説明

嵌め殺し窓における障子の固定構造

【課題】嵌め殺し窓を設けるにあたり、固定枠材に障子を嵌め込む作業が容易で、かつ、作業性よくできるように構成する。
【解決手段】第二障子8を固定枠材2、3、6、5にけんどん式に嵌め込んで、該嵌め込み姿勢を保持するにあたり、下枠材10と下固定枠材3との間に設けた第一係止手段とともに、第二障子8の左右枠材11、12と左右固定枠材6、5との間に設けられ、弾性変形自在な第二係止片14dと、該第二係止片14dを第二障子8の嵌め込み過程で弾性変形させ、第二障子8が嵌め込み姿勢となることに伴い自然状態に復帰した第二係止片14dに係止して嵌め込み姿勢を保持する第二係止受け片16cとで構成される第二係止手段により保持する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の屋内外を仕切る開口部等に設けられる嵌め殺し窓における障子の固定構造の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種嵌め殺し窓を躯体に設ける場合では、躯体に固定される固定枠材を枠組みし、該固定枠材に対して四周を枠材により囲繞された障子を嵌め殺し状に組込んで嵌め殺し窓の完成品を予め工場において形成し、このものを設置現場に搬送し、設置現場の開口部に対して嵌め殺し窓を固定する作業を行う工法が用いられていた。ところが、固定枠材と障子とを予め一体化した嵌め殺し窓は重量体となるため、搬送や、設置作業が困難であり、特に大型の嵌め殺し窓を設置する場合では、搬送や設置作業をする際にクレーンのような重機を用いる作業を伴うことになり、作業が大がかりとなって作業員数も多く必要となり、コスト高になるという問題がある。
そこで、工場において躯体に固定される固定枠材と、枠材に囲繞された障子とをそれぞれ個別に用意し、これら分解された状態のものを設置現場に搬送し、設置現場において固定枠材を躯体開口部に固定し、該固定された固定枠材に対して障子を組込む手順の工法とすることが提唱されるが、このような工法とする場合では、固定枠材に障子を組込み、固定する作業をできるだけ簡潔、かつ、容易に実施できるようにすることが要求される。
【0003】
この改善策として、上下、左右の各枠材に囲繞された障子の上枠材を、躯体に固定される固定枠材の上固定枠材に表裏方向一方から挿し込み、障子の下枠材を一方側に押しやって下固定枠材に落とし込むけんどん方式で固定枠材に組込むことにより、障子の上枠材と上固定枠材との間に設けたバネ材により障子を下方に押圧する一方、障子の下枠材に形成された係止片を、下固定枠材に形成された係止凹部に係止させて、障子が固定枠材に嵌め込まれた嵌め込み姿勢に保持するように構成し、この嵌め込み姿勢において、障子の下枠材と躯体に固定される下固定枠材、障子の左右枠材と左右固定枠材を、表裏方向他方側からそれぞれ固定手段を用いて一体的に固定するようにすることが知られている。
【特許文献1】実開平6−51467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記従来のものにおいて、障子は、上下端部における係止に基づいて嵌め込み姿勢の保持がなされる構成であり、左右端部については何ら保持するものがなく、嵌め込み姿勢の保持が充分でないという問題がある。
また、係止片と係止凹部との間には遊びが形成されており、該遊びに基づいて障子が固定枠材に対して傾斜状に位置ズレした嵌め込み姿勢となって保持されることが想定され、障子を固定枠材に対して位置精度よく嵌め込み姿勢とするのが難しいという問題がある。そして、このものでは、表裏方向一方となる屋外側から障子を組込み、屋内側において障子の枠材と固定枠材とを固定する構成となっている。このため、前述したように、障子が固定枠材に対して精度よく位置合わせされていないことに気付かず、屋内側に回って枠材と固定枠材とを固定しようとした場合では、固定部における位置合わせが不充分なため再度屋外側に戻って障子の位置合わせをやり直さなければならず、屋内外を行き来するという煩雑な作業を強いられるという問題がある。
