説明

工作機械の給液装置

【課題】コレット式クランプおよびカービック式カップリングを併設した主軸頭において、標準ピッチの切削工具用ホルダの使用を可能にする。
【解決手段】主軸頭12に旋削工具用ホルダをカップリングするためのカービック式カップリング14は、主軸頭12に備えられたカップリング部材31を有している。カップリング部材31は、主軸頭12の先端面上を主軸頭軸線を中心とする円周上をのびている。カップリング部材31の半径方向外側に給液ソケット61が設けられている。主軸13にコレット式クランプ16を介してクランプされた切削用工具ホルダ17は、給液プラグ62を有している。給液ソケット61および給液プラグ62に着脱自在に渡された中継ブロック63に、給液ソケット61に接続された中継プラグ64と、給液プラグ62に接続された中継ソケット65と、中継プラグ64および中継ソケット65を連通させている連絡通路66とがそれぞれ設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バイト等の旋削工具およびドリル等の切削工具の併用を可能とする工作機械において、切削工具に切削液を供給するための給液装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図3に、工作機械の主軸頭201に旋削工具用ホルダ202がカービック式カップリング203を介してカップリングされている状態が示されている。
【0003】
カップリング203は、主軸204を取り囲んで主軸軸線を中心とする円周上に配列されている。カップリング203のなす列の半径方向外側の、主軸頭201の先端面に給液ソケット205が主軸頭201先端面側を向くように設けられている。給液ソケット205は、主軸頭給液通路206に連通させられている。給液ソケット205には接続ブロック207が連接されている。接続ブロック207には、一端を給液ソケット205に接続しかつ他端をホルダ給液通路208に接続した連絡通路209が形成されている。
【0004】
切削液は、主軸頭給液通路206から、給液ソケット205および接続ブロック207を介して、ホルダ給液通路208へ送られる。ホルダ給液通路208内の切削液は、これを旋削工具211に噴出させるためのノズル212へ送られる。
【0005】
図4は、図3に示す主軸装置に、旋削工具用ホルダ202に代わって、主軸204に切削工具用ホルダ301がコレット式クランプ302を介してクランプされている状態を示すものである。
【0006】
カップリング203には、旋削工具用ホルダ202に代わって、保護リング303が被覆されている。ホルダ301は、給液ソケット205に接続された給液プラグ304を有している。
【0007】
主軸頭給液通路206内の切削液は、給液ソケット205および給液プラグ304を通じて、ホルダ給液通路305へ送られ、ノズル306から工具307に噴出される。
【0008】
ここで問題となるのは、主軸頭201の軸線および給液プラグ304の軸線のピッチPsである。
【0009】
旋削工具用ホルダ202は、工作機械メーカによって製造されるが、切削工具用ホルダ301は、工具メーカによって製造される。工作機械メーカでは大小様々の径の主軸をもつ工作機械を製造する。一方、工具メーカでは、上記ピッチPsを、複数種類、例えば、65mm、80mm、110mmとし、これらを標準ピッチとして規格化し、主軸の径の大小に対応するようにしている。
【0010】
しかしながら、標準ピッチの切削工具用ホルダ301は、コレット式クランプ302のみをもつ主軸頭には対応可能であるが、コレット式クランプ302のみならず、カービック式カップリング203を併設した主軸頭には対応することができない。その理由は、以下の通りである。省スペースの観点から、給液ソケット205の位置は主軸204にできるだけ接近させることが好ましい。しかしながら、カービック式カップリング203があるために、これの外側に給液ソケット205を位置させなければならず、上記ピッチPsが標準ピッチよりも大きい特殊ピッチとなるざるを得ないからである。特殊ピッチPsの切削工具用ホルダ301は、価格、納期等の点で不経済である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明の目的は、コレット式クランプおよびカービック式カップリングを併設した主軸頭において、標準ピッチの切削工具用ホルダの使用を可能とする工作機械の給液装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明による工作機械の給液装置は、主軸頭に、第1工具ホルダがカービック式カップリングを介してカップリング可能であり、主軸に、第2工具ホルダがコレット式クランプを介してクランプ可能であり、カップリングは、主軸頭に備えられたカップリング部材を有しており、カップリング部材は、主軸頭の先端で主軸の周囲に主軸と同心に設けられ、カップリング部材の半径方向外側の、主軸頭先端面に給液ソケットが主軸頭先端面側を向くように設けられており、第2工具ホルダは、給液プラグを有しており、主軸頭に第2工具ホルダがクランプされた状態で、給液プラグは、給液ソケットに対し主軸頭の軸線方向および半径方向に間隔をおいて給液ソケットの側に向けられており、給液ソケットおよび給液プラグに中継ブロックが着脱自在に渡されており、中継ブロックに、給液ソケットに接続された中継プラグと、給液プラグに接続された中継ソケットと、中継プラグおよび中継ソケットを連通させている連絡通路とがそれぞれ設けられているものである。
