説明

嵩高い置換基を有するシロキシ基含有シリル(メタ)アクリレート化合物及びその製造方法

【課題】より加水分解に対して安定で容易に製造可能なシロキシ基含有シリル(メタ)アクリレート化合物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)


1、R2は同一又は異なるα位又はβ位に炭化水素基を有する炭素数3〜10の1価の分岐状炭化水素基又は炭素数3〜10の1価の環状炭化水素基、R3は水素原子又はメチル基であり、Aは下記一般式(2)


(R4は炭素数1〜10の1価の炭化水素基であり、mは2〜30の整数。)で示されるシロキシ基等であり、嵩高い置換基を有するシロキシ基含有シリル(メタ)アクリレート化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な嵩高い置換基を有するシロキシ基含有シリル(メタ)アクリレート化合物及びその製造方法に関する。この新規化合物は、船底塗料などの加水分解性自己研磨型ポリマーの原料として有用である。
【背景技術】
【0002】
船底塗料などに含まれている加水分解性自己研磨型ポリマーとしては、これまで、トリブチルスズメタクリレートとメチルメタクリレート等との共重合体が用いられてきた。この共重合体は水中で加水分解され、ビストリブチルスズオキシドを放出し、加水分解されたポリマー部がカルボン酸になるため水溶性となり、水中に溶解し、常に活性な表面を保つことができる。
【0003】
しかしながら、加水分解の際に放出するビストリブチルスズオキシドは毒性が強いため、水中を汚染し、生態系への悪影響が懸念されている。
【0004】
そのため、スズを含有しないポリマーの開発が行われており、そのようなポリマーの例としては、特許第3053081号公報(特許文献1)、米国特許第4593055号明細書(特許文献2)に記載のトリブチルスズメタクリレートの代わりにトリブチルシリルメタクリレート、トリイソプロピルシリルアクリレート等のトリアルキルシリル(メタ)アクリレートを用い、アルキルメタクリレートと共重合させたものが挙げられる。
【0005】
しかしながら、上記トリアルキルシリル(メタ)アクリレートとアルキルメタクリレートとの共重合体では、加水分解によるポリマーの自己研磨により放出される化合物が、水中生物の付着抑制には効果のないトリアルキルシラノールであり、またポリマー自体にも水中生物付着抑制効果がないため、水中生物の付着抑制のためには殺生物剤を同時に用いる必要がある。
【0006】
殺生物剤を用いない、もしくは減量可能な加水分解性自己研磨型ポリマーとしては、例えば特開昭63−253090号公報(特許文献3)記載のトリス(トリメチルシロキシ)シリル(メタ)アクリレート、特表2005−537335号公報(特許文献4)記載のシクロシロキサン化合物と不飽和オルガノシリルカルボキシレート化合物とを反応させた化合物等のシロキシ基含有シリル(メタ)アクリレート化合物を用い、アルキルメタクリレートと共重合させたものが挙げられる。これらのポリマーはシロキシ基を有するため表面自由エネルギーが低く、表面への水中生物の付着抑制を図ることができる。そのため殺生物剤を微量添加、もしくは無添加で水中生物の付着を防止することができる。更に加水分解によるポリマーの自己研磨により、常に活性なシロキシ基含有ポリマー表面を保つことができるので、持続的な水中生物の付着抑制が可能である。しかしながら、特開昭63−253090号公報記載のシロキシ基含有シリル(メタ)アクリレート化合物では加水分解速度が速く、ポリマーが急激に溶出してしまい防汚効果が持続しないという問題点がある。また、特表2005−537335号公報記載のシロキシ基含有シリル(メタ)アクリレート化合物では、シロキシ基含有シリル(メタ)アクリレートを製造する際に用いるシクロシロキサン化合物のアルキル基を嵩高くすることにより加水分解速度を遅くすることは可能であるが、嵩高いアルキル基を有するシクロシロキサン化合物は不飽和オルガノシリルカルボキシレート化合物との反応性が非常に悪くなり、目的とする嵩高い置換基を有するシロキシ基含有シリル(メタ)アクリレート化合物を製造することが困難である。そのため、容易に製造可能な加水分解に対して更に安定なシロキシ基含有シリル(メタ)アクリレート化合物が求められてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3053081号公報
【特許文献2】米国特許第4593055号明細書
【特許文献3】特開昭63−253090号公報
【特許文献4】特表2005−537335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、より加水分解に対して安定で容易に製造可能なシロキシ基含有シリル(メタ)アクリレート化合物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、(メタ)アクリロイルオキシ基が結合するケイ素原子上に嵩高い置換基を導入したシロキシ基含有シリル(メタ)アクリレート化合物が、上述したシロキシ基含有シリル(メタ)アクリレート化合物に比べ、加水分解に対して安定であり、且つ容易に製造可能であることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0010】
従って、本発明は、下記に示す嵩高い置換基を有するシロキシ基含有シリル(メタ)アクリレート化合物及びその製造方法を提供する。
〔請求項1〕
下記一般式(1)
【化1】

