説明

屋外設置用電子機器

【課題】従来よりも軽量化を図ることが出来、然も筐体内部の過度な温度上昇を抑制することが出来る屋外設置用電子機器を提供する。
【解決手段】本発明に係る屋外設置用電子機器においては、ベゼル81とバックキャビネット82とを互いに接合固定してなる合成樹脂製の筐体8の内部に電子部品が収容されており、ベゼル81及びバックキャビネット82の表面には、耐候性塗料にシルバー色の染料を混合してなるシルバー塗料が塗布されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外に設置するための各種電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、屋外設置用電子機器においては、電子部品等を収容する筐体をアルミニウム等の金属によって形成し、耐候性と防水性を確保することが行なわれている(特許文献1、2参照)。
【0003】
例えば図5に示す屋外設置用の画像表示装置においては、アルミニウム製の筐体(92)の内部に、画像表示面(90)を有する画像表示ユニット(9)を収容し、筐体(92)の前面開口部を透明ガラス製の保護パネル(91)で塞ぐことにより、耐候性と防水性を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−332762号公報
【特許文献2】特開2009−231784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の屋外設置用の電子機器においては、筐体が金属から形成されていたため、筐体の重量が大きくなり、ひいては機器の重量が大きくなるため、運搬や設置作業が困難となる問題があった。仮に筐体を合成樹脂から形成した場合、屋外では筐体が紫外線を直接に受けて劣化し、破損に至る虞がある。
又、従来の屋外設置用の電子機器においては、筐体が密閉構造を有するために、太陽光の照射によって筐体内部の温度が過度に上昇し、場合によって筐体内部の電子部品が動作不良を起こす虞があった。
【0006】
そこで本発明の目的は、従来よりも軽量化を図ることが出来、然も筐体内部の過度な温度上昇を抑制することが出来る屋外設置用電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る屋外設置用電子機器においては、合成樹脂製の筐体の内部に電子部品が収容されており、該筐体の表面には、耐候性塗料にシルバー色の染料を混合してなるシルバー塗料が塗布されている。
【0008】
又、本発明に係る屋外設置用電子機器は、例えば屋外設置用画像表示装置であって、該屋外設置用画像表示装置においては、ベゼル(81)とバックキャビネット(82)とを互いに接合固定してなる合成樹脂製の筐体(8)の内部に電子部品が収容されており、ベゼル(81)及びバックキャビネット(82)の表面には、耐候性塗料にシルバー色の染料を混合してなるシルバー塗料が塗布されている。
【0009】
尚、シルバー色には、シルバーグレー色を含むものとする。又、屋外とは、雨水や日光に直接に晒される完全な野外の環境のみならず、雨水や日光には晒されないが、屋外の温度や湿度の影響を直接に受ける半野外の環境をも含むものとする。
【0010】
より具体的には、前記耐候性塗料は耐紫外線塗料である。又、前記シルバー色の染料には金属粉が混合されている。
【0011】
上記本発明の屋外設置用電子機器においては、筐体が合成樹脂製であるので、機器の軽量化が可能である。
又、筐体の表面に塗布されたシルバー塗料が耐候性を発揮すると共に、そのシルバー色によって、筐体の表面に入射する太陽光線を反射し、筐体内部の温度上昇を抑制する。
又、合成樹脂製の筐体は、その表面が耐候性塗料によって覆われており、太陽光線が直接に入射することがないので、太陽光線(紫外線)に晒されることによる劣化は生じない。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る屋外設置用電子機器によれば、従来よりも軽量化を図ることが出来ると共に、筐体内部の過度な温度上昇を抑制することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の一実施形態である屋外設置用画像表示装置の外観を示す斜視図である。
