説明

屋外用下枠フラットサッシの半等圧ウオーターバランス構造

【課題】屋内外を隔てる建物開口部出入口に装着されるサッシ構造であって、サッシ下枠の上面を略フラットに形成したレール溝が無いバリアフリータイプで風圧を伴った雨水等の排水性に優れ、室内漏水に対する水密性が高い、屋外用下枠フラットサッシ構造の提供にある。
【解決手段】障子に屋外側から風圧が負荷されるとシール部が押圧されるように障子と下枠の間にシール手段を備え、下枠フラット上面に排水溝及びこの排水溝の直下に排水溝幅より広い幅を有する集水凹部を備え、当該集水凹部の底部に凹部排水口を設け、この凹部排水口の直下に雨水を屋外に案内する案内中空部及び案内中空部屋外側に屋外排水口を設け、上記集水凹部及び案内中空部が外気と連通している。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築物の屋外開口部に取り付けられるサッシ構造に関し、特にサッシ下枠上面をフラットに形成した場合に、暴風雨時においてもこのフラット面からの排水性に優れ、室内への気密・水密性に優れた屋外用下枠フラットサッシの半等圧ウオーターバランス構造に係る。
【0002】
【従来の技術】
住宅等の部屋の出入口や浴室の出入口の段差を解消したバリアフリー構造は公知である。
しかし、建築物の屋外開口部に取り付けられるサッシ構造においては、従来の突条レール式下枠(図21参照)の上面を単にフラットにしただけでは暴風雨時に大きい風圧とともに障子戸等にふき付ける大量の雨水がこのフラット面に流れ込み、風の流れとともに雨水が室内に侵入する恐れが高く、一方、下枠フラット面に溝を設け、その下に排水空間を大きくとると戸の重量や出入りする人の重量を支えるだけの強度や剛性が確保できず、JISにも非常にきびしい品質基準が定められていて屋外開口部のバリアフリー化は困難とされていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は屋内外を隔てる建物開口部出入口に装着されるサッシ構造であって、サッシ下枠の上面を略フラットに形成したレール溝が無いバリアフリータイプで風圧を伴った雨水等の排水性に優れ、室内漏水に対する水密性が高い、屋外用下枠フラットサッシ構造の提供にあり、特に上記フラット面に条状の排水溝を設けた場合に、下枠の強度、剛性を確保しつつ雨水等の排水性を向上させるのに効果的な構造の提供を目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
屋外開口部サッシ構造のJISに定められた品質基準は、試験区分50等級では1分間当たり4リットル/1平方メートルの水を噴霧し、上限750Pa、下限風圧250Paの平均圧力差500Paの脈動圧を加えるという非常に厳しいものであり、この脈動圧に対して障子とサッシ枠の間に安定したシール構造と下枠のフラット面に大量に流れ込む雨水を確実に排水でき、かつ、スライド開閉する戸の重量及び出入りする人の重量等に耐え得るだけの強度及び剛性が確保できる構造を精意検討した結果、次のような構造を見い出したものである。
まず、脈動する風圧に対して障子戸とサッシ枠の間に安定したシール機能を得る手段として、障子に室外側から風圧を受ければ受ける程強く押圧するシール構造として障子の室内側とサッシ枠の間に弾性材からなるタイト材を介在させた。
次にフラット面から雨水を安定して排水し、強度が高い構造として、フラット面に条状の幅の狭い溝を障子スライド方向に設け、この直下にこの溝より幅の広い集水凹部を設けて雨水を受け入れるふところとし、この集水凹部の直下に、屋外に雨水を案内する案内中空部を設け、集水凹部の底部に設けた排水口と連通させさらに、案内中空部の屋外側に屋外排水口を設け、上記下枠集水凹部及び案内中空部を外気に連通させた集水凹部及び案内中空部の二段構造とした。
【0005】
このようなサッシ構造が気密・水密性及び排水性に対してどのように作用するかを、サッシ構造の模式図及び実験結果に基づいて以下詳細に説明する。
図5に上面がフラットに形成された下枠に排水溝を設けてこの間に外障子及び内障子の下框に設けた垂下片を挿入し、障子開閉方向にスライド可能になっていてこの垂下片の室内側にタイト材を配設した構造になっている。
