説明

工作機械ライン

【課題】装置の簡素化および小型化を図れる工作機械ラインを提供する。
【解決手段】搬送手段20は、複数の加工テーブル21と、ワークWの仮保持装置22と、これらを作動させる制御装置とを備えており、複数の加工テーブル21は、搬送方向に沿って個別に移動可能であるとともに、その移動範囲23は隣り合う加工テーブル21の移動範囲23と重合する共通エリアE12(E23)を有し、仮保持装置22は、共通エリアE12に位置するワークWを保持可能であり、制御装置は、ワークWが載置された一方の加工テーブル21を共通エリアE12へ移動させて、仮保持装置22によってワークWを仮保持させ、一方の加工テーブル21を共通エリアE12から退避させるとともに他方の加工テーブル21を共通エリアE12へと移動させ、ワークWを他方の加工テーブル21上に載置させ、第二のワーク加工位置Pへ移動させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械ラインに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の工作機械が並設されて、工作機械間をワークが搬送されて順次加工を行う工作機械ラインは、従来、図4に示すように、工作機械110の前面に搬送装置120が配置されている。ワークWは、工作機械110上のワーク加工位置111から搬送装置120上に移送(Z方向移動)した後に、隣り合う工作機械110に向かって搬送(X方向移動)するようになっていた(例えば特許文献1参照)。
【0003】
その他に、図5に示すようなガントリー型の搬送装置130を備えた工作機械ラインも知られている。ガントリー型搬送装置130は、走行ガイド131が複数の工作機械110を跨ぐように配置されている。ガントリー型搬送装置130では、走行ガイド131に沿って移動(X方向移動)する把持手段132が、工作機械110の上方から下降してワークWを把持して、隣り合う工作機械110に向かって搬送するようになっていた(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−124851号公報
【特許文献2】特開2005−46920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図4に示す工作機械ラインでは、工作機械110の前面に搬送装置120が設けられているので、ラインの幅寸法が大きくなってしまい、多くの設置面積を必要としていた。また、ワーク加工位置111と搬送装置120との間でワークを移送させる機構(図示せず)が必要となり、部品点数の増加および装置の複雑化を招いていた。
【0006】
一方、図5に示す工作機械ラインでは、ガントリー型搬送装置130が、搬送方向両端に走行ガイド131を支える支柱133を必要とするので、搬送方向の寸法が大きくなってしまい、設置面積の増大を招いていた。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するために創作されたものであり、装置の簡素化および小型化を図れる工作機械ラインを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、複数の工作機械と、前記各工作機械間でワークを搬送する搬送手段を備えた工作機械ラインにおいて、前記搬送手段は、前記工作機械の各ワーク加工位置に配置される複数の加工テーブルと、前記ワークの仮保持装置と、前記加工テーブルおよび前記仮保持装置を作動させる制御装置とを備えており、複数の前記加工テーブルは、搬送方向に沿って個別に移動可能であるとともに、その移動範囲は隣り合う前記加工テーブルの移動範囲と重合する共通エリアを有し、前記仮保持装置は、前記共通エリアに位置する前記ワークを保持可能であり、前記制御装置は、隣り合う前記加工テーブルのうち、前記ワークが載置された一方の加工テーブルを第一のワーク加工位置から他方の加工テーブルとの前記共通エリアへ移動させて、その共通エリアで前記仮保持装置によって前記ワークを仮保持させ、前記一方の加工テーブルを前記共通エリアから退避させるとともに前記他方の加工テーブルを前記ワークが仮保持された前記共通エリアへと移動させ、前記仮保持装置で仮保持された前記ワークを前記他方の加工テーブル上に載置させ、前記他方の加工テーブルを第二のワーク加工位置へ移動させるようになっていることを特徴とする工作機械ラインである。
【0009】
このような構成によれば、搬送方向に個別に移動可能な複数の加工テーブルを設けたことによって、加工テーブルが搬送手段を兼ねることができる。これによって、ワーク加工スペースと搬送スペースとが共通化されるので、工作機械ライン全体が小型化され、設置スペースの大幅な縮小が達成できる。また、加工テーブルと搬送手段が共通化されることで部品点数が減少し装置の簡素化が図れる。さらに、加工テーブルの移動範囲に共通エリアがあるので、搬送方向長さを短くできる。ガントリー型搬送装置のような柱を設ける必要がないので、ガントリー型搬送装置を備えた工作機械ラインと比較しても、搬送方向長さを短くできる。
