説明

屋根保護具

【課題】瓦揚機等を支持する屋根軒先部を保護できる屋根保護具を提供することを目的とする。
【解決手段】屋根に屋根材を運送する瓦揚機等による屋根軒先部の損傷を防ぐ屋根保護具であり、台座部と、引掛部とを備え、台座部は、鼻隠し側台座部と、瓦桟側台座部とを有するとともに、鼻隠し側台座部と、瓦桟側台座部とを回動自在に連結してあり、引掛部は、瓦桟側台座部の連結部反対側に取り付けてある。鼻隠し側台座部と、瓦桟側台座部との内、少なくとも一方の裏面に緩衝材を有し、少なくとも一方の表面側の連結部よりに回転部材を取り付けてあるとよく、引掛部は長さ調整自在になっているとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根に屋根材を運送する瓦揚機等を使用する際に用いるもので、瓦揚機等による屋根軒先部の損傷を防ぐ屋根保護具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、住宅新築工事及び在来住宅の屋根葺き替え工事等の際には、瓦揚機等を用いて屋根材を屋根に運送している。
屋根材としては、瓦、スレート(コロニアル)、トタン等の金属板等を例として挙げることができる。
図6に屋根軒先部30において瓦揚機20等を支持した状態の断面図を示すように、多くの場合瓦揚機20等は、屋根軒先部30で支持するものであり、ウィンチ等によるワイヤー21等の巻回駆動等でレールに備えた台車22を動かし屋根材40を運送している。
しかし、瓦揚機20等を軒先部30で支持するのと、ワイヤー21等が軒先部30に接触した状態で巻回する等との理由により、瓦揚機20等の支持及び使用の際には軒先部30を損傷しやすい問題があった。
損傷する軒先部30の部材としては、広小舞32、瓦座33、鼻隠し34等を例として挙げることができる。
特開平5−98758号公報に屋根の形状に沿った瓦揚機を開示するが汎用性に劣り高価である。
【0003】
【特許文献1】特開平5−98758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記技術的課題に鑑みて、瓦揚機等を支持する屋根軒先部を保護できる屋根保護具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の屋根保護具は、屋根に屋根材を運送する瓦揚機等による屋根軒先部の損傷を防ぐ屋根保護具であり、台座部と、引掛部とを備え、台座部は、鼻隠し側台座部と、瓦桟側台座部とを有するとともに、鼻隠し側台座部と、瓦桟側台座部とを回動自在に連結してあり、引掛部は、瓦桟側台座部の連結部反対側に取り付けてあることを特徴とする。
請求項2記載の屋根保護具は、鼻隠し側台座部と、瓦桟側台座部との内、少なくとも一方の裏面に緩衝材を有していることを特徴とする。
請求項3記載の屋根保護具は、鼻隠し側台座部と、瓦桟側台座部との内、少なくとも一方の表面側の連結部よりに回転部材を取り付けてあることを特徴とする。
台座部は、瓦揚機等と、軒先部との当接を防ぐためのものであり、瓦桟側台座部は屋根保護具を軒先部に設置の際に軒先部の上部を被覆し、鼻隠し側台座部は軒先部の下部もしくは側部を被覆する。また、台座部の裏面は軒先部設置時に軒先部側になる面である。
緩衝材は、瓦揚機等の支持時及び使用時の負荷を緩衝するためのものであり、軒先部の損傷を防止できる程度の大きさ、厚み、材質であれば特に限定されない。
回転部材は、瓦揚機等のワイヤー等と、台座部との接触を防いで、ワイヤー等の巻回を滑らかにできる程度に回転する。
引掛部は、屋根保護具を屋根軒先部等に引掛て支持するためのもので、屋根下地である野地板等に配設した瓦桟等に引掛る形状であり、引掛りを保持できる程度の強度を有している。
長さ調整自在の引掛部であれば、瓦桟等の位置に合わせて長さ調整ができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、鼻隠し台座部と、引掛部を備えた瓦桟側台座部とを回動自在に連結したことにより、軒先部に容易に設置でき、支持している瓦揚機等と、軒先部との干渉を防止し、軒先部材である鼻隠し等と、広小舞及び瓦座等との損傷を容易に防ぐことができる。
緩衝材は、台座部の裏面に配設したことにより、瓦揚機等の支持時及び使用時の負荷を緩衝し、軒先部を損傷から保護することができる。
台座部は、瓦揚機等と、軒先部との干渉を防ぐうえに、緩衝材と、ワイヤー等との干渉をも防止し、緩衝材を損傷することなく軒先部を保護できる。
回転部材は、台座部と、ワイヤー等との干渉を防止し、双方を損傷することなくワイヤー等の巻回を滑らかにできる。
引掛部は、屋根の仕様によっておおむね決まっている瓦桟等の位置に合わせて長さ調整できることにより、現場での取付作業が容易になる。
