説明

局所用組成物の蛍光検出

【課題】皮膚などの表面における局所用組成物の存在を検出するための、組成物、装置、方法、およびキットを提供すること。
【解決手段】1または複数種の油溶性または水溶性の紫外線保護剤および蛍光発色団を含む組成物であって、この蛍光発色団は、油溶性または水溶性で、約400nmを超える励起波長を有する、組成物(いわゆる昼光蛍光化合物)が第1の実施形態において開示されている。蛍光発色団と日焼け止め剤とを十分に混合して、単相組成物を生成するステップを含む、局所用組成物を製造する方法が開示されている。さらに、蛍光組成物と共に使用するための装置1が記述され、この装置は、発光装置2、光検出器3、蛍光発色団の蛍光レベルを決定する電子評価システム4、およびディスプレイシステム5を含み、表面における前記組成物の存在を決定する。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、局所用薬剤、および蛍光発色団を含む組成物、ならびに皮膚などの表面におけるこのような組成物の存在を検出するための方法および装置に関する。
【0002】
〔発明の背景〕
スキンケアおよびヘアケア組成物や日焼け止め剤などの化粧品は、様々な利点を提供する。しかしながら、このような製品の利点は、適正な量使用することに大きく依存する。例えば、日焼け止め剤は、日光の紫外線による急性および慢性のダメージから皮膚を十分に保護する。このような効果を得るためには、消費者は、適正な量の日焼け止め剤を塗布しなければならない。研究結果から、消費者が塗布する日焼け止め剤の量が常習的に少ないため、日焼け止め剤使用による効果を制限していることが分かった。
【0003】
したがって、日焼け止め剤などの局所用組成物である製品を適切な量塗布したかを消費者が判断できる単純で使い勝っての良いシステムが要望されている。ストークス(Stokes)ら著、「日焼け止め剤の性能を評価するための迅速侵襲法としての蛍光スペクトル使用の実行可能性(The Feasibility of Using Fluorescence Spectroscopy As a Rapid Invasive Method For Evaluating Sunscreen Performance)」、ザ・ジャーナル・オブ・フォトケミストリー・アンド・フォトバイオロジー・バイオロジー(J. Photochemistry and Photobiology Biology)、1999年、50:137〜143に記載されているこのようなシステムのある方法では、自己蛍光(autofluorescence)を受けるUV日焼け止め剤「活性成分」を含む局所用組成物を用いている。しかしながら、蛍光源が、紫外線を吸収する活性成分であるこのようなシステムでは、システム全体の性能が低い。実際に、活性成分によって吸収される蛍光発光の割合が多すぎて蛍光信号が低くなってしまう。
【0004】
別の方法(同様にストークス(Stokes)らの文献に記載)では、UV吸収化合物および別の蛍光発色団を含む組成物と、蛍光発色団の存在を検出するための装置が使用される。しかしながら、著者は、「この目的にとって理想的である現在の研究に使用する物質が存在しない、すなわちある物質は日焼け止め製品を容易に混合することができず、他の物質の蛍光は日焼け止め剤中の活性成分によって消光される」と記している。このような欠点から、組成物が塗布された皮膚上の「活性成分」(日焼け止め剤など)のレベルを正確に決定するためには、従来技術のシステムを使用することは実用的でない。同様に、従来技術のシステムを用いて、UVフィルターが水での洗浄による漸進的減少または摩滅などによって無効になるまたは除去されたか、またはその程度を正確に決定することが不可能である。
【0005】
皮膚を不快な色にしない局所用組成物中の蛍光発色団の濃度で使用するのが望ましいであろう。しかしながら、これと同時に、蛍光発色団は、検出可能な濃度で存在しなければならない
【0006】
加えて、2種類以上の局所用組成物、特に様々な機能(例えば、レクレーション用日焼け止め剤、日焼け止め剤を含む保湿剤など)を備えた組成物が皮膚に十分な量塗布されているかを正確に決定できるシステムを有するのが望ましいであろう。
【0007】
さらに、身体に有害作用が無く安全に皮膚に局所的塗布できるあらゆる蛍光マーカーを使用するのが望ましいであろう。
【0008】
局所用組成物中への特定の蛍光発色団の導入を、この蛍光発色団の検出用の装置で行うことができることを見出した。一実施形態では、蛍光発色団は、その励起波長における吸光度が、同じ波長における局所用薬剤の吸光度よりも相当高い。別の実施形態では、蛍光発色団を紫外線保護剤と混合して、水への溶解度を約1wt%未満、発光波長を約400nm超にする。出願者は、皮膚などの表面における局所用薬剤および蛍光発色団を含む組成物の存在を決定するための装置、ならびにこのような装置を含むキットを開発した。
【0009】
この結果、消費者が、自身の毛髪、皮膚、爪、または性器部分における組成物の存在およびその量を決定できるシステムが得られた。
【0010】
〔発明の概要〕
本発明は、1または複数種の油溶性または水溶性の紫外線保護剤(ultraviolet sunscreen agents)および蛍光発色団を含む組成物を提供する。この蛍光発色団は、油溶性であって、約400nmを超える励起波長を有する。
【0011】
本発明はまた、1または複数種の水溶性紫外線保護剤および蛍光発色団を含む組成物を提供する。この蛍光発色団は水溶性であって、約400nmを超える励起波長を有する。
【0012】
本発明は、さらに、蛍光発色団と日焼け止め剤とを十分に混合して単相組成物を生成するステップを含む、局所用組成物を製造する方法を提供する。
【0013】
本発明はまた、(a)上記した組成物、および(b)表面におけるこの組成物の存在を決定するための装置を含むキットを提供する。この装置は、発光装置、光検出器、蛍光発色団の蛍光レベルを決定する電子評価システム、およびディスプレイシステムを含む。
【0014】
〔発明の詳細な説明〕
特段の記載がない限り、本明細書で用いる全ての技術用語および科学用語は、本発明の属する技術分野の一般的な技術者が一般に理解する意味を有する。本明細書で言及する全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照して開示内容の全てを本明細書に組み入れる。本明細書で用いる「化合物」は、特段の記載がない限り、その全ての異性体(例えば、トコフェロール)を含む。
【0015】
本発明の組成物は、1または複数の局所用薬剤を含む。本明細書で用いる「局所用薬剤(a topical agent)」は、哺乳動物の毛髪、皮膚、爪、または性器部分に局所的に塗布した場合に美容効果、薬学効果、または治療効果を付与する化合物である。
【0016】
