説明

工具袋

【課題】 この発明は、工具袋の強度を増強させると共に、工具袋の強度低下を使用者が目視できるようにすることを目的としている。
【解決手段】
筒状袋の外側壁及び底壁へ二本のベルトの両端部を等間隔に設置すると共に、前記筒状袋の内底上へ底板を収容し、前記二本のベルトは、筒状袋の上部及び底部で交差させたことを特徴とする工具袋により上記目的を達成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工具袋に関し、特に土木、建築、電気工事、配管その他の工事において、高所作業の際に必要な工具又は器具を吊り上げ、又は吊り下げる際に使用する工具袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筒状袋の口部に吊紐の両端を縛着(固着)した工具袋(通称「バケツ」)が使用されている。この工具袋は、直径200mm〜320mm、高さ300mm〜1500mmであって、収容するのはスパナ、レンチ、ハンマーなどの工具その他の部品(単管、ジョイント部品など)であって、使用可能な重量は35kg〜80kgを想定しており、破断荷重は7.3N〜16.75Nとされている。そこで、ベルトが切れたり、袋が破れたりしないように前記破断荷重を念頭において強度の対処がされている。
【0003】
前記工具袋は、従来一本のベルトによる吊り下げ構造であるから、ベルトの強度が第一の留意点であるが、安全性を考慮すれば前記ベルトの他に、ベルトと袋の取付部、筒状部、袋の底部などについて強度上の配慮が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−36790号公報
【特許文献2】特開2008−174271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来知られている工具袋は、ベルト一本に全重量を負担させているから(特許文献1、2)、ベルトに故障が生じると直ちに危険が生じるおそれがあった。また、工具袋の底部については配慮されていなかったので、工具類の尖端が当たり、かつ重力により工具類が工具袋の底を突き破るおそれがあった。
【0006】
また、工具袋の底部は他物と接触しやすく、摩耗しやすいにも関わらず、摩耗対策がされていなかった。
【0007】
また、工具袋は高所へ吊り上げ又は高所から吊り下げるために、使用の都度重力を受け、重量より大きい力が急速に掛かるおそれがあるが、対策がとられていなかった。
【0008】
さらに、工具袋は、工事現場で連続的かつ過酷な条件下で使用されるので、積載許容量以上の工具類が詰め込まれることが予測され、かつ吊り上げ又は吊り下げ時に急速な速度変化が生じるが何等の措置がされていない問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、次のようにして前記問題点を解決した。即ち、従来はベルト一本が普通であったが、これをベルト二本にして吊り下げ、吊り上げ時の対応強度を2倍にすると共に、ベルト二本を何れも工具袋の底部まで廻すことにより、ベルト二本で全重量を支持させた。
【0010】
また、筒状袋の内底部に補強板(例えば金属薄板)を収容し、補強板の固線に立ち上がり線を設けて補強したので、工具などの尖端部が底板へ強く当接し、又は工具袋が横に引きずられても底板が破損するおそれを未然に防止した。
【0011】
さらに、ベルト二本は共に複数枚の異色ベルトを重ね合わせる構成にし、表面のベルトが部分的に摩損すると異色が表れて、ベルトの使用限度を自動的に告知するような構成を採用した。
【0012】
また、筒状袋の口部及び底周部はそれぞれ二重縫着により補強したので、該部が二重の強度になると共に、磨り減っても本来の強度が低下しないように配慮した。
【0013】
また、底部下面には4個の突起を配置して、載置時の支持突起とし、袋本体の底面と床面などとの接触を防止した。
【0014】
即ち、この発明は、筒状袋の外側壁及び底壁へ二本のベルトの両端部を等間隔に設置すると共に、前記筒状袋の内底上へ底板を収容し、前記二本のベルトは、筒状袋の上部及び底部で交差させたことを特徴とする工具袋である。
【0015】
また、筒状袋の外側壁及び底壁へ二本のベルトの両端部を等間隔に設置すると共に、前記筒状袋の内底上へ底板を収容し、前記筒状袋の口縁部へ設置し、前記二本のベルトは、筒状袋の上部及び底部で交差させたことを特徴とする工具袋である。
【0016】
