説明

工業化住宅の設計支援方法及び型式認定申請の支援方法

【課題】型式適合認定を取得することを前提としつつ邸別の最適化設計を容易に行う。
【解決手段】工業化住宅の設計を支援する方法であって、柱、梁及び耐力フレームを用いて三次元の架構体を設計する工程a、前記架構体を、垂直構面毎に二次元の垂直フレーム体に分解する工程b、各垂直フレーム体を、耐力フレームが配された1スパンフレームと、耐力フレームが配されていない1スパンの単純梁とに分解する工程c、全ての1スパンフレームについて、1スパンフレーム内に含まれる任意の柱に、単位水平荷重を作用させたときの各柱に作用する軸力を応力解析により計算した単位水平荷重−軸力テーブルを、前記水平荷重位置を変化させた複数の荷重位置について作成する工程d及び前記単位水平荷重−軸力テーブルを用いて、1スパンフレームの柱に作用する軸力を計算し、柱及び/又は梁の強度を確認又は再設計する工程eを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型式適合認定を取得することを前提としつつ邸別の最適化設計を容易に行うことができる工業化住宅の設計支援方法及びそれを用いた型式認定申請の支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
型式適合認定制度は、住宅を安定供給するために、工場で生産された高品質な住宅を認定する制度として発足したものである。即ち、型式適合認定制度では、国が予め一定の建築基準に適合することを認定した規格(ルール)に従った建築物は、認定に該当する建築基準に適合するとみなし、個々の建築確認申請・検査において申請図書の軽減等により申請者の負担が軽減される。前記規格の例としては、例えば、次のようなものがある。
イ)耐力壁(耐力フレーム)の配設位置は、柱際に限定する。
ロ)スパンの最大は6P以下とし、6Pに隣接するスパンは4P以下とする。
ハ)G3断面の4P床梁にかかる小梁は、〜P以下とする。
ニ)屋上緑化がある場合は、水平時の層間変形角を1/150radとする。
【0003】
一方、型式適合認定では、個々の建築物毎に応力解析をして安全性を確認することは認められていない。このため、前記規格(ルール)のみに依存すると、邸別に見た場合、柱や梁などの部材が過剰設計になる場合があり、住宅価格の高騰を招きやすいという問題があった。また、一つの建築物システム毎に型式認定用の多数のルールを定める必要があるため、型式認定申請には、多くの工数及びコストが必要になる。さらに、型式認定制度は、規格(ルール)による運用となるため、個々の建築物の安全性について、構造計算の過程が後から確認しづらいという問題もあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、型式適合認定の取得を前提とした工業化住宅の最適設計を支援しうる工業化住宅の設計支援方法及びそれを用いた型式認定申請の支援方法を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のうち請求項1記載の発明は、柱と梁とがピン接合された垂直構面に耐力フレームが配された架構体を有する工業化住宅の設計を支援する方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする工業化住宅の設計支援方法である。
a)前記柱、前記梁及び耐力フレームを用いて三次元の架構体を設計する工程
b)前記架構体を、前記垂直構面毎に二次元の垂直フレーム体に分解する工程
c)各垂直フレーム体を、前記耐力フレームが配された1スパンフレームと、前記耐力フレームが配されていない1スパンの単純梁とに分解する工程
d)全ての1スパンフレームについて、1スパンフレーム内に含まれる任意の柱に、単位水平荷重を作用させたときの各柱に作用する軸力を応力解析により計算して、荷重値、荷重位置及び柱の軸力値の関係を表す単位水平荷重−軸力テーブルを、前記水平荷重位置を変化させた複数の荷重位置について作成する工程
e)前記単位水平荷重−軸力テーブルを用いて、前記1スパンフレームの柱に作用する軸力を計算し、柱及び/又は梁の強度を確認又は再設計する工程
【0006】
また請求項2記載の発明は、前記複数の荷重位置は、柱と梁との接合位置である請求項1記載の工業化住宅の設計支援方法である。
【0007】
また請求項3記載の発明は、前記工程dは、全ての1スパンフレームについて、1スパンフレーム内に含まれる任意の梁に、単位垂直荷重を作用させたときの各柱に作用する軸力を応力解析により計算して、荷重値、荷重位置及び柱の軸力値の関係を表す単位垂直荷重−軸力テーブルを、前記垂直荷重位置を変化させた複数の荷重位置について作成する工程をさらに含み、前記工程eは、前記単位水平荷重−軸力テーブル及び前記単位垂直荷重−軸力テーブルを用いる請求項1又は2記載の工業化住宅の設計支援方法である。
【0008】
また請求項4記載の発明は、前記架構体は、片持ち梁を含み、前記工程dは、前記片持ち梁を有する1スパンフレームについて、前記片持ち梁の支点に、単位曲げ荷重を作用させたときの各柱に作用する軸力を応力解析により計算して、荷重値、荷重位置及び柱の軸力値の関係を表す単位曲げ荷重−軸力テーブルを作成する工程をさらに含み、前記工程eは、前記単位水平荷重−軸力テーブル及び前記単位モーメント荷重−軸力テーブルを用いる請求項1記載の工業化住宅の設計支援方法である。
【0009】
また請求項5記載の発明は、前記架構体は、片持ち梁を含み、前記工程dは、前記片持ち梁を有する1スパンフレームについて、前記片持ち梁の支点に、単位曲げ荷重を作用させたときの各柱に作用する軸力を応力解析により計算して、荷重値、荷重位置及び柱の軸力値の関係を表す単位曲げ荷重−軸力テーブルを作成する工程をさらに含み、前記工程eは、前記単位水平荷重−軸力テーブル、前記単位垂直荷重−軸力テーブル及び前記単位モーメント荷重−軸力テーブルを用いる請求項3記載の工業化住宅の設計支援方法である。
【0010】
また請求項6記載の発明は、前記工程eは、前記架構体に、任意の水平荷重及び垂直荷重を負荷させたときの各1スパンフレームに作用する実荷重状態を決定する工程、実荷重状態の1スパンフレームを、一つの垂直荷重又は一つの水平荷重のみが作用する単一荷重状態の1スパンフレームに分解する工程、前記各単一荷重状態の1スパンフレームの各柱の軸力を計算する工程、及び各単一荷重状態の1スパンフレームの各柱の軸力を足し合わせることにより、前記実荷重状態における1スパンフレームの各柱に作用する軸力を計算する工程を含む請求項1乃至5のいずれかに記載の工業化住宅の設計支援方法である。
【0011】
また請求項7記載の発明は、前記工程eにおいて、柱が、直交する少なくとも2つの1スパンフレームで互いに共有されている第1の柱である場合、各1スパンフレームで得られた第1の柱の軸力を足し合わせて第1の柱に作用する軸力を計算する請求項6に記載の工業化住宅の設計支援方法である。
【0012】
また請求項8記載の発明は、前記工程eにおいて、柱が、少なくとも1つの1スパンフレームと、少なくとも一つの単純梁の一端側とで互いに共有されている第2の柱である場合、前記1スパンフレームで得られた第2の柱の軸力と、前記単純梁の前記一端側の支点反力とを足し合わせて第2の柱に作用する軸力を計算する請求項6に記載の工業化住宅の設計支援方法である。
【0013】
また請求項9記載の発明は、前記工程eは、前記各柱の軸力が得られた実荷重状態における1スパンフレームの梁を、前記柱の軸力を受ける単純梁に分解する工程、及び前記単純梁の応力を計算する工程を含む請求項6ないし8のいずれかに記載の工業化住宅の設計支援方法である。
【0014】