【0010】
また、本発明は、前記搬送手段が、搬送方向に沿ったリニアモータの固定子を備えており、前記加工テーブルには、前記リニアモータの可動子が設けられていることを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、リニアモータを用いて加工テーブルを移動させたことによって、ガイドレールを搬送方向に長い一体ものとすることができるので、装置の簡素化が図れる。さらに、各加工テーブルを高速で個別移動させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、工作機械ラインの装置の簡素化および小型化を図ることができるといった優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る工作機械ラインの全体構成を示した概略平面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る工作機械ラインの全体構成を示した概略側面図である。
【図3】(a)〜(e)は、本発明の実施形態に係る工作機械ラインにおけるワークの搬送状態を示した概略平面図である。
【図4】従来の工作機械ラインの全体構成を示した平面図である。
【図5】従来の他の工作機械ラインの全体構成を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態に係る工作機械ラインを説明する。本実施形態では、横形の工作機械を用いた場合を例に挙げて説明する。なお、採用させる工作機械を、横型の工作機械に限定する趣旨ではない。図1および図2に示すように、本実施形態の工作機械ライン1は、複数(本実施形態では3つ)の工作機械10,10…と、各工作機械10,10間でワークWを搬送する搬送手段20を備えている。なお、本実施形態では、工作機械10が3つ設けられているが、この個数に限定する趣旨ではなく、複数であればよい。なお、以下の説明において、ワークWは、図1の左側から右側へと搬送されて順次加工されていくものとする。つまり、図1の左側が上流側となり、右側が下流側となる。
【0015】
工作機械10は、主軸ヘッド11と、主軸ヘッド11を上下方向であるY軸方向に移動可能に支持するコラム12と、主軸ヘッド11をY軸方向に移動させるY軸送り機構(図示せず)と、ワークWに近接離反する方向であるZ軸方向に主軸ヘッド11を移動させるZ軸送り機構(図示せず)と、ワークWを載置するベッド13とを備えている。Y軸送り機構およびZ軸送り機構は、例えばボールねじやモータ等にて構成されている。
【0016】
ベッド13は、その上部がワークWを加工する位置(以下、「ワーク加工位置P」という場合がある)となる。ベッド13は、3つの工作機械10,10,10のワーク加工位置P,P,Pに渡って一体的に形成されており、3つの工作機械10,10,10の共通のベッド13となっている。
【0017】
搬送手段20は、工作機械10の各ワーク加工位置Pに配置される複数の加工テーブル21と、ワークWの仮保持装置22と、加工テーブル21および仮保持装置22を作動させる制御装置(図示せず)とを備えている。複数の加工テーブル21,21,21は、それぞれベッド13上に設けられており、搬送方向に沿って個別に移動可能に構成されている。搬送方向(X軸方向)は、Z軸に直交する方向であって、工作機械10,10,10の並んでいる方向と平行な方向である。各加工テーブル21の移動範囲23は、隣り合う加工テーブル21の移動範囲23と重合する共通エリアEを有している。
【0018】
具体的には、図1に示すように、左端(上流側)の加工テーブル21(以下「第一加工テーブル21a」という場合がある)の移動範囲23(以下「第一移動範囲23a」という場合がある)は、基準位置(ワーク加工位置P)にあるときの中央の加工テーブル21(以下「第二加工テーブル21b」という場合がある)の上流側近傍位置まで広がっている。一方、第二加工テーブル21bの移動範囲23(以下「第二移動範囲23b」という場合がある)は、基準位置(ワーク加工位置P)にあるときの第一加工テーブル21aの下流側近傍位置まで広がっている。これによって、第一加工テーブル21aの第一移動範囲23aの下流側の一部と、第二加工テーブル21bの第二移動範囲23bの上流側の一部とが重なることとなり、この重合部分が共通エリアE12となる。なお、「基準位置」とは、例えば加工テーブル21の中間部と、主軸ヘッド11の軸芯部が同一面上になる位置であり、各移動範囲23の略中央にある。
【0019】
