説明

履帯式走行車両の終減速装置およびこれを備えた履帯式走行車両

【課題】簡易な構成により、終減速装置と履帯との間に岩石等の異物が噛み込まれることを抑制することが可能な履帯式走行車両の終減速装置およびこれを備えた履帯式走行車両を提供する。
【解決手段】終減速装置15は、履帯式走行車両に搭載される終減速ギアトレイン20と、終減速ギアトレイン20を内部空間に収納するケース21と、を備えている。ケース21は、履帯式走行車両の無端状の履帯70の内側の後端部に配置された状態において履帯70の内側の面とケース21の外周面との間の隙間を狭めるように下部外周面から突出した肉付け部23a,23bを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブルドーザや油圧ショベル等の履帯式走行車両に搭載される終減速装置およびこれを備えた履帯式走行車両に関する。
【背景技術】
【0002】
ブルドーザや油圧ショベル等の履帯式走行車両には、エンジンからの動力を、履帯等を回転させる走行装置に対して伝達するための複数のギアを含むトランスミッションや、終減速装置等の歯車式減速装置が搭載されている。
例えば、特許文献1には、ブルドーザの履帯内側に形成される空間の後端部に配置された終減速装置の構成について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−270788号公報(平成16年9月30日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の履帯式走行車両の終減速装置ケースでは、以下に示すような問題点を有している。
一般的に、終減速装置を収納するケースは、終減速装置の回転軸を軸方向とする略円筒状であることが多い。このため、履帯式走行車両に終減速装置を搭載した状態では、略円筒状の終減速装置ケースは回転軸方向が水平方向に沿って配置されるため、無端状の履帯の内側の面と終減速装置の外周面との間の隙間は、履帯式走行車両のスプロケットに近い位置ほど狭くなっていく。
【0005】
この場合において、履帯式走行車両が前進したり方向転換したりすると、履帯の内側の面に入り込んだ岩石等の異物が、上記隙間に噛み込まれて内部まで進入してしまうおそれがある。そして、この隙間から内部へ進入した岩石等の異物が、終減速装置周辺に悪影響を及ぼすおそれがある。
本発明の課題は、簡易な構成により、終減速装置と履帯との間に岩石等の異物が噛み込まれて内部へ進入して行くことを抑制することが可能な履帯式走行車両の終減速装置およびこれを備えた履帯式走行車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る履帯式走行車両の終減速装置は、終減速ギアトレインと、終減速ギアトレインを内部空間に収納するケースと、を備えている。ケースは、履帯式走行車両の無端状の履帯の内側の後端部に配置された状態において履帯の内側の面とケースの外周面との間の隙間を狭めるように下部外周面における前方寄りの位置から外側へ突出するように形成され、履帯式走行車両に取り付けられた状態において、履帯との間に噛み込んだ異物を履帯の外側へ誘導する傾斜部を含む第1肉付け部を有する。
【0007】
ここでは、履帯式走行車両の無端状の履帯の内側に配置される終減速装置のケースの一部に、履帯の内側の面と終減速装置ケースの外周面との間の形成される隙間を狭めるように、ケース下部の外周面から履帯の内側に向かって突出する肉付け部を設けている。
これにより、終減速装置ケースの外周面と履帯の内側の面との間の隙間を効果的に埋めることができるとともに、仮に、小さな異物が隙間に入り込んだ場合でも、傾斜部によって履帯の外側へと排出することができる。よって、簡易な構成により、終減速装置と履帯との間に岩石等の異物が噛み込まれて内部へ進入していくことを抑制することができる。この結果、終減速装置の周辺に配置された部品等へ悪影響を及ぼすことを防止することができる。
【0008】
第2の発明に係る履帯式走行車両の終減速装置は、第1の発明に係る履帯式走行車両の終減速装置であって、傾斜部は、履帯式走行車両の前後方向に対して傾斜する面を有している。
ここでは、上述した傾斜部の形状として、履帯式走行車両の前後方向に対して傾斜する面を含む形状を採用している。
これにより、万一、履帯の内側の面と終減速装置のケースの外周面との間の隙間に岩石等の異物が進入した場合でも、この異物を傾斜面に沿って履帯の外側へと効果的に排出することができる。
【0009】
第3の発明に係る履帯式走行車両の終減速装置は、第1または第2の発明に係る履帯式走行車両の終減速装置であって、ケースの下部外周面における後方寄りの位置から外側へ突出するように形成された傾斜部を含む第2肉付け部をさらに有している。
