説明

屋根緑化材及びその施工方法

【課題】地球温暖化による海面上昇や動物、植物への深刻な影響が報じられ、温暖化の主原因とされている炭酸ガスの削減に有効な緑化の必要が、叫ばれている。
日本国に多い瓦屋根等は、隙間があり、雨漏りして緑化が出来無かった。
この隙間のある瓦屋根等に緑化が出来れば、莫大な量の炭酸ガスを吸収、固定し、地球温暖化抑制に大いに貢献し、併せて瓦屋根は夏場75〜78度に焼け暑苦しく、冬場は冷え、住み難い日本家屋が夏涼しく、冬暖かく快適な環境に変えることができる。
【解決手段】
これまでは、隙間の有る瓦屋根等は雨漏りするため、緑化が出来ないとされていたが、本発明による透水係数2.5×10−5cm/sec〜7.5×10−1cm/secの範囲を示す植栽基盤材を用いて、これら隙間のある瓦屋根等の緑化が、可能となり、地球温暖化抑制に寄与することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隙間有し、雨漏りする可能性のある瓦屋根等に透水係数2.5×10−5cm/sec〜7.5×10−1cm/secを有する植栽基盤材を取り付けることを特徴とする緑化資材及びその施工方法に関するものである。本発明の隙間を有する面の利用分野は特定されないが、主として瓦屋根、カラーベスト屋根及び横葺き金属屋根等、これまで雨漏りして緑化が不可能とされた分野に使用される。
【背景技術】
【0002】
近年、地球規模での温暖化や環境汚染が社会的に問題視され、その解決策として、植栽とりわけ屋上緑化の重要性が指摘されている。しかし、日本国は平坦な隙間の無い陸屋根より、圧倒的に瓦屋根が多く、次いで、カラーベスト及び横葺き金属屋根が民家に多いが、これら民家の屋根は、隙間が有り、屋根緑化が出来なかった。又、これら民家の屋根は、夏場の屋根温度は65〜78℃と高温に焼け、又、冬期は逆に冷えやすく、快適な住居環境を保つため、冷暖房に多大の電気、燃料を消費し、一層温暖化を助長し、同時に大気汚染を強め、健康を損ねていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、日本国の民家に多い瓦屋根、カラーベスト屋根、横葺き屋根等隙間のある屋根材の上に緑化を可能にすることにより、地球温暖化を抑制し、併せて炭酸ガスを発生させず、逆に緑化により炭酸ガスを吸収、固定し、大気汚染を防ぎ、人類生存に不可欠な酸素を産出して、快適な地球環境、住居環境を創出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、隙間を有する瓦屋根等に、透水係数が2.5×10−5cm/sec〜7.5×10−1cm/secの植栽材を厚み10mm以上に付着させることで雨漏りを防ぎ、良好な植栽を維持出来る事を知見し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0005】
本発明による、隙間を有する瓦屋根等の緑化は、雨漏りするから緑化は不可能とされていた屋根に、2.5×10−5cm/sec〜7.5×10−1cm/secを有する植栽基盤材を付けて緑化をすることが出来、日本国では圧倒的に瓦屋根が多く、地球温暖化抑制、大気汚染の浄化及び快適な住居環境創出に大きく貢献する。
例えば黒土瓦屋根は、夏場75〜78度の高温に焼けるが、緑化することにより、27〜35度に下がり、炭酸ガスを吸収し、酸素を生産し、冬場でも0度以下に冷えず、暖房費が省け、更に凍結による瓦の破損が防げ、瓦屋根の耐用年数が大幅に伸びる等のメリットは大きい。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明において使用できる隙間を有する面としては、10μm〜3mm程度の隙間を有する日本瓦、平瓦等の瓦屋根、カラーベスト(スレート瓦屋根)、横葺及び縦葺きの各種金属屋根、波板又は平板の樹脂又は金属性屋根等が挙げられる。これらの屋根は3度以上、通常は10度〜40度程度の勾配を有する。そこに、透水係数2.5×10−5cm/sec〜7.5×10−1cm/sec、好ましくは3×10−5cm/sec〜7×10−1cm/secを有する緑化基盤材を10〜300mm、好ましくは30〜200mmの厚さに付けて緑化する。緑化基盤材は、上記の透水係数を有するものであれば特に限定されないが、軽量土壌で、流れ難く、飛び散らない繊維質土嬢を厚さ30〜250mmにすると、経済的である。緑化基盤材に使用する材料は、例えば、特許第3678892号に記載の方法により製造される物の他、赤土、鹿沼土、荒木田土、珪藻土、ピートモス、ヤシガラ、パーミキライト、パーライト、ゼオライト、カオリナイト、モンモリオナイト、珪砂、針葉樹皮、広葉樹皮、黒ボク土、木質燃焼灰及び腐植土等多く資材が使用出来る。これら各種材料の特性を活かして、組み合わせて本発明に供する緑化基盤材は、大き過ぎる材料の場合は、通常のハンマー型粉砕機で1〜2度粉砕し、各緑化基盤材を各々別々に秤量してドラム型混合機で均一混合して製造することが出来る。この緑化基盤材に各種植物種子、肥料を配合して施工すると便利である。また本発明の緑化基盤材は、軽量土壌や保水性を有するシート等も使用できる。
【0007】
本発明において使用できる隙間を有する面は、瓦屋根等屋根材に限定するものでなく、隙間が有り、雨漏りの為緑化ができなかった壁面、斜面等にも使用できる。隙間を有する面の屋根材や壁面材等の上に囲いを作ったり、ネットやラス張る事も出来、これらを限定するものでない。また、隙間を有する面としては、水を透さない防水材質、防水加工材であってもよい。
【0008】
次に実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。部は容量を示す。
【実施例1】
30度勾配を有し、且つ、135μmの隙間を持つ黒色日本瓦屋根に、針葉樹皮100部及び広葉樹皮250部をハンマー型粉砕機で2回粉砕したものに、モンモリオナイト115部、パ−ライト72部及び荒木田土14部を加え、遅効性粒状化成肥料(20・10・5)2部、野芝種子0.05部バミューダー種子0.1部及び草花種子0.01部を配合し均一混合した透水係数3.9×10−3cm/secを示す植栽基盤材を厚さ125mmに敷き均して日本瓦屋根緑化を施工。
【実施例2】
25度勾配を有し、且つ165μmの隙間を有する茶色平瓦屋根に、珪藻土35部、腐植土66部、ヤシガラ57部、杉樹皮粉砕品93部、カオリナイト18部、ゼオライト38部、黒ボク土53部、ピートモス85部及び粒状化成肥料(8・8・8)1部を加えた混合物に、ケンタッキーブルーグラス種子0.07部、赤クロバー種子0.02部を加えた透水係数6.9×10−4cm/secを示す植栽基盤材を厚さ87mmに敷き均して、平瓦屋根緑化を施工。
【実施例3】
13度勾配を有し、且つ、38μmの隙間を有する赤色横葺き金属屋根に、杉及び檜樹皮粉砕加工品357部、鹿沼土77部、珪藻土67部、カオリナイト23部、ゼオライト37部及び遅効性粒状化成肥料(20・10・5)3部を加えた混合物にダイカンドラ種子0.013部、センチピードグラス種子0.016部、石竹種子0.008部加えた透水係数8.3×10−3cm/secを示す植栽基盤材を厚さ115mmに吹付けて、横葺き鉄板屋根緑化を施工。
【実施例4】
20度勾配を有し、且つ23μmの隙間を有する茶色カラーベスト屋根に、ヤシガラ120部、杉樹皮175部、木質燃焼灰13部パーミキライト35部の粉砕加工品に、赤土35部、荒木田土26部、ピートモス37部遅効性粒状化成肥料(20.10.5)1.1部を加えた混合物に、ペレニアルライグラス種子0.012部、野芝種子0.020部、ポピー種子0.006部、ケンタッキーブルーグラス種子0.018部加えた透水係数6.3×10−2cm/secを示す植栽材を厚さ95mmに吹付けて、カラーベスト屋根に、緑化を施工。
【0009】
[対照1]
20度勾配を有し、且つ155μmの隙間を持つ黒色日本瓦屋根に、針葉樹皮35部及び広葉樹皮57部をハンマー型粉砕機で2回粉砕したものに、鶏糞15部及び黒ボク土240部及び遅効性粒状化成肥料(20・10・5)1.3部を加えた透水係数1.5×10−6cm/secを有する植栽基盤材を厚さ125mmに吹付けて日本瓦屋根緑化を施工。
[対照2]
13度勾配を有し、且つ、23μmの隙間を有する茶色カラーベスト屋根にヤシガラ55部、ピートモス37部、バーミキライト65部の粉砕加工品に、赤土粘性土175部及び遅効性粒状化成肥料(20・10・5)1部加えた混合物に、ペレニアルライグラス種子0.016部、野芝種子0.020部、アカクローバー0.006部、ケンタッキーブルーグラス種子0.020部加えた、透水係数8.8×10−7cm/secを示す植栽基盤材を、厚さ95mmに敷き均ししてカラーベスト屋根緑化を施工。
【0010】
[試験例1]:(各種屋根の雨漏り試験方法)
▲1▼室内試験方法
実験室内で、幅125cm長さ250cmの各種屋根を作り上げ、実施例及び対照で示した各種条件で、屋根緑化を施工し、シャワー型降雨機で、1時間65mmの雨を30分連続降らせ、15分間降雨を
止める操作を5回繰り返し、この間ブロウ型送風機で風速13m/secの強風を5分送り、5分間風を
止める操作を繰り返して、総べての操作終了の1時間後、屋根裏を観察して雨漏りの程度を測定した。
▲2▼屋外試験方法
屋外で、幅210cm長さ336cmの各種屋根を作って、実施例及び対照で示した各条件で屋根緑化を施工し、自然条件で、31ヶ月暴露した後、屋根裏を観察して雨漏りの程度を測定した。
【0011】
【表−1】