さらに、前記従来のものにおいて、障子の左右枠材と左右の固定枠材とは、左右枠材と固定枠材との表裏方向に延出する側片同士を、左右方向に長い固定手段であるピン体を用いて固定する構成である。このため、障子を固定枠材に固定する場合に、障子の枠材からガラスを取外した状態で固定作業を行い、その後、ガラスを取付けるという作業を行っており、設置現場での作業がさらに煩雑になるという問題がある。これを回避するには、固定枠材と左右枠材とを表裏方向に長くすればよいが、このようにすると表裏方向の寸法を長くしなければならず、各枠材が大型化してしまうという問題があり、これらに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、四周を枠材に囲繞された障子を、躯体開口部に固定された固定枠材に固定してなる嵌め殺し窓において、前記障子を、固定枠材の表裏方向一方側からけんどん式に嵌め込んで、障子の下端部と下固定枠材との間に設けた第一係止手段が係止する嵌め込み姿勢に保持するにあたり、障子の左右端部と左右固定枠材との間には、弾性変形自在な係止片と、該係止片を障子の嵌め込み過程で弾性変形させ、障子が嵌め込み姿勢となることに伴い自然状態に復帰した係止片に係止して嵌め込み姿勢を保持する係止受け片とで構成される第二係止手段が設けられている嵌め殺し窓における障子の固定構造である。
請求項2の発明は、第二係止手段は、第一係止手段に先行して係止するように構成されている請求項1に記載の嵌め殺し窓における障子の固定構造である。
請求項3の発明は、係止片は、V字状に折曲形成された板バネで構成され、弾性変形した状態から自然状態に復帰する際に発音するように構成されている請求項1または2に記載の嵌め殺し窓における障子の固定構造である。
請求項4の発明は、係止受け片は、障子と固定枠材とを固定する一体化片が形成される取付け金具に一体形成されている請求項1乃至3の何れか1項に記載の嵌め殺し窓における障子の固定構造である。
請求項5の発明は、係止片は障子の左右端部に、取付け金具は左右固定枠材にそれぞれ設けられるものとし、取付け金具は、表裏方向一方に係止受け片が形成され、表裏方向他方に一体化片が形成され、前記一体化片は、表裏方向他方から挿入される螺子により障子に一体固定されている請求項4に記載の嵌め殺し窓における障子の固定構造である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、嵌め込み姿勢の保持が確実になって、嵌め殺し窓の設置作業を簡便に行えるうえ、格別係止操作することなく第二係止手段を係止させることができて、作業性に優れる。
請求項2の発明とすることにより、障子を位置精度よく嵌め込み姿勢とすることができ、作業性よく障子と固定枠材とを固定することができる。
請求項3の発明とすることにより、第二係止手段の係止が容易で作業性に優れる。
請求項4の発明とすることにより、部品点数の削減、作業工程の簡略化を図ることができ、作業性が一層向上する。
請求項5の発明とすることにより、大型化することがないようにできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
つぎに、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図面において、1は躯体開口部に設けられた窓ユニットであって、該窓ユニット1は、図1の正面図に示すように、開口部に固定される上下一対の上下固定枠材2、3と、左右一対の左右固定枠材4、5と、上下固定枠材2、3、左右固定枠材4、5とにより囲繞された空間を中間固定枠材6により左右方向に分割されており、該中間固定枠材6の左側に形成される左側空間には、所定の操作具を操作することで下端縁が屋外側に揺動する滑り出し窓7の四枚が、上下方向に並列する状態で嵌め殺し状に設けられている。一方、中間固定枠材6の右側に形成される右側空間には、本発明の嵌め殺し窓を構成する障子8が固定されている。そして、本実施の形態では、窓ユニット1の障子8を上下一対の上下固定枠材2、3と、本発明の左右の固定枠材に相当する中間固定枠材6(以後、左固定枠材とする)と右固定枠材5とに固定する固定構造に本発明が実施されている。
