説明

屈曲型ランセット

少なくとも1つのランセットを有し、ランセット本体と尖端とを含む体液採取用の装置が記載されている。この装置は、ランセットが屈曲領域とも呼ばれる変化した剛性をもつ構造を含むことを特徴とする。好ましくは前記構造が残余のランセット本体に比べて低減された剛性を有し、その結果、ランセットが力作用下に好ましくは前記領域で折り曲げられている。この場合、尖端はその位置合わせで残余のランセット本体を基準に変化される。この位置合わせの変化は、好ましくはランセット本体平面から出る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液パラメータの診断検出のための穿刺補助具の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
体液の採取および分析は医療診断の多くの分野で実施される。そのために実験室の外部で常習のテストを迅速かつ再現可能に実現することが望ましい。この試験は、たとえば血液および/または組織間液のような種々の体液を用いて実施することができる。このような体液は種々の特性について検査することができる。この検査結果は確実な診断、治療措置および治療追跡を実施できるようにするために重要である。
【0003】
体液の分析は液体の採取と共に開始される。体液の採取方法は、針、ランセットまたは刃物を利用して患者の皮膚の中に最小限の創傷を作ることである。その際に得られる体液は小型容器の中に収集するかまたは、たとえば分析用テストストリップのようなテストエレメントに直接接触させることができる。ランセット、針または刃の使用時に患者の負傷の危険を回避するため、ランセット尖端に保護部を備える穿刺補助具が構成されている。このような穿刺補助具は大抵穿刺補助具の中へランセットを手で挿入する必要がある。これは穿刺補助具を非常に頻繁に使用するときの取扱いを非常に煩雑にする。ランセットのマガジン化は前記問題を取り除くことができるが、その場合は多数の安全上の局面に注意する必要がある。たとえば穿刺補助具の使用時の患者の安全性が保証されていることに注意する必要がある。このシステムはさもないと患者によって良好に取り扱うことができなくなるので、特に複雑にならないようにする必要がある。
【0004】
そのために先行技術においていくつかの解決策が示されている。米国特許出願公開第2003/0199902号明細書はマガジン内の各個別ランセットの封印を保証し、コストがかかり、かつスペースを満たす歯車機構がランセットをマガジンから送り出すことに利用される。
【0005】
欧州特許第1203563号明細書に支持体バンド上にテストエレメントを有する分析補助手段が記載されており、このテストエレメント上で可動し、かつランセットを含む付加的なフレームエレメントが取り付けられている。このフレームエレメントはテストエレメントと平行の位置を利用するとき直交する位置へ移動させることができ、その結果、ランセットはテストエレメント内の開口部を通して作動させることができる。これは多数の部分を機械的に移動させる必要があり、かつシステムがその機能性のある形態で多くの所要スペースを有するため、テストエレメントおよびランセットの組合せに非常にコストのかかる態様である。
【0006】
もう1つの欧州特許第1360935号明細書は液体試料へ近接するためのランセット(ここでは「テスター」と呼ばれる)の配置を記載する。ランセットはこの場合、該ランセットの表側にランセットのカバーを有するバンドに直列に配置されている。利用時にランセットを露出するためには、この場合にもランセットを使用できるようにするため全ランセット本体を初めにバンド平面から移動させる必要があるのでコストのかかる機械システムが利用されている。
【0007】
このような先行技術はいくつかの欠点を有する。個々の穿刺エレメントを、ランセットが直列に配置から、つまり支持体バンド平面にあるマガジン化から、ランセットが支持体バンド平面と垂直に配置された配置へ移動させるために多数の機械的工程が必要になる。これはコストのかかる機構のため、さらにこの機構に対して大きい所要スペースが必要になる欠点を有する。先行技術からの多数のシステムのその他の欠点は穿刺過程前のランセットの開封に手間がかかることである。
【発明の開示】
【0008】
先行技術の各欠点から次のような課題が生じる。スペースを節約し、少ない機械的費用で使用可能の、簡単なハンドリングを可能にするマガジン化可能の穿刺補助具が提供されるべきである。
【0009】
この課題は、本発明の目的が独立請求項に特徴づけられている目的によって解決される。好ましい実施態様は従属請求項の目的である。
【0010】
本発明の目的は少なくとも1つのランセットを含む体液採取用の装置であり、ランセットは少なくとも1つのランセット本体と、1つのランセット尖端(以下、尖端とも呼ぶ)とから構成される。本発明によりランセットは屈曲領域を有し、その結果、ランセットが力作用下に好ましくは尖端の領域で折り曲げられており、その結果、該尖端がランセット本体の縦軸を基準に該ランセットの位置合わせで変化される。
【0011】
ランセット本体領域平面からのランセット尖端の折り曲げは第1の屈曲運動とも呼ばれる。
【0012】
ランセットは長尺の拡大部を有し、一端(ここでは遠位端と呼ぶ)が穿刺するために1つの物体に、特にたとえば尖端の形状に成形される。尖端はここで長尺のランセット本体の側面が一点に集まるランセットの遠位端にある一点である。先端に向かうランセットの側面はここでさらに鋭くした縁部を有することができる。つまりランセットは少なくとも主としてほぼ平行に延伸する側面もしくは側面縁部を有するランセット本体と、直接ランセット本体に接続され、かつ尖端に向かう上下に延びる側面縁部を有する尖端の領域または尖端領域とから構成される。つまり尖端の領域または尖端領域はそれぞれ上下に延びる側面縁部の長さにより様々な大きさにすることができる。
【0013】
ランセット尖端の折り曲げのためにランセットは屈曲領域を有する。この屈曲領域は可能な限り少ない力作用下に少なくともランセット尖端の折り曲げを可能にすることに適した少なくとも一箇所をランセット内に保持することに利用される。この屈曲領域はランセット尖端領域の部分にわたって、およびランセット本体の部分にわたっても延伸させることができる。屈曲領域は前記箇所でランセットを容易に変形することを可能にする変化した剛性をもつ少なくとも1つの構造を有する。この屈曲領域は好ましくは尖端領域から始まり、特にその幅で尖端領域の伸長部となるランセット本体の部分にわたって延伸するが、本質的に少なくとも2つの平行に延伸する縁部を有する。屈曲領域に接続され、ランセットの近位端または後端に向かうランセット本体の別の部分は屈曲領域と異なる形状、たとえばランセット本体の拡大部または肥厚部を有することができる。このランセット本体のより幅広の部分は、変形に対してより高い安定性を有するため、さらにより硬質に加工してもよい。これは、たとえば別の材料の選択によって、または使用する材料の量もしくは厚さの選択によって実現することができる。