説明

工具管理システム

【課題】製品に関する専門的知識を持たない者でもレンチなどの工具を適切に使用すること可能とする複雑な制御装置に対し容易に追加でき、所望の指示情報を表示できる工具管理システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る工具管理システムは、共通データ信号線で接続された複数の子局を備える。前記子局は、前記制御対象工具に関する情報表示手段と、前記制御対象工具を検知するセンサと、前記情報表示手段への信号出力を行う判断装置を有する。更に、前記判断装置には、前記情報表示手段に関する複数の処理工程が記憶されている。そして、前記複数の処理工程が、前記制御対象工具の指示情報を制御する制御部からの指示信号と前記センサからの入力に基づいて順次処理される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産工程において、製品に関する専門的知識を持たない者でもレンチなどの工具を適切に使用すること可能とする工具管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の生産現場では、製品を構成する部品の引取り指示等を機械的に行うことで、製品に関する専門的知識を持たない者でも、その生産に携わることが可能となっている。例えば、セル生産方式、すなわち、一人の作業員が複数の工程を担当とする方式に用いられているピッキングシステムでは、ホストコンピュータにおいて、部品の取出し指示を制御装置に送信し、制御装置が引取り指示の出された部品引渡し棚に装着されたランプや表示器により指示状態を表すようにしている。従って、製品に関する知識を持ちあわせていない作業者であっても、部品引渡し棚の指示に沿って、構成部品を正しい順番で組み立てることが可能となる。
【0003】
一方、組立て作業に使用される工具についても、製品に関する知識を持ちあわせていない作業者が適切に使用できるための試みがなされている。例えば、ねじの締め付け作業において、ねじに与えるトルクが適切で無い場合、ねじや被取付け部材が破損するおそれがあることから、このねじに与えられるトルクを自動的に制御するための手法が提案されている。そして、そのような手法として、例えば、特開平11−267981号公報に開示されているパルスレンチの管理方法や、特開2002−273667号公報に開示されているインパクトレンチなどがある。
【特許文献1】特開平11−267981号公報
【特許文献2】特開2002−273667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、消費者の嗜好は多様化しているが、そのような消費者の要求に応えるためには、多品種少量生産を行う必要がある。セル生産方式は、そのような多品種少量生産に好適であるが、一つのセル(生産現場)で生産される種類が増えると、それに対応する工具も当然に増え、単純な取り違えによるミスが発生するという問題があった。
【0005】
そのようなミスを防止するためには、使用すべき工具を指示する手法、すなわち公知のピッキングシステムが有効と考えられるが、現実に稼動している生産装置に対しては、そのようなピッキングシステムを容易に導入できないというのが実状である。すなわち、従来の工具管理システムの制御手法においては、指示情報制御のための演算処理は、制御装置に組み込まれた複雑なアプリケーションソフトで実行されており、その改変が困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、製品に関する専門的知識を持たない者でもレンチなどの工具を適切に使用すること可能とする複雑な制御装置に対し容易に追加でき、所望の指示情報を表示できる工具管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る工具管理システムは、共通データ信号線で接続された複数の子局を備える。前記子局は、制御対象工具に関する情報表示手段と、前記制御対象工具を検知するセンサと、前記情報表示手段への信号出力を行う判断装置を有する。更に、前記判断装置には、前記情報表示手段に関する複数の処理工程が記憶されている。そして、前記複数の処理工程が、前記制御対象工具への指示情報を制御する制御装置からの指示信号と前記センサからの入力に基づいて順次処理される。