【0013】
この発明による工作機械の給液装置では、中継プラグおよび中継ソケットの間隔の分、主軸頭の軸線および給液プラグの軸線のピッチを小さくすることができる。したがって、標準ピッチの切削工具用ホルダの使用が可能となる。
【0014】
カップリング部材に、これに被覆された保護リングがカップリングされており、中継ブロックは、保護リングに取付られていると、中継ブロックを、簡単に、給液ソケットおよび給液プラグに渡すことができる。
【0015】
特に、ロボットや工作機械の自動工具交換装置などを用いて保護リングを自動着脱可能になされている場合には、併せて中継ブロックを自動で着脱できることとなる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、コレット式クランプおよびカービック式カップリングを併設した主軸頭において、標準ピッチの切削工具用ホルダの使用を可能とする工作機械の給液装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明による給液装置の垂直縦断面図である。
【図2】図1の部分拡大断面図である。
【図3】従来技術による旋削用工具ホルダを用いた給液装置の垂直縦断面図である。
【図4】従来技術による切削用工具ホルダを用いた給液装置の垂直縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1を参照すると、垂直状中心孔11を有している主軸頭12と、中心孔11にはめ入れられている垂直状主軸13と、主軸頭12にカービック式カップリング14を介してカップリングされている保護リング15と、主軸13にコレット式クランプ16を介してクランプされている切削工具用ホルダ17とが示されている。
【0019】
主軸頭12には円環状シリンダ21が主軸頭12軸線と同心状に形成されている。シリンダ21にはピストン22がその下部を主軸頭12下端面から下方に突出させるように内蔵されている。主軸13は、軸孔23を有している。軸孔23の下端部には下向きテーパ部24が形成されている。
【0020】
カップリング14は、主軸頭12に備えられた第1カップリング部材31と、保護リング15に備えられた第2カップリング部材32とよりなる。保護リング15は、ピストン22の下端面に固定されているリング状底壁33と、底壁33の外周縁部から起立させられている垂直筒状周壁34とよりなる。
【0021】
ホルダ17は、ホルダ本体41と、ホルダ本体41から上方に突出されられかつ軸孔テーパ部24に押圧されシャンク42と、シャンク42の上端面に上方突出状に設けられかつクランプ16のコレット43によって引上げられているプルスタッド44とを備えている。
【0022】
第1カップリング部材31は、多数ずつの下向き第1噛合歯51Aおよび第1クランプ爪51Bよりなる。第1噛合歯51Aは、ピストン22の外側を、主軸頭12の下端面上を主軸13軸線を中心とする円周上に一定ピッチで一列に配列されている。第1クランプ爪51Bは、ピストン22外面下端部と一体化されかつ第1噛合歯51Aのなす列の内側にそって、これと同心状に一定ピッチで配列されている。
【0023】
第2カップリング部材32は、多数ずつの上向き第2噛合歯52Aおよび第2クランプ爪52Bよりなる。第2噛合歯52Aは、保護リング15の周壁34上端面上に、第1噛合歯51Aの配列と同一配列で並べられている。第2クランプ爪52Bは、保護リング15の周壁34内面上端に、第1クランプ爪51Bの配列と同一配列で並べられている。
【0024】
図1において、第1噛合歯51Aおよび第2噛合歯52Aは、互いに噛み合わされている。この状態で、第1クランプ爪51Bは、第2クランプ爪52Bに下側から係合させられかつこれを下側から押圧している。このときに、シリンダ21内におけるピストン22の下側スペースには圧油が供給されており、ピストン22は、その昇降ストロークの上限に位置させられている。
【0025】
この状態から、ピストン22を降下させて、ピストン22とともに保護リング15を降下させると、第1噛合歯51Aおよび第2噛合歯52Aの噛合が解除されかつ第1クランプ爪51Bとともに第2クランプ爪52Bが降下させられる。この状態で、保護リング15の主軸頭12軸線周りの回転が自在となる。
【0026】
保護リング15を回転させて、主軸頭12軸線の軸方向から見て、隣り合う2つの第1クランプ爪51Bの間に、1つの第2クランプ爪52Bを位置させると、隣り合う2つの第1クランプ爪51Bの間を1つの第2クランプ爪52Bが素通りすることが可能となる。さらに、保護リング15を降下させることによって、主軸頭12から保護リング15が取外しされる。
【0027】
主軸頭12の、保護リング15の周壁34外面に接する位置に給液ソケット61が下向きに埋設されている。一方、ホルダ17には、給液プラグ62が下記の位置に設けられている。その位置とは、給液ソケット61より主軸頭12軸線半径方向内側で、給液ソケット61より主軸頭12軸線軸方向下側である。給液ソケット61および給液プラグ62に中継ブロック63が着脱自在に渡されている。中継ブロック63に、給液ソケット61に接続された中継プラグ64と、給液プラグ62に接続された中継ソケット65と、中継プラグ64および中継ソケット65を連通させている連絡通路66とがそれぞれ設けられている。