従って、下框に設けた垂下片は、シール部を形成するとともに、障子が開閉する際のスライド片としての機能を有し、下枠上面に設けた排水溝は、下框に設けた垂下片(スライド片)がスライドするスライド溝としても機能する。
この排水溝の直下に、排水溝の幅より広幅な集水凹部が設けられ、その底部に凹部排水口が備えられ、この凹部排水口から流入した雨水を屋外に排水するための屋外排水口に案内する案内中空部が設けられている。
【0006】
ここで図5に示した断面形状が、平均風圧250Paにおける要求品質を満足するものに相当し、これに対して図6に示す断面形状は、集水凹部、凹部排水口及び案内中空部等を大きくした平均風圧500Paに対して要求品質を満足するものに相当し、いずれも風雨が全く無い状態を示す。
図6に風雨が加わっている状態の模式図を示し、室外から風圧P1が負荷されると障子は押圧されて下框に設けた垂下片(スライド片)とタイト材が圧接することになり、気密・水密性等のシール性能が確保される。
戸の室外面等に風圧を伴って降ってきた雨水は、下枠のフラット面から排水溝を通して下枠内の集水凹部に流れ、さらに凹部排水口及び案内中空部に流れ込み、屋外排水口から屋外に排水される。
ここで下框に設けた垂下片とタイト材が圧接してシールラインが形成された直下に集水凹部が設けられているので、シール部分に雨水が溜まることが無く毛細管現象にて室内側に雨水が浸入するのを防止できる。
【0007】
このような構造を採用した場合に、風圧の変化に対して前述したJISに定められた品質基準をクリアーするために必要な集水凹部の必要体積(V1)、凹部排水口の必要面積(A1)、案内中空部の必要体積(V2)、屋外排水口の必要面積(A2)を明確にするために実験して得られた結果を図1(表1)に示し、風圧の圧力差と下枠内に侵入する水量(Q)との関係を図2(グラフ1)に、圧力差と集水凹部の必要体積(V1)及び凹部排水口の必要面積(A1)との関係を図3(グラフ2)に、圧力差と案内中空部の必要体積(V2)及び屋外排水口の必要面積(A2)との関係を図4(グラフ3)に示す。
【0008】
グラフ1の結果から、排水溝等から下枠内に雨水が侵入する面積が一定の下で風圧が高くなると、下枠内に侵入する水量が増大し、強い正の相関があることが明らかになりこれに伴い、JISの品質基準をクリアーするために実験で得られたように必要体積(V1)、(V2)及び必要面積(A1)、(A2)も増大させる必要があることが明らかになった。
また、表1の結果から例えば、500Paの欄の値を左から右方向に横に比較すると、A0(5050)<A1(5130)<A2(5300)の関係が必要であることも明らかになった。
【0009】
このような結果が得られた原理を図8に示す模式図に基づいて説明すると、風雨が全く無い状態では、下枠の上面に設けた排水溝、集水凹部、凹部排水口、案内中空部、屋外排水口は連通していて、外気が排水溝と屋外排水口側から侵入するために、集水凹部の圧力及び案内中空部の圧力は外気と等圧になっている。
しかし、風圧が加わると排水溝幅が4mm程度と狭く、雨水により水膜が形成され、この集水凹部に外気の導入が完全にはされないために、室外と集水凹部に若干の圧力差が生じる。これにより、集水凹部へ雨水が吸い込まれることになる。
その結果、室外の圧力が大きくなると室外と集水凹部の圧力差が増大し、集水凹部へ侵入する水量が増大する。
一方、集水凹部から案内中空部へ凹部排水口を通して排水されるが、案内中空部から集水凹部への空気導入も雨水が流れてくる同じ凹部排水口を通して行われるため、集水凹部の圧力と案内中空部の圧力は完全に等圧にはならずに圧力差が生じる原因となる。
従って、本発明において半等圧とは、風雨が全く無い場合には下枠内部の圧力が外気と等圧であり、風圧を伴った雨水が生じ、風圧が増大するにつれて下枠内部の圧力が外側の圧力に比較して小さくなることを意味する。
【0010】
また、本発明においてウオーターバランスとは、室外の圧力が増大すると集水凹部及び案内中空部への侵入する水量が多くなるため、集水凹部及び案内中空部の容量を大きくし、かつ排水口を適切な大きさで設定することにより、下枠内に侵入する雨水を溜めないようにする。つまり、侵入する水量と排水する水量のバランスを保つことを意味する。
