局所清浄化装置及びクリーンルーム
【課題】 製造機器の周辺を周囲の汚染から防護するとともに、製造機器自身から発生する汚染を他の領域に拡散させない。
【解決手段】 クリーンルーム内に設置された精密品製造機器24の周辺の空気を吸い込む中央吸気口42と、この中央吸気口42から吸い込んだ空気を清浄化するFFU44と、中央吸気口42を囲むように配置されてFFU44からの清浄空気を製造機器24に向けて送風する送風口52と、中央吸気口42に一端が接続し、他端が製造機器24側に伸長して開口した吸い込みダクト54とを具備している。また、チャンバ40には製造機器から離れた位置からのクリーンルーム内空気を取り込み可能な給気口56が接続している。
【解決手段】 クリーンルーム内に設置された精密品製造機器24の周辺の空気を吸い込む中央吸気口42と、この中央吸気口42から吸い込んだ空気を清浄化するFFU44と、中央吸気口42を囲むように配置されてFFU44からの清浄空気を製造機器24に向けて送風する送風口52と、中央吸気口42に一端が接続し、他端が製造機器24側に伸長して開口した吸い込みダクト54とを具備している。また、チャンバ40には製造機器から離れた位置からのクリーンルーム内空気を取り込み可能な給気口56が接続している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は局所清浄化装置及びクリーンルームに係り、精密品製造機器の周囲を局所的に清浄化する場合に好適な局所清浄化装置及びこの局所清浄化装置を配置したクリーンルームに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハなどの精密品を生産する場合には、精密品に空気中の塵埃やガス状のケミカル成分が付着すると製品不良の原因になる。このため、各種の処理、加工を行うための製造機器を高清浄に維持したクリーンルーム内に設置することが一般に行われている。しかしながら、製造機器を多数設置したクリーンルーム大空間を常に高清浄に維持するためには、クリーンルームの建設費、運転費が莫大となり、精密品の製造コストが増大する。そこで、近年にはミニエンバイロ方式のクリーンルームが採用されるようになってきた。
【0003】
図11はミニエンバイロ方式のクリーンルームを例示した側断面図である。本方式のクリーンルーム1は天井に設置するFFU(ファンフィルタユニット)3の台数を削減することによって内部の清浄度を緩和し、クリーンルーム1のコスト低減を図っている。半導体ウェハなどの精密品は密閉容器4に収納して搬送車5で搬送し、製造機器2への移載室(ミニエンバイロ室)6のみを局所的に高清浄することによって、精密品への塵埃やケミカル成分の付着を防ぐようにしている。この方式では通常時は精密品に対する環境を高清浄に保つことができる。しかしながら、製造機器2の保守作業のために製造機器2の内部を開放した場合には、清浄度が低いクリーンルーム雰囲気によって製造機器2の内部が汚染され、ひいては保守作業の後に取り扱われる精密品が汚染されるという問題がある。また、製造機器2自体も内部に反応生成物である塵埃や残留ガスなどを持つ。このため、製造機器2の内部を開放した際にこれらの物質がクリーンルーム1内に拡散して他の製造機器2や精密品を汚染させるという問題がある。
【0004】
特許文献1には製造機器からの汚染物質の拡散を防止するためのクリーンルームの構造が開示されている。図12にその概要を示す。クリーンルーム11は天井面の全面がフィルタユニット12で覆われており、空調機13によって温湿度を調和した空気を天井空間→クリーンルーム11→床下空間の順に循環させることにより、クリーンルーム11全体の清浄度が保たれている。クリーンルーム11内に熱気流などの上昇気流Wを発生させる製造機器15が配置された場合に、上昇気流Wに伴う汚染物質の拡散が懸念される。そこで製造機器15上方のフィルタユニット12の裏側に吸気口16を配し、この吸気口16に接続した吸気ファン18によって上昇気流Wを吸気口16から吸引する。吸気ファン18の吐出側には送風口17が配されており、吸気した気流を送風口17を介して下降気流Zとしてクリーンルーム11に戻す。
【0005】
このような構成によって、上昇気流Wの拡散を抑制する。また、上昇気流W中の汚染物質はフィルタユニット12を通過する際に除去され、清浄な下降気流Zが製造機器15の周囲を覆うエアカーテンとしての役割を果たす。
【特許文献1】特開平8−247512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたクリーンルーム11では、製造機器15からの上昇気流が無いか又は弱い場合には、図13に示したように吸気口16には送風口17から出た直近の空気Xが吸い込まれ、製造機器15の上方では滞留Yが生じ、製造機器15からの汚染を速やかに除去することができない欠点がある。滞留した気流の一部はやがて周辺の下降気流Zに誘引されて空調機13や他の製造機器へ流れ込んでクリーンルーム11全体の汚染を招くという欠点がある。
【0007】
本発明の目的は、上記従来技術の欠点を改善し、クリーンルーム内に設置された個々の精密品製造機器の周辺を周囲の汚染から防護するとともに、製造機器自身から発生する汚染を他の領域に拡散させない局所清浄装置並びにクリーンルームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明に係る局所清浄装置は、クリーンルーム内に設置された精密品製造機器の周辺の空気を吸い込む中央吸気口と、この中央吸気口から吸い込んだ前記空気を清浄化する空気清浄化手段と、前記中央吸気口を囲むように配置されて前記空気清浄化手段からの清浄空気を前記製造機器に向けて送風する送風口と、前記中央吸気口に一端が接続し、他端が前記製造機器側に伸長して開口した吸い込みダクトとを具備したことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る局所清浄装置は、前記空気清浄化手段には前記製造機器から離れた位置からの外部空気を取り込み可能な給気口が接続し、前記空気清浄化手段は当該給気口から取り込んだ外部空気と前記中央吸気口から吸い込んだ前記汚染空気の合流空気を清浄化して前記送風口に送り込むようにされたことを特徴とする。