【0028】
図2に、中継ブロック63およびその周辺部が詳細に示されている。
【0029】
給液ソケット61は、主軸頭給液通路71に連通させられた主弁室72を有する天蓋付垂直筒状主ソケット本体73と、主弁室72内に上下摺動自在にはめ入れられている垂直筒状主弁部材74と、主ソケット本体73の天蓋から吊下られかつ下部を主弁部材74に進入させている垂直棒状主弁座部材75と、主ソケット本体73の天蓋および主弁部材74の上端間に介在されている主圧縮コイルばね76とよりなる。
【0030】
主弁部材74の上端には内向き突出環状主シール部77が設けられている。主弁座部材75の外面下端には外向き突出環状主弁座78が設けられている。
【0031】
給液プラグ62は、ホルダ本体41と一体化されかつ軸中心にホルダ給液通路81を有する垂直丸棒状主プラグ本体82を有している。主プラグ本体82外面の上部には上細りテーパ状外向き位置決面83が設けられている。
【0032】
中継ソケット65は、給液ソケット61と同一の機能を果たすものであって、主ソケット本体73に相当する副ソケット本体は欠いているが、副弁室92、副シール部97付副弁部材94、副弁座98付副弁座部材95および副圧縮コイルばね96よりなる。
【0033】
副ソケット本体73の下端には回止リング101が連接されている。回止リング101の内面には、外向き位置決面83に合致させられた下向細りテーパ状内向き位置決め面102が設けられている。
【0034】
中継プラグ64は、中継ブロック63に一体化された垂直丸棒状副プラグ本体111を有している。副プラグ本体111の上端面から副弁室92まで、連絡通路66はのびている。
【0035】
図2において、主弁部材74が副プラグ本体111によって押上げられることによって、主シール部77が主弁座78から離隔させられるとともに、副弁部材95が主プラグ本体82によって押上げられることによって、副シール部97が副弁座98から離隔させられ、これにより、主軸頭給液通路71が連絡通路66を介してホルダ給液通路81に連通させられている。
【0036】
クランプ16を解放して、切削工具用ホルダ17を降下させると、切削工具用ホルダ17とともに主プラグ本体82が降下させられる。そうすると、副圧縮コイルばね96のばね力によって副弁部材95が降下させられ、副シール部97が副弁座98に密接させられる。これにより、連絡通路66が閉鎖される。
【0037】
上記したように保護リング15を降下させると、保護リング15とともに中継ブロック63が降下させられる。これにより、副プラグ本体111が降下させられると、主圧縮コイルばね76のばね力によって主弁部材74が降下させられ、主シール部77が主弁座78に密接させられ、主軸頭給液通路71が閉鎖される
上記において、主軸頭12軸線および給液プラグ62軸線のピッチPnは、図4に示す特殊ピッチPsと比較すると、ピッチPn<ピッチPsである。したがって、双方のピッチの差(Ps−Pn)だけ小さい標準ピッチをもつ切削具の使用が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
この発明によるバイト等の旋削工具およびドリル等の切削工具の併用を可能とする工作機械において、切削工具に切削液を供給することを達成するのに適している。
【符号の説明】
【0039】
12 主軸頭
14 カップリング
16 クランプ
31 カップリング部材
17 切削用工具ホルダ
61 給液ソケット
62 給液プラグ
63 中継ブロック
64 中継プラグ
65 中継ソケット
66 連絡通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸頭に、第1工具ホルダがカービック式カップリングを介してカップリング可能であり、主軸に、第2工具ホルダがコレット式クランプを介してクランプ可能であり、カップリングは、主軸頭に備えられたカップリング部材を有しており、カップリング部材は、主軸頭の先端で主軸の周囲に主軸と同心に設けられ、カップリング部材の半径方向外側の、主軸頭先端面に給液ソケットが主軸頭先端面側を向くように設けられており、第2工具ホルダは、給液プラグを有しており、主軸頭に第2工具ホルダがクランプされた状態で、給液プラグは、給液ソケットに対し主軸頭の軸線方向および半径方向に間隔をおいて給液ソケットの側に向けられており、給液ソケットおよび給液プラグに中継ブロックが着脱自在に渡されており、中継ブロックに、給液ソケットに接続された中継プラグと、給液プラグに接続された中継ソケットと、中継プラグおよび中継ソケットを連通させている連絡通路とがそれぞれ設けられている工作機械の給液装置。
【請求項2】
カップリング部材に、これに被覆された保護リングがカップリングされており、中継ブロックは、保護リングに取付られている請求項1に記載の工作機械の給液装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−135830(P2012−135830A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289581(P2010−289581)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000149066)オークマ株式会社 (476)
【Fターム(参考)】