説明

工業炉設備における真空ポンプの制御方法

【課題】工業炉設備(特に真空炉設備)において使用される少なくとも1つの真空ポンプを効率的に制御するための方法及び工業炉設備を提供する。
【解決手段】本発明は、制御/調節装置に組み込まれたポンプコントローラを用いて、圧力の経時的変化に応じて、熱処理プロセスの段階ごとに、真空の要否に基づいて、真空ポンプを駆動または停止(Pa)させ、工業炉設備内において熱処理プロセスが実行中であるか否かを問い合わせるステップ(S1)、熱処理プロセスの現在の段階において真空ポンプが必要か否かを問い合わせるステップ(S2)、熱処理プロセスの将来の段階において真空ポンプが必要となるか否かを問い合わせるステップ(S3)及び/または、次に真空ポンプの使用を必要とするまでの時間(T1)が真空ポンプの所要準備時間(T2)よりも長いか否かを問い合わせるステップのうちの、少なくとも1つを有するプログラムを使用することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業炉設備(特にいわゆる真空炉設備)において使用される真空ポンプのインテリジェント制御方法に関する。本発明は、該方法に関連する工業炉設備にも関する。
【背景技術】
【0002】
DE 101 52 204 B4(特許文献1)によれば、浸炭処理過程中に浸炭雰囲気を監視しかつデータを記録することができないという欠点を回避するために、真空ガス浸炭設備を改善するという課題が記載されている。
【0003】
特許文献1では、真空ガス浸炭設備の浸炭チャンバ内の浸炭雰囲気を測定及び/または調節する方法において、以下のステップ、すなわち、
1.ワーク(加工品)を浸炭チャンバ内に装入するステップと、
2.浸炭チャンバ内に真空を作り出しかつ保持するステップと、
3.浸炭ガスを浸炭チャンバ内に導入するステップと、
4.真空気密の酸素測定器で浸炭チャンバ内の雰囲気を測定するステップとが行われる。
【0004】
このプロセスガス調節方法では、浸炭段階中に炉雰囲気の現在の状態を定期的に測定することができる。しかし、この方法では、プロセス全体を通して目的のプロセスの状態に合わせて真空ポンプを駆動または停止させることができない。
【0005】
真空熱処理炉において運転上の安全性を監視しかつプロセスサイクルを制御するための自動化されたシステムはDE 41 21 277 C2(特許文献2)にも記載されており、ここでは、炉ハウジング内の圧力を測定する圧力センサと、炉のすぐ近傍に配置された少なくとも1つのガスセンサとが提供される。ハウジング内部で所定圧力に到達せず、同時に炉周辺で所与のガス濃度が検出された場合、各センサは、別体をなす評価装置と協働して、安全プログラムを起動する。これにより、直ちに冷却ガス吸気弁が閉鎖され、排気弁が開放され、パージガス吸気弁が開放される。上述の安全プログラムは、パージガス貯蔵器と炉ハウジングの内部とを接続する流路において作動する。ガス排出流路への枝流路に接続されたガスセンサによって記録される排気弁での冷却ガス濃度に応じて、ハウジング内部の圧力と炉周辺の圧力が均等化される。
【0006】
高圧水素急速冷却を伴う真空炉のこの追加的な安全装置は、水素漏れが測定された時に炉を不活性ガスで洗浄しかつ可燃性/爆発性ガス混合物が形成されないことを保証する。しかし、この安全装置は、対応する真空ポンプの制御/調節は行わない。
【0007】
さらに、先行技術調査として、特許文献2に対応するEP 0524 368 B1(特許文献3)に記載の装置についても検討する必要がある。ここでもまた、真空熱処理炉(特に、金属ワークを焼き入れするために冷却ガスとして水素ガスを超過圧力下で用いて動作する炉)において自動的に安全性監視及び工程制御を行う方法及び装置が開示されている。この炉では、真空ポンプはハウジングに接続されている。加熱チャンバには、吸気口及び排気口が開孔されている。モータファンユニット、冷却ガス貯蔵器、加熱装置、冷却ガスが循環する熱交換器、炉ハウジング内の圧力を測定する圧力センサ及び、炉のすぐ近傍に配置された少なくとも1つのガスセンサが設けられている。これらはいずれも、評価装置と協働して、ハウジング内部で所定圧力に到達せずかつ同時に炉周辺で所与のガス濃度が検出された場合に、安全プログラムを起動する。
【0008】
上述のように、安全プログラムにより直ちに冷却ガス吸気弁が閉鎖され、排気弁が開放され、パージガス吸気弁が開放される。パージガス吸気弁は、パージガス貯蔵器と炉ハウジングの内部とを接続する流路に接続されており、最終的には、ガス排出流路への枝流路に接続されたガスセンサによって記録される排気弁での冷却ガス濃度に応じて、ハウジング内部の圧力と炉周辺の圧力が均等化される。