【0008】
前記障子8は、ガラス板で構成される本体部8aの四周を、断面コ字形に形成された上下一対の上下枠材9、10と、左右一対の左右枠材11、12とにより囲繞することにより構成されている。前記上枠材9には、屋内側面となる裏面に沿って上方に延出する位置決め片9aと、屋外側面である表面より裏面側に偏寄した部位から上方に延出する抜止め片9bとがそれぞれ形成されている。ここで、本実施の形態の上枠材9には、位置決め片9aと抜止め片9bとが屋内外に対向する一対の片として形成されているが、抜止め片は必ずしも必要はなく位置決め片に兼用させることができる。
また、下枠材10は、裏面より表面側に偏寄した部位から下方に延出し、本発明の第一係止手段を構成する第一係止片10aが下枠材10の全長に亘って形成されており、該第一係止片10aの下端部には、裏面側に向けて突出する位置決め片10bが予め設定される突出長さで折曲形成されている。
【0009】
一方、躯体開口部に固定される固定枠材のうち、上固定枠材2は、表裏方向に対向する一対の側片2a、2bを備えて構成されており、これら側片2a、2bには、互に近接する方向(表裏方向)に突出する支持片2c、2dが形成されており、障子8をけんどん式に組込む場合に、これら支持片2c、2dの対向間に障子8の上端部であって、上枠材9から上方に突出し、障子8の表裏方向厚さよりも対向間隔の狭い位置決め片9aと抜止め片9bとが挿し込まれるように構成されている。
さらに、下固定枠材3は、障子8の下端面と対向する下側片3aと、障子8の裏面対向する裏側片3bとを備えて構成されており、これら各片3a、3bとは、それぞれ障子8とは所定間隙を存するように設定されている。そして、裏側片3bには、表側に突出し、障子8の裏面に突当たる支持片3cが形成されており、下側片3aには、左右方向複数箇所であって、本実施の形態では下側片3aの左右両端部に位置して、本発明の第一係止手段を構成する係止受け金具13がそれぞれ一体的に固定されている。尚、3dは支持片3cとは段差状となって表側に延出する水切り板である。
【0010】
前記係止受け金具13は、下固定枠材3の下側片3aに固定される固定片13aと、該固定片13aの表側端縁部から上方に起立する起立片13bと、該起立片13bの上端縁部から裏側に延出し、障子8の下端面を支持する支持片13cと、該支持片13cの裏側端縁部から上方に起立する位置決め片13dとを備えて構成されている。さらに、前記支持片13cの左右方向中央部には、表側が支持片13cに連続し裏側端縁部ほど高位となる状態で切起こされた第一係止受け片13eが形成されており、該第一係止受け片13eに、前記障子8の下枠材10に形成された第一係止片10aが裏側から係止するように構成されている。そして、前記第一係止受け片13eの切起こし先端縁と位置決め片13dとの間に形成される間隔は、前記障子8の下枠材10に形成された位置決め片10bの突出長さよりも僅かに長くなるように設定されている。
また、躯体開口部に固定される固定枠材を構成する中間固定枠材6と右固定枠材5とは、それぞれ障子8の左右端部に対向する左、右側片6a、5aと、障子8の裏面に対向し、前記上下固定枠材2、3の裏側片2b、3aと面一状となる位置関係で形成される裏側片6b、5bとを備えて構成されており、各左、右側片6a、5aは障子8の対向する各端面との間にそれぞれ所定間隙を存するように配設されているとともに、各裏側片6b、5bには、表側に向けて延出して障子8の裏面に突当てられる支持片6c、5cがそれぞれ一体形成されている。
【0011】