また請求項10記載の発明は、柱と梁とがピン接合された垂直構面に耐力フレームが配された架構体を有する工業化住宅の設計を支援する方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする工業化住宅の設計支援方法である。
a)前記柱、前記梁及び耐力フレームを用いて三次元の架構体を設計する工程
b)前記架構体を、前記垂直構面毎に二次元の垂直フレーム体に分解する工程
c)各垂直フレーム体を、前記耐力フレームが配された1スパンフレームと、前記耐力フレームが配されていない1スパンの単純梁とに分解する工程
d’)全ての1スパンフレームについて、1スパンフレーム内に含まれる任意の柱に、単位水平荷重を作用させたときの各柱に作用する軸力を応力解析により計算して、該1スパンフレームの剛性に関するパラメータが記載された剛性テーブルを、前記水平荷重位置を変化させた複数の荷重位置について作成する工程
e’)前記架構体に、任意の水平荷重及び垂直荷重を負荷させたときの各1スパンフレームに作用する実荷重状態を決定するとともに、前記剛性テーブルを用いて、前記1スパンフレームの剛性を評価して少なくとも前記1スパンフレームに配置された耐力フレームの枚数を確認又は再設計する工程
【0015】
また請求項11記載の発明は、柱と梁とがピン接合された垂直構面に耐力フレームが配された架構体を有する工業化住宅の型式認定申請を支援する方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする工業化住宅の型式認定申請の支援方法である。
b)前記架構体を、前記各垂直構面毎に二次元の垂直フレーム体に分解する工程
c)各垂直フレーム体を、前記耐力フレームが配された1スパンフレームと、前記耐力フレームが配されていない1スパンの単純梁とに分解する工程
d)全ての1スパンフレームについて、1スパンフレーム内に含まれる任意の柱に、単位水平荷重を作用させたときの各柱に作用する軸力を応力解析により計算して、荷重値、荷重位置及び柱の軸力値の関係を表す単位水平荷重−軸力テーブルを、前記水平荷重位置を変化させた全ての荷重位置について作成する工程
f)前記単位水平荷重−軸力テーブルを、前記1スパンフレームの各柱及び/又は梁が構造上の安全性を有することを説明する資料として提出する工程
【0016】
また請求項12記載の発明は、前記工程dは、全ての1スパンフレームについて、1スパンフレーム内に含まれる任意の梁に、単位垂直荷重を作用させたときの各柱に作用する軸力を応力解析により計算して、荷重値、荷重位置及び柱の軸力値の関係を表す単位垂直荷重−軸力テーブルを、前記垂直荷重位置を変化させた複数の荷重位置について作成する工程を含み、前記工程fは、さらに前記単位垂直荷重−軸力テーブルを、前記1スパンフレームの各柱及び/又は梁が構造上の安全性を有することを説明する資料として提出することを特徴とする請求項11記載の工業化住宅の型式認定申請の支援方法である。
【0017】
また請求項13記載の発明は、前記架構体は、片持ち梁を含み、前記工程dは、前記片持ち梁を有する1スパンフレームについて、前記片持ち梁の支点に、単位曲げ荷重を作用させたときの各柱に作用する軸力を応力解析により計算して、荷重値、荷重位置及び柱の軸力値の関係を表す単位曲げ荷重−軸力テーブルを作成する工程をさらに含み、前記工程fは、さらに前記単位曲げ荷重−軸力テーブルを、前記1スパンフレームの各柱及び/又は梁が構造上の安全性を有することを説明する資料として提出することを特徴とする請求項11又は12記載の工業化住宅の型式認定申請の支援方法である。
【0018】
また請求項14記載の発明は、柱と梁とがピン接合された垂直構面に耐力フレームが配された架構体を有する工業化住宅の型式認定申請を支援する方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする工業化住宅の型式認定申請の支援方法である。
a)前記柱、前記梁及び耐力フレームを用いて三次元の架構体を設計する工程
b)前記架構体を、前記垂直構面毎に二次元の垂直フレーム体に分解する工程
c)各垂直フレーム体を、前記耐力フレームが配された1スパンフレームと、前記耐力フレームが配されていない1スパンの単純梁とに分解する工程
d’)全ての1スパンフレームについて、1スパンフレーム内に含まれる任意の柱に、単位水平荷重を作用させたときの各柱に作用する軸力を応力解析により計算して、該1スパンフレームの剛性に関するパラメータが記載された剛性テーブルを、前記水平荷重位置を変化させた複数の荷重位置について作成する工程
f)前記剛性テーブルを、前記1スパンフレームの耐力フレームの配置枚数が構造上の安全性を有することを説明する資料として提出する工程
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載された設計支援方法によれば、架構体の設計後、単位水平荷重−軸力テーブルを用いて、柱及び梁の安全性を容易に後から追跡確認することができる。即ち、コンピュータを使用した応力計算でしか解くことができない1スパンフレームに含まれる柱等の軸力を、実荷重と単位水平荷重−軸力テーブルとを用いることにより、応力解析なしに電卓だけで容易に計算できる。従って、架構体の構造上の安全性について、構造計算の過程を後から、応力計算をすることなく設計者自ら容易に確認できるとともに、第三者にも説明することができる。従って、架構体の設計を効率的に支援することができる。
【0020】
また、請求項10に記載された設計支援方法によれば、架構体の設計後、実荷重と剛性テーブルを用いて、1スパンフレームの剛性を評価し、少なくとも1スパンフレームに配置された耐力フレームの枚数を確認又は再設計することができる。即ち、コンピュータを使用した応力計算でしか解くことができない1スパンフレームに含まれる剛性を、実荷重と単位水平荷重−軸力テーブルとを用いることにより、例えば電卓だけで容易に計算できる。従って、耐力フレームの使用枚数の安全性について、構造計算の過程を後から、応力計算をすることなく設計者自ら容易に確認できるとともに、第三者にも説明することができる。従って、架構体の設計を効率的に支援することができる。このような方法は、とりわけ、柱と梁との安全性については規格(ルール)で定める一方、1スパンフレームに配置される耐力フレームの枚数についての安全性の検証について最適化設計を行う型式認定の場合に特に有効である。
【0021】
また、請求項11〜14記載の型式認定申請の支援方法によれば、単位水平荷重−軸力テーブル及び単位垂直荷重−軸力テーブルが、1スパンフレームの柱及び/又は梁が構造上の安全性を有することを説明する資料として型式認定審査機関に提出される。
【0022】
上で述べたように、型式適合認定の審査では、個々の建築物毎に応力解析をして安全性を確認することは認められていない。しかし、上述のような単位水平荷重−軸力テーブルを参照して、各柱の軸力を求めることは許容される。従って、工業化住宅の型式認定申請時の提出図書に、想定される荷重位置についての単位水平荷重−軸力テーブルを含ませることにより、認定のための規格(ルール)が設定されていなくても、審査機関は、実荷重と前記テーブルとを用いて各柱の軸力、即ち、住宅の構造上の安全性を容易に判断することができるというメリットが得られる。また、工業化住宅メーカにあっては、従来、型式認定の取得に際して多くの規格(ルール)を設定しなければならなかったが、上記テーブルを準備することにより、上述の規格作りが不要となり、型式認定申請作業の工数を大幅に削減して邸別の最適部材の引き当て低コストで良質な工業化住宅設計乃至その認定取得を容易に行うことができる。よって、請求項11〜14に係る発明によれば、型式認定申請作業を大幅に能率化しうる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態で使用される架構体の斜視図である。