【0010】
上記構成の局所清浄装置は、前記吸い込みダクトの有効口径をw、吸い込みダクトの平均吸い込み風速をv1、送風口の平均吹き出し風速をv2とした時に、前記吸い込みダクトの他端開口と前記製造機器の表面との距離dが式d≦2・w・v2/v1を満足するように調整されたことが望ましい。また、上記構成の局所清浄装置は、前記クリーンルーム内を移動可能にすることができる。
また、本発明に係るクリーンルームは、上記構成の局所清浄化装置が内部に配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の局所清浄化装置によれば、低清浄なクリーンルームであっても必要な箇所に本装置を固定配置又は移動配置することによって、製造機器の周辺を周囲の汚染から防護するとともに、製造機器自身から発生する汚染を他の領域に拡散させない。このため、製造機器の保守作業時などおいても製造機器の環境を高清浄に保つことができる。また、製造機器相互間の汚染の防止、作業者の安全の確保に有効である。さらに本発明のクリーンルームによれば、当該局所清浄化装置を必要な時にのみ稼動させるか、又は必要な箇所に移動して使用することができるので、クリーンルーム全体の清浄度を常時高く保つ必要がない。このため、クリーンルームの運転コストを削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は本発明に係る局所清浄化装置の第1実施形態を示す側断面図であり、図2は図1のA−A矢視断面図である。当該局所清浄化装置20は、図3に示したようにクリーンルーム22内に設置された精密品製造機器24の近傍に配置される。クリーンルーム22は例えばミニエンバイロ方式のクリーンルームであり、天井26には削減された数のFFU(ファンフィルタユニット)28が設置され、クリーンルーム22内に向けて清浄空気を吹き出す。この清浄空気は通気性の床面30を通過した後に、大部分は循環路32から天井空間に戻り、一部は空調機34によって温湿度が調整された後にダクト35を介して天井空間に戻り、FFU28によって清浄空気として循環される。
【0013】
局所清浄化装置20は製造機器24の直上位置に支持部材36によってクリーンルーム22の天井26から吊り下げられる。当該局所清浄化装置20は箱状のチャンバ40の下面中央部に中央吸気口42を有し、この中央吸気口42を取り囲むようにして空気清浄化手段である4基のFFU44がチャンバ40内に収められている。各FFU44は上部のファン46の下方にケミカルフィルタ48、エアフィルタ50を積層した構成とされる。エアフィルタ50の下面は送風口52とされ、この送風口52からFFU44によって清浄化された清浄空気が製造機器24に向けて下向きに送風される。中央吸気口42には吸い込みダクト54の一端がスライド自在に接続し、この吸い込みダクト54の他端が製造機器側に伸長して開口している。吸い込みダクト54の他端開口と製造機器24の表面との距離dは、吸い込みダクト54の一端を上下方向にスライドさせることによって調整することができる。
【0014】
チャンバ40の上面中央部には給気口56が設けられ、製造機器24から離れた位置からのクリーンルーム22内の空気を取り込み可能とされる。給気口56にはダンパ58が取り付けられており、ダンパ58の開度を変化させることによって、給気口56からの空気取り込み量を調整することができる。
【0015】
上記構成の局所清浄化装置20は製造機器24から汚染空気が臨時的又は継続的に発生する際に主に稼動させる。すなわち、保守作業などのために製造機器24の内部を開放した際に、製造機器24から汚染空気が発生する。又は製造機器24が定常運転している際でも継続的に製造機器24から汚染空気が発生する場合がある。したがって、このような汚染空気が当該製造機器24からクリーンルーム22全体に拡散しないように局所清浄化装置20を稼動させる。このため、局所清浄化装置20は製造機器24の汚染空気発生部24Aの直上に位置するように予め配置される。
【0016】
局所清浄化装置20を稼動させる際には吸い込みダクト54の他端開口を汚染空気発生部24Aになるべく接近させる。次いで各FFU44のファン46を駆動する。すると、汚染空気発生部24Aで発生した汚染空気は吸い込みダクト54の他端開口から吸い込みダクト54内に吸い込まれ、中央吸気口42から各FFU44を通過し、送風口52に送られる。汚染空気はFFU44を通過する際に汚染空気中の有害ガス成分がケミカルフィルタ48に、塵埃がエアフィルタ50によって除去されて、清浄空気となる。この清浄空気は送風口52から製造機器24に向けて下向きに送風され、エアカーテンを形成するとともに、その大部分が再び中央吸気口42に吸い込まれる。その結果、汚染空気発生部24Aで発生した汚染空気は清浄空気によるエアカーテンに囲まれた状態となり、汚染空気がクリーンルーム22全体へ拡散することを防止する。なお、吸い込みダクト54は汚染空気発生部24Aで発生した汚染空気を確実に吸い込む機能以外に、外面が仕切り板の役目を果たし、送風口52から吹き出した清浄空気を外面に沿って確実に下方へ案内する。
【0017】
給気口56は中央吸気口42から吸い込む汚染空気の量を調整する場合に有効である。FFU44は給気口56から取り込んだ外部空気と中央吸気口42から吸い込んだ汚染空気の合流空気を清浄化して送風口52に送り込む。給気口56に設けたダンパ58の開度を大きくすると、製造機器24から離れた位置からのクリーンルーム22内の空気が給気口56から多量にチャンバ40内に吸い込まれ、その分、中央吸気口42から吸い込む汚染空気の量が減少する。逆に、ダンパ58の開度を小さくすると、給気口56からチャンバ40内に吸い込まれる空気量が少なくなり、その分、中央吸気口42から吸い込む汚染空気の量が増加する。
