説明

岩石の微細組織の開口気孔部へ固体物質の充填方法

【課題】カルシウム化合物またはマグネシウム化合物を主成分としない岩石、すなわち花崗岩、安山岩などの岩石製品の建築建造物または土木建造物の外部からの汚染を抑制するとともに岩石製品の強度を増強させることのできる表面処理方法の提供。
【解決手段】岩石組織の微細開口部にカルシウム化合物水溶液またはマグネシウム化合物水溶液を浸漬させた後、フッ化物水溶液を浸漬させて、岩石組織の微細開口部に水に不溶性のフッ化物(数7)を生成沈積させて、岩石組織の微細開口部の体積を縮小することにより、外観の変化が肉眼では容易に識別不可能のまま、外部からの汚染を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細】
岩石の主成分がカルシウム化合物またはマグネシウム化合物から形成されてない岩石、すなわち花崗岩、安山岩などを用いた建築ならびに土木構造物が、外部からの汚染物質で汚れるのを防ぐことを目的にした発明である。
岩石を加工した製品が外気にさらされている建築ならびに土木構造物が、外部からの汚染物質によりしばしば汚染される。汚染物質の形態には気体、液体、固体などの物質がある。気体は酸性雨などで岩石を侵食することがある。液体は岩石にしみ込み、岩石と反応あるいは沈着して岩石を汚染する。
固体の汚染物質は岩石の表面の凹凸ならびに岩石表面の開口気孔部へ機械的に接着するか沈着する。
本発明は、岩石の主成分がカルシウム化合物またはマグネシウム化合物からなる岩石、すなわち花崗岩、安山岩などを対称にしている。これらの岩石の微細組織の開口気孔部の空隙にカルシウム化合物またはマグネシウム化合物の水溶液をしみ込また後、水溶性のフッ化物をしみ込ませて、不溶性のフッ化カルシウムまたはフッ化マグネシウムを生成させて岩石の微細組織の開口気孔部の空隙組織に不溶性のフッ化カルシウムまたはフッ化マグネシウムを生成させることを目的にしている。
岩石の微細組織の開口気孔部からなる空隙組織に不溶性のフッ化カルシウムまたはフッ化マグネシウムが沈着することにより、開口気孔部の空隙組織の体積が縮小される。その結果、岩石の物理的強度が増し、さらに外部からの汚染物質の進入が減少されて汚染が抑制される画期的な発明である。
特に繊維状の開口気孔を有する岩石には著しい効果を発揮するものである。
岩石の見かけ上の単位体積当りの開口気孔部の体積の割合が同じ値の岩石でも、開口気孔部が微細孔になるほど、また繊維状になるほど岩石の単位体積当りの開口気孔部内の表面積は増大する。
岩石の見かけ上の単位体積当りの開口気孔分の体積の割合が同じ値の岩石でも、開口気孔部が微細孔になるほど、また繊維状になるほど岩石の単位体積当りの開口気孔部内の表面積は増大するため一旦染み付いた汚れはとりにくい。
岩石の開口気孔部へしみ込ませるカルシウム化合物水溶液またはマグネシウム化合物水溶液の沈殿物とフッ化物水溶液とが反応して生成したフッ化カルシウムまたはフッ化マグネシウム化合物の体積は、岩石の開口気孔部が微細になるほど、また繊維状になるほど、元の空隙の体積に占める割合は増大する。特に微細開口気孔部の内部表面積の縮小は著しい。
この結果、微細組織の開口気孔部を構成する開口気孔部の体積が小さいほど、繊維状になるほど汚染防止の効果が大きくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、岩石の断面を拡大して、模式的に表現したものである。数1は、岩石組織の石基質部である。数2は岩石表面につながる微細組織の開口気孔部である。数3は岩石組織内部の微細組織の密閉気孔部である。数8は岩石の表面である。
【図2】は、20℃で飽和した塩化カルシウム水溶液に10分間浸漬し、岩石表面に面した微細組織の開口気孔部が塩化カルシウム水溶液で充満された状態である。数4は、空隙が塩化カルシウム水溶液で充満された状態を模式的に示している。
【図3】は、岩石を20℃で飽和した塩化カルシウム水溶液に10分間浸漬し、岩石表面に面した微細組織の空隙が塩化カルシウム水溶液で充満された状態で自然乾燥した岩石の断面を模式的に表現したものである。数5は、岩石の開口気孔部に充満していた塩化カルシウム水溶液が乾燥して微細組織の開口気孔部の壁に沈着した状態を模式的に表現したものである。
【図4】は、図3で示した岩石を20℃で飽和したフッ化物水溶液に30分間、浸漬し、微細組織の開口気孔部に沈着した塩化カルシウムで覆われた空隙をフッ化水物溶液で充満した状態を模式的に表したものである。数6は、フッ化物水溶液である。
【図5】は、図4で示した岩石を自然乾燥した状態を模式的に表したものである。数7は、塩化カルシウムと反応して生成した不溶性のフッ化カルシウムである。
【本発明の実地例】
実地例1
吸水率0.3%、圧縮強度1230kgf/cmの白色系花崗岩を厚み60mmに切断してから、本石板の表面をバーナー処理を施した。この石板を100x100x60mmに切断してから自然乾燥させた。この石板の100x100mmの1面に外形の直径が5cm、内径が4cm、幅が5mmの丸を石板の中心に描いた。これを供試体Aと呼ぶ。
供試体Aを塩化カルシウ水溶液に10分間浸漬した。この石板を室内で自然乾燥させた。この自然乾燥させた石板を20℃で飽和したフッ化ナトリウム水溶液に30分間浸漬した後、取り出して室内で自然乾燥させた。これを供試体Bと呼ぶ。
供試体Bを清水の流水中へ24時間浸漬した後、この供試体Bを自然乾燥したものを供試体Cと命名する。供試体Cを清水の流水中へ3日間浸漬した後、この供試体Cを自然乾燥したものを供試体Dと命名する。供試体Dを清水の流水中へ7日間浸漬した後、自然乾燥したものを供試体Eと命名する。
供試体A、供試体B、供試体C、供試体D、供試体Eのそれぞれの100x100mmの1面に黒マジックで丸を描いた面に同一条件で自動車排気ガスを吹き付け、その後、同一条件で回転ブラシで表面を掃除してから、黒マジックで描いた丸の見えやすさを比較した。
比較した後、供試体A、供試体B、供試体C、供試体D、供試体E、を同一条件で水洗いしてから黒マジックの丸の見えやすさを比較した。
これらの供試体の吸水率および圧縮強度を測定した結果を表ー1に示す。これらの供試体の汚れの程度を判別した結果を表ー2に示す。
【表−1】