【0009】
結果的に、この解決方法は、特許文献2に関連して既に検討したような、水素漏れが測定された時に炉を不活性ガスで洗浄してかつ可燃性または爆発性ガス混合物が形成されないことを保証する、高圧水素急速冷却を伴う真空炉の追加的な安全装置と同じである。
【0010】
従って、特許文献2及び3に開示されている概略工程は、どのように真空ポンプを制御または調節できるかも開示していない。
【0011】
DE 100 43 783 A1(特許文献4)には、直列接続された複数のポンプを備えるポンプ装置に接続されたチャンバ内で真空を調節する方法が開示されている。ここでは、チャンバ内に存在する高真空圧及び所定の圧力に応じて、少なくとも1つの吸引パラメータが変更される。吸引パラメータの変更は、チャンバ内部に存在する高真空圧に応じて決定される少なくとも1つの制御パラメータを用いて行われる。
【0012】
このポンプの吸引力の調節はエネルギー消費の点で経済的であるが、例えば高圧ガス急速冷却時または対流運転時に真空炉内で超過圧力段階が発生すると、弁によって容器からポンプを分離することができない。
【0013】
さらに、吸引チャンバ拡張速度を圧力に応じて低下させるための装置を備えた、ダイヤフラムポンプ、ピストンポンプ、または両者の組合せがDE 198 16 241 C1(特許文献5)に記載されている。この装置では、吸引圧力または制御信号が所定値を下回ったら、駆動装置の回転速度が自動的に調整され、この範囲における、圧力または制御信号と回転速度値とが対になって測定及び保存され、これらの値から、最も低い最低真空に到達可能な最小吸引圧力値が算出される。これをもとに、駆動装置の回転速度は、関連する最適回転速度に設定される。
【0014】
吸引チャンバまたは回転速度を変化させることによってポンプの吸引力を経済的に調節する問題点は、いつポンプが弁によって容器から分離されるかを認識することができないことである。しかし、これは真空炉内で発生する超過圧力段階(高圧ガス急速冷却または対流運転)において不可欠である。
【0015】
DE 699 07 890 T2(特許文献6)にも、真空装置内で圧力を調節するための方法及び装置が開示されている。ここでは、次の公知のステップ、すなわち、
1.プロセスチャンバに対する所望の圧力レベルが記録された電子メモリから所望の圧力の値を読み出すステップと、
2.プロセスチャンバを通過する所望のガス流速度を示す上記電子メモリから所望のガス流の値を読み出すステップと、
3.プロセスチャンバ内の圧力を調節するために用いられる絞り弁を初期位置に設定するステップと、
4.プロセスチャンバ内の圧力を測定するステップと、
5.所望圧力と測定圧力との差を計算するステップと、
6.上記設定ステップの後に、所望圧力と測定圧力との差に基づいて、絞り弁を少なくとも1回再設定するステップとを行う。
【0016】
特許文献6では、弁は比例制御及び積分制御を用いて調整され、所定時間にわたる制御遅延が発生する。
【0017】
特許文献6に記載の真空装置内で圧力を調節するための方法及び装置では、吸引力を調節することはできるが、真空なしで行われるプロセス段階において停止機能がトリガされないという事実によって真空装置の「インテリジェントな調節」が制限されている。
【0018】
この欠点、すなわち真空を必要としないプロセス段階において停止されないことは、特開2008−2274(特許文献7)に示唆されている解決方法によっても解消されていない。特許文献7には、真空ポンプの回転数制御により炉体内圧力の制御をおこなう真空排気装置が開示されている。真空ポンプの回転数が下限値に達したとき、排気のために、ポンプの吸気側と排気側とを接続する第1の環流管路が開路状態に切換えられる。この開路状態で真空ポンプの回転数が再び下限値に達したとき、第2の環流管路が開路状態に切換えられる。ポンプの回転数が上限値に達したとき、両環流管路は閉路状態に切換えられる。環流管路の開閉は、対応する複数の弁によって制御される。環流は、抵抗器を用いて調整される。
【0019】