さらに、第二加工テーブル21bの第二移動範囲23bは、基準位置(ワーク加工位置P)にあるときの右端(下流側)の加工テーブル21(以下「第三加工テーブル21c」という場合がある)の上流側近傍位置まで広がっている。一方、第三加工テーブル21cの移動範囲23(以下「第三移動範囲23c」という場合がある)は、基準位置(ワーク加工位置P)にあるときの第二加工テーブル21bの下流側近傍位置まで広がっている。これによって、第二加工テーブル21bの第二移動範囲23bの下流側の一部と、第三加工テーブル21cの第三移動範囲23cの上流側の一部とが重なることとなり、この重合部分が共通エリアE23となる。
【0020】
加工テーブル21は、リニアモータにてベッド13上を移動する。具体的には、ベッド13上に搬送手段20は、搬送方向に沿ったリニアモータの固定子からなるガイドレール24を備えており、加工テーブル21には、リニアモータの可動子(図示せず)が設けられている。固定子は、例えば電磁石からなる。ガイドレール24は、固定子である固定電磁石を直線状に並べて構成されている。ガイドレール24は、一対設けられ、互いに平行に配置されている。可動子は、ガイドレール24上に配置される可動電磁石からなる。静止状態では、固定電磁石と、その上部に位置する可動電磁石とは、逆の極(N極とS極、またはS極とN極)になるようになっている。移動状態では、移動させる方向前方の固定電磁石を、可動電磁石の前方の磁極と逆の極として、前方に引き付ける。移動させる方向後方の固定電磁石を、可動電磁石の後方の磁極と同じ極とすれば、より強い力で可動電磁石が移動される。
【0021】
制御装置は、可動電磁石の磁力を制御することで、加工テーブル21を個別に所定の位置に移動させる。なお、制御装置の磁力の制御によって、各加工テーブル21の移動範囲23を変更可能である。また、本実施形態では、加工テーブル21をリニアモータにて移動させているが、移動手段をリニアモータに限定する趣旨ではない。
【0022】
図1および図2に示すように、仮保持装置22は、各共通エリアE12,E23に対向してそれぞれ配置されており、各共通エリアE12,E23に位置するワークWを保持可能に構成されている。仮保持装置22は、ベッド13上に立設されたコラム25と、コラム25に上下方向に移動可能に設けられたアーム26と、アーム26の先端に設けられた把持装置27とを備えて構成されている。把持装置27は、Z軸方向に移動可能にアーム26に支持されている。把持装置27は、把持するワークWの形状に応じて、ワークWを挟持するものや、係止するもの等、公知の機構のものが採用されている。
【0023】
制御装置は、仮保持装置22で共通エリアE12,E23に搬送されたワークWを、上流側の加工テーブル21上から一旦仮保持して持ち上げさせてその位置で待機し、搬送すべき次工程のワーク加工位置Pから移動してきた下流側の加工テーブル21上に載置させるようになっている。
【0024】
次に、図3を参照しながら、搬送手段20による搬送手順を説明する。
【0025】
まず、図中左端の工作機械10での加工終了後に、ワーク加工位置Pにある第一加工テーブル21a(図3の(a)参照)を、図3の(b)に示すように、共通エリアE12に移動させる。このとき、第一加工テーブル21aは、リニアモータによって、ガイドレール24に沿って迅速に移動できるとともに、他の加工テーブル21の動作とは別に単独で移動することができる。その後、仮保持装置22を作動させて、把持装置27でワークWを保持して一旦持ち上げる(仮保持)。
【0026】
その後、図3の(c)に示すように、ワークWを仮保持した状態で、第一加工テーブル21aを基準位置(左端の工作機械10のワーク加工位置P)に戻す。そして、図3の(d)に示すように、第二加工テーブル21bを、共通エリアE12に移動させる。なお、第一加工テーブル21aと第二加工テーブル21bは同時に移動させてもよい。その後、仮保持装置22を作動させて、把持装置27によるワークWの保持を終了させて、ワークWを第二加工テーブル21b上に載置する。ワークWを第二加工テーブル21bに固定した後に、図3の(e)に示すように、ワークWとともに第二加工テーブル21bを基準位置(中央の工作機械10のワーク加工位置P)に戻す。
【0027】
以上の手順によって、ワークWの搬送作業が完了する。中央の工作機械10と右端の工作機械10との間のワークWの搬送においても、前記と同様の手順を行う。なお、前記手順の反対の手順を行えば、下流側の工作機械10から上流側の工作機械10へ、ワークWを戻すことができる。
【0028】
以上のような工作機械ライン1によれば、搬送方向に個別に移動可能な複数の加工テーブル21,21…を設けたことによって、従来搬送装置とは別途に設けられていた加工テーブル21が搬送手段20を兼ねることができる。これによって、ワーク加工スペースと搬送スペースとが共通化されるので、工作機械ライン1の幅が小さくなり、工作機械ライン1全体が小型化され、設置スペースの大幅な縮小が達成できる。また、加工テーブル21と搬送手段20が共通化されることで部品点数が減少し装置の簡素化が図れる。さらに、加工テーブル21の移動範囲23に共通エリアE12,E23があるので、加工テーブル21の移動距離の割に搬送方向長さを短くできる。ガントリー型搬送装置130(図5参照)のような支柱133を設ける必要がないので、ガントリー型搬送装置130を備えた工作機械ラインと比較しても、搬送方向長さを短くできる。