【図2】(a)はラーメン構造、(b)はピン接合のフレームの模式図である。
【図3】(a)〜(f)は、架構体から抽出された垂直フレーム体の正面図である。
【図4】垂直フレーム体から1スパンフレーム及び単純梁を抽出する例を示す模式図である。
【図5】単位水平荷重−軸力テーブルの一例を示す線図である。
【図6】単位垂直荷重−軸力テーブルの一例を示す線図である。
【図7】単位曲げ荷重−軸力テーブルの一例を示す線図である。
【図8】実荷重状態の1スパンフレームを示す模式図である。
【図9】実荷重状態の1スパンフレームを単一荷重状態の1スパンフレームに分解した例を示す模式図である。
【図10】1スパンフレームの軸力を計算した結果を示す。
【図11】上記1スパンフレームから単純梁を抽出する工程を説明する模式図である。
【図12】1スパンフレーム及び単純梁を重ね合わせて垂直フレーム体の軸力を計算する方法を説明する模式図である。
【図13】複数の1スパンフレームで共有される第2の柱を説明する架構体の斜視図である。
【図14】他の実施形態を示す垂直荷重負荷状態のフレームの模式図である。
【図15】その解法を説明する線図である。
【図16】曲げ荷重負荷状態のフレームの解法を説明する線図である。
【図17】単位水平荷重−軸力テーブルの一例を示す線図である。
【図18】耐力フレームの配置枚数を最適化する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図19】1スパンフレームの耐力フレームの配置枚数の確認を説明する線図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
本発明の工業化住宅の設計支援方法では、図1に示されるように、柱2と梁3とがピン接合された垂直構面に耐力フレーム4が配された架構体5を有する工業化住宅の設計を、好適に支援する。とりわけ、型式認定を取得することを前提としつつ個別の最適化設計を容易に行うことができる工業化住宅の設計を支援する。
【0025】
ここで、型式認定とは、建築基準法の、
イ)型式適合認定、
ロ)型式部材等製造者認証、
ハ)品確法性能表示基準の型式性能認定(構造の安定)、
ニ)品確法認証型式住宅部分等製造者認証(構造の安定)、及び
ホ)施行規則1条の3第1項の認定
を少なくとも含むものとする。以下、本発明の具体的な工程a乃至eが説明される。
【0026】
[工程a]
工程aでは、先ず、柱2、梁3及び耐力フレーム4を用いて三次元の架構体5が設計される。本実施形態の架構体5は、連続する上下階において、柱2の位置が一致するように組まれている。ただし、このような態様に限定されるものではない。
【0027】
架構体5の設計には、例えば設計者がコンピュータ上でCAD等の設計ソフトウエアを用いて行うことができ、かつ、そのデータが該コンピュータに入力、記憶される。なお、本実施形態では、三階建ての工業化住宅の架構体5が一例として示されるが、二階建てでも良く、また四階建て以上でも良い。
【0028】
工程aでは、柱2に関し、その材料、断面形状、長さ及び配設位置が少なくとも決定される。また、梁3に関しても、その材料、断面形状、スパン及び配設位置が少なくとも決定される。これにより、架構体5のシルエットが少なくとも決定できる。また、工業化住宅であるため、柱2及び梁3は、いずれも予め定められた水平モジュール及び垂直モジュールを基準として、その長さ、スパンが決定される。また、柱2及び梁3は、水平サブモジュール及び垂直サブモジュールに従って接合位置が決定される。本実施形態では、各モジュールは、次のように定められる。
水平モジュール:900mm
水平サブモジュール:150mm
垂直モジュール:2400mm
垂直サブモジュール:150mm
【0029】
例えば、柱2の長さは、原則として垂直モジュールの2400mmであるが、垂直サブモジュールの150mmの増減で微調整できる。同様に、梁3の1スパンは、原則として水平モジュールの900mm(=1P)ないしその整数倍となるが、水平サブモジュールの150mmピッチでそのスパンを微調整できる。
【0030】
また、前記柱2と梁3とは、微少角度の回転変位が許容されるピン接合により固着される。具体的には、柱2と梁3とがボルトを用いて連結される。図2(a)に示されるように、柱2と梁3とが剛接合されたラーメン構造の場合、垂直力Fが水平方向で隣り合う梁3aないし3cの一つの梁3aに作用した場合、その右側の図に太線でSFDが示されるように、他の梁3b及び3cにも応力が発生する。これに対して、図2(b)のように、柱2と梁3とがピン接合されたフレームの場合、他の梁3b及び3cには、応力が発生しない。従って、ピン接合の架構体では、個々のフレームをそれぞれ解析することで軸力等を計算できる。本発明では、このようなピン接合の架構体が持っている構造上の技術的特徴を利用している。
【0031】
また、前記耐力フレーム4は、本実施形態では、1ないし2本の柱4aと、該柱4aに接続されかつ互いに逆向きに傾く2本の斜材4b、4bとから構成される。この耐力フレーム4は、上下の梁3間、又は梁3と基礎fとの間の垂直構面に適宜配置され、水平力に対する変形抵抗性を高める。各柱4a及び斜材4bについても、その材料、断面形状、スパン及び配設位置が少なくとも決定される。
【0032】
[工程b]
工程bでは、前記架構体5が、図3(a)〜(f)に示されるように、前記架構体5の柱2が通る各垂直構面X1、X2、X3、Y1、Y2及びY3毎に二次元の垂直フレーム体7に分解される。この工程は、工程aで設計された架構体5のデータを用い、コンピュータと汎用ソフトウエア等を用いて自動的に分解作業を行うことができる。分解された各垂直フレーム体7の構造は、数値データとしてコンピュータに記憶される。
【0033】
[工程c]
工程cでは、図4に一例が示されるように、各垂直フレーム体7が、1スパンフレーム9と、単純梁10とに分解される。本明細書において、1スパンフレーム9とは、耐力フレーム4が配された1スパン(1本の梁の支点間長さ)のフレームとする。また、単純梁10は、一端がピン支点かつ他端が移動支点の梁であり、本実施形態では、耐力フレーム4が接合されていない1スパンかつ1フロアの梁が引き当てられる。
【0034】
図4には、このような工程cの具体例として、図3(d)の「Y1通り」の垂直フレーム体7dを分解した図が示される。該垂直フレーム体7dは、梁3が2本接続された2スパンであるため、これらを梁の接続部で左右に分解することにより、それぞれ1スパンのフレーム体9L、9Rに分解される。左側のフレーム体9Lは、1ないし3階全てに耐力フレーム4が配されているため、このフレーム体9Lからは単純梁を区別できない。従って、左側のフレーム体9Lについては、全体として一つの「1スパンのフレーム」9aとして特定される。
【0035】
他方、分解された右側のフレーム体9Rは、1階部分のみに耐力フレーム4が配されているが、2階及び3階には耐力フレーム4が配されておらず、かつ、この部分の梁3は、両端がピン接合されている。従って、右側のフレーム体9Rは、1階部分をなす一つの1スパンフレーム9bと、2階及び3階部分の2つの単純梁10a、10bとに分解される。
【0036】
そして、図3に示される他の垂直フレーム体7についても同様に分解される。なお、該工程cは、一定のアルゴリズムに従い、前記垂直フレーム体7の各数値データと、コンピュータとを用いることにより、自動的に行うことができる。
【0037】
