説明

工事用足場における足場台昇降構造

【課題】高層住宅のベランダに設置され、ベランダの上方の位置でも無理な姿勢で作業をとることなく安全に作業できる工事用足場における足場台昇降構造を提供すること。
【解決手段】足場10は、下段枠体11と上段枠体15と押圧機構50とを備えている。押圧機構50の主押圧体56及び補助押圧体554をベランダ天井壁に押圧して、ベランダ床面とベランダ天井壁との間で、足場10を固定する。上段枠体15には、足場台38を載置した昇降台21を配置し、下段枠体11内には、ラックギヤ231とピニオンギヤ25とを歯合して構成する昇降駆動装置20を配置する。ピニオンギヤ25に歯合する駆動ギヤ30を回転させることにより、昇降台21に連結するラック支持枠22を介して昇降台21を昇降させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高層住宅又は超高層住宅等におけるベランダ外壁の清掃工事や改修工事を行うための工事用足場における足場台昇降構造に関する。
【背景技術】
【0002】
地上20階以上を越える高層住宅や超高層住宅での階段ベランダ側壁の清掃工事や改修工事等の外壁工事を行う場合、高層で発生するビル風が建物に当たって舞い上がったり、また吹き抜けたりすることによって、地上では考え難い風の影響を受けやすい。このため、従来から行われていたベランダ外壁工事、例えば、屋上からゴンドラを吊り下げて行う作業は、危険が大きいことから実施できにくい状況にあった。近年、超高層住宅が立ち並ぶ中、ベランダ外壁工事の際にゴンドラの落下する事故が発生している。また、地上から積み上げて構成するピケ足場の場合、高層住宅の場合では、足場作りが大掛かりな作業となって工事の長期化又は莫大な工事費用がかかり、現実には足場を構成することに無理が生じていた。
【0003】
このことから、従来においては、特許文献1に知られるように、ベランダ内で組み付けることができる足場が提供されていた。これによると、足場は、ベランダの床面と天井壁とを突っ張るように支持する支柱を設けて足場本体を構成し、足場本体からベランダ外側に、張り出し枠体を突出させて作業枠体としていた。これによって、足場本体を簡略化することができるとともに、工期も短くすることができ、工事費用も廉価にすることができることとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−223012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、高層住宅が20階を越えて50階以上に至る、いわゆるタワー型超高層マンション群では、冒頭に述べた、ビル風の影響を大いに受けることとなり、少しでも危険な作業を想定できるような構成にすることはできない。例えば、ベランダ外壁の上方位置での清掃作業中に、背伸びをしたり、踏み台に上ったりして作業することは危険であることから、安全な作業を行えるように足場を構成する必要があった。
【0006】
特許文献1の足場では、作業者が、ベランダ外壁の上方位置での改修工事を行う際の安全対策は考慮されているものではなく、背伸びをしたり、踏み台を使用したりしなければならなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、高層ビルのベランダに設置できて短期間の工期で廉価に設置できる工事用足場であって、足場台を昇降させることにより、ベランダ外壁の上方位置でも安全に作業できる足場を提供することを目的とする。そのため、本発明に係る工事用足場における足場台昇降構造は、以下のように構成するものである。すなわち、
請求項1記載の発明は、下面に配設されるベランダ床面と上面に配設されるベランダ天井壁と側面に配設されるベランダ側壁とでベランダが構成され、前記ベランダ床面に支持されて前記ベランダ内に配置される下段枠体と、前記下段枠体の上方で前記ベランダ側壁の外方に突出する上段枠体と、前記上段枠体の上方で前記ベランダ天井壁を押圧する押圧機構と、前記上段枠体内に昇降可能に配設される足場台と、を備える工事用足場における足場台昇降構造であって、前記下段枠体には、前記足場台を昇降する昇降駆動装置が配設され、前記上段枠体には、前記足場台を昇降する案内手段が配設され、前記押圧機構が、前記ベランダ天井壁の幅方向に対して長尺状に形成された押圧体を備え、前記押圧体が前記ベランダ天井壁を面接触で押圧することを特徴とするものである。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1の発明に係るものであって、前記昇降駆動装置が、前記足場台を載置する昇降台を備えるとともに、ラックギヤと前記ラックギヤに係合するピニオンギヤとを備えて前記昇降台を昇降可能に構成され、前記昇降台の上昇時に前記ピニオンギヤが逆転防止可能に構成されていることを特徴としている。