【0029】
さらには、加工テーブル21を移動可能にして共通エリアE12,E23を設けたことで、ワークWが長くても加工ができる。つまり、ワークWが長くて加工テーブル21からはみ出す形状であっても、加工テーブル21を共通エリアE12,E23に移動させれば、はみ出した部分を工作機械10の正面に位置させることができるので、その部分の加工を行うことができる。さらに、加工テーブル21の移動範囲が互いに重複することで、加工可能な長さの割に、搬送方向長さを短くすることができる。
【0030】
また、仮保持装置22は共通エリアE12,E23に対向するように設けられており、さらに共通エリアE12,E23でワークWを備えた加工テーブル21が搬送方向であるX軸方向に移動するので、仮保持装置22は、把持装置27をY軸方向とZ軸方向のみに移動させればよく、搬送方向に移動させる必要はない。これによって、仮保持装置22の簡素化が達成される。
【0031】
さらに、本実施形態では、加工テーブル23をリニアモータで移動させることで、各加工テーブル23を高速で個別に移動させることができる。さらに、ガイドレール24を搬送方向に長い一体ものとすることができるので、ガイドレール24の設置が容易であるとともに搬送手段20の簡素化が図れる。また、リニアモータを用いたことで、ボールねじを採用した場合と比較して簡単な構造とすることができる。具体的には、ボールねじを採用して加工テーブルを個別に移動させる場合、移動する加工テーブル23と同じ数のボールねじとそれを駆動させるモータが必要になるが、リニアモータではガイドレール24を一対設けて可動子をそれぞれ設けるだけで済む。
【0032】
また、本実施形態に係る工作機械ライン1よれば、工作機械10の主軸ヘッド11は、Y軸方向およびZ軸方向に移動可能であればよいので、X軸方向の送り機構を省略できる。よって装置のより一層の簡素化を図ることができる。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能であるのは勿論である。例えば、本実施形態では、複数の工作機械10のベッド13が共通で一体形成されているが、これに限定されるものではない。工作機械ごとにベッドが設けられており、隣り合うベッド同士を連結して設けるようにしてもよい。この場合、各ベッドに設けられたガイドレール同士も直線状に連結する。このように、一の工作機械とベッドを一体的に形成すれば、所望の個数の工作機械を用いて容易に工作機械ラインを形成することができる。また、ベッドの長さが共通になるので、複数長さのベッドを準備する必要がなく、汎用性に富む。
【符号の説明】
【0034】
1 工作機械ライン
10 工作機械
20 搬送手段
21 加工テーブル
22 仮保持装置
23 移動範囲
E12 共通エリア
E23 共通エリア
P ワーク加工位置
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の工作機械と、前記各工作機械間でワークを搬送する搬送手段を備えた工作機械ラインにおいて、
前記搬送手段は、前記工作機械の各ワーク加工位置に配置される複数の加工テーブルと、前記ワークの仮保持装置と、前記加工テーブルおよび前記仮保持装置を作動させる制御装置とを備えており、
複数の前記加工テーブルは、搬送方向に沿って個別に移動可能であるとともに、その移動範囲は隣り合う前記加工テーブルの移動範囲と重合する共通エリアを有し、
前記仮保持装置は、前記共通エリアに位置する前記ワークを保持可能であり、
前記制御装置は、隣り合う前記加工テーブルのうち、前記ワークが載置された一方の加工テーブルを第一のワーク加工位置から他方の加工テーブルとの前記共通エリアへ移動させて、その共通エリアで前記仮保持装置によって前記ワークを仮保持させ、前記一方の加工テーブルを前記共通エリアから退避させるとともに前記他方の加工テーブルを前記ワークが仮保持された前記共通エリアへと移動させ、前記仮保持装置で仮保持された前記ワークを前記他方の加工テーブル上に載置させ、前記他方の加工テーブルを第二のワーク加工位置へ移動させるようになっている
ことを特徴とする工作機械ライン。
【請求項2】
前記搬送手段は、搬送方向に沿ったリニアモータの固定子を備えており、
前記加工テーブルには、前記リニアモータの可動子が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の工作機械ライン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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