よって、本発明である屋根保護具を用いれば、瓦揚機等を使用する都度に軒先養生具を工作する必要がなく、長期に渡ってあらゆる工事現場で瓦揚機等を使用する際に軒先部を損傷させず保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に係る屋根保護具10(以下、単に保護具と称する)の例を以下図面に基づいて説明する。
図1に保護具10を屋根軒先部30に据え置きした状態の斜視図を示し、図2に保護具10の使用状態の斜視図を示す。
図1に保護具10を屋根軒先部30に据え置きした状態の斜視図を示すように、保護具10の台座部11は略平丁番状であり、瓦桟側台座部11aと、鼻隠し側台座部11bとを回動自在の連結部である回動部12で連結してある。
瓦桟側台座部11aは表面の回動部12よりに回転部材15を取り付けてあり、回動部12の反対側に引掛部14を取り付けてある。
瓦桟側台座部11aと、鼻隠し側台座部11bとには、設置の際に軒先部30側になる裏面にそれぞれ緩衝材13を配設してある。
台座部幅w1は瓦揚機レール幅w2より広く、双方の台座部奥行きdは緩衝材13を配設できる程度の奥行きであり、回動部12により鼻隠し側台座部11bがr方向に回動する。
双方の台座部11a,11bの裏面にそれぞれ配設する緩衝材13は、それぞれの台座部11a,11bと同等の大きさであり、緩衝材の厚みhは想像線で示す瓦揚機20等の支持時及び使用時の負荷を緩衝し軒先部30の損傷を防止できる程度の厚みである。
引掛部14は略L字型であり、瓦桟側台座部11aと、緩衝材13との間で瓦桟側台座部11aの両側端部に配設してある。
回転部材15は、台座部11と、想像線で示すワイヤー21等との接触を防止し、双方を損傷することなくワイヤー21等の巻回を滑らかにできる程度に回転する。
台座部11に緩衝材13を配設する際には、接着剤による接着等が例として挙げることができる。瓦桟側台座部11aに引掛部14を固設する際には、ビス止め等が例として挙げることができる。
引掛部14は保護具10を設置する際に引掛けできれば良く、本実施例の形状に限定されるものではない。
【0008】
図2に保護具10の使用状態の斜視図を示すように保護具10を軒先部30に設置する際には、引掛部14を瓦桟31等に引掛ることで容易に据え置きできる。
台座部11の回動部12により「くの字」状に軒先部30を覆うように設置でき、瓦揚機20等と、軒先部30との干渉を防止し、軒先部30を保護できる。
緩衝材13が軒先部30に対する瓦揚機20等の支持時及び使用時の負荷を緩衝することにより、軒先部30を損傷から防ぎ保護することができる。
回転部材15は、台座部11と、瓦揚機20等の使用時に巻回するワイヤー21等との干渉を防止し、双方を損傷することなくワイヤー21等の巻回を滑らかにできる。
よって瓦揚機20等を用いて屋根材40を運送する際に、保護具10で軒先部30を保護することにより、軒先部30の損傷を防ぐことができ、損害を被ることなく容易に屋根材40を運送することができる。
図示しないが引掛部14をビス止め等で瓦桟31等に固設する例を挙げることができる。
屋根の仕様により瓦桟31等が無い場合は、引掛桟等を軒先部30に配設し引掛るのが良い。
軒先部30に保護具10を設置できない場合には、引掛部14を瓦揚機20等に引掛る形状にしてあるのも良い。
また、JIS(日本工業規格)で定義する49A形、49B形、53A形、53B形、56形、60形等のようにおおむね決まっている瓦の大きさに合わせて引掛部14の長さを変えるのも良い。
【0009】
長さ調整機能を有する引掛部14の例を以下図面に基づいて説明する。
図3に瓦用引掛部140の分解斜視図を示し、図4にスライド引掛部150の断面図を示す。
図3に瓦用引掛部140の分解斜視図を示すように、瓦用引掛部140を保護具10に取り付ける。ここでは説明のため片側のみを拡大描写してある。
引掛バー141は係止用孔141aを複数有しており、係止用孔141aの間隔は瓦桟ピッチ@に合わせてある。
瓦桟ピッチ@は、JIS(日本工業規格)で定義する49A形、49B形、53A形、53B形、56形、60形等のようにおおむね決まっている瓦の大きさによって選択使用されるので、それに合わせて長さ調整を可能にしたものである。
引掛バー141の揺動を防ぐコの字型レール部142aと、係止用孔142bとを備えたベースレール142は、瓦桟側台座部11aと、緩衝材13との間で瓦桟側台座部11aの両側端部に配設してある。
保護具10を想像線で示す軒先部30に設置する際には瓦桟31等の位置に合わせて、引掛バー141の係止用孔141aと、ベースレール142の係止用孔142bとの位置を合わせて瓦用引掛部140の長さ調整をし、雄型係止具143と、雌型係止具144とで固定する。ここでは雄型係止具143はボルト、雌型係止具144はナットを示す。