[式中、R1、R2は、同一又は異なるα位又はβ位に炭化水素基を有する炭素数3〜10の1価の分岐状炭化水素基又は炭素数3〜10の1価の環状炭化水素基、R3は水素原子又はメチル基であり、Aは下記一般式(2)
【化2】

(式中、R4は炭素数1〜10の1価の炭化水素基であり、mは2〜30の整数である。)で示されるシロキシ基、又は下記一般式(3)
【化3】

(式中、nは2〜30の整数である。)で示されるシロキシ基である。]
で示される嵩高い置換基を有するシロキシ基含有シリル(メタ)アクリレート化合物。
〔請求項2〕
上記一般式(1)のR1、R2がイソプロピル基又はsec−ブチル基である請求項1記載のシロキシ基含有シリル(メタ)アクリレート化合物。
〔請求項3〕
下記一般式(4)
【化4】

[式中、R1、R2は、同一又は異なるα位又はβ位に炭化水素基を有する炭素数3〜10の1価の分岐状炭化水素基又は炭素数3〜10の1価の環状炭化水素基であり、Aは下記一般式(2)
【化5】

(式中、R4は炭素数1〜10の1価の炭化水素基であり、mは2〜30の整数である。)で示されるシロキシ基、又は下記一般式(3)
【化6】

(式中、nは2〜30の整数である。)で示されるシロキシ基である。]
で示される嵩高い置換基を有するシロキシ基含有クロロシラン化合物と、アクリル酸又はメタクリル酸とを、塩基性化合物の存在下に反応させることを特徴とする請求項1記載のシロキシ基含有シリル(メタ)アクリレート化合物の製造方法。
〔請求項4〕
相間移動触媒を用いることを特徴とする請求項3記載のシロキシ基含有シリル(メタ)アクリレート化合物の製造方法。
〔請求項5〕
アクリル酸又はメタクリル酸1モルに対し、一般式(4)のクロロシラン化合物を0.5〜2.0モルの割合で反応させると共に、反応温度が−20℃〜200℃である請求項3又は4記載のシロキシ基含有シリル(メタ)アクリレート化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明により提供される嵩高い置換基を有するシロキシ基含有シリル(メタ)アクリレート化合物は、加水分解速度が遅く、且つ容易に製造可能であり、またアルキルメタクリレートと共重合させたポリマーは、殺生物剤を微量添加、もしくは無添加で表面への水中生物の付着抑制を図ることができるため、船底塗料などの加水分解性自己研磨型ポリマーの原料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1で得られた1−アクリロイルオキシ−1,1−ジイソプロピル−ノナメチルペンタシロキサンの1H−NMRスペクトルである。
【図2】実施例1で得られた1−アクリロイルオキシ−1,1−ジイソプロピル−ノナメチルペンタシロキサンのIRスペクトルである。
【図3】実施例2で得られたアクリロイルオキシジイソプロピルシロキシ−ヘプタメチルシクロテトラシロキサンの1H−NMRスペクトルである。
【図4】実施例2で得られたアクリロイルオキシジイソプロピルシロキシ−ヘプタメチルシクロテトラシロキサンのIRスペクトルである。
【図5】実施例3で得られた1−アクリロイルオキシ−1,1−ジイソプロピル−11−ブチル−デカメチルヘキサシロキサンの1H−NMRスペクトルである。
【図6】実施例3で得られた1−アクリロイルオキシ−1,1−ジイソプロピル−11−ブチル−デカメチルヘキサシロキサンのIRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の嵩高い置換基を有するシロキシ基含有シリル(メタ)アクリレート化合物は、下記一般式(1)
【化7】

[式中、R1、R2は、同一又は異なるα位又はβ位に炭化水素基を有する炭素数3〜10の1価の分岐状炭化水素基又は炭素数3〜10の1価の環状炭化水素基、R3は水素原子又はメチル基であり、Aは下記一般式(2)
【化8】