【0018】
したがって、汚染空気発生部24Aで発生する汚染空気量が少ないか、又は汚染空気の汚染度が低い場合には、ダンパ58の開度を大きくして中央吸気口42から吸い込む汚染空気の量を減少させる。すると、製造機器24の上方で内部循環する空気量が減少し、製造機器24の周囲を下方に流れる清浄空気Bの量を増やすことができ、この清浄空気Aが製造機器24を大きく包み込んで清浄環境を保持する。逆に、汚染空気発生部24Aで発生する汚染空気量が多いか、又は汚染空気の汚染度が高い場合には、ダンパ58の開度を小さくして中央吸気口42から吸い込む汚染空気の量を増加させる。すると、発生した汚染空気を確実に中央吸気口42から吸い込むことができ、汚染空気の外部拡散を防ぐ。
【0019】
実験検討結果によれば、前記した吸い込みダクト54の他端開口と製造機器24の表面との距離dは、吸い込みダクト54の有効口径をw、吸い込みダクト54の平均吸い込み風速をv1、送風口52の平均吹き出し風速をv2とした時に、式d≦2・w・v2/v1を満足するように調整することが望ましい。上記関係式において吸い込みダクト54の有効口径とは、ダクト断面形状が正方形の場合には各辺の幅、長方形の場合には長辺と短辺の平均幅、円形の場合には直径である。上記関係式を満足させると吸い込みダクト54による汚染空気の吸い上げを比較的円滑に行うことができる。上記関係式を満足させるためには、主に2通りのアプローチ法がある。第1の方法は吸い込みダクト54を上下方向にスライドさせて、距離dを直接に調整する方法である。第2の方法は給気口56に設けたダンパ58の開度を調整する方法である。前記したようにダンパ58の開度を調整することによって、中央吸気口42から吸い込む汚染空気の量、すなわち吸い込みダクト54の平均吸い込み風速v1を増減させることができる。したがって、ダンパ58の開度の調整によって間接的に距離dを調整することができる。
【0020】
ただし、製造機器24の形状は様々であり、汚染空気発生部24Aの形状、拡がりも様々であるたため、上記関係式が常に成り立つわけではない。その際には、この関係式を目安にして、距離dやダンパ58の開度を適宜に調整すればよい。
【0021】
上記説明では局所清浄化装置20の稼動状況として、製造機器24から汚染空気が発生し、この発生した汚染空気をクリーンルーム22の他の領域に拡散させない場合について説明した。しかしながら、本実施形態に係る局所清浄化装置20はクリーンルーム22の環境が何らかの原因で汚染している際に、製造機器24をクリーンルーム22の汚染環境から保護する場合にも役立つ。この場合には給気口56のダンパ58を全開にして、給気口56からの空気取り込み量を相対的に多くし、中央吸気口42からの空気吸い込み量を少なくした運転を行う。すると給気口56からの空気取り込み量に相当した量の清浄空気Aが製造機器24を大きく包み込むことになり、製造機器24をクリーンルーム22の汚染環境から保護する。
【0022】
上述のとおり、本実施形態の局所清浄化装置20によればクリーンルーム22内に設置された精密品製造機器24の周辺を周囲の汚染から防護するとともに、製造機器24自身から発生する汚染を他の領域に拡散させない。
【0023】
図4は本発明の第2実施形態の要部を示す斜視図である。中央吸気口42Aを挟んで2基のFFU44Aを配置し、中央吸気口42Aの残りの2辺には閉止板60が取り付けてある。中央吸気口42Aの下方には吸い込みダクト54Aが接続している。他の構成は前記第1実施形態と同様である。すなわち、中央吸気口42Aの周囲全体をFFU44Aで囲わずに、一部省略している。この実施形態では閉止板60の下方領域に送風口52Aからの清浄空気が行き渡らない可能性がある。そこで送風口52Aの一部に傾斜送風部62を設けている。これによって、閉止板60の下方領域にも清浄空気が行き渡ることになり、周囲からの汚染の侵入を防止できる。
【0024】
図5は本発明の第3実施形態の要部を示す側断面図である。第1実施形態と同様にチャンバ40Bの中央に中央吸気口42Bを配置し、この中央吸気口42Bを囲むようにして送風口52Bが設けられている。中央吸気口42Bにはファン64を配し、送風口52B側にはケミカルフィルタ48Bとエアフィルタ50Bを配置している。この実施形態の構造ではファン64は中央吸気口42Bから吸い込んだ空気をチャンバ40Bの内部に向けて送風するので、チャンバ40Bの内部は外部に対して陽圧になる。このため、第1実施形態で示したような給気口56を設けて外部空気を取り込むことはできないが、1台のファン64のみで吸気と送風ができるので装置の軽量化とコスト低減を図ることができる。
【0025】
図6は本発明の第4実施形態の要部を示す側断面図である。この実施形態も第1実施形態と同様にチャンバ40Cの中央に中央吸気口42Cを配置し、この中央吸気口42Cを囲むようにして送風口52Cが設けられている。中央吸気口42Cの上方にファン64C、ケミカルフィルタ48C、エアフィルタ50Cで構成された1台のFFU44Cを配置し、このFFU44Cによって吸気、空気清浄化及び送風を行う。この第4実施形態によれば、より一層、装置の軽量化とコスト低減を図ることができる。
【0026】
図7は本発明の第5実施形態の要部を示す側断面図である。この実施形態も第4実施形態と同様に中央吸気口42Dに1台のFFU44Dを配置し、このFFU44Dによって吸気、空気清浄化及び送風を行う。チャンバ40D内には気流方向を滑らかに案内する案内板66が設置されている。また、中央吸気口42Dの周囲を閉止板60Dで囲み、送風口52Dが閉止板60Dの外側に狭い面積で開口している。このような構成によって、送風口52Dからの清浄空気の吹き出し風速を大きくし、エアカーテン効果を増強するとともに、製造機器側の吸気範囲を拡大することができる。なお、閉止板60Dが設置された内側部分を閉止板60Dに替えて通気抵抗の大きい送風口とし、その周辺を通気抵抗の小さい送風口52Dとすれば、清浄空気の下降気流に乱れが発生しにくくなるのでより一層、有効である。