瓦用引掛部140は、施工住宅それぞれの屋根瓦仕様によって異なる瓦桟31等の位置に合わせて長さ調整ができることにより、保護具10を軒先部30に容易に設置できる。
【0010】
図4にスライド引掛部150の断面図を示すように、長さ調整機能を有する引掛部14の別例であるスライド引掛部150を保護具10に取り付ける。図4(a)は分解断面図を示し、図4(b)は組立断面図を示す。
図4(a)に分解断面図を示すように、スライド引掛部150のスライドバー151は略L字型であり、一定の間隔gで連続凹凸断面151aを有している。
スライドベース部152は、スライドバー151を挿通できる中空部152aを有しており、スライドバー151の凹凸断面151aに引掛係止する係止部152bと、引掛係止を解除する押圧部152cとを備えている。
図示しないが、スライドベース部152の押圧部152cを押圧することにより、係止部152bが凹凸断面151aから離れ、スライドバー151との引掛係止を解除できる。
また、スライドバー151と、スライドベース部152とが引掛係止し、その引掛係止を解除できる構造であれば本実施例に限定されるものではない。
図4(b)に組立断面図を示すように、側面図で示す保護具10にスライド引掛部150を取り付けることにより、施工住宅の屋根の仕様に関係なく、保護具10を軒先部30に容易に設置できる。
ここで示した長さ調整機能を有する引掛部14の長さ調整手段は、引掛部14の長さ調整できる構造であれば本実施例に限定されるものではない。
【0011】
図5に在来住宅屋根葺き替え工事における軒先部30の断面図を示し、軒先部30と、雨樋32とを保護する例を説明する。
保護具10の鼻隠し側台座部11bは、軒先部30の雨樋32を被覆する程度の台座部奥行きdを有しており、裏面に同等の奥行きを有する緩衝材13を配設してある。
引掛部14を屋根材40である既存瓦に引掛け、鼻隠し側台座部11bと、緩衝材13とで軒先部30及び雨樋32を被覆し、瓦揚機20等及びワイヤー21等が干渉するのを防ぎ、負荷を緩衝することにより、軒先部30と、雨樋32とを損傷から保護できる。
本実施例は、瓦を屋根に運送したり、屋根から下に瓦を降ろす例で示したが、いわゆるトタン板等の屋根材一般に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る屋根保護具を屋根軒先部に据え置きした状態の斜視図を示す。
【図2】屋根保護具の使用状態の斜視図を示す。
【図3】長さ調整機能を有する瓦用引掛部の分解斜視図を示す。
【図4】長さ調整機能を有するスライド引掛部の断面図を示し、(a)は分解断面図、(b)は組立断面図を示す。
【図5】在来住宅屋根葺き替え工事における軒先部の断面図を示す。
【図6】屋根軒先部において瓦揚機等を支持した状態の断面図を示す。
【符号の説明】
【0013】
10 屋根保護具(保護具)
11 台座部
11a 瓦桟側台座部
11b 鼻隠し側台座部
12 回動部
13 緩衝材
14 引掛部
15 回転部材
140 瓦用引掛部
141 引掛バー
141a 係止用孔
142 ベースレール
142a コの字型レール部
142b 係止用孔
143 雄型係止具
144 雌型係止具
150 スライド引掛部
151 スライドバー
151a 凹凸断面
152 スライドベース部
152a 中空部
152b 係止部
152c 押圧部
w1 台座部幅
d 台座部奥行き
h 緩衝材の厚み
g 一定の間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根に屋根材を運送する瓦揚機等による屋根軒先部の損傷を防ぐ屋根保護具であり、台座部と、引掛部とを備え、
台座部は、鼻隠し側台座部と、瓦桟側台座部とを有するとともに、鼻隠し側台座部と、瓦桟側台座部とを回動自在に連結してあり、
引掛部は、瓦桟側台座部の連結部反対側に取り付けてあることを特徴とする屋根保護具。
【請求項2】
鼻隠し側台座部と、瓦桟側台座部との内、少なくとも一方の裏面に緩衝材を有していることを特徴とする請求項1記載の屋根保護具。
【請求項3】
鼻隠し側台座部と、瓦桟側台座部との内、少なくとも一方の表面側の連結部よりに回転部材を取り付けてあることを特徴とする請求項1又は2に記載の屋根保護具。
【請求項4】
引掛部は、長さ調整自在になっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の屋根保護具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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