂肪酸及び/又はそのポリオキシエチレン誘導体及びゲル化剤を含む局所使用のための無水医薬組成物を開示する。しかしながら、これらの製剤は、一定限度量の塩酸バンコマイシンのみの可溶化を許容する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
局所使用のための無水製剤におけるジメチルスルホキシドの使用が、必要に応じて、高濃度及び高均質のバンコマイシン、塩酸バンコマイシン、又はテイコプラニンによって特徴付けられる製剤をもたらすことが驚くべきことに発見された。これらジメチルスルホキシド含有製剤は、また、経時的に非常に安定している。
【0009】
本発明は、
a) バンコマイシン、塩酸バンコマイシン、又はテイコプラニン、
b) ジメチルスルホキシド
を含む、均一で安定した医薬用無水製剤を提供する。
【0010】
本発明の好ましい実施形態において、製剤はさらに
c) 1つ以上のグリコール及び/又はそのエーテル、
d) 場合により1つ以上のトリグリセリド脂肪酸及び/又はそのポリオキシエチレン誘導体を含む。
【0011】
バンコマイシン、塩酸バンコマイシン、又はテイコプラニンは、好ましくは、全組成物に対して0.1から20重量%、好ましくは0.5から15重量%に変化する量で存在する。塩酸バンコマイシンの場合、その量は、非常に好ましくは、全組成物に対して2から12重量%である。テイコプラニンの場合、その量は、非常に好ましくは、全組成物に対して0.5から5重量%で含まれる。
【0012】
ジメチルスルホキシド(DMSO、成分B))の存在は、必要に応じて、高濃度の抗生物質を含む、均一で安定した製剤を得るために必須である。水は、塩酸バンコマイシン及びテイコプラニンの優れた溶媒であるが、同時に、水はそれらの分解を助ける;一方、DMSOは、優れた溶媒特性を有するが、これらの化合物の分解を促進しない。ジメチルスルホキシドは、好ましくは、全組成物に対して1から80重量%、より好ましくは5から50重量%、非常に好ましくは全組成物に対して8から30重量%が含まれる量で存在する。
【0013】
グリコール及び/又はそのエーテルは、好ましくは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル及びそれらの組み合わせである。それらは、好ましくは、全組成物に対して10から95重量%、より好ましくは20から90重量%、非常に好ましくは30から85重量%が含まれる量で存在する。
【0014】
トリグリセリド脂肪酸及び/又はそのポリオキシエチレン誘導体は、存在する場合、好ましくは、C8、C10、C12、C14、C16、C18、C20トリグリセリド脂肪酸及び/又はそのポリオキシエチレン誘導体から成る群から選択され、ここで、ポリオキシエチレン部分は、好ましくは、200から10,000Daの分子量を有する。Labrasol(ポリエチレングリコールC8-10グリセリド)が特に好ましい。成分c)は、好ましくは、全組成物に対して0から30重量%、より好ましくは0から25重量%、非常に好ましくは0から20重量%が含まれる量で存在する。
【0015】
本発明の医薬製剤は、好ましくはゲル又は溶液の形態である。
【0016】
製剤がゲルの時、それはさらにゲル化剤を含む。ゲル化剤は、好ましくは、セルロースエステル又はセルロースエーテル、(メタ)アクリル酸又はそのエステルの(コ)ポリマー、キサンタンゴム、カラゲニンである。好ましいゲル化剤は、ペンタエリスリトール又はサッカロースのアリルエーテルと架橋した、アクリル酸ポリマーである、Carbopol(商標)である。ゲル化剤は、好ましくは、全組成物に対して0.1から20重量%、より好ましくは0.5から15重量%、非常に好ましくは0.5から5重量%が含まれる量で存在する。
【0017】
本発明の製剤は、さらに、局所製剤において一般に使用される他の成分、例えば、界面活性剤及び乳化剤、を含んでもよい。
【0018】
本発明で使用される界面活性剤は、好ましくは、非イオン性、陽イオン性及び陰イオン性である。好ましい非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンステアリルエーテルである。好ましい陽イオン性界面活性剤は、第四級アンモニウム塩である。好ましい陰イオン性界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウムである。
【実施例】
【0019】
塩酸バンコマイシン及びテイコプラニンのゲルの製造
抗生物質をDMSOに溶解させた。攪拌下で、プロピレングリコール及びTranscutol P(商標)をこの順番で溶液に添加して、添加後混合を10分間続けた。
【0020】