他の分野である特開2001−214868(特許文献8)を検討しても、真空が発生しないプロセス段階において確実に真空装置を停止させる方法は示唆されていない。ここでは、真空アーク溶解炉等の操業において、設備の大型化や真空ポンプの負担増を招くことなく、炉内の真空度を調整することができる1つの真空制御装置だけが、炉内で利用可能である。ここで、真空アーク溶解炉は、炉体に吸引管路を通じて接続された真空ポンプ設備を有しており、機械式のメカニカルブースタポンプ及びロータリポンプを併用して炉体内に真空雰囲気が形成される。溶解炉の操業においてインバータを用いてポンプの回転速度を制御し、その吸引力を可変して炉体内の真空度を調整する。また、真空計からの検出信号をコントローラにフィードバックすれば、インバータを自動的に操作してポンプ回転速度を自動制御することもできる。
【0020】
さらに、米国特許第3,736,360号明細書(特許文献9)を検討する。特許文献9には、電気加熱真空炉の制御システムが教示されている。この制御システムは、吸引管を介して炉室内部と接続された真空ポンプと、異なる領域のための複数の加熱素子と、各領域のための温度感知装置と、領域のうちの1つである主領域のための制御された測定機器とを含む。これらの機器は、炉のためのマスターレギュレータ及び個々の領域のためのスレーブレギュレータに接続されている。ポンプが定速で動作するという事実にもかかわらず、真空管の絞り弁または真空管に接続された被制御タップにより、炉内圧力を一定に維持することができる。真空管に接続された感圧装置は、加熱素子のためのレギュレータにも接続されている。
【0021】
この、吸引力のインテリジェント調節を評価しても、真空なしの段階でのポンプ停止の可能性に関して対策は見つからなかった。
【0022】
従来技術の概略的な検討及び真空装置の運転の実践的経験から、主として安全性または圧力を「制御変数」として用いる「緊急装置」及び「圧力調整器」が公知である。しかし、最新の真空炉における真空熱処理に課される要件はさらに厳しくなっており、従来の温度の経時的変化(履歴)に加えて、圧力の経時的変化にもより柔軟に反応できることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】DE 101 52 204 B4
【特許文献2】DE 41 21 277 C2
【特許文献3】EP 0524 368 B1
【特許文献4】DE 100 43 783 A1
【特許文献5】DE 198 16 241 C1
【特許文献6】DE 699 07 890 T2
【特許文献7】特開2008−2274号公報
【特許文献8】特開2001−214868号公報
【特許文献9】米国特許第3,736,360号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、所与のプロセスにおいてプロセスガスの排気後に真空ポンプを完全に停止させることができる時点に関する情報を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、工業炉設備(特にいわゆる真空炉設備)において使用される真空ポンプのインテリジェント制御方法を提供することを目的とする。本方法では、全プロセスを通して段階ごとに真空ポンプを停止または駆動させることによって、真空ポンプの対応する制御/調整に影響を与え、圧力の経時的変化に応じて、真空を使用しないプロセス段階では真空ポンプを停止させて、エネルギーを節約しながら処理プロセスの全工程を行うことが可能である。
【0026】
ここでは、或る種の真空ポンプは、その使用目的に対して準備を整えるために準備時間が必要であるという事実が考慮される。
【0027】
本発明によれば、上記課題は、工業炉設備(特にいわゆる真空炉設備)において使用される少なくとも1つの真空ポンプを、制御/調節装置に組み込まれたポンプコントローラを用いて制御する方法によって解決される。この方法では、
a)圧力の経時的変化に応じて、熱処理プロセスの段階ごとに、真空の要否に基づいて、真空ポンプを駆動または停止させ、
b)−工業炉設備内において熱処理プロセスが実行中であるか否かを問い合わせるステップと、
−熱処理プロセスの現在の段階において真空ポンプが必要か否かを問い合わせるステップと、
−熱処理プロセスの将来の段階において真空ポンプが必要となるか否かを問い合わせるステップと、
−次に真空ポンプの使用を必要とするまでの時間が真空ポンプの所要準備時間よりも長いか否かを問い合わせるステップとのうち、少なくとも1つのステップを有するプログラムが使用される。
【0028】
これらの4つの論理ステップを有するプロセス制御プログラムを用いて段階ごとに真空ポンプを停止または駆動させることによって、大きな投資を行うことなく、本発明に係る真空ポンプをエネルギー効率良く制御することが可能になるが、これについては後述する。