【0027】
図8は本発明の第6実施形態の要部を示す側断面図である。この実施形態も第4実施形態と同様に中央吸気口42Eに1台のFFU44Eを配置し、このFFU44Eによって吸気、空気清浄化及び送風を行う。チャンバ40Eを覆うように外周チャンバ68が設けられ、この外周チャンバ68の上面中央に第2のFFU70が取り付けられている。第2のFFU70はクリーンルーム内の外部空気を取り込んで清浄化し、この清浄空気をチャンバ40Eの外周部に形成された吹き出し口72から下降気流として吹き出す。この第6実施形態によれば、下方の製造機器側に吹き出す清浄空気量が増加するので、より一層、周辺を周囲の汚染から防護するとともに、製造機器24自身から発生する汚染を他の領域に拡散させない。
【0028】
図9は本発明の第7実施形態を示す側面図である。この実施形態の係る局所清浄化装置の主要部80は第1実施形態と同様であるので、図1に図示したものと同一の符号を付して説明を省略する。この局所清浄化装置は主要部80を複数本の支柱74で支持するとともに、支柱74の下端に車輪76を取り付け、クリーンルームの床面78を移動可能にしたものである。この第7実施形態によれば、保守作業などを必要とする製造機器24の位置に当該局所清浄化装置を移動し、その機能を発揮させることができる。このため、個々の製造機器24に対応した局所清浄化装置を設置する必要がなく、コスト低減に寄与する。本実施形態は床面78を移動可能な局所清浄化装置としたが、これに替えてクリーンルームの天井面に走行用のレールを配し、主要部80を天井面に沿って移動可能な構成としてもよい。
【0029】
図10は本発明の第8実施形態を示す側面図である。この実施形態の係る局所清浄化装置は主要部90が前記各実施形態のものに対して90度、起立しており、この主要部90が支柱92によって支持されている。主要部90は第1実施形態と同様であるので、図1に図示したものと同一の符号を付して説明を省略する。この第8実施形態の局所清浄化装置は、製造機器94の開放面が横向きであるような場合に好適に利用される。当該局所清浄化装置の支柱92に車輪を付けてクリーンルーム内を移動可能にすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態を示す側断面図である。
【図2】図1のA−A矢視断面図である。
【図3】第1実施形態に係る局所清浄化装置が設置されたクリーンルームの側断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態の要部を示す側断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態の要部を示す側断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態の要部を示す側断面図である。
【図7】本発明の第5実施形態の要部を示す側断面図である。
【図8】本発明の第6実施形態の要部を示す側断面図である。
【図9】本発明の第7実施形態を示す側面図である。
【図10】本発明の第8実施形態を示す側面図である。
【図11】ミニエンバイロ方式のクリーンルームを例示した側断面図である。
【図12】特許文献1に開示されたクリーンルームの概要を示す側断面図である。
【図13】特許文献1に開示されたクリーンルームの技術課題を説明するための側断面図である。
【符号の説明】
【0031】
20………局所清浄化装置、22………クリーンルーム、24………製造機器、24A………汚染空気発生部、26………天井、28………FFU、30………床面、32………循環路、34………空調機、35………ダクト、36………支持部材、40,40B,40C,40D,40E………チャンバ、42、42A,42B,42C,42D,42E………中央吸気口、44,44A,44C,44D,44E………FFU、46,46C………ファン、48,48B,48C………ケミカルフィルタ、50,50B,50C………エアフィルタ、52,52A,52B,52C,52D………送風口、54,54A………吸い込みダクト、56………給気口、58………ダンパ、60………閉止板、62………傾斜送風部、64………ファン、66………案内板、68………外周チャンバ、70………第2のFFU、72………吹き出し口、74………支柱、76………車輪、78………床面、80、90………主要部、92………支柱、94………製造機器。
【技術分野】
【0001】
本発明は局所清浄化装置及びクリーンルームに係り、精密品製造機器の周囲を局所的に清浄化する場合に好適な局所清浄化装置及びこの局所清浄化装置を配置したクリーンルームに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハなどの精密品を生産する場合には、精密品に空気中の塵埃やガス状のケミカル成分が付着すると製品不良の原因になる。このため、各種の処理、加工を行うための製造機器を高清浄に維持したクリーンルーム内に設置することが一般に行われている。しかしながら、製造機器を多数設置したクリーンルーム大空間を常に高清浄に維持するためには、クリーンルームの建設費、運転費が莫大となり、精密品の製造コストが増大する。そこで、近年にはミニエンバイロ方式のクリーンルームが採用されるようになってきた。
【0003】