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項2の発明に係るものであって、前記昇降台が、油圧シリンダで落下防止可能に支持されていることを特徴としている。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1,2又は3に係るものであって、前記押圧機構が、前記ベランダの室内側から室外側に向かう方向に対して前記ベランダ天井壁の中間部を押圧する主押圧体と、前記主押圧体より前記ベランダの室内側に配設されて前記天井壁を押圧する補助押圧体とを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1の構成によれば、下段枠体とベランダ天井壁の幅方向に沿って面接触で押圧する押圧機構とでベランダ床面とベランダ天井壁とを突っ張るように配設された足場には、ベランダ側壁の外方に突出して足場台を備える上段枠体が配設されている。足場台が昇降可能に配設されているから、ベランダ外壁工事を施工する際に、ベランダ外壁の上方位置で作業することがあっても、無理な姿勢をとることなく安全に工事を施工することができる。しかも、外壁工事を施工する階層のベランダ内で足場の組み付け・解体作業を行うことから、短期間の工期で廉価に施工することができる。
【0012】
本発明の請求項2の構成によれば、昇降駆動装置が下段枠体に配設されたラック・ピニオン機構で構成されているから、簡単な構成で昇降台を昇降させることができるとともに、ピニオンギヤが逆回転防止可能に構成されているから、昇降台の上昇時に、昇降台を落下させることなく安全な昇降を行うことができる。
【0013】
本発明の請求項3の構成によれば、昇降台は油圧シリンダで支持されているから、上昇した昇降台の落下の虞がなく、昇降台を昇降させても安全な作業を行うことができる。
【0014】
本発明の請求項4の構成によれば、ベランダ天井壁を押圧する押圧機構が、ベランダ天井壁の幅方向に沿って、ベランダ天井壁を主押圧体と補助押圧体とで押圧できることから、ベランダ床面とベランダ天井壁とを強固に突っ張ることができ、足場を安全に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明における格納された足場台を示す全体斜視図である。
【図2】ベランダ内に配置された足場を示す側面図である。
【図3】ベランダ側から足場の下部を見た一部正面図である。
【図4】図1における下段枠体・上段を示す分解斜視図である。
【図5】昇降駆動装置のラックの取り付け状態を示す斜視図である。
【図6】ラック支持枠をロックピンで固定する状態を示す平面図及び要部拡大図である。
【図7】ラックとピニオンを示す斜視図である。
【図8】図1における押圧機構を示す斜視図である
【図9】本発明における上昇された足場台を示す全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の工事用足場における足場台昇降構造に係る実施形態を図面に基づいて説明する。本発明のベランダ工事用足場(以下足場という)は、ビル風が吹き付ける超高層住宅に設置する足場として好適に使用できるものであるが、もちろん超高層住宅でなくても、ベランダが設置されている高層住宅にも適用することができる。足場は、高層住宅のベランダ内で組み付け・解体可能に構成されるものである。図1は足場10の全体斜視図であり、図2はその側面図である。また、図3はベランダ側から足場10の下部を見たときの一部正面図である。なお、図2に示すように、ベランダ1は、高層住宅の室外において、下面に配置されるベランダ床面3と上面に配置されるベランダ天井壁5と側面に配置されるベランダ側壁7とで構成されている。以下、ベランダ1の幅方向における室内側をベランダ室内側または前部といい、その反対側をベランダ室外側または後部と言う。
【0017】
図1〜3に示すように、足場10は、ベランダ床面3上を走行可能なキャスタ12を備えた下段枠体11と下段枠体11の上方に配置される上段枠体15と、上段枠体15の上方に配置される押圧機構50とを備えている。
【0018】
実施形態の下段枠体11は、図4に示すように、4隅下部にキャスタ12(図2参照)を装着したベースプレート13と、ベースプレート13上のベランダ床面3の長手方向に沿って対向する2辺に立設する1対の下段側部枠体14とを備えて構成されている。下段側部枠体14の下部は、ベースプレート13上に配置されて上部を開口したコ字形の側部枠体ベース131に挿入されている。キャスタ12の外側においてベースプレート13の4隅角部から外方に突出して足場10の高さ調整を行う第1のアジャスタ132が装着され、キャスタ12の内側にはそれぞれ第2のアジャスタ133が装着されている。