【0008】
情報表示手段とは、文字、記号、色彩などの違いを利用して、複数の情報を区別して表示するものであればよい。また、情報表示手段の表示は、例えば、単色又は複数の色の点灯及び/又は点滅であってもよく、その場合の情報表示手段は、赤、青、緑などの複数色の光を発するランプを点灯、点滅させる装置でもよい。
【0009】
前記複数の処理工程は、所望の指示内容でよいが、例えば、前記制御対象工具が使用すべきものであることを判別する工程、前記制御対象工具の待機状態と使用準備状態を判別する工程、前記制御対象工具が適切に使用されたことを判別する工程、及び前記情報表示手段を各工程の判別内容に沿った表示とする工程、などが挙げられる。
【0010】
なお、待機状態とは、使用されていないときに配置されることと予め決められている所定位置に配置された状態である。また、センサからの出力が、この待機状態に対応する出力と異なる状態が使用準備状態である。例えば、センサが所定位置に配置されている制御対象工具を検知するものであれば、センサで検知されなくなった状態が使用準備状態となる。
【0011】
また、情報表示手段を各工程の判別に沿った表示とする工程とは、情報表示手段を、点灯、点滅など、判定に応じて予め決められた表示状態にする工程である。例えば、制御対象工具が使用することになっているものと判別された場合は青色点滅、使用対象となっている制御対象工具が使用準備状態になったと判別された場合は青色点灯、制御対象工具の適切な使用が判別された場合は緑色点灯、制御対象工具の使用に問題があったと判別された場合は赤色点灯とする。
【0012】
本発明に係る工具管理システムは、前記情報表示手段の表示内容と同じ内容の表示を、所定の区画に並べて表示する確認用表示手段を備えるものであってもよい。
【0013】
なお、所定の区画に並べて表示する確認用表示手段とは、子局の情報表示手段で表示された内容と同じものを集約して表示できるものであり、例えば、各子局の情報表示手段に連動して点灯、点滅するランプを並べて配置した表示板が挙げられる。この表示板の場合、板面全体が所定の区画となる。ただし、その形状等に制限はなく、上記機能を備えるものであればその他のものであってもよい。
【0014】
更に、本発明に係る工具管理システムは、前記子局から前記共通データ信号線を経て伝送された監視信号から監視データを抽出し制御信号として前記共通データ信号線に送出する仲介局を備え、前記子局は前記共通データ信号線上の前記制御信号から自局アドレスに該当する制御データを取り込むものであってもよい。
【0015】
前記監視信号及び前記制御信号は、一連の監視制御信号として、伝送の開始を示すスタート信号に続けて送出されるものであってもよい。そして、前記子局は、前記スタート信号及び前記監視制御信号を構成するクロック信号に基づき、前記スタート信号を起点とし、前記クロック信号により順次アドレスカウンタを更新して伝送同期するものであってもよい。
【0016】
前記センサは、発光素子を有する発光部と、受光素子を有する受光部を備え、前記発光部又は前記受光部のいずれかに前記判断装置が設けられ、前記受光素子は前記受光部における前記発光部と向かい合う面の所定の範囲に分散して配置され、前記発光素子から前記受光素子が受ける光量の変化に応じた信号が、前記判断装置に入力されるものであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る工具管理システムによれば、制御対象工具への指示情報の制御は、従来と同様、制御装置で行われることになるので、製品に関する専門的知識を持たない者でもレンチなどの工具を適切に使用することが可能となる。また、共通データ信号線で接続され判断装置により制御対象工具の使用指示表示の調整を行う子局を備えるため、子局と制御装置との間で信号授受の橋渡しを行う親局や仲介局を共通のデータ信号線に接続して用いることより、制御部に新たな改変を加えることなく追加することが可能となる。しかも、子局は、判断装置により、制御対象工具への指示情報を制御する制御装置からの指示信号とセンサからの入力に基づいて、複数の工程を順次処理するものとなっているので、様々な内容の使用指示表示を行わせることが可能となる。なお、共通データ信号線を使用することで、複数の子局を数本(最小で2本)の信号線で接続することが可能となり、複数の子局の各々を直接制御装置に接続させた場合と比較し信号線の数が大幅に減少するため、取り扱いが容易になるという利点もある。
