説明

工作機械用の主軸駆動装置

【課題】主軸駆動装置において、摩擦面や押圧面の摩耗を抑制し、主軸に付与する回転抵抗の大きさを安定的に維持できるようにする。
【解決手段】摩擦面44の面上に開口するようにした溝であって、摩擦面44と押圧面43dとの対向する接触範囲80内で、主軸を囲むように延在し、主軸の回転中心を中心とする円周と交差する方向の交差溝75bと、接触範囲80外に連通する排出口75cとを備えた供給溝75を設け、潤滑油を供給するノズル孔74を供給溝75に向けて開口させることにより、主軸の回転に伴い、接触範囲80に対して4つの交差溝75bが相対的に移動し、当該移動した4つの交差溝75bに潤滑油が供給されるようにして、摩擦面44と押圧面43dとの対向する接触範囲80内まで潤滑油が到達しやすくなるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は工作機械用の主軸駆動装置に関し、特に、フレームに対し回転可能に支持された主軸を回転駆動する際に、押圧部材の押圧面を被押圧部材の摩擦面に押接することによって主軸に回転抵抗を付与する回転抵抗付与装置を備えた工作機械用の主軸駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械に用いられる主軸駆動装置として、ワーク(被加工物)が載置される円テーブルを主軸に固定し、当該主軸を回転駆動することによって円テーブルを回転させる回転割出テーブル装置が知られている。この回転割出テーブル装置は、主軸を回転駆動することによって円テーブルの角度位置を割り出し、その割り出した角度位置でワークを加工するために用いられる。この種の回転割出テーブル装置は、割り出した角度位置(割出位置)で円テーブルを保持するために、クランプ装置を備えている。クランプ装置は、割出位置において主軸(円テーブル)を回転阻止状態とするためのものである。
【0003】
ところで、通常はクランプ装置をクランプ状態にして円テーブルの回転を停止させ、ワークの加工を行う。しかし、クランプ装置をアンクランプ状態にして、連続的にワークを回転させながら仕上げ加工を行うこともある。その場合、回転割出テーブル装置は、ワークを加工するカッタから負荷を受ける。この負荷は、一定の加工条件の下でも常に変動している。そのため、回転割出テーブル装置による主軸の回転状態は、カッタから受ける負荷の変動の影響を受けて脈動が生じる場合がある。詳しくは次の通りである。
【0004】
例えば、主軸の駆動手段として、ウォームギア等の駆動伝達手段を介さずに主軸を直接的に回転駆動する直接駆動型(Direct Drive)のモータ(以下、DDモータという)を用いる場合、DDモータは、検出された主軸の回転角度(回転量)に基づいて、主軸の回転角度の偏差を補正しながら回転が制御される。しかしながら、カッタから受ける負荷の変動に起因する回転角度の偏差の変動に対してDDモータの制御が追従できないことがあり、DDモータの回転が必ずしも一定にならず、主軸の回転状態に脈動を伴うことになる。また、主軸の駆動手段としてウォームギア等の駆動伝達手段を用いる場合には、ウォームギアにはバックラッシュが存在するため、カッタから受ける負荷変動の影響を受けて、噛み合っているギアの駆動側の回転速度が変化すると、従動側(主軸側)のギアが慣性によりバックラッシュの範囲内で駆動側と無関係に揺動してしまい、主軸の回転状態に脈動を生じてしまう。
【0005】
主軸の回転状態に脈動が生じると、主軸に固定された円テーブルの回転状態にも脈動を伴う。その結果、円テーブルを回転しながら仕上げ加工されるワークの仕上加工面の面粗度が劣化してしまう。このような脈動の発生を解決課題とした従来技術として、特許文献1に記載された主軸駆動装置がある。
【0006】
この特許文献1は、主軸駆動装置としての旋盤に関するものである。そして、この特許文献1には、切削負荷の変動によって歯車のバックラッシュや回転伝達系の弾性変形に起因する主軸角度の誤差が発生するため、これを回避すべく、主軸にブレーキ装置を設け、ワークを回転させながら加工を行う際に、このブレーキ装置によって主軸に一定の負荷を常時与えることが記載されている。なお、上記の切削負荷の変動に伴って主軸角度の誤差が発生すると、結果として主軸の回転は脈動を伴ったものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−218404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、ワークを回転させながら加工を行う際に、ブレーキ装置によって主軸に一定の負荷(回転抵抗)を常時与えるようにした場合に、押接した状態で摺動するブレーキシューの押圧面や回転部材の摩擦面に摩耗が発生する。そして、ブレーキシューの押圧面や回転部材の摩擦面に摩耗が発生すると、摩耗により押圧面や摩擦面の表面の状態が変化し、主軸に作用させる回転抵抗の大きさが変化してしまう。その結果、摩耗の進行に伴って再び主軸の回転状態に脈動が生じる状態となり、ワークの仕上加工面の面粗度が劣化してしまう。
【0009】
そこで、ブレーキ装置によって主軸に一定の回転抵抗を与えつつワークを回転させて加工を行う場合には、上記摩耗を抑制するため、ブレーキシューの押圧面や回転部材の摩擦面を潤滑する必要がある。そして、上記特許文献1には、上記摩耗の抑制と目的は異なるが、主軸駆動装置(旋盤)が主軸に設けたブレーキ装置に対し潤滑油を供給するための潤滑供給手段を備えることが記載されている。