ランセットが支持体に取り付けられるとき、少なくとも好ましくは変形に対してより堅固な構造を有する後部のランセット本体部分は、支持体との安定した接続を構築できるようにするため支持体と接続されている。後部のランセット本体部分は、好ましくは駆動ユニットの連結に利用することができる。そのためにランセット本体は、たとえば溝、切欠または突部のような様々な連結構造を有することができる。駆動はこの場合ランセット本体の位置合わせに対して好ましくは横方向に実施され、屈曲したランセット尖端は線状に身体部位に穿刺することができる。ランセット本体の縦軸と異なる屈曲したランセット尖端の位置合わせによって、ランセット本体およびランセット尖端に対して軸線方向の駆動方向のみが可能であるものとは異なる幾何学的配置を実現できる長所が生じる。さらにランセット尖端の指定用途(可能な限り少ない痛みで身体部位に穿刺する)ために可能な限り薄く、かつ微細に形成されるランセット尖端の好ましい屈曲によって、容易な屈曲を可能にするためにそれに対して少ない力のみを必要とし、もしくはランセットに少ない形態的変化を実施する必要があることが明らかである。それによって、ランセットの簡単な屈曲が保証され、マガジン化が可能な場合に支持体または支持体バンド上で増大するランセットの不安定性が発生しない。駆動ユニットの連結に用いるランセット本体は屈曲可能の尖端領域の形成に関係なく、駆動ユニットの連結時の負荷と穿刺運動時の力とを充分にするために安定的に製造することができる。屈曲領域の外部でのランセットの屈曲はランセット構造の不安定化を生じ得る。
【0014】
少なくともランセット尖端は、好ましい方法でランセット尖端の屈曲時に開放される滅菌保護部を設けることができる。
【0015】
一実施形態においてランセットは支持体上にある。この支持体は、たとえば複数のランセットの簡単なマガジン化に用いることができる。さらに、この支持体は、ランセットがたとえば少なくとも一部だけ支持体によって取り囲まれるとき、ランセットに対して外部の影響(たとえば衝突またはその他の接触)に対する保護機能を引き受けることもできる。これは支持体が支持体バンドであるとき特に有利である。好ましい一実施形態においてランセット本体およびランセット尖端は非屈曲状態で支持体上に好ましくは横にして取り付けられている。少なくとも先端の領域は、特に好ましくは完全に支持体上にある。
【0016】
支持体として別法により少なくとも1つのランセットが固定される円形の構造を用いることができる。支持体は、好ましくは円板状に形成されている。しかし別の支持体構造、たとえば角形、球形またはバンド形、卵形または楕円形を有する構造も考えることができる。
【0017】
ランセットおよび支持体は一体に形成することができる。これは全構造が金属から、特に好ましくは鋼から製造される場合に有利である。しかし、また別の材料、たとえばセラミックまたはポリマー構造はランセットと支持体の一体の形成に対しても可能である。
【0018】
代替の一実施形態においてランセットは体液の収容に好適である構造を含む。これは、好ましくは毛管構造であってよいが、たとえば孔構造、ギャップ構造または樋構造のようなあらゆる別法の構造も液体の収容に好適である。この場合、屈曲領域内の型彫によって形成された構造を液体の収容のために形成することもできる。この実施形態は、試料収容がランセットによって実施され、直接テストエレメントによっては実施されないので、以下マイクロサンプラーと呼ぶ。体液を収容する構造は、好ましくは尖端領域に設けることができる。この構造は、代替の実施形態において尖端領域上に突出し、ランセット本体の部分にわたって延伸してもよい。この場合、体液を収容する構造は一体に形成し、または複数の領域に分割してもよい。好ましい実施形態においてこの液体の収容構造は尖端領域から始まり、近似的にランセット本体内の尖端領域と同じ拡大部にわたって延伸する。ここで体液を収容する構造は屈曲領域の中に入り、または屈曲領域を超えてランセット本体の中に突出してよい。マイクロサンプラーの中に収集された体液は、それに続きテストエレメントに伝送することができ、検出システム(たとえば光学式または電気化学式)で検出し、評価システムで評価することができる。
【0019】
さらに少なくとも1つのテストエレメントは前記支持体または別の支持体の中、上または横に配置することができる。テストエレメントは採取した体液の収容と、それに続く体液からの分析体の検出に用いられる。その際にテストエレメントは分析体と反応する試薬を含むことができる。テストエレメントは独立の支持体またはランセットの支持体に取り付けることができる。テストエレメントからの物質による尖端の汚染を防ぐために、テストエレメントは好ましくは直接ランセットに接続されず、ランセットから独立して支持体上に配置されている。独立した支持体上の少なくとも1つのテストエレメントの配置は低減された汚染の危険の前記効果を増強する。好ましい実施形態において、テストエレメントおよびランセットがランセット尖端の折り曲げ後にランセットまたはテストエレメントの第2の運動によって接触できるように、該テストエレメントおよびランセットが互いに配置されている。これは、ランセットがマイクロサンプラーの形態で形成されるとき特に有利である。これは支持体と相対的なランセットの運動によって実施することができる。ランセットをテストエレメントと接触させる可能性は第1の屈曲方向への別のランセットの屈曲であり、その結果、ランセット尖端がランセット本体を基準に90°以上折り曲げられている。テストエレメントはこの実施形態において好ましくはランセット本体の一部にある。テストエレメントとランセットを接触させるランセットの別法による運動は、設定方向と反対の第1の屈曲運動に対するランセットまたは支持体の繰出運動である。この運動時にランセット尖端はランセット本体の平面に戻して折り曲げることができる。テストエレメントとランセットの接触化の別法として体液は使用者の身体部位から直接テストエレメントへ伝送させることもできる。
【0020】
テストエレメントをランセットと接触させるもう1つの別法はテストエレメント自体の移動である。そのためにテストエレメントは好ましくは第2の支持体上にあり、少なくとも部分的にランセットまたはテストエレメントの支持体は互いに相対的に移動可能に配置されている。
【0021】
好ましい実施形態において支持体は支持体バンドとして形成されており、この支持体バンド上で好ましくは複数のランセットが位置決めされている。この実施形態においてランセット本体と尖端を含む少なくとも1つのランセットが配置された長手方向位置合わせと横方向とをもつ本質的に平面的な支持体バンドを有する体液採取装置が記載されており、ランセットは横にして支持体バンド上に配置されている。上述のように、この装置はランセットが上述のように屈曲領域と呼ぶ(残余のランセット材料に対して)変化した剛性を有する構造を含むことを特徴とする。
【0022】
