説明

屋外用ウレタン接着剤

【課題】初期接着性、硬化後の接着性及び硬化後の皮膜の柔軟性に優れ、好ましくは耐候性により優れる屋外用ウレタン接着剤、その接着剤を使用して得られる太陽電池バックシート、及びその太陽電池バックシートを用いて得られる太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】イソシアネート化合物(a1)とエステル結合を有するポリオール(a2)が反応して得られるウレタン樹脂(A)を含み、イソシアネート化合物(a1)が脂肪族イソシアネート及び脂環式イソシアネートから選択される少なくとも1種を含み、ポリオール(a2)がポリエステルポリオール(a2−1)とアクリルポリオール(a2−2)の両方を含む屋外用ウレタン接着剤(A)は、初期接着性、硬化後の接着性及び硬化後の皮膜の柔軟性に優れる。ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物を更に含む場合、色差変化が少なくなり、耐候性により優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外用ウレタン接着剤に関する。更に、本発明は、その接着剤を用いて得られる太陽電池バックシート、及びその太陽電池バックシートを用いて得られる太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
防壁材、屋根材、太陽電池パネル材、窓材、屋外フローリング材、照明保護材、自動車部材、及び看板等の屋外材料は、構成材料として、複数のフィルムが接着剤で貼り合わされた積層体を有する。積層体を構成するフィルムとして、例えば、アルミニウム、銅、及び鋼板等の金属箔、金属板及び金属蒸着フィルム、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、フッ素樹脂、及びアクリル樹脂等のプラスチックフィルム等を例示できる。
【0003】
これらの積層体は長期にわたって屋外に曝されるので、屋外用接着剤には優れた耐久性能が要求される。屋外用接着剤の中でも、特に太陽光を電力に変換する太陽電池用途の接着剤には、通常の屋外用接着剤よりも高いレベルの耐久性能が望まれる。
【0004】
太陽電池は、有用なエネルギー資源として実用化が進んでいる。太陽電池には様々な形態があり、代表的なものとして、シリコン系太陽電池、化合物系太陽電池、及び有機系太陽電池等が知られている。
【0005】
これらの太陽電池は、一般的に、太陽光が入射する側に、表面を保護する目的で表面保護シートが設けられている。太陽光が入射する面と反対側の面にも、太陽電池セルを保護する目的で裏面保護シート(バックシート)が設けられている。
【0006】
図1に示すように、バックシート10は複数のフィルム11及び12の積層体であり、フィルム11及び12は接着剤13を介して積層される。バックシート10は、封止材20、太陽電池セル30、ガラス板40と一緒に太陽電池モジュール1を構成する(図3参照)。
【0007】
太陽電池モジュール1は、長期間に渡って屋外に曝されるので、高温、多湿、太陽光に対して十分な耐久性が要求される。特に、接着剤13の性能が低いと、フィルム11及び12が剥がれ、バックシート10の外観が損なわれる。このため、太陽電池バックシート用接着剤には、屋外で長期間暴露されてもフィルムが剥離しないことが要求される。
【0008】
太陽電池バックシート用接着剤の一例として、特許文献1〜3には、ウレタン系接着剤で太陽電池バックシート製造に用いられることを開示されている。
特許文献1には、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール等の各種ポリオールとイソシアネート化合物とを反応させ、太陽電池バックシート用ウレタン系接着剤を製造することを開示する(特許文献1段落番号0055、0056等参照)。
【0009】
特許文献2は、特定のポリエステルポリオールを用い、耐久性能が向上した屋外用ウレタン系接着剤を開示する(特許文献2特許請求の範囲、段落番号0014等参照)。特定のポリエステルポリオールを接着剤原料とすることで、ウレタン接着剤の耐加水分解性が向上し、太陽電池バックシート用途に有効な接着剤が得られることを開示する(特許文献2段落番号0070〜0072等参照)。
特許文献3は、アクリルポリオールにイソシアネート硬化剤を配合して接着剤を製造し(特許文献3表1、表2参照)、これら接着剤で太陽電池バックシートを作製する旨を開示する(特許文献3段落番号0107等参照)。
【0010】
特許文献1〜3は、耐加水分解性やラミネート強度の優れた接着剤で太陽電池バックシートを作製することで、太陽電池モジュールの外観不良が防止できることを教示する。しかし、太陽電池バックシート用接着剤に求められる耐久性能は、年々高くなってきている。特許文献1〜3の接着剤は、初期接着性や硬化後の接着性、硬化後皮膜の柔軟性について、近年の極めて高いレベルの要求性能を満足するものとは言えない。これらの接着剤で太陽電池バックシートを作製すると、屋外の環境が厳しい場合、バックシートを構成する複数のフィルムが剥がれてしまう可能性がある。
【0011】
更に、近年では、シリコンや無機化合物材料を用いた太陽電池よりも生産コストの安い有機系太陽電池の開発が進められている。有機系太陽電池は、着色性や柔軟性を持たせられるという特徴があるので、太陽電池バックシートを構成するフィルムとして透明なフィルムが採用される傾向がある。従って、太陽電池バックシート用接着剤には、長期間、剥離強度を維持するだけではなく、紫外線に長期間曝されても色差変化が小さく、耐候性が著しく優れることも要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−004691号公報
【特許文献2】特許4416047号
【特許文献3】特開2010−263193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたもので、その課題は、初期接着性、硬化後の接着性及び硬化後の皮膜の柔軟性に優れ、好ましくは耐候性により優れる屋外用ウレタン接着剤、その接着剤を使用して得られる太陽電池バックシート、及びその太陽電池バックシートを用いて得られる太陽電池モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことに、ウレタン樹脂の原料として特定のポリオール及び特定のイソシアネート化合物を用いることで、初期接着性、硬化後の接着性及び硬化後の皮膜の柔軟性に優れ、更に、特定の紫外線吸収剤を添加することで、耐候性が著しく向上した屋外用ウレタン接着剤が得られることを見い出し、本発明を完成させるに至った。
【0015】
即ち、本発明は、第1の要旨において、
イソシアネート化合物(a1)とエステル結合を有するポリオール(a2)が反応して得られるウレタン樹脂(A)を含み、
イソシアネート化合物(a1)が脂肪族イソシアネート及び脂環式イソシアネートから選択される少なくとも1種を含み、
ポリオール(a2)がポリエステルポリオール(a2−1)とアクリルポリオール(a2−2)の両方を含む屋外用ウレタン接着剤を提供する。
【0016】
本発明は、一の態様において、