【図2】図2は、該屋外設置用画像表示装置の縦断面図である。
【図3】図3は、該屋外設置用画像表示装置の筐体構造を示す分解斜視図である。
【図4】図4は、画像表示ユニットにボンディング層を介して保護パネルを接合するボンディング工程を示す図である。
【図5】図5は、従来の屋外設置用画像表示装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
本発明の一実施形態である屋外設置用画像表示装置は、図1に示す如く、ベゼル(81)とバックキャビネット(82)を互いに接合固定してなる筐体(8)を具え、該筐体(8)の前面開口部から画像表示面(10)が視認可能となっている。
【0015】
ベゼル(81)及びバックキャビネット(82)はそれぞれ、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)樹脂製であって、その外表面及び内表面には、耐紫外線塗料にシルバー色の染料を混合してなるシルバー塗料が、15〜25μmの厚さに吹き付け塗装されている。
前記耐紫外線塗料は、例えば中山武蔵塗料有限公司製であって、主剤“P79-C10-26602”(品名HAIUREX P)と硬化剤“H-300-50”と希釈剤“27975”(品名HAIUREX P シンナー)とを重量比4:1:2〜4で混合したものであって、塗装後の乾燥条件は、5〜10分間放置した後に70℃〜80℃で30分間加熱するものとする。
尚、前記染料には金属粉が混合されている。金属粉を混合することにより光の反射率が向上する。これにより耐熱性が向上する。
【0016】
筐体(8)の内部には、図2に示す如く、画像表示面(10)を有する画像表示ユニット(1)が収容され、筐体(8)の前面開口部は透明ガラス製の保護パネル(2)によって塞がれている。これによって筐体(8)は密閉構造を有している。
尚、保護パネル(2)は強化ガラスを用いて厚さ2.5mm〜6mmに形成されている。
【0017】
又、画像表示ユニット(1)の画像表示面(10)と保護パネル(2)の背面との間には、光硬化性樹脂を硬化させてなるボンディング層(3)が、隙間無く介在している。
【0018】
光硬化性樹脂としては、例えば紫外線硬化性を有するアクリル系接着樹脂を用いることが出来る。この場合、図4(a)の如く、画像表示ユニット(1)の表面に光硬化性樹脂(31)を塗布した後、光硬化性樹脂(31)の表面に保護パネル(2)を重ね合わせる。そして、この状態で、図4(b)の如く保護パネル(2)の表面側から紫外線を照射して、光硬化性樹脂(31)を硬化させる(例えばWO2009/011366号公報参照)。
【0019】
これによって、ボンディング層(3)は画像表示ユニット(1)の画像表示面(10)と保護パネル(2)の背面に密着して、画像表示ユニット(1)の前面にボンディング層(3)を介して保護パネル(2)が接合されることになる。
【0020】
画像表示ユニット(1)は、図2に示す如く、画像表示面(10)が前面に形成された液晶表示パネルからなる画像表示パネル(5)と、その背面側に配備されたレンズフィルム(12)及びディフューザフィルム(13)と、その背面側に配備されたバックライト(11)と、画像表示パネル(5)を支持するパネルガイド(14)と、パネルガイド(14)上の画像表示パネル(5)を保持する枠状の金属フレーム(6)とを具えている。
【0021】
図2及び図3に示す如く、保護パネル(2)の背面外周部とバックキャビネット(82)の外周縁部(84)との対向面間と、保護パネル(2)の前面外周部とベゼル(81)の開口縁部(83)との対向面間にはそれぞれ、シリコンゴムからなるループ状のガスケット(80)が介在している。
【0022】
そして、図2の如く、ガスケット(80)の近傍位置にて、バックキャビネット(82)の外周縁部(84)とベゼル(81)の開口縁部(83)とが互いに複数本のビス(85)により締結され、これによってバックキャビネット(82)とベゼル(81)とが互いに圧接されると共に、ビス(85)の締め付け力によってガスケット(80)が強く挟圧されている。
尚、1本のビス(85)の締め付け力は例えば15kgf・cmに設定される。
【0023】
この結果、大きな挟圧力が生じて、筐体(8)の開口部に、保護パネル(2)が確実に保持されることなる。