この剛性は弾性変形に対する材料の抵抗の基準として理解されるべきである。この構造は、好ましくは残余のランセット本体に比べて低減された剛性を有し、その結果、ランセットは力作用下に好ましくは前記領域で折り曲げられている。ここで尖端はその位置合わせで残余のランセット本体を基準に変化される。この位置合わせの変化は、好ましくは支持体バンド平面もしくはランセット本体平面から出る。その際にランセット本体は少なくとも一部だけ原初の平面もしくは支持体バンド平面にとどまり、そこに固定されている。ランセット尖端の位置合わせの変化に必要になる力は閾値力とも呼ばれる。この閾値力は、該閾値力がランセット尖端の位置合わせの変化を生ぜしめるような大きさとするが、その際にランセット、支持体または支持体バンドに意図しない変形が発生しないように寸法決めされている。
【0023】
ランセットへの力の伝達は屈曲要素によって、たとえばランセットに押圧される押棒によって実施できる。1つ以上の型彫を有する特殊の実施形態において、支持体または支持体バンドがランセットと共に押棒を介して送り出されることによって、ランセットに力を伝達する可能性がある。ここでランセット尖端をランセット本体平面もしくは支持体バンド平面から送り出すために充分に大きい力(閾値力)がランセットに作用する。支持体または支持体バンド上または横のランセットには支持体バンドにランセット本体の少なくとも一部が残る。
【0024】
好ましい実施形態において屈曲要素は2分割型である。この場合、ランセット尖端は押棒によってランセット本体がそれ自体で、または支持体バンドと一緒に屈曲要素の第2の部分によって押棒運動方向への移動を阻止することによって支持体バンド平面もしくはランセット本体平面から送り出される。この屈曲要素の第2の部分は、たとえば好ましくは押棒に対向する支持体、支持体バンドまたはランセット側にある閉鎖手段とすることができる。押棒も閉鎖手段も付加的に制御要素によって制御することができ、その結果、屈曲位置を変化させることができる。この方法によりランセットを種々の箇所で折り曲げることができ、皮膚に穿刺するための様々な長さの尖端が生じる。押棒からランセットへの力伝達は、ランセットの尖端領域が支持体または支持体バンドに固定して接続されないとき特に容易に可能である。この場合、平型ランセットが支持体または支持体バンド上の配置に特に有利である。
【0025】
尖端領域の外部に設けてもよいランセットの屈曲領域は変化した剛性をもつ少なくとも1つの構造を有する。この変化した剛性をもつ少なくとも1つの構造は上述のような型彫と呼ばれる。この型彫は、たとえばスタンピングまたはハンマリングまたはその他の金属を加工する措置によってランセットの中または上に加工することができる。つまりこの剛性は、好ましくは部材の形状の変化によって、または部材中の材料量の変化によって調整することができる。好ましい実施形態はランセットの屈曲領域内に1以上の型彫を含む。この型彫の特に好ましい実施形態はランセットの長手方向拡大部の少なくとも一部に延伸するランセットの屈曲領域内の3重型彫である。型彫は、ここで軸線方向のランセットの遠位端からランセットの近位端の方向へ延伸する。型彫の長さは可変式である。この型彫は両面から平型ランセットの中に取り込むことができる。この型彫の様々な方向はランセット尖端がランセット本体に対して設定された方向と反対に屈曲することを生ぜしめる。
【0026】
第1の型彫の第1の部分は尖端領域の中にある。この型彫の第1の部分は尖端領域に限定できるが、その上から突出させてもよい。第2の型彫はランセットの側面縁部の方向へ第1の型彫の第1の部分の近位端に隣接する。第3の型彫は同様にランセットの第1の型彫の対向する側面縁部の方向へ第1の型彫の第1の部分の近位端に隣接して延伸する。第2および第3の型彫は第1の型彫の第1の部分と同じ側に型彫される。この型彫の位置合わせによってランセット上への低い閾値力を利用して少なくとも1つの型彫に隣接する平面の屈曲を生ぜしめることが可能である。それによって折り曲げた平面は、好ましくは100°までの角度でランセット本体もしくは支持体バンド平面から持ち上げられる。それによってランセット尖端はランセット本体またはバンドの平面から送り出される。
【0027】
ランセットの材料は好ましくは金属、特に好ましくは鋼である。しかし、またランセットは、力作用時にランセットが屈曲可能であり、かつ使用時にその形状を変化させずに皮膚へ侵襲するためにその際に充分な剛性を有することを可能にする別の材料から構成することもできる。さらに材料は、さもないと穿刺時に大きすぎる痛みが発生するので、ランセットの遠位端で鋭い尖端に加工できる形状にされる。ランセットの製造は一般的に先行技術で、たとえば独国特許第19604156号明細書または欧州特許第0565970号明細書で充分に知られている。
【0028】
支持体バンドは、好ましくはプラスチックフィルムから製造される。しかしまた、これは別の可撓性の材料、たとえば米国特許出願公開第2005/0245845号明細書に記載されているような材料としてもよい。集積システムにおいて支持体バンド上に付加的に少なくとも1つのテストエレメントを配置することができる。ランセットおよびテストエレメントは、好ましくは交互に配置される。ランセットは対角線状に長手方向位置合わせでも横方向位置合わせでもバンド上に取り付けることができる。可能な実施形態は直接近傍へのランセットおよびテストエレメントの配置である。この方法により穿刺過程後にテストエレメントへの液体の直接移送が可能であり、バンドをさらに移動させる必要がない。
【0029】
ランセットの作動について以下に種々の方法を記載する。ランセットはその近位端で支持体または支持体バンド上にランセットの一部が支持体または支持体バンドと相対的に、または該支持体または支持体バンドと一緒に移動できるように固定することができ、他方、近位端は少なくとも1点で支持体または支持体バンドに接続されている。ランセットのその他の好ましい固定は支持体または支持体バンドでのランセット本体の固定であり、尖端領域が支持体または支持体バンドから引き離される。ランセットの制御された移動は支持体または支持体バンドの移動によってまたは把持要素によるランセットの把持によって実施でき、ランセット尖端は支持体または支持体バンドと共に支持体または支持体バンドの平面から送り出される。この運動は支持体または支持体バンド平面と垂直にランセットへ力を伝達する駆動要素を利用して実施できる。力の伝達は、たとえば押棒であってよい駆動要素によってまたはランセットをそのランセット本体で把持および移動する把持要素によって行われる。この場合、好ましい実施形態において採血装置の穿刺深さは自由に選択することができる。この穿刺深さの制御のためにランセットの移動は可変式係止要素によって規定されており、該係止要素に対して穿刺過程中にランセットが係止する。この係止要素の位置に応じて前記方法によりケース開口部から出るランセット尖端の長さと共に穿刺深さが変化される。係止要素は、たとえばケース内に集積することができる。さらにランセット自体を係止要素として用いることができ、穿刺深さは屈曲した先端の長さによって規定されている。ランセットは屈曲状態でランセット本体に対して0°以外の角度で屈曲されるのでランセット本体は皮膚の中へさらに侵襲することに対するバリヤとすることができる。つまり折り曲げに利用される型彫の選択によって穿刺深さを変えるために屈曲領域に複数の型彫を有するランセットを用いることも可能である。