【0018】
情報表示手段の表示内容は、子局とは別に、所定の区画に並べて表示する確認用表示手段で表示させてもよく、この場合、表示が1箇所に集約されるため、表示内容或いは作業内容の確認をより容易に行うことができる。
【0019】
共通データ信号線を使用した通信方式としては、子局から共通データ信号線へ伝送された監視信号から監視データを抽出し制御信号として共通データ信号線に送出する仲介局を利用した方式が好適である。この場合、仲介局において複雑な通信制御が不要となり、制御装置への追加をより簡単に行うことができる。
【0020】
監視信号及び制御信号は、一連の監視制御信号として、伝送の開始を示すスタート信号に続けて送出されるものであれば、工具の追加を更に容易に行うことができる。すなわち、一連の監視制御信号であるため、工具の追加のために子局が追加された場合は、これまでの監視制御信号に追加された子局に関する情報を続けるのみでよく、既存の子局に関する部分を変更する必要がない。なお、監視制御信号を構成する信号にはアドレスが付与され、各子局はこのアドレスを基に自局に対応するデータを抽出することになる。そのため、子局は、スタート信号及び監視制御信号を構成するクロック信号に基づき、スタート信号を起点とし、クロック信号により順次アドレスカウンタを更新して伝送同期を行う。
【0021】
センサにおいて、制御対象工具を検知する機構に制限はないが、いわゆるエリアセンサを用いることで制御対象工具の動きを正確に検知し、指示情報としてより多くの内容を表示することが可能となる。例えば、誤った工具が取り上げられることを防止すため、使用対象となっていない制御対処工具が動かされた場合に警告表示を行う場合、その動きの度合いを任意に設定すること(わずかな動きでも警告するか半分以上動いたら警告するかなど)も可能となる。なお、エリアセンサとしては、発光素子を有する発光部と、受光素子を有する受光部を備え、受光素子は受光部における発光部と向かい合う面の所定の範囲に分散して配置され、発光素子から受光素子が受ける光量の変化に応じた信号が、判断装置に入力されるものが好適である。この際、判断装置を発光部又は受光部のいずれかに設けることにより、子局全体を小型にすることができる。
【0022】
情報表示手段の表示は、使用状況や表示対象者の能力などを考慮し最もわかりやすいものとすればよいが、単数又は複数の色の点灯及び/又は点滅とすれば、視覚により容易に理解でき、また、表示内容の種類を簡単に増やすことができるため、所望の指示情報の表示には特に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図1から図5に基づいて説明する。図1は本発明に係る工具管理システムが採用された組立装置の構成を示す図、図2は子局と制御装置の構成を示すブロック図、図3は子局の機能を処理の流れに沿って示す図、図4は制御対象工具が適切に使用された場合のデータ信号の推移をアドレス毎に示すタイムチャート、図5は制御対象工具が適切に使用されなかった場合のデータ信号の推移をアドレス毎に示すタイムチャートである。なお、図3は、説明の便宜上プログラムのフローチャートと同じ記号を一部使用しているが、子局の機能を説明するための図であり、フローチャート図ではない。
【0024】
この組立装置は、制御対象工具41を複数搭載したワゴン台車50を、ベルトコンベアで搬送される製品と並走させ、制御対象工具41を使用して計測や組立作業を行うためのものであり、ワゴン台車50と、省配線で接続された制御装置20とで構成されている。制御対象工具41は、例えば、トルクセンサなどの計測器である。
【0025】
制御装置20は、制御対象工具41への指示情報を制御するための演算処理を行うコントローラ21を備え、ワゴン台車50に搭載されることなく定置されている。また、制御装置20は、子局部22を介し、共通データ信号線33に接続されている。この子局部22は、共通データ信号線33と制御装置20との間でのデータ信号の授受を担うものである。なお、この実施例では、この子局部22を制御装置20の一部とみなしているが、コントローラ21が既設装置であったのに対し、子局部22はこのコントローラ21に後から外付けされたものである。