アクリルポリオール(a2−2)は、合計で4以上の炭素原子を含むアルキル基がエステル結合と結合している屋外用ウレタン接着剤を提供する。
本発明は、別の態様において、ポリエステルポリオール(a2−1)がジカルボン酸と多価アルコールの重縮合により得られ、
この多価アルコールは、分岐状脂肪族ジオールを含み、その分岐状脂肪族ジオールの1分子中の分岐した側鎖は、合計で2以上の炭素原子を含む屋外用ウレタン接着剤を提供する。
【0017】
本発明の好ましい態様において、
上述の分岐脂肪族ジオールは、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール及び2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールから選ばれる少なくとも1種である屋外用ウレタン接着剤を提供する。
本発明は、更に好ましい態様として、
ヒドロキシフェニリトリアジン系化合物を更に含む屋外用ウレタン接着剤を提供する。
【0018】
本発明は、他の要旨において、上記屋外用ウレタン接着剤を用いて得られる太陽電池バックシートを提供する。
本発明は、好ましい要旨において、上記太陽電池バックシートを用いて得られる太陽電池モジュールを提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る屋外用ウレタン接着剤は、
イソシアネート化合物(a1)とエステル結合を有するポリオール(a2)が反応して得られるウレタン樹脂(A)を含み、
イソシアネート化合物(a1)が脂肪族イソシアネート及び脂環式イソシアネートから選択される少なくとも1種を含み、
ポリオール(a2)がポリエステルポリオール(a2−1)とアクリルポリオール(a2−2)の両成分を含むことによって、
初期接着性、硬化後の接着性及び硬化後の皮膜の柔軟性が向上し、これらの特性に優れ、太陽電池バックシート用接着剤として好適である。
【0020】
本発明の屋外用ウレタン接着剤は、アクリルポリオール(a2−2)が合計で4以上の炭素原子を含むアルキル基がエステル結合と結合している場合、更に、初期接着性能におけるせん断クリープに優れ、硬化皮膜特性におけるプレッシャークッカー試験でタックが発現し難くなる。
本発明に係る屋外用ウレタン接着剤は、ポリエステルポリオール(a2−1)がジカルボン酸と多価アルコールの重縮合により得られ、この多価アルコールが、分岐状脂肪族ジオールを含み、その分岐状脂肪族ジオールの1分子中の分岐した側鎖は、合計で2以上の炭素原子を含む場合、初期接着性のタックに優れ、硬化皮膜の特性において、柔軟性に優れる。
【0021】
本発明の屋外用ウレタン接着剤は、分岐脂肪族ジオールが2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール及び2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールから選ばれる少なくとも1種である場合、初期接着におけるタックに優れ、硬化皮膜の柔軟性に優れ、太陽電池バックシート用途により適する。
本発明の屋外用ウレタン接着剤は、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物を更に含む場合、色差変化が少なくなり、耐候性がより向上するので、太陽電池バックシート用接着剤として更により適する。
【0022】
本発明に係る太陽電池バックシートは、上記屋外用ウレタン接着剤を用いて得られるので、長期間屋外に暴露されても、接着剤が劣化してフィルムが剥離せず、フィルムが変色しない。
近年、光吸収層に有機化合物を用いた有機系太陽電池が開発されており、有機系太陽電池に着色性や柔軟性を持たせることが要求されている。従って、有機系太陽電池のバックシートを構成するフィルムが透明化する傾向があるので、色差変化が小さく、柔軟性のある本発明の太陽電池バックシートは、かかる点からも有用である。
本発明に係る太陽電池モジュールは、上記太陽電池バックシートを用いて得られるので、外観に優れ、更に耐久性能にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の太陽電池バックシートの一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の太陽電池バックシートの別の実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明の太陽電池モジュールの一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る屋外用ウレタン接着剤は、特定のイソシアネート化合物(a1)と特定のポリオール(a2)とを反応させて得られた(A)ウレタン樹脂を含む。
イソシアネート化合物(a1)は、脂肪族イソシアネート及び脂環式イソシアネートから選択される少なくとも1種を含み、特に、本発明では、脂肪族イソシアネートを含むことが好ましい。
【0025】
本発明に係る「イソシアネート化合物(a1)」は、脂肪族イソシアネート及び脂環式イソシアネートのみから構成されることを意味しない。本発明が目的とする屋外用ウレタン接着剤を得られる限り、即ち、本発明の屋外用ウレタン接着剤の接着性や耐候性に悪影響を与えない範囲で、イソシアネート化合物(a1)は芳香族イソシアネートを含んでもよい。尚、イソシアネート化合物(a1)は、耐候性の観点から、エチレン性二重結合(例えば、エチレン基、ブチレン基等)を含まないことが好ましい。
【0026】
本明細書ではイソシアネートを、上述のように脂肪族イソシアネート、脂環式イソシアネート、芳香族イソシアネートに分類するが、本発明の構成要件であるイソシアネート化合物(a1)は、脂肪族イソシアネート及び脂環式イソシアネートから選択される少なくとも1種を含むので、芳香族イソシアネートのみで構成されることはない。
【0027】
本明細書では、「脂肪族イソシアネート」とは、鎖状の炭化水素鎖を有し、その炭化水素鎖にイソシアネート基が直接結合している化合物であって、環状の炭化水素鎖を有さない化合物をいう。「脂肪族イソシアネート」は、芳香環を有してもよいが、直接その芳香環と、イソシアネート基は、結合していない。
尚、本明細書では、芳香環は環状の炭化水素鎖に含まれない。
【0028】
「脂環式イソシアネート」とは、環状の炭化水素鎖を有し、鎖状の炭化水素鎖を有してよい化合物である。イソシアネート基は、環状の炭化水素鎖と直接結合しても、有し得る鎖状の炭化水素鎖と直接結合してもよい。「脂環式イソシアネート」は、芳香環を有してもよいが、その芳香環と、イソシアネート基は、直接結合していない。
【0029】
「芳香族イソシアネート」とは、芳香環を有し、かつ、イソシアネート基がその芳香環と直接結合している化合物をいう。従って、たとえ芳香環をその分子内に有していたとしても、イソシアネート基が芳香環に直接結合していない化合物は、脂肪族イソシアネートか、脂環式イソシアネートに分類される。
【0030】