また、筒状袋の外側壁及び底壁へ二本のベルトの両端部を等間隔に設置すると共に、前記筒状袋の内底上へ底板を収容し、前記二本のベルトは、筒状袋の上部及び底部で交差させ、前記底部下面へ4個の合成樹脂突部を等間隔に設けたことを特徴とする工具袋である。
【0017】
また、筒状袋の外側壁及び底壁へ二本のベルトの両端部を等間隔にすると共に、前記筒状袋の内底上へ底板を収容し、前記二本のベルトは、筒状袋の上部及び底部で交差させ、前記ベルトは複数層とし、外層と内層は異色としたことを特徴とする工具袋である。
【0018】
また、筒状袋の外側壁及び底壁へ二本のベルトの両端部を等間隔にすると共に、前記筒状袋の内底上へ底板を収容し、前記筒状袋の口縁部へ、前記二本のベルトは、筒状袋の上部及び底部で交差させ、前記底部下面へ4個の合成樹脂突部を等間隔に設け、前記ベルトは複数層とし、外層と内層は異色としたことを特徴とする工具袋である。
【0019】
また、ベルトは、異色の三層又は四層とし、表裏層と中層は異なる色彩とした。
【0020】
また、底板は周縁部を30度〜90度立ち上がらせた金属板又は合成樹脂板とした。また、ベルトには、金属線を内装し補強することもできる。
【0021】
この発明によれば、ベルト二本の両端をそれぞれ筒状袋の外側壁及び底壁に固定し、筒状袋を吊り下げると安定性がよく、かつ二本のベルトで全重量を支えるので、吊下荷重に対するバランスがよくなる。
【0022】
また、底板によって、工具袋の底に掛かる外力を受け止めると共に、工具などによる底板の損傷を防止することができる。
【0023】
更に、ベルトの損傷によって工具袋の継続使用の可否を検知できるので、安全使用を見込むことができる。
【0024】
前記における底板周縁部の立ち上がり角度は30度〜90度であって、好ましくは60度〜90度である。従って、工具端が底板外へ逸脱するおそれを未然に防止することができる。
【発明の効果】
【0025】
この発明によれば、二本の吊りベルトを用いたので、従来の一本の吊りベルトの2倍以上の強度を確保すると共に、安定性を増加させる効果がある。従って内容物の重量が予定以上の重量(仮に2倍近く)になった場合にも十分耐えることができる。
【0026】
また、底板を収容して二重底としたので、工具袋の底部に工具が刺さって穿孔するおそれを未然に防止できる効果がある。
【0027】
次に、ベルトを異色の複数層にしたので、ベルトの摩損が速やかに発見され、使用限度を即知させる効果がある。
【0028】
また、工具袋の口縁部及び底縁部を二重壁としたので、摩損しやすい筒縁部の強度が2倍以上になる効果がある。
【0029】
さらに、底部へ突起を設けたので、底部下面と床面などの接触が阻止され、筒状袋の底部下面の摩耗を未然に防止できる効果がある。
【0030】
前記各構造の付加により筒状袋の使用可能期間を飛躍的に増大(10倍〜100倍)させる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】(a)この発明の実施例の斜視図、(b)同じくベルトを省略した平面図、(c)同じく底面図。
【図2】(a)同じく一部を省略した断面拡大図、(b)同じくベルトの一部を省略し、拡大した説明図、(c)同じくベルトの一部摩損を示す拡大断面図、(d)同じくベルトにピアノ線を挿通した状態を示す一部断面拡大図、(e)同じくベルトの幅方向の一部断面拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下添付図面を参照して、本へ発明の好ましい実施形態を説明する。
【実施例1】
【0033】
この発明の工具袋を以下のように構成する。強靱な織布よりなる筒体1の上部口縁に、皮革を被冠してなる環状の上部の口縁部2を連設し、該口縁部2を皮革条2aで覆い、筒体1の下部口縁に同質の織布よりなる下部の口縁部3を連設すると共に、円形の底部4の周縁部を縫着する。
【0034】
底部4の内側には、周縁部に立ち上がり縁5を設けた底板6を設置し(図2)、底部4の下面に床面などと当接する4個の突部7、7を均等に配置して固定する。底板6は、金属板又は合成樹脂板とするが、他の材質も使用できる。
【0035】
筒体1の側面には、二本のベルト8、8を均等間隔で配置し、それぞれ上下部9、9で縫着固定すると共に、長手方向の両縁部を縫着する(図1)。
【0036】
二本のベルト8、8は底部4の下面で十字状に配置され、底部4の扇形の露出部へ前記突部7、7が固定してある。前記ベルト8、8の上部は筒体1の口部上へ突出して交差部10を形成し、交差部10の各ベルト8a、8aは、折り曲げて幅を小さくし、フックなどが掛けやすくしてある。前記によりこの発明の工具袋15を構成した。