【0010】
ここでは、上述した肉付け部を、履帯式走行車両の前後方向におけるケースの前後両側の下端部にそれぞれ設けている。
これにより、前側の下端部に設けられた第1肉付け部によって、履帯式走行車両が前進している際に上記隙間に岩石等の異物が進入することを抑制しつつ、第2肉付け部によって、履帯式走行車両が後進、方向転換する際にも上記隙間に岩石等の異物が進入することを抑制することができる。
【0011】
第4の発明に係る履帯式走行車両の終減速装置は、第3の発明に係る履帯式走行車両の終減速装置であって、第1・第2肉付け部は、それぞれ前記履帯式走行車両に取り付けられた状態において履帯との間に噛み込んだ異物を履帯の外側へ誘導する第1・第2傾斜部を有している。そして、第1傾斜部の傾斜面の角度は、第2傾斜部の傾斜面の角度よりも大きい。
【0012】
ここでは、終減速装置ケースの外周面が、前後方向における両端部において履帯の内側の面との距離が異なるために進入して来る異物の大きさも異なることを考慮して、第1・第2肉付け部の第1・第2傾斜部の傾斜面の角度を異ならせている。
通常、履帯の内側の空間における後端部に配置された終減速装置に対して、履帯は後方ほど接近し、前方はある程度の距離を隔てて配置されている。
【0013】
これにより、前方の隙間から入り込んだ比較的大きな異物、後方の隙間から入り込んだ比較的小さな異物を、それぞれ第1傾斜部および第2傾斜部の傾斜面によって履帯の外部へと効果的に排出することができる。
【0014】
第5の発明に係る履帯式走行車両の終減速装置は、第1から第4の発明のいずれか1つに係る履帯式走行車両の終減速装置であって、傾斜部は、平面または曲面を含む。
これにより、簡素な形状により、傾斜部の傾斜面を利用して、隙間に入り込んだ異物を効果的に排出することができる。
【0015】
第6の発明に係る履帯式走行車両の終減速装置は、第1から第5の発明のいずれか1つに係る履帯式走行車両の終減速装置であって、第1肉付け部は、ケースと一体的に成形されている。
これにより、終減速装置ケースの一部に、第1肉付け部を容易に形成することができる。
【0016】
第7の発明に係る履帯式走行車両は、第1から第6の発明のいずれか1つに係る履帯式走行車両の終減速装置を備えている。
ここでは、上述した終減速装置を含む履帯式走行車両を構成している。
これにより、上述したように、簡易な構成により、終減速装置と履帯との間に岩石等の異物が噛み込まれて内部へ進入していくことを抑制して、終減速装置の周辺に配置されたボルト等の部品の変形や破損等の不具合の発生を防止することができる、等の効果を同様に得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る履帯式走行車両の終減速装置によれば、簡易な構成により、終減速装置と履帯との間に岩石等の異物が噛み込まれて内部へ進入していくことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る履帯式走行車両の終減速装置を搭載したブルドーザ全体の構成を示す側面図。
【図2】図1のブルドーザの内部断面図。
【図3】ブルドーザに搭載された終減速装置の外周面と左側の履帯の内面との間に、車体内側から岩石等の異物が入り込む際の様子を示す参考図。
【図4】図1のブルドーザの左側の履帯を駆動するために搭載された終減速装置周辺の構成を示す車体内側から見た拡大図。
【図5】図4の終減速装置およびケースの構成を示す拡大正面図。
【図6】図5のケースの外周面に設けられた肉付け部を示す拡大斜視図。
【図7】図5のケースの外周面に設けられた肉付け部を示す拡大斜視図。
【図8】図6のケースの一部として形成された肉付け部の傾斜部の傾斜面の角度を概念的に示す平面図。
【図9】(a),(b)は、本発明の他の実施形態に係る肉付け部の構成を示す拡大斜視図。
【図10】本発明の他の実施形態に係る肉付け部の構成を示す拡大斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態に係る終減速装置を搭載したブルドーザ(履帯式走行車両)1について、図1〜図8を用いて説明すれば以下の通りである。
なお、以下の説明において用いられる「前後方向」とは、図1等に示しているように、ブルドーザ1の車体前後方向と一致する方向を意味するものとする。
【0020】
[ブルドーザ1の構成]
本実施形態に係るブルドーザ1は、建設機械であって、図1に示すように、主として、キャブ2、車体フレーム3、作業機構6、走行装置7を備えている。
キャブ2には、運転者が着座するためのオペレータシートや各種操作のためのレバー、ペダルおよび計器類等が内装されている。キャブ2は、底部が図示しないフロアフレームによって構成されており、フロアフレーム上にピラーや側板が載置されている。