【0010】
しかしながら、上記特許文献1に記載の潤滑供給手段では、ノズル孔からの滴下により、ブレーキシューの押圧面や回転部材の摩擦面に潤滑油を供給しているため、潤滑油の粘度や回転部材の回転による遠心力の影響などによって、回転部材上でブレーキシューが押接される部分にまで潤滑油が到達しにくい。そのため、押圧面や摩擦面は潤滑不足による油膜切れの状態になり、ブレーキシューの押圧面や回転部材の摩擦面に摩耗が発生してしまい、充分に摩耗を抑制できないという問題がある。
【0011】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、工作機械における主軸駆動装置において、摩擦面や押圧面の摩耗を抑制し、主軸に付与する回転抵抗の大きさを安定的に維持できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した課題を解決するために、本発明では、押圧部材の押圧面および被押圧部材の摩擦面の少なくとも一方の面上に開口するようにした溝であって、摩擦面と押圧面との対向する範囲内で、主軸を囲むように延在し、主軸の回転中心を中心とする円周と交差する方向の要素と、摩擦面と押圧面との対向する範囲外に連通する排出口とを備えた供給溝を設け、潤滑油を供給するノズル孔を供給溝に向けて開口させている。なお、ここで言う主軸の回転中心を中心とする円周とは、主軸の回転中心を中心とする仮想の真円を指すものとする。
【0013】
本発明の他の態様では、供給溝は、潤滑油を排出する排出口を少なくとも2個備え、隣り合う排出口の間で供給溝に開口するようにノズル孔を設けるようにしている。
【発明の効果】
【0014】
上記のように構成した本発明によれば、摩擦面と押圧面との対向する範囲内で主軸を囲むように延在し、主軸の回転中心を中心とする円周に沿った方向と交差する方向の要素を通過して排出口から排出されるように潤滑油が供給されるので、主軸の回転に伴い、上記円周に沿った方向と交差する方向の要素と該要素と対向する範囲とが相対的に移動して、摩擦面と押圧面との対向する範囲内まで潤滑油が到達しやすくなる。これにより、摩擦面や押圧面が油膜切れの状態になるのを抑制して、摩擦面と押圧面との摩耗を抑制することができるので、回転抵抗付与装置が主軸に付与する回転抵抗の大きさを維持することができる。
【0015】
本発明の他の特徴によれば、ノズル孔から供給溝に供給されて排出口から排出されるまでの潤滑油の通過経路が、ノズル孔から見て両側に位置する2つの排出口へと向かう方向の異なる経路に分岐される。これにより、一方の排出口への供給溝が摩耗粉によって詰まっても、ノズル孔から供給溝に供給された潤滑油を他方の排出口へ通過させることができ、潤滑油の圧力による摩擦面と押圧面との浮き上がりを防止することができる。これにより、回転抵抗付与装置が主軸に付与する回転抵抗を所要の大きさに維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態による工作機械用の主軸駆動装置の構成例を示す図である。
【図2】本実施形態による主軸駆動装置の一部を拡大して示す図である。
【図3】図2におけるB−B断面を示す図であり、本実施形態による供給溝の構成例を示す図である。
【図4】図2におけるB−B断面を示す図であり、本実施形態による供給溝の他の構成例を示す図である。
【図5】図2におけるB−B断面を示す図であり、本実施形態による供給溝の他の構成例を示す図である。
【図6】図2におけるB−B断面を示す図であり、本実施形態による供給溝の他の構成例を示す図である。
【図7】図2におけるB−B断面を示す図であり、本実施形態による供給溝の他の構成例を示す図である。
【図8】図2におけるB−B断面を示す図であり、本実施形態による供給溝の他の構成例を示す図である。
【図9】図2におけるB−B断面を示す図であり、本実施形態による供給溝の他の構成例を示す図である。
【図10】図2におけるB−B断面を示す図であり、本実施形態による供給溝の他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。本実施形態は、回転抵抗付与装置を備えた工作機械用の主軸駆動装置の一例として回転テーブル装置を用い、回転テーブル装置に本発明を適用した例である。なお、以下の説明において、「軸線方向」とは、主軸4aの回転軸線の方向を指し、「半径方向」とは同心的に配置された主軸4aおよび円テーブル5の半径方向を指すものとする。また、「軸線方向」について、各部材における円テーブル5側を上(上端、上面)とし、その反対側を下(下端、下面)とする。
【0018】
図1は、本実施形態の回転テーブル装置1の全体を示す図である。回転テーブル装置1は、主軸4aに取り付けられた円テーブル5の面上に治具および加工対象のワークを載置するものである。図示の回転テーブル装置1は、主軸4aに対して回転抵抗を付与する回転抵抗付与装置10を備えている。なお、図示の回転テーブル装置1は、主軸4aの回転軸線が略鉛直となるように、所謂横置きに設置されている。
【0019】
図2は、回転抵抗付与装置10の一部を拡大して示す図である。回転抵抗付与装置10は、主軸4aに取り付けられている円盤状の摺動ディスク43の押圧面43dがフレーム2側のベース部11の摩擦面44に押接することによって、主軸4aに回転抵抗を付与する押圧力を摩擦面44に常に作用させるように成されたディスク式の回転抵抗付与装置である。