【0026】
一方、制御対象工具41には、マイクロコンピュータ・コントロール・ユニット(MCU)12と、制御対象工具41を検知するセンサ13と、指示表示部14を備えた子局10が接続され、更に子局10は、共通データ信号線33に接続されている。すなわち、制御装置20と制御対象工具41は、子局11と共通データ信号線33を介して接続されている。
【0027】
図2に示すように、子局10及び子局部22は、共通データ信号線33からデータを取り込む子局出力部17、24、25と、共通データ信号線33へデータを送出する子局入力部18、19、23を備える。子局部22の子局入力部23は、コントローラ21からの指示信号(計測指示、OK、NG)を共通データ信号線33に送出する。送出された指示信号は、子局11の子局出力部17で取り込まれ、MCU12に渡される。MCU12では後述する処理がなされ、指示表示部14の表示内容信号(青、緑、赤)が出力される。この表示内容信号は、子局11の子局入力部18を介して、共通データ信号線33に送出されることになる。なお、この表示内容信号は、後述の確認用表示板40の表示に利用される。
【0028】
一方、指示信号のうち計測指示信号は、センサ13の投光指示信号として発光素子15に入力される。そして、投光指示有りの場合、これを受けた発光素子15が発光し、受光素子16がそれを受ける。受光素子16で受ける光量は制御対象工具41の状態(準備状態、取出し状態)に応じて変化するため、その光量の変化に応じた結果がセンサ信号として子局11の子局入力部19を介し共通データ信号線33に送出されることになる。また、制御対象工具41に設けられたセンサ(トルクセンサなど)で検出された物理量が、デジタル信号に変換された後、子局入力部19を介して共通データ信号線33に送出されることになる。そして、これらセンサ信号とデジタル信号は、子局部22の子局出力部24、25を介してコントローラ21に取り込まれ、制御対象工具41の制御演算処理に使用される。なお、図2において、コントローラ21の入出力信号はすべて三組となっているが、これは、理解を容易にする目的で図1に示す制御対象工具41の数に対応させたものであり、実際には制御対象工具41の数の並列信号となる。
【0029】
MCU12は、本発明の判断装置に相当し、指示表示部14に関する複数の処理工程が記憶されている。そして、この複数の処理工程が、制御装置20からの指示信号とセンサ13からの入力に基づいて順次処理されることになる。
【0030】
センサ13は、発光素子15を有する発光部13aと、受光素子16を有する受光部13bで構成される。そして、センサ13とMCU12が子局10を構成している。受光素子16は受光部13bにおける発光部13aと向かい合う面の所定の範囲に配置され、発光素子15からの光量を受光素子16が受光し、光量の変化に応じたON/OFF信号が、MCU12と子局入力部19にセンサ信号として入力される。そのため、未使用の状態にある制御対象工具41を、発光部13aと受光部13bの間に配置しておき、使用時にそこから取出すと、受光素子16のセンサ信号はONとなり、制御対象工具41を検知することができる。
【0031】
指示表示部14はそれぞれ、青、緑、赤を発光するLEDで構成され、発光部13a及び受光部13bの双方に連結固定されている。この指示表示部14は、制御対象工具41に関する指示を行うためのもので、本発明の情報表示手段に相当するものである。MCU12に接続され、MCU12からの出力信号により、各LEDの点灯、消灯が行われる。
【0032】
このMCU12を備えた子局10の機能を、図3を参照しながら説明する。
まず、制御装置20からの計測指示信号を含む制御データを、共通データ信号線33に送出された制御信号から抽出する(S1)。計測指示信号が有れば指示表示部14の青LEDを点滅し(S2)、計測者に制御対象工具41の取出しを促す。計測者が制御対象工具41を取出すと、受光素子16のセンサ信号はOFFからONとなり、制御対象工具41が取出されたと検知して(S3)、青LEDは点滅から点灯に切り替わる(S4)。同時に子局入力部19はセンサ信号のON/OFFデータを、共通データ信号線33に監視信号として送出する。