【0011】
この実験及び評価に用いた排水溝、凹部排水口、屋外排水口の位置関係を図9に示し、排水口の数を複数にし、長手方向に平均的に配分した方が望ましい。
【0012】
このような半等圧ウオーターバランス構造に基づいて本発明がされたもので、請求項1記載の発明は、風圧により障子とサッシ枠の間に設けたシール部が押圧されることにより、気密・水密性を確保しつつ、下枠の排水構造を半等圧ウオーターバランス構造により形成したもので、屋内外を隔てる建物開口部出入口に装着される上下枠及び左右の縦枠からなるサッシの内側を障子がスライド開閉するサッシ構造において、障子に屋外側から風圧が負荷されるとシール部が押圧されるように障子と下枠の間にシール手段を備え、下枠フラット上面に排水溝及びこの排水溝の直下に排水溝幅より広い幅を有する集水凹部を備え、当該集水凹部の底部に凹部排水口を設け、この凹部排水口の直下に雨水を屋外に案内する案内中空部及び案内中空部屋外側に屋外排水口を設け、上記集水凹部及び案内中空部が外気と連通している。
【0013】
請求項2記載の発明は、半等圧ウオーターバランス構造を引き違い戸に適用することをねらいになされたもので、屋内外を隔てる建物開口部の出入口に装着される上下枠及び左右の縦枠からなるサッシの内側を引き違い戸がスライド開閉するサッシ構造において、障子に室外側から風圧が負荷されるとシール部が押圧されるように障子下框に設けた垂下片と下枠の間、及び障子縦框と縦枠の間にシール手段を備え、かつ障子召合部と下枠上面の間に室内と室外を仕切るシール手段、及び内障子召合部下部に位置する内障子集水凹部に止水ブロックを備え、下枠フラット上面に排水溝、及びこの排水溝の直下に排水溝幅より広い幅を有する集水凹部を備え、当該集水凹部の底部に凹部排水口を設け、この凹部排水口の直下に雨水を屋外に案内する案内中空部及び案内中空部屋外側に屋外排水口を設け、上記集水凹部及び案内中空部が外気と連通している。
なお、引き違い戸の場合には、召合部と下枠上面の間にシール手段を設ける必要があり、一重のシール部材では毛細管現象により雨水が浸入する恐れがあり、二重以上のシール部材を取り付けるのが望ましい。
また、下枠排水溝と内障子スライド溝を同一溝にした場合には、内障子用下枠集水凹部に沿って室内側に雨水が浸入するのを防止するために、召合部下枠集水凹部に止水ブロックを取り付けるのが望ましい。
【0014】
請求項3記載の発明は、半等圧ウオーターバランス構造を片引き戸に適用することをねらいになされたもので、上枠と下枠の間にスライド自在に障子を装着し、建屋開口部と障子収納部を有する屋外用片引き戸において、障子に室外側から風圧が負荷されるとシール部が押圧されるように障子下框に設けた垂下片と下枠の間にシール手段を備え、かつ上枠と下枠の間に上下方向に配設した縦骨と障子召合框の間、及び障子戸当框と縦枠の間にシール手段を備え、下枠フラット上面に排水溝、及びこの排水溝の直下に排水溝幅より広い幅を有する集水凹部を備え、当該集水凹部の底部に凹部排水口を設け、この凹部排水口の直下に雨水を屋外に案内する案内中空部及び案内中空部屋外側に屋外排水口を設け、上記集水凹部及び案内中空部が外気と連通している。
【0015】
請求項4記載の発明は、下枠の構造を下枠ベース部材と上面部材に分割することにより、集水凹部及び排水溝の形成を容易にし、凹部排水口の加工も容易になることをねらい、屋内外を隔てる建物開口部出入口に装着される四方枠からなるサッシであって、下枠は中空断面形状で上部に凹部排水口、下部に屋外排水口を具備した下枠ベース部材と上面略フラットな上面部材とで構成し、当該下枠ベース部材はその上方に上面部材を嵌着する嵌着部を備え、前記上面部材は、下枠ベース部材の嵌着部に嵌着可能な被嵌着部を備えて、上面部材をベース部材に嵌着することにより、下枠ベース部材とで下枠排水溝が形成されると共に排水溝の下部が当該排水溝より広幅の集水凹部を形成し、下枠排水溝と屋外排水口とは集水凹部、凹部排水口、案内中空部を介して外気と連通させた。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の望ましい実施の形態を引き違い戸サッシ構造に適用した場合を例に以下説明する。