従って、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(OCN−C−CH−C−NCO)は、イソシアネート基が芳香環に直接結合しているので、芳香族イソシアネートに該当する。一方、例えば、キシリレンジイソシアネート(OCN−CH−C−CH−NCO)は、芳香環を有するが、イソシアネート基が芳香環に直接結合せず、メチレン基と結合しているので、脂肪族イソシアネートに該当する。
尚、芳香環は、二つ以上のベンゼン環が縮環していてもよい。
【0031】
脂肪族イソシアネートとして、例えば、1,4−ジイソシアナトブタン、1,5−ジイソシアナトペンタン、1,6−ジイソシアナトヘキサン(以下、HDI)、1,6−ジイソシアナト−2,2,4−トリメチルヘキサン、2,6−ジイソシアナトヘキサン酸メチル(リジンジイソシアネート)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン(キシリレンジイソシアネート)等を例示できる。
【0032】
脂環式イソシアネートとしては、例えば、5−イソシアナト−1−イソシアナトメチル−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(水添キシリレンジイソシアネート)、ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン(水添ジフェニルメタンジイソシアネート)、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン等を例示できる。
【0033】
本発明において、イソシアネート化合物(a1)は、本発明が目的とするウレタン接着剤を得ることができる限り、芳香族イソシアネートを含んでもよい。芳香族イソシアネートとして、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート等を例示できる。
これらのイソシアネート化合物は、単独で又は組み合わせて使用することができる。特に、HDI、イソホロンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネートが好ましく、特に、HDIの3量体、イソホロンジイソシアネートの3量体及びキシリレンジイソシアネートの単量体が好ましい。
【0034】
本発明において、エステル結合を有するポリオール(a2)は、ポリエステルポリオールとアクリルポリオールの両方を含む。尚、エステル結合を有するポリオール(a2)は、耐候性の観点から、エチレン性二重結合を含まないことが好ましい。
本発明において「ポリエステルポリオール」とは、「主鎖型」ポリエステルであって、「主鎖」にエステル結合と水酸基を有する化合物をいう。この水酸基は、主鎖の末端に通常位置し、イソシアネート基と反応する官能基として作用する。
【0035】
ポリエステルポリオールは、一般に、多価アルコールと、ジカルボン酸及びその無水物との縮合重合反応によって得られる。
そのようなジカルボン酸として、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2−メチルコハク酸、2−メチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、3−メチルペンタン二酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリト酸、トリメシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等が例示される。これらは、単独又は組み合わせて使用される。
カルボン酸無水物として、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸が挙げられる。これらは、単独で用いても、複数種類を用いても良い。
【0036】
多価アルコールとして、官能基数が1〜3個のものが好ましく、特に、二官能性ポリオール、いわゆるジオールを含んでいるのが好ましい。
ジオールとして、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール等の直鎖状脂肪族ジオール;
2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−3−エチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−3−プロピル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−3−ブチル1,5−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、3−エチル−3−ブチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、3−エチル−3−プロピル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジブチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジブチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジプロピル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジプロピル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、3−ブチル−3−プロピル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−1,3−プロパンジオール、3−エチル−1,5−ペンタンジオール、3−プロピル−1,5−ペンタンジオール、3−ブチル−1,5−ペンタンジオール、3−オクチル−1,5−ペンタンジオール、3−ミリスチル−1,5−ペンタンジオール、3−ステアリル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2−プロピル−1,6−ヘキサンジオール、2−ブチル−1,6−ヘキサンジオール、5−エチル−1,9−ノナンジオール、5−プロピル−1,9−ノナンジオール、5−ブチル−1,9−ノナンジオール等の分岐脂肪族ジオール;
等を例示できる。
【0037】
これらのジオールは、単独で又は組み合わせて用いることができる。
本発明では、多価アルコールは、分岐状脂肪族ジオールを含み、その分岐状脂肪族ジオールの1分子中の分岐した側鎖は、合計で2以上の炭素原子を含むことが好ましい。
1分子中の分岐した側鎖が、合計で2以上の炭素原子を含む分岐状脂肪族ジオールは、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール及び2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールから選らばれる少なくとも1種であることが好ましい。
上述の分岐脂肪族ジオールを用いることによって、本発明の屋外用ウレタン接着剤は硬化皮膜の特性において、柔軟性により優れる。
【0038】
本発明において、「アクリルポリオール」とは、水酸基を有する(メタ)アクリレートの付加重合反応によって得られる化合物をいい、「側鎖」にエステル結合を有する。