次に計測者は制御対象工具41で計測を開始する(S5)。計測を開始すると制御対象工具41からの計測アナログ信号はA/D変換器44でデジタル信号に変換され、A/Dの監視データを共通データ信号線33に監視信号として送出する(S6)。
【0033】
次に子局10は制御装置20からのOK信号、NG信号を含む制御データを、共通データ信号線33に送出された制御信号から抽出し(S7)する。制御データがOK信号であれば指示表示部14の青LEDを消灯し(S8)、緑LEDを点灯させる(S9)。制御データがNG信号であれば指示表示部14の青LEDを消灯し(S10)、赤LEDを点灯させる(S11)。
【0034】
計測者が制御対象工具41を元に戻すと、受光素子16のセンサ信号はONからOFFとなり、制御対象工具41が戻されたと検知して(S12)、緑LEDもしくは赤LEDが消灯し(S13)、同時にセンサ信号の監視データを共通データ信号線33に監視信号として送出する。
以上で一つの処理工程が終了するが、子局10は次の処理工程も同様に繰り返す。なお、図2には一つの子局のみが示されているが、図1に示される3つの子局10はすべて図2に示す子局10と同じ構成であり、上記と同様な処理工程行う。また、共通データ信号線33に接続する子局10の数に制限はなく、必要に応じ数を接続すればよい。
【0035】
次に、処理工程の具体的内容を、この組立装置の操作方法に沿って説明する。
まず、制御装置20のコントローラ21から、対応する制御対象工具41に対応する子局10に対して、対応する計測指示信号を子局入力部23に出力する。子局入力部23は計測指示信号である制御データを共通データ信号線33に制御信号として送出する。
【0036】
対応する子局10は制御装置20からの計測指示信号を含む制御データを、共通データ信号線33に送出された制御信号から、自局に該当する指示情報である計測指示信号の抽出を行い(S1)、計測指示信号が有れば指示表示部14の青LEDを点滅し(S2)、計測者に制御対象工具41の取出しを促す。計測者が制御対象工具41を取出すと、受光素子16のセンサ信号はOFFからONとなり、制御対象工具41が取出されたと検知して(S3)、青LEDは点滅から点灯に切り替わる(S4)。次に計測者は制御対象工具41で計測を開始する(S5)。計測を開始すると制御対象工具41からの計測アナログ信号はA/D変換器でデジタル信号に変換され、A/D信号である制御データを共通データ信号線33に監視信号として送出する(S6)。
【0037】
制御装置20の子局出力部24と子局出力部25は、子局10からのセンサ信号、A/D信号を含む監視データを、共通データ信号線33に送出された監視信号から抽出し、コントローラ21に対応するセンサ信号およびA/D信号を出力する。コントローラ21はセンサ信号のONにて、対応する制御対象工具41が計測開始したと判断し、対応するA/D信号である計測データを取り込む。また、コントローラ21は、その計測データが最大の時を判断し、その時点の計測データを計測完了と見なす。コントローラ21は計測データの計測完了時点での計測データが、所定のデータに比べて適正値ならOK信号を、不適正値ならNG信号を子局入力部23へ、対応する信号を出力する。子局入力部23はOK信号もしくはNG信号である制御データを共通データ信号線33に制御信号として送出する。
【0038】
対応する子局10は制御装置20からのOK信号もしくはNG信号を含む制御データを、共通データ信号線33に送出された制御信号から、自局に該当するOK信号もしくはNG信号の抽出を行い(S7)、OK信号で有れば指示表示部14の青LEDを消灯し(S8)、次に指示表示部14の緑LEDを点灯する(S9)。またNG信号で有れば指示表示部14の青LEDを消灯し(S10)、次に指示表示部14の赤LEDを点灯する(S11)。
【0039】
計測者が制御対象工具41を戻すと、受光素子16のセンサ信号はONからOFFとなり、制御対象工具41が戻されたと検知して(S12)、緑LEDもしくは赤LEDは消灯し、指示表示部14の全ての表示が消灯する(S13)。またセンサ13の投光が停止し、一つの処理工程が終了して作業終了となる。子局10は次の処理工程も同様に繰り返す。また、複数の他の子局も同様な処理工程行う。
【0040】