【0029】
第1のステップにおいて、工業炉設備内においてプロセスが実行中であるか否かの問い合わせに対する回答がノーであれば、ポンプコントローラを駆動させない。回答がイエスであれば、現在のプロセス段階の確認を行う。
【0030】
第2のステップにおいて、現在の段階において各真空ポンプが必要か否かの問い合わせに対する回答がイエスであれば、真空ポンプを駆動させ、第1のステップに係る問い合わせを行う。回答がノーであれば、将来の全ての段階の確認を行う。
【0031】
第3のステップにおいて、将来の段階において各真空ポンプが必要となるか否かの問い合わせに対する回答がノーであれば、エネルギー節約のために真空ポンプを停止させ、再び第1のステップに係る問い合わせを行う。回答がイエスであれば、次にポンプの使用を必要とするまでの時間を算出し、その後、真空ポンプを問題なく機能させるための所要準備時間をいわゆる暖機時間(ウォームアップ時間)として決定する。
【0032】
最後に、第4のステップにおいて、次にポンプの使用を必要とするまでの時間が所要準備時間よりも長いか否かを問い合わせる。この問い合わせに対する回答がイエスであれば、エネルギー節約のために真空ポンプを停止させ、ノーであれば、真空ポンプを駆動させ、第1のステップに係る問い合わせを行う。
【0033】
これらの問い合わせステップの結果を、制御回路としての制御/調節装置に適切に集積し、
以下の関係式に従って真空ポンプの駆動及び停止を制御することができる。
【数1】

ここで、式中の
【数2】

、∨は、それぞれ論理演算の「否定(NOT)」、「論理和(OR)」を表す演算子である。
【0034】
上記方法を実施するための工業炉設備、特に真空炉設備は、加熱チャンバと、少なくとも1つの真空ポンプと、制御/調節装置に組み込まれたポンプコントローラとを備え、
a)熱処理プロセスの状態の問い合わせ、
b)熱処理プロセスの現在の段階において真空ポンプが必要か否かの問い合わせ及び、熱処理プロセスの将来の段階において真空ポンプが必要となるか否かの問い合わせ、並びに
c)次に真空ポンプの使用を必要とするまでの時間の問い合わせ及び、真空ポンプの所要事前準備時間の問い合わせ
を実行することができるように、少なくとも1つの圧力センサ、少なくとも1つの吸気口及び1つのポンプ弁が、論理回路において上記ポンプコントローラに接続されている。
【0035】
この種の工業炉設備は、場合によっては少なくとも1つの排気口を備えており、本発明の方法に従って運転することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の方法の一連のステップをプログラムのフローチャートとして示す図である。
【図2】本発明の方法を実施するための工業炉1を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図2には、加熱チャンバ2及び真空ポンプ3を有し、真空炉設備として運転される、ヒータ6を備えた工業炉設備1が示されており、圧力センサ7、吸気口8及びポンプ弁10が、論理回路においてポンプコントローラ11に接続されている。モータファンユニット4が冷却ガス貯蔵器5から冷却ガスを循環させているが、これについてここでは詳述しない。
【0038】
本方法によれば、真空ポンプ3を制御するために、圧力の経時的変化に応じて、熱処理プロセスの段階ごとに、真空の要否に基づいて、真空ポンプ3を駆動または停止させる。図1によれば、
‐工業炉設備1において熱処理プロセスが実行中であるか否かを問い合わせるステップS1、
‐熱処理プロセスの現在の段階において真空ポンプ3が必要か否かを問い合わせるステップS2、
‐熱処理プロセスの将来の段階において真空ポンプ3が必要となるか否かを問い合わせるステップS3、及び/または
‐次に真空ポンプ3の使用を必要とするまでの時間T1が真空ポンプ3の所要準備時間T2よりも長いか否かを問い合わせるステップを有するプログラムが用いられる。
【0039】
図1は、プログラムのフローチャートを詳細に示す図である。
【0040】
第1のステップでは、問い合わせステップS1に対する回答がノー(S1=0)であれば、ポンプコントローラ11を駆動させない。問い合わせステップS1に対する回答がイエス(S1=1)であれば、現在の段階に関する問い合わせS2を行う。
【0041】
第2のステップでは、問い合わせステップS2に対する回答がイエス(S2=1)であれば、真空ポンプ3を駆動させ、第1のステップに係る問い合わせステップS1を行う。問い合わせステップS2に対する回答がノー(S2=0)であれば、将来の全ての段階に関する問い合わせS3を行う。
