説明

屋外用水栓の組付構造

【課題】施工後も接続部(継手部分)の漏水点検やメンテナンスが可能で、且つ、構造を複雑化することなく施工性が高い屋外水栓の組付構造を開示する。
【解決手段】外壁から仕上げ壁まで貫通する中空筒体の周壁一部に水道管の導入孔を形成すると共に、この導入孔にシールパッキンを設けた取付スリーブと、この取付スリーブの前記外壁側の開口に水密に嵌合可能な凹段部の凹面に水栓の固定孔を形成すると共に、該凹段部の周囲に前記外壁にビス止め可能なフランジを形成したベースプレートと、前記水栓と水道管とを前記取付スリーブ内で接続するエルボ継手と、前記取付スリーブの前記仕上げ壁側の開口に着脱可能に取り付ける密閉キャップとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物の外壁に屋外用水栓を組み付けるための構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、屋外に設置する最も一般的な水栓は蛇口であったが、住宅のデザインが進化するのに合わせて、本出願人はモダンな外観の壁内蔵型給水栓を提案した(特許文献1)。
【0003】
この壁内蔵型給水栓によれば、吐水口とその栓体が外壁の表面に沿って同一面上に位置するという特殊な配置構造によって、従来にない独特の審美性を醸すだけでなく、水道管との接続部(継手部分)は壁内に位置するため、前記吐水口や栓体が外壁から大きく出っ張ることがなくデッドスペースの解消にも寄与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−96842
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した壁内蔵型給水栓には、品質と施工性に関して、次のような解決すべき課題が残されていた。先ず、品質について説明すると、従来の構造では、水道管との接続部が屋内側の仕上げ壁(石膏ボード等)によって遮蔽されるため、基本的に前記接続部を施工後に点検することができず、仮に漏水が発生したとしても、これを発見・確認することは容易ではなかった。この点、継手部分から漏水が発生すると壁内が水浸しになり、最悪の場合、躯体を傷める恐れがあるが、これをメンテナンスするためには屋内側の仕上げ壁を取り崩すという大掛かりな作業が必要となる場合があった。また、外壁の穿孔とのシール性も十分考慮されていなかったため、外壁と仕上げ壁の間に結露が発生することもあった。
【0006】
次に、施工性について解決すべき課題を説明すると、水道管との接続は自ずと屋内側からの作業になるため、従来の構造であると仕上げ壁を構築する前にこうした接続作業を完了させなくてはならず、大工工事と水道工事の施工順が通常とは逆となることが予想された。また、従来構造は、接続部がネジ接続であるため、特殊な工具を用いる必要がなく、給水栓本体を回すだけで接続作業が行える点は簡便であるが、水密性に必要な締め込み量と締め込み後の吐水部等の向きを同時に満足するような熟練された技術が必要であった。さらに、給水栓本体の取付ベースや化粧カバーは外壁に直接小ネジを打ち付けて固定するものであるため、外壁の材質によっては小ネジを全く固定できないか、強固に固定できない場合があった。
【0007】
本発明は上述した課題を解決するためになされたもので、要するに目的とするところは、施工後も接続部(継手部分)の漏水点検やメンテナンスが可能で、且つ、構造を複雑化することなく施工性が高い屋外水栓の組付構造を開示することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために本発明では、外壁から屋内の仕上げ壁まで貫通する中空筒体の周壁一部に水道管の導入孔を形成すると共に、この導入孔にシールパッキンを設けた取付スリーブと、この取付スリーブの前記外壁側の開口に水密に嵌合可能な凹段部の凹面に水栓の固定孔を形成すると共に、該凹段部の周囲に前記外壁にビス止め可能なフランジを形成したベースプレートと、前記水栓と水道管とを前記取付スリーブ内で接続するエルボ継手と、前記取付スリーブの前記仕上げ壁側の開口に着脱可能に取り付ける密閉キャップとを備える。
【0009】