【0019】
実施形態の下段側部枠体14は、枠状に形成された枠体部141と、枠体部141の内部に水平方向に配置される中段横支柱142と、枠体部141の後方端部に垂直方向に配置された支持支柱143とを備えている。さらに、枠体部141の上面には、上段枠体15を装着するための上段枠体ベース144が配置されている。上段枠体ベース144は上部を開口したコ字状に形成されている。なお、一対の下段側部枠体14には、ベースプレート13に装着された後、下段側部枠体14のベランダ室内側において、図3の二点鎖線で示すように、1対の下段側部枠体14に1対のターンパックル145をクロス状に懸架して下段枠体11の前部での開き防止対策を図ってもよい。
【0020】
上段枠体15は、図1、図4に示すように、上段枠体ベース144に挿入して下段側部枠体14の上部後方まで延設する1対の上段側部枠体16と、1対の上段側部枠体16の後部で1対の上段側部枠体16と連結する後部枠体17と、を備えている。実施形態の上段側部枠体16は、矩形枠状に形成される枠体部161と、枠体部161の中間部に少なくとも2段に配置された横支柱162とで構成されている。また、1対の上段側部枠体16の内側面には、後述の上段枠体15内を昇降する昇降台21の案内としてのガイドレール163が長手方向の両端部及び前部のそれぞれ3箇所において垂直方向に装着されている。両端部のガイドレール163aは、昇降台21の前後両端部の昇降案内をし、前部のガイドレール163bは、後述のラック体23の昇降案内をしている。ガイドレール163bは下段枠体11に配置された支持支柱143上方延長線上にあり、エレベータでの運搬時に、エレベータ内に収納できれば支持支柱143と一体的に形成されてもよい。さらに、上段側部枠体16は、上段枠体ベース144に嵌合されるとともに、上段枠体ベース144より後方に向かって延設されている。
【0021】
後部枠体17は、枠体状に形成された枠体部171と、枠体部171内に水平方向に配置された少なくとも2段の横支柱172と、を備えて構成されている。また、枠体部171の上部角部には、1対の上段側部枠体16の上部横支柱161aを接続するための接続金具173が装着されている。接続金具173は、平面視L字状に形成されるとともに、上部横支柱161aの上面から枠体部161を内嵌するために下部を開口する断面コ字状に形成されている。
【0022】
1対の枠体部161の下部横支柱161b間に、足場台ベース18が懸架されている。足場台ベース18は、1対の上段側部枠体16、16を固定支持するためのベース部181と、1対の下部横支柱161bに懸架する嵌合部182と、後部枠体17を支持する後部枠支持部183とを有して形成されている。嵌合部182は、下部横支柱161bに外嵌するように、下方を開口したコ字状に形成され、下段枠体11より後方の位置においてベース部181より上方に突出している。また、後部枠支持部183は、後部枠体17の下部を挿入するために上方を開口したコ字状に形成されている。
【0023】
1対の下段側部枠体14の中段横支柱142には、図1〜3に示すように、昇降駆動装置20を構成するピニオン組24が装着されている。昇降駆動装置20は、ラック・ピニオン機構で構成され、昇降台21を昇降可能に構成している。昇降駆動装置20は、図5に示すように、前述の昇降台21と、1対の下段側部枠体14間の後部に配置されるラック支持枠22と、昇降台21とともに昇降してラック支持枠22に装着されるラック体23と、ラック体23に歯合するピニオンギヤ25を備えたピニオン組24(図4参照)とを備えている。
【0024】
実施形態の昇降台21は、角筒状の部材を前後方向に長尺状の矩形枠状に形成した上フレーム211と下フレーム212とを、隙間を有して二段に配置し、下方にラック支持枠22に支持される角筒状の下部アーム213を配置している。上フレーム211と下フレーム212との間の隙間には、長手方向に沿って補強支柱214が3本配置され、補強支柱214と直交する方向に補強支柱215が3本配置されている。また、下部アーム213には、下フレーム212と垂直支柱216及び斜め補強支柱217で連結されている。さらに、昇降台21の長手方向の側面両端部には、上フレーム211と下フレーム212とを連結する平面視コ字状のガイドシュー218がスペーサを介して装着されている。
【0025】