以上のように、この組立装置によれば、共通データ信号線33で接続され、MCU12を含んだ子局10の機能により、制御対象工具41の使用指示表示の調整を行うことができる。子局10と制御装置20との間で信号授受の橋渡しを行う仲介局31を用い、共通のデータ信号線33で互いに接続することにより、コントローラ21に新たな改変を加えることなく追加することが可能となる。ただし、子局10と制御装置20との間における信号授受の橋渡しは、より高度な演算処理機能を備えた、いわゆる親局で行うことも可能である。
【0041】
また、子局10は、MCU12により、制御対象工具41の操作指示を制御するコントローラ21からの指示信号とセンサ13からの入力に基づいて、複数の工程を順次処理するものとなっているので、様々な内容の使用指示表示を行わせることが可能となる。なお、制御対象工具41の操作指示は、公知のコントローラ21で行われることになるので、製品に関する専門的知識を持たない者でも計測およびレンチなどの工具を適切に使用することが可能となる点は、従来と同様である。
【0042】
指示表示部14の表示内容は、指示表示部14のLEDと同じものが配置された確認用表示板40でも、遠隔場所で表示されることになっている。この確認用表示板40は、本発明の確認用表示手段である。指示表示部14の表示内容は、既述のように、子局10の子局入力部18を介し、監視信号として共通データ信号線33に送出されているが、この共通データ信号線33に送出されたデータは、確認用表示板40の子局部42に取り込まれる。そして、子局部42は、その取り込んだデータに基づき、確認用表示板本体43の確認用表示板40へ所定の表示をするための出力を行う。この確認用表示板40では、指示表示部14の表示内容が、子局10とは別に、所定の区画に並べて表示されることになる。そのため、表示が1箇所に集約され、表示内容或いは作業内容の確認をより容易に行うことができる。
【0043】
監視信号及び制御信号は、一連の監視制御信号として、伝送の開始を示すスタート信号に続けて送出されるものとなっている。そして、監視制御信号を構成する信号にはアドレスが付与され、各子局10及び子局部22、42はこのアドレスを基に自局に対応するデータを抽出している。その伝送方式の概略を説明すると、まず、仲介局31はその構成として、図示していない発振器(OSC)及びタイミング発生手段を備え、タイミング発生手段は、発振器の出力する発振出力に基づいて、所定長さのスタート信号と、所定の周期のクロックCKに同期した所定のタイミング信号を発生する。そして、仲介局31と子局10及び子局部22、42とで授受される監視信号(共通データ信号線33に子局10から送出される信号)及び制御信号(共通データ信号線33から子局10へ取り込まれる信号)は、一連の監視制御信号として、伝送の開始を示すスタート信号に続けて送出されている。そこで、子局10及び子局部22、42は、スタート信号及び監視制御信号を構成するクロック信号に基づき、スタート信号を起点とし、クロック信号により順次アドレスカウンタを更新して伝送同期を行うことで、アドレスを基に自局に対応するデータを抽出することができる。
【0044】
このデータ伝送方式のデータ信号におけるアドレスの割付は、所定の制御対象工具41に対するアドレスの先頭の値をnとすると、アドレスn、n+1、及びn+2はコントローラ21からの指示信号と、アドレスn+3、n+4、n+5は指示表示部14の表示状態を示す表示内容信号と、アドレスn+6はセンサ信号と、アドレスn+7、n+8、n+9及びn+10は制御対象工具41の計測信号を変換したデジタル信号となっている。より具体的には、所定の制御対象工具41に対するアドレスの先頭の値を0とすると、計測指示信号を0、OK信号を1、NG信号を2に割付けている。また、表示内容信号については、青LEDを3、緑LEDを4、赤LEDを5に割付けている。更に、センサ信号を6に、計測信号を変換したデジタル信号を7から10に割り付けている。
【0045】
各アドレスにおける信号値の変化を、図4及び図5を参照しながら、子局10の上記処理に沿って説明する。まず、図4において説明する。計測指示有りの判断によりt1のタイミングで青LEDが点滅する。次に計測者が制御対象工具41を取出すと、受光素子16のセンサ信号はOFFからONとなり、制御対象工具41が取出されたと検知して、t2のタイミングで青LEDが点滅から点灯に切り替わる。次に計測者が制御対象工具41で計測を開始し、計測データが完了すると、コントローラ21は所定のデータに比べて適正値ならOK信号を、t3のタイミングで子局10に伝える。同時に子局10の青LEDが消灯し、緑LEDが点灯する。計測者が制御対象工具41を戻すと、受光素子16のセンサ信号はONからOFFとなり、制御対象工具41が戻されたと検知して、緑LEDがt4のタイミングで消灯する。