車体フレーム3は、作業機構6および走行装置7が取り付けられており、その上部にはキャブ2が載置されている。また、車体フレーム3は、内部にエンジン11等が設けられており、エンジン11において発生した回転駆動力が、終減速装置15を経由して後述する走行装置7のスプロケット73に伝達される。なお、この車体フレーム3の内部構成については、後段にて詳述する。
【0021】
作業機構6は、図1に示すように、地面を削り取って土砂を押し運ぶための機構であって、ブレード60と、支持フレーム61と、油圧シリンダ63と、を有している。ブレード60は、車体フレーム3の前方に設けられており、前面が湾曲した板状の形状を有している。支持フレーム61は、一端がブレード60に固定され、他端が走行装置7に固定されており、ブレード60を支持している。油圧シリンダ63は、整地作業時において必要に応じて伸縮してブレード60の位置を調整する。
【0022】
走行装置7は、履帯70、車両前後方向に沿って配設されたトラックフレーム71、走行輪であるアイドラ72およびスプロケット73等を有している。そして、走行装置7は、車体フレーム3の左右下部にそれぞれ設けられた一対の無端状の履帯70によって不整地における走行を可能としている。
【0023】
[車体フレーム3内部の構成]
車体フレーム3は、図2に示すように、内部に、エンジン11、トルクコンバータ12、トランスミッション13、ステアリングギアボックス14、終減速装置15等を格納している。
エンジン11は、ブルドーザ1に搭載された作業機構6や走行装置7を駆動するための動力源であって、車体フレーム3内における中央部付近に配置されている。
トルクコンバータ12は、オイルを介してエンジン11の動力を終減速装置15の入力軸に対して伝達するものであって、車体フレーム3内における後ろ寄りに配置されている。
【0024】
トランスミッション13は、トルクコンバータ12を介して伝達されるエンジン11の回転駆動力を、作業状態に応じた適切な大きさに変化させて、ステアリングギアボックス14、終減速装置15、スプロケット73に対して伝達するための変速機であって、トルクコンバータ12の後側に近接配置されている。
終減速装置15は、ステアリングギアボックス14の左右にそれぞれ配設されており、左右の履帯70が巻き掛けられたスプロケット73に駆動力を伝達するとともに、大きな減速比を得るために1段または2段以上の減速段を有する。なお、この終減速装置15の具体的な構成については、後段にて詳述する。
【0025】
[終減速装置15の構成]
図3は、参考例として、一般的な構成を備えた終減速装置121周辺の構成を示す拡大斜視図である。なお、図3には、左側の履帯70を駆動するために設けられた終減速装置121を車体内側から見た図が示されている。
図3に示すように、一般的な終減速装置121のケースの形状では、履帯70の内面側に岩石(異物の一例)Rが乗った状態でブルドーザ1が前進すると、終減速装置121のケースの形状では、岩石Rが履帯70の内面とケース外周面との間の隙間に噛み込んで内部へ進入していくおそれがある。この場合、終減速装置121の周辺に配置されたボルト等の部品に対して悪影響を及ぼすおそれがある。
【0026】
本実施形態の終減速装置15は、略円筒状のケース21の内部空間内に終減速ギアトレイン20を収納している。そして、ケース21は、図4および図5に示すように、ケース下部22と肉付け部23a,23bとを有している。
肉付け部23aは、図5に示すように、ケース下部22の下部外周面における前方寄りの位置から外側へ突出するように形成されている。換言すれば、肉付け部23aは、図4に示すように、履帯70の内面とケース21の外周面との間の隙間を狭めるように、ケース下部22の外周面から履帯70の内面に向かって突出するように形成されている。
【0027】
また、肉付け部23aは、図4に示すように、ブルドーザ1へ装着された状態において、図5に示すように、略鉛直方向に沿って形成された第1面23aaと、略水平方向に沿って形成された第2面23abと、を有している。さらに、肉付け部23aは、車体前後方向に対して傾斜する面を含む傾斜部24aを有している。
第1面23aaは、ブルドーザ1への装着状態において略鉛直方向に沿って形成され、図6に示すように、肉付け部23aの一部を構成する平面である。第1面23aaは、図4に示すように、ブルドーザ1の前進時に履帯70の内面上に乗った状態で搬送されてくる岩石Rと衝突して、ケース21の外周面と履帯70の内面との間の隙間に、岩石R等が入り込むことを抑制する。
【0028】