(式中、R4は炭素数1〜10の1価の炭化水素基であり、mは2〜30の整数である。)で示されるシロキシ基、又は下記一般式(3)
【化9】

(式中、nは2〜30の整数である。)で示されるシロキシ基である。]
で示される化合物である。
【0014】
ここで、R1、R2の炭素数3〜10の分岐状炭化水素基及び環状炭化水素基としては、分岐状のアルキル基又はシクロアルキル基が好ましく、具体的にはイソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、2−エチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が例示され、特にイソプロピル基、sec−ブチル基が好ましい。
【0015】
また、R4の炭素数1〜10の1価の炭化水素基として、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、2−エチルヘキシル基等が例示される。
更に、mは2〜30の整数であり、好ましくは2〜20の整数である。またnは2〜30の整数であり、好ましくは2〜20の整数である。
【0016】
上記一般式(1)で示される嵩高い置換基を有するシロキシ基含有シリル(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、1−アクリロイルオキシ−1,1−ジイソプロピル−ヘプタメチルテトラシロキサン、1−アクリロイルオキシ−1,1−ジイソプロピル−ノナメチルペンタシロキサン、1−アクリロイルオキシ−1,1−ジイソプロピル−ウンデカメチルヘキサシロキサン、1−アクリロイルオキシ−1,1−ジイソプロピル−トリデカメチルヘプタシロキサン、1−アクリロイルオキシ−1,1−ジイソプロピル−ペンタデカメチルオクタシロキサン、1−アクリロイルオキシ−1,1−ジ(sec−ブチル)−ヘプタメチルテトラシロキサン、1−アクリロイルオキシ−1,1−ジ(sec−ブチル)−ノナメチルペンタシロキサン、1−アクリロイルオキシ−1,1−ジ(sec−ブチル)−ウンデカメチルヘキサシロキサン、1−アクリロイルオキシ−1,1−ジ(sec−ブチル)−トリデカメチルヘプタシロキサン、1−アクリロイルオキシ−1,1−ジ(sec−ブチル)−ペンタデカメチルオクタシロキサン、1−アクリロイルオキシ−1,1−ジイソブチル−ヘプタメチルテトラシロキサン、1−アクリロイルオキシ−1,1−ジイソブチル−ノナメチルペンタシロキサン、1−アクリロイルオキシ−1,1−ジイソブチル−ウンデカメチルヘキサシロキサン、1−アクリロイルオキシ−1,1−ジイソブチル−トリデカメチルヘプタシロキサン、1−アクリロイルオキシ−1,1−ジイソブチル−ペンタデカメチルオクタシロキサン、1−アクリロイルオキシ−1,1−ジイソプロピル−7−ブチル−ヘキサメチルテトラシロキサン、1−アクリロイルオキシ−1,1−ジイソプロピル−9−ブチル−オクタメチルペンタシロキサン、1−アクリロイルオキシ−1,1−ジイソプロピル−11−ブチル−デカメチルヘキサシロキサン、1−アクリロイルオキシ−1,1−ジイソプロピル−13−ブチル−ドデカメチルヘプタシロキサン、1−アクリロイルオキシ−1,1−ジイソプロピル−15−ブチル−テトラデカメチルオクタシロキサン、1−アクリロイルオキシ−1,1−ジ(sec−ブチル)−7−ブチル−ヘキサメチルテトラシロキサン、1−アクリロイルオキシ−1,1−ジ(sec−ブチル)−9−ブチル−オクタメチルペンタシロキサン、1−アクリロイルオキシ−1,1−ジ(sec−ブチル)−11−ブチル−デカメチルヘキサシロキサン、1−アクリロイルオキシ−1,1−ジ(sec−ブチル)−13−ブチル−ドデカメチルヘプタシロキサン、1−アクリロイルオキシ−1,1−ジ(sec−ブチル)−15−ブチル−テトラデカメチルオクタシロキサン、1−アクリロイルオキシ−1,1−ジイソブチル−7−ブチル−ヘキサメチルテトラシロキサン、1−アクリロイルオキシ−1,1−ジイソブチル−9−ブチル−オクタメチルペンタシロキサン、1−アクリロイルオキシ−1,1−ジイソブチル−11−ブチル−デカメチルヘキサシロキサン、1−アクリロイルオキシ−1,1−ジイソブチル−13−ブチル−ドデカメチルヘプタシロキサン、1−アクリロイルオキシ−1,1−ジイソブチル−15−ブチル−テトラデカメチルオクタシロキサン、アクリロイルオキシジイソプロピルシロキシ−ペンタメチルシクロトリシロキサン、アクリロイルオキシジイソプロピルシロキシ−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン、アクリロイルオキシジイソプロピルシロキシ−ノナメチルシクロペンタシロキサン、アクリロイルオキシジイソプロピルシロキシ−ウンデカメチルシクロヘキサシロキサン、アクリロイルオキシジイソプロピルシロキシ−トリデカメチルシクロヘプタシロキサン、アクリロイルオキシジ(sec−ブチル)シロキシ−ペンタメチルシクロトリシロキサン、アクリロイルオキシジ(sec−ブチル)シロキシ−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン、アクリロイルオキシジ(sec−ブチル)シロキシ−ノナメチルシクロペンタシロキサン、アクリロイルオキシジ(sec−ブチル)シロキシ−ウンデカメチルシクロヘキサシロキサン、アクリロイルオキシジ(sec−ブチル)シロキシ−トリデカメチルシクロヘプタシロキサン、アクリロイルオキシジイソブチルシロキシ−ペンタメチルシクロトリシロキサン、アクリロイルオキシジイソブチルシロキシ−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン、アクリロイルオキシジイソブチルシロキシ−ノナメチルシクロペンタシロキサン、アクリロイルオキシジイソブチルシロキシ−ウンデカメチルシクロヘキサシロキサン、アクリロイルオキシジイソブチルシロキシ−トリデカメチルシクロヘプタシロキサン、1−メタクリロイルオキシ−1,1−ジイソプロピル−ヘプタメチルテトラシロキサン、1−メタクリロイルオキシ−1,1−ジイソプロピル−ノナメチルペンタシロキサン、1−メタクリロイルオキシ−1,1−ジイソプロピル−ウンデカメチルヘキサシロキサン、1−メタクリロイルオキシ−1,1−ジイソプロピル−トリデカメチルヘプタシロキサン、1−メタクリロイルオキシ−1,1−ジイソプロピル−ペンタデカメチルオクタシロキサン、1−メタクリロイルオキシ−1,1−ジ(sec−ブチル)−ヘプタメチルテトラシロキサン、1−メタクリロイルオキシ−1,1−ジ(sec−ブチル)−ノナメチルペンタシロキサン、1−メタクリロイルオキシ−1,1−ジ(sec−ブチル)−ウンデカメチルヘキサシロキサン、1−メタクリロイルオキシ−1,1−ジ(sec−ブチル)−トリデカメチルヘプタシロキサン、1−メタクリロイルオキシ−1,1−ジ(sec−ブチル)−ペンタデカメチルオクタシロキサン、1−メタクリロイルオキシ−1,1−ジイソブチル−ヘプタメチルテトラシロキサン、1−メタクリロイルオキシ−1,1−ジイソブチル−ノナメチルペンタシロキサン、1−メタクリロイルオキシ−1,1−ジイソブチル−ウンデカメチルヘキサシロキサン、1−メタクリロイルオキシ−1,1−ジイソブチル−トリデカメチルヘプタシロキサン、1−メタクリロイルオキシ−1,1−ジイソブチル−ペンタデカメチルオクタシロキサン、1−メタクリロイルオキシ−1,1−ジイソプロピル−7−ブチル−ヘキサメチルテトラシロキサン、1−メタクリロイルオキシ−1,1−ジイソプロピル−9−ブチル−オクタメチルペンタシロキサン、1−メタクリロイルオキシ−1,1−ジイソプロピル−11−ブチル−デカメチルヘキサシロキサン、1−メタクリロイルオキシ−1,1−ジイソプロピル−13−ブチル−ドデカメチルヘプタシロキサン、1−メタクリロイルオキシ−1,1−ジイソプロピル−15−ブチル−テトラデカメチルオクタシロキサン、1−メタクリロイルオキシ−1,1−ジ(sec−ブチル)−7−ブチル−ヘキサメチルテトラシロキサン、1−メタクリロイルオキシ−1,1−ジ(sec−ブチル)−9−ブチル−オクタメチルペンタシロキサン、1−メタクリロイルオキシ−1,1−ジ(sec−ブチル)−11−ブチル−デカメチルヘキサシロキサン、1−メタクリロイルオキシ−1,1−ジ(sec−ブチル)−13−ブチル−ドデカメチルヘプタシロキサン、1−メタクリロイルオキシ−1,1−ジ(sec−ブチル)−15−ブチル−テトラデカメチルオクタシロキサン、1−メタクリロイルオキシ−1,1−ジイソブチル−7−ブチル−ヘキサメチルテトラシロキサン、1−メタクリロイルオキシ−1,1−ジイソブチル−9−ブチル−オクタメチルペンタシロキサン、1−メタクリロイルオキシ−1,1−ジイソブチル−11−ブチル−デカメチルヘキサシロキサン、1−メタクリロイルオキシ−1,1−ジイソブチル−13−ブチル−ドデカメチルヘプタシロキサン、1−メタクリロイルオキシ−1,1−ジイソブチル−15−ブチル−テトラデカメチルオクタシロキサン、メタクリロイルオキシジイソプロピルシロキシ−ペンタメチルシクロトリシロキサン、メタクリロイルオキシジイソプロピルシロキシ−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン、メタクリロイルオキシジイソプロピルシロキシ−ノナメチルシクロペンタシロキサン、メタクリロイルオキシジイソプロピルシロキシ−ウンデカメチルシクロヘキサシロキサン、メタクリロイルオキシジイソプロピルシロキシ−トリデカメチルシクロヘプタシロキサン、メタクリロイルオキシジ(sec−ブチル)シロキシ−ペンタメチルシクロトリシロキサン、メタクリロイルオキシジ(sec−ブチル)シロキシ−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン、メタクリロイルオキシジ(sec−ブチル)シロキシ−ノナメチルシクロペンタシロキサン、メタクリロイルオキシジ(sec−ブチル)シロキシ−ウンデカメチルシクロヘキサシロキサン、メタクリロイルオキシジ(sec−ブチル)シロキシ−トリデカメチルシクロヘプタシロキサン、メタクリロイルオキシジイソブチルシロキシ−ペンタメチルシクロトリシロキサン、メタクリロイルオキシジイソブチルシロキシ−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン、メタクリロイルオキシジイソブチルシロキシ−ノナメチルシクロペンタシロキサン、メタクリロイルオキシジイソブチルシロキシ−ウンデカメチルシクロヘキサシロキサン、メタクリロイルオキシジイソブチルシロキシ−トリデカメチルシクロヘプタシロキサン等が例示される。
【0017】
また、本発明における上記一般式(1)で示される嵩高い置換基を有するシロキシ基含有シリル(メタ)アクリレート化合物の製造方法は、例えば、下記一般式(4)
【化10】