【0030】
ランセットの駆動のために、たとえば独国特許第19604156号明細書、欧州特許第0565970号明細書、米国特許第5318584号明細書または米国特許第4924879号明細書に記載されているように、先行技術から公知である弾道状または連結リンク式にガイドされる機構を利用することができる。ランセットの駆動のための好ましい実施形態は、たとえば押棒のような駆動要素による力伝達によるランセットの自由運動である。この実施形態において1つのパルスが駆動要素からランセットへ伝達され、ランセットは駆動要素によるその他のガイドなしにケース開口部の方向へ移動する。ランセットの移動はこの場合ケースで付加的な要素によって案内することができる。
【0031】
このシステムの衛生的な使用のためにランセットは少なくとも尖端領域で滅菌保護部によって保護されている。ランセットは、好ましくは全ランセット本体にわたってフィルムによって被覆されている。このフィルムはここで支持体バンドもしくは支持体の一部にわたって延伸してもよく、かつそれと接続されている。この滅菌保護部は支持体バンドもしくは支持体とランセットの連結後に塗布されるポリマー層から構成することができる。滅菌保護部はランセット尖端への閾値力の作用時にランセット尖端によって破壊または突き刺され、ランセットの一部を、しかし少なくともランセットの尖端領域を露出する。別法により滅菌保護部はランセットの使用前に取り除くこともできる。この滅菌保護部はその際に好ましくは全体的に取り除かれる。
【0032】
本発明の目的は同様に体液の採取システムである。このシステムは、好ましくは支持体もしくは本質的に平面的な支持体バンドが取り付けられたケースと、好ましくは横にして支持体または支持体バンド上に配置された少なくとも1つのランセットとから構成される。ケースは、ランセットが作動時に貫通できる少なくとも1つの開口部を有する。本質的に平面的な支持体バンドは、好ましくは2つのコイルに巻き付けられている。しかしまた、すでに支持体の形状で説明したように、使用済および未使用のランセットのマガジン化のために別の貯蔵方法を使用してもよい。ランセットのマガジン化に対して2つのコイルを使用する場合、未使用のランセットは一方のコイルに、使用済ランセットは他方のコイル上にある。ランセットは支持体バンド上に巻き付けるために、その際に屈曲しない充分に軟質の材料から構成される。他方、ランセットの材料は、ランセットが作動時および皮膚へ侵入時に変形しないように安定している。別法としてランセットは横方向に支持体上に配置されており、その結果、ランセットの曲げを防ぐことができる。未使用のランセットの曲げを防ぐ別の可能性はランセットが保管されるコイルの直径の選択であり、その結果、ランセットは転動時に曲がることがない。
【0033】
ランセットは、ランセットの遠位端にあるランセット尖端を有する。このシステム内には、ランセット尖端が残余のランセット本体を基準にその位置合わせで変更可能であるように該ランセットに作用する屈曲要素がある。好ましい実施形態において屈曲要素は作動する前にランセットへの力作用でランセット本体への力作用箇所を制御することができる。そのために、屈曲要素は制御要素によって制御することができる。力伝達のために押棒を用いることができる。
【0034】
屈曲要素のもう1つの実施形態はランセット、支持体または支持体バンドがランセットと共に送り出される押棒であり、その結果、その際にランセットに作用する力がランセット尖端を屈曲するために充分である。ランセットへの良好な力伝達を達成するために、たとえば支持体バンドを固定してもよい。支持体バンドの一体の屈曲要素のその他の実施形態は、たとえば可能な限り小さい半径を有する車(図4a参照)もしくは支持体バンドが送り出される縁部上のガイド部(図3参照)である。この別法の機能方式は図面でより詳しく説明する。
【0035】
前記システムもしくは装置に従来のランセット、好ましくは平型ランセット、さらにまたランセットの尖端を支持体バンドの平面もしくはランセット本体平面から送り出すための屈曲要素の閾値力が充分である全てのランセットを使用してよい。ランセットはこの折曲過程後または過程中それに続き穿刺過程を実行するために、駆動要素からケース開口部の方向へ移動される。その際にランセットの少なくとも一部がケース開口部から出され、患者の皮膚に穿刺される。この穿刺箇所に分析に利用される血液滴が形成される。テストエレメントが支持体または支持体バンド上にあるとき、支持体または支持体バンドは、必要であれば、テストエレメントがケース開口部の下方にくるまで輸送される。血液滴はテストエレメント上に塗布することができ、その他の工程に患者を引き込む必要がない。別法としてテストエレメントは上述のように第2の支持体上におくこともできる。血液は、たとえば欧州特許出願公開第0885591号明細書、欧州特許第0535480号明細書および欧州特許第0477322号明細書から知られているように、テストエレメント上にある1または複数の試薬と反応する。テストエレメントは検出器を利用して分析される。
【0036】
血液は、先行技術から知られているように種々の成分を検査することができる。たとえばヘマトクリット、グルコース、コレステリン、凝結、鉄およびその他の血液成分の分析に対応することができる。分析のために種々の方法を適用してよい。たとえば電気化学検出反応、さらにまた光学的(たとえば反射、吸収、蛍光、ラマン分光法)または磁気検出反応を利用することができる。液体は典型的にテストシステムと接触させられ、テストエレメントと液体間の反応が生じる。この検出は光学テストエレメントを用いる液体と検出試薬との間の色反応に基づく。この反応の例は米国特許第3802842号明細書、米国特許第4061468号明細書および米国特許第4490465号明細書に記載されている。
【0037】
このシステムは装置の利用時に種々の工程を実行する。ランセットは該ランセットがランセット本体への閾値力の作用によって屈曲状態へ移行される位置へ移動される。その際に好ましくは滅菌保護部がランセットによって突き通される。ランセットは必要であればケース開口部まで輸送される。該ランセットはそこで駆動要素を利用して作動され、その際に一部がケース開口部から出る。ランセットは作動過程で少なくとも一部が患者の皮膚へ入り、その後再び装置へ戻る。その際にマイクロサンプラーを使用する場合、血液をランセットに集めることができる。輸送バンドが使用されるとき、該輸送バンドが引き続き輸送され、コイルに巻きつけられる。その際にランセットは、好ましくは再び平坦に支持体バンド上にある。この再マガジン化過程は米国特許出願公開第2005/0245845号明細書に記載されている。