また、本実施形態の架構体5は、先に述べたように、連続する上下階において、柱2の位置が一致するように組まれているか、又は通し柱が採用される。従って、このような架構体5の構造は、フレームとして把握しやすいため、1スパンフレームに分割しやすく、かつ、その種類数を減じるのに役立つ。
【0038】
[工程d]
工程dでは、工程cで得られた全ての1スパンフレーム9について、図5に示されるような単位水平荷重−軸力テーブルT1が作成される。この単位水平荷重−軸力テーブルT1は、1スパンフレーム9内に含まれる任意の柱2に、単位水平荷重UHを作用させたときの各柱2に作用する軸力を応力解析により計算した結果を示すものである。
【0039】
1スパンフレーム9は、コンピュータによる応力解析を行わないと各柱2の軸力を計算することができない。そこで、工程dでは、予め1スパンフレーム9について、柱2の任意の位置に単位水平荷重UHが作用したときの各柱の軸力が、コンピュータを用いた応力解析によって計算される。そして、その結果は、例えば図5のようなフォーマットの表形式として人間が可読しうる形(この例では紙媒体)で出力される。
【0040】
前記単位水平荷重−軸力テーブルT1には、単位荷重の荷重値(例えば10000N)、荷重位置(図5の左側の略図のように、どの位置に単位水平荷重を作用させたか)及びその場合の各柱の軸力値がそれぞれ表形式で記載される。また、図5の実施形態では、各階の柱2は、左側に位置するものから順番に1、2、3、4と数字で表示される。例えば、3階では、最も左側に設けられる柱2が”1”、その隣の耐力フレーム4の柱4aが”2”、最も右側に設けられた柱2が”3”として表示されている。
【0041】
さらに、図5の実施形態では、柱の軸力が、「上」又は「下」の2つに分けて表示されている。これは、耐力フレーム4の斜材が接続されている位置において、その上側と下側のそれぞれの軸力が異なることに対応させたものである。従って、耐力フレーム4と関係の無い柱については、上下ともに同一の軸力が表示される。さらに、図5の実施形態において、「斜」と記載されているのは、斜材の軸力であり、「上」又は「下」で表示されているのは、上側の斜材、下側の斜材をそれぞれ示している。
【0042】
また、単位水平荷重−軸力テーブルT1は、前記水平荷重UHの位置を変化させた複数の荷重位置について作成される。好ましい一つの例では、単位水平荷重−軸力テーブルT1は、1スパンフレーム9に含まれる全ての柱2について、前記水平荷重UHの位置を垂直サブモジュールピッチ(この例では150mm)で順次変化させた全ての荷重位置について作成される。即ち、図5の単位水平荷重−軸力テーブルT1は、単位水平荷重UHが、3階の最も左側の柱2の上端に作用した例であるが、荷重の作用位置を垂直サブモジュールピッチで順次移動させたそれぞれについて単位水平荷重−軸力テーブルT1が作成されるのが望ましい。これらはコンピュータによって自動的に連続計算させかつ出力することができる。このような単位水平荷重−軸力テーブルT1のセットは、想定される全ての単位水平荷重UHが作用したときの柱の軸力を知ることができる。
【0043】
ただし、上記のように、1スパンフレーム9に含まれる全ての柱2について、前記水平荷重UHの位置を垂直サブモジュールピッチで順次変化させた全ての荷重位置について作成すると、単位水平荷重−軸力テーブルT1は、通常、一つの工業化住宅について、数十万〜数百万通り以上となり、そのボリュームが非常に大きくなる不具合もある。従って、単位水平荷重−軸力テーブルT1は、例えば交通振動、地震及び又は風等の水平力に鑑み、最も代表的な水平荷重が作用する位置、例えば少なくとも柱2と梁3との接合位置にのみ単位水平荷重を作用させて作成されるのが望ましい。
【0044】
また、本実施形態では、単位水平荷重−軸力テーブルT1に加え、全ての1スパンフレーム9について、図6に示されるような単位垂直荷重−軸力テーブルT2が作成される。ただし、このテーブルT2の作成は任意である。単位垂直荷重−軸力テーブルT2は、1スパンフレーム9内に含まれる任意の梁3に、単位垂直荷重UVを作用させたときの各柱2に作用する軸力を応力解析により計算した結果を示すものである。
【0045】
1スパンフレーム9は、電卓での手計算だけで上記荷重状態での各柱2の軸力を計算することができないのは上述の通りである。そこで、予め1スパンフレーム9について、梁3の任意の位置に単位垂直荷重UVが作用したときの各柱2の軸力をコンピュータを用いた応力解析によって計算し、その結果をコンピュータに記憶させるとともに、例えば図6のようなフォーマットの表形式として人間が可読しうる形(この例では紙媒体)で出力される。
【0046】
単位垂直荷重−軸力テーブルT2には、単位荷重の荷重値(例えば10000N)、荷重位置(図6の左側の略図のように、どの位置に単位垂直荷重UVを作用させたかを示すもので、この例では「鉛直3F−1050」と表示されるように、3階の梁の左端から1050mmの位置)及び各柱の軸力値が記載される。なお、単位垂直荷重−軸力テーブルT2の表示方法は、図5で説明した単位水平荷重−軸力テーブルT1の場合と同様であり、ここでの説明は省略する。
【0047】
また、単位垂直荷重−軸力テーブルT2も、単位垂直荷重の作用する位置を異ならせて複数種類作成するのが好ましい。より好ましくは、1スパンフレーム9に含まれる全ての梁3について、垂直荷重位置UVを水平サブモジュールピッチ(この例では150mm)で変化させたそれぞれの荷重位置について作成されるのが望ましい。即ち、図6の単位垂直荷重−軸力テーブルT2は、単位垂直荷重UVが、3階の最も左の柱から1050mmの位置に作用した例であるが、荷重の作用位置を水平サブモジュールピッチで順次移動させたそれぞれについて単位垂直荷重−軸力テーブルT2が作成されるのが好ましい。このようなテーブルT2も、コンピュータによって自動的に連続計算させかつ出力することができる。これにより、単位垂直荷重−軸力テーブルT2を用いて、荷重の負荷が想定される全ての位置に単位垂直荷重UVが作用したときの柱の軸力を知ることができる。
【0048】
なお、単位垂直荷重−軸力テーブルT1の数量を減らしたい場合には、最も代表的な垂直荷重が作用する位置に単位垂直荷重を作用させて作成することも可能である。例えば、ルール化により、重量物である小梁の配設モジュールを水平サブモジュールピッチよりも大きくした設定した場合等にあっては、このような配設モジュールの位置にのみ単位垂直荷重を作用させて作成することも可能である。
【0049】
また、前記架構体5が片持ち梁を有する場合、単位水平荷重−軸力テーブルT1及び単位垂直荷重−軸力テーブルT2に加え、図7に示されるような単位曲げ荷重−軸力テーブルT3が作成されても良い。ただし、このテーブルT3の作成は任意である。この単位曲げ荷重−軸力テーブルT3は、片持ち梁が接合された1スパンフレームについて、片持ち梁の支点に、単位曲げ荷重Umを作用させたときの各柱に作用する軸力を応力解析により計算して、その荷重値、荷重位置及び柱の軸力値の関係を示すものである。
【0050】
1スパンフレーム9は、電卓での手計算だけで上記荷重状態での各柱2の軸力を計算することができない。そこで、予め1スパンフレーム9について、片持ち梁の接合位置に単位曲げ荷重Umが作用したときの各柱の軸力をコンピュータを用いた応力解析によって計算し、その結果をコンピュータに記憶させるとともに、例えば図7のようなフォーマットの表形式として人間が可読しうる形(この例では紙媒体)で出力される。
【0051】
単位曲げ荷重−軸力テーブルT3には、単位曲げ荷重の荷重値(例えば10000N・m)、荷重位置(図7の左側の略図のように、どの位置に単位曲げ荷重Umを作用させたかを示すもので、この例では1階上部の左側の支点に曲げ荷重が負荷されている。なお、単位曲げ荷重−軸力テーブルT3の表示方法は、図5で説明した単位水平荷重−軸力テーブルT1の場合と同様であり、ここでの説明は省略する。