[式中、R1、R2は、同一又は異なるα位又はβ位に炭化水素基を有する炭素数3〜10の1価の分岐状炭化水素基又は炭素数3〜10の1価の環状炭化水素基であり、Aは下記一般式(2)
【化11】

(式中、R4は炭素数1〜10の1価の炭化水素基であり、mは2〜30の整数である。)で示されるシロキシ基、又は下記一般式(3)
【化12】

(式中、nは2〜30の整数である。)で示されるシロキシ基である。]
で示される嵩高い置換基を有するシロキシ基含有クロロシラン化合物と、アクリル酸又はメタクリル酸とを、塩基性化合物の存在下に反応させて製造する方法が挙げられる。
【0018】
上記一般式(4)におけるR1、R2、上記一般式(2)におけるR4、m及び上記式(3)におけるnは上述したものが例示できる。
【0019】
また、上記一般式(4)で示される嵩高い置換基を有するシロキシ基含有クロロシラン化合物の具体例としては、1−クロロ−1,1−ジイソプロピル−ヘプタメチルテトラシロキサン、1−クロロ−1,1−ジイソプロピル−ノナメチルペンタシロキサン、1−クロロ−1,1−ジイソプロピル−ウンデカメチルヘキサシロキサン、1−クロロ−1,1−ジイソプロピル−トリデカメチルヘプタシロキサン、1−クロロ−1,1−ジイソプロピル−ペンタデカメチルオクタシロキサン、1−クロロ−1,1−ジ(sec−ブチル)−ヘプタメチルテトラシロキサン、1−クロロ−1,1−ジ(sec−ブチル)−ノナメチルペンタシロキサン、1−クロロ−1,1−ジ(sec−ブチル)−ウンデカメチルヘキサシロキサン、1−クロロ−1,1−ジ(sec−ブチル)−トリデカメチルヘプタシロキサン、1−クロロ−1,1−ジ(sec−ブチル)−ペンタデカメチルオクタシロキサン、1−クロロ−1,1−ジイソブチル−ヘプタメチルテトラシロキサン、1−クロロ−1,1−ジイソブチル−ノナメチルペンタシロキサン、1−クロロ−1,1−ジイソブチル−ウンデカメチルヘキサシロキサン、1−クロロ−1,1−ジイソブチル−トリデカメチルヘプタシロキサン、1−クロロ−1,1−ジイソブチル−ペンタデカメチルオクタシロキサン、1−クロロ−1,1−ジイソプロピル−7−ブチル−ヘキサメチルテトラシロキサン、1−クロロ−1,1−ジイソプロピル−9−ブチル−オクタメチルペンタシロキサン、1−クロロ−1,1−ジイソプロピル−11−ブチル−デカメチルヘキサシロキサン、1−クロロ−1,1−ジイソプロピル−13−ブチル−ドデカメチルヘプタシロキサン、1−クロロ−1,1−ジイソプロピル−15−ブチル−テトラデカメチルオクタシロキサン、1−クロロ−1,1−ジ(sec−ブチル)−7−ブチル−ヘキサメチルテトラシロキサン、1−クロロ−1,1−ジ(sec−ブチル)−9−ブチル−オクタメチルペンタシロキサン、1−クロロ−1,1−ジ(sec−ブチル)−11−ブチル−デカメチルヘキサシロキサン、1−クロロ−1,1−ジ(sec−ブチル)−13−ブチル−ドデカメチルヘプタシロキサン、1−クロロ−1,1−ジ(sec−ブチル)−15−ブチル−テトラデカメチルオクタシロキサン、1−クロロ−1,1−ジイソブチル−7−ブチル−ヘキサメチルテトラシロキサン、1−クロロ−1,1−ジイソブチル−9−ブチル−オクタメチルペンタシロキサン、1−クロロ−1,1−ジイソブチル−11−ブチル−デカメチルヘキサシロキサン、1−クロロ−1,1−ジイソブチル−13−ブチル−ドデカメチルヘプタシロキサン、1−クロロ−1,1−ジイソブチル−15−ブチル−テトラデカメチルオクタシロキサン、クロロジイソプロピルシロキシ−ペンタメチルシクロトリシロキサン、クロロジイソプロピルシロキシ−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン、クロロジイソプロピルシロキシ−ノナメチルシクロペンタシロキサン、クロロジイソプロピルシロキシ−ウンデカメチルシクロヘキサシロキサン、クロロジイソプロピルシロキシ−トリデカメチルシクロヘプタシロキサン、クロロジ(sec−ブチル)シロキシ−ペンタメチルシクロトリシロキサン、クロロジ(sec−ブチル)シロキシ−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン、クロロジ(sec−ブチル)シロキシ−ノナメチルシクロペンタシロキサン、クロロジ(sec−ブチル)シロキシ−ウンデカメチルシクロヘキサシロキサン、クロロジ(sec−ブチル)シロキシ−トリデカメチルシクロヘプタシロキサン、クロロジイソブチルシロキシ−ペンタメチルシクロトリシロキサン、クロロジイソブチルシロキシ−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン、クロロジイソブチルシロキシ−ノナメチルシクロペンタシロキサン、クロロジイソブチルシロキシ−ウンデカメチルシクロヘキサシロキサン、クロロジイソブチルシロキシ−トリデカメチルシクロヘプタシロキサン等が例示される。
【0020】
アクリル酸又はメタクリル酸と上記一般式(4)で示される嵩高い置換基を有するシロキシ基含有クロロシラン化合物の配合比は特に限定されないが、反応性、生産性の点から、アクリル酸又はメタクリル酸1モルに対し、嵩高い置換基を有するシロキシ基含有クロロシラン化合物0.5〜2.0モル、特に0.8〜1.2モルの範囲が好ましい。
【0021】
上記反応では、反応中に生じる塩酸を、塩基性化合物を用いて脱塩酸するものである。塩基性化合物としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、ジメチルアニリン、メチルイミダゾール、テトラメチルエチレンジアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、アンモニア、イミダゾール、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等が例示される。