例えば、局所用薬剤は、日焼け止め剤、保湿剤、抗菌剤、抗真菌剤、抗炎症剤、抗かび剤(anti-mycotic agents)、駆虫薬(anti-parasite agents)、美白剤、色素沈着剤(skin pigmentation darkening agents)、抗アクネ剤、皮脂調節剤、光沢抑制剤(shine control agents)、外用鎮痛剤、非UV吸収光線保護剤(non-UV absorbing photoprotectors)、酸化防止剤、角質溶解剤、ビタミン、栄養素、エネルギー促進剤(すなわち、カルニチン)、発汗防止剤、収斂剤、消臭剤、脱毛剤、ファーミング剤(firming agent)、硬化防止剤、および毛髪、爪、または皮膚を調節する作用剤、ならびに局所的塗布できる他の成分およびこれらの組合せから選択することができる。
【0017】
一実施形態では、局所用薬剤は、限定するものではないが、ヒドロキシ酸、過酸化ベンゾイル、D−パンテノール、カロチノイド、フリーラジカルスカベンジャー、スピントラップ(spin traps)、レチノイド、例えば、レチノール、レチンアルデヒド、およびレチニルパルミテート、セラミド、多価不飽和脂肪酸、必須脂肪酸、酵素、酵素阻害剤、ミネラル、ホルモン、例えば、エストロゲン、ステロイド、例えば、ヒドロコルチゾン、2−ジメチルアミノエタノール、銅塩、例えば、塩化銅、ペプチド含有銅、例えば、Cu:Gly‐His‐Lys、コエンザイムQ10、アミノ酸、例えば、プロリン、ビタミン、ラクトビオン酸(lactobionic acid)、アセチル−コエンザイムA、ナイアシン、リボフラビン、チアミン、リボース、電子輸送体、例えば、NADH、およびFADH2、および他の植物抽出物、例えば、アロエベラ、およびその誘導体、大豆抽出物、およびこれらの混合物から選択される。
【0018】
このような局所用薬剤は、通常は、組成物中にその約0.001wt%〜約20wt%、例えば、約0.005wt%〜約10wt%、または約0.01wt%〜約5wt%の量で存在する。
【0019】
ビタミンの例として、限定するものではないが、ビタミンA、ビタミンB類、例えば、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンK、ビタミンE、およびこれらの誘導体を挙げることができる。
【0020】
ヒドロキシ酸の例として、限定するものではないが、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、サリチル酸、クエン酸、および酒石酸を挙げることができる。例えば、欧州特許出願第273,202号を参照されたい。
【0021】
酸化防止剤の例として、限定するものではないが、水溶性酸化防止剤、例えば、スルフヒドリル化合物およびその誘導体(例えば、メタ重亜硫酸ナトリウムおよびN−アセチル−システイン)、リポ酸およびジヒドロリポ酸、リスベラトロール(resveratrol)、ラクトフェリン、およびアスコルビン酸およびアスコルビン酸誘導体(例えば、アスコルビン酸パルミテートおよびアスコルビルポリペプチド(ascorbyl polypeptide))を挙げることができる。適当な油溶性酸化防止剤の例として、限定するものではないが、ブチル化ヒドロキシトルエン、レチノイド(例えば、レチナール、レチンアルデヒド、およびレチニルパルミテート)、トコフェロール(例えば、酢酸トコフェロール)、トコトリエノール、およびユビキノンを挙げることができる。適当な抗酸化剤含有天然抽出物の例として、限定するものではないが、フラボノイドおよびイソフラボノイドおよびこれらの誘導体(例えば、ゲニステインおよびダイゼイン(diadzein))を含む抽出物、リスベラトロール(resveratrol)などを含む抽出物を挙げることができる。このような天然抽出物の例として、ブドウの種、緑茶、松の皮、およびプロポリスを挙げることができる。
【0022】
本組成物中の他の成分と化学反応を起こさない限り、様々な他の作用物質を、本組成物中に含めることができる。このような他の作用物質の例として、湿潤剤、タンパク質およびポリペプチド、キレート剤(例えば、EDTA)、保存剤(例えば、パラベン)、およびpH調節剤を挙げることができる。加えて、本組成物は、芳香剤などの従来の美容補助剤を含むことができる。染料(非蛍光)、乳白剤、および色素も、組成物中の局所用薬剤の装置の検出性能を妨げなければ、本組成物に含めることができる。
【0023】
本発明の一実施形態では、本組成物は、日焼け止め剤および蛍光発色団を含む。このような組成物は、少なくとも約2、具体的には約2〜約60、より具体的には約10〜約60のSPF(紫外線防御指数)を有するのが好ましい。日焼け止め剤は、本組成物の約2wt%〜約40wt%に相当する量を本組成物中に含めることができる。
【0024】
本発明に有用な日焼け止め剤は、UV範囲の放射線を吸収、反射、または散乱させる化合物である。このような日焼け止め剤は、UV−A吸収剤、UV−B吸収剤、無機色素フィルター、および赤外線保護剤を含む。日焼け止め剤は、油溶性または水溶性、すなわち疎水性物質中または親水性物質中で溶解する相対的選考を有する。
【0025】
油溶性UV−B吸収剤の例として、以下を挙げることができる。
・3−ベンジリデンカンフル(3-benzylidene campher)、特に3−ベンジリデンノルカンフル(3-benzylidene norcampher)およびその誘導体、例えば、3−(4−メチルベンジリデン)カンフル
・4−アミノ安息香酸誘導体、特に4−(ジメチルアミノ)安息香酸−2−エチルヘキシルエステル、4−(ジメチルアミノ)安息香酸−2−オクチルエステル、および4−(ジメチルアミノ)安息香酸アミルエステル
・シナモン酸(cinnamonic acid)のエステル、特に4−メトキシシナモン酸−2−エチルヘキシルエステル(4-methoxycinnamonic acid-2- ethylhexylester)、4−メトキシシナモン酸プロピルエステル(4-methoxycinnamonicacid propylester)、4−メトキシシナモン酸イソアミルエステル(4-methoxycinnamonic acid isoamyl ester)、2−シアノ−3,3−フェニルシナモン酸−2−エチルヘキシルエステル(2-cyano-3,3-phenylcinnamonic acid-2-ethylhexyl ester)(オクトクレリン)
・サリチル酸エステル、すなわち、サリチル酸−2−エチルヘキシルエステル、サリチル酸−4−イソプロピルベンジルエステル、サリチル酸ホモメンチルエステル(salicylic acid homomenthyl ester)
・ベンゾフェノン誘導体、特に2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4’−メチルベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン
・ベンザルマロン酸エステル(esters of benzalmalonic acid)、特に4−メトキシベンズマロン酸ジ−2−エチルヘキシルエステル(4-methoxybenzmalonic acid di-2- ethylhexyl ester)
・トリアジン誘導体、例えば、2,4,6−トリアニリロ−(p−カルボ−2’−エチル−1’−ヘキシロキシ)−1,3,5−トリアジン(2,4,6-trianilino-(p-carbo-2'-ethyl-1'-hexyloxy)-1,3,5-triazine)およびオクチルトリアゾン(octyltriazone);または安息香酸、4,4’−[[6−[[[(1,1−ジメチルエチル)アミノ]カルボニル]フェニル]アミノ]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル]ジイミノ]ビス−,ビス(2−エチルヘキシル)エステル(UVASORB HEB)(4,4'-[[6-[[[(1,1-dimethyletyl)amino]carbonyl]phenyl]amimo]-1,3,5-triazine-2,4-diyl]diimino]bis-,bis(2-ethylhexyl) ester (UVASORB HEB))
・プロパン−1,3−ジオン、例えば、1−(4−tert−ブチルフェニル)−3−(4’−メトキシフェニル)プロパン−1,3−ジオン(1-(4-tert.butylphenyl)-3-(4'-methoxyphenyl)propane-1,3-dione)
・ケトリサイクロ(5.2.1.0)デカン誘導体(Ketotricyclo(5.2.1.0)decane derivatives)
【0026】
水溶性UV−AおよびUV−B吸収剤の例として、以下を挙げることができる。
・2−フェニルベンズイミダゾール−5−スルホン酸(2-phenylbenzimidazol-5-sulfonic acid)およびそのアルカリ塩、アルカリ土類塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩、アルカノールアンモニウム(alkanolammonium)塩、およびグルカンモニウム塩(glucammonium salts)
・ベンゾフェノンのスルホン酸誘導体、特に2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸およびその塩
・3−ベンジリデンカンフル(3-benzylidene campher)のスルホン酸誘導体、例えば、4−(2−オキソ−3−ボルニリデンメチル)ベンゾスルホン酸(4-(2-oxo-3-bornylidene methyl)benzolsulfonic acid)および2−メチル−5−(2−オキソ−3−ボルニリデン)スルホン酸(2-methyl-5-(2-oxo-3-bornylidene)sulfonic acid)およびその塩
【0027】
一般的なUV−A吸収剤の例として、ベンゾイルメタン(benzoylmethane)の誘導体、例えば、1-(4’‐tert−ブチルフェニル)−3−(4’−メトキシフェニル)プロパン−1,3−ジオン(1-(4'-tert.butylphenyl)-3-(4'-methoxyphenyl)propane-1,3-dione)、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン(PARSOL 1789)(4-tert.-butyl-4'-methoxydibenzoylmethane (PARSOL 1789))、1−フェニル−3−(4’−イソプロピルフェニル)−プロパン−1,3−ジオン(1-phenyl-3-(4'-isopropylphenyl)-propane-1,3-dione)、安息香酸2−(4−ジエチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)−安息香酸ヘキシルエステル(UVINUL A+)(benzoic acid 2-(4-diethylamino-2-hydroxybenzoyl)-benzoic acid hexylester (UVINUL A+))の誘導体、または1H−ベンズイミダゾール−4,6−ジスルホン酸,2,2’−(1,4−フェニレン)ビス−,ジナトリウム塩(NEO HELOPAN AP)(1H-benzimidazole-4,6-disulfonic acid,2,2'-(1,4-phenylene)bis-,disodium salt (NEO HELOPAN AP))
【0028】
UV−A吸収剤とUV−B吸収剤の混合物を用いることもできる。
【0029】
特に好ましいのは、いわゆる広帯域フィルターである。このようなフィルターのあるタイプは、水溶性フィルター、具体的にはベンゾトリアゾール、特に2,2’−メチレン−ビス−(6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェノール)(2,2'-methylene-bis-(6-(2H-benzotriazole-2-yl)-4-(1,1,3,3-tetramethylbutyl)-phenol))(INCI名:ビソクチルトリアゾール(Bisoctyltriazol))(CIBAケミカルズ社(CIBA Chemicals)が商用名:TINOSORB Mとして販売)として知られるベンゾトリアゾール誘導体である。別の有用なベンゾトリアゾール誘導体は、キメックス社(Chimex)が商用名:MEXORYL XLとして販売している2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−yl)−4−メチル−6−[2−メチル−3−[1,3,3,3−テトラメチル−1−[(トリメチルシリル)オキシ]ジシルオキシアニル]プロピル]−フェノール(2-(2H-benzotriazole-2-yl)-4-methyl-6-[2-methyl-3-[1,3,3,3-tetramethyl-1-[(trimethylsilyl)oxy]disiloxanyl]propyl]-phenol)(CAS番号:155633−54−8)(INCI名:ドロメトリゾールトリシロキサン(drometrizole trisiloxane))である。このようなベンゾトリアゾール誘導体は、pH4.5を超える水相中に便利に含めることができる。
【0030】
他の有用な水溶性UV吸収剤は、例えば、キメックス社(Chimex)が商用名:MEXORYL SXとして販売している3,3’−(1,4−フェニレンジメチレン)ビス(7,7−ジメチル−2−オキソ−ビシクロ−[2.2.1]ヘプタ−1−イル メタンスルホン酸(3,3'-(1,4-phenylenedimethylene)bis(7,7-dimethyl-2-oxo-bicyclo-[2.2.1]hept-1-yl methanesulfonic acid)(INCI名:テレフタリデンジカンフルスルホン酸(terephthalidene dicamphor sulfonic acid (CAS No. 90457- 82-2)))、およびそのナトリウム塩、カリウム塩、またはそのトリエタノールアンモニウム(triethanolammonium)塩、およびスルホン酸自体などのスルホン酸UVフィルターである。