「アクリルポリオール」は、水酸基を有する(メタ)アクリレートの単独重合体でも、「その他の重合性単量体」との共重合体であってもよい。アクリルポリオールの水酸基がイソシアネート基と反応する。
【0039】
「水酸基を有する(メタ)アクリレート」として、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート等を例示できる。
【0040】
「その他の重合性単量体」とは、「水酸基を有する(メタ)アクリレート」以外の「エチレン性二重結合を有するラジカル重合性単量体」である。具体的には、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、スチレン及びビニルトルエン等を例示できる。
【0041】
アクリルポリオールは、合計で4以上の炭素原子を含むアルキル基がエステル結合と結合していることが好ましい。本発明では、この炭素数4以上のアルキル基が結合しているエステル結合の割合は、アクリルポリオールが有するエステル結合の50%以上であることが好ましい。合計で4以上の炭素原子を有するアルキル基が結合しているエステル結合の割合が50%以上である場合、屋外用ウレタン接着剤は、初期接着性能におけるせん断クリープに優れ、硬化皮膜特性におけるプレッシャークッカー試験でタックが発現し難くなる。
【0042】
アクリルポリオールのエステル結合と結合するアルキル基の化学構造は、アクリルポリマーの“原料モノマー”となる「水酸基を有する(メタ)アクリレート」及び「その他の重合性単量体」に基づく。
すなわち、本発明では、アクリルポリマーの“原料モノマー”100重量部当たり、合計で4以上の炭素原子を含むアルキル基がエステル結合と結合しているモノマーは50重量部以上含まれることが好ましい。合計で4以上の炭素原子を含むアルキル基がエステル結合と結合しているモノマーが50重量部以上含まれる場合、屋外用ウレタン接着剤は、よりいっそう、初期接着性能におけるせん断クリープに優れ、硬化皮膜特性におけるプレッシャークッカー試験でタックが発現し難くなる。
【0043】
尚、本発明が目的とする屋外用ウレタン接着剤を得られる限り、エステル結合を有するポリオール(a2)は、ポリエーテルポリオールを含んでもよい。ポリエーテルポリオールとして、例えば、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)及びポリオキシエチレングリコール(PEG)等を例示できる。
【0044】
本発明に係る(A)ウレタン樹脂は、イソシアネート化合物(a1)と、エステル結合を有するポリオール(a2)を反応させることで得ることができる。反応は、既知の方法を用いることができ、通常、イソシアネート化合物(a1)とエステル結合を有するポリオール(a2)を混合することで行うことができる。混合方法は、本発明に係る(A)ウレタン樹脂を得ることができる限り、特に限定されるものではない。
【0045】
本明細書において「(B)ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物」とは、トリアジン誘導体の一種であり、トリアジン誘導体の炭素原子にヒドロキシフェニル誘導体が結合した化合物であって、一般的にヒドロキシフェニルトリアジン系化合物とされるものであり、本発明が目的とする屋外用ウレタン接着剤を得られる限り、特に制限されるものではない。
【0046】
そのような(B)ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物として、例えば、下記式(1)〜(5)で示される化合物及びその異性体を例示することができ、これらが好ましいが、これらに限定されることはない。
【0047】
【化1】

【0048】
【化2】

【0049】
【化3】

【0050】
【化4】

【0051】
【化5】

【0052】
そのような(B)ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物は、市販されているものを使用することができる。例えば、BASF株式会社から、チヌビン400、チヌビン405、チヌビン479、チヌビン477及びチヌビン460(いずれも商品名)等として市販されている。耐候性を考慮すると、チヌビン479(商品名)が好ましい。(B)ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
化学式(1)〜(5)の(B)ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物は、一般に、紫外線吸収剤として使用されており、本発明が目的とする屋外用ウレタン接着剤を得ることができる限り、他の紫外線吸収剤を組み合わせて使用することができる。「他の紫外線吸収剤」として、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、シュウ酸アニリド系化合物、マロン酸エステル系化合物等を例示することができ、市販されているものを使用することができる。
【0053】
本発明の屋外用ウレタン接着剤は、成分(A)及び成分(B)の他に、更に、(C)シラン化合物を含むことが好ましい。
本発明では、(C)シラン化合物として、例えば、(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシラン類、(メタ)アクリロキシアルキルアルキルアルコキシシラン類、ビニルトリアルコキシシラン類、ビニルアルキルアルコキシシラン類、エポキシシラン類、メルカプトシラン類及びイソシアヌレートシラン類を用いることができるが、これらのシラン化合物のみに限定されることはない。
【0054】
「(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシラン類」として、例えば、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、4−(メタ)アクリロキエチルトリメトキシシラン等を例示できる。
「(メタ)アクリロキシアルキルアルキルアルコキシシラン類」として、例えば、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルエチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシエチルメチルジメトキシシラン等を例示できる。
【0055】
「ビニルトリアルコキシシラン類」として、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルジメトキシエトキシシラン、ビニルトリ(メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリ(エトキシメトキシ)シラン等が例示できる。
「ビニルアルキルアルコキシシラン類」として、例えば、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルエチルジ(メトキシエトキシ)シラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジエチル(メトキシエトキシ)シラン等を例示できる。
【0056】