そして、障子8は固定枠材2、3、6、5にけんどん式に組込まれる構成であり、まず、障子8の上端部(上枠材9)の位置決め片9aと抜止め片9bとを表裏方向一方となる表側(屋外側)から上固定枠材2の支持片2c、2d間に挿し込み、障子8の下端部が係止受け金具13の上方に位置するよう持ち上げ、下枠材10の下方に突出する位置決め片10bを係止受け金具13の支持片13cに支持させた状態とし、この状態から、障子8を押しやって、障子8の裏面および上端部の位置決め片9aを上下、左右の固定枠材2、3、6、5の各支持片2d、3c、6c、5cに突当てた状態とすることで、位置決め片10bが係止受け金具13の第一係止受け片13eを乗り越えて第一係止受け片13eと位置決め片13dとの間の間隙に落ち込み、これによって、障子8が固定枠材2、3、6、5に組込まれるように構成されており、該組込まれた状態が、障子8の嵌め込み姿勢に設定されている。そして、この嵌め込み姿勢において、障子8は、上枠材9の抜止め片9bが上固定枠材2の表側支持片2cに係止している一方、下枠材10の第一係止片10aが係止受け金具13の第一係止受け片13eと位置決め片13dとの間に嵌入することにより、第一係止片10aが第一係止受け片13eに係止して障子8が表側に抜け出さないように構成されており、これによって、障子8の嵌め込み姿勢が保持されるように構成されている。
尚、前述したように、障子の上枠材に抜止め片が形成されない場合では、位置決め片が表側支持片に抜け止めされることにより、障子の嵌め込み姿勢が保持されるように構成されている。
そして、障子8が上下、左右の固定枠材2、3、6、5の各支持片2d、3c、6c、5cに突当てられた状態において、下枠材第一係止片10aと第一係止受け片13eの切起こし先端部との間には間隙Sが形成されるように設定されている。
【0012】
さらに、本発明が実施された窓ユニット1においては、障子8の左右端部と左右の固定枠材6、5との間の上下方向複数箇所(本実施の形態では三箇所)に位置して、障子8の嵌め込み姿勢を保持するための第二係止手段が設けられているとともに、該第二係止手段に隣接する状態で障子8と左右の固定枠材6、5とを一体化するための固定手段が設けられている。
ここで、障子8の左右枠材11、12の左右端面11a、12aと左右の固定枠材6、5との間にそれぞれ設けられる第二係止手段および固定手段とは、同様の構成部材を用い、左右においてはそれぞれ左右対称状に設ける構成により、それぞれ同様の効果を得るものであるので、本実施の形態では、図3において右側の最上位に位置する第二係止手段および固定手段に基づいて詳細な説明をし、他の部位に設けられる第二係止手段および固定手段については同様の符号を付すことにより説明を省略する。
【0013】
前記障子8の右枠材12における右端面12aには、第二係止手段を構成する係止金具14が設けられている。前記係止金具14は、板バネをV字状に折曲することにより構成されており、折曲部14aを裏面側に向けた状態とし、折曲部14aの左側片を固定片14bとして右枠材右端面12aに螺子14cを用いて固定することにより、折曲部14aの右側片が弾性変形自在な第二係止片(本発明の係止片に相当する)14dとなるように設定されている。そして、第二係止片14dは、自然状態においては、第二係止片14dの表側端縁部が障子8の右端面12aよりも右方に突出しており、第二係止片14dに左方に向く押圧力が作用することにより、固定片14bに近付く弾性変形をするように構成されている。
さらに、右枠材右端面12aには、係止金具14の上部に位置して固定手段を構成する障子側取付け金具15が設けられている。前記障子側取付け金具15は、右端面12aに沿って螺子15aを用いて固定される取付け片15bと、該取付け片15bの裏面側端縁部から右固定枠材5側(右方)に突出し、右固定枠材5の裏側片5bに近接対向する一体化片15cとによりL字状に形成されており、一体化片15cには螺子溝15dが形成されている。
【0014】
これに対し、右固定枠材5には、第二係止手段と固定手段との構成部材が一体に形成された固定枠材側取付け金具(本発明の取付け金具に相当する)16が設けられている。前記固定枠材側取付け金具16は、右固定枠材5の右側片5aに沿い、螺子16aを用いて固定される取付け片16bを備えて構成されている。そして、取付け片16bの下半部における表側端縁部には、第二係止手段を構成する第二係止受け片16cが開口部側(左側)に向けて突出形成されており、該第二係止受け片16cは、後述するように、障子8の嵌め込み作業の過程で前記係止金具14の第二係止片14dに干渉して弾性変形させるように構成されている。また、前記取付け片16bの上半部における裏側端縁部には、固定手段を構成する一体化片16dが開口部側に向けて突出形成されており、該一体化片16dには、後述するように、障子8を嵌め込み姿勢とすることに伴い、前記障子側取付け金具15の一体化片15cが突当て状に積層するように構成されている。尚、固定枠材側取付け金具16の一体化片16dには左右方向に長い長孔16eが開設されている。