【表−2】

実地例2
吸水率0.5%、圧縮強度980kgf/cmの錆色花崗岩を厚み60mmに切断し、その表面をバーナー処理を施した。本石を100x100x60mmに切断して自然乾燥させたものを供試体AAと呼ぶ。
20℃で飽和した塩化カルシウム水溶液に供試体AAを30分浸漬した後、自然乾燥したものを20℃で飽和したフッ化ナトリウム水溶液に30分浸漬した後、自然乾燥ものを供試体BBと命名した。
供試体BBを清水の流水中に30分つけてから自然乾燥させたものを供試体CCと命名した。
供試体CCを清水の流水中に1日浸漬してから自然乾燥させたものを供試体DDと命名した。
供試体DDを清水の流水中に7日浸漬してから自然乾燥させたものを供試体EEと命名した。
供試体AA、BB、CC、DD、EE、の吸水率と圧縮強度を測定した。
測定結果を表ー3に示す。
【表−3】

供試体AA、供試体BB、供試体CC、供試体DD、供試体EE、について汚れの程度を判別し、表ー2に示した。判別方法は、供試体AA、供試体BB、供試体CC、供試体DD、供試体EE、を100x100mmの1面に、同一条件で黒マジックで丸を描き、見えやすさを比較した。
見えやすさの比較方法は、外形が直径5cm、内径が4cm、幅が5mmの丸を描き、自動車排気ガスを同一条件で吹き付け、その後、同一条件で回転ブラシを用いて表面を掃除してから、黒マジックの丸の見えやすさを比較した。
比較した後、供試体AA、供試体BB、供試体CC、供試体DD、供試体EE、を同一条件で水洗してから黒マジックの丸の見えやすさを比較した。
【表−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本発明は、岩石を構成する成分の主成分がカルシウム化合物あるいはマグネシウム化合物でない岩石の微細組織の開口気孔部にカルシウム(Ca)化合物水溶液またはマグネシウム(Mg)化合物水溶液をしみ込ませた後、フッ化物水溶液を微細組織の開口気孔部にしみ込ませて、微細組織の開口気孔部に不溶性のフッ化カルシウム(CaF)またはフッ化マグネシウム(MgF)を生成させ、微細組織の開口部体積を縮小させて、岩石製品の外観が肉眼では変化が容易に分からず、かつ組織全体の強度を増強し、微細組織の開口気孔部に沈着する外部からの汚れを抑制することを特徴とする岩石の微細組織の開口気孔部の充填方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−31037(P2012−31037A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183452(P2010−183452)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(500528912)
【Fターム(参考)】