図11はミニエンバイロ方式のクリーンルームを例示した側断面図である。本方式のクリーンルーム1は天井に設置するFFU(ファンフィルタユニット)3の台数を削減することによって内部の清浄度を緩和し、クリーンルーム1のコスト低減を図っている。半導体ウェハなどの精密品は密閉容器4に収納して搬送車5で搬送し、製造機器2への移載室(ミニエンバイロ室)6のみを局所的に高清浄することによって、精密品への塵埃やケミカル成分の付着を防ぐようにしている。この方式では通常時は精密品に対する環境を高清浄に保つことができる。しかしながら、製造機器2の保守作業のために製造機器2の内部を開放した場合には、清浄度が低いクリーンルーム雰囲気によって製造機器2の内部が汚染され、ひいては保守作業の後に取り扱われる精密品が汚染されるという問題がある。また、製造機器2自体も内部に反応生成物である塵埃や残留ガスなどを持つ。このため、製造機器2の内部を開放した際にこれらの物質がクリーンルーム1内に拡散して他の製造機器2や精密品を汚染させるという問題がある。
【0004】
特許文献1には製造機器からの汚染物質の拡散を防止するためのクリーンルームの構造が開示されている。図12にその概要を示す。クリーンルーム11は天井面の全面がフィルタユニット12で覆われており、空調機13によって温湿度を調和した空気を天井空間→クリーンルーム11→床下空間の順に循環させることにより、クリーンルーム11全体の清浄度が保たれている。クリーンルーム11内に熱気流などの上昇気流Wを発生させる製造機器15が配置された場合に、上昇気流Wに伴う汚染物質の拡散が懸念される。そこで製造機器15上方のフィルタユニット12の裏側に吸気口16を配し、この吸気口16に接続した吸気ファン18によって上昇気流Wを吸気口16から吸引する。吸気ファン18の吐出側には送風口17が配されており、吸気した気流を送風口17を介して下降気流Zとしてクリーンルーム11に戻す。
【0005】
このような構成によって、上昇気流Wの拡散を抑制する。また、上昇気流W中の汚染物質はフィルタユニット12を通過する際に除去され、清浄な下降気流Zが製造機器15の周囲を覆うエアカーテンとしての役割を果たす。
【特許文献1】特開平8−247512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたクリーンルーム11では、製造機器15からの上昇気流が無いか又は弱い場合には、図13に示したように吸気口16には送風口17から出た直近の空気Xが吸い込まれ、製造機器15の上方では滞留Yが生じ、製造機器15からの汚染を速やかに除去することができない欠点がある。滞留した気流の一部はやがて周辺の下降気流Zに誘引されて空調機13や他の製造機器へ流れ込んでクリーンルーム11全体の汚染を招くという欠点がある。
【0007】
本発明の目的は、上記従来技術の欠点を改善し、クリーンルーム内に設置された個々の精密品製造機器の周辺を周囲の汚染から防護するとともに、製造機器自身から発生する汚染を他の領域に拡散させない局所清浄装置並びにクリーンルームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明に係る局所清浄装置は、クリーンルーム内に設置された精密品製造機器の周辺の空気を吸い込む中央吸気口と、この中央吸気口から吸い込んだ前記空気を清浄化する空気清浄化手段と、前記中央吸気口を囲むように配置されて前記空気清浄化手段からの清浄空気を前記製造機器に向けて送風する送風口と、前記中央吸気口に一端が接続し、他端が前記製造機器側に伸長して開口した吸い込みダクトとを具備したことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る局所清浄装置は、前記空気清浄化手段には前記製造機器から離れた位置からの外部空気を取り込み可能な給気口が接続し、前記空気清浄化手段は当該給気口から取り込んだ外部空気と前記中央吸気口から吸い込んだ前記汚染空気の合流空気を清浄化して前記送風口に送り込むようにされたことを特徴とする。
【0010】
上記構成の局所清浄装置は、前記吸い込みダクトの有効口径をw、吸い込みダクトの平均吸い込み風速をv1、送風口の平均吹き出し風速をv2とした時に、前記吸い込みダクトの他端開口と前記製造機器の表面との距離dが式d≦2・w・v2/v1を満足するように調整されたことが望ましい。また、上記構成の局所清浄装置は、前記クリーンルーム内を移動可能にすることができる。
また、本発明に係るクリーンルームは、上記構成の局所清浄化装置が内部に配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の局所清浄化装置によれば、低清浄なクリーンルームであっても必要な箇所に本装置を固定配置又は移動配置することによって、製造機器の周辺を周囲の汚染から防護するとともに、製造機器自身から発生する汚染を他の領域に拡散させない。このため、製造機器の保守作業時などおいても製造機器の環境を高清浄に保つことができる。また、製造機器相互間の汚染の防止、作業者の安全の確保に有効である。さらに本発明のクリーンルームによれば、当該局所清浄化装置を必要な時にのみ稼動させるか、又は必要な箇所に移動して使用することができるので、クリーンルーム全体の清浄度を常時高く保つ必要がない。このため、クリーンルームの運転コストを削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は本発明に係る局所清浄化装置の第1実施形態を示す側断面図であり、図2は図1のA−A矢視断面図である。当該局所清浄化装置20は、図3に示したようにクリーンルーム22内に設置された精密品製造機器24の近傍に配置される。クリーンルーム22は例えばミニエンバイロ方式のクリーンルームであり、天井26には削減された数のFFU(ファンフィルタユニット)28が設置され、クリーンルーム22内に向けて清浄空気を吹き出す。この清浄空気は通気性の床面30を通過した後に、大部分は循環路32から天井空間に戻り、一部は空調機34によって温湿度が調整された後にダクト35を介して天井空間に戻り、FFU28によって清浄空気として循環される。
【0013】