【0022】
塩基性化合物の添加量は特に限定されないが、反応性及び生産性の点から、アクリル酸又はメタクリル酸1モルに対し、0.5〜2.0モル、特に0.8〜1.5モルの範囲が好ましい。塩基性化合物が0.5モル未満だと十分に脱塩酸が行われず反応が未達になる可能性があり、2.0モルを超えると、塩基性化合物の量に見合うだけの反応促進効果がみられない可能性がある。
【0023】
また、上記反応において、反応促進の目的で相間移動触媒を用いることもできる。相間移動触媒としては、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩、クラウンエーテル等が例示されるが、工業的入手の容易さ、安価であることから4級アンモニウム塩が好ましい。
【0024】
4級アンモニウム塩として、具体的には、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラプロピルアンモニウムクロライド、テトラプロピルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド等が例示される。
【0025】
相間移動触媒の使用量は、特に限定されないが、反応性、生産性の点から、アクリル酸又はメタクリル酸1モルに対し、0.0001〜0.1モル、特に0.001〜0.05モルの範囲が好ましい。
【0026】
また、反応温度は特に限定されないが、常圧又は加圧下で−20℃〜200℃、特に0℃〜150℃が好ましい。
【0027】
なお、反応は無溶媒でも進行するが、溶媒を用いることもできる。用いられる溶媒としては、例えばペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド等の非プロトン性極性溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素溶媒等が例示される。これらの溶媒は単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0028】
また、上記の反応において、重合を防止するために、ヒドロキノン、p−メトキシフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等の重合禁止剤を添加してもよい。
【0029】
反応終了後にはアミン化合物の塩酸塩が生じるが、これは反応液を濾過、又は水、エチレンジアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等を添加し、分離する等の方法により除去できる。以上のようにして塩を除去した反応液からは、蒸留等の通常の方法で目的物を回収することができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例及び実験例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0031】
[実施例1]1−アクリロイルオキシ−1,1−ジイソプロピル−ノナメチルペンタシロキサンの合成
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、1−クロロ−1,1−ジイソプロピル−ノナメチルペンタシロキサン(46.1g、0.1mol)、トリエチルアミン(11.1g、0.11mol)、トルエン(30ml)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.05gを仕込み、室温にてアクリル酸(7.6g、0.105mol)を1時間かけて滴下し、その後2時間撹拌した。生じた塩酸塩を濾過により除去した後、蒸留した。沸点110℃/40Paの留分を40.6g得た。
【0032】
得られた留分の質量スペクトル、1H−NMRスペクトル、IRスペクトルを測定した。
質量スペクトル
m/z 481,453,259,73,55
1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒)
図1にチャートで示す。
IRスペクトル
図2にチャートで示す。
以上の結果より、得られた化合物は1−アクリロイルオキシ−1,1−ジイソプロピル−ノナメチルペンタシロキサンであることが確認された。
【0033】
[実施例2]アクリロイルオキシジイソプロピルシロキシ−ヘプタメチルシクロテトラシロキサンの合成
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、クロロジイソプロピルシロキシ−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン(44.7g、0.1mol)、トリエチルアミン(11.1g、0.11mol)、トルエン(30ml)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.05gを仕込み、室温にてアクリル酸(7.6g、0.105mol)を1時間かけて滴下し、その後2時間撹拌した。生じた塩酸塩を濾過により除去した後、蒸留した。沸点134−136℃/0.4kPaの留分を40.1g得た。
【0034】
得られた留分の質量スペクトル、1H−NMRスペクトル、IRスペクトルを測定した。
質量スペクトル
m/z 467,439,325,73,55
1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒)
図3にチャートで示す。
IRスペクトル
図4にチャートで示す。
以上の結果より、得られた化合物はアクリロイルオキシジイソプロピルシロキシ−ヘプタメチルシクロテトラシロキサンであることが確認された。