図20に本発明による屋外用バリアフリーサッシの施工イメージ図を示し、図19にその屋外開口部の断面を示す。
ビル住宅の戸の屋外には排水用のグレーチングを取り付け、その外側に段差調整ブロックを敷いて、図示していないがバルコニーが配設され、さらに外側には手摺り等の安全柵が取り付けられている。
室内からバルコニーへの出入り口に本発明に係るサッシ構造が採用されている。
【0017】
本発明に係るサッシ構造の下枠サッシ部分の縦断面図を図10に、横断面図を図11に示す。図10及び図19に示すように躯体にアンカー8にて取り付けられた下枠10及び上枠40と、図11に示すように左縦枠20及び右縦枠30のサッシにて枠体を形成し、その内側に屋外側から、外障子50、内障子60が装着されている。
図19に示すように、下枠には従来のような突条のレールが無く、下枠上面に障子下框の障子スライド片のほぼ肉厚に相当する2条の溝が形成されたフラット面になっていて、マンション等のベランダと室内側との境界に段差が無くなり、室内フローリング床面、下枠の上面、グレーチングを介してバルコニーの床面がほぼ水平に配置されたバリアフリー構造になっている。
【0018】
図10及び図11に示すように、外障子50は外障子下框51及び上框55と、外障子戸当框52及び外障子召合框53にて枠を形成し、内側にガラス等が装着されている。
外障子下框51の室内側には外障子スライド片51aが垂下されている。また、下框の下框凹部51bには外障子戸車54が取り付けられ、下枠10の略フラットな上面11を移動する。
【0019】
内障子60も外障子と同様に、内障子下框61及び上框65と、内障子戸当框62及び内障子召合框63にて枠を形成し、内側にガラス等が装着されている。
内障子下框61の室内側には内障子スライド片61aが垂下され、下框の下框凹部61bには内障子戸車64が取り付けられ下枠10の略フラットな上面11を移動する。
【0020】
下枠10には外障子及び内障子の下框に垂下した外障子スライド片51a、内障子スライド片61aがスライドする外障子スライド溝11a、内障子スライド溝11bを有する外障子用下枠集水凹部12a、内障子用下枠集水凹部12bを設け、凹部の室内側側壁に外障子用横タイト材嵌合溝13a、内障子用横タイト材嵌合溝13bを設け、外障子用横タイト材14a、内障子用横タイト材14bを配設し、これらの横タイト材は障子のスライド片に摺接している。
【0021】
下枠10はアルミニウム合金等を用いて押出成形されたベース部材10a、及び上面部材10b、10cを嵌合組み合わせて構成されている。
これにより、下枠フラット面の切り欠き加工、下枠集水凹部の排水口の加工及び下枠集水凹部止水ブロックの取付等が容易になっている。
【0022】
図11に示すように、左縦枠20の枠内側には外障子の戸当框を受ける左縦枠凹部21が設けられ、この左縦枠凹部室内側側壁に左縦枠縦タイト材嵌合溝22を設け左縦枠縦タイト材23が配設されている。
右縦枠30の内側にも外障子の場合と同様に、内障子の戸当框を受ける右縦枠凹部31が設けられ、このに右縦枠凹部の室内側側壁に右縦枠縦タイト材嵌合溝32を設け、右縦枠縦タイト材33が配設されている。
図12に示すように、外障子、内障子においてそれぞれ横タイト材とスライド片のシール面及び縦タイト材と戸当框のシール面がほぼ同一になるように配設されているから風圧や障子の建て付け調整に対して安定して確実にシールするように作用するので室内への雨水等の侵入を防止することが出来る。
なお、本発明においては、横タイト材のシール面は縦タイト材のシール面とほぼ同一面になるように形成されていれば良く、タイト材は障子側と枠側のどちら側に取り付けても良く選択的に採用される。
【0023】
召合わせ部においては図11に示すように、外障子50の外障子召合框53及び内障子60の内障子召合框63に設けた外障子突き合わせ片53aと内障子突き合わせ片63aが障子閉鎖時に当接し、内障子召合わせ部に設けた召合框タイト材嵌合溝63bに、召合框タイト材66が取り付けられ外障子側面と摺接している。
なお、この召合框タイト材は気密性、水密性が確保されれば良く、外障子側に設けても良い。
【0024】