局所清浄化装置20は製造機器24の直上位置に支持部材36によってクリーンルーム22の天井26から吊り下げられる。当該局所清浄化装置20は箱状のチャンバ40の下面中央部に中央吸気口42を有し、この中央吸気口42を取り囲むようにして空気清浄化手段である4基のFFU44がチャンバ40内に収められている。各FFU44は上部のファン46の下方にケミカルフィルタ48、エアフィルタ50を積層した構成とされる。エアフィルタ50の下面は送風口52とされ、この送風口52からFFU44によって清浄化された清浄空気が製造機器24に向けて下向きに送風される。中央吸気口42には吸い込みダクト54の一端がスライド自在に接続し、この吸い込みダクト54の他端が製造機器側に伸長して開口している。吸い込みダクト54の他端開口と製造機器24の表面との距離dは、吸い込みダクト54の一端を上下方向にスライドさせることによって調整することができる。
【0014】
チャンバ40の上面中央部には給気口56が設けられ、製造機器24から離れた位置からのクリーンルーム22内の空気を取り込み可能とされる。給気口56にはダンパ58が取り付けられており、ダンパ58の開度を変化させることによって、給気口56からの空気取り込み量を調整することができる。
【0015】
上記構成の局所清浄化装置20は製造機器24から汚染空気が臨時的又は継続的に発生する際に主に稼動させる。すなわち、保守作業などのために製造機器24の内部を開放した際に、製造機器24から汚染空気が発生する。又は製造機器24が定常運転している際でも継続的に製造機器24から汚染空気が発生する場合がある。したがって、このような汚染空気が当該製造機器24からクリーンルーム22全体に拡散しないように局所清浄化装置20を稼動させる。このため、局所清浄化装置20は製造機器24の汚染空気発生部24Aの直上に位置するように予め配置される。
【0016】
局所清浄化装置20を稼動させる際には吸い込みダクト54の他端開口を汚染空気発生部24Aになるべく接近させる。次いで各FFU44のファン46を駆動する。すると、汚染空気発生部24Aで発生した汚染空気は吸い込みダクト54の他端開口から吸い込みダクト54内に吸い込まれ、中央吸気口42から各FFU44を通過し、送風口52に送られる。汚染空気はFFU44を通過する際に汚染空気中の有害ガス成分がケミカルフィルタ48に、塵埃がエアフィルタ50によって除去されて、清浄空気となる。この清浄空気は送風口52から製造機器24に向けて下向きに送風され、エアカーテンを形成するとともに、その大部分が再び中央吸気口42に吸い込まれる。その結果、汚染空気発生部24Aで発生した汚染空気は清浄空気によるエアカーテンに囲まれた状態となり、汚染空気がクリーンルーム22全体へ拡散することを防止する。なお、吸い込みダクト54は汚染空気発生部24Aで発生した汚染空気を確実に吸い込む機能以外に、外面が仕切り板の役目を果たし、送風口52から吹き出した清浄空気を外面に沿って確実に下方へ案内する。
【0017】
給気口56は中央吸気口42から吸い込む汚染空気の量を調整する場合に有効である。FFU44は給気口56から取り込んだ外部空気と中央吸気口42から吸い込んだ汚染空気の合流空気を清浄化して送風口52に送り込む。給気口56に設けたダンパ58の開度を大きくすると、製造機器24から離れた位置からのクリーンルーム22内の空気が給気口56から多量にチャンバ40内に吸い込まれ、その分、中央吸気口42から吸い込む汚染空気の量が減少する。逆に、ダンパ58の開度を小さくすると、給気口56からチャンバ40内に吸い込まれる空気量が少なくなり、その分、中央吸気口42から吸い込む汚染空気の量が増加する。
【0018】
したがって、汚染空気発生部24Aで発生する汚染空気量が少ないか、又は汚染空気の汚染度が低い場合には、ダンパ58の開度を大きくして中央吸気口42から吸い込む汚染空気の量を減少させる。すると、製造機器24の上方で内部循環する空気量が減少し、製造機器24の周囲を下方に流れる清浄空気Bの量を増やすことができ、この清浄空気Aが製造機器24を大きく包み込んで清浄環境を保持する。逆に、汚染空気発生部24Aで発生する汚染空気量が多いか、又は汚染空気の汚染度が高い場合には、ダンパ58の開度を小さくして中央吸気口42から吸い込む汚染空気の量を増加させる。すると、発生した汚染空気を確実に中央吸気口42から吸い込むことができ、汚染空気の外部拡散を防ぐ。
【0019】
実験検討結果によれば、前記した吸い込みダクト54の他端開口と製造機器24の表面との距離dは、吸い込みダクト54の有効口径をw、吸い込みダクト54の平均吸い込み風速をv1、送風口52の平均吹き出し風速をv2とした時に、式d≦2・w・v2/v1を満足するように調整することが望ましい。上記関係式において吸い込みダクト54の有効口径とは、ダクト断面形状が正方形の場合には各辺の幅、長方形の場合には長辺と短辺の平均幅、円形の場合には直径である。上記関係式を満足させると吸い込みダクト54による汚染空気の吸い上げを比較的円滑に行うことができる。上記関係式を満足させるためには、主に2通りのアプローチ法がある。第1の方法は吸い込みダクト54を上下方向にスライドさせて、距離dを直接に調整する方法である。第2の方法は給気口56に設けたダンパ58の開度を調整する方法である。前記したようにダンパ58の開度を調整することによって、中央吸気口42から吸い込む汚染空気の量、すなわち吸い込みダクト54の平均吸い込み風速v1を増減させることができる。したがって、ダンパ58の開度の調整によって間接的に距離dを調整することができる。
【0020】
ただし、製造機器24の形状は様々であり、汚染空気発生部24Aの形状、拡がりも様々であるたため、上記関係式が常に成り立つわけではない。その際には、この関係式を目安にして、距離dやダンパ58の開度を適宜に調整すればよい。
【0021】