【0035】
[実施例3]1−アクリロイルオキシ−1,1−ジイソプロピル−11−ブチル−デカメチルヘキサシロキサンの合成
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、1−クロロ−1,1−ジイソプロピル−11−ブチル−デカメチルヘキサシロキサン(57.8g、0.1mol)、トリエチルアミン(11.1g、0.11mol)、トルエン(30ml)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール0.06gを仕込み、室温にてアクリル酸(7.6g、0.105mol)を1時間かけて滴下し、その後2時間撹拌した。生じた塩酸塩を濾過により除去した後、蒸留した。沸点127−129℃/30Paの留分を52.1g得た。
【0036】
得られた留分の質量スペクトル、1H−NMRスペクトル、IRスペクトルを測定した。
質量スペクトル
m/z 597,569,555,73,55
1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒)
図5にチャートで示す。
IRスペクトル
図6にチャートで示す。
以上の結果より、得られた化合物は1−アクリロイルオキシ−1,1−ジイソプロピル−11−ブチル−デカメチルヘキサシロキサンであることが確認された。
【0037】
以下、実験例を示す。なお、下記例で%は質量%である。
[実験例1]1−アクリロイルオキシ−1,1−ジイソプロピル−ノナメチルペンタシロキサンと1−アクリロイルオキシ−ノナメチルテトラシロキサンとの加水分解性比較
撹拌機、還流冷却器及び温度計を備えたフラスコに、水0.5g、テトラヒドロフラン7.5g、1−アクリロイルオキシ−1,1−ジイソプロピル−ノナメチルペンタシロキサン2.5g(0.005mol)、1−アクリロイルオキシ−ノナメチルテトラシロキサン1.8g(0.005mol)、内部標準としてキシレン1gを仕込み、室温で撹拌し、2時間後のシロキシ基含有シリルアクリレートの加水分解反応の進行度合いをガスクロマトグラフィー分析により定量した。その結果、1−アクリロイルオキシ−1,1−ジイソプロピル−ノナメチルペンタシロキサンが加水分解反応によりアクリル酸と1−ヒドロキシ−1,1−ジイソプロピル−ノナメチルペンタシロキサンに変化した割合は2%にすぎなかったが、1−アクリロイルオキシ−ノナメチルテトラシロキサンが加水分解反応によりアクリル酸と1−ヒドロキシ−ノナメチルテトラシロキサンに変化した割合は30%であり、1−アクリロイルオキシ−1,1−ジイソプロピル−ノナメチルペンタシロキサンは1−アクリロイルオキシ−ノナメチルテトラシロキサンに比べ加水分解に対して安定であることが明らかとなった。
【0038】
[実験例2]アクリロイルオキシジイソプロピルシロキシ−ヘプタメチルシクロテトラシロキサンとアクリロイルオキシ−ヘプタメチルシクロテトラシロキサンとの加水分解性比較
撹拌機、還流冷却器及び温度計を備えたフラスコに、水0.5g、テトラヒドロフラン7.5g、アクリロイルオキシジイソプロピルシロキシ−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン2.4g(0.005mol)、アクリロイルオキシ−ヘプタメチルシクロテトラシロキサン1.8g(0.005mol)、内部標準としてキシレン1gを仕込み、室温で撹拌し、2時間後のシロキシ基含有シリルアクリレートの加水分解反応の進行度合いをガスクロマトグラフィー分析により定量した。その結果、アクリロイルオキシジイソプロピルシロキシ−ヘプタメチルシクロテトラシロキサンが加水分解反応によりアクリル酸とヒドロキシジイソプロピルシロキシ−ヘプタメチルシクロテトラシロキサンに変化した割合は4%にすぎなかったが、アクリロイルオキシ−ヘプタメチルシクロテトラシロキサンが加水分解反応によりアクリル酸とヒドロキシヘプタメチルシクロテトラシロキサンに変化した割合は93%であり、アクリロイルオキシジイソプロピルシロキシ−ヘプタメチルシクロテトラシロキサンはアクリロイルオキシ−ヘプタメチルシクロテトラシロキサンに比べ加水分解に対して安定であることが明らかとなった。
【0039】
[実験例3]1−アクリロイルオキシ−1,1−ジイソプロピル−11−ブチル−デカメチルヘキサシロキサンと1−アクリロイルオキシ−ノナメチルテトラシロキサンとの加水分解性比較
撹拌機、還流冷却器及び温度計を備えたフラスコに、水0.5g、テトラヒドロフラン7.5g、1−アクリロイルオキシ−1,1−ジイソプロピル−11−ブチル−デカメチルヘキサシロキサン3.1g(0.005mol)、1−アクリロイルオキシ−ノナメチルテトラシロキサン1.8g(0.005mol)、内部標準としてキシレン1gを仕込み、室温で撹拌し、2時間後のシロキシ基含有シリルアクリレートの加水分解反応の進行度合いをガスクロマトグラフィー分析により定量した。その結果、1−アクリロイルオキシ−1,1−ジイソプロピル−11−ブチル−デカメチルヘキサシロキサンが加水分解反応によりアクリル酸と1−ヒドロキシ−1,1−ジイソプロピル−11−ブチル−デカメチルヘキサシロキサンに変化した割合は2%にすぎなかったが、1−アクリロイルオキシ−ノナメチルテトラシロキサンが加水分解反応によりアクリル酸と1−ヒドロキシ−ノナメチルテトラシロキサンに変化した割合は30%であり、1−アクリロイルオキシ−1,1−ジイソプロピル−11−ブチル−デカメチルヘキサシロキサンは1−アクリロイルオキシ−ノナメチルテトラシロキサンに比べ加水分解に対して安定であることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