【0031】
油溶性広帯域フィルターには、非対称に置換されたトリアジン誘導体が含まれる。特に、CIBAケミカルズ社(CIBA Chemicals)が商用名:TINOSORB Sとして販売している2,4−ビス−{[4−(2−エチル−ヘキシロキシ)−2−ヒドロキシ]−フェニル}−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン(2,4-bis-{[4-(2-ethyl-hexyloxy)-2-hydroxy]-phenyl}-6-(4-methoxyphenyl)-1,3,5-triazine)(ICNI名:アニソトリアジン(anisotriazine))である。
【0032】
無機色素フィルターの例には、不溶性色素、すなわち細かく分散された金属酸化物または金属塩が含まれる。特に有用な金属酸化物の例として、酸化亜鉛および酸化チタン、ならびに鉄、ジルコニウム、シリコン、マンガン、アルミニウム、およびセリウムの酸化物、ならびにこれらの混合物を挙げることができる。使用できる塩には、ケイ酸塩(滑石)、硫酸バリウム、またはステアリン酸亜鉛が含まれる。このような色素の粒子の大きさは、例えば、100nm未満、具体的には5nm〜50nm、より具体的には15nm〜30nmと十分に小さい。このような粒子は、球形とすることができるが、楕円や別の類似形状などの他の形状にすることもできる。色素の表面は、例えば、親水性または疎水性になるように処理することができる。一般的な例として、デグサ社(Degussa)が販売する二酸化チタンT805またはメルク社(Merck)が販売するEUSOLEX T 2000などの二酸化チタンでコーティングされている。シリコーン、特にトリアルコキシオクチルシラン(trialkoxyoctyl silanes)やシメチコーン(simethicones)を、疎水性コーティング剤として用いることができる。いわゆる微小色素またはナノ色素(micro- or nanopigments)は、日焼け止め剤として特に魅力的である。
【0033】
本組成物は、蛍光発色団も含む。「蛍光発色団(Fluorescent chromophore)」は、ある波長(励起波長)の放射線(例えば、光)を吸収して、より高い波長(発光波長)の放射線を再放出する化合物を意味する。励起波長は、一般に、吸光度がピーク値を有する波長である。発光波長は、励起波長から「ストークスシフト」として知られる距離(ナノメータ単位で)離れている(励起波長よりも大きい)。
【0034】
本発明の一実施形態では、蛍光発色団の励起波長で測定する場合、蛍光発色団の吸光度は、組合せまたは単独の組成物中の局所用薬剤の吸収度よりも少なくとも5倍高い。
【0035】
当業者であれば分かるように、「吸光度」は、媒体を介して伝達される光の強度に対する、媒体を介して伝達される前の入射光の強度の比の対数を意味する。吸光度は、媒体、光が通る経路の長さ、および媒体内の吸光物の濃度によって決まる。特定の試験組成物中の蛍光発色団の吸光度を計算するために、約5μm〜約10μmの厚みの膜を、この試験組成物から(「基準」吸光度を得るため)、および発色団が除去されている点を除いてこの試験組成物と同一の組成物から投じる(cast)。この膜は、目的の波長で実質的に透明である適当な基材(例えば、PMMA)上に投じることができる。ラブスフィアー社(Labsphere)が販売するようなUV−VIS分光光度計が、キャスト膜から吸光度を測定するのに適している。分光光度計を制御するソフトウエアに対してパラメータを入力することによって、あらゆる厚みの膜を考慮し、標準化した。
【0036】
同様に、試験組成物中の局所用薬剤の吸光度を計算するために、約5μm〜約10μmの厚みの膜を、局所用薬剤が除去されている点を除いてこの試験組成物と同一の組成物から投じる。1または複数の局所用薬剤が、試験組成物の5%超を構成する場合は、この組成物中の他の成分の一定の比率を維持するために、対象の波長に対して透明な希釈剤を組成物に添加して減少する局所用薬剤を補うべきである。吸光度は、同じ器具を用いて計算する。次に、局所用薬剤の吸光度に対する蛍光発色団の吸光度の比を除算によって求める。
【0037】
本組成物の別の実施形態では、蛍光発色団は、局所用薬剤と同様の水への溶解度を有する。蛍光発色団と局所用薬剤が同様の水への溶解度を有する場合、水や水分にさらされると、蛍光発色団と局所用薬剤が皮膚などの表面から同じ速度で除去される。したがって、蛍光発色団を、局所用薬剤の「代用物」または「マーカー」として用いることができる。蛍光発色団の吸光度の検出は、組成物中の局所用薬剤の濃度または存在に十分に相関している。
【0038】
したがって、別の実施形態では、疎水性または水への溶解度が低い局所用薬剤と蛍光発色団の適合性または結合を実現するために、蛍光発色団は、約2wt%未満、例えば約1wt%未満の水への溶解度を有する。
【0039】
別の実施形態では、蛍光発色団は、例えば、ナフタレン誘導体、スチルベン誘導体、トリアジン誘導体、およびクマリンなどの複素環化合物(hereterocyclic compound)または多環芳香族化合物である。複素環化合物または多環芳香族化合物は、最大でも僅かな水への溶解度のみを付与する1または複数の官能基(環状基または脂肪族基、例えばイミン、アミン、アルキル基、エステル、エーテル、およびこれらの組み合わせなど)で置換することができる。適当なクラスの化合物の一例が、例えば、環状イミドで置換されたナフタレンなどのナフタルイミド(naphthalimides)である。
【0040】
有名なナフタルイミドの1つに、カリフォルニア州ハンチントンビーチに所在のリスク・リアクター(Risk Reactor)がDFSB−K43として販売しているFLUROL 555としても知られるn−ブチル−4−(ブチルアミノ)1,8−ナフタルイミド(n-butyl-4-(butylamino)1,8-naphthalimide)がある。この化合物は、約450nmの励起波長、および約500nmの発光波長を有する。
【0041】
本発明の別の実施形態では、疎水性または水への溶解度が高い局所用薬剤と蛍光発色団の適合性または結合を実現するために、蛍光発色団は、例えば約10g/Lを超える水への溶解度を有する。1つのこのような蛍光発色団は、668nm(励起波長)の最大吸光度を有するメチレンブルーである。別の適当な例は、約490nmの励起波長および約520nmの発光波長を有するフルオレセイン(fluorescin)である。
【0042】