また、図12に示すように下枠にフラット面排水口15、左コーナー部排水口16a、右コーナー部排水口16b、外障子用下枠凹部排水口17a、内障子用下枠凹部排水口17b及び下枠屋外排水口18が設けられていて、(ロ)が障子召合わせ部、(イ)及び(ハ)がコーナー部の斜視図である。
なお、フラット面排水口の位置は上記内障子と外障子の召し合わせ部に限定されるものでなく、下枠フラット面に等間隔に複数個設けてもよく、また召合框止水ブロックの位置に関係なく設けてもよいが、特に召し合わせ部に雨水が集中しやすく、この部分に排水口を設けると外部から見えず外観見栄えも良いため、本実施の形態ではこの召し合わせ部分に設けたものである。
また、下枠屋外排水口18の外側には排水口を覆うように逆風、逆水止め部材19が上部で枢着されている。
【0025】
フラット面排水口に対応する内障子召合框の底部には図13に示すように、召合框止水ブロック70がビス等の召合框止水ブロック係止部材にて取り付けられている。
召合框止水ブロック70には召合框止水ブロックベース部材73に弾性材からなるヒレ状のレインバリア71とヒレ状のウインドバリア72が設けれていて下枠上面及び外障子室内側側面に当接するように配設されている。
従来のようなレール等の段差が無いため、引き違い障子の召し合わせ下部の室外側に溜まる水量が特に多くなるので、この部分の排水性を高めるとともに室内への侵入を防止するために外障子と内障子の召し合わせ位置に対応して下枠にフラット面排水口を設け、内障子召合框の底部に取り付けた召合框止水ブロックに弾性材からなるヒレ状のレインバリアとともにウインドバリアを設けたもので、これにより、下枠フラット面を内外障子召し合わせ部に向けて風圧とともに勢い良く流れてきた雨水はこの召合框止水ブロックに設けられた弾性材からなるヒレ状のレインバリアにて流れの勢いが抑えられるとともに、弾性材からなるヒレ状のウインドバリアにより、召合框の底部と下枠のフラット面が遮蔽され、召し合わせ部の気密性が確保され、当該レインバリアとウインドバリアの間に設けられたフラット面排水口への雨水の落下、排水が促進されるように作用する。
内障子召合框のスライド方向側壁には図13に示すようにゴム等の弾性材からなるヒレ状のウォーターバリア90がウォーターバリア取り付け部材91を介してウォーターバリア係止部材92にて取り付けられている。
その位置関係を図15に示すように、樹脂製のウオーターバリア取り付け部材には長孔のウォーターバリア取り付け孔91aが設けられ、上下方向にスライド調整が出来る構造になっていて、ウォーターバリアを外障子下框の側壁に当てながら上下させて下枠の略フラット面及び下枠集水凹部止水ブロックに当接するように調整した後にウォーターバリア係止部材92にて固定される。
これにより、召し合わせ部に風圧とともに流れ込んで来たいきおいのある雨水は召合框止水ブロックにより流れが止められ排水され、その室内側にさらにウォーターバリアを取り付けたことにより、召し合わせ部のシールラインが、三重構造になるので確実に室内側への漏水を防ぐことができる。
【0026】
内障子用下枠集水凹部の内外障子召し合わせ部には、図11及び図15に示すように内障子の止水ライン線上で、かつ、内障子と外障子の召し合わせ部位置にほぼ対応させて内障子用下枠集水凹部に内障子用下枠集水凹部形状を塞ぐように弾性体からなる下枠集水凹部止水ブロック80が設けられていて内障子の下枠集水凹部に沿って外障子室内側に雨水が流れ込むのを防止している。
この下枠集水凹部止水ブロック80はその斜視図を図14に示すように、止水ブロック弾性体81を止水ブロック取り付け具82に固定し、これを下枠集水凹部の底部にビス等の止水ブロック係止部材で取り付けた。
また、図15に示すように下枠集水凹部止水ブロックの止水ブロック弾性体81は下枠集水凹部の溝の深さ、幅に対応して挿入されていて内障子スライド片61aと摺接している。
【0027】
図12に示すように、下枠のフラット面排水口15は外障子用下枠凹部排水口17a及び下枠屋外排水口18を介して外気と連通している。
また、フラット面排水口の上部は、図15上面図に示すように外障子召合框153及び内障子召合框63とこれらに設けた外障子突き合わせ片53a、内障子突き合わせ片63a(煙返し部)、召合框タイト材66で形成する空間部に連通している。