【0038】
テストエレメントも支持体または支持体バンド上に好ましくは交互にランセットと共に取り付けられる集積システムの中に該テストエレメントが穿刺過程後に血液滴を分析用に収容するためにケース開口部まで輸送される。テストエレメントは検出器まで輸送し、そこで測定することができる。マイクロサンプラーを使用する場合、収集された血液は隣接するテストエレメントに伝送される。上述のようにテストエレメントは同じ支持体または第2の支持体上にある。両支持体は、好ましくは互いに移動可能に配置されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
図1aはランセット(1)の可能な一実施形態を示す。ランセット(1)は遠位端(2)および近位端(7)を有する。ランセット(1)は近位端(7)に続き、尖端領域(2)へ移行する領域(8)を有する。ランセット(1)は、以下、型彫と呼ぶ変化した剛性をもつ構造(3)を有する。型彫(3)は尖端領域(2)の内部または外部におくことができる屈曲領域にある。この型彫(3)はランセットの遠位端と近位端との間の様々な箇所(3a)、(3b)、(3c)に設けることができる。屈曲領域(12)は型彫(3、3a、3b、3c)の領域によって規定され、それぞれ型彫の数と位置とに応じて変化させることができる。少なくとも1つの型彫(3、3a、3b、3c)はここで尖端領域(2)の内部にある。屈曲領域は引き続きランセット本体(78)の一部にわたって延伸することができる。屈曲領域はここで尖端領域(2)に隣接している。尖端領域(2)はランセット尖端(2d)に向かう。ランセットの屈曲時に制御要素によって制御される屈曲要素(ここに図示せず、図6参照)は、ランセットが型彫(3)もしくは(3a)、(3b)、(3c)で屈曲されることを生ぜしめる。それぞれ折曲の位置と選択に応じてランセット(1)は穿刺過程で様々な深さで皮膚に侵襲させることができる。
【0040】
型彫(3)をもつランセット(1)は図1bに屈曲状態で示されている。ランセット尖端(2d)ならびに尖端領域(2)は領域(8)に対して角度αだけ折り曲げられている。角度αは180°および約80°の間におくことができる。好ましい範囲は150°および110°の間にある。
【0041】
図1cに本発明の好ましい実施形態であるランセット(1)が示されている。このランセット(1)は、有利には変化した剛性をもつ少なくとも1つの構造を有する。この変化した剛性は残余のランセット本体を基準にランセット尖端の位置合わせの容易な、かつ標定した変化に用いられる。この剛性は、好ましくは前記構造で低減されており、その結果ランセット本体、ランセット尖端(2d)をもつ尖端領域(2)への力の作用時に低減された剛性の箇所で屈曲する。このような変化した剛性の構造は種々の方法によって達成することができる。ランセット(1)の製造工程でこの箇所に少ない材料を取り込むことができる。もう1つの可能性は前記構造を取り込むためのスタンピングまたはハンマー工程または型彫工程である。さらに先行技術で公知のあらゆる金属を加工する変化した剛性をもつ構造を生じる方法が使用可能である。好ましい構造において第1の型彫(3)はランセット(1)の遠位端(2d)から少なくとも尖端領域(2)の一部を介してランセット(1)の近位端(7)の方向へ材料の中に型彫りされる。この型彫(3)はランセットの近位端(7)まで延伸させることができる。この型彫の横方向から第2の型彫(4)を材料の中に取り込むことができる。この型彫はランセット(1)の中心(6)から側面縁部(18)の方向へ延伸する尖端領域(2)の内部または外部で開始することができる。この型彫(4)とランセット(1)の中心線(6)との間の角度αは0°および90°の間になる。この角度αは、好ましくは30°および70°の間にある。第3の型彫(5)は対向側で型彫(4)まで延伸する。この型彫(5)もランセット(1)の中心(6)から側面縁部(19)へ延伸する。中心線(6)と型彫(5)との間の角度は同様に0°および90°の間にあり、好ましい範囲は30°および70°の間にある。角度αおよびβは同じである必要がない。ランセットの側面縁部(18)および(19)への側面縁部(10)および(11)の移行部が尖端領域の境界を形成する。この場合、両方の側面縁部(10)および(11)は尖端(2d)の中で会合する。屈曲領域は尖端領域(2)の内部も外部にもおくことができ、好ましい実施形態においてランセット(1)の全長に延伸する。型彫をランセット(1)の中に侵入できるようにするため、好ましくは薄板から構成される平型ランセットが用いられる。
【0042】
前記薄板の中への型彫(3)、(4)、(5)によって屈曲線が生じる。この屈曲線は少なくとも部分的に前記薄板の屈曲が図1cからのランセット平面(89)の一方の側および部分的に他方の側に生じる。ランセット平面(89)は非屈曲ランセット(1)の平面(8)および(9)から形成される。図1cでランセット平面(89)は紙面内にある。屈曲したランセットは図1dに側面図で示されており、従ってランセット平面(89)は90°だけ紙面から回転されている。ランセット(1)の標定した屈曲は線(3)、(4)、(5)に沿って穿孔またはスクラッチングまたはエッチングによっても達成することができる。屈曲線(3)、(4)、(5)の特殊配置によってランセットへの力作用時にランセット平面(89)に対して90°以上まで尖端(2d)の屈曲と同時に尖端領域(2)の側面(2a)および(2b)の屈曲ならびに残余のランセット本体の平面(8)および(9)の反対の屈曲が生じる。この好ましい実施形態は低減された安定性を有する構造にもかかわらずランセット本体の高い安定性を有する。ランセット(1)は患者の皮膚の中へ採血の穿刺過程を実施するために充分安定している。非屈曲状態で穿刺前または穿刺後にランセットは米国特許出願公開第2005/0245845号明細書に記載されているように、好ましくはバンド上で転動させることができる。穿刺は、たとえばランセット端(20)周りのランセットの回転によって実施することができる。型彫(3)、(4)は平面(2a)を含み、他方、型彫(3)、(5)は平面(2b)を含む。この図1cに示した実施例において型彫(4)、(5)は側面縁部(10)、(11)によって限定される尖端領域(2)の外部で終了する。この線は尖端領域を超えて縁部(18)、(19)内でランセット(1)の近位端(7)まで伸長する。好ましい実施形態において型彫(4)および(5)に加えて別の型彫を好ましくは型彫(4)および(5)と平行に屈曲領域に入れることができる(図示せず)。この別法の型彫を利用して尖端は様々な箇所で屈曲させることができ、それによって、様々な長さを有することができる。この方法により皮膚の中へ様々な穿刺深さを実現することができる。
【0043】