【0020】
まず、図1を参照して、回転テーブル装置1の構成について説明する。図1に示すように、回転テーブル装置1は、フレーム2と、フレーム2に対して回転可能に支持された主軸4aと、主軸4aに取り付けられたフランジ4bおよび円テーブル5と、主軸4aを回転駆動する駆動装置としてのDDモータ6と、主軸4aに対して回転抵抗を付与するクランプ装置48とを含んで構成される。
【0021】
フレーム2は、工作機械に対する設置面となる部分が平坦な面として形成されている。このフレーム2は、ケーシング体28a,28bとベース部材29とを別体に形成し、両者を複数の取付ボルト27によって組み合わせることにより構成されている。ベース部材29は、主軸4aを囲繞する筒状のベース部11を有している。なお、筒状のベース部11は、それ単独の部材として別に形成し、ボルト等によって取り付けられる構成としてもよい。
【0022】
主軸4aは、フレーム2内において筒状のベース部11の内部に挿入され、軸受3によってフレーム2に対し回転可能に支持されている。主軸4aの一端にはフランジ4bが取り付けられ、フランジ4bには円テーブル5が取り付けられている。また、主軸4aの他端は、円盤状の突出部材16の孔16aに挿入され、更にこの孔16aから突出している。なお、突出部材16は、ベース部材29の内周側に複数の取付ボルト31によって取り付けられている。
【0023】
円テーブル5は、中心孔13aの部分を嵌め合いによってフランジ4bの突起に対し位置決めされた状態で、複数の取付ボルト12によってフランジ4bに対し取り付けられている。
【0024】
フランジ4bは、中心孔13bの部分で主軸4aの一端に嵌め合いによって位置決めされた状態で、複数の取付ボルト30により主軸4aの端面に対し取り付けられている。このフランジ4bには、円テーブル5と反対側の面から主軸4aの回転軸線方向へ延びる筒状の保持部23が一体的に形成されており、この保持部23がベース部11を囲繞するかたちとなっている。なお、保持部23は、フランジ4bと一体に形成されているが、別体に形成されてフランジ4bに取り付けられる構成としてもよい。また、フランジ4bに設けられるものに限らず、円テーブル5または主軸4aに対し一体に形成されるか、または、別体に形成されて取り付けられるものでもよい。また、円テーブル5とフランジ4bと主軸4aとは、一体に形成されたものであってもよい。
【0025】
主軸4aは、主軸4aの外周面とベース部11の内周面との間に設けられた軸受3により支持されている。図1の例では、主軸4aを支持するために3個の軸受3が組み合わせて設けられている。そして、これらの軸受3の内輪側は、主軸4aの外周面に形成された段部とフランジ4bの中心孔13bの周囲の部分とにより挟み込まれた状態で、主軸4aに対し固定されている。また、軸受3の外輪側は、ベース部11の内周面に形成された段部とベース部11の端面に取付ボルト15によって取り付けられた環状の軸受け押さえ14とにより挟み込まれた状態で、ベース部11に対し固定されている。
【0026】
また、主軸4aには、摺動ディスク43が取り付けられている。この摺動ディスク43は、円盤状の薄板からなる弾性変形可能な部材であって、主軸4aが通る貫通孔を有している。この摺動ディスク43は、その内周側(貫通孔側)の部分において取付ボルト19によって主軸4aに固定されている。
【0027】
さらに、主軸4aには、突出部材16の孔16aから突出している他端に、回転検出器20の一部を成す被検出リング21が取り付けられている。この回転検出器20は、主軸4aの回転角度(回転量)を検出するためのものであって、主軸4aに取り付けられた被検出リング21と、フレーム2側の突出部材16に取り付けられた検出センサ22とで構成されている。この回転検出器20が設けられる主軸4aの他端側における主軸4aの外周の空間は、カバー部材18によって塞がれている。なお、カバー部材18は、取付ボルト17によってベース部材29に取り付けられている。
【0028】
この主軸4aは、駆動装置によって回転駆動される。駆動装置としては、ギア等の駆動伝達手段を介さずに主軸4aを回転駆動するDDモータ6を採用している。このDDモータ6は、主軸4aの回転軸線に関し主軸4aと同心的に配置されており、モータロータ7およびモータステータ8を含んで構成されている。すなわち、DDモータ6は所謂インナーロータ形である。なお、DDモータ6は、図示しない工作機械の制御装置に接続されており、その制御装置によって駆動が制御される。
【0029】
モータロータ7は、フランジ4bの保持部23の外周面に嵌め込まれた状態で、フランジ4b側から挿入された取付ボルト24により、フランジ4bに対し相対回転不能に取り付けられている。したがって、モータロータ7は、円テーブル5が固定された主軸4aに対し相対回転不能な状態となっている。
【0030】
モータステータ8は、モータロータ7の外周面を囲繞するように配置されている。すなわち、モータステータ8は、その内周面がモータロータ7の外周囲に対向し、モータロータ7の外周面との間に僅かな隙間を形成した状態でフレーム2に取り付けられている。また、モータステータ8は、ステータスリーブ25の内周面に相対回転不能に嵌め込まれている。ステータスリーブ25は、フレーム2におけるケーシング体28aの内周面に嵌め込まれた状態で、フレーム2のベース部材29側から挿入した取付ボルト26によってフレーム2に取り付けられている。したがって、モータステータ8は、フレーム2内において、フレーム2に対し相対回転不能に設けられた状態となっている。