【0028】
本発明の望ましい実施の形態を内障子部分をガラスを嵌め殺し方式に取り付けた固定障子とし、外障子をスライド自在に取り付けた外動片引き戸に適用した例について以下説明するが、内動片引き戸や、固定障子の部分が建築物躯体内に設けた障子収納部としたタイプの片引き戸においても同様に適用できる。
図17に外動片引き戸構造の横断面図を示し、図16にその縦断面図を示し、(イ)が可動障子部で(ロ)が嵌め殺し部を示す。
サッシ枠は下枠110と上枠140及び室内から室外に向かって左縦枠120、右縦枠130にて方形形状に構されている。
このサッシ枠内屋外側にスライド自在に可動障子150が装着され、室内側に固定障子160が取り付けられている。
可動障子150は障子下框151と障子上框154、及び障子戸当框152と障子召合框153にて枠を形成し、内側にガラス156等が装着されている。
一方固定障子は下枠110と固定障子上框164、右枠130と縦骨170にていわゆる嵌め殺し方式にてガラス166が装着されている。
可動障子150の障子下框151には障子スライド片151aが垂下され、障子下框凹部151bに障子戸車155が取り付けられ下枠110の略フラット面を障子が案内条に沿って移動する。
下枠110には障子下框に垂下した障子スライド片151aがスライドする障子スライド溝111を有する下枠集水凹部112aを設け、この下枠集水凹部の室内側側壁に横タイト材嵌合溝113を設けて横タイト材114を配設し、障子スライド片151aに摺接させている。
下枠110はアルミニウム合金等を用いて押出成形された下枠ベース部材110a、目板材110b、上面部材110cを嵌合又はネジ止め等にて組み合わせて構成されている。
上面部材が分割して取り付けられているので、下枠ベース部材の排水口の加工やタイト材の取り替えが容易になり、網戸の取り付けの有無により上面部材を取り替えることが出来、ペアガラス仕様等の重量のある障子を取り付ける場合には対応する肉厚の厚い障子スライド片が必要となったり、横タイト材を障子スライド片側に設けたりする場合等、用途に合わせた下枠の障子スライド溝幅になるように上面部材を選定し取り付けることが出来る。
即ち、一種類の下枠ベース部材に各種の上面部材を組み合わせることにより、それぞれの用途に対応できる下枠の構造としたものである。
なお、下枠をアルミニウム形材で形成した場合に嵌め殺し部のガラスを装着する下枠凹部112cが必要となるために、障子が走行する開口部の当該凹部を塞ぐために目板材110bを嵌着又はネジ止めしたのもである。
【0029】
また、図18に示すようにサッシ枠見付け方向の中央部で上枠と下枠の間に上下方向に設けた縦骨の室外側側面に縦タイト材嵌合溝172を設けて縦タイト材173を配設し、縦方向シールラインを形成している。
ここで縦タイト材は縦骨と障子召合框間の縦方向のシールラインを形成するのが目的であり、必ずしも縦骨側に取り付ける必要はなく障子側に取り付けてもよい。
一方、左縦枠120には図17に示すように障子戸当框152との係合部121を設け、この係合部に設けた縦タイト材嵌合溝122に縦タイト材123を配設し、縦方向シールラインを形成している。
【0030】
次に雨水の排水の流れを説明すると、図18に召合部の下枠斜視図(分かりやすくするために下枠の枠部材110cを外した状態を示す)、戸当部の下枠コーナー部斜視図を示すように下枠上面のフラット面に流れて来る雨水はスライド溝111から下枠集水凹部112aに流れ込み、次に下枠集水凹部に設けた凹部排水口117aから下枠ベース110aの案内中空部に流れ、下枠屋外排水口118から屋外に流れ出る。
なお、下枠屋外排水口118の外側には排水口を覆うように逆風、逆水止め部材119が上部で枢着されている。
また、縦骨170の突き合わせ片171から侵入してきた雨水はフラット面排水口115より排水され、戸当部コーナー部に設けたコーナー部排水口116からも排水される。
【0031】
【発明の効果】