次に図5について説明する。計測指示有りの判断によりt1のタイミングで青LEDが点滅する。次に計測者が制御対象工具41を取出すと、受光素子16のセンサ信号はOFFからONとなり、制御対象工具41が取出されたと検知して、t2のタイミングで青LEDが点滅から点灯に切り替わる。次に計測者が制御対象工具41で計測を開始し、計測データが完了すると、コントローラ21は所定のデータに比べて不適正値ならNG信号を、t3のタイミングで子局10に伝える。同時に子局10の青LEDが消灯し、赤LEDが点灯する。計測者が制御対象工具41を戻すと、受光素子16のセンサ信号はONからOFFとなり、制御対象工具41が戻されたと検知して、赤LEDがt4のタイミング消灯する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る工具管理システムが採用された組立装置の構成を示す図である。
【図2】子局と制御装置の構成を示すブロック図である。
【図3】子局の機能を処理の流れに沿って示す図である。
【図4】制御対象工具が適切に使用された場合のデータ信号の推移をアドレス毎に示すタイムチャート図である。
【図5】制御対象工具が適切に使用されなかった場合のデータ信号の推移をアドレス毎に示すタイムチャート図である。
【符号の説明】
【0047】
10 子局
12 MCU
13 センサ
13a 発光部
13b 受光部
14 指示表示部
15 発光素子
16 受光素子
17、24、25 子局出力部
18、19、23 子局入力部
20 制御装置
21 コントローラ
22、42 子局部
31 仲介局
33 共通データ信号線
40 確認用表示板
41 制御対象工具
43 確認用表示板本体
44 A/D変換器
50 ワゴン台車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通データ信号線で接続された複数の子局を備え、
前記子局は、制御対象工具に関する情報表示手段と、前記制御対象工具を検知するセンサと、前記情報表示手段への信号出力を行う判断装置を有し、
前記判断装置には、前記情報表示手段に関する複数の処理工程が記憶され、
前記複数の処理工程が、前記制御対象工具への指示情報を制御する制御装置からの指示信号と前記センサからの入力に基づいて順次処理されることを特徴とする工具管理システム。
【請求項2】
前記情報表示手段の表示内容と同じ内容の表示を、所定の区画に並べて表示する確認用表示手段を備える請求項1に記載の工具管理システム。
【請求項3】
前記子局から前記共通データ信号線へ伝送された監視信号から監視データを抽出し制御信号として前記共通データ信号線に送出する仲介局を備え、前記子局は前記共通データ信号線上の前記制御信号から自局アドレスに該当する制御データを取り込む請求項1又は2に記載の工具管理システム。
【請求項4】
前記監視信号及び前記制御信号は、一連の監視制御信号として、伝送の開始を示すスタート信号に続けて送出され、前記子局は、前記スタート信号及び前記監視制御信号を構成するクロック信号に基づき、前記スタート信号を起点とし、前記クロック信号により順次アドレスカウンタを更新して伝送同期する請求項3に記載の工具管理システム。
【請求項5】
前記センサは、発光素子を有する発光部と、受光素子を有する受光部を備え、前記発光部又は前記受光部のいずれかに前記判断装置が設けられ、前記受光素子は前記受光部における前記発光部と向かい合う面の所定の範囲に分散して配置され、前記発光素子から前記受光素子が受ける光量の変化に応じた信号が、前記判断装置に入力される請求項1〜4のいずれかに記載の工具管理システム。
【請求項6】
前記情報表示手段の表示が、単色又は複数の色の点灯及び/又は点滅である請求項1〜5のいずれかに記載の工具管理システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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