【0042】
第3のステップでは、問い合わせステップS3に対する回答がノー(S3=0)であれば、エネルギー節約のために真空ポンプ3を停止Paさせ、再び第1のステップに係る問い合わせステップS1を行う。問い合わせステップS3に対する回答がイエス(S3=1)であれば、次に真空ポンプ3の使用を必要とするまでの時間T1を算出し、真空ポンプ3を完全に準備ができた状態でプロセスにおいて問題なく機能させるための所要準備時間T2をいわゆる暖機時間として決定する。
【0043】
第4のプログラムステップでは、問い合わせステップ(T1>T2?)に対する回答がイエスであれば、エネルギー節約のために真空ポンプ3を停止Paさせる。問い合わせステップ(T1>T2?)に対する回答がノーであれば、真空ポンプ3を駆動させ、第1のステップに係る問い合わせステップS1を開始する。
【0044】
このプログラムのフローチャートは、その時々の状況に応じて、上記ステップすなわち、工業炉設備1内において熱処理プロセスが実行中であるか否かを問い合わせるステップと、熱処理プロセスの現在の段階において真空ポンプ3が必要か否かを問い合わせるステップと、熱処理プロセスの将来の段階において真空ポンプ3が必要となるか否かを問い合わせるステップと、次に真空ポンプ3の使用を必要とするまでの時間T1が真空ポンプ3の所要準備時間T2よりも長いか否かかを問い合わせるステップとのうち、少なくとも1つのステップ、または2つ以上のステップ、または全てのステップによって、真空ポンプ3の制御が決定されることを示すものである。
【0045】
ここで、真空ポンプ3の制御調整及び操作は、ポンプコントローラ11において、次の関係式
【数1】

に従って実行され得る。
【0046】
工業炉設備1では、本方法を実施するために、本発明に係るポンプコントローラ11は、論理回路として、標準装備の一部として既に存在する制御/調節装置に組み込まれていることが有利である。従って、熱処理プロセスの状態を問い合わせるステップS1、熱処理プロセスの現在の段階において真空ポンプ3を使用する必要があるか否かを問い合わせるステップS2、熱処理プロセスの将来の段階において真空ポンプ3を使用する必要があるか否かを問い合わせるステップS3及び/または、次に真空ポンプ3の使用を必要とするまでの時間T1を問い合わせかつ/または真空ポンプ3の所要準備時間T2を問い合わせるステップは、ポンプコントローラ11に結合されて上述の論理回路を形成する圧力センサ7、吸気口8及びポンプ弁10によって実行される。
【0047】
必要であれば、工業炉設備1は排気口9を有する。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、圧力の経時的変化に応じたインテリジェント制御/調節によって、全プロセスを通してプロセス段階ごとのポンプの停止または駆動を可能にするので、エネルギーを節約しながら処理プロセスの全工程を行うことができ、安価に、既存の設備に追加装備することが可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 工業炉設備
2 加熱チャンバ
3 真空ポンプ
4 モータファンユニット
5 冷却ガス貯蔵器
6 ヒータ
7 圧力センサ
8 吸気口
9 排気口
10 ポンプ弁
11 制御/調節装置に組み込まれたポンプコントローラ
Pa 真空ポンプ3の駆動/停止
Pa=1 停止を実行する
Pa=0 停止を実行しない
S1 工業炉設備1内でプロセスが実行中であるか否かを問い合わせるステップ
S1=1 イエス:設備内でプロセスが実行中である
S1=0 ノー:設備内でプロセスが実行中でない
S2 現在の段階において真空ポンプ3が必要か否かを問い合わせるステップ
S2=1 イエス:現在の段階において真空ポンプ3が必要である
S2=0 ノー:現在の段階において真空ポンプ3が必要でない
S3 将来の段階において真空ポンプ3が必要となるか否かを問い合わせるステップ
S3=1 イエス:将来の段階において真空ポンプ3が必要となる
S3=0 ノー:将来の段階において真空ポンプ3が必要とならない
T1 次に真空ポンプ3の使用を必要とするまでの時間
T2 次の使用までの真空ポンプ3の所要準備時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの真空ポンプ(3)及び制御/調節装置に組み込まれたポンプコントローラ(11)を有する真空炉設備などの工業炉設備(1)において、前記真空ポンプ(3)を制御する方法であって、