上記説明では局所清浄化装置20の稼動状況として、製造機器24から汚染空気が発生し、この発生した汚染空気をクリーンルーム22の他の領域に拡散させない場合について説明した。しかしながら、本実施形態に係る局所清浄化装置20はクリーンルーム22の環境が何らかの原因で汚染している際に、製造機器24をクリーンルーム22の汚染環境から保護する場合にも役立つ。この場合には給気口56のダンパ58を全開にして、給気口56からの空気取り込み量を相対的に多くし、中央吸気口42からの空気吸い込み量を少なくした運転を行う。すると給気口56からの空気取り込み量に相当した量の清浄空気Aが製造機器24を大きく包み込むことになり、製造機器24をクリーンルーム22の汚染環境から保護する。
【0022】
上述のとおり、本実施形態の局所清浄化装置20によればクリーンルーム22内に設置された精密品製造機器24の周辺を周囲の汚染から防護するとともに、製造機器24自身から発生する汚染を他の領域に拡散させない。
【0023】
図4は本発明の第2実施形態の要部を示す斜視図である。中央吸気口42Aを挟んで2基のFFU44Aを配置し、中央吸気口42Aの残りの2辺には閉止板60が取り付けてある。中央吸気口42Aの下方には吸い込みダクト54Aが接続している。他の構成は前記第1実施形態と同様である。すなわち、中央吸気口42Aの周囲全体をFFU44Aで囲わずに、一部省略している。この実施形態では閉止板60の下方領域に送風口52Aからの清浄空気が行き渡らない可能性がある。そこで送風口52Aの一部に傾斜送風部62を設けている。これによって、閉止板60の下方領域にも清浄空気が行き渡ることになり、周囲からの汚染の侵入を防止できる。
【0024】
図5は本発明の第3実施形態の要部を示す側断面図である。第1実施形態と同様にチャンバ40Bの中央に中央吸気口42Bを配置し、この中央吸気口42Bを囲むようにして送風口52Bが設けられている。中央吸気口42Bにはファン64を配し、送風口52B側にはケミカルフィルタ48Bとエアフィルタ50Bを配置している。この実施形態の構造ではファン64は中央吸気口42Bから吸い込んだ空気をチャンバ40Bの内部に向けて送風するので、チャンバ40Bの内部は外部に対して陽圧になる。このため、第1実施形態で示したような給気口56を設けて外部空気を取り込むことはできないが、1台のファン64のみで吸気と送風ができるので装置の軽量化とコスト低減を図ることができる。
【0025】
図6は本発明の第4実施形態の要部を示す側断面図である。この実施形態も第1実施形態と同様にチャンバ40Cの中央に中央吸気口42Cを配置し、この中央吸気口42Cを囲むようにして送風口52Cが設けられている。中央吸気口42Cの上方にファン64C、ケミカルフィルタ48C、エアフィルタ50Cで構成された1台のFFU44Cを配置し、このFFU44Cによって吸気、空気清浄化及び送風を行う。この第4実施形態によれば、より一層、装置の軽量化とコスト低減を図ることができる。
【0026】
図7は本発明の第5実施形態の要部を示す側断面図である。この実施形態も第4実施形態と同様に中央吸気口42Dに1台のFFU44Dを配置し、このFFU44Dによって吸気、空気清浄化及び送風を行う。チャンバ40D内には気流方向を滑らかに案内する案内板66が設置されている。また、中央吸気口42Dの周囲を閉止板60Dで囲み、送風口52Dが閉止板60Dの外側に狭い面積で開口している。このような構成によって、送風口52Dからの清浄空気の吹き出し風速を大きくし、エアカーテン効果を増強するとともに、製造機器側の吸気範囲を拡大することができる。なお、閉止板60Dが設置された内側部分を閉止板60Dに替えて通気抵抗の大きい送風口とし、その周辺を通気抵抗の小さい送風口52Dとすれば、清浄空気の下降気流に乱れが発生しにくくなるのでより一層、有効である。
【0027】
図8は本発明の第6実施形態の要部を示す側断面図である。この実施形態も第4実施形態と同様に中央吸気口42Eに1台のFFU44Eを配置し、このFFU44Eによって吸気、空気清浄化及び送風を行う。チャンバ40Eを覆うように外周チャンバ68が設けられ、この外周チャンバ68の上面中央に第2のFFU70が取り付けられている。第2のFFU70はクリーンルーム内の外部空気を取り込んで清浄化し、この清浄空気をチャンバ40Eの外周部に形成された吹き出し口72から下降気流として吹き出す。この第6実施形態によれば、下方の製造機器側に吹き出す清浄空気量が増加するので、より一層、周辺を周囲の汚染から防護するとともに、製造機器24自身から発生する汚染を他の領域に拡散させない。
【0028】
図9は本発明の第7実施形態を示す側面図である。この実施形態の係る局所清浄化装置の主要部80は第1実施形態と同様であるので、図1に図示したものと同一の符号を付して説明を省略する。この局所清浄化装置は主要部80を複数本の支柱74で支持するとともに、支柱74の下端に車輪76を取り付け、クリーンルームの床面78を移動可能にしたものである。この第7実施形態によれば、保守作業などを必要とする製造機器24の位置に当該局所清浄化装置を移動し、その機能を発揮させることができる。このため、個々の製造機器24に対応した局所清浄化装置を設置する必要がなく、コスト低減に寄与する。本実施形態は床面78を移動可能な局所清浄化装置としたが、これに替えてクリーンルームの天井面に走行用のレールを配し、主要部80を天井面に沿って移動可能な構成としてもよい。
【0029】
図10は本発明の第8実施形態を示す側面図である。この実施形態の係る局所清浄化装置は主要部90が前記各実施形態のものに対して90度、起立しており、この主要部90が支柱92によって支持されている。主要部90は第1実施形態と同様であるので、図1に図示したものと同一の符号を付して説明を省略する。この第8実施形態の局所清浄化装置は、製造機器94の開放面が横向きであるような場合に好適に利用される。当該局所清浄化装置の支柱92に車輪を付けてクリーンルーム内を移動可能にすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態を示す側断面図である。
【図2】図1のA−A矢視断面図である。