第2面23abは、ブルドーザ1への装着状態において履帯70の内面に対して対向するように略水平方向に沿って形成され、図6に示すように、肉付け部23aの一部を構成する平面である。第2面23abは、図4に示すように、ブルドーザ1の前進時に履帯70の内面上に乗った状態で搬送されてくる岩石Rが、ケース21の外周面と履帯70の内面との間の隙間に入り込まないように、前後方向においてこの隙間の大きさを小さく抑えることで、岩石R等が入り込むことを抑制する。
【0029】
傾斜部24aは、ブルドーザ1が前進している際に、履帯70の内面に乗った状態で搬送されてくる岩石Rが、仮に、履帯70の内面と肉付け部23a(第2面23ab)との間に噛み込んだ場合でも、図6に示す前後方向に対して傾斜した傾斜面を利用して、噛み込んだ岩石Rを、図4中の2点鎖線矢印の方向へ誘導する。つまり、傾斜部24aは、図4に示すように、履帯70の内面に乗った状態で搬送されてきた岩石Rが衝突すると、岩石Rを履帯70の外側(図4では車体内側)へとスムーズに誘導することで、岩石Rが履帯70とケース21の外周面との間の隙間の奥まで入り込むことを回避することができる。
【0030】
肉付け部23bは、図5に示すように、ケース下部22の下部外周面における後方寄りの位置から外側へ突出するように形成されている。換言すれば、肉付け部23bは、図4に示すように、スプロケット73が巻きかけられた履帯70の円弧状の内面とケース21の外周面との間の隙間をできるだけ狭めるように、ケース下部22の外周面から履帯70の内面に向かって突出するように形成されている。
【0031】
また、肉付け部23bは、図4に示すように、ブルドーザ1へ装着された状態において、図5に示すように、略円弧状に形成された第1面23baを有している。さらに、肉付け部23bは、車体前後方向に対して傾斜する面を含む傾斜部24bを有している。
第1面23baは、スプロケット73に巻きかけられた履帯70の円弧状の内面との隙間を最小限とするために、図7に示すように、略円弧状に外側へ突出するように形成されている。これにより、第1面23baは、ブルドーザ1の方向転換時等において、履帯70の内面とケース21との間の隙間に入り込もうとする岩石Rと衝突して、岩石Rがこの隙間に入り込むことを抑制する。
【0032】
傾斜部24bは、ブルドーザ1が方向転換した際に、履帯70の内面と第1面24baとの間に比較的小さい岩石Rが入り込んだ場合でも、図7に示す前後方向に対して傾斜した傾斜面を利用して、噛み込んだ岩石Rを、履帯70の外側(図4では車体内側)へとスムーズに誘導することで、岩石Rが履帯70とケース21の外周面との間の隙間の奥まで入り込むことを回避することができる。
【0033】
なお、肉付け部23a側の傾斜部24aは、図8に示すように、ブルドーザ1への装着状態において、前後方向に対して傾斜角度αだけ傾斜した面を有している。一方、肉付け部23b側の傾斜部24bは、図8に示すように、ブルドーザ1への装着状態において、前後方向に対して傾斜角度βだけ傾斜した面を有している。
すなわち、ケース下部22の前後に形成された傾斜部24a,24bは、前後方向に対して異なる傾斜角度α,β(本実施形態では、α>β)を有している。
【0034】
これにより、ブルドーザ1の前進時に、仮に、履帯70の内面とケース21の外周面との間の隙間に比較的大きな岩石Rが入り込んだ場合でも、岩石Rは、傾斜角度の大きい傾斜部24aによって効果的に履帯70の外側へと排出される。一方、ブルドーザ1の方向転換時等に、比較的隙間の小さい履帯70の内面と肉付け部23bとの間の隙間の隙間に入り込んだ比較的小さな岩石Rについては、傾斜角度の小さい傾斜部24bによっても効果的に履帯70の外側へと排出することができる。
【0035】
<特徴>
本実施形態の終減速装置15は、図5に示すように、ブルドーザ1に搭載された終減速ギアトレイン20を内部空間に収納するケース21と、ケース下部22の外周面と履帯70の内面との間の隙間の大きさを狭めるようにケース下部22の下部外周面から突出した肉付け部23a,23bと、を有するケース21を備えている。
【0036】
これにより、ブルドーザ1の前進時や方向転換時等において、ケース下部22の外周面と履帯70の内面との間の隙間に岩石Rが入り込もうとした場合でも、肉付け部23a,23bによってその進入を効果的にブロックすることができる。よって、上記隙間に岩石R等の異物が進入してボルト等の終減速装置15周辺の部品に対して悪影響を及ぼすことを防止することができる。
【0037】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態では、傾斜部24a,24bを有する肉付け部23a,23bを、ケース下部22の外周面から突出するように設けた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0038】