図1dにランセットは屈曲状態で示されている。この側面図では平面の一部のみが識別され、折曲過程で平面(2a)、(2b)は上方へランセット平面(89)から曲げられ、他方、平面(8)、(9)は下方へ平面(89)から移動される。中心線(6)は、この場合好ましくはランセット平面(89)の中にとどまる。ランセット尖端(2d)の折曲はランセット平面(89)の平面に対して100°まで行うことができる。ここで側面図で図1dに平面(2c)として識別される尖端領域(2)の下側に見ることができる。これは図1cで平面(2b)の裏面を形成する。図1dの側面図で識別できないのは平面(8)および(2a)である。平面(8)は平面(9)の背後にあり、他方、平面(2a)は平面(2c)の背後に隠れている。回転点(20)周りの時計回りのランセット(1)の回転時にランセット(1)は上方への移動と、戻り回転時に下方への移動を実行する。ランセット(1)の別法の駆動はランセット(1)の近位端(7)でのランセットシャフトのグリッパまたは鉗子による把持によって可能である。その際にランセット(1)は点(20)周りに回転されず、全体が移動する。この実施形態においてランセットの移動を制限しないために、支持体バンド(14)は充分な柔軟性を有する必要がある。
【0044】
図2aはランセット(1)の製造後の該ランセットを示す。この特殊態様においてランセット(1)はスタンピングまたはエッチングによってここで支持体バンド(14)を表す薄板帯から形成されている。ランセット(1)は支持体バンド(14)上に互いに横方向に配置されている。尖端領域(2)に該ランセットは型彫(3)、(4)および(5)を有し、型彫(4)および(5)は縁部(10)および(11)の近位端で終了する。尖端領域周りにスタンピングまたはエッチングによって製造される中空(13)が延伸する。尖端領域(2)周りの支持体バンド(14)内の前記中空(13)によって尖端(2d)はランセット平面から折り曲げることができ、これはランセット(1a)の場合で示されている。このランセット(1a)の場合、尖端(2d)は上方へ折り曲げられており、この場合ランセット中心線(6)が曲げ線である。
【0045】
図2bでランセット(1)は支持体バンド(14)上に長手方向位置合わせに配置されている。図2aに非屈曲ランセット(1)も屈曲ランセット(1a)も示されている。屈曲したランセット(1a)の場合、ランセット尖端(2d)は支持体バンド平面(14)から折り曲げられている。
【0046】
図3は支持体バンド(14)ならびに支持体バンド(14)のガイド部(15)に対するランセット(1)の配置の模式図である。ガイド部(15)はここで等辺三角形で示されており、支持体バンド(14)は縁部(16)を介して送り出される。ここでランセット尖端(2d)は、ランセット(1)が方向転換縁部(16)に達する瞬間に支持体バンド平面から折り曲げられることが識別される。このランセットを折り曲げる可能性は、図1cに記載したように、ランセットを使用する場合に特に好ましい。
【0047】
図4aは、ランセット尖端(2d)が自動的に支持体バンド平面(14)から折り曲げられるように支持体バンド(14)を案内するもう1つの可能性を示す。この場合、支持体バンド(14)はそれぞれ支持体バンド(14)の配置に応じてローラ(21)上で右または左周りに回転できるローラ(21)を介して案内される。この実施例においてランセット(1)はバンド(14)上の長手方向位置合わせで延伸し、ランセット(1)の近位端(7)はランセット尖端(2d)に先行して移動する。ローラ(21)は、たとえばローラ(21)上での支持体バンド(14)の滑落を阻止する溝付車から構成することができる。穿刺過程はここで車(21)の迅速な前方回転および戻り回転によって行われる。ランセット(1)の屈曲はここで車(21)上の付加的な屈曲要素(たとえばビード、ここに図示せず)によって容易に行うことができる。このビードによって車(21)の回転運動による力に加えてランセット本体の中心(6)への力が加えられる。この力はランセット本体の側面(8)および(9)の折曲と共にランセット尖端(2d)の屈曲を生ぜしめる。
【0048】
図4bに屈曲したランセット(1a)の尖端(2d)が支持体バンド平面(14a)から突出するランセットが示されている。穿刺過程を実施できるようにするため、バンド(14)はランセット(1a)の対向側にボルト(ここに図示せず)によってランセット尖端(2d)の方向へ移動させることができる。ランセット(1a)を移動するもう1つの可能性はランセット(1a)のシャフトを把持する鉗子(ここに図示せず)を用いておよび上昇運動および下降運動によって穿刺過程が実施されている。この穿刺過程の好ましい実施形態はバンド(14)を穿刺過程の前に固定することである。支持体バンドの弾力性は、好ましくは該支持体バンドを穿刺深さ(約2〜3mm)だけ繰り出すことができるように選択される。ここで支持体バンドへの力作用の変化によって支持体バンドの繰り出しを変化させることができ、それによって、穿刺深さ(もしくはランセットの繰り出し幅)を変化させることができる。
【0049】
図5aに試験フィールド(22)とランセット(1)とが交互に配置されている支持体バンド(14)が示されている。ここでランセット(1)は支持体バンドに対して長手方向位置合わせで取り付けられている。支持体バンド(14)上の試験フィールド(22)とランセット(1)との間の間隔を変化させることができる。実施した穿刺後に液体を直ちに試験フィールド(22)から取り出すことができ、支持体バンド(14)を移動することがないようにランセット(1)を試験フィールド(22)の横に密接して配置することも可能である。交互に試験フィールド(22)とランセット(1)とを有するもう1つの実施形態は図5bに示されている。この場合ランセット(1)は支持体バンド上に横方向に配置されている。この場合もランセット(1)は試験フィールド(22)に対して可変間隔で配置することができる。
【0050】
図6に集積システムが示されている。このシステムは、好ましくは開口部(41)を有するケース(37)と、ランセット(1)が固定された支持体バンド(14)とを有する装置(40)から構成される。支持体バンド(14)は2つのコイル(38)および(39)に巻き付けられる。ここで支持体バンドに固定されたランセットの未使用部分はコイル(38)上にあり、使用済みの部分はコイル(39)に巻き付けられる。このコイル(38、39)の間に支持体バンド(14)が延伸する。コイル(38、39)は、先行技術から知られているように駆動装置によって移動される。好ましくは両方のコイル(38、39)の一方のみが駆動される。このような駆動の一例は米国特許出願公開第2005/0245845号明細書に記載されている。ランセット(1)は、支持体バンド(14)がコイルに巻き付けられているとき、非屈曲状態で支持体バンド(14)上にある。両方のコイル(38、39)の間に折曲過程の力をランセット(1)へ伝達するために用いられる第1の押棒(30a)がある。この押棒(30a)は支持体バンド(14)の下側に配置されている。この力は支持体バンド(14)の振り出しにのみ利用しないために、押棒(30a)に対して支持体バンド(14)の上方に支持体バンド(14)の垂直移動を阻止する屈曲要素(43)がある。屈曲要素(43)は、ランセット上にそれぞれ少なくとも1つの型彫の配置に応じて様々な形状を有することができる。1つの型彫のみを有するランセットの場合、屈曲要素がこの実施形態において専ら支持体バンドを有するランセットのさらなる移動を阻止する機能のみを有するので、屈曲要素の特別の形状は不要である。図1cに示しているように、1以上の型彫を有するランセットを折り曲げる必要のある屈曲要素(43)の好ましい実施形態において屈曲要素(43)は、被屈曲平面(8)および(9)が運動を阻止されるが、少なくとも1つの型彫(6)を有する屈曲領域が阻止されない形状を有する。この配置の一例は被屈曲平面にわたって延伸する2つの羽根を有するが、この羽根の間に充分な空間が残る屈曲要素(43)であり、ランセットが前記空間の中で引き続き移動することができ、かつ折り曲げられる。
【0051】
屈曲要素(43)はランセットが様々な箇所で折り曲げられるように屈曲要素(43)の位置を変化できる制御要素を含むことができる(ここに図示せず)。ただ1つの型彫(3)もしくは(3a、3b、3c)のみをランセット尖端の屈曲に利用する実施形態が特に有利である。
【0052】
ケース開口部(41)の下方にある第2の押棒(30b)はランセットを作動時に駆動することに用いられる。ケース開口部(41)と押棒(30b)との間に支持体バンド(14)がある。穿刺過程を解除するために支持体バンド(14)は未使用のランセット(1)がケース開口部(41)と押棒(30b)との間におくまで輸送される。穿刺過程の解除時に押棒(30b)は、少なくともランセット尖端(2)がケース開口部(41)から押し出されるほど大きい力でランセット(1)へ移動される。穿刺の実施後、血液は試験フィールド(22)に集められる。そこで検出器(42)を利用して分析できる試験フィールド上で試薬と血液の反応が生じる。ランセット(1)は支持体バンド(14)と共に再マガジン化される。コイル(39)上の巻付け過程によってランセットは再び平坦に支持体バンド(14)の中へ組み込まれる。
【0053】
図7に複数のランセット(1)をマガジン化できるもう1つの可能性が示されている。これは図7にランセット(1)が平面(89)に配置されているマルチランセット車(70)の形態で示されている。この場合、ランセット尖端(2d)はサーベル状に形成されており、その結果、ランセット(1)の使用に対してランセット尖端(2d)の側面の屈曲が必要である。そのために好ましい方法で近似的にランセット本体(78)と平行に1つの型彫が尖端(2)の領域に取り込まれている(ここに図示せず)。ランセット車(70)上に付加的に1つのテストエレメントを取り付けることができる(ここに図示せず)。さらに、ランセット(1)はマイクロサンプラーとして形成することができる。そのために該ランセットは好ましくは尖端領域(2)に体液を収容する構造を有する。同様に尖端領域(2)からランセット本体(78)への移行領域に設けることができる別の型彫は図示せず、ランセット尖端(2)の別の折曲は穿刺過程後に可能になる。同様に支持体もしくはランセット本体に設けることができるテストエレメント上への体液の伝送が可能になる。
【0054】
側面の屈曲は図8A〜Dに示されている。図8Aにランセット(1)が非屈曲状態で示されている。図8BおよびCにランセット1は折曲過程で示されており、ランセット尖端(2d)はゆっくりランセット本体平面(89)から押し出され、図8Dに示したような一定の角度で穿刺のために準備されている。ランセット(1)は穿刺時に円形に点(20)周りに移動される。この円形の移動によって屈曲した尖端領域(2)の形成を有利に円形運動に適合されており、これは縁部(10)および(11)が皮膚の中への可能な限り痛みの少ない穿刺もしくは切口を保証できるように該縁部が形成されることを意味する。ランセット(1)の領域(8)との関係での尖端領域(2)の位置に基づいて点(20)周りのランセット(1)の回転時に縁部(10)および(11)が切込運動に対して垂直に皮膚の中へ侵入でき、他方、図1Dに記載したようなランセット(1)の使用時に側面縁部(10)および(11)が0度以外の角度で穿刺運動に対して横方向に皮膚の中へ入ることが識別される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1a】未使用状態の型彫を有するランセットの模式図である。
【図1b】屈曲状態の型彫を有するランセットの模式図である。
【図1c】未使用状態の複数の型彫を有する平型ランセットの模式図である。
【図1d】屈曲状態の複数の型彫を有する平型ランセットの模式図である。
【図2a】支持体バンド上のランセットの横方向配置の模式図である。
【図2b】支持体バンド上のランセットの縦方向配置の模式図である。
【図3】縦断面図によるランセットおよびバンドおよびそのガイド部の模式図である。
【図4a】支持体バンドがローラを介して案内されるランセット作動の模式図である。
【図4b】バンドがその平面から水平に移動される作動中のランセットの模式図である。
【図5a】試験フィールドの交互の配置と配置されたランセットに沿った支持体バンドの模式図である。
【図5b】試験フィールドの交互の配置と横方向に配置されたランセットによる支持体バンドの模式図である。
【図6】ケースと重要な全要素とを有する集積装置の模式図である。
【図7】平面図によるマルチランセット車の模式図である。
【図8a】異なる屈曲状態および3種類の屈曲率の図7のマルチランセット車のランセットである。
【図8b】異なる屈曲状態および3種類の屈曲率の図7のマルチランセット車のランセットである。
【図8c】異なる屈曲状態および3種類の屈曲率の図7のマルチランセット車のランセットである。
【図8d】異なる屈曲状態および3種類の屈曲率の図7のマルチランセット車のランセットである。
【符号の説明】
【0056】
1 ランセット
1a 屈曲型ランセット
2 尖端領域
2a 第1の側面
2b 第2の側面
2c 平面
2d ランセット尖端
3、3A、3B、3C 第1の型彫
4 第2の型彫
5 第3の型彫
6 中心線
7 近位端
8 領域、平面
9 第2の平面
10 第1の側面縁部
11 第2の側面縁部
12 屈曲領域
14 支持体バンド
14a 支持体バンド平面
14b 支持体
15 ガイド部
16 縁部
18 第1の側面縁部
19 第2の側面縁部
20 ランセット端
21 ローラ
22 試験フィールド
30A 第1の押棒
30B 第2の押棒
39 コイル
40 装置
41 開口部
42 検出器
43 屈曲要素
70 マルチランセット車
78 ランセット本体
89 ランセット平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本質的に平面的な支持体バンドと、ランセット本体および尖端とを含む少なくとも1つのランセットを含む体液採取用の装置において、前記ランセットが横にして支持体バンド上に配置されている装置であって、