「エポキシシラン類」は、例えば、グリシジル系シラン及びエポキシシクロヘキシル系シランに分類できる。「グリシジル系シラン」は、グリシドキシ基を有するもので、具体的には、例えば、3−グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジエトキシシラン等を例示できる。
「エポキシシクロヘキシル系シラン」は、3,4−エポキシシクロヘキシル基を有するもので、具体的には、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等を例示できる。
【0057】
「メルカプトシラン類」として、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等を例示できる。
「イソシアヌレートシラン類」として、例えば、トリス(3−(トリメトキシシリル)プロピル)イソシアヌレート等を例示できる。
これら(C)シラン化合物は、剥離強度を向上させることに加え、(B)ヒドロキシフェニルトリアジンが含まれた接着剤の耐候性を向上させることができる。本発明では、特に、エポキシシラン類を添加すると、屋外用ウレタン接着剤の性能が著しく向上するので好ましい。
【0058】
本発明の屋外用ウレタン接着剤は、更に、(D)ヒンダードフェノール系化合物及び(E)ヒンダードアミン系化合物から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
「(D)ヒンダードフェノール系化合物」とは、一般にヒンダードフェノール系化合物とされるものであり、本発明が目的とする屋外用ウレタン接着剤を得られる限り、特に制限されるものではない。
【0059】
(D)ヒンダードフェノール系化合物は、市販されているものを使用することができる。(D)ヒンダードフェノール系化合物として、例えば、商品名IRGANOX1010、IRGANOX1035、IRGANOX1076、IRGANOX1135、IRGANOX1330及びIRGANOX1520(いずれも商品名)等を使用することができる。ヒンダードフェノール系化合物は、酸化防止剤として接着剤に添加され、例えば、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等と組み合わせて使用してもよい。
【0060】
「(E)ヒンダードアミン系化合物」とは、一般にヒンダードアミン系化合物とされるものであり、本発明が目的とする屋外用ウレタン接着剤を得られる限り、特に制限されるものではない。
(E)ヒンダードアミン系化合物は、市販されているものを使用することができる。(E)ヒンダードアミン系化合物として、例えば、チヌビン765、チヌビン111FDL、チヌビン123、チヌビン144、チヌビン152、チヌビン292及びチヌビン5100(いずれも商品名)等を使用することができる。ヒンダードアミン系化合物は、光安定剤として接着剤に添加され、例えば、ベンゾトリアゾール系光安定剤、ベンゾエート系光安定剤、ベンゾトリアゾール系光安定剤等と組み合わせて使用することができる。
【0061】
本発明に係る屋外用ウレタン接着剤は、目的とする屋外用ウレタン接着剤を得ることができる限り、更にその他の成分を含むことができる。
「その他の成分」を、屋外用ウレタン接着剤に添加する時期は、目的とする屋外用ウレタン樹脂が得られる限り、特に制限されるものではない。その他の成分は、例えば、(A)ウレタン樹脂を合成する際に、イソシアネート化合物(a1)及びポリオール(a2)と一緒に添加しても良く、また、まずイソシアネート化合物(a1)とポリオール(a2)とを反応させて(A)ウレタン樹脂を合成した後、(B)ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物を加えるときに、一緒に添加してもよい。
【0062】
「その他の成分」として、例えば、粘着付与樹脂、顔料、可塑剤、難燃剤、触媒及びワックス等を例示することができる。
「粘着付与樹脂」として、例えば、スチレン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族石油樹脂、芳香族石油樹脂、ロジンエステル、アクリル樹脂及びポリエステル樹脂(ポリエステルポリオールを除く)等を例示できる。
「顔料」として、例えば、酸化チタン及びカーボンブラック等を例示できる。
【0063】
「可塑剤」として、例えば、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソノニルアジペート、ジオクチルアジペート及びミネラルスピリット等を例示できる。
「難燃剤」として、例えば、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、アンチモン系難燃剤及び、金属水酸化物系難燃剤等を例示できる。
【0064】
「触媒」として、金属触媒、例えば、錫触媒(トリメチルチンラウレート、トリメチルチンヒドロキサイド、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンマレエート等)、鉛系触媒(オレイン酸鉛、ナフテン酸鉛、オクテン酸鉛等)、そのほかの金属触媒(ナフテン酸コバルト等のナフテン酸金属塩等)、及びアミン系触媒、例えばトリエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルへキシレンジアミン、ジアザビシクロアルケン類、ジアルキルアミノアルキルアミン類等を例示できる。
「ワックス」として、パラフィンワックスやマイクロクリスタリンワックス等のワックスが好ましい。
【0065】
本発明の屋外用ウレタン接着剤は、上述の成分(A)及び(B)、更に、場合により加えられる成分(C)、(D)、(E)及びその他の成分を混合することによって製造することができる。混合方法は、本発明が目的とする屋外用ウレタン接着剤を得ることができる限り、特に限定されるものではない。成分を混合する順序等についても、特に限定されるものではない。本発明に係る屋外用ウレタン接着剤は、特別な混合方法及び特別な混合順序等を要することなく製造することができる。そして得られた屋外用ウレタン接着剤は、接着強度及び耐候性の双方に優れる。
【0066】
従って、防壁材、屋根材、太陽電池モジュール、窓材、屋外フローリング材、照明保護材、自動車部材、看板等の屋外材料用途として好適である。これらの屋外材料は、複数のフィルムが貼り合わされた積層体を含んでいる。フィルムとしては、プラスチック基材に金属が蒸着されたフィルム(金属蒸着フィルム)、金属が蒸着されていないフィルム(プラスチックフィルム)がある。
【0067】
屋外用接着剤のうち、太陽電池モジュールを製造する接着剤には特に高いレベルで強度、耐候性が要求されている。本発明の屋外用ウレタン接着剤は、剥離強度、耐候性の双方に優れているので、太陽電池バックシート用接着剤として好適なものとなる。
【0068】
太陽電池バックシートを作製する際には、本発明の屋外用ウレタン接着剤をフィルムへ塗布する。塗布方法としては、グラビアコート、ワイヤーバーコート、エアナイフコート、ダイコート、リップコート、コンマコートなどの様々な方法により行うことができる。本発明の屋外用ウレタン接着剤が塗布された複数のフィルムを貼り合わせ、太陽電池バックシートが完成する。