例えば、図9(a)および図9(b)に示すように、ケース下部122の外周面から突出し、傾斜部を持たない肉付け部123a,123bを、前後方向にそれぞれ設けてもよい。
この場合でも、履帯とケースの下部外周面との間に入り込む岩石等の異物の進入を効果的に抑制することができる。
【0039】
ただし、傾斜部を持たない肉付け部だけであっても岩石等の進入は抑制できるものの、細かい岩石等が履帯とケース下部との間の隙間から入り込んだ場合を想定して、入り込んだ岩石等を効果的に排出できるという点では、上記実施形態のように、傾斜部を有する肉付け部を設けることがより好ましい。
【0040】
(B)
上記実施形態では、ケース21の下部における前後方向にそれぞれ肉付け部23a,23bを設けた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、図10に示すように、終減速装置15の下部の前方のみに肉付け部23aを設けた構成であってもよい。
この場合には、履帯式走行車両の前進時に、履帯と終減速装置ケースの外周面との間の隙間に岩石等が入り込むことを、効果的に抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の履帯式走行車両の終減速装置は、簡易な構成により、終減速装置と履帯との間に岩石等の異物が噛み込まれて内部へ進入していくことを抑制することができるという効果を奏することから、履帯式走行車両に搭載される終減速装置として広く適用可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 ブルドーザ(建設機械)
2 キャブ
3 車体フレーム
6 作業機構
7 走行装置
11 エンジン
12 トルクコンバータ
13 トランスミッション
14 ステアリングギアボックス
15 終減速装置
20 終減速ギアトレイン
21 ケース
22 ケース下部
23a 肉付け部
23aa 第1面
23ab 第2面
23b 肉付け部
23ba 第1面
24a 傾斜部
24b 傾斜部
60 ブレード
61 支持フレーム
63 油圧シリンダ
70 履帯
71 トラックフレーム
72 アイドラ
73 スプロケット
121 終減速装置
122 ケース下部
123a 肉付け部
123b 肉付け部
R 岩石(異物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
終減速ギアトレインと、
前記終減速ギアトレインを内部空間に収納するケースと、
を備えており、
前記ケースは、履帯式走行車両の無端状の履帯の内側の後端部に配置された状態において前記履帯の内側の面と前記ケースの外周面との間の隙間を狭めるように下部外周面における前方寄りの位置から外側へ突出するように形成され、前記履帯式走行車両に取り付けられた状態において、前記履帯との間に噛み込んだ異物を前記履帯の外側へ誘導する傾斜部を含む第1肉付け部を有する、
履帯式走行車両の終減速装置。
【請求項2】
前記傾斜部は、前記履帯式走行車両の前後方向に対して傾斜する面を有している、
請求項1に記載の履帯式走行車両の終減速装置。
【請求項3】
前記ケースの下部外周面における後方寄りの位置から外側へ突出するように形成された傾斜部を含む第2肉付け部をさらに有している、
請求項1または2に記載の履帯式走行車両の終減速装置。
【請求項4】
前記第1・第2肉付け部は、それぞれ前記履帯式走行車両に取り付けられた状態において前記履帯との間に噛み込んだ異物を前記履帯の外側へ誘導する第1・第2傾斜部を有しており、
前記第1傾斜部の傾斜面の角度は、前記第2傾斜部の傾斜面の角度よりも大きい、
請求項3に記載の履帯式走行車両の終減速装置。
【請求項5】
前記傾斜部は、平面または曲面を含む、
請求項1から4のいずれか1項に記載の終減速装置。
【請求項6】
前記第1肉付け部は、前記ケースと一体的に成形されている、
請求項1から5のいずれか1項に記載の終減速装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の履帯式走行車両の終減速装置を、
備えた履帯式走行車両。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−179926(P2012−179926A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42070(P2011−42070)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)