又、保護パネル(2)の外周部と筐体(8)の開口部を包囲する周縁部との間に、高い防水性が得られることになる。
【0024】
上記屋外設置用画像表示装置によれば、筐体(8)がABS樹脂製であるので、装置の軽量化が可能である。
【0025】
筐体(8)は、その表面が耐紫外線塗料によって覆われており、太陽光線が直接に入射することがないので、紫外線に晒されることによる劣化は殆ど生じない。
又、筐体(8)の密閉構造とガスケット(80)による防水構造によって、完全な防水が図られ、筐体(8)の内部に雨水が浸入する虞はない。従って、屋外での長期間の使用に耐えることが出来る。
【0026】
又、筐体(8)は、シルバー塗料のシルバー色によって、筐体(8)の表面に入射する太陽光線を反射する。ここで、シルバー塗料には、金属粉が混合されているので、大きな反射率が得られる。従って、筐体内部の温度上昇を効果的に抑制することが出来る。
シルバー塗料以外に白色塗料を採用しても同様の作用効果を得ることが出来るが、シルバー塗料と比較して、白色塗料の場合、塗布量を多くする必要があるので(膜厚30〜40μm)、コストの観点からシルバー塗料の方が好ましいと言える。
尚、この例での白色塗料の構成成分は、上述のシルバー塗料とほぼ同じである。但し、混合比がシルバー塗料と相違する。又、シルバー塗料の場合と異なり、金属粉は混合されていない。
【0027】
又、画像表示パネル(5)と保護パネル(2)の間の空間にボンディング層(3)が充填されているので、画像表示パネル(5)から放出される熱がボンディング層(3)を経て効率的に保護パネル(2)に伝わり、保護パネル(2)の表面から外部へ放散されるので、放熱性が良好である。
【0028】
更に又、上記屋外設置用画像表示装置によれば、ベゼル(81)とバックキャビネット(82)の間に保護パネル(2)を挟持する構造によって、保護パネル(2)の重量を確実に支えることが出来る。
ここで、保護パネル(2)は、ガスケット(80)を介してベゼル(81)とバックキャビネット(82)の間に挟持されているので、ガスケット(80)が発揮する緩衝作用により、保護パネル(2)に無理な外力が作用することはない。これによって保護パネル(2)の破損を防止することが出来る。
【0029】
本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、前記シルバー塗料は、ベゼル(81)及びバックキャビネット(82)の外表面にのみ塗布し、内表面への塗布を省略することが可能である。
又、筐体(8)と保護パネル(2)の間の防水構造は、ガスケット(80)を用いたものに限らず、周知の種々の防水構造を採用することが出来る。
【符号の説明】
【0030】
(1) 画像表示ユニット
(10) 画像表示面
(2) 保護パネル
(3) ボンディング層
(31) 光硬化性樹脂
(5) 画像表示パネル
(8) 筐体
(80) ガスケット
(81) ベゼル
(82) バックキャビネット
(83) 開口縁部
(84) 外周縁部
(85) ビス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を収容する合成樹脂製の筐体を具え、該筐体の表面には、耐候性塗料にシルバー色の染料を混合してなるシルバー塗料が塗布されている屋外設置用電子機器。
【請求項2】
ベゼルとバックキャビネットとを互いに接合固定してなる合成樹脂製の筐体の内部に電子部品が収容されており、ベゼル及びバックキャビネットの表面には、耐候性塗料にシルバー色の染料を混合してなるシルバー塗料が塗布されている屋外設置用電子機器。
【請求項3】
前記耐候性塗料は耐紫外線塗料である請求項1又は請求項2に記載の屋外設置用電子機器。
【請求項4】
前記シルバー色の染料には金属粉が混合されている請求項1乃至請求項3の何れかに記載の屋外設置用電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−95246(P2012−95246A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243005(P2010−243005)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(506399941)三洋科技中心(深▲セン▼)有限公司 (35)
【Fターム(参考)】