【0052】
[工程e]
次に、工程eでは、少なくとも前記単位水平荷重−軸力テーブルT1を用いて、前記1スパンフレームの各柱2に作用する軸力を計算し、柱及び/又は梁の強度を確認又は再設計する工程がユーザ(人間)によって行われる。この工程eでは、用いられるテーブルの組合せによって、次のように分類される。
(1)3つのテーブルT1、T2及びT3全てを用いる(以下、「工程e1」という)
(2)単位水平荷重−軸力テーブルT1のみを用いる(以下、「工程e2」とする)
(3)単位水平荷重−軸力テーブルT1と単位垂直荷重−軸力テーブルT2とを用いる(以下、「工程e3」とする)
(4)単位水平荷重−軸力テーブルT1と単位曲げ荷重−軸力テーブルT3とを用いる(以下、「工程e4」とする)
以下、各工程の具体的な方法について述べる。
【0053】
[工程e1]
工程e1では、単位水平荷重−軸力テーブルT1、単位垂直荷重−軸力テーブルT2及び単位曲げ荷重−軸力テーブルT3を用いて、前記1スパンフレーム9の各柱2に作用する軸力が計算され、柱2及び/又は梁3の強度の確認又は再設計が行われる。つまり、各テーブルT1、T2及びT3を用いて、工程aで設計された架構体の各1スパンフレーム9の柱2に作用する軸力が計算され、かつ、これに基づき、柱2及び/又は梁3の強度を確認(十分か否か)又は再設計(架構体の変更等)できる。従って、本発明によれば、コンピュータを使用しなくても、架構体5の構造上の安全性を、その設計後に容易に電卓を用いた手計算で確認することができる。
【0054】
即ち、柱2と梁3とがピン接合された架構体5では、隣接するフレームには応力が伝達されないという技術的特性、及び、複数の荷重が同時に作用する実荷重状態は、それらの単一の荷重が個々に作用する単一荷重状態に分解できるという技術的特性を有する。本発明では、このような技術的特性を利用し、架構体5に作用する荷重を、個々の1スパンフレームの単一荷重が作用する単一荷重状態に分解し、それぞれの単一荷重状態の1スパンフレームの柱の軸力を、コンピュータを使用せずに、単位水平荷重−軸力テーブルT1及び単位垂直荷重−軸力テーブルT2を参照して求めることができる。そして、これらを必要に応じて足し合わせることにより、架構体5の各柱2ないし梁3に作用する軸力や応力等を計算でき、その安全性を後からコンピュータによる応力解析なしに確認することができる。なお、片持ち梁については、ピン接合ではなく、回転剛性があるものとして定義される。
【0055】
先ず、前記架構体5に、想定される実水平荷重及び実垂直荷重を負荷したときの各1スパンフレーム9に作用する実荷重状態が決定される。このような実荷重状態は、各建築物の仕様に応じて適宜設定することができる。本実施形態では、図8に示されるように、前記1スパンフレーム9dに、水平荷重F1(15000N)及び垂直荷重F2ないしF4(それぞれ10000N、20000N及び25000N)が図示の位置に作用する実荷重状態が一例として設定されている。図示していないが、他の1スパンフレーム9にも同様に実荷重状態が設定される。
【0056】
次に、図9に示されるように、水平荷重F1及び垂直荷重F2ないしF4の4つの荷重が作用する前記実荷重状態Paにおける各柱2の軸力は、個々の水平荷重及び垂直荷重が作用した単一荷重状態における各柱2の軸力をそれぞれ足し合わせたものに等しくなる。本実施形態では、この特性を利用し、図9のイコールの右側に示されるように、実荷重状態Paの1スパンフレーム9が、一つの実垂直荷重又は一つの実水平荷重のみが作用するように複数の単一荷重状態P1ないしP4の1スパンフレーム9に分解される。即ち、水平荷重15000Nのみが作用する単一荷重状態P1、及び垂直荷重10000N、20000N及び25000Nのみがそれぞれ作用する単一荷重状態P2、P3及びP4に分解される。
【0057】
次に、前記単位水平荷重−軸力テーブルT1及び前記単位垂直荷重−軸力テーブルT2に基づいて、各単一荷重状態P1〜P4の1スパンフレーム9の各柱の軸力が計算される。
【0058】
例えば、図9の単一荷重状態P1は、図5の単位水平荷重−軸力テーブルT1の単位水平荷重UHと荷重位置が同一かつその1.5倍の水平荷重が作用した状態に相当する。従って、図5の単位水平荷重−軸力テーブルT1の各柱の軸力をそれぞれ所定倍(この例では1.5倍)することにより、単一荷重状態P1での各柱2の軸力を電卓等を使用して(応力解析なしで)簡単な手計算によって得ることができる。従って、荷重位置が異なる種々のテーブルT1を準備することにより、これらのテーブルT1だけを用いて柱2の軸力を計算することができる。
【0059】
同様に、他の単一荷重状態P2〜P4についても、該当する荷重位置の単位水平荷重−軸力テーブルT1及び/又は単位垂直荷重−軸力テーブルT2を参照して、各柱2の軸力を同様に計算することができる。
【0060】
以上のような工程により、全ての1スパンフレーム9の単一荷重状態P1〜P4での各柱2の軸力が、コンピュータによる応力解析を用いることなく電卓を用いた手計算で求められる。そして、上記で得られた各単一荷重状態P1〜P4の1スパンフレーム9の各柱の軸力をそれぞれ柱毎に足し合わせることにより、図10に示されるように、前記実荷重状態における各1スパンフレーム9の各柱2に作用する軸力t1〜t10が、コンピュータによる応力解析なしで求めることができる。
【0061】
なお、この実施形態の架構体5は、片持ち梁が設けられていないため、単位曲げ荷重−軸力テーブルT3は使用していない。しかしながら、架構体5にバルコニー等の片持ち梁が設けられている場合には、前記単位曲げ荷重−軸力テーブルT3を用いて、上記と同じ手順で各柱の軸力を計算することができるのは言うまでもない。
【0062】
次に、各柱2の軸力が計算されると、1スパンフレーム9を単純梁に分解する。即ち、この作業は、コンピュータに処理させても良いし、ユーザ(人間)が手作業で行っても良い。図11に示されるように、3つの梁3を含む1スパンフレーム9dが、3つの単純梁10に分解される。また、各単純梁10は、1スパンフレーム9の各柱2の軸力を受ける。ただし、支点に作用する柱の軸力は無視できる。
【0063】
以上の手順を経ることにより、架構体5の全ての梁3は、単純梁10として把握することができる。そして、このような単純梁10は、下表1に示されるように、公知の公式を使用し、例えば電卓のみを用いて支点反力、曲げ、回転角及びたわみなどを簡単に計算することができる。また、各梁3の応力を計算し、この応力を許容値として満足する(この応力値よりも小さい応力しか発生しない)か否かを後から確認することができる。さらに、必要に応じて、前記応力を許容値として、必要最小断面の梁材を引き当てることにより、梁の過剰設計を防止し、最適設計を行うことができる。これらの設計後の確認や最適設計が、いずれもコンピュータを使用せずに行うことができる。
【0064】
【表1】

【0065】
また、柱2についても同様に強度の確認を行うことができる。例えば、1スパンフレーム9と単純梁10とで共有される柱(以下、このような柱を「第1の柱」という。)2Aについては、図12に示されるように、分解された柱軸力及び支点反力を合算して実際の柱軸力を計算することができる(例えばt8+R1、t9+R1+R3等)。
【0066】
さらに、図13に示されるように、例えば交差する1スパンフレーム9、9同士で共有される柱(以下、このような柱を「第2の柱」という。)2Bについては、分解して得られた柱2の軸力を合算して実際の軸力が計算される。これにより、架構体5の全ての柱2の軸力をも計算することができる。したがって、これらの軸力と、各柱2の断面形状、及び最良から、柱2の必要最小断面を計算することができる。