【0069】
本発明の太陽電池バックシートの一の形態を図1〜3に例示するが、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
図1は、本発明の太陽電池バックシートの断面図である。太陽電池バックシート10は、2枚のフィルムとその間の屋外用ウレタン接着剤13から形成されており、2枚のフィルム11及び12は、屋外用ウレタン接着剤13によって貼り合わされている。フィルム11及び12は、同一の材料であっても、異なる材料であってもよい。図1では、2枚のフィルム11及び12は、貼り合わされているが、3枚以上のフィルムが貼り合わされていてもよい。
【0070】
本発明に係る太陽電池バックシートの他の形態を図2に示す。図2では、フィルム11と屋外ウレタン接着剤13との間に、箔膜11aが形成されている。例えば、フィルム11が、プラスチックフィルムである場合、フィルム11の表面に、金属薄膜11aが形成されている形態を示す。金属薄膜11aは、プラスチックフィルム11の表面に、例えば蒸着によって形成することができ、この金属薄膜11aが形成されたフィルム11とフィルム12を、屋外用ウレタン接着剤13を介して貼り付けて、図2に係る太陽電池バックシートを得ることができる。
【0071】
プラスチックフィルムに蒸着する金属として、例えば、アルミニウム、鋼及び銅等を例示できる。プラスチックフィルムに蒸着加工を施すことで、フィルムにバリア性を付与することができる。蒸着材料としては、酸化珪素や酸化アルミニウムが用いられる。基材のプラスチックフィルム11は、透明でも、白や黒等に着色されていてもよい。
【0072】
フィルム12として、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、フッ素樹脂、アクリル樹脂から成るプラスチックフィルムが用いられるが、耐熱性、耐候性及び剛性、絶縁性等を付与するためにポリエチレンテレフタレートフィルムやポリブチレンテレフタレートフィルムを用いることが特に好ましい。フィルム11及び12は、透明でも、着色されても良い。
フィルム11の蒸着薄膜11aとフィルム12とは、本発明の屋外用ウレタン接着剤13を用いて貼り付けられるが、フィルム11及び12は、ドライラミネート法によって積層されることが多い。
【0073】
図3は、本発明の太陽電池モジュールの一例の断面図を示す。図3では、本発明の太陽電池モジュール1は、ガラス板40、エチレン酢酸ビニル樹脂(EVA)等の封止材20、一般に複数の太陽電池セル30を接続して所望の電圧を発生するもの、バックシート10を重ね合わせて、スペーサ50でこれらの部材10、20、30及び40を固定して、得ることができる。
【0074】
バックシート10は、上述したように、複数のフィルム11及び12の積層体なので、ウレタン接着剤13には、バックシート10が、たとえ長期間屋外に曝されても、フィルム11及び12が剥離しないことが要求される。
太陽電子セル30は、シリコンを用いて製造されることが多いが、色素を含んだ有機樹脂を用いて製造されることもある。その場合、太陽電池モジュール1は、有機系(色素増感)太陽電池モジュールとなる。有機系(色素増感)太陽電池には着色性が要求されるので、太陽電池バックシート10を構成するフィルム11及び12として透明フィルムが使用されることが多い。従って、太陽電池バックシート用接着剤13には、長期間屋外で曝されたとしても、色差変化が極めて小さく、耐候性に優れていることが要求される。
【0075】
以下に本発明の主な態様を示す。
1.イソシアネート化合物(a1)とエステル結合を有するポリオール(a2)が反応して得られるウレタン樹脂(A)を含み、
イソシアネート化合物(a1)は脂肪族イソシアネート及び脂環式イソシアネートから選択される少なくとも1種を含み、
ポリオール(a2)は、ポリエステルポリオール(a2−1)とアクリルポリオール(a2−2)の両方を含む屋外用ウレタン接着剤。
2.アクリルポリオール(a2−2)は、合計で4以上の炭素原子を含むアルキル基がエステル結合と結合している、上記1に記載の屋外用ウレタン接着剤。
3.ポリエステルポリオール(a2−1)は、ジカルボン酸と多価アルコールとの重縮合により得られ、
該多価アルコールは、分岐状脂肪族ジオールを含み、その分岐状脂肪族ジオールの1分子中の分岐した側鎖は、合計で2以上の炭素原子を含む、上記1又は2に記載の屋外用ウレタン接着剤。
4.上記分岐脂肪族ジオールは、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール及び2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールから選択される少なくとも1種である上記3に記載の屋外用ウレタン接着剤。
5.(B)ヒドロキシフェニリトリアジン系化合物を、更に含む上記1〜4のいずれかに記載の屋外用ウレタン接着剤。
6.上記1〜5のいずれかに記載の屋外用ウレタン接着剤を用いて得られる太陽電池バックシート。
7.上記6に記載の太陽電池バックシートを用いて得られる太陽電池モジュール。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いて説明するが、これらの例は、本発明を説明するためのものであり、本発明を何ら限定するものではない。
実施例及び比較例で使用した屋外用ウレタン接着剤の原料を以下に記載する。
【0077】
(a1)脂肪族イソシアネート及び脂環式イソシアネート
(a1−1)脂肪族イソシアネート:1,6−ジイソシアナトヘキサン(HDI)の3量体(イソシアヌレート)<住化バイエルウレタン社製のスミジュールN3300(商品名)NCO%=21.8%>
(a1−2)脂肪族イソシアネート:キシリレンジイソシアネート(XDI)<三井化学社製のタケネート500(商品名)、NCO%=44.7%>
(a1−3)脂肪族イソシアネート:キシリレンジイソシアネート(XDI)のTMPアダクト<三井化学社製のタケネートD−110N(商品名)(不揮発分:75%)の固形分、NCO%=15.7%(固形分として)>
注)表の数値は固形分値
(a1−4)脂環式イソシアネート:イソホロンジイソシアネート(IPDI)の3量体(イソシアヌレート)<エボニックデグサ社製のVESTANAT T1890/100(商品名)、NCO%=17.3%>
【0078】
(a1’)芳香族イソシアネート
(a1’−1)ポリメリックMDI:住化バイエルウレタン社製のスミジュール44V−10(商品名)、NCO%=31.0%)
【0079】
(a2)エステル結合を有するポリオール
(a2−1)ポリエステルポリオール
(a2−1−1)<多価アルコールとして2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールを使用して得たポリエステルポリオール>
以下の要領で合成して得たものを使用した。