ランセットが屈曲領域を含み、その結果、ランセットが力作用下に好ましくは尖端の領域で折り曲げられており、その結果、前記尖端がランセット本体の縦軸を基準に該ランセットの位置合わせで変化されることを特徴とする装置。
【請求項2】
少なくとも1つのランセットが平型ランセットであることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
ランセット本体への力の作用時にランセット尖端が本質的に平面的な支持体バンドの平面から突出することを特徴とする請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
ランセットが屈曲領域で変化した剛性をもつ少なくとも1つの構造を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
変化した剛性をもつ少なくとも1つの構造が尖端領域の長手方向拡大部の一部に延伸することを特徴とする請求項4記載の装置。
【請求項6】
ランセットへの閾値力の作用時に、変化した剛性をもつ少なくとも1つの構造が隣接する平面の屈曲を生ぜしめることを特徴とする請求項4〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
少なくとも1つのランセットが様々な位置合わせで支持体バンド上に配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
支持体バンド上にさらに少なくとも1つのテストエレメントが配置されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
ランセットが該ランセットの近位端で支持体バンド上に固定されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
少なくともランセット尖端が滅菌保護部を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
滅菌保護部がランセットの使用前または使用中にランセット尖端から分離されることを特徴とする請求項10記載の装置。
【請求項12】
本質的に平面的な支持体バンドと、支持体バンドに横にして配置されている少なくとも1つのランセットと、ランセットの遠位端にあるランセット尖端と、ランセットに作用する屈曲要素とから構成される体液採取用のシステムであって、ランセット尖端が力作用下にランセットの縦軸を基準に該ランセットの位置合わせで変化可能であるシステム。
【請求項13】
請求項2〜11のいずれか1項に記載のランセットを有する請求項12記載のシステム。
【請求項14】
屈曲要素が制御要素を含み、ランセットが屈曲領域の様々な箇所で折り曲げることができることを特徴とする請求項12記載の装置。
【請求項15】
ランセット本体と尖端とを含む少なくとも1つのランセットを含む体液採取用の装置であって、
ランセットが屈曲領域を含み、その結果、ランセットが力作用下に好ましくは尖端の領域で折り曲げられており、その結果、尖端がランセット本体の縦軸を基準に該ランセットの位置合わせで変化されることを特徴とする装置。
【請求項16】
ランセットが支持体上に配置されていることを特徴とする請求項15記載の装置。
【請求項17】
支持体が本質的に円板状に形成されていることを特徴とする請求項16記載の装置。
【請求項18】
ランセット尖端が湾曲したサーベルの形状を有する請求項16または18記載の装置。
【請求項19】
支持体およびランセットが一体に形成されていることを特徴とする請求項1または15〜17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項20】
ランセット本体およびランセット尖端が非屈曲状態で支持体上に、好ましくは横にして取り付けられることを特徴とする請求項16記載の装置。
【請求項21】
屈曲領域が尖端領域とランセット本体の部分にあり、ランセット本体の後方部分が駆動ユニットの連結に用いられることを特徴とする請求項1または15記載の装置。
【請求項22】
ランセットの駆動方向が本質的に屈曲したランセット尖端に対して平行に、かつランセット本体平面に対して横方向にあることを特徴とする請求項21記載の装置。
【請求項23】
さらに少なくとも1つのテストエレメントが支持体上に配置されており、またはテストエレメントが別の支持体上にあることを特徴とする請求項16記載の装置。
【請求項24】
テストエレメントおよびランセットが非屈曲状態で互いに直接接触せず、特に、ランセットおよびテストエレメントが相並んで支持体の上または横に配置されていることを特徴とする請求項23記載の装置。
【請求項25】
ランセットおよびテストエレメントが屈曲後にランセットまたはテストエレメントの第2の移動によって接触するように該ランセットおよびテストエレメントが互いに配置されていることを特徴とする請求項23または24記載の装置。
【請求項26】
滅菌保護部が少なくともランセットの尖端領域を覆い、または取り囲むことを特徴とする請求項15記載の装置。
【請求項27】
滅菌保護部がランセットの屈曲時にランセット尖端によって破壊され、または刺し通されることを特徴とする請求項26記載の装置。
【請求項28】
屈曲領域が変化した剛性をもつ複数の領域を有することを特徴とする請求項15記載の装置。
【請求項29】
屈曲時に変化した剛性をもつ領域の選択によって屈曲した先端の長さを変化させることができることを特徴とする請求項28記載の装置。
【請求項30】
屈曲したランセット尖端が本質的に再びランセット本体の平面に戻して折り曲げられることを特徴とする請求項15記載の装置。
【請求項31】
ランセット尖端が第1の屈曲方向に向けられた連続屈曲によってランセット本体平面の中に折り曲げられることを特徴とする請求項15記載の装置。
【請求項32】
ランセットが、好ましくは尖端領域から開始して体液の収容を可能にする構造を有することを特徴とする請求項1〜31のいずれか1項に記載の装置。
【請求項33】
体液収容構造が毛管構造であることを特徴とする請求項32記載の装置。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−517104(P2009−517104A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541655(P2008−541655)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【国際出願番号】PCT/EP2006/011341
【国際公開番号】WO2007/060004
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(501205108)エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト (285)
【Fターム(参考)】