実施形態のラック支持枠22は、外枠を構成する矩形枠体221と、矩形枠体221内に配置される補強支柱222と、矩形枠体221の側面部に複数配置される矩形板状の取付け片223と、矩形枠体221の上面に配置される昇降台支持アーム224とから構成されている。
【0026】
ラック体23は、垂直方向に配置されるラックギヤ231と、ラックギヤ231を収容する第1凹部232aを有して形成されるラックギヤ収納アーム232を備えている。ラックギヤ収納アーム232は、第1凹部232aと直交する方向に開口する第2凹部232bを備えている。第2凹部232bは、1対の上段側部枠体16のガイドレール163bに嵌合してガイドレール163bに対して摺動可能に形成されている。なお、1対のラックギヤ231は、ギヤ面をベランダ室内側に向けて配置されている。1対のラック体23における対向する内側側面には、上方が開口された矩形状の収納凹部233がそれぞれ3箇所設けられ、ラック支持枠22の各取付け片223が挿入される。取付け片223が収納凹部233に挿入された後、図6に示すように、磁石を内蔵するロックピン40が挿通されて、ラック支持枠22とラック体23とを固定する。ロックピン40は、図6の拡大図に示すように、金属材で形成された円柱状の頭部41と円柱状の軸部42と、軸部42を挿通して頭部41に形成された凹部41aに挿入する円環状の磁石部43と、を備えている。磁石部43は頭部41に接着剤により接着されて、一体化されたロックピン40として形成されている。ラック体23の取付け片223が収納凹部233に挿入されると、ラック体23のピン挿通孔233aと取付け片223のピン挿通孔223aにロックピン40が挿通されて、ラック支持枠22がラック体23に支持される。
【0027】
図6〜7に示すように、ラックギヤ231には、ピニオンギヤ25が歯合されている。ピニオンギヤ25は、図4、図7に示すように、ピニオン組24内に配置されている。実施形態のピニオン組24は、1対の下段側部枠体14の中段横支柱142に嵌合する1対のピニオン組ベース26と、ピニオン組ベース26の上方に配置される1対の軸支持パイプ27と、1対のピニオンギヤ25を装着して1対の軸支持パイプ27に支持されるピニオン軸28と、ピニオンギヤ25に歯合してピニオンギヤ25を駆動する駆動ギヤ30を装着した駆動軸29と、を備えている。ピニオン組ベース26は、下方を開口したコ字状に形成され、軸支持パイプ27は角パイプで形成され、ピニオン軸28と駆動軸29とは、軸支持パイプ27の長手方向に沿って並設されている。
【0028】
駆動軸29には、ピニオンギヤ25と歯合する駆動ギヤ30が装着されている。駆動ギヤ30は、ピニオンギヤ25を間にしてラックギヤ231と反対側に配置されている。駆動軸29が一方の軸支持パイプ27を挿通した先端には、駆動軸29を手動で駆動する操作ハンドル31が装着されている。操作ハンドル31は駆動ギヤ30を回転しやすくするために、駆動ギヤ30より大径に形成され、操作ハンドル31の周縁部付近に、手動操作ピン311が配置されている。また、駆動ギヤ30には、昇降台21が昇降する際に、正転しているピニオンギヤ25の逆方向への回転を防止するために、駆動ギヤ30にラチェット32が掛止されている。図6の拡大図に示すように、ラチェット32は、駆動ギヤ30の各歯部301に掛止するレバー部321を有し、正転方向には各歯部301がレバー部321を押し上げて回転可能とし、逆転方向には、各歯部301がレバー部321の先端面に当接して回転不能としている。また、駆動ギヤ30との掛止及び掛止解除するためのラチェット開放レバー33がラチェット32にシャフト322を介して連結されている。したがって、昇降台21を下降させる際には、ラチェット開放レバー33を回転させて、ラチェット32のレバー部321を駆動ギヤ30の各歯部301から離隔させることになる。
【0029】
図1及び図3に示すように、ベースプレート13上には、1対のラック体23の間に油圧シリンダ35が配置されている。油圧シリンダ35は油圧シリンダ台36に載置されて、シリンダロッドの先端に昇降台21の下フレーム212に当接する支持ベース37を備えている。また、図4に示すように、昇降台21の上フレーム211の上面全体にわたって板状の足場台38が敷設されている。足場台38の後部において、作業者の周りを囲む安全カバー39が装着されている。安全カバー39は上段枠体15内で、前部を開口して作業者の周りを3面で保護するように足場台38から立設されている。安全カバー39の下端部は外側に屈折されて、足場台38の3箇所の掛止部381に掛止されている。
【0030】