【0037】
ベルト8、8は、強靱な繊維よりなる織布のベルト8a、8b、8cを積層して構成され、中間のベルト8bは外側のベルト8a、8cと異色にしてある。例えば、ベルト8a、8cを黒色とし、ベルト8bを赤色にしてあるので、外側のベルト8a又は8cが摩損すると中間のベルト8bの赤色が見えるようにしてある。そこで、赤色が見えれば、使用中止と判断することができるので、新しい工具袋と取り換えて使用することにより、不慮の事故を未然に防止することができる。前記工具袋の側壁下部は破損しやすいので補強してある。
【0038】
前記二本のベルトは、全長に亘って同質に作ってあるので、何処かが弱体化しても危険を直ちに知ることができる。従って、バンドの破断による事故を未然に防止することができる。また、ベルト織布の積層数に限定はない。
【0039】
工具袋15は、二本のベルトを底板下にも交差して均等に配置したので、工具袋15の重量は悉く二本のベルトに掛かることになる。そこで、二本のベルトの引張強さを、最大収容荷重が落下停止時のショックに耐え得る強度にしておくことにより、如何なる使用方法の場合にも安全性を確保することができる。
【0040】
また、ベルトの摩耗を目視できるようにしてあるので、使用者が危険性を直接察知して工具袋の取り換えをすることができる。
【実施例2】
【0041】
この発明の他の実施例を図2(d)、(e)に基づいて説明する。ベルト8を構成する織布8a、8bの間又は8b、8cの間にピアノ線14、14を挿通すれば、ベルト8の引張強度を飛躍的に向上させることができる。引張強度を勘案してピアノ線14、14の直径を決めれば、ベルトに関し確実に求める強度を得ることができる。
【0042】
前記実施例は、ベルト内へ二本のピアノ線を挿通したが、金属細線を織布中へ織り込んでも前記と同様にベルトの耐力を著しく増強させることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 筒体
2 上部の口縁部
3 下部の口縁部
4 底部
6 底板
7 突部
8 ベルト
14 ピアノ線
15 工具袋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状袋の外側壁及び底壁へ二本のベルトの両端部を等間隔に固定すると共に、前記筒状袋の内底上へ底板を収容し、前記二本のベルトは、筒状袋の上部及び底部で交差させたことを特徴とする工具袋。
【請求項2】
筒状袋の外側壁及び底壁へ二本のベルトの両端部を等間隔に固定すると共に、前記筒状袋の内底上へ底板を収容し、前記筒状袋の口縁部を皮革で覆い、前記二本のベルトは、筒状袋の上部及び底部で交差させたことを特徴とする工具袋。
【請求項3】
筒状袋の外側壁及び底壁へ二本のベルトの両端部を等間隔に固定すると共に、前記筒状袋の内底上へ底板を収容し、前記二本のベルトは、筒状袋の上部及び底部で交差させ、前記底部下面へ4個の突部を等間隔に設けたことを特徴とする工具袋。
【請求項4】
筒状袋の外側壁及び底壁へ二本のベルトの両端部を等間隔に固定すると共に、前記筒状袋の内底上へ底板を収容し、前記二本のベルトは、筒状袋の上部及び底部で交差させ、前記ベルトは複数層とし、外層と内層は異色としたことを特徴とする工具袋。
【請求項5】
筒状袋の外側壁及び底壁へ二本のベルトの両端部を等間隔に固定すると共に、前記筒状袋の内底上へ底板を収容し、前記筒状袋の口縁部へ、前記二本のベルトは、筒状袋の上部及び底部で交差させ、前記底部下面へ4個の突部を等間隔に設け、前記ベルトは複数層とし、外層と内層は異色としたことを特徴とする工具袋。
【請求項6】
ベルトは、異色の三層とし、表裏層と中層は異なる採色としたことを特徴とする請求項1記載の工具袋。
【請求項7】
底板は周縁部を30度〜90度立ち上がらせた金属板又は合成樹脂板としたことを特徴とする請求項1記載の工具袋。
【請求項8】
ベルトに、金属線を内装したことを特徴とする請求項1記載の工具袋。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−111680(P2013−111680A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258849(P2011−258849)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(506042047)大同通商株式会社 (6)
【Fターム(参考)】