攪拌器、温度計、窒素導入管、冷却管を備え付けた4つ口フラスコにイソフタル酸(和光純薬工業(株)製)201g、無水フタル酸(和光純薬工業(株)製)100.1g、セバシン酸(和光純薬工業(株)製)250g、ポリカプロラクトンポリオール(製品名Capa2043、Perstorp社製)39.5g、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(Perstorp社製)601.1g、トリメチロールプロパン(和光純薬工業(株)製)8.21gを仕込み130℃に昇温後、チタンテトライソプロポキシド(和光純薬工業(株)製)0.2gを加え、更に昇温、脱水を行ない、220℃で減圧反応を行なうことにより所望のポリエステルポリオールを得た。
【0080】
(a2−1−2)<多価アルコールとして2,4−ジブチル−1,5−ペンタンジオールを使用して得たポリエステルポリオール>
豊国製油社製のHS 2N-226P(商品名):無水フタル酸、2,4−ジブチル−1,5−ペンタンジオールからなるポリエステルポリオール
【0081】
(a2−2)アクリルポリオール
(a2−2−1)エストロンケミカル社製のイソクリルH270(商品名):メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートから得られ、ブチルアクリレートとブチルメタクリレート(エステル結合に結合したアルキル基の炭素数が4)の合計の含有量が70重量%であるアクリルポリオール
【0082】
(a2−2−2)ブチルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート及びブチルメタクリレート(エステル結合に結合したアルキル基の炭素原子数が4)を使用して得られ、これらの単量体の合計の含有量は、単量体全体の82重量%であるアクリルポリオール
以下の要領で合成して得たものを使用した。
攪拌翼、温度計、及び還流冷却管を備えた四つ口フラスコに、酢酸エチル;[和光純薬(株)製]150gを仕込み、約80℃で還流させた。このフラスコ内に、重合開始剤として2,2−アゾビスイソブチロニトリルを1g加え、以下記載の単量体の混合物を1時間30分かけてフラスコ内に連続的に滴下した。さらに2時間加熱した後、不揮発分が32.2%のアクリルポリオール(a2−2−2)溶液を得た。
・メチルメタクリレート(MMA);和光純薬(株)製、10g
・ブチルアクリレート(BA);和光純薬(株)製、20g
・シクロヘキシルメタクリレート(CHMA);和光純薬(株)製、40g
・ブチルメタクリレート(BA);和光純薬(株)製、22g
・グリシジルメタクリレート(GMA);和光純薬(株)製、2g
・2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA);和光純薬(株)製、6g
注)表の数値は固形分値
【0083】
(a2−2−3)綜研化学社製のOG3(商品名)の固形分:n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、メチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートから得られ、n−ブチルメタクリレート及びイソブチルメタクリレート(エステル結合と結合したアルキル基の炭素数が4)の合計の含有量は、90重量%であるアクリルポリオール(不揮発分75%)
注)表の数値は固形分値
【0084】
成分(a1)と成分(a2)が反応することで、本発明に係る(A)ウレタン樹脂が得られる。
【0085】
(B)ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物
(B−1)BASF社製のチヌビン479(商品名):2−[4−(オクチル−2−メチルエタノエート)オキシ−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−[ビス(2,4−ジメチルフェニル)]−1,3,5−トリアジン
【0086】
(B’)他の紫外線吸収剤
(B’−1)BASF社製のチヌビン234(商品名):2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール
【0087】
(C)シラン化合物
(C−1)チッソ社製のサイラエースS530(商品名):2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン
【0088】
(D)ヒンダードフェノール系化合物
(D−1)BASF社製のイルガノックス1330(商品名):1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン
【0089】
(E)ヒンダードアミン系化合物
(E−1)BASF社製のチヌビン765(商品名):セバシン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル
【0090】
下記の実施例1〜9及び比較例1〜6の屋外用ウレタン接着剤を、上記成分を用いて製造し、得られた屋外用ウレタン接着剤の性能を、評価した。以下に製造方法及び評価方法を示す。
【0091】
実施例1
<屋外用ウレタン接着剤の製造>
表1に示すように、(a1−1)住化バイエルウレタン社製のスミジュールN3300(商品名)を8.23g、ポリエステルポリオール(a2−1−1)を22.38g、
(B’−1)BASF社製のチヌビン234(商品名)を1.46g、
(C−1)チッソ社製のサイラエースS530(商品名)を0.68g
(D−1)BASF社製のイルガノックス1330(商品名)を0.19g
(E−1)BASF社製のチヌビン765(商品名)を0.19g
を秤量して混合した後、これら混合物に酢酸エチルを添加して固形分30%の溶液を調製した。この調製液を屋外用ウレタン接着剤とし、以下の試験を行った。
【0092】
<<初期(硬化前)接着性能確認サンプルの作製>>
<初期粘着性確認サンプルの作製>
実施例1の屋外用ウレタン接着剤を透明ポリエチレンテレフタレート(PET)シート(三菱化学ポリエステルフィルム社製のO300EW36(商品名))に固形分重量が10g/mとなるように塗布し、80℃で10分間乾燥させ初期粘着性確認サンプルとした。
【0093】
<耐せん断クリープ確認サンプルの作製>
先ず、実施例1の屋外用ウレタン接着剤を透明ポリエチレンテレフタレート(PET)シート(三菱化学ポリエステルフィルム社製のO300EW36(商品名))に固形分重量が10g/mとなるように塗布し、80℃で10分間乾燥させた。
その後、PETシートの接着剤塗布面に、表面処理透明ポリオレフィンフィルム(フタムラ化学社製のリニアローデンシティポリエチレンフィルム LL−XUMN #30(商品名))の表面処理された面を被せ、平面プレス機(神藤金属工業社製のASF−5(商品名))で圧締圧1.0MPa 50℃で30分間、両フィルムをプレスした。その後、得られたフィルム積層物を15mm幅、95mm長に切り出して耐せん断クリープ確認サンプルとした。
【0094】
<<硬化後接着性能確認サンプルと黄変度確認サンプルの作製>>
先ず、実施例1の屋外用ウレタン接着剤を透明ポリエチレンテレフタレート(PET)シート(三菱化学ポリエステルフィルム社製のO300EW36(商品名))に固形分重量が10g/mとなるように塗布し、80℃で10分間乾燥させた。