【図3】第1実施形態に係る局所清浄化装置が設置されたクリーンルームの側断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態の要部を示す側断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態の要部を示す側断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態の要部を示す側断面図である。
【図7】本発明の第5実施形態の要部を示す側断面図である。
【図8】本発明の第6実施形態の要部を示す側断面図である。
【図9】本発明の第7実施形態を示す側面図である。
【図10】本発明の第8実施形態を示す側面図である。
【図11】ミニエンバイロ方式のクリーンルームを例示した側断面図である。
【図12】特許文献1に開示されたクリーンルームの概要を示す側断面図である。
【図13】特許文献1に開示されたクリーンルームの技術課題を説明するための側断面図である。
【符号の説明】
【0031】
20………局所清浄化装置、22………クリーンルーム、24………製造機器、24A………汚染空気発生部、26………天井、28………FFU、30………床面、32………循環路、34………空調機、35………ダクト、36………支持部材、40,40B,40C,40D,40E………チャンバ、42、42A,42B,42C,42D,42E………中央吸気口、44,44A,44C,44D,44E………FFU、46,46C………ファン、48,48B,48C………ケミカルフィルタ、50,50B,50C………エアフィルタ、52,52A,52B,52C,52D………送風口、54,54A………吸い込みダクト、56………給気口、58………ダンパ、60………閉止板、62………傾斜送風部、64………ファン、66………案内板、68………外周チャンバ、70………第2のFFU、72………吹き出し口、74………支柱、76………車輪、78………床面、80、90………主要部、92………支柱、94………製造機器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリーンルーム内に設置された精密品製造機器の周辺の空気を吸い込む中央吸気口と、この中央吸気口から吸い込んだ前記空気を清浄化する空気清浄化手段と、前記中央吸気口を囲むように配置されて前記空気清浄化手段からの清浄空気を前記製造機器に向けて送風する送風口と、前記中央吸気口に一端が接続し、他端が前記製造機器側に伸長して開口した吸い込みダクトとを具備したことを特徴とする局所清浄化装置。
【請求項2】
前記空気清浄化手段には前記製造機器から離れた位置からの外部空気を取り込み可能な給気口が接続し、前記空気清浄化手段は当該給気口から取り込んだ外部空気と前記中央吸気口から吸い込んだ空気の合流空気を清浄化して前記送風口に送り込むようにされたことを特徴とする請求項1に記載の局所清浄化装置。
【請求項3】
前記吸い込みダクトの有効口径をw、吸い込みダクトの平均吸い込み風速をv1、送風口の平均吹き出し風速をv2とした時に、前記吸い込みダクトの他端開口と前記製造機器の表面との距離dが式d≦2・w・v2/v1を満足するように調整されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の局所清浄化装置。
【請求項4】
前記クリーンルーム内を移動可能とされたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の局所清浄化装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の局所清浄化装置が配置されたことを特徴とするクリーンルーム。
【請求項1】
クリーンルーム内に設置された精密品製造機器の周辺の空気を吸い込む中央吸気口と、この中央吸気口から吸い込んだ前記空気を清浄化する空気清浄化手段と、前記中央吸気口を囲むように配置されて前記空気清浄化手段からの清浄空気を前記製造機器に向けて送風する送風口と、前記中央吸気口に一端が接続し、他端が前記製造機器側に伸長して開口した吸い込みダクトとを具備したことを特徴とする局所清浄化装置。
【請求項2】
前記空気清浄化手段には前記製造機器から離れた位置からの外部空気を取り込み可能な給気口が接続し、前記空気清浄化手段は当該給気口から取り込んだ外部空気と前記中央吸気口から吸い込んだ空気の合流空気を清浄化して前記送風口に送り込むようにされたことを特徴とする請求項1に記載の局所清浄化装置。
【請求項3】
前記吸い込みダクトの有効口径をw、吸い込みダクトの平均吸い込み風速をv1、送風口の平均吹き出し風速をv2とした時に、前記吸い込みダクトの他端開口と前記製造機器の表面との距離dが式d≦2・w・v2/v1を満足するように調整されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の局所清浄化装置。
【請求項4】
前記クリーンルーム内を移動可能とされたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の局所清浄化装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の局所清浄化装置が配置されたことを特徴とするクリーンルーム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−162090(P2006−162090A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−349542(P2004−349542)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】
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