[式中、R1、R2は、同一又は異なるα位又はβ位に炭化水素基を有する炭素数3〜10の1価の分岐状炭化水素基又は炭素数3〜10の1価の環状炭化水素基、R3は水素原子又はメチル基であり、Aは下記一般式(2)
【化2】

(式中、R4は炭素数1〜10の1価の炭化水素基であり、mは2〜30の整数である。)で示されるシロキシ基、又は下記一般式(3)
【化3】

(式中、nは2〜30の整数である。)で示されるシロキシ基である。]
で示される嵩高い置換基を有するシロキシ基含有シリル(メタ)アクリレート化合物。
【請求項2】
上記一般式(1)のR1、R2がイソプロピル基又はsec−ブチル基である請求項1記載のシロキシ基含有シリル(メタ)アクリレート化合物。
【請求項3】
下記一般式(4)
【化4】

[式中、R1、R2は、同一又は異なるα位又はβ位に炭化水素基を有する炭素数3〜10の1価の分岐状炭化水素基又は炭素数3〜10の1価の環状炭化水素基であり、Aは下記一般式(2)
【化5】

(式中、R4は炭素数1〜10の1価の炭化水素基であり、mは2〜30の整数である。)で示されるシロキシ基、又は下記一般式(3)
【化6】

(式中、nは2〜30の整数である。)で示されるシロキシ基である。]
で示される嵩高い置換基を有するシロキシ基含有クロロシラン化合物と、アクリル酸又はメタクリル酸とを、塩基性化合物の存在下に反応させることを特徴とする請求項1記載のシロキシ基含有シリル(メタ)アクリレート化合物の製造方法。
【請求項4】
相間移動触媒を用いることを特徴とする請求項3記載のシロキシ基含有シリル(メタ)アクリレート化合物の製造方法。
【請求項5】
アクリル酸又はメタクリル酸1モルに対し、一般式(4)のクロロシラン化合物を0.5〜2.0モルの割合で反応させると共に、反応温度が−20℃〜200℃である請求項3又は4記載のシロキシ基含有シリル(メタ)アクリレート化合物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−195751(P2010−195751A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45939(P2009−45939)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】