その後、PETシートの接着剤塗布面に、表面処理透明ポリオレフィンフィルム(フタムラ化学社製のリニアローデンシティポリエチレンフィルム LL−XUMN #30(商品名))の表面処理された面を被せ、平面プレス機(神藤金属工業社製のASF−5(商品名))で圧締圧1.0MPa 50℃で30分間、両フィルムをプレスした。その後、40℃で1週間養生し、得られたフィルム積層物を15mm幅に切り出して硬化後接着性能確認サンプルとし、25mm角に切り出したものを黄変度確認サンプルとした。
【0095】
<<硬化皮膜の特性確認サンプルの作製>>
実施例1の屋外用ウレタン接着剤をポリエチレン製のカップに3.3mmの厚さになるように注ぎ込み、そのまま室温で1日養生した後に40℃で1週間し、厚さ1mmの硬化皮膜を得て、それを5mm幅、30mm長に切り出して硬化皮膜の特性確認サンプルとした。
【0096】
<評価>
屋外用ウレタン接着剤の評価を以下の方法で行った。
<<初期(硬化前)接着性能>>
<初期粘着性>
前述初期粘着性確認サンプルの塗工面を指触し、初期粘着性の程度を確認した。
◎: 十分なタックあり(初期粘着性良好)、
○: タックあり(初期粘着性良好)、
×: タックがほとんど見られない(初期粘着性不良)
【0097】
<耐せん断クリープ>
前述耐せん断クリープ確認サンプルの表面処理透明ポリオレフィンフィルム側に30gのおもりをぶら下げ、室温で20時間放置し、ポリオレフィルムのズレを測定した。
◎: ズレ 4mm未満、
○: ズレ 4mm以上8mm未満
×: ズレ 8mm以上
【0098】
<<硬化後接着性能>>
前述フィルム積層物(15mm幅)を、引っ張り強度試験機(オリエンテック社製のテンシロンRTM−250(商品名))を用いて、室温環境下、100mm/min、引っ張り速度180°の剥離試験を行った。評価基準は以下のとおりである。
◎:剥離強度が9N/15mm以上
○:剥離強度が6N/15mm以上9N/15mm未満
×:剥離強度が6N/15mm未満
【0099】
<<硬化皮膜の特性>>
<柔軟性>
前述硬化皮膜の特性確認サンプルを長軸側の端部を重ね合わせる形で折り曲げ、柔軟性を確認した。
○: 折れない
×: 折れる
【0100】
<PCT(プレッシャークッカーテスト)での表面タック発現時間>
前述硬化皮膜の特性確認サンプルをプレッシャークッカー試験機(ヤマト科学社製 オートクレーブSP300(商品名))に投入し、120℃、0.1MPa加圧環境下300時間後の接着剤硬化皮膜表面のタックの指蝕にて有無を確認した。
◎: 全くタック発現なし、
○: ごく若干のタック発現、
×: 顕著なタック発現
【0101】
<<黄変度>>
前述フィルム積層物(25mm角)のポリオレフィンフィルム側を照射面として、UV照射試験機(岩崎電気社製のアイスーパーUVテスター W13(商品名)))にセットし、照度1000W/m、60℃50%RHの条件下で15時間の照射を行った。色差計にて照射前後の色差(Δb)を測定し、黄変度を評価した。評価基準は以下のとおりである。
◎:Δbが10未満
○:Δbが10以上 15未満
×:Δbが15以上
【0102】
実施例2〜9、比較例1〜6についても、各成分を表1〜4に記載の組成で配合し、実施例1と同様の方法で屋外用ウレタン接着剤を製造した。フィルム積層物1及びフィルム積層物2の製造、評価方法についても実施例1と同様の方法で行った。
【0103】
【表1】

【0104】
【表2】

【0105】
【表3】

【0106】
【表4】

【0107】
表1及び2に示されるように、実施例1〜9の接着剤は、本願構成要件である(a1)および(a2)を含むので、初期(硬化前)接着性、硬化後接着性、硬化皮膜の特性の総合的バランスに優れる。従って、実施例1〜9の接着剤は、屋外用ウレタン接着剤として好適であり、特に太陽電池用バックシート用接着剤として好適であることが実証された。
特に、実施例2〜9の接着剤は、ヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤を含むので、黄変度が◎になっており、耐候性が著しく向上しており、有機系(色素増感)太陽電池用バックシート接着剤として極めて有用である。
【0108】
これに対し、比較例1〜6の接着剤は、表3及び4に示されるように、本願構成要件である(a1)又は(a2)のいずれかを含まないので、初期接着性、硬化後の接着性、硬化皮膜の特性、黄変度のいずれかが劣る。従って、比較例の接着剤は、屋外用ウレタン接着剤として好ましいものではなく、長期間に渡って屋外に曝される太陽電池バックシート用途には使用できない。
このように、(a2)ポリオールがポリエステルポリオールとアクリルポリオールの両成分を含むことによって、ウレタン接着剤の初期(硬化前)接着性、硬化後接着性、硬化皮膜の特性が向上することが実証された。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明は、屋外用ウレタン接着剤を提供する。本発明に係る屋外用ウレタン接着剤は、防壁材、屋根材、太陽電池モジュール、窓材、屋外フローリング材、照明保護材、自動車部材、看板等の屋外材料に用いられ、特に、太陽電池バックシートを製造するために適する。
【符号の説明】
【0110】
1 太陽電池モジュール
10 バックシート
11 フィルム
11a 蒸着薄膜
12 フィルム
13 接着剤層
20 封止材(EVA)
30 太陽電池セル
40 ガラス板
50 スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート化合物(a1)とエステル結合を有するポリオール(a2)が反応して得られるウレタン樹脂(A)を含み、
イソシアネート化合物(a1)は脂肪族イソシアネート及び脂環式イソシアネートから選択される少なくとも1種を含み、
ポリオール(a2)は、ポリエステルポリオール(a2−1)とアクリルポリオール(a2−2)の両方を含む屋外用ウレタン接着剤。
【請求項2】
アクリルポリオール(a2−2)は、合計で4以上の炭素原子を含むアルキル基がエステル結合と結合している、請求項1に記載の屋外用ウレタン接着剤。
【請求項3】
ポリエステルポリオール(a2−1)は、ジカルボン酸と多価アルコールとの重縮合により得られ、
該多価アルコールは、分岐状脂肪族ジオールを含み、その分岐状脂肪族ジオールの1分子中の分岐した側鎖は、合計で2以上の炭素原子を含む、請求項1又は2に記載の屋外用ウレタン接着剤。
【請求項4】
(B)ヒドロキシフェニリトリアジン系化合物を、更に含む請求項1〜3のいずれかに記載の屋外用ウレタン接着剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の屋外用ウレタン接着剤を用いて得られる太陽電池バックシート。
【請求項6】
請求項5に記載の太陽電池バックシートを用いて得られる太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−140494(P2012−140494A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292442(P2010−292442)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(391047558)ヘンケルジャパン株式会社 (43)
【Fターム(参考)】