【0031】
クランプ装置48は、環状のクランプピストン45と、押圧力付与装置46とを含んで構成される。押圧力付与装置46は、作動流体供給機構42と、第1および第2の圧力室49a,49bとを備えている。
【0032】
作動流体供給機構42は、フレーム2のケーシング体28aの外側面に向けて開口して形成された第1および第2のポート40a,40bと、ケーシング体28aに形成された第1および第2の連通路39a,39bと、フレーム2のベース部材29に形成された第1および第2の流路(図1には第1の流路38aのみ図示)と、作動流体(例えば、圧油)を供給するための作動流体供給源101と、作動流体のタンク100と、作動流体供給源101に接続された流体供給装置41とを備えて構成されている。
【0033】
第1の流路38aおよびこれに接続された第1の連通路39aは、第1の圧力室49aと第1のポート40aとの間を連通している。第1のポート40aは、フレーム2と別体に設けられた流体供給装置41に接続されている。また、第2の流路(図示せず)およびこれに接続された第2の連通路39bは、第2の圧力室49bと第2のポート40bとの間を連通している。第2のポート40bは流体供給装置41に接続されている。
【0034】
流体供給装置41は、工作機械の制御装置により制御される図示しない切替弁を含む。この切替弁は、一方で作動流体供給源101およびタンク100と流路で接続されており、他方で第1および第2のポート40a,40bと流路で接続されている。流体供給装置41は、共通の作動流体供給源101から供給される所定の圧力の作動流体を、切替弁により第1および第2のポート40a,40bに選択的に切り替えて供給し、第1および第2の圧力室49a,49bの少なくとも一方に選択的に所定の圧力の作動流体を供給するものである。
【0035】
また、図2に示すように、クランプ装置48において、クランプピストン45は、フレーム2の突出部材16に形成されている環状の案内溝51に対し軸線方向に移動可能な状態で納められている。案内溝51は、フレーム2の突出部材16における摺動ディスク43と対向する部分において、摺動ディスク43側に開口するように形成されている。したがって、案内溝51に収容されるクランプピストン45は、その円テーブル5側の端面(=摺動ディスク43側の端面)が、摺動ディスク43と対向している。また、クランプピストン45の摺動ディスク43側の端面と摺動ディスク43との間には、リターンディスク52が介装されている。
【0036】
リターンディスク52は、略ドーナツ形の薄板からなる弾性変形可能な部材であって、フランジ部材54および突出部材16を介してベース部材29に対して回転不能に固定配置されている。これにより、摺動ディスク43の回転に伴ってクランプピストン45が連れ回ることを防止する。クランプピストン45に対し流体供給装置41からの作動流体による押圧力が作用していない状態では、リターンディスク52は摺動ディスク43に接触していない。一方、クランプピストン45に対し流体供給装置41からの作動流体の圧力が作用している状態では、リターンディスク52は摺動ディスク43に押接し、クランプピストン45の押圧力を摺動ディスク43に伝達する。
【0037】
クランプピストン45は、その内周部の下端に形成されて内周側へ向けて突出する環状の突出部53を有している。そして、この突出部53と摺動ディスク43との間の位置で環状のフランジ部材54が、取付ボルト32によりフレーム2の突出部材16の摺動ディスク43側の端面に取り付けられている。このフランジ部材54の外周面は、クランプピストン45の内周面とシール55を介在させて密着している。
【0038】
フレーム2側において、フレーム2の一部を成すベース部材29のベース部11には、その内周面から半径方向内側へ突出する段部61が形成されている。その段部61の下面(円テーブル5とは反対側の面)は、摺動ディスク43の外周側の端部に位置する押圧部43bの、円テーブル5側の面と対向する。この段部61の下面が、摺動ディスク43の押圧部43bと接触可能な摩擦面44として機能する。
【0039】
主軸4aに固定された摺動ディスク43は、上述のように円盤状の薄板からなる弾性変形可能な部材であって、主軸4aが通る貫通孔を有しており、外周側の端部に位置する押圧部43bを摩擦面44に対向させた状態で、貫通孔側の端部に位置する固定部43aにおいて主軸4a側に固定されている。
【0040】
そして、クランプ装置48においては、クランプピストン45の下端面45a(摺動ディスク43とは反対側の端面)と案内溝51とで囲まれた空間が、クランプ用の第1の圧力室49aとなる。この第1の圧力室49aに対し、押圧力付与装置46の作動流体供給装置42によって所定の圧力の作動流体が供給されると、クランプピストン45の下端面45aがその圧力に応じた押圧力を受け、クランプピストン45がリターンディスク52を介して摺動ディスク43を押圧する。その結果、主軸4aに固定された摺動ディスク43がクランプピストン45(リターンディスク52)とフレーム2側の摩擦面44とで挟持(クランプ)された状態となり、主軸4aがクランプされた状態となる。
【0041】