本発明によれば、密閉キャップを外すことで取付スリーブの仕上げ壁側開口が点検口および作業口として機能する。この取付スリーブは、導入孔がシールパッキンによって、また外壁側開口がベースプレートの凹段部の水密嵌合によって、さらに、仕上げ壁側開口が密閉キャップによって閉塞されている。従って、取付スリーブ内は常に水密・気密な状態を保持し、万が一、漏水が発生したとしても、その水は取付スリーブ内に溜められ、壁内全体が水浸しになることを回避すると共に、壁内の結露を防止する。ベースプレートは、上述のように取付スリーブの外壁側開口を閉塞するものであるが、この他、水栓を固定する機能を有し、凹面を境として外壁側には吐水口とその栓体が位置し、仕上げ壁側には継手との接続部が位置する。このベースプレートに固定された水栓の接続部は取付スリーブ内で水平な姿勢をとるのに対して、水道管は外壁や仕上げ壁に沿って配管される。従って、両者の角度は略90度をなすが、本発明の場合、両者はエルボ継手によって接続する。
【0010】
なお、水道管は必ずしも上下方向に配管される必要はなく、外壁等と平行するのであれば水平方向等であってもよく、何れの場合であっても取付スリーブを回転させることによって、導入孔の向きを水道管に合わせることができる。また、水栓は、特許文献1に示す構造のものを採用することが出っ張りも少なく、且つ、審美性に優れるため好ましいが、これに限定するものではなく、継手との接続部を一次側として二次側に吐水口を有し、この吐水口を流量調整可能に閉弁する栓体を備えるものであれば、従来の蛇口など、公知の水栓を採用することができる。さらに、本発明構造は、施工対象の建物が既設であるか新設であるかを問わず採用することができる。
【0011】
本発明構造は、大工工事において取付スリーブを貫通させた状態で外壁および仕上げ壁を構築した後、水道工事として水栓等の接続作業を行うことを予定している。このため、狭小な取付スリーブ内で水栓等の接続作業を行うには、工具レスが好ましい。そこで、本発明では、エルボ継手として、一端は差し込んだ水道管をチャックリングの弾性縮径により抜け止めするワンタッチ継手構造を備え、且つ、他端には水栓の接続部を水密に差し込んだ状態で端部同士をフランジ接合可能な割リング状のファスナ構造を備えたものを採用する。当該構造のエルボ継手によれば、水道管および水栓とも差込み作業だけで接続することができる。また、このエルボ継手の前記ファスナ構造は水栓を相対的に回転可能に支持するユニオン継手としても機能するため、接続完了後に水栓を回転させることにより吐水口や栓体の向きを微調整することができる。
【0012】
さらに、本発明では、取付スリーブの外周に仕上げ壁の桟木に固定可能な木製下地材を備えると共に、ベースプレートのビスは外壁を貫通して前記木製下地材にネジ止め可能な長さとするという手段を用いる。この手段によれば、材質等によりベースプレートを外壁にビス止めできない場合でも、その裏の下地材にベースプレートを固定することができる。
【0013】
さらにまた、本発明は水栓の吐水口および栓体を突出させてベースプレートを被覆可能な化粧カバーを備えるため、外壁側の外観が向上すると共に、ベースプレートやビス頭が直接風雨に曝されるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、取付スリーブを仕上げ壁まで貫通するので、当該仕上げ壁側の開口から水栓の接続作業が行えると共に、施工後においては当該開口を点検口としてメンテナンス等を行うことができる。また、取付スリーブは内部が水密であるので、仮に漏水が発生しても、壁内が水浸しになることはなく、躯体や壁内の仕上げ壁等を傷める恐れがない。さらに、本発明のエルボ継手は、水道管および水栓を差し込むだけで接続が完了するため、工具を不要として、狭小なスペースの取付スリーブでも、その内部で施工性よく接続作業を行うことができる。ここで、取付スリーブ内に予め水道管を引き込んでいれば、水栓の接続作業前に仕上げ壁を構築することができるため、大工工事と水道工事の施工順が逆となることはない。さらにまた、ベースプレートのビスを外壁を貫通し木製下地材にネジ止めするようにしたので、サイディングのように材質等によってビス止めできない外壁を採用している場合でも本構造を施工することができる。また、ベースプレートを化粧カバーで被覆するため、取付スリーブに外壁側から水が侵入することを防止でき、且つ、ベースプレートやそのビスを風雨から防護して、耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明構造の断面図
【図2】パッキンの別構成例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。図1は、本発明の構造の断面図を示したもので、先ず、組付対象である建物の壁構造を説明すると、W1は例えばサイディング仕様の屋外側の外壁、W2は石膏ボード等からなる屋内側の仕上げ壁、Sは各種壁内器具の固定材として機能する桟木である。なお、サイディング仕様の場合、外壁W1は屋内側にモルタル層を含むことがある。