本発明の別の実施形態では、蛍光発色団は、約500nm未満の励起波長を有する。このような蛍光発色団は、500nm未満の波長を有する検出光源を用いる検出システムと共に用いることができるため特に有用である。このような低い波長は、例えば、明るい日光などの環境での検出に適しているであろう。高い波長は、皮膚に効果的に吸収されず、不完全に覆われた外部の日光で干渉される可能性が高い。
【0043】
局所用薬剤が日焼け止め剤を含む本発明の実施形態では、蛍光発色団は、特定の範囲内の励起波長を有することができる。これは、局所用日焼け止め剤が紫外線を強力に吸収し、可視スペクトルのより低い波長を強力に吸収または分散させるため望ましい。さらに、より高い波長での周囲光との干渉が明らかであるため、蛍光発色団の励起波長は高すぎないのが好ましい。
【0044】
本発明の一実施形態では、局所用薬剤は日焼け止め剤を含み、蛍光発色団の励起波長は、約400nmを超える。蛍光発色団の励起波長は、例えば、約400nm〜約600nm、より好ましくは約400nm〜約500nm、最も好ましくは約450nm〜約500nmの可視スペクトルにすることができる。
【0045】
別の実施形態では、本組成物は、日焼け止め剤と、約2wt%未満、例えば約1wt%未満の水への溶解度を有する蛍光発色団を含む。
【0046】
本発明の組成物は、毛髪、皮膚、爪、および性器部分を含む様々な表面に局所的に塗布するのに適している。一実施形態では、本組成物は、局所用薬剤および蛍光発色団を皮膚に送達するために皮膚に延ばすことができる。さらに、美容目的の場合、一実施形態では、本組成物中の蛍光発色団の量は、完全に擦り込んだ後に(例えば、見苦しいであろう皮膚の「染色(staining)」によって)皮膚に色が付くことなく、本組成物を皮膚にたっぷりと局所的に塗布することができるように十分に少ない量である。
【0047】
一実施形態では、本組成物は、約0.001wt%〜約0.1wt%の蛍光発色団を含む。
【0048】
本組成物は、限定するものではないが、ローション、クリーム、ゲル、スティック、スプレー、軟膏、シャンプー、ペースト、ムース、および化粧品を含め、様々な種類の製品にすることができる。このような種類の製品は、限定するものではないが、溶液、乳剤、ゲル、固形、およびリポソームを含む美容的に許容されるキャリヤシステムを含むことができる。
【0049】
溶液として調製される本発明の組成物は、通常は、水性溶媒(例えば、水)または有機溶媒(例えば、約80%〜約99.99%、または約90%〜約99%の許容される水性溶媒または有機溶媒)を含む。適当な有機溶媒の例として、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセロール、1,2,4−ブタントリオール(1,2,4-butanetriol)、ソルビトールエステル、1,2,6−ヘキサントリオール(1,2,6-hexanetriol)、エタノール、ブチレングリコール、およびこれらの混合物を挙げることができる。
【0050】
溶液として調製される本発明の組成物は、1または複数種の皮膚軟化剤を含むことができる。このような組成物は、通常は、約2%〜約50%の皮膚軟化剤を含む。本明細書で用いる「皮膚軟化剤」は、乾燥の防止または緩和、および皮膚の保護のために用いられる物質を指す。
【0051】
ローションは、通常は、約1%〜約20%(例えば、約5%〜約10%)の皮膚軟化剤と約50%〜約90%(例えば、約60%〜約80%)の水を含む。
【0052】
本組成物は、クリームとして調製することもできる。クリームは、通常は、約5%〜約50%(例えば、約10%〜約20%)の皮膚軟化剤と約45%〜約85%(例えば、約50%〜約75%)の水を含む。
【0053】
本組成物は、軟膏として調製することもできる。軟膏は、動物油または植物油の単純な基剤、または半固体炭水化物(油脂性基剤、吸収性基剤、乳剤性基剤、および水溶性基剤)を含むことができる。軟膏は、水を吸収して乳剤を生成する吸収性軟膏基剤を含むこともできる。軟膏キャリヤを水溶性とすることもできる。軟膏は、約2%〜約10%の皮膚軟化剤と約0.1%〜約2%の増粘剤を含むことができる。
【0054】
キャリヤシステムが乳剤として調製される場合、通常は、このキャリヤシステムの約1%〜約10%(例えば、約2%〜約5%)が乳化剤から構成される。乳化剤は、非イオン性、陰イオン性、または陽イオン性とすることができる。
【0055】
ローションとクリームは、乳剤として調製することができる。通常は、このようなローションは、0.5%〜約5%の乳化剤を含む。このようなクリームは、通常は、約1%〜約20%(約5%〜約10%)の皮膚軟化剤、約20%〜約80%(約30%〜約70%)の水、約1%〜約10%(約2%〜約5%)の乳化剤を含む。
【0056】
水中油型および油中水型のローションおよびクリームなどの単相乳剤スキンケア調製品は、美容分野で周知であり、本発明に有用である。水中油中水型などの多相乳剤組成物も、本発明に有用である。一般に、このような単相または多相の乳剤は、必須成分として水、皮膚軟化剤、および乳化剤を含む。
【0057】
一実施形態では、本組成物は、水中油(O/W)型乳剤の形態とすることができる。O/W乳剤は、水不混和性の、皮膚に適した成分または混合物である適当な油を含むことができる油相を含む。好ましくは、この油は、室温、具体的には25℃で液体である。油は、完全な油混合物が室温すなわち25℃で液体であれば、一定量の固体脂質成分(例えば、脂肪または蝋)を含むことができる。
【0058】
O/W乳剤中の水相は、通常は1または複数の親水性成分を含む純水とすることができる。このような親水性成分は、比較的低いアルカノール、ポリオール、水溶性活性成分、保存剤、保湿剤、またはキレート剤などとすることができる。
【0059】
出願者は、存在または濃度を検出されるのが望ましい、蛍光発色団および局所用薬剤が、組成物中の同じ相の中に共存するのが望ましいことに気づいた。したがって、局所用薬剤と蛍光発色団が共に均質に溶解するように、これらの局所用薬剤と蛍光発色団を混合して組成物を調製するのが望ましい。一実施形態では、本発明の組成物を調製する方法は、蛍光発色団、日焼け止め剤、およびオプションの希釈剤を十分に混合して単相組成物を生成することを含む。「単相」組成物は、分子レベルで日焼け止め剤と蛍光発色団が実質的に均質である組成物を指す。
【0060】
希釈剤は通常、日焼け止め剤と蛍光発色団の両方を溶解できる化合物である。日焼け止め剤と蛍光発色団の水への溶解度が低い一実施形態では、希釈剤は、例えば、鉱油、ワセリン(petrolatum)、植物油(脂肪酸のグリセリルエステル、トリグリセリド)、蝋、および他のエステルの混合物、グリセロールの非必須エステル(not necessarily esters of glycerol);ジメチコーン、シリコーン油、およびシリコーンガムなどのポリエチレン系および非炭化水素系油などの疎水性材料である。別法では、希釈剤は、例えば、アルコール様イソプロパノールなどの溶媒のような疎水性と親水性が混合した特性を有することができる。
【0061】