【0015】
前記第二係止手段は、障子8をけんどん式に固定枠材2、3、6、5に嵌め込む過程であって、障子8の上端部を上固定枠材2に挿し込み、下端部(位置決め片10b)を係止受け金具13の支持片13cに支持させた後、障子8を固定枠材2、3、6、5側の各支持片2d、3c、6c、5cに押し付ける過程において係止するように構成されており、障子8の上端部を上固定枠材2に挿し込んで、下端部の位置決め片10bを係止受け金具支持片13cに支持させた状態では、上下方向三箇所に設けられる係止金具14の第二係止片14dは、図7(B)の一点鎖線で示すように、表側端縁部が右固定枠材2に設けられた固定枠材側取付け金具16の第二係止受け片16cよりも表側に位置して第二係止受け片16cに干渉する(係止する)ことはなく、表側端縁が右方に突出する自然状態となっている。
そして、障子8を固定枠材支持片2d、3c、6c、5cに突当てるべく裏側に押しやることに伴い、障子8から右方に突出する第二係止片14dが第二係止受け片16cの左側端縁に干渉し、さらなる障子8の裏側への押し込みに伴い、図7(B)の二点鎖線で示すように、第二係止片14dが第二係止受け片16cの左側端縁により押圧され、右方に拡開する自然状態から固定片14b側に弾性変形しながら裏側に摺動変位するように構成されている。そして、障子8の裏面が支持片2dに近付くことに伴い、図7(B)の実線で示すように、第二係止片14dは第二係止受け片16cによる干渉が回避されて(第二係止受け片16cを乗り越えて)自然状態に復帰するように構成されている。この状態となると、障子8から右方に突出する第二係止片14dの表側端縁部が第二係止受け片16cに対して裏側から対向し、これによって、障子8は、第二係止片14dが第二係止受け片16cに係止することにより表側への変位が規制され、第二係止手段による障子8の嵌め込み姿勢の保持がなされるように構成されている。
このように、障子8は、固定枠材2、3、6、5に対して嵌め込み姿勢となることに伴い、障子8の左右において上下方向三箇所に設けられた第二係止手段が嵌め込み姿勢を保持するべく、第二係止片14dと第二係止受け片16cとが係止状態となるが、この場合に、障子8は、上端部が上固定枠材2に挿し込まれた状態になって、下端が表側に位置する傾斜状となっているため、障子8が嵌め込み姿勢となる過程で、上側に位置する第二係止手段から順次係止状態となるように設定されている。そして、嵌め込み姿勢になった状態では、障子8は、第一、第二係止手段による係止を受けることになって、嵌め込み姿勢の保持が確実になされるように構成されている。尚、障子の上枠材に形成される位置決め片に抜止め片を兼用させた場合、障子の嵌め込み姿勢において、上端部において固定枠材との遊びが大きくなり、その分、障子の位置精度が劣ることが想定されるが、第二係止手段を上方に設けることにより、障子をガタつきなく嵌め込み姿勢に保持することが可能となる。
【0016】
ところで、障子8を上下、左右の固定枠材2、3、6、5の各支持片2d、3c、6c、5cに突当てた状態において、係止金具14の第二係止片14dの表側端縁部と固定枠材側取付け金具16の第二係止受け片16cとの間には間隙S1が存するように設定されている。そして、前記間隙S1は、下枠材第一係止片10aと第一係止受け片13eの切起こし先端部との間に形成される間隙Sよりも大きく(S<S1)なるように設定されている。これによって、障子8を嵌め込み姿勢とする過程で、障子8を裏側に押しやった場合では、左右の各第二係止手段が上側のものから順次係止状態とすることで、障子8の下端部の第一係止片10aが第一係止受け片13eを乗り越えて支持片13cの裏面側に落ち込むことが確実になされるように構成されている。これによって、第一係止手段(第一係止片10aと第一係止受け片13eと)の係止状態が確実になって、障子8を固定枠材2、3、6、5に対して位置精度よく嵌め込み姿勢にできるように構成されている。