本発明においては、下枠上面から突条レールを廃止し、下枠の上面を略フラットに形成し、下枠の上面に細い条状の排水溝を設けてこの直下に幅広の集水凹部が備えられ、凹部排水口、案内中空部及び屋外排水口を介して外気と連通させた集水凹部及び案内中空部の二重構造としたことにより、下枠の強度及び剛性を確保しつつ風圧を伴って降ってきた雨水は、屋外と下枠内部に圧力が生じ、上記集水凹部に流れ込むように作用し、優れた排水性を得ることができるとともに、集水凹部に多少の雨水が溜まってもシール部分に雨水がかかることが無く、毛細管現象にて室内側に侵入してくるのを防止できる。
また、引き違い戸及び片引き戸等、戸の開閉構造に合わせて屋外(室外)と屋内(室内)を仕切るシール手段を備え、このシール部に対応して排水溝及び排水口を設けたのでシール部にて外気及び雨水の流れを止め、下側に雨水を流れさせることができるので下枠の強度及び剛性を確保しつつ、優れた気密・水密性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】風圧の圧力差による各データ値を示す。
【図2】圧力差と下枠内に侵入する水量(Q)との関係を示す。
【図3】圧力差と集水凹部の必要体積(V1)及び凹部排水口の必要面積(A1)との関係を示す。
【図4】圧力差と案内中空部の必要体積(V2)及び屋外排水口の必要面積(A2)との関係を示す。
【図5】風圧250Pa対応相当の下枠断面形状を示す。
【図6】風圧500Pa対応相当の下枠断面形状を示す。
【図7】風雨が加わっている状態を示す。
【図8】下枠の圧力関係を示す。
【図9】排水溝及び排水口の位置関係を示す。
【図10】本発明を引き違い戸に適用した縦断面図を示す。
【図11】本発明を引き違い戸に適用した横断面図を示す。
【図12】排水口の配置を示す。
【図13】召合部の外観斜視図を示す。
【図14】内障子集水凹部止水ブロックを示す。
【図15】召合部止水ブロックとウオーターバリアの位置関係を示す。
【図16】本発明を片引き戸に適用した縦断面図を示す。
【図17】本発明を片引き戸に適用した横断面図を示す。
【図18】召合部及びコーナー部の斜視図を示す。
【図19】建物開口部断面図を示す。
【図20】本発明による屋外用バリアフリーサッシの施工イメージ図を示す。
【図21】従来の段差のあるサッシの施工イメージ図を示す。
【符号の説明】
10 下枠
10a 下枠ベース部材 10b、10c 上面部材
11 フラット面(上面)
11a 外障子スライド溝 11b 内障子スライド溝
12a 外障子用下枠集水凹部 12b 内障子用下枠集水凹部
13a 外障子用横タイト材嵌合溝 13b 内障子用横タイト材嵌合溝
14a 外障子用横タイト材 14b 内障子用横タイト材
15 フラット面排水口
16a 左コーナー部排水口 16b 右コーナー部排水口
17a 外障子用下枠凹部排水口 17b 内障子用下枠凹部排水口
18 下枠屋外排水口
19 逆水止め部材
20 左縦枠 30 右縦枠
21 左縦枠凹部 31 右縦枠凹部
22 左縦枠縦タイト材嵌合溝 32 右縦枠縦タイト材嵌合溝
23 左縦枠縦タイト材 33 右縦枠縦タイト材
40 上枠
50 外障子 60 内障子
51 外障子下框 61 内障子下框
51a 外障子スライド片 61a 内障子スライド片
52 外障子戸当框 62 内障子戸当框
53 外障子召合框 63 内障子召合框
53a 外障子突き合わせ片 63a 内障子突き合わせ片
54 外障子戸車 64 内障子戸車
55 外障子上框 65 内障子上框
66 召合框タイト材
70 召合框止水ブロック
71 レインバリア
72 ウインドバリア
73 召合框止水ブロックベース部材
74 召合框止水ブロック垂直片
80 下枠集水凹部止水ブロック
81 止水ブロック弾性体
82 止水ブロック取り付け具
90 ウォーターバリア
91 ウォーターバリア取り付け部材
91a ウォーターバリア取り付け孔
92 ウォーターバリア係止部材
110 片引き戸用下枠
110a 片引き戸用下枠ベース部材
110b 片引き戸用下枠目板材
110c 片引き戸用下枠上面部材
111 可動障子スライド溝
112a 片引き戸用下枠集水凹部 112b 目板材下の下枠凹部
112c 上面部材下の下枠凹部
113 片引き戸用横タイト材嵌合溝
114 片引き戸用横タイト材
115 片引き戸用フラット面排水口