前記工業炉設備(1)内において熱処理プロセスが実行中であるか否かを問い合わせるステップ(S1)と、
前記熱処理プロセスの現在の段階において前記真空ポンプ(3)が必要か否かを問い合わせるステップ(S2)と、
前記熱処理プロセスの将来の段階において前記真空ポンプ(3)が必要となるか否かを問い合わせるステップ(S3)と、
次に前記真空ポンプ(3)の使用を必要とするまでの時間(T1)が前記真空ポンプ(3)の所要準備時間(T2)よりも長いか否かを問い合わせるステップとのうち、少なくとも1つのステップを含むプロセス制御プログラムを用いて、圧力の経時的変化に応じて、前記熱処理プロセスの段階ごとに、真空の要否に基づいて、前記真空ポンプ(3)を駆動または停止(Pa)させることを特徴とする方法。
【請求項2】
第1のステップにおいて、前記問い合わせ(S1)に対する回答がノー(S1=0)であれば前記ポンプコントローラ(11)を駆動せず、前記問い合わせ(S1)に対する回答がイエス(S1=1)であれば前記現在の段階に関する問い合わせ(S2)を行うステップと、
第2のステップにおいて、前記問い合わせ(S2)に対する回答がイエス(S2=1)であれば前記真空ポンプ(3)を駆動させかつ前記第1のステップに係る前記問い合わせ(S1)を行い、前記問い合わせ(S2)に対する回答がノー(S2=0)であれば、将来の全ての段階に関する問い合わせ(S3)を行うステップと、
第3のステップにおいて、前記問い合わせ(S3)に対する回答がノー(S3=0)であればエネルギー節約のために前記真空ポンプ(3)を停止(Pa)させ、再び前記第1のステップに係る前記問い合わせ(S1)を行い、前記問い合わせステップ(S3)に対する回答がイエス(S3=1)であれば、次に前記真空ポンプ(3)の使用を必要とするまでの時間(T1)を算出し、前記真空ポンプ(3)を完全に準備ができた状態で前記プロセスにおいて問題なく機能させるための所要準備時間(T2)をいわゆる暖機時間として決定するステップと、
第4のステップにおいて、前記問い合わせ(T1>T2?)に対する回答がイエスであればエネルギー節約のために前記真空ポンプ(3)を停止(Pa)させ、前記問い合わせ(T1>T2?)に対する回答がノーであれば、前記真空ポンプ(3)を駆動させ、前記第1のステップに係る前記問い合わせステップ(S1)を行うステップと
のうち、少なくとも1つのステップを実行することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポンプコントローラ(11)が、次式に従って前記真空ポンプ(3)の駆動及び停止を制御することを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の方法。
【数1】

【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の方法を実施するための真空炉設備などの工業炉設備(1)であって、
加熱チャンバ(2)と、少なくとも1つの真空ポンプ(3)と、制御/調節装置に組み込まれたポンプコントローラ(11)とを備え、
a)熱処理プロセスの状態の問い合わせ(S1)と、
b)前記熱処理プロセスの現在の段階において前記真空ポンプ(3)が必要か否かの問い合わせ(S2)及び、前記熱処理プロセスの将来の段階において前記真空ポンプ(3)が必要となるか否かの問い合わせ(S3)と、
c)次に前記真空ポンプ(3)の使用を必要とするまでの時間(T1)の問い合わせ及び、前記真空ポンプ(3)の所要準備時間(T2)の問い合わせと
のうちの少なくとも1つを実行することができるように、少なくとも1つの圧力センサ(7)、少なくとも1つの吸気口(8)及び1つのポンプ弁(10)が論理回路において前記ポンプコントローラ(11)に接続されていることを特徴とする工業炉設備。
【請求項5】
少なくとも1つの排気口(9)を有することを特徴とする請求項4に記載の工業炉設備(1)。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−251764(P2012−251764A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−120941(P2012−120941)
【出願日】平成24年5月28日(2012.5.28)
【出願人】(310010243)Ipsen株式会社 (9)
【Fターム(参考)】