【0067】
以上のような工程を行うことにより、複雑な荷重が作用する実荷重状態での1スパンフレームの柱2及び梁3に作用する軸力等を、単位水平荷重−軸力テーブルT1及び単位垂直荷重−軸力テーブルT2(必要により、単位曲げ荷重−軸力テーブルT3)を参照することで、コンピュータによる応力解析を用いることなく手計算で求めることができる。従って、架構体5の設計後、計算された応力等を許容値とし、柱2及び梁3に、これを満足する必要最小断面を引き当て、住宅の最適設計(再設計)を行うことができる。これは、柱2及び梁3の過剰設計を防止するのに役立つ。
【0068】
また、架構体5の設計後、柱2が、前記許容値を満たすことを、前記各テーブルT1乃至T3(これ自体は応力解析をベースに作られているが)を参照して追跡し、第三者に簡単に説明することができる。従って、当該架構体5を有する工業化住宅の型式認定申請に際して、前記各テーブルT1乃至T3を認定審査機関に提出することにより、規格(ルール)なしでも各1スパンフレーム9の柱2及び/又は梁3が構造上の安全性を有することを応力解析なしに審査機関に容易に説明でき、かつ理解させることができる。
【0069】
本来、型式認定手続の添付図書には、建物の安全性を証明するために、応力解析の結果そのもののような計算過程がわからない資料は認められておらず、電卓を用いたいわゆる手計算レベルで安全性が再確認ができる資料に限定されている。しかし、本実施形態のように、応力解析をベースとして予め計算された単位荷重−軸力テーブルは、後者の安全性の確認資料として認められている。従って、本発明によれば、建物の設計支援はもとより、その型式認定手続をも能率化しうるという利点がある。
【0070】

また、型式認定の審査機関にとっても、認定規格(ルール)が設定されていなくても、全ての単位水平荷重−軸力テーブルT1及び単位垂直荷重−軸力テーブルT2が申請書類の添付図書に含まれていることにより、これらを確認しながら住宅の構造上の安全性を容易に判断することができる。
【0071】
さらに、工業化住宅メーカにとっては、従来、型式認定の取得に際して多くの規格(ルール)を設定しなければならなかったが、単位水平荷重−軸力テーブルT1及び単位垂直荷重−軸力テーブルT2等を型式認定の申請書類の添付図書として含ませることにより、このような規格なしで建築物の安全性を審査機関(国)に対して説明できる。従って、従来の過剰設計になりがちな無駄を省き、低コストかつ良質な工業化住宅についての型式認定を取得するための工数を大幅に削減できる。
【0072】
さらに、単位水平荷重−軸力テーブルT1及び単位垂直荷重−軸力テーブルT2を新たに追加することにより、逐次、型式認定申請を追加することができる。なお、型式認定に適合しているか否かは、1スパンフレームの適合だけを行えば良いので、工業化住宅メーカにとってもコンプライアンスの強化に役立つ。このように、本発明によれば、実用上多くのメリットが得られる。
【0073】
[工程e2]
次に、単位水平荷重−軸力テーブルT1のみを用いて前記1スパンフレーム9の柱2に作用する軸力を計算し、柱2及び/又は梁3の強度を確認又は再設計する工程を行う例について述べる。
【0074】
この工程e2では、水平荷重のみが作用する単一荷重状態の1スパンフレームについては、工程e1で説明した方法で各1スパンフレームの各柱2の軸力が計算される。
【0075】
一方、垂直荷重のみが作用する1スパンフレームの柱の軸力については、応力解析を行わずに手計算で計算される。換言すれば、この工程e2では、予め単位水平荷重−軸力テーブルT1のみを準備すれば良く、単位垂直荷重−軸力テーブルT2や単位曲げ加重−軸力テーブルT3を作成する必要がない。従って、工程dを大幅に簡素化できるメリットがある。
【0076】
この工程e2で、垂直荷重のみが作用している単一荷重状態の1スパンフレームの各柱2の軸力を計算するに際して、柱2及び斜材4bには軸変形が生じないという仮定が導入される。つまり、柱の軸変形が無視される。柱の軸変形は微小であり、このような仮定は、設計上、良く行われているもので安全上の問題はない。このため、例えば図14の左側に示される80000Nの垂直荷重のみが作用している単一荷重状態の1スパンフレーム9(9d)は、3本の単純梁10(梁A乃至C)が、耐力フレーム4の柱4aによって上下に接合されたフレーム13と等価なものとして取り扱うことができる。
【0077】
また、図15に示されるように、上記フレーム13の各梁A乃至Cを接合する柱4aに生じる軸力R1〜R4を未知数とする。そうすると、軸力R1〜R4と垂直荷重8000Nとにより、梁A、梁B及び梁Cに生じるそれぞれのたわみは、それらの間をつなぐ柱4aの位置で同じとなる下記式が上記未知数分できる。
式1:梁Aと梁Bとにおいて、軸力R1の作用位置でのたわみが同じ
式2:梁Bと梁Cとにおいて、軸力R2の作用位置でのたわみが同じ
式3:梁Bと梁Cとにおいて、軸力R3の作用位置でのたわみが同じ
式4:梁Cの軸力R4の作用位置でのたわみが零(柱4aが基礎f上に固定されるため)
【0078】
そして、上記4つの一次連立方程式を解くことにより、未知数である軸力R1〜R4を計算することができる。
【0079】
また、図16に示されるように、上記フレーム13に単一の曲げ荷重(この例では5000N・m)が作用する場合については、上記垂直荷重作用時と同様に、たわみの連立方程式により、端部モーメント荷重による柱2の各軸力R1〜R4を求めることができる。
【0080】
[工程e3又はe4]
単位水平荷重−軸力テーブルT1と単位垂直荷重−軸力テーブルT2とを用いる場合、曲げ荷重作用時の1スパンフレームの各柱の軸力は、工程e2の例に従って計算することができる。同様に、単位水平荷重−軸力テーブルT1と単位曲げ荷重−軸力テーブルT3とを用いる場合、垂直荷重作用時の1スパンフレームの各柱の軸力は、工程e2の例に従って計算することができる。
【0081】
以上述べたように、工程e2乃至e4は、工程e1に比べると、作成されるテーブルの数又は種類数を少なくできる。従って、工程e2乃至e4を採用した場合には、より簡単かつ低コストで工業化住宅の設計支援及び型式認定支援を行うことができる。
【0082】
また、上記実施形態では、1スパンフレーム9の柱2に作用する軸力を計算し、柱2及び/又は梁3の強度を確認又は再設計するものとしたが、本発明は、1スパンフレーム9に配置された耐力フレーム4の最適な配置枚数を確認(十分か否か)は再設計(追加又は削除)する際にも利用することができる。
【0083】
1スパンフレーム9の剛性は、耐力フレーム4の配置パターン、梁3のスパン長さ、柱2の高さ及び梁3の種類等によって異なる。現状の認定では、耐力フレーム4の剛性は、想定されるパターンで最も低い剛性を採用したり、剛性に基づいてグループで分類化していたため、実際よりも低い剛性値になっていることがある。剛性を低めに設定することが建物として本当に安全側となるかどうか分からないだけでなく、耐力性能が低くなるため、耐力壁の枚数が多く必要となるという問題がある。
【0084】
そこで、この実施形態では、上述と同様に、図17に示されるように、1スパンフレームの剛性に関するパラメータが記載された剛性テーブルT4を用いることにより、個々の1スパンフレーム9の剛性を算出することができ、最適な耐力フレームの配置が可能とするものである。この剛性テーブルT4は、前記架構体5の全ての1スパンフレームについて、1スパンフレーム内に含まれる任意の柱2に、単位水平荷重UHを作用させたときの1スパンフレーム9の剛性に関するパラメータの記載を含むものである。
【0085】
図17には、このような剛性テーブルT4の一例が示される。