図1、図8に示すように、上段枠体15上には押圧機構50が配置されて、ベランダ天井壁5を押圧可能にしている。押圧機構50には、1対の上段側部枠体16の上部横支柱161aを架け渡すように、押圧部ベース51が配置されている。押圧部ベース51は、一対の上段側部枠体16、16を跨ぐ方向の両側の端部511が上方に立ち上がって形成され、その外側面に下方を開口するコ字状に形成されて上部横支柱161aに嵌合する嵌合部512を備えている。端部511の内側部には押圧部ベース51上に配置する1対の角筒状のスライダベース52がベランダ室内側からベランダ室外側に向かう方向に沿って装着され、さらにその内側には、押圧部ベース51に支持された1対の主ジャッキ53が配置されている。実施形態における主ジャッキ53は、パンタグラフ状に構成されるネジ式ジャッキが使用され、主ジャッキ53の上面に主押圧体56が装着されている。主押圧体56は、ベランダ室内側からベランダ室外側に長尺状に延びる棒状部材で形成されている。材料は、ベランダ天井壁5より軟質の材料で形成され、ベランダ天井壁5の凹凸状表面に追随できるようにしている。主押圧体56の幅方向の寸法は、特に規制するものではないが、繰り返しの使用で、一部集中的な圧力を受けない程度の広さに形成することが望ましい。
【0031】
スライダベース52内には、スライダ54がスライダベース52に対して摺動可能に挿入されている。スライダ54のベランダ室内側先端には、補助ジャッキ55が配置されている。補助ジャッキ55は、スライダ54に固着されたナット部材551にネジ部材552が螺合されている。ネジ部材552はハンドル部材553の回動によって高さ調整がなされて、先端の補助押圧体554によりベランダ天井壁5を押圧可能に配置されている。また、補助ジャッキ55は、スライダ54の摺動によりベランダ室内に向かって位置調整可能に配置されている。スライダ54には複数のピン挿通孔541が形成され、いずれかのピン挿通孔541とスライダベース52に形成されたピン挿通孔521とともに、前述のロックピン40を挿通することによりスライダ54が位置固定されて、補助ジャッキ55の位置が調整される。
【0032】
次に、上述のように構成された足場10の組立手順や外壁工事の作業手順について説明する。
【0033】
まず、作業を行う階層に、分割された複数の足場10のそれぞれの部位を高層住宅のエレベータによって運搬する。分割された部位は、下段枠体11、ベースプレート13、上段枠体15、足場台38の各部位、昇降駆動装置20の各部位等、全てエレベータ内に収納できる大きさに形成されている。
【0034】
上記の各部位を、作業する階層に持ち運んだ後、ベランダ1内において足場10を組み立てる。まず、ベースプレート13上に1対の下段側部枠体14を装着した後、1対の下段側部枠体14を、例えば、図3に示すようなターンパックル145で連結して、下段側部枠体14の垂直方向を固定する。次にラック体23を装着し、ラック支持枠22の取付け片223をラック体23の収納凹部233に収納させて、1対の下段側部枠体14の幅決めを行う。ラックギヤ231に歯合するピニオンギヤ25を取付けた後、上段側部枠体16を下段側部枠体14の上段枠体ベース144に嵌入し、ロックピン40を挿入してロックする。そして、昇降台21・油圧シリンダ35を含めて昇降駆動装置20を組付ける。
【0035】
その後、後部枠体17、足場台ベース18を装着して、上段枠体15を組付ける。
【0036】
上段枠体15を組付けると、足場台38、安全カバー39を装着した後、上段側部枠体16の一対の上部横支柱161aに押圧部ベース51を架け渡して、押圧機構50を組付ける。そして、補助ジャッキ55の位置調整を行った後、主ジャッキ53、及び補助ジャッキ55のネジ調整を行って、足場10をベランダ1内で突っ張るように固定する。
【0037】
この状態では、昇降台21、足場台38や安全カバー39等は、昇降駆動装置20で上昇されていない格納位置にある。
【0038】
ベランダ外壁の清掃工事を行うために、作業者は、脚立等を利用して、足場台38に上る。そして、足場台38の格納位置の範囲内で外壁清掃作業をおこなう。さらに高い位置での作業を行う場合には、図7に示すように、第三者あるいは自らにより、昇降駆動装置20の操作ハンドル31を回転することにより、駆動ギヤ30、ピニオンギヤ25を回転させる。ピニオンギヤ25の回転によりピニオンギヤ25と歯合するラックギヤ231が上昇し、ラック体23が支持支柱143に対して上昇移動する。図9に示すように、昇降台21は、上段枠体15のガイドレール163に案内されて上昇移動する。そして、上層階のベランダ側壁7の上部の位置での清掃・改修工事を行う。
【0039】
昇降台21や足場台38が上昇しても、昇降台21は油圧シリンダ35によって支持されているから、落下する虞がない。また、駆動ギヤ30にラチェット32で逆転防止されているから、ピニオンギヤ25が逆方向に回転することはなくラック体23を落下させる虞がない。