Carbopol(商標)を溶液に添加して、混合物をゲルが形成されるまで混合した。そのゲルを少なくとも18時間放置し、その後少なくとも1時間激しく攪拌した。
【0021】
[実施例1]
3%バンコマイシンゲル
100gの組成物:
・塩酸バンコマイシン 3g
・ジメチルスルホキシド 14g
・プロピレングリコール 70.4g
・Transcutol P(商標)(ジエチレングリコールモノエチルエーテル) 10g
・Carbopol(商標) 2.6g
【0022】
[実施例2]
5%バンコマイシンゲル
100gの組成物:
・塩酸バンコマイシン 5g
・ジメチルスルホキシド 18g
・プロピレングリコール 67g
・Transcutol P(商標)(ジエチレングリコールモノエチルエーテル) 8g
・Carbopol(商標) 2g
【0023】
[実施例3]
3%テイコプラニンゲル
100gの組成物:
・テイコプラニン 3g
・ジメチルスルホキシド 14
・プロピレングリコール 70.85g
・Transcutol P(商標)(ジエチレングリコールモノエチルエーテル) 10g
・Carbopol(商標) 2.15g
【0024】
[実施例4]
1%テイコプラニンゲル
100gの組成物:
・テイコプラニン 1g
・ジメチルスルホキシド 14g
・プロピレングリコール 72.7g
・Transcutol P(商標)(ジエチレングリコールモノエチルエーテル) 10g
・Carbopol(商標) 2.3g
【0025】
[実施例5]
10%バンコマイシン溶液
100gの組成物:
・塩酸バンコマイシン 10g
・ジメチルスルホキシド 25g
・プロピレングリコール 64.7g
・Transcutol P(商標)(ジエチレングリコールモノエチルエーテル) 0.3g
【0026】
塩酸バンコマイシンをDMSOに溶解させた。攪拌下で、プロピレングリコール及びTranscutol P(商標)をこの順番で溶液に添加して、添加後混合を15分間続けた。得られた溶液は透明であったが、これはバンコマイシンが完全に溶解したことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a. バンコマイシン、塩酸バンコマイシン、またはテイコプラニン、
b. ジメチルスルホキシド
を含む局所使用のための医薬用無水製剤。
【請求項2】
c. 1つ以上のグリコール及び/又はそのエーテル、
d. 場合により1つ以上のトリグリセリド脂肪酸及び/又はそのポリオキシエチレン誘導体
をさらに含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
ジメチルスルホキシドが、全組成物に対して1から80重量%が含まれる量で存在する、請求項1または2に記載の製剤。
【請求項4】
成分c)が、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項5】
ゲルの形態であり、さらにゲル化剤を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項6】
前記ゲル化剤が、セルロースエステル又はセルロースエーテル、(メタ)アクリル酸又はそのエステルの(コ)ポリマー、キサンタンゴム、カラゲニンから選択される、請求項5に記載のゲル。
【請求項7】
溶液の形態である、請求項1から4のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項8】
ジメチルスルホキシドの量が全組成物に対して5から50重量%、好ましくは8から30重量%で含まれる、請求項1から7のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項9】
塩酸バンコマイシンを2から12重量%で含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項10】
テイコプラニンを0.5から5重量%で含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の製剤。

【公表番号】特表2011−500864(P2011−500864A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531511(P2010−531511)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【国際出願番号】PCT/EP2008/064616
【国際公開番号】WO2009/056547
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(508133640)ファーマテックス・イタリア・エッセエッレエッレ (2)
【Fターム(参考)】