因みに、本実施の形態の係止金具14は、第二係止片14dが弾性変形している状態から第二係止受け片16cを乗り越えて自然状態に復帰する際に嵌め込み音が発生し、作業者は第二係止手段が係止したことを嵌め込み音により認識することができるように構成されている。また、障子8の下端部の第一係止片10aが第一係止受け片13eと位置決め片13dとの間に落ち込む(第一係止手段が係止状態になる)場合にも、落ち込み音が発生する。これによって、障子8の固定枠材2、3、6、5への嵌め込み姿勢とする作業の過程、即ち、障子8を固定枠材2、3、6、5に対して押し付ける作業をする過程で、第一係止手段の係止を落ち込み音で確認し、かつ、第二係止手段による係止を嵌め込み音により確認しながら作業することにより、障子8を位置精度よく固定枠材2、3、6、5に嵌め込むことができるように構成されている。
【0017】
このように、障子8は、第一、第二係止手段を係止させる状態で嵌め込むことにより、固定枠材2、3、6、5に対して位置精度のよい嵌め込み姿勢とすることができ、しかも、該嵌め込み姿勢が第一、第二係止手段により保持することができるように構成されている。このため、前記嵌め込み姿勢にすることに伴い、固定枠材側取付け金具16の一体化片16dと障子側取付け金具15の一体化片15cとが自動的に精度よく位置合わせされて、一体化片16d、15c同士の位置合わせ作業が容易になるように構成されている。
そして、障子8と固定枠材2、3、6、5との一体化は、左右の固定枠材6、5の裏側片6b、5bに開設された貫通孔6d、5dに、裏面側から固定螺子17を挿通し、該固定螺子17の挿通端部を、一体化片16dの貫通孔16eに貫通させ、障子側取付け金具15の螺子溝15dに螺合することにより、障子8と左右の固定枠材6、5とが一体化されるように構成されている。これによって、障子8と左右の固定枠材6、5とは、表裏方向に螺入する螺子17を用いて一体化することができ、従来の左右方向に螺入する螺子を用いるもののように、螺子を螺入するための螺入代を各枠材の表裏方向に形成する必要がなくなって、枠材の表裏方向の寸法をコンパクト化できるように構成されている。
【0018】
叙述の如く構成された本形態において、窓ユニット1は、設置現場に障子8と該障子8が嵌め込まれる固定枠材2、3、5、6とを個別に設置現場に搬送し、該設置現場の開口部に固定された固定枠材2、3、6、5に障子8を組込むことができるが、この場合に、障子8は、固定枠材2、3、6、5に組込まれた嵌め込み姿勢において、第一係止手段に基づく上下方向における保持がなされるばかりでなく、第二係止手段に基づく左右方向における保持がなされて、嵌め込み姿勢の保持を確実に行うことができ、窓ユニット1の設置作業を少人数で、かつ、簡便に行うことが可能となる。そのうえ、このものでは、障子8を嵌め込み姿勢とすることに伴い第二係止片14dが第二係止受け片16cに係止するので、格別係止操作することなく第二係止手段を係止させることができて、作業性に優れる。
【0019】
しかも、本発明が実施されたものでは、第二係止手段を係止した状態とすることにより第一係止手段を確実に係止させることができ、障子8を固定枠材2、3、6、5に対して位置ズレすることなく、位置精度よく嵌め込み姿勢とすることができる。この結果、障子8と固定枠材2、3、6、5とを一体化するための一体化片15c、16d同士の位置決めが精度よくなされて、表裏方向を往復して位置合わせするような手間を省くことができる。
【0020】
さらに、このものでは、第二係止手段を構成する係止金具14をV字状に折曲された板バネを用いる構成としたので、単に障子8を固定枠材2、3、6、5に対して押しやる通常の嵌め込み操作をすることにより第二係止手段が係止して、格別係止操作をする必要がなく作業性に優れる。
【0021】