該剛性テーブルT4には、単位水平荷重UHの荷重値(この例では10000N)、荷重位置(図17の左側の略図のように、どの位置に単位水平荷重を作用させたか)及びその場合の各階の層間変位(mm)が表形式で記載される。この層間変位は、予めコンピュータを用いた応力解析をベースとして計算される。
【0086】
また、剛性テーブルT4も、前記単位水平荷重の位置を変化させた複数の荷重位置について作成される。好ましい例では、剛性テーブルT1は、少なくとも各階に水平荷重を作用させて作成される。
【0087】
また、図17のテーブルT4の上段の例では、2階屋根部に水平荷重10000Nが作用したとき、2階には10.734mm、1階には5.118mmの層間変位がそれぞれ生じることを示している。同様に、図17のテーブルT4の下段の例では、2階床部に水平荷重10000Nが作用したとき、1階には5.483mm、2階には−0.354mmの層間変位がそれぞれ生じることを示している。本実施形態では、このような「層間変位」が1スパンフレーム9の「剛性に関するパラメータ」として用いられている。ただし、このようなパラメータとしては、剛性に関するものであれば、「層間変位」に変えて例えば変位角などが用いられても良いのは言うまでもない。
【0088】
次に、上記剛性テーブルT4を用いて、1スパンフレーム9の剛性を評価して該1スパンフレーム9に配置された耐力フレームの枚数が十分か否かの確認又は枚数の追加・削除といった再設計する工程について図17に基づき説明する。
【0089】
本実施形態では、建物に作用する水平力として地震力及び/又は風圧力が算出される(ステップS1)。建物全体に作用する地震力及び風圧力は、それぞれ次の計算式から算出することができる。
地震力=ΣWi×壁係数(地震)
風圧力=ΣAi×壁係数(風圧)
ここで、Wiは各階の重量であり、ΣWiはその階より上の重量、Aiは各階外壁の見付け面積であり、ΣAiはその階より上の見付け面積である。
【0090】
次に、柱・梁の構造体に耐力フレーム4を配置して架構体5が設計される(ステップS2)。
【0091】
次に、上記架構体5の垂直構面の各1スパンフレーム9に、ステップS1で算出された建物全体に作用する地震力又は風圧力を分配する(言い換えれば、地震時等の各1スパンフレーム9が負担する水平力が計算される)。この分配は、各1スパンフレーム9の剛性(単位変形量当たりの水平力)及び建物全体のねじれによって決まる。
【0092】
本実施形態では、先ず、1スパンフレーム9の剛性が計算される(ステップS3)。この剛性は、本実施形態では、1スパンフレーム9が1/200変形した時の水平荷重から計算されるものとする。ただし、このような数値に限定されるものではないのは言うまでもない。1スパンフレーム9の各階の剛性は、配置された耐力フレーム4に対応する剛性テーブルT4を参照して、下記式(1)及び(2)を解くことにより計算される。
δ2=P2/P×δ2a+P1/P×δ2b …(1)
δ1=P2/P×δ1a+P1/P×δ1b …(2)
各符号の意味は次の通りである。
δ2:2階の1/200の変形量(この例では12.0mm)
δ1:1階の1/200の変形量(この例では12.0mm)
P2:1スパンフレームの2階に作用する水平力
P1:1スパンフレームの1階に作用する水平力
P:剛性テーブルの単位水平荷重(10000N)
δ2a:剛性テーブルから得られる2階に単位水平荷重を与えたときの層間変位(10.734mm)
δ2b:剛性テーブルから得られる1階に単位水平荷重を与えたときの層間変位(−0.354mm)
δ1a:剛性テーブルから得られる2階に単位水平荷重を与えたときの層間変位(5.118mm)
δ1b:剛性テーブルから得られる1階に単位水平荷重を与えたときの層間変位(5.483mm)
【0093】
上記式(1)及び(2)を解くことにより、1スパンフレーム9の各階の作用する水平力P1、P2が求まる。従って、1スパンフレームの2階の剛性はP2/δ2で、1スパンフレーム9の1階の剛性は(P1+P2)/δ1でそれぞれ求めることができる。
【0094】
次に、上記1スパンフレーム9の剛性及び建物全体のねじれを用いて、各1スパンフレーム9が負担する水平力が計算される(ステップS4)。この計算には、建物全体の地震力を、各1スパンフレーム9の剛性比に基づいて分配する周知の手法が採用できる。
【0095】
次に、地震時等における各1スパンフレーム9の変形量が計算される(ステップS5)。このステップでは、例えば、図19に示されるように、任意の1スパンフレーム9が負担する水平力が9600N(2階)及び8800N(1階)である場合、前記剛性テーブルT4を用いて、下記の要領にて、当該1スパンフレーム9の変形量が計算される。
2階の変形:
δ2=10.734×9600/10000+(−0.354)×8800/10000=9.99mm
1階の変形:
δ1=5.118×9600/10000+5.483×8800/10000=9.74mm
【0096】
そして、上記変形量が適正か否かが判断される(ステップS6)。例えば、前記変形量と1/200の変形量とを比較し、変形量が著しく小さい場合(ステップS6でN)には、耐力フレームの枚数が多い過剰設計となっている可能性がある。逆に、変形量が許容値を超えている場合(ステップS6でN)には、耐力フレームの枚数が少ない過小設計となっていることを意味する。従って、このような判断に基づき、各1スパンフレームの剛性を評価し、1スパンフレームに配置された耐力フレームの枚数を増減しながらその再設計を手計算にて容易に行うことができる。これにより、最適な耐力フレームの枚数乃至配置を見出すことができる。
【符号の説明】
【0097】
2 柱
3 梁
4 耐力フレーム
5 架構体
7 垂直フレーム体
9 1スパンフレーム
10 単純梁
T1 単位水平荷重−軸力テーブル
T2 単位垂直荷重−軸力テーブル
T3 単位曲げ荷重−軸力テーブル
T4 剛性テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱と梁とがピン接合された垂直構面に耐力フレームが配された架構体を有する工業化住宅の設計を支援する方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする工業化住宅の設計支援方法。
a)前記柱、前記梁及び耐力フレームを用いて三次元の架構体を設計する工程
b)前記架構体を、前記垂直構面毎に二次元の垂直フレーム体に分解する工程
c)各垂直フレーム体を、前記耐力フレームが配された1スパンフレームと、前記耐力フレームが配されていない1スパンの単純梁とに分解する工程
d)全ての1スパンフレームについて、1スパンフレーム内に含まれる任意の柱に、単位水平荷重を作用させたときの各柱に作用する軸力を応力解析により計算して、荷重値、荷重位置及び柱の軸力値の関係を表す単位水平荷重−軸力テーブルを、前記水平荷重位置を変化させた複数の荷重位置について作成する工程
e)前記単位水平荷重−軸力テーブルを用いて、前記1スパンフレームの柱に作用する軸力を計算し、柱及び/又は梁の強度を確認又は再設計する工程
【請求項2】
前記複数の荷重位置は、柱と梁との接合位置である請求項1記載の工業化住宅の設計支援方法。
【請求項3】
前記工程dは、全ての1スパンフレームについて、1スパンフレーム内に含まれる任意の梁に、単位垂直荷重を作用させたときの各柱に作用する軸力を応力解析により計算して、荷重値、荷重位置及び柱の軸力値の関係を表す単位垂直荷重−軸力テーブルを、前記垂直荷重位置を変化させた複数の荷重位置について作成する工程をさらに含み、
前記工程eは、前記単位水平荷重−軸力テーブル及び前記単位垂直荷重−軸力テーブルを用いる請求項1又は2記載の工業化住宅の設計支援方法。