【0040】
所定の場所での作業を終了すると、キャスタ12を移動させてその階層の次の場所に移動して同様の清掃・改修工事を行う。その階層での全ての工事を終了すると、作業者はベランダ1内で足場10を分解し、次の階層に向かうことになる。
【0041】
上述のように、実施形態の足場10では、上段枠体15に昇降台21を設置し、昇降駆動装置20で昇降台21を昇降させているから、昇降台21上に載置して作業者が作業するために配置された足場台38をベランダ側壁7の外方で昇降させることができ、無理な姿勢をとらずに、高い位置への清掃・改修工事を行うことができる。しかも、油圧シリンダ35による昇降台21の支持や、ラチェット32によるピニオンギヤ25の逆転防止を図っていることから、昇降台21を安全に昇降させることができる。また、ベランダ1内で組み付け分解できることから、工期を短縮できて廉価な費用で行うことが可能となる。
【0042】
また、ベランダ天井壁5を主押圧体56と補助押圧体554とで押圧するから、ベランダ1内での足場10を強固に固定支持することができる。
【0043】
なお、実施形態の足場10は、ベランダ床面3とベランダ天井壁5とを突っ張るように構成されるとともに、昇降台21が昇降可能に構成されているものであれば、上記形態に限定するものではない。また、昇降駆動装置20は、ラック・ピニオン機構でなくても、油圧シリンダで昇降させてもよい。さらに2種の部材を固定させるロックピン40を、上記形態では、ラック支持枠22の下段側部枠体14への固定、及び、押圧機構50におけるスライダベース52とスライダ54との固定に使用しているが、他の部位においても、使用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1、ベランダ
3、ベランダ床面
5、ベランダ天井壁
7、ベランダ側壁
10、足場
11、下段枠体
15、上段枠体
20、昇降駆動装置
21、昇降台
231、ラックギヤ
25、ピニオンギヤ
32、ラチェット
35、油圧シリンダ
38、足場台
50、押圧機構
554、補助押圧体
56、主押圧体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面に配設されるベランダ床面と上面に配設されるベランダ天井壁と側面に配設されるベランダ側壁とでベランダが構成され、前記ベランダ床面に支持されて前記ベランダ内に配置される下段枠体と、前記下段枠体の上方で前記ベランダ側壁の外方に突出する上段枠体と、前記上段枠体の上方で前記ベランダ天井壁を押圧する押圧機構と、前記上段枠体内に昇降可能に配設される足場台と、を備える工事用足場における足場台昇降構造であって、
前記下段枠体には、前記足場台を昇降する昇降駆動装置が配設され、
前記上段枠体には、前記足場台を昇降する案内手段が配設され、
前記押圧機構が、前記ベランダ天井壁の幅方向に対して長尺状に形成された押圧体を備え、前記押圧体が前記ベランダ天井壁を面接触で押圧することを特徴とする工事用足場における足場台昇降構造。
【請求項2】
前記昇降駆動装置が、前記足場台を載置する昇降台を備えるとともに、ラックギヤと前記ラックギヤに係合するピニオンギヤとを備えて前記昇降台を昇降可能に構成され、前記昇降台の上昇時に前記ピニオンギヤが逆転防止可能に構成されていることを特徴とする請求項1記載の工事用足場における足場台昇降構造。
【請求項3】
前記昇降台が、油圧シリンダで落下防止可能に支持されていることを特徴とする請求項2記載の工事用足場における足場台昇降構造。
【請求項4】
前記押圧機構が、前記ベランダの室内側から室外側に向かう方向に対して前記ベランダ天井壁の中間部を押圧する主押圧体と、前記主押圧体より前記ベランダの室内側に配設されて前記天井壁を押圧する補助押圧体とを備えていることを特徴とする請求項1,2又は3記載の工事用足場における足場台昇降構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−111869(P2011−111869A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272166(P2009−272166)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(508264195)株式会社旭学園グループ (12)
【出願人】(509328847)
【出願人】(509328858)
【出願人】(509329752)
【出願人】(509328869)
【出願人】(509328870)
【Fターム(参考)】