なお、ここでいうクランプされた状態とは、主軸4aに対しその回転を許容しない回転抵抗を付与して主軸4aを回転不能な状態とすることいい、所謂完全クランプ状態をいう。これに対して、半クランプ状態とは、主軸4aに対しその回転を許容する範囲で回転抵抗を付与する押圧力を作用させる状態をいう。そして、半クランプ状態では、主軸4aの回転が許容されるので、割り出し装置(回転テーブル装置1)は角度位置の割り出し等を問題なく行うことができる。
【0042】
また、クランプ装置48において、クランプピストン45の内周面45bと、クランプピストン45の突出部53における摺動ディスク43側の面45cと、フランジ部材54と、案内溝51の内周面とで囲まれた空間が、アンクランプ用の第2の圧力室49bとなる。上記した作動流体供給装置42による第1の圧力室49aへの作動流体を停止すると共に、この第2の圧力室49bに対し所定の圧力の作動流体が供給されると、クランプピストン45の突出部53における摺動ディスク43側の面45cがその圧力に応じた押圧力を受け、クランプピストン45が摺動ディスク43から離間する方向へ移動する。その結果、上記の完全クランプ状態が解除され、主軸4aが回転可能な状態となる。
【0043】
なお、本実施形態では、クランプ装置48における摺動ディスク43と摩擦面44とが上述の回転抵抗付与装置として機能している。言い換えれば、本実施形態では、クランプ装置48を為す一部の構成が回転抵抗付与装置10としても機能している。
【0044】
摺動ディスク43は、固定部43aと、押圧部43bと、固定部43aと押圧部43bとの間に位置する弾性変形部43cとを一体の部材として含む。摺動ディスク43は、フレーム2のベース部11側と主軸4a側との間において弾性変形部43cが撓んだ状態(弾性変形した状態)で固定部43aを主軸4a側に取り付けられ、弾性変形部43cの撓み力(弾性力)により押圧部43bが摩擦面44に向けて付勢されている。これにより、押圧部材としての押圧部43bにおける円テーブル5側の面(押圧面43d)が、被押圧部材としてのベース部11の摩擦面44を常に押接することによって、主軸4aに対しその回転を許容する回転抵抗を付与する半クランプ用の押圧力を常に作用させるように構成している。
【0045】
具体的には、主軸4aにおける摺動ディスク43が取り付けられる取付面を摩擦面44に対して主軸4aの軸線方向において上側(被押圧部材側)へオフセットさせて設けており、その結果として、平板状の摺動ディスク43における弾性変形部43cが、取付面と摩擦面44との間で撓んだ状態となり、その撓み力(弾性力)により、押圧部43bの押圧面43dが付勢されて摩擦面44を押圧している。なお、ここでいうオフセットとは、2つの平面が、互いに平行、且つ、平面と垂直方向に互いに一定の距離を持って位置する状態を指すものとする。そして、このオフセット量は、弾性変形部43cの弾性変形に応じて押圧部43bと摩擦面44との間に生じる摺動抵抗が主軸4aの回転を許容する程度(主軸4aを完全にクランプしない程度)とするように設定されている。
【0046】
以上で説明した回転テーブル装置1において、本実施形態ではさらに、回転抵抗付与装置10に潤滑油を供給するための潤滑供給装置が設けられている。その構成について、図1〜図3を参照して説明する。なお、図3は、図2のB−B断面における摩擦面44に設けられた供給溝の構成例を示す図である。
【0047】
潤滑供給装置は、潤滑油を回転抵抗付与装置10に供給する供給装置71と、供給回路73と、ノズル孔74と、供給溝75とを備えている。
【0048】
図1に示すように、フレーム2のケーシング体28aには、その外側面に向けて開口して形成された第3のポート40cと、第3の連通路39cとが設けられている。第3のポート40cは、ケーシング体28aの外側面側で供給装置71と接続されるとともに、ケーシング体28aの内部側で、第3の連通路39cおよびこれに接続された図示しない第3の流路を介して、フレーム2のベース部11に設けられた供給回路73と連通している。
【0049】
供給装置71は、圧力空気供給源72に接続されており、圧力空気供給源72から供給される圧力空気を利用して潤滑油をミスト状にし、オイルミストを発生する。
【0050】
供給回路73は、フレーム2側に設けられ、供給装置71に接続された第3のポート40cとノズル孔74とを連通する。供給回路73は、フレーム2側のケーシング体28aおよびベース部材29内に設けた複数の穿孔を組み合わせる形で構成されている。
【0051】
ノズル孔74は、供給回路73と供給溝75とを連通するように、フレーム2側から供給溝75に向けて開口して設けられている。ノズル孔74は、図3に示すように、フレーム2側に4つ設けられている。
【0052】
供給溝75は、摩擦面44の面上に開口して設けられており、摩擦面44と押圧面43dとの対向する接触範囲80内で、主軸4aを囲むように円(真円)形状に形成された円周溝75aと、円周溝75aと交差するように半径方向に放射状に設けられた交差溝75b(本発明による円周と交差する方向の要素に相当)と、接触範囲80の外に連通する排出口75cとを備えている。
【0053】
なお、上記で言う主軸4aの回転中心を中心とする円周とは、主軸4aの回転中心を中心とする仮想の真円を指すものとする。そして、供給溝75がその円周と交差する方向の要素を備えるとは、例えば、接触範囲80内に位置する仮想の点が主軸4aの回転中心を中心に360°回転する間に供給溝75を少なくとも一箇所以上で横切ることを意味し、更に別の言い方をすれば、接触範囲80内に位置するような径の上記円周と交差する部分を有することを意味する。また、この交差する方向の要素は、潤滑という観点で好ましくは、半径方向において、接触範囲80の半分以上の領域を通過しうるものである。
【0054】
本実施形態では、交差溝75bは、円周溝75aの内周側から円周溝75aの外周側へ半径方向に延びる直線状の溝として設けられており、交差溝75bにおける接触範囲80外との境界が排出口75cに相当する。排出口75cより外側の交差溝75bは、排出回路76に連通しており、オイルミストの排出路として機能する。排出回路76は、フレーム2側のケーシング体28aおよびベース部材29内に設けた複数の穿孔を組み合わせる形で構成されている。排出回路76は、摩擦面44よりも円テーブル5とは反対側の位置でベース部材29の内径面に開口しており、回転テーブル装置1の外部と連通し(図示せず)、オイルミストを圧力空気と共に外部へ排出する。なお、本実施形態では、排出回路76の圧力状態は大気圧の状態としており、オイルミストを吸引するための装置等は設けていない。
【0055】
図3に示すように、交差溝75bも、ノズル孔74と同様に4つ設けられている。したがって、排出口75cの数も4つである。各ノズル孔74は、隣り合う排出口75cの間の位置で、円周溝75aに開口するように設けられている。これにより、ノズル孔74から円周溝75aに供給されて排出口75cから排出されるまでのオイルミストの通過経路を、ノズル孔74が開口する位置から見て両側に位置する2つの排出口75cへと向かう方向の異なる経路に分岐させている。
【0056】
以上のように構成された回転テーブル装置1において、供給装置71は、圧力空気供給源72から供給される圧力空気を利用して潤滑油をミスト状にしてオイルミストを発生する。そして、供給装置71は、発生したオイルミストを、圧力空気供給源72より供給された圧力空気と共に、第3のポート40c、第3の連通路39c、図示しない第3の流路、供給回路73を介して各ノズル孔74に供給する。
【0057】
各ノズル孔74に供給されたオイルミストは、圧力空気と共に、隣り合う排出口75cの間の位置で、円周溝75aに向けて各ノズル孔74から吐出されて供給される。各ノズル孔74から吐出されたオイルミストと圧力空気は、各ノズル孔74が開口する位置から見て両側に位置する2つの排出口75cへと向かう方向の異なる2つの経路のそれぞれにおける円周溝75aと交差溝75bとに供給される。
【0058】
主軸4aの回転に伴い、押圧面43dが、摩擦面44に対して回転方向に移動する。交差溝75bは、摩擦面44の面上に開口して設けられているので、押圧面43dは、交差溝75bに対しても回転方向に移動する。そして、押圧面43dにおける交差溝75bを通過した部分が、交差溝75bに供給されたオイルミストによって潤滑される。また、押圧面43dにおけるオイルミストにより潤滑された部分が、摩擦面44と摺動することにより、摩擦面44における接触範囲80内の部分を潤滑する。
【0059】
各排出口75cは、大気圧の状態(圧力空気の気圧よりも低い気圧の状態)の排出回路76に連通している。これにより、円周溝75aおよび各交差溝75bに供給されたオイルミスト(およびオイルミストがもとの潤滑油となったもの)は、圧力空気の流れに伴って各排出口75cから接触範囲80の範囲外へと排出される。また、摩擦面44と押圧面43dとの摺動に伴って発生した摩耗粉も、圧力空気の流れによって各排出口75cから接触範囲80の外へと速やかに排出される。
【0060】
上記のように構成した本実施形態の回転テーブル装置1によれば、主軸4aの回転に伴い、摩擦面44と押圧面43dとが対向して摺動する接触範囲80において、押圧面43dと4つの交差溝75bとが相対的に移動し、4つの交差溝75bに圧力空気と共にオイルミストが供給されるので、摩擦面44と押圧面43dとが摺動する接触範囲80内に対し潤滑油が十分に供給される。これにより、摩擦面44や押圧面43dが油膜切れの状態になるのを抑制して、摩擦面44と押圧面43dとの摩耗を抑制することができるので、回転抵抗付与装置10が主軸4aに付与する回転抵抗の大きさを維持することができる。
【0061】
また、本実施形態の回転テーブル装置1によれば、ノズル孔74から円周溝75aに供給されて排出口75cから排出されるまでのオイルミストの通過経路が、ノズル孔74から見て両側に位置する2つの排出口75cへと向かう方向の異なる経路に分岐される。これにより、一方の排出口75cへの円周溝75aが摩耗粉によって詰まっても、ノズル孔74から円周溝75aに供給されたオイルミストを他方の排出口75cへ通過させることができ、オイルミストの圧力による摩擦面44と押圧面43dとの浮き上がりを防止することができる。これにより、回転抵抗付与装置10が主軸4aに付与する回転抵抗を所要の大きさに維持することができる。
【0062】
また、本実施形態では、潤滑油としてオイルミストを用い、圧力空気と共にオイルミストを供給溝75に供給している。そのため、圧力空気と共に摩耗粉を排出口75cから排出しやすくなり、供給溝75の目詰まりや、目詰まりに伴う潤滑油や圧力空気の圧力による摩擦面44と押圧面43dとの浮き上がりを防止することができる。
【0063】