【請求項4】
前記架構体は、片持ち梁を含み、
前記工程dは、前記片持ち梁を有する1スパンフレームについて、前記片持ち梁の支点に、単位曲げ荷重を作用させたときの各柱に作用する軸力を応力解析により計算して、荷重値、荷重位置及び柱の軸力値の関係を表す単位曲げ荷重−軸力テーブルを作成する工程をさらに含み、
前記工程eは、前記単位水平荷重−軸力テーブル及び前記単位モーメント荷重−軸力テーブルを用いる請求項1記載の工業化住宅の設計支援方法。
【請求項5】
前記架構体は、片持ち梁を含み、
前記工程dは、前記片持ち梁を有する1スパンフレームについて、前記片持ち梁の支点に、単位曲げ荷重を作用させたときの各柱に作用する軸力を応力解析により計算して、荷重値、荷重位置及び柱の軸力値の関係を表す単位曲げ荷重−軸力テーブルを作成する工程をさらに含み、
前記工程eは、前記単位水平荷重−軸力テーブル、前記単位垂直荷重−軸力テーブル及び前記単位モーメント荷重−軸力テーブルを用いる請求項3記載の工業化住宅の設計支援方法。
【請求項6】
前記工程eは、
前記架構体に、任意の水平荷重及び垂直荷重を負荷させたときの各1スパンフレームに作用する実荷重状態を決定する工程、
実荷重状態の1スパンフレームを、一つの垂直荷重又は一つの水平荷重のみが作用する単一荷重状態の1スパンフレームに分解する工程、
前記各単一荷重状態の1スパンフレームの各柱の軸力を計算する工程、及び
各単一荷重状態の1スパンフレームの各柱の軸力を足し合わせることにより、前記実荷重状態における1スパンフレームの各柱に作用する軸力を計算する工程を含む請求項1乃至5のいずれかに記載の工業化住宅の設計支援方法。
【請求項7】
前記工程eにおいて、柱が、直交する少なくとも2つの1スパンフレームで互いに共有されている第1の柱である場合、各1スパンフレームで得られた第1の柱の軸力を足し合わせて第1の柱に作用する軸力を計算する請求項6に記載の工業化住宅の設計支援方法。
【請求項8】
前記工程eにおいて、柱が、少なくとも1つの1スパンフレームと、少なくとも一つの単純梁の一端側とで互いに共有されている第2の柱である場合、前記1スパンフレームで得られた第2の柱の軸力と、前記単純梁の前記一端側の支点反力とを足し合わせて第2の柱に作用する軸力を計算する請求項6に記載の工業化住宅の設計支援方法。
【請求項9】
前記工程eは、
前記各柱の軸力が得られた実荷重状態における1スパンフレームの梁を、前記柱の軸力を受ける単純梁に分解する工程、及び
前記単純梁の応力を計算する工程を含む請求項6ないし8のいずれかに記載の工業化住宅の設計支援方法。
【請求項10】
柱と梁とがピン接合された垂直構面に耐力フレームが配された架構体を有する工業化住宅の設計を支援する方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする工業化住宅の設計支援方法。
a)前記柱、前記梁及び耐力フレームを用いて三次元の架構体を設計する工程
b)前記架構体を、前記垂直構面毎に二次元の垂直フレーム体に分解する工程
c)各垂直フレーム体を、前記耐力フレームが配された1スパンフレームと、前記耐力フレームが配されていない1スパンの単純梁とに分解する工程
d’)全ての1スパンフレームについて、1スパンフレーム内に含まれる任意の柱に、単位水平荷重を作用させたときの各柱に作用する軸力を応力解析により計算して、該1スパンフレームの剛性に関するパラメータが記載された剛性テーブルを、前記水平荷重位置を変化させた複数の荷重位置について作成する工程
e’)前記架構体に、任意の水平荷重及び垂直荷重を負荷させたときの各1スパンフレームに作用する実荷重状態を決定するとともに、前記剛性テーブルを用いて、前記1スパンフレームの剛性を評価して少なくとも前記1スパンフレームに配置された耐力フレームの枚数を確認又は再設計する工程
【請求項11】
柱と梁とがピン接合された垂直構面に耐力フレームが配された架構体を有する工業化住宅の型式認定申請を支援する方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする工業化住宅の型式認定申請の支援方法。
b)前記架構体を、前記各垂直構面毎に二次元の垂直フレーム体に分解する工程
c)各垂直フレーム体を、前記耐力フレームが配された1スパンフレームと、前記耐力フレームが配されていない1スパンの単純梁とに分解する工程
d)全ての1スパンフレームについて、1スパンフレーム内に含まれる任意の柱に、単位水平荷重を作用させたときの各柱に作用する軸力を応力解析により計算して、荷重値、荷重位置及び柱の軸力値の関係を表す単位水平荷重−軸力テーブルを、前記水平荷重位置を変化させた全ての荷重位置について作成する工程
f)前記単位水平荷重−軸力テーブルを、前記1スパンフレームの各柱及び/又は梁が構造上の安全性を有することを説明する資料として提出する工程
【請求項12】
前記工程dは、全ての1スパンフレームについて、1スパンフレーム内に含まれる任意の梁に、単位垂直荷重を作用させたときの各柱に作用する軸力を応力解析により計算して、荷重値、荷重位置及び柱の軸力値の関係を表す単位垂直荷重−軸力テーブルを、前記垂直荷重位置を変化させた複数の荷重位置について作成する工程を含み、
前記工程fは、さらに前記単位垂直荷重−軸力テーブルを、前記1スパンフレームの各柱及び/又は梁が構造上の安全性を有することを説明する資料として提出することを特徴とする請求項11記載の工業化住宅の型式認定申請の支援方法。
【請求項13】
前記架構体は、片持ち梁を含み、
前記工程dは、前記片持ち梁を有する1スパンフレームについて、前記片持ち梁の支点に、単位曲げ荷重を作用させたときの各柱に作用する軸力を応力解析により計算して、荷重値、荷重位置及び柱の軸力値の関係を表す単位曲げ荷重−軸力テーブルを作成する工程をさらに含み、
前記工程fは、さらに前記単位曲げ荷重−軸力テーブルを、前記1スパンフレームの各柱及び/又は梁が構造上の安全性を有することを説明する資料として提出することを特徴とする請求項11又は12記載の工業化住宅の型式認定申請の支援方法。
【請求項14】
柱と梁とがピン接合された垂直構面に耐力フレームが配された架構体を有する工業化住宅の型式認定申請を支援する方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする工業化住宅の型式認定申請の支援方法。
a)前記柱、前記梁及び耐力フレームを用いて三次元の架構体を設計する工程
b)前記架構体を、前記垂直構面毎に二次元の垂直フレーム体に分解する工程
c)各垂直フレーム体を、前記耐力フレームが配された1スパンフレームと、前記耐力フレームが配されていない1スパンの単純梁とに分解する工程
d’)全ての1スパンフレームについて、1スパンフレーム内に含まれる任意の柱に、単位水平荷重を作用させたときの各柱に作用する軸力を応力解析により計算して、該1スパンフレームの剛性に関するパラメータが記載された剛性テーブルを、前記水平荷重位置を変化させた複数の荷重位置について作成する工程
g)前記剛性テーブルを、前記1スパンフレームの耐力フレームの配置枚数が構造上の安全性を有することを説明する資料として提出する工程

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−18315(P2011−18315A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72953(P2010−72953)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000004673)パナホーム株式会社 (319)
【Fターム(参考)】