116 片引き戸用コーナー部排水口
117a 下枠凹部排水口 117b 上面部材下の下枠凹部排水口
118 下枠屋外排水口
119 逆水止め部材
120 左縦枠 130 右縦枠
121 左縦枠係合部
122 左縦枠縦タイト材嵌合溝
123 左縦枠縦タイト材
140 上枠
150 可動障子 160 固定障子(嵌め殺し部)
151 可動障子下框
151a 可動障子スライド片
152 可動障子戸当框
153 可動障子召合框
153a 可動障子突き合わせ片
154 可動障子上框 164 固定障子上框
155 可動障子戸車
156 可動障子ガラス 166 固定障子ガラス
170 縦骨
171 縦骨突き合わせ片
172 縦タイト材嵌合溝
173 縦タイト材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内外を隔てる建物開口部出入口に装着される上下枠及び左右の縦枠からなるサッシの内側を障子がスライド開閉するサッシ構造において、障子に屋外側から風圧が負荷されるとシール部が押圧されるように障子と下枠の間にシール手段を備え、下枠フラット上面に排水溝及びこの排水溝の直下に排水溝幅より広い幅を有する集水凹部を備え、当該集水凹部の底部に凹部排水口を設け、この凹部排水口の直下に雨水を屋外に案内する案内中空部及び案内中空部屋外側に屋外排水口を設け、上記集水凹部及び案内中空部が外気と連通していることを特徴とする屋外用下枠フラットサッシ構造。
【請求項2】
屋内外を隔てる建物開口部の出入口に装着される上下枠及び左右の縦枠からなるサッシの内側を引き違い戸がスライド開閉するサッシ構造において、障子に室外側から風圧が負荷されるとシール部が押圧されるように障子下框に設けた垂下片と下枠の間、及び障子縦框と縦枠の間にシール手段を備え、かつ障子召合部と下枠上面の間に室内と室外を仕切るシール手段、及び内障子召合部下部に位置する内障子集水凹部に止水ブロックを備え、下枠フラット上面に排水溝、及びこの排水溝の直下に排水溝幅より広い幅を有する集水凹部を備え、当該集水凹部の底部に凹部排水口を設け、この凹部排水口の直下に雨水を屋外に案内する案内中空部及び案内中空部屋外側に屋外排水口を設け、上記集水凹部及び案内中空部が外気と連通していることを特徴とする屋外用下枠フラットサッシ構造。
【請求項3】
上枠と下枠の間にスライド自在に障子を装着し、建屋開口部と障子収納部を有する屋外用片引き戸において、障子に室外側から風圧が負荷されるとシール部が押圧されるように障子下框に設けた垂下片と下枠の間にシール手段を備え、かつ上枠と下枠の間に上下方向に配設した縦骨と障子召合框の間、及び障子戸当框と縦枠の間にシール手段を備え、下枠フラット上面に排水溝、及びこの排水溝の直下に排水溝幅より広い幅を有する集水凹部を備え、当該集水凹部の底部に凹部排水口を設け、この凹部排水口の直下に雨水を屋外に案内する案内中空部及び案内中空部屋外側に屋外排水口を設け、上記集水凹部及び案内中空部が外気と連通していることを特徴とする屋外用下枠フラットサッシ構造。
【請求項4】
屋内外を隔てる建物開口部出入口に装着される四方枠からなるサッシであって、下枠は中空断面形状で上部に凹部排水口、下部に屋外排水口を具備した下枠ベース部材と上面略フラットな上面部材とで構成し、当該下枠ベース部材はその上方に上面部材を嵌着する嵌着部を備え、前記上面部材は、下枠ベース部材の嵌着部に嵌着可能な被嵌着部を備えて、上面部材をベース部材に嵌着することにより、下枠ベース部材とで下枠排水溝が形成されると共に排水溝の下部が当該排水溝より広幅の集水凹部を形成し、下枠排水溝と屋外排水口とは集水凹部、凹部排水口、案内中空部を介して外気と連通させたことを特徴とする屋外用下枠フラットサッシ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2007−84998(P2007−84998A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−140780(P2001−140780)
【出願日】平成13年5月10日(2001.5.10)
【出願人】(000250605)立山アルミニウム工業株式会社 (42)
【Fターム(参考)】