日焼け止め剤および蛍光発色団の水への溶解度が高い別の実施形態では、希釈剤は、水のような親水性化合物である。別法では、希釈剤は同様に、アルコールのような疎水性と親水性が混合した特性を有することができる。
【0062】
追加成分を、単相組成物に添加する、すなわち単相組成物が入った容器内に添加するか、または追加成分が入った容器に単相組成物を添加することができる。単相組成物と追加成分と混合すると、多相を有する組成物、すなわち上記したような乳剤、分散剤、およびエーロゾル剤などの安定した多相組成物になる。
【0063】
別の実施形態では、追加成分は、必ずしも必要ではないが、日焼け止め剤および蛍光発色団を含まない。
【0064】
本組成物は、オプションとして、例えば、EVIANミネラルウォーター(フランスのエビアン社(Evian))などの自然に鉱化されたミネラルウォーターなどのミネラルウォーターを用いて調製することができる。一実施形態では、ミネラルウォーターは、少なくとも約200mg/L(例えば、約300mg/L〜約1000mg/L)の鉱化物を有する。一実施形態では、ミネラルウォーターは、少なくとも約10mg/Lのカルシウム、および/または少なくとも約5mg/Lのマグネシウムを含む。
【0065】
本組成物は、例えば、ワイプ、ローラー、またはスプレーなどのアプリケータまたは手で皮膚、爪、毛髪、性器部分に広げて局所的に塗布することができる。選択する局所用薬剤によって、本組成物を、光線保護、保湿、クレンジング、アクネ、斑状色素沈着過剰、老斑、皺、細い線、セリュライト、および(光老化(photoaging)によるか、または時間的老化(chronoaging)によるかは、関係ない、)他の目に見える老化の徴候などの様々な目的のために用いることができる。
【0066】
本発明に従えば、ある表面上の組成物の存在は、組成物に光を当てて組成物中に含まれる蛍光発色団を励起させて決定することができる。組成物に当てる光は、蛍光発色団の励起波長に一致する波長を有するべきである。励起された蛍光発色団から放出される比較的波長が長い光を収集して、蛍光レベルを決定する。オプションとして、このレベルを所定のレベルと比較して、表面上の組成物の存在だけではなく、組成物が十分な量で存在するか否かを評価することができる。
【0067】
図1を参照すると、一実施形態では、表面上の蛍光発色団7を含む組成物6の存在および/または量の決定が本発明に従った装置を用いて行われる。この装置は、発光装置2、光検出器3、電子評価システム4、およびディスプレイシステム5を含む。これらの構成要素は、電子的に接続され、1つのハウジング1の中に収めることができる。別の実施形態では、このようなハウジングは、消費者が使用しやすいようにハンドヘルドで、バッテリー式である。この装置の全ての構成要素は、消費および美容装置の分野の技術者に良く知られている市販品とすることができる。
【0068】
発光装置2は、光を表面に当てる手段を含む。一実施形態では、発光装置は、可視光を表面に当てる。これは、日焼け止め剤の紫外線フィルターが装置の動作を妨げないため、例えば、日焼け止め剤を含む組成物を使用する際に有利である。
【0069】
発光装置2は光を放出する。発光装置2は、発光ダイオード(LED)やレーザーなどの一般に狭周波数帯域(スペクトルが集中)であるパルス波または連続波光源とすることができる。LEDまたはレーザーは、蛍光発色団の励起波長を含む、特定の波長範囲の光を放出するように、当分野で周知の材料(例えば、化合物半導体材料)から形成される。励起エネルギーの強度は、1mWの範囲またはそれ以下にすることができる。その後、放出された光は、皮膚面に達する前に、1または複数の光学素子によって、フィルタリング、減衰、増幅、偏光、または他の調節を行うことができる。光が皮膚面の外側面に到達した時点で、皮膚およびこの皮膚に塗布された組成物と相互作用する。
【0070】
皮膚上の蛍光発色団が、到達した光によって光学的に励起されて蛍光を発光する。この蛍光発光が装置の開口から入射し、光検出器に向かって光学的に配向され(ミラー、レンズ、または光誘導媒体によって)、皮膚上の蛍光発色団の存在またはその量(および間接的に局所用薬剤の存在またはその量)を決定することができる。例えば、図1では、光検出器に達する前に、蛍光発光がミラー9によって方向を変えて、蛍光発色団の発光波長に近い波長のみを本質的に通過させるように設計されたブロックフィルター8を通過する。このブロックフィルターは通常、蛍光発色団の発光波長またはこれに近い波長に対しては透明であるが、他の波長を高度に吸収する1または複数の材料を含む。適当なブロックフィルターは、特に、コネチカット州ストラットフォード(Stratford)のオリエル・オプティックス社(Oriel Optics)などの供給元が販売している。
【0071】
光検出器3は、例えば、光信号の検出の分野で知られているような光検出器とすることができる。このような光検出器は、蛍光発色団の発光波長またはそれに近い波長を吸収するように調整されている。
【0072】
電子評価システム4が、光検出器に接続され、アルゴリズムを計算するための手段を含む。このアルゴリズムは、光検出器の光の受取りを単に表面上の組成物の存在に関連付けるか、または追加的に、光検出器が受け取った光の量を用いて表面上の組成物の量を計算することもできる。別法では、このアルゴリズムを用いて、光検出器によって受け取られた光の量と所定の量と比較して、表面上に十分な最低限の量の組成物が存在するか否かを計算することができる。
【0073】
電子評価システムからの出力がディスプレイシステム5に送られ、このディスプレイシステム5が、この出力を視覚的に表示する。このディスプレイシステムは、デジタル形式またはアナログ形式を採用することができる。このディスプレイシステムはまた、緑色が組成物の存在またはその十分な量の存在を示し、赤色が組成物の非存在またはその量が不十分であることを示す、単純なLED表示装置を含むことができる。別法では、ディスプレイシステムは、他の色、数字、文字、または表面上の組成物の実際の量または相対量を示す他の印を表示することができる。
【0074】
一実施形態では、本装置は、発光装置の近位側にシュラウド10をさらに含む。このシュラウドは、発光装置からの光にさらされる表面の部分を覆うことができる。シュラウドの覆う能力は、例えば、このシュラウドが可視スペクトル(およびオプションとしてUV近傍のスペクトル)の全ての光を十分に吸収できることによる。このようにして、周囲の光が、装置の動作を妨げることができない。シュラウドは、例えば、装置から延びた黒色または暗色材料のシリンダーなどの様々な形状にすることができる。シュラウドは様々な構造にすることができるが、一実施形態では、シュラウドは、スキャンすべき部分の周りの皮膚の曲線に一致するように、皮膚に対して軽く押圧されたときに変形できるエラストマーなどの弾性材料から形成された皮膚接触部を含む。したがって、周囲光が光検出器に達するのを防止するガスケットまたは障壁を形成する。このようなエラストマー材料は、皮膚に押し付けたときに、シリンダーの壁部が容易に潰れたり曲がったり(皮膚のスキャンの際に周囲光が進入する不所望の結果を引き起こす)しないように、構成されるのが好ましい。