【0017】
こうした壁構造に対して、1は取付スリーブであり、外壁W1と仕上げ壁W2の両壁面を貫通可能な長さの中空筒体の周壁一部に、壁内配管される水道管Pの導入孔1aを設けたものである。2は、該取付スリーブ1の前記導入孔1aに形成されるシールパッキンであり、取付スリーブ1内に引き込んだ水道管Pと導入孔1aの隙間を水密にシールものである。
【0018】
3は、取付スリーブ1内で水道管Pと水栓Hを接続するエルボ継手である。このエルボ継手3は、水路中途を90度に折曲しており、本実施形態の場合、水道管側の一端はワンタッチ継手構造4を備えている。このワンタッチ継手構造4は、通水スリーブ4aと外筒4bの間に水道管Pを差込み可能とし、且つ、差し込んだ水道管Pの外周に弾性縮径により圧接し、該水道管Pを抜け止め可能に保持するチャックリング4cを内蔵したものである。従って、水道管Pを差し込むだけでエルボ継手3に対する接続作業が完了する。
【0019】
また、エルボ継手3の水栓側の他端はフランジ接合可能なファスナ構造5を備える。その具体的構成は、外周にOリング5aを設けた水栓Hの一次側接続部をエルボ継手3の他端に差し込んで水密性を確保した状態で、両者のフランジ5b・5c同士を結合するリング状の挟持体5dを備えたものである。従って、このファスナ構造5によっても、水栓Hは接続部を差し込むだけで接続作業が完了する。
【0020】
また、6は、水栓Hを固定するためのベースプレートであって、中央を前記取付スリーブ1にOリングRを介して水密に嵌合可能な凹段部6aに形成したうえ、その凹面6bには水栓Hの接続部を挿通する固定孔6cが設けられ、当該挿通後に袋ナット7を締め込むことで水栓Hを固定するものである。また、このベースプレート6の凹段部周囲には外壁W1の屋外面(図面上、左側の面)への固定板として機能するフランジ6dが形成され、該フランジ6dをビス8によって外壁W1に固定するものである。当該固定後、ビス8の頭部やフランジ6dの縁端部はコーキング処理する。従って、取付スリーブ1の水栓側開口は、このベースプレート6によって防水されている。
【0021】
なお、本実施形態の場合、ビス8は、外壁W1を貫通し、且つ、防水ラバー9を介して壁内の桟木Sに釘等で固定される木製下地材10まで到達する長さを有する。従って、本実施形態のように、外壁W1がビス止め不可能または困難なサンディング仕様であっても、ベースプレート6を壁に固定することが可能である。また、この下地材10は中心に取付スリーブ1の挿通孔を形成したドーナツ状の板材であり、取付スリーブ1とセットで外壁W1および仕上げ壁W2に構築されるものである。ただし、外壁W1に直接ビス止めできる場合は、この下地材10を省略することが可能である。
【0022】
さらに、11はベースプレート6を被覆する化粧カバーであり、表面に水栓Hの吐水口H1および栓体H2が途中係合の状態で突出する突出孔11a・11bを形成したものである。また、化粧カバー11の周縁には排水孔11cを形成している。従って、仮に化粧カバー11と外壁W1の僅かな隙間から該化粧カバー11とベースプレート6の間に水が侵入したとしても、その水は排水孔11cによって外部に排水される。
【0023】
上記構成からなる組付構造を施工するには、先ず、取付スリーブ1を外壁W1に貫通させ、荒配管によって水道管Pを取付スリーブ1内に引き込んでおく必要がある。この工程は、大工工事であり、引き続き仕上げ壁W2を構築することができる。そして、大工工事によって外壁W1および仕上げ壁W2の構築が完了すれば、水道工事に基づいて水道管Pにエルボ継手3の一端(ワンタッチ継手構造)を接続すると共に、取付スリーブ1の外壁側開口からエルボ継手3の他端(ファスナ構造)に予めベースプレート6に固定しておいた水栓Hを接続する。その後、ベースプレート6を外壁W1および下地材10にビス止めし、コーキング処理後、化粧カバー11を取り付ける。これで外壁W1側の施工は完了するので、続いて、取付スリーブ1の仕上げ壁W2側開口に密閉キャップ12を取り付けて、全ての施工が完了する。この密閉キャップ12は、本実施形態の場合、取付スリーブ1に嵌合する外筒体12aと、この外筒体(受け口)12aに螺合するキャップ体12bとからなる。従って、取付スリーブ1の屋内側開口はキャップ体12bによって閉塞され、結果、取付スリーブ1内は気密・水密な状態となる。なお、取付スリーブ1内に断熱材を充填することもある。
【0024】