【表−2】

【表−3】

【0012】
〔各種屋根緑化試験結果の考察〕
▲1▼発明に含まれない対照−1、対照−2は、屋根全面に雨漏りが発生して、屋根緑化は、出来ない状態であった。
▲2▼しかし、本発明の実施例1〜4は、全く雨漏りせず、本発明の素晴らしさを、確認した。
▲3▼更に、本発明による実施例1〜4は、植栽基盤材の崩れも無く、植物の生育性にも優れた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3度以上の勾配を有し、且つ10μm〜3mmの隙間を有する面に植栽基盤材をつけて緑化する事を特徴とする緑化資材又は施工方法。
【請求項2】
隙間を有する面が水を透さない防水材質又は防水加工材である請求項1記載の緑化資材又は施工方法。
【請求項3】
隙間を有する面が瓦屋根、カラーベスト(スレート瓦屋根)、縦又は横葺き金属屋根、波板及び平板の樹脂又は金属製屋根である請求項1記載の緑化資材又は施工方法。
【請求項4】
植栽基盤材が、透水係数2.5×10−5cm/sec〜7.5×10−1cm/secである土壌であって、10mm以上の厚みで付着させることを特徴とする請求項1記載の緑化資材又は施工方法。

【公開番号】特開2012−200256(P2012−200256A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88631(P2011−88631)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(500266324)株式会社大林環境技術研究所 (2)
【Fターム(参考)】