【0075】
本装置は、1種類の組成物に使用するように構成することができる。別法として有利となるように、本装置を、複数の種類の組成物に使用できるように構成することができる。すなわち、本装置は、あるプリセットした波長で光を放出または受け取るように設定することができる。様々なレベルの蛍光発色団で調製された様々な組成物を本装置に用いることができる。例えば、本装置は、(a)局所用薬剤および第1の濃度の蛍光発色団を含む第1の組成物、および(b)局所用薬剤および第2の濃度の蛍光発色団を含む第2の組成物に適合することができる。この蛍光発色団の第1の濃度は、第2の濃度よりも実質的に高い。
【0076】
例えば、第1の組成物は、保湿剤に日焼け止め剤を添加したような日常用のSPF製品とすることができる。このような製品は、比較的強度が低い第1の日光にさらされる環境用に設計することができる。第2の組成物は、レクレーション用日光保護製品(recreational suncare product)(第1の日光にさらされる環境よりも強度が高い第2の日光にさらされる環境であって、日焼け止め剤が典型的に、水や汗にさらされたり、砂やタオルで擦られたりすることにより皮膚に対する付着性が大幅に低下する傾向にある、第2の日光にさらされる環境で使用するように設計されている)とすることができる。したがって、後者の場合、つまり日光により強くさらされ、皮膚上の日焼け止め剤が不十分であると皮膚に深刻なダメージが与えられる可能性がより高い場合は、皮膚に対する日焼け止め剤の付着を本装置でより厳密に監視することがより重要である。したがって、一定の最小限のレベルの蛍光発色団の存在を検出するために設計された1つの装置を、第1の組成物または第2の組成物に用いることができる。
【0077】
製品が、日焼け止め剤(必須の塗布密度は、例えば2mg/cm2)を含まないが、2mg/cm2ではない所望の塗布濃度の活性物質を含む場合は、クリーム中の蛍光色素の濃度を、日焼け止め剤のモニターに用いられたのと同じ診断ツールとして用いるために適当な蛍光レベルが得られるように変更することができる。したがって、「万能」診断モニターツールを、消費者によって使用されるように製造者が意図する製品の量を較正する(calibrate)ために様々な種類の製品に用いることができる。
【0078】
本発明の別の態様は、本発明の組成物とオプションの上記した装置を含むキットに関する。
【0079】
一実施形態では、このキットは、(a)局所用活性物質および蛍光発色団を含む組成物、ならびに(b)表面上の組成物の存在を決定する装置を含む。この装置は、発光装置、光検出器、蛍光発色団の蛍光レベルを決定するための電子評価システム、およびディスプレイシステムを含む。一実施形態では、局所用活性物質は日焼け止め剤である。
【0080】
このキットは、1または複数の同じまたは異なる種類の組成物を含むことができる。このような組成物は、紙、プラスチック、金属、またはガラスすなわちガラス管やジャーからなる容器内など、完成したパッケージ形態の中に入れることができる。このキットは、容器および装置を保管するためにプラスチックや厚紙箱などの別のパッケージを含むことができる。このキットは、本組成物および本装置を使用するための取扱説明書をさらに含むことができる。このような取扱説明書は、容器、折込みラベル、または別のパッケージに印刷することができる。
【0081】
<例1>
本発明に従った組成物は、カリフォルニア州ハンチントンビーチのリスク・リアクター社(Risk Reactor)が販売するDFSB−K43を0.1gだけ100gのSUNDOWN SPF60日焼け止め製品に添加して調製した。次に、この組成物を、PMMAプレートの研磨面の表面に0.5mg/cm2、1.0mg/cm2、1.5mg/cm2、2.0mg/cm2、および2.5mg/cm2(約1平方インチ(約6.5cm2)の試験部位)の密度で塗布した。塗布した日焼け止め剤中のDFSB−K43の蛍光を、450nmの放射線(単色光分光器からの)でDFSB−K43を励起して500nmの放出された蛍光を測定して求めることができる。試験部位における蛍光強度は、4回測定して、その結果を以下に示す表にプロットした。
【0082】
蛍光強度は、組成物の塗布密度に強く相関していた。R2=0.927は、この技術が製品の塗布密度を示し、製品の塗布量を推定していることを示唆している。
【0083】
【表1】

【0084】
<例2>
同じサンプル調製物を、従来のインビトロSPF測定器具であるラブスフィアー社(Labsphere)のUV分光光度計を用いて測定して、塗布した密度サンプルのそれぞれのSPFを求めた。日焼け止め剤中の蛍光発色団の蛍光信号は、プレート上の製品のSPFと密接に相関することが示されている。
【0085】
【表2】

【0086】
この例では、少なくとも6の閾値蛍光レベルが、十分な量の日焼け止め剤が皮膚に塗布されたことを示すために必要であろう。この診断ツールは、十分な量の日焼け止め剤が塗布されていることを示す「Yes」信号を表示する。この表示は、あざやかな緑色光、LCD表示、または「Good」を示す「メーター」とすることができる。値が6未満の蛍光は、赤色光などの「No」信号、「no」のLCD表示、または「不十分」を示す「メーター」などで不十分な日焼け止め剤の範囲であることを示す。
【0087】
<例3>
黄色色素43番を0.1%含むSPF 30 日焼け止め剤のサンプルを、約10分で乾燥できる1.6mg/cm2の密度でPMMAプレートの研磨面に塗布した。サンプルのSPFおよびサンプルからの蛍光信号を、上記したように分光蛍光計およびラブスフィアー社(Labsphere)のSPF分光光度計の両方で測定した。初めの測定の後で、サンプルを10秒〜15秒、強く流している水道水の下に置き、水流中で指の先で軽く擦り、再び測定を繰り返した。洗浄して擦った後の蛍光信号が低下しており、蛍光発色団の一部が除去されたことを示唆している。しかしながら、例2の線の傾斜が例1に類似しており(約12%以内)、蛍光発色団とUVフィルターがほぼ同じ割合で除去されていることを示唆している。これは、蛍光発色団とUVフィルターが互いに十分に結合し、かつ装置が、蛍光信号の変化から、UVフィルターの存在量の変化を予測できることを示している。
【0088】
【表3】

【0089】
〔実施の態様〕
(1)1または複数種の油溶性または水溶性の紫外線保護剤、および蛍光発色団を含む組成物において、
前記蛍光発色団は、油溶性であって、約400nmを超える励起波長を有する、組成物。
(2)実施態様(1)に記載の組成物において、
前記蛍光発色団は、約1wt%未満の水への溶解度を有する、組成物。
(3)1または複数種の水溶性紫外線保護剤、および蛍光発色団を含む組成物において、