このように上記構成の組付構造によれば、密閉キャップ12のキャップ体12bを取り外すことで、屋内側から取付スリーブ1内を点検することができ、漏水の有無を確認することができる。また、仮に漏水が発生していた場合でも、その水は取付スリーブ1内に溜まるのみで、壁内が水浸しになることがなく、取付スリーブ1の気密性・水密性によって結露の発生も抑制することができる。さらに、施工性に関しても、一次側・二次側とも水道管Pおよび水栓Hを差込みのみのワンタッチで接続可能なエルボ継手3を採用したので、短時間で水密な接続が可能であり、しかも、ファスナ構造によって接続後も水栓Hを回転させることができるため、吐水口H1の向きだけを微調整することができる。
【0025】
ところで、上記実施形態では、取付スリーブ1におけるパッキン2が水道管Pを水密に挿通保持するが、当該パッキン2の変形等による挿通軸の変位は望めない。従って、当該構成の場合は、取付スリーブ1の取付時に、パッキン2の挿通軸と水道管Pの軸が一致するように、取付スリーブ1を位置決めする必要があり、仮に、この位置決めを誤ったり、位置決め後に取付スリーブ1が貫通方向に前後すれば、その僅かなズレによって水道管Pをパッキン2に挿通することができなくなる。
【0026】
この問題を解消するには、取付スリーブ1の導入孔1aと水道管Pとの軸ズレを吸収可能なパッキンを採用する必要がある。その具体的な構成例は、図2に示すように、取付スリーブ1の導入孔1aに水密に嵌合し、且つ、水道管Pが遊嵌可能な内径を有する取付部21の一端に、襞状の折返し部22を介して水道管Pに密着するシール部23を一体的に設けたパッキン20が該当する。24はシール部23の外周に設けられる締め付け部である。このパッキン20によれば、襞状の折返し部22が伸縮して取付部21の軸に対しシール部23の軸を左右前後に変位させることができるため、先に取り付けた取付スリーブ1の導入孔1aと、後から配管する水道管Pとに軸ズレが生じていたとしても、その差を吸収して水道管Pを取付スリーブ1内に引き込むことができる。なお、襞状の折返し部22は蛇腹状など、シール部23を平面方向に変位可能に支持するものであればよい。
【0027】
また、上記実施形態では水栓Hとして吐水口H1が外壁W1に対して下方に傾斜すると共に、栓体H2が外壁W1に対して垂直に位置する特殊な配置構造のものを採用したが、一次側構造がエルボ継手3に接続可能なものであれば、こうした吐水口H2等の二次側構造は任意であり、例えば一般的な蛇口を水栓Hとして採用することも可能である。
【符号の説明】
【0028】
W1 外壁
W2 仕上げ壁
S 桟木
P 水道管
H 水栓
1 取付スリーブ
2 シールパッキン
3 エルボ継手
4 ワンタッチ継手構造
5 ファスナ構造
6 ベースプレート
8 ビス
10 下地材
11 化粧カバー
12 密閉キャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁から仕上げ壁まで貫通する中空筒体の周壁一部に水道管の導入孔を形成すると共に、この導入孔にシールパッキンを設けた取付スリーブと、この取付スリーブの前記外壁側の開口に水密に嵌合可能な凹段部の凹面に水栓の固定孔を形成すると共に、該凹段部の周囲に前記外壁にビス止め可能なフランジを形成したベースプレートと、前記水栓と水道管とを前記取付スリーブ内で接続するエルボ継手と、前記取付スリーブの前記仕上げ壁側の開口に着脱可能に取り付ける密閉キャップとを備えることを特徴とした屋外用水栓の組付構造。
【請求項2】
エルボ継手は、一端に差し込んだ水道管を抜け止め可能に保持するチャックを備え、且つ、他端には水栓の接続部を水密に差し込んだ状態で端部同士をフランジ接合可能な環状ファスナを備える請求項1記載の屋外用水栓の組付構造。
【請求項3】
取付スリーブは外周に壁内の桟木に固定可能な下地材を備えると共に、ベースプレートは外壁を貫通して前記下地材にネジ止め可能な長さのビスを備える請求項1または2記載の屋外用水栓の組付構造。
【請求項4】
水栓の吐水口およびその栓体を突出させてベースプレートを被覆する化粧カバーを備える請求項1、2または3記載の屋外用水栓の組付構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−209607(P2010−209607A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58091(P2009−58091)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000151025)株式会社タブチ (86)
【出願人】(000183428)住友林業株式会社 (540)
【Fターム(参考)】