また、このものでは、障子8を固定枠材2、3、6、5に固定するための固定手段と第二係止手段との各構成部材を、一つの固定枠材側取付け金具16に設ける構成としたので、部品点数の削減、作業工程の簡略化を図ることができて、作業性のさらなる向上が図れる。
【0022】
そのうえ、このものでは、固定手段としての障子側取付け金具15の一体化片15cと、固定枠材側取付け金具16の一体化片16dとを左右方向を向く板材とし、これら一体化片15c、16dを一体化する螺子17を表裏方向に螺入する螺子としたので、従来の左右方向に螺入する螺子を用いるもののように、各枠材の表裏方向の寸法を長くして大型化してしまうような不具合をなくすことができる。
【0023】
尚、本発明は前記実施の形態に限定されないことは勿論であって、係止片を固定枠材に設ける一方、係止受け片を障子側に設ける構成であってもよく、この構成において係止片としてV字状に折曲した板バネを用いる場合では、係止片の折曲部を、けんどん式に嵌め込む方向の手前側に向ける状態で設ければよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】嵌め殺し窓の正面図である。
【図2】嵌め殺し窓の一部を切欠いた縦断面図である。
【図3】嵌め殺し窓の一部を切欠いた横断面図である。
【図4】図4(A)、(B)、(C)はそれぞれ係止受け金具の平面図、正面図、側面図である。
【図5】図5(A)、(B)、(C)はそれぞれ係止金具の平面図、正面図、側面図であり、図5(D)、(E)、(F)はそれぞれ障子側取付け金具の平面図、正面図、側面図である。
【図6】図6(A)、(B)、(C)はそれぞれ固定枠材側取付け金具の平面図、正面図、側面図である。
【図7】図7(A)、(B)はそれぞれ第二障子の固定枠材への嵌め込み状態を説明する要部正面図、第二係止手段の係止状態を説明する要部平面断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 嵌め殺し窓
2 上固定枠材
3 下固定枠材
6 中間固定枠材
8 第二障子
10 下枠材
10a 第一係止片
12 右枠材
13 係止受け金具
13e 第一係止受け片
14 係止金具
14d 第二係止片
15 障子側取付け金具
16 固定枠材側取付け金具
16c 第二係止受け片
17 固定螺子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
四周を枠材に囲繞された障子を、躯体開口部に固定された固定枠材に固定してなる嵌め殺し窓において、前記障子を、固定枠材の表裏方向一方側からけんどん式に嵌め込んで、障子の下端部と下固定枠材との間に設けた第一係止手段が係止する嵌め込み姿勢に保持するにあたり、障子の左右端部と左右固定枠材との間には、弾性変形自在な係止片と、該係止片を障子の嵌め込み過程で弾性変形させ、障子が嵌め込み姿勢となることに伴い自然状態に復帰した係止片に係止して嵌め込み姿勢を保持する係止受け片とで構成される第二係止手段が設けられている嵌め殺し窓における障子の固定構造。
【請求項2】
第二係止手段は、第一係止手段に先行して係止するように構成されている請求項1に記載の嵌め殺し窓における障子の固定構造。
【請求項3】
係止片は、V字状に折曲形成された板バネで構成され、弾性変形した状態から自然状態に復帰する際に発音するように構成されている請求項1または2に記載の嵌め殺し窓における障子の固定構造。
【請求項4】
係止受け片は、障子と固定枠材とを固定する一体化片が形成される取付け金具に一体形成されている請求項1乃至3の何れか1項に記載の嵌め殺し窓における障子の固定構造。
【請求項5】
係止片は障子の左右端部に、取付け金具は左右固定枠材にそれぞれ設けられるものとし、取付け金具は、表裏方向一方に係止受け片が形成され、表裏方向他方に一体化片が形成され、前記一体化片は、表裏方向他方から挿入される螺子により障子に一体固定されている請求項4に記載の嵌め殺し窓における障子の固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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