なお、上記実施形態では、オイルミストを発生して圧力空気と共に回転抵抗付与装置10に供給しているが、本発明はこれに限らず、ミスト化しない状態の潤滑油を回転抵抗付与装置10に供給するようにしてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、供給溝75を摩擦面44に設けているが、本発明はこれに限らず、押圧部43bの押圧面43dに設けてもよい。また、上記実施形態では、円周溝75aと交差溝75bとを同一面に設けているが、本発明はこれに限定されない。例えば、摩擦面44と押圧面43dとの一方に円周溝75aを設け、他方に交差溝75bを設けるようにしてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、円周溝75aを円(真円)形状の一繋がりの溝として構成する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、円周溝75aは、図4に示すように、一部が分断された略円形状の溝としてもよい。すなわち、本発明における供給溝75は、必ずしも全周において主軸を囲むように形成されるものに限らず、主軸周りの一部において溝が存在していないものであってもよい。なお、図4の例では、ノズル孔74を1つ、交差溝75bを円周溝75aの両端部に1つずつ備えているが、本発明はこの数に限定されるものではない。
【0066】
また、上記実施形態では、供給溝75における主軸4aの回転中心を中心とする円周と交差する方向の要素として交差溝75bを設ける例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図5に示すように、円周溝75aの中心を主軸4aの回転中心からずれた位置に偏心させて、円周溝75a自身を円周に沿った方向と交差する方向の要素とすることにより、主軸4aの回転に伴って上記交差する方向の範囲に渡ってオイルミストを供給できるようにしてもよい。
【0067】
図5に示す例の場合、交差溝75bは存在せず、主軸4aの中心から上記交差する方向に偏心した円周溝75a自身が上記交差する方向の要素を兼ねて有している。すなわち、図5の供給溝は、接触範囲80内における半径方向の位置が、その円周上の各位置において異なっており、主軸4aの回転中心を中心として接触範囲80内に描かれる仮想の真円と2箇所において交差する構成となってなっているため、その全体で主軸4aの回転中心を中心とする円周と交差する要素を成している。また、排出口75cについては、円周溝75aの一部に開口するように設けている。具体的には、一方が接触範囲80外に開口し、他方が円周溝75aに開口する連通孔75d(部材内部のトンネル)を設け、当該円周溝75aに開口する部分を排出口75cとしている。なお、図5の例では、ノズル孔74を2つ、排出口75cを2つ備えているが、本発明はこの数に限定されるものではない。
【0068】
また、上記実施形態では、円周溝75aを円(真円)形状の溝として構成する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、楕円で構成しても良いし、または曲線あるいは直線状の溝を複数組み合わせて主軸4aを囲むように構成したものでもよい。図6は、複数の直線状の溝を組み合わせて円周溝75aを構成した例を示す。図6では、円周の方向にほぼ沿うように形成した直線状の溝の組み合わせにより円周溝75aを構成している。
【0069】
図7も複数の直線状の溝を組み合わせて円周溝75aを構成した例を示す。図7の場合は、円周の方向に直線状の要素81と、当該円周と交差する方向に沿うように形成した直線状の要素82との組み合わせにより円周溝75aを構成している。
【0070】
図6や図7のようにすれば、供給溝75において円周と交差する方向に沿う要素が交差溝75bの他にも直線状の溝の組み合わせにより構成された円周溝75aや直線状の要素81,82を含めて数多く増えるので、接触範囲80内にオイルミストが更に到達しやすくなり、摩擦面44と押圧面43dとの潤滑効果を高めることができる。
【0071】
図8は、複数の円弧溝と複数の直線溝とを組み合わせて円周溝75aを構成した例を示す。図8の場合は、主軸4aの回転中心を中心とする円弧状の要素83と、当該円周と交差する半径方向に放射状に形成した直線状の要素84との組み合わせにより円周溝75aを構成している。このようにすれば、供給溝75において円周と交差する方向の要素が交差溝75bの他にも直線状の要素84を含めて数多く増えるので、摩擦面44と押圧面43dとの潤滑効果を高めることができる。
【0072】
図9は、複数の円弧溝と複数の円形状の溝とを組み合わせて円周溝75aを構成した例を示す。図9の場合は、主軸4aの回転中心を中心とする円弧状の要素85と、円形状の要素86との組み合わせにより円周溝75aを構成している。このようにすれば、供給溝75において円周と交差する方向の要素が交差溝75bの他に円状の要素86も含めて数多くなるので、摩擦面44と押圧面43dとの潤滑効果を高めることができる。
【0073】
また、図10に示すように、供給溝75は、複数の円(真円)形状の溝87,88を設けてそれぞれを複数の直線溝89で連通したものとしてもよい。図10では、主軸4aの回転中心を中心とする円形状の溝87,88と交差する半径方向に放射状に形成した直線溝89を2つ設けているが、それより多く設けてもよい。このようにすれば、供給溝75において円周と交差する方向の要素が、交差溝75bの他に直線溝89も含めて数多くなるので、摩擦面44と押圧面43dとの潤滑効果を高めることができる。
【0074】