前記蛍光発色団は、水溶性であって、約400nmを超える励起波長を有する、組成物。
(4)局所用組成物を製造する方法において、
蛍光発色団と日焼け止め剤とを十分に混合して単相組成物を生成するステップ、
を含む、方法。
(5)実施態様(4)に記載の方法において、
希釈剤を前記日焼け止め剤および前記蛍光発色団に混合して前記単相組成物を生成するステップ、
をさらに含む、方法。
【0090】
(6)実施態様(5)に記載の方法において、
前記希釈剤は、1または複数種の疎水性物質を含む、方法。
(7)実施態様(5)に記載の方法において、
前記希釈剤は、水、アルコール、またはこれらの組合せを含む、方法。
(8)実施態様(4)に記載の方法において、
前記単相組成物に追加成分を添加して、安定した多相組成物を生成するステップ、
をさらに含む、方法。
(9)実施態様(8)に記載の方法において、
前記安定した多相組成物は、乳剤である、方法。
(10)実施態様(9)に記載の方法において、
前記乳剤は、油中水型相(a water exterior phase)または水中油型相(an oil exterior phase)を有する、方法。
【0091】
(11) キットにおいて、
(a)実施態様(1)に記載の組成物と、
(b)表面における前記組成物の存在を決定するための装置と、
を含み、
前記装置は、発光装置、光検出器、蛍光発色団の蛍光レベルを決定する電子評価システム、およびディスプレイシステムを含む、キット。
(12)実施態様(11)に記載のキットにおいて、
取扱説明書、
をさらに含む、キット。
(13)実施態様(11)に記載のキットにおいて、
前記局所用薬剤は、日焼け止め剤を含む、キット。
(14)キットにおいて、
(a)実施態様(3)に記載の組成物と、
(b)表面における前記組成物の存在を決定するための装置と、
を含み、
前記装置は、発光装置、光検出器、蛍光発色団の蛍光レベルを決定する電子評価システム、およびディスプレイシステムを含む、キット。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明に従った装置の模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚の面上の日焼け止め剤を検出する方法において、
前記皮膚の面に局所的に適用された前記日焼け止め剤を含む組成物を有する前記皮膚の面上に光を向けることであって、前記組成物は、1または複数種の油溶性の日焼け止め剤、および蛍光発色団を含み、前記蛍光発色団は、油溶性であって、400nmを超える励起波長を有し、前記光は、前記蛍光発色団を励起させ、これにより蛍光が発光する、光を向けることと、
前記蛍光の発光を集光し、その発光の蛍光強度のレベルを決定することと、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記蛍光強度のレベルを予め定められたレベルと比較することと、
十分な量の日焼け止め剤が前記皮膚の面上に存在するかどうか評価することと、
をさらに含む、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
前記光は、発光装置により前記皮膚の面上に向けられ、
前記方法は、光検出器で前記蛍光を集光することをさらに含み、
前記発光装置および前記光検出器は、単一のハンドヘルド式ハウジングに収容されている、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、
前記発光装置からの光に曝されている前記皮膚の面から周囲の光を遮ること、
をさらに含む、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、
前記光は、発光装置により前記皮膚の面上に向けられ、
前記方法は、光検出器で前記蛍光を集光することをさらに含み、
前記方法は、前記光検出器による前記蛍光の受取りを前記皮膚の面上の前記日焼け止め剤の存在に関連付けることをさらに含む、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、
前記発光装置は、スペクトルが集中している、方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法において、
前記発光装置は、レーザーまたはLEDである、方法。
【請求項8】
請求項5に記載の方法において、
前記発光装置からの光に曝されている前記皮膚の面から周囲の光を遮ること、
をさらに含む、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、
前記組成物は、0.001〜0.1重量%の前記蛍光発色団を含んでいる、方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、
前記蛍光発色団の励起波長で測定すると、前記蛍光発色団の吸光度は、前記1または複数種の油溶性の日焼け止め剤の吸光度よりも少なくとも5倍高い、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、
前記蛍光発色団は、400nm〜600nmの励起波長を有している、方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか記載の方法を実施するためのキットにおいて、
(a)前記組成物と、
(b)表面における前記組成物の存在を決定するための装置と、
を含み、
前記装置は、発光装置、光検出器、蛍光発色団の蛍光レベルを決定する電子評価システム、およびディスプレイシステムを含む、キット。
【請求項13】
請求項12に記載のキットにおいて、
取扱説明書、
をさらに含む、キット。

【図1】
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【公開番号】特開2012−103262(P2012−103262A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−281231(P2011−281231)
【出願日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【分割の表示】特願2008−508970(P2008−508970)の分割
【原出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(598039367)ジョンソン・アンド・ジョンソン・コンシューマー・カンパニーズ・インコーポレイテッド (79)
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Consumer Companies,Inc.
【住所又は居所原語表記】Grandview Road,Skillman,New Jersey 08558,United States of America
【Fターム(参考)】