なお、上記実施形態では、ノズル孔74をフレーム2側に設けているが、本発明はこれに限定されない。例えば、供給回路73をロータリジョイント等の回転継手を介して主軸4a側にも設けた上で、ノズル孔74を主軸4a側に設けてもよい。また、上記実施形態では、ノズル孔74が供給溝75と同じ部材側に設けられているが、供給溝75と異なる部材側から供給溝75へ向けて開口するように設けてもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、ノズル孔74が供給溝75に開口する位置を、隣接する2つの交差溝75bどうしの中間位置としているが、本発明はこれに限定されない。例えば、ノズル孔74が供給溝75に開口する位置を2つの交差溝75bから等距離とせずに、どちらか一方に近づけて設けてもよい。
【0076】
上記実施形態では、回転抵抗付与装置について、主軸4a側に摺動ディスク43を設けるとともに、フレーム2側に摩擦面44を設ける例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、フレーム2側に摺動ディスク43を設けるとともに、主軸4a側に摩擦面44を設けるようにしてもよいし、円テーブル5の面を摩擦面44として設けるようにしてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、回転抵抗付与装置について、摺動ディスク43の固定部43aの円テーブル5側の面の位置と摩擦面44の位置とをオフセットさせることにより摺動ディスク43を撓ませる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、撓み量の分だけあらかじめ湾曲させて形成した断面形状の摺動ディスクを用い、これを平面上に伸ばした状態で、固定部43aの円テーブル5側の面の位置と摩擦面44の位置とをオフセットさせずに取り付けるようにしてもよい。または、あらかじめ湾曲させて形成した断面形状の摺動ディスクを用い、当該摺動ディスクの固定部43aの円テーブル5側の面の位置と摩擦面44の位置とをオフセットさせるようにしてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、摺動ディスク43が自身の撓み力によって主軸4aに対しその回転を許容する回転抵抗を付与する半クランプ用の押圧力をフレーム2側の摩擦面44に常に作用させるディスク式の回転抵抗付与装置10を用いているが、本発明はこれに限定されない。例えば、主軸4a側の押接面にピストンの押圧面を押圧するピストンタイプの回転抵抗付与装置を用いて、必要に応じて半クランプ用の押圧力を発生するようにしてもよい。また、この場合に、半クランプ用の押圧力を発生する時にのみ、潤滑油やオイルミストを供給溝75に供給するようにしてもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、DDモータ6を駆動装置とする回転テーブル装置1について説明したが、必ずしもDDモータ6によるものに限定されない。すなわち、駆動装置は、ギアによる減速装置とモータとを含むものであってもよい。
【0080】
さらに、上記実施形態では、主軸駆動装置の一例として、回転テーブル装置1のような割り出し装置を用いたが、本発明はこれに限定されない。例えば、工具等が取り付けられる主軸を連続的に回転駆動する工作機械の主軸駆動装置であってもよい。具体的には、工作機械のミーリングヘッド(ユニバーサルヘッドあるいはスピンドルヘッド)や複合加工工作機械のワーク主軸装置であってもよいし、従来技術のような旋盤であってもよい。
【0081】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 回転テーブル装置(主軸駆動装置)
2 フレーム
4a 主軸
10 回転抵抗付与装置
43 摺動ディスク
43d 押圧面
44 摩擦面
71 供給装置
72 圧力空気供給源
73 供給回路
74 ノズル孔
75 供給溝
75a 円周溝
75b 交差溝
75c 排出口
80 接触範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームに対し回転可能に支持された主軸を回転駆動する際に、押圧部材の押圧面を被押圧部材の摩擦面に押接することによって上記主軸に回転抵抗を付与する回転抵抗付与装置を備えた工作機械用の主軸駆動装置であって、
上記フレーム側に設けられ、潤滑油を上記回転抵抗付与装置に供給する供給装置と、
上記潤滑油を供給するノズル孔と、
上記フレーム側および上記主軸側の少なくとも一方に設けられ、上記供給装置と上記ノズル孔とを連通する供給回路と、
上記摩擦面および上記押圧面の少なくとも一方の面上に開口して設けられた上記潤滑油の供給溝とを備え、
上記ノズル孔は上記供給溝に向けて開口し、
上記供給溝は、上記摩擦面と上記押圧面との対向する範囲内で上記主軸を囲むように延在し、上記主軸の回転中心を中心とする円周と交差する方向の要素と、上記摩擦面と上記押圧面との対向する範囲外に連通する排出口とを備えたことを特徴とする工作機械用の主軸駆動装置。
【請求項2】
上記供給溝は少なくとも2個の上記排出口を備え、上記ノズル孔は、隣り合う上記排出口の間で上記供給溝に開口することを特徴とする請求項1に記載の工作機械用の主軸駆動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate