工程・金型設計システム
【課題】 簡易に低コストで工程および金型の設計が可能なシステムの提供。
【解決手段】 塑性加工の工程設計および金型設計に用いられるシステムである。設計対象製品を構成する複数の立体形状要素について、形状要素種別とその基礎寸法が入力される。各形状要素種別とその各基礎寸法に基づき、各形状要素の体積を算出すると共に、その結果から製品全体の体積を算出する。算出された製品全体の体積と指定される素材径に基づき、素材長さを算出する。算出された各形状要素の体積と指定される素材径に基づき、各形状要素が占める素材高さを算出する。素材径または素材高さと基礎寸法とに基づき、各形状要素について加工率を算出して加工可否を判定する。加工可能な場合には、加工方法と加工率とを順次に求めて工程設計し、工程図や金型図を出力する。
【解決手段】 塑性加工の工程設計および金型設計に用いられるシステムである。設計対象製品を構成する複数の立体形状要素について、形状要素種別とその基礎寸法が入力される。各形状要素種別とその各基礎寸法に基づき、各形状要素の体積を算出すると共に、その結果から製品全体の体積を算出する。算出された製品全体の体積と指定される素材径に基づき、素材長さを算出する。算出された各形状要素の体積と指定される素材径に基づき、各形状要素が占める素材高さを算出する。素材径または素材高さと基礎寸法とに基づき、各形状要素について加工率を算出して加工可否を判定する。加工可能な場合には、加工方法と加工率とを順次に求めて工程設計し、工程図や金型図を出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてヘッダやパーツフォーマによる金属塑性加工の工程設計および金型設計を容易にするための工程・金型設計システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばボルトやナットなどのネジ部品や、その他の各種パーツ類の製作には、ヘッダやパーツフォーマと呼ばれる工作機械を用いて、パンチとダイスによる据込みまたは絞りなどの塑性加工がなされている。そのために、所望の最終製品の形状に基づき、素材や使用機械などを選定し、工程設計し、金型の製作がなされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の工程および金型の設計はすべて、作業者が複雑な計算を試行錯誤で繰り返したり、経験と勘に基づいたりしてなされていた。そのため、非常に手間や時間、費用を要するものであった。また、金型の製作は専門メーカに外注するのが通常であるため、金型を使用するユーザ側にはノウハウが蓄積されず、その情報を利用できなかった。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、簡易に低コストで工程および金型の設計が可能で、また過去の設計情報も有効活用できるシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の工程・金型設計システムは、塑性加工の工程設計および金型設計に用いられるシステムであって、(1)設計対象製品を構成する複数の立体形状要素それぞれについて、形状要素種別とその形状要素の大きさを特定する基礎寸法とが入力される形状要素入力手段と、(2)入力された各形状要素種別とその各基礎寸法とに基づき、各形状要素の体積を算出すると共に、その結果から製品全体の体積を算出する体積演算手段と、(3)算出された製品全体の体積と指定される素材径とに基づき、素材長さを算出する素材長演算手段と、(4)前記算出された各形状要素の体積と前記指定される素材径とに基づき、各形状要素が占める素材高さを算出し、素材径または素材高さと前記基礎寸法とに基づき、各形状要素について加工率を算出して加工可否を判定し、加工可能な場合には、加工方法と加工率とを順次に求めて工程設計する工程設計手段と、(5)設計された各工程における加工状態を示す工程図と、各工程で使用される金型を示す金型図の少なくとも一方を出力可能とする図面出力手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、簡易に低コストで工程や金型の設計ができる。また、設計情報を登録しておけば、各ユーザにおいて設計ノウハウを蓄積できるだけでなく、過去の設計情報を活用して新たな設計もできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の工程・金型設計システムの一実施例について、図面に基づき更に詳細に説明する。本実施例のシステムは、ボルトのようなネジ素材などの工程設計および金型設計に好適なシステムである。具体的には、金属製線材から所定長さを切り出して、ヘッダまたはパーツフォーマにより塑性加工して製作しようとする場合において、その工程設計および金型設計を簡易に行えるシステムである。
【0008】
本実施例のシステムは、所定プログラムがインストールされ、設計者としてのユーザにより操作されるパーソナルコンピュータから構成される。すなわち、記憶手段や制御手段(CPU)を備えるパソコン本体の他、キーボードやマウスなどの入力手段、ディスプレイやプリンターまたはプロッターなどの出力手段を備える。記憶手段は、メモリおよびハードディスクなどからなり、所定プログラムや各種データを記憶する。制御手段は、前記プログラムに従い各種演算を行うと共に、その他の手段を制御する。入力手段は、各種データを入力または選択する装置であり、出力手段は、各種データや図面を出力する装置である。そして、本実施例のシステムは、前記プログラムにより、形状要素入力手段、体積演算手段、素材長演算手段、工程設計手段、結果出力手段などが構築される。
【0009】
パソコン上で前記所定プログラムを起動して、設計作業が開始される。設計対象製品は、特に問わないが、ここでは図1(B)に示すように、丸棒状の軸部の上部に、半球状の頭部が一体的に設けられた製品の設計を行う場合を例に説明する。軸部は、直径が18mmで長さ25mm、頭部は、直径が30mmで高さ15mmとする(図10参照)。
【0010】
本実施例のシステムを使用して設計するに当たっては、設計対象製品をいくつかの基本的な立体形状要素に分けて考える。このような形状要素の種別として、本実施例のシステムでは、図2に示すように、「円柱」、「円錐台」、略半球状の「欠球」、「六角柱」、「四角柱」、「八角柱」、円柱の周側面の二箇所が対向して面取りされた「二方取円柱」、円柱の周側面の一箇所が面取りされた「一方取円柱」、中央に丸穴が貫通形成された「中空円柱」、中央に下方にのみ開口して丸穴が形成された「下空円柱」、+形状の「プラス溝」、−形状の「マイナス溝」の合計12種類を用意している。そして、これら各形状の大きさを特定するための基礎寸法の入力が可能とされている。本実施例の場合、円柱の場合は直径および高さ、円錐台の場合は上下端面の直径および高さ、欠球の場合は直径および高さ、六角柱の場合は面間隔および高さ、四角柱の場合は幅および高さ、八角柱の場合は面間隔および高さ、二方取円柱の場合は直径と面間隔および高さ、一方取円柱の場合は直径と幅および高さ、中空円柱の場合は内外径および高さ、下空円柱の場合は内外径と高さおよび穴の深さが、それぞれ基礎寸法として入力可能とされている。なお、形状要素としてどのような立体を採用するか、また各形状要素のどの部分を基礎寸法とするかは、適宜に変更可能である。
【0011】
さて、過去の設計情報を利用しない場合には、まず図1(A)に示す基礎設計画面からスタートする。これは、上述したように設計対象製品をいくつかの基本的な形状要素に分けて考え、各形状要素の種別の選択と、各形状要素の基礎寸法の入力を、形状要素入力手段により行うものである。
【0012】
図1(B)の製品の場合、上方から欠球と円柱に分けられるので、上部から順に形状要素とその基礎寸法を指定すればよい。そのために、まず図1(A)において「呼出」ボタンをクリックする。これにより、図2に示すように、別ウィンドウで形状要素入力画面を用いて行うことができる。この形状要素入力画面では、形状要素とその基礎寸法の位置が画像表示されると共に、形状要素の選択欄と、基礎寸法の入力欄が表示される。よって、形状要素の選択欄から、マウスでクリックすることで形状要素を選択すると共に、基礎寸法の入力欄に、その形状要素に必要な基礎寸法をキーボードから入力すればよい。
【0013】
図1(B)の製品の場合、まずは形状選択欄から「欠球」を選択すると共に、基礎寸法入力欄に直径として「30」高さとして「15」を入力し、「OK」ボタンをクリックすればよい。そして、引き続いて、形状選択欄から「円柱」を選択すると共に、基礎寸法入力欄に直径として「18」高さとして「25」を入力し、「OK」ボタンをクリックすればよい。そして、すべての形状要素とその基礎寸法を入力すれば、形状要素入力画面を閉じる。
【0014】
このようにして設計対象製品の形状要素とその基礎寸法を順に入力すると、前記基礎設計画面の所定欄が、図3に示すように埋められた形で表示される。ここでは、要素1として、形状が「欠球」、径(D1)が「30」、高さ(H)が「15」として入力され、要素2として、形状が「円柱」、径(D1)が「18」、高さ(H)が「25」として入力された状態で表示される。また、これと同時に、入力された情報に基づき、体積演算手段により各形状要素について体積計算がなされ、さらにそれらを加算して製品全体の体積が算出され表示される。例えば、欠球の体積は、この例では半球であるから((4*π*(D1/2)3)/3)/2で求められ、要素1の例では、2*π×153/3から「7068.583」と自動算出され、円柱の体積は、π*(D1/2)2*Hで求められるから、要素2の例では、π*92*25から「6361.724」と自動算出され、さらにそれらを合計した体積が「13430.307」と自動算出され、それぞれ該当欄に表示される。
【0015】
ところで、この基礎設計画面では、図3に示すように、素材径、素材長、機種、材質の特定欄も表示される。機種および材質は、予め登録されたものからプルダウンリストより選択可能とされている。ここで、材質が決まれば、その比重(密度)が定まるので、この比重と前記体積の積から、重量を自動算出することができる。つまり、前記各形状要素の体積と選択材質の比重に基づいて、各形状要素の重量を算出できる他、製品全体の体積と選択材質の比重に基づいて、製品全体の重量を算出して表示することができる。
【0016】
図3の前記基礎設計画面において、素材径(材料としての線材の直径)を指定すると、素材長(材料としての線材の切り出し長さ)が素材長演算手段により自動算出され表示される。上述した手法で製品全体の体積は既に把握されているので、その体積と指定された素材径に基づき、必要な素材長さが算出される。つまり、製品全体の体積を、素材径により求まる素材の断面積で割ればよい。ここでは、素材径として例えば「18」を指定することで、素材長「52.77」が自動算出され表示される。さらに、素材径に基づき、機種を自動選定するように構成してもよい。
【0017】
このようにして、素材径が特定されると共に、素材長、機種、体積が決定され、さらには材質が特定されることで重量が自動算出される。さらに、本実施例のシステムでは、図4に示すように、その入力結果を3Dとして、立体的に確認することができる。それには、基礎入力画面の上部メニューにおいて、「3D」ボタンをクリックすればよい。これにより、図4に示すように、形状要素ごとに入力した結果を、連結した状態として3Dで見ることができる。画面上で、マウスを操作することで、表示された製品を任意の方向へ回転させることも可能である。
【0018】
この3D画面には、表示された製品の所定寸法(前記各形状要素の基礎寸法)も表形式で表示され、その数値の変更をその場でできる。数値を変更すると、その結果が3D上の立体画面および前記基礎設計画面中の寸法や体積および重量などにも、自動計算されて反映される。さらに、この寸法変更は、一連の工程・金型設計の作業全体についても反映可能である。従って、寸法の修正が容易である。なお、特定箇所の寸法修正は、その部分のみを変更した形状に修正するようにしてもよいが、本実施例では、その寸法修正に合わせて他の部分も相似形へ修正するよう構成している。以上の動作の実現には、パラメトリック理論を用いることができる。
【0019】
さらに、図3の基礎設計画面において、「工程検討」ボタンをクリックすると、まず工程設計手段中の加工判定手段により、加工が可能か否かの加工判定処理がなされ、図5に示すように、その結果が画面表示される。
【0020】
そのために、まず前記算出された各形状要素の体積と、前記指定された素材径とに基づき、各形状要素が占める素材高さが自動算出される。ここでは、要素1については、その体積が7068.583であったから、その素材高は7068.583/(π*92)から「27.77」と算出され、要素2については、その体積が6361.724であったから、その素材高は6361.724/(π*92)から「25」と算出され所定箇所へ表示される。
【0021】
次に、その素材高さや基礎寸法を用いて、各形状要素について加工率が算出される。課効率として、本実施例では、据込み比、据込み率および絞り率が採用され、その内の所望の加工率を自動算出して、その結果に基づき加工可否を判定する。ここで、据込み比、据込み率および絞り率について、図6を参照しつつ念のため説明する。
【0022】
まず、据込み比sは、s=h/d0で定義される。本実施例では、座屈の限界から工程数を分ける必要があるか判断するときの目安に使用する。例えば、軟鋼(S10C〜S18C)の場合、次の関係があるとして、これを工程数の決定に利用する。なお、次式において、「2.25」などが据込み比といえる。
【0023】
h≦2.25d0 なら 1度打ち
2.5d0≦h≦4.5d0 なら 2度打ち
4.5d0≦h≦7.5d0 なら 3度打ち
但し、中間で焼きなましをしない限りD≦2.2d0を限度とする。
【0024】
据込み率εh(%)は、εh=(h−H)/h*100=(1−(d0/D)2)*100で定義される。また、絞り率(断面減少率)εa(%)は、前方押出しの場合は、εa=(1−(d/d0)2)*100、後方押出しの場合は、εa=(d/d0)2*100で定義される。なお、図7には、基本的加工方式と、据込み率または絞り率との関係を示した。この図表下部に例示するように、素材の材質によって、適切な据込み率または絞り率の範囲を定め、これを利用して加工可否を判定する。
【0025】
さて、本実施例では、図5に示すように、形状要素1について、素材から製品への加工前後の形状変化に基づき据込みが必要なことが判定され、据込み比は、27.77/18=1.54として算出され、据込み率は、(27.77−15)/27.77*100=45.98として算出される。そして、これら結果が、選択された材質に対する加工率を満足しているか否かが判定され、その結果が加工判定欄に「NG」または「OK」として表示される。万一「NG」の場合には、素材径や材質などを変更すれば自動で再演算される。また、形状要素2については、本実施例では素材径をそのまま使用するので、未加工と判定され、加工率を算出する必要はない。
【0026】
ところで、このようにして算出された加工率と、選択された機種の性能に基づいて、加工可否を決定することもできる。すなわち、加工機械のダイスおよびパンチ数により加工可能工程数が定まると共に、前記据込み比により工程数が定まるので、両者の関係からその加工機械でその製品の加工ができるか否かが判定できる。さらに、圧造力を算出して、その算出結果と選定加工機械の出力可能能力とを比較して、加工可否を判定するようにできる。
【0027】
あるいは逆に、据込み比と圧造力を求めることで、それに対応した加工機械を自動選定するよう構成することもできる。その場合、加工機械ごとに、ダイスおよびパンチ数(またはそれらから求められる加工可能工程数)と、出力可能能力とを対応して記憶しておき、算出された据込み比による工程数と、算出された圧造力から、その条件を満足する加工機械を自動選定するのである。
【0028】
なお、圧造力について念のため説明しておくと、据込みの場合の圧造力は、P=F*Kf*(1+((μD)/(3H)))で求められる。Fは断面積(πD2/4)であり、Kfは変形抵抗であり、μは摩擦係数である。また、絞りの場合の圧造力は、P=F*Kf*C*Kで求められる。Fは断面積(πd02/4)であり、Kfは変形抵抗であり、Cは拘束係数、Kは絞り角度係数である。
【0029】
このようにして、素材径、素材長、加工機械機種、材質、工程数が決定し、加工が可能であることを判定すると、次に工程設計が行われる。これは、図5の基礎設計画面において、「工程設計」ボタン(不図示)をクリックすることで、工程設計手段により行われる。工程設計ボタンがクリックされると、自動で工程設計がなされるよう構成するのが望ましいが、ここではまず手動設計の場合を説明する。
【0030】
手動設計の場合、工程設計ボタンがクリックされると、図8および図9に示される加工工程画面が表示される。そして、この画面の下部において、加工したい要素番号(上述の例では1なら欠球部、2なら円柱部)と、加工タイプ(据込みまたは絞りについてそれぞれ複数用意)を選択し、その加工タイプに応じてどの程度の加工を行うのか(例えば素材径の何%、加工後の直径や角度など)を数値で入力し、さらに所望により修正値を指定する。これにより、加工前後の各形状に基づいて、加工率や圧造力が算出され、それに基づきその工程が実行可能な場合には、その工程が採用される。
【0031】
そして、図8〜図10に示すように、以後、同様にして次工程以降が設計され、最終製品までの各工程を設計する。例えば、第一工程と第二工程で順に製作する場合には、まず、設定された第一工程終了後の中間素材の形状を想定し、その形状と加工前の素材形状とから加工可否を判定し、加工可能ならば、次に、その設定された第一工程終了後の中間素材の形状と、最終製品の形状とから加工可否を判定すればよい。なお、これら工程設計を自動で行う場合には、過去の類似の設計データなどを利用して、各工程の加工タイプや加工程度を任意に作成して、コンピュータ自身がシミュレーションを繰り返して最適化することになる。
【0032】
本実施例では自動化されており、図8〜図10に示される加工工程画面が確認画面として順次に表示される。すなわち、「工程登録」ボタンをクリックすることで、順次に画面が切り替わり、最終工程において同ボタンをクリックすると、図11の次画面へ移行する。
【0033】
図11は、工程詳細画面であり、本実施例では、各工程の具体的内容および図面と、完成状態の斜視図が同時に表示される。すなわち、画面左上の工程表には、加工順に、どの形状要素をどの加工方法でどの程度加工するかが表示される。さらに、画面下部には、工程図が表示され、画面右上には、完成状態の斜視図が表示される。そして、これらの内容でよければ、「戻る」ボタンをクリックして図10の画面へ戻り、そこで「登録」ボタンをクリックすれば設計は完了し、図12の画面へ移行する。図12において、「金型図」ボタンをクリックすれば、金型設計図が表示され、プリントアウトすることができる。
【0034】
このようにして、工程設計が終了すると、図面出力手段などの結果出力手段により、各工程の状態を示した工程図が作成され、それに基づき各工程で使用される金型図を作成し、出力することができる。この出力は、ディスプレイ上の他、プリンターやプロッターへの出力も可能である。さらに、工作機械への金型工作用データを出力可能としてもよい。その場合には、直ちに所望の金型を製作することができる。
【0035】
このような設計作業の終了後には、上記一連の設計データは、データベースに登録可能である。そして、次回以降の設計時には、その登録した過去のデータを参照して、それを修正して使用可能である。
【0036】
なお、ユーザが保有する素材の素材径や材質を予め登録しておけば、その中から素材の選択が可能となる。また、加工機械についても同様に、ユーザが保有する加工機械とその性能を登録しておけば、その中から機種の選定を行うことができる。
【0037】
ところで、本実施例のシステムは、工程設計や金型設計の処理を行うサーバに、通信回線を介して端末から接続し、この端末から各種情報を入力して、その結果を端末側で得るようにすることができる。例えば、WWWブラウザを備えるパソコンから、インターネットでWEBサーバに接続し、そのウェブページ上にて素材径や形状要素・大きさなどを入力することで、工程および金型の設計ができるように構成してもよい。その場合、各端末による設計情報をサーバ側のデータベースに登録しておき、所望により複数端末でその情報を共用するようにしてもよい。
【0038】
最後に、本発明の設計システム実現のための入出力処理や設計処理をCD−ROM等の媒体(コンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体)で頒布可能である。或いは、前記処理を実行するコンピュータプログラムは、通信回線を介して各種端末に伝送して供給する(コンピュータに実行させるためのコンピュータ読取可能なプログラムを伝送する情報伝送媒体)ことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の工程・金型設計システムの一実施例の基礎設計画面を示す図である。
【図2】図1の状態から形状要素入力画面を出した状態を示す図である。
【図3】図2の形状要素入力画面にて形状要素を入力し終えた基礎設計画面を示す図である。
【図4】図3の基礎設計画面から3D表示画面を出した状態を示す図である。
【図5】図3の基礎設計画面から工程検討画面へ移行した状態を示す図である。
【図6】加工率の説明用の図である。
【図7】基本的加工方式と加工率との関係を示す図である。
【図8】工程設計画面を示す図である。
【図9】工程設計画面を示す図であり、図8の次画面である。
【図10】工程設計画面を示す図であり、図9の次画面である。
【図11】工程詳細画面を示す図である。
【図12】金型設計図出力用の画面を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてヘッダやパーツフォーマによる金属塑性加工の工程設計および金型設計を容易にするための工程・金型設計システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばボルトやナットなどのネジ部品や、その他の各種パーツ類の製作には、ヘッダやパーツフォーマと呼ばれる工作機械を用いて、パンチとダイスによる据込みまたは絞りなどの塑性加工がなされている。そのために、所望の最終製品の形状に基づき、素材や使用機械などを選定し、工程設計し、金型の製作がなされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の工程および金型の設計はすべて、作業者が複雑な計算を試行錯誤で繰り返したり、経験と勘に基づいたりしてなされていた。そのため、非常に手間や時間、費用を要するものであった。また、金型の製作は専門メーカに外注するのが通常であるため、金型を使用するユーザ側にはノウハウが蓄積されず、その情報を利用できなかった。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、簡易に低コストで工程および金型の設計が可能で、また過去の設計情報も有効活用できるシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の工程・金型設計システムは、塑性加工の工程設計および金型設計に用いられるシステムであって、(1)設計対象製品を構成する複数の立体形状要素それぞれについて、形状要素種別とその形状要素の大きさを特定する基礎寸法とが入力される形状要素入力手段と、(2)入力された各形状要素種別とその各基礎寸法とに基づき、各形状要素の体積を算出すると共に、その結果から製品全体の体積を算出する体積演算手段と、(3)算出された製品全体の体積と指定される素材径とに基づき、素材長さを算出する素材長演算手段と、(4)前記算出された各形状要素の体積と前記指定される素材径とに基づき、各形状要素が占める素材高さを算出し、素材径または素材高さと前記基礎寸法とに基づき、各形状要素について加工率を算出して加工可否を判定し、加工可能な場合には、加工方法と加工率とを順次に求めて工程設計する工程設計手段と、(5)設計された各工程における加工状態を示す工程図と、各工程で使用される金型を示す金型図の少なくとも一方を出力可能とする図面出力手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、簡易に低コストで工程や金型の設計ができる。また、設計情報を登録しておけば、各ユーザにおいて設計ノウハウを蓄積できるだけでなく、過去の設計情報を活用して新たな設計もできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の工程・金型設計システムの一実施例について、図面に基づき更に詳細に説明する。本実施例のシステムは、ボルトのようなネジ素材などの工程設計および金型設計に好適なシステムである。具体的には、金属製線材から所定長さを切り出して、ヘッダまたはパーツフォーマにより塑性加工して製作しようとする場合において、その工程設計および金型設計を簡易に行えるシステムである。
【0008】
本実施例のシステムは、所定プログラムがインストールされ、設計者としてのユーザにより操作されるパーソナルコンピュータから構成される。すなわち、記憶手段や制御手段(CPU)を備えるパソコン本体の他、キーボードやマウスなどの入力手段、ディスプレイやプリンターまたはプロッターなどの出力手段を備える。記憶手段は、メモリおよびハードディスクなどからなり、所定プログラムや各種データを記憶する。制御手段は、前記プログラムに従い各種演算を行うと共に、その他の手段を制御する。入力手段は、各種データを入力または選択する装置であり、出力手段は、各種データや図面を出力する装置である。そして、本実施例のシステムは、前記プログラムにより、形状要素入力手段、体積演算手段、素材長演算手段、工程設計手段、結果出力手段などが構築される。
【0009】
パソコン上で前記所定プログラムを起動して、設計作業が開始される。設計対象製品は、特に問わないが、ここでは図1(B)に示すように、丸棒状の軸部の上部に、半球状の頭部が一体的に設けられた製品の設計を行う場合を例に説明する。軸部は、直径が18mmで長さ25mm、頭部は、直径が30mmで高さ15mmとする(図10参照)。
【0010】
本実施例のシステムを使用して設計するに当たっては、設計対象製品をいくつかの基本的な立体形状要素に分けて考える。このような形状要素の種別として、本実施例のシステムでは、図2に示すように、「円柱」、「円錐台」、略半球状の「欠球」、「六角柱」、「四角柱」、「八角柱」、円柱の周側面の二箇所が対向して面取りされた「二方取円柱」、円柱の周側面の一箇所が面取りされた「一方取円柱」、中央に丸穴が貫通形成された「中空円柱」、中央に下方にのみ開口して丸穴が形成された「下空円柱」、+形状の「プラス溝」、−形状の「マイナス溝」の合計12種類を用意している。そして、これら各形状の大きさを特定するための基礎寸法の入力が可能とされている。本実施例の場合、円柱の場合は直径および高さ、円錐台の場合は上下端面の直径および高さ、欠球の場合は直径および高さ、六角柱の場合は面間隔および高さ、四角柱の場合は幅および高さ、八角柱の場合は面間隔および高さ、二方取円柱の場合は直径と面間隔および高さ、一方取円柱の場合は直径と幅および高さ、中空円柱の場合は内外径および高さ、下空円柱の場合は内外径と高さおよび穴の深さが、それぞれ基礎寸法として入力可能とされている。なお、形状要素としてどのような立体を採用するか、また各形状要素のどの部分を基礎寸法とするかは、適宜に変更可能である。
【0011】
さて、過去の設計情報を利用しない場合には、まず図1(A)に示す基礎設計画面からスタートする。これは、上述したように設計対象製品をいくつかの基本的な形状要素に分けて考え、各形状要素の種別の選択と、各形状要素の基礎寸法の入力を、形状要素入力手段により行うものである。
【0012】
図1(B)の製品の場合、上方から欠球と円柱に分けられるので、上部から順に形状要素とその基礎寸法を指定すればよい。そのために、まず図1(A)において「呼出」ボタンをクリックする。これにより、図2に示すように、別ウィンドウで形状要素入力画面を用いて行うことができる。この形状要素入力画面では、形状要素とその基礎寸法の位置が画像表示されると共に、形状要素の選択欄と、基礎寸法の入力欄が表示される。よって、形状要素の選択欄から、マウスでクリックすることで形状要素を選択すると共に、基礎寸法の入力欄に、その形状要素に必要な基礎寸法をキーボードから入力すればよい。
【0013】
図1(B)の製品の場合、まずは形状選択欄から「欠球」を選択すると共に、基礎寸法入力欄に直径として「30」高さとして「15」を入力し、「OK」ボタンをクリックすればよい。そして、引き続いて、形状選択欄から「円柱」を選択すると共に、基礎寸法入力欄に直径として「18」高さとして「25」を入力し、「OK」ボタンをクリックすればよい。そして、すべての形状要素とその基礎寸法を入力すれば、形状要素入力画面を閉じる。
【0014】
このようにして設計対象製品の形状要素とその基礎寸法を順に入力すると、前記基礎設計画面の所定欄が、図3に示すように埋められた形で表示される。ここでは、要素1として、形状が「欠球」、径(D1)が「30」、高さ(H)が「15」として入力され、要素2として、形状が「円柱」、径(D1)が「18」、高さ(H)が「25」として入力された状態で表示される。また、これと同時に、入力された情報に基づき、体積演算手段により各形状要素について体積計算がなされ、さらにそれらを加算して製品全体の体積が算出され表示される。例えば、欠球の体積は、この例では半球であるから((4*π*(D1/2)3)/3)/2で求められ、要素1の例では、2*π×153/3から「7068.583」と自動算出され、円柱の体積は、π*(D1/2)2*Hで求められるから、要素2の例では、π*92*25から「6361.724」と自動算出され、さらにそれらを合計した体積が「13430.307」と自動算出され、それぞれ該当欄に表示される。
【0015】
ところで、この基礎設計画面では、図3に示すように、素材径、素材長、機種、材質の特定欄も表示される。機種および材質は、予め登録されたものからプルダウンリストより選択可能とされている。ここで、材質が決まれば、その比重(密度)が定まるので、この比重と前記体積の積から、重量を自動算出することができる。つまり、前記各形状要素の体積と選択材質の比重に基づいて、各形状要素の重量を算出できる他、製品全体の体積と選択材質の比重に基づいて、製品全体の重量を算出して表示することができる。
【0016】
図3の前記基礎設計画面において、素材径(材料としての線材の直径)を指定すると、素材長(材料としての線材の切り出し長さ)が素材長演算手段により自動算出され表示される。上述した手法で製品全体の体積は既に把握されているので、その体積と指定された素材径に基づき、必要な素材長さが算出される。つまり、製品全体の体積を、素材径により求まる素材の断面積で割ればよい。ここでは、素材径として例えば「18」を指定することで、素材長「52.77」が自動算出され表示される。さらに、素材径に基づき、機種を自動選定するように構成してもよい。
【0017】
このようにして、素材径が特定されると共に、素材長、機種、体積が決定され、さらには材質が特定されることで重量が自動算出される。さらに、本実施例のシステムでは、図4に示すように、その入力結果を3Dとして、立体的に確認することができる。それには、基礎入力画面の上部メニューにおいて、「3D」ボタンをクリックすればよい。これにより、図4に示すように、形状要素ごとに入力した結果を、連結した状態として3Dで見ることができる。画面上で、マウスを操作することで、表示された製品を任意の方向へ回転させることも可能である。
【0018】
この3D画面には、表示された製品の所定寸法(前記各形状要素の基礎寸法)も表形式で表示され、その数値の変更をその場でできる。数値を変更すると、その結果が3D上の立体画面および前記基礎設計画面中の寸法や体積および重量などにも、自動計算されて反映される。さらに、この寸法変更は、一連の工程・金型設計の作業全体についても反映可能である。従って、寸法の修正が容易である。なお、特定箇所の寸法修正は、その部分のみを変更した形状に修正するようにしてもよいが、本実施例では、その寸法修正に合わせて他の部分も相似形へ修正するよう構成している。以上の動作の実現には、パラメトリック理論を用いることができる。
【0019】
さらに、図3の基礎設計画面において、「工程検討」ボタンをクリックすると、まず工程設計手段中の加工判定手段により、加工が可能か否かの加工判定処理がなされ、図5に示すように、その結果が画面表示される。
【0020】
そのために、まず前記算出された各形状要素の体積と、前記指定された素材径とに基づき、各形状要素が占める素材高さが自動算出される。ここでは、要素1については、その体積が7068.583であったから、その素材高は7068.583/(π*92)から「27.77」と算出され、要素2については、その体積が6361.724であったから、その素材高は6361.724/(π*92)から「25」と算出され所定箇所へ表示される。
【0021】
次に、その素材高さや基礎寸法を用いて、各形状要素について加工率が算出される。課効率として、本実施例では、据込み比、据込み率および絞り率が採用され、その内の所望の加工率を自動算出して、その結果に基づき加工可否を判定する。ここで、据込み比、据込み率および絞り率について、図6を参照しつつ念のため説明する。
【0022】
まず、据込み比sは、s=h/d0で定義される。本実施例では、座屈の限界から工程数を分ける必要があるか判断するときの目安に使用する。例えば、軟鋼(S10C〜S18C)の場合、次の関係があるとして、これを工程数の決定に利用する。なお、次式において、「2.25」などが据込み比といえる。
【0023】
h≦2.25d0 なら 1度打ち
2.5d0≦h≦4.5d0 なら 2度打ち
4.5d0≦h≦7.5d0 なら 3度打ち
但し、中間で焼きなましをしない限りD≦2.2d0を限度とする。
【0024】
据込み率εh(%)は、εh=(h−H)/h*100=(1−(d0/D)2)*100で定義される。また、絞り率(断面減少率)εa(%)は、前方押出しの場合は、εa=(1−(d/d0)2)*100、後方押出しの場合は、εa=(d/d0)2*100で定義される。なお、図7には、基本的加工方式と、据込み率または絞り率との関係を示した。この図表下部に例示するように、素材の材質によって、適切な据込み率または絞り率の範囲を定め、これを利用して加工可否を判定する。
【0025】
さて、本実施例では、図5に示すように、形状要素1について、素材から製品への加工前後の形状変化に基づき据込みが必要なことが判定され、据込み比は、27.77/18=1.54として算出され、据込み率は、(27.77−15)/27.77*100=45.98として算出される。そして、これら結果が、選択された材質に対する加工率を満足しているか否かが判定され、その結果が加工判定欄に「NG」または「OK」として表示される。万一「NG」の場合には、素材径や材質などを変更すれば自動で再演算される。また、形状要素2については、本実施例では素材径をそのまま使用するので、未加工と判定され、加工率を算出する必要はない。
【0026】
ところで、このようにして算出された加工率と、選択された機種の性能に基づいて、加工可否を決定することもできる。すなわち、加工機械のダイスおよびパンチ数により加工可能工程数が定まると共に、前記据込み比により工程数が定まるので、両者の関係からその加工機械でその製品の加工ができるか否かが判定できる。さらに、圧造力を算出して、その算出結果と選定加工機械の出力可能能力とを比較して、加工可否を判定するようにできる。
【0027】
あるいは逆に、据込み比と圧造力を求めることで、それに対応した加工機械を自動選定するよう構成することもできる。その場合、加工機械ごとに、ダイスおよびパンチ数(またはそれらから求められる加工可能工程数)と、出力可能能力とを対応して記憶しておき、算出された据込み比による工程数と、算出された圧造力から、その条件を満足する加工機械を自動選定するのである。
【0028】
なお、圧造力について念のため説明しておくと、据込みの場合の圧造力は、P=F*Kf*(1+((μD)/(3H)))で求められる。Fは断面積(πD2/4)であり、Kfは変形抵抗であり、μは摩擦係数である。また、絞りの場合の圧造力は、P=F*Kf*C*Kで求められる。Fは断面積(πd02/4)であり、Kfは変形抵抗であり、Cは拘束係数、Kは絞り角度係数である。
【0029】
このようにして、素材径、素材長、加工機械機種、材質、工程数が決定し、加工が可能であることを判定すると、次に工程設計が行われる。これは、図5の基礎設計画面において、「工程設計」ボタン(不図示)をクリックすることで、工程設計手段により行われる。工程設計ボタンがクリックされると、自動で工程設計がなされるよう構成するのが望ましいが、ここではまず手動設計の場合を説明する。
【0030】
手動設計の場合、工程設計ボタンがクリックされると、図8および図9に示される加工工程画面が表示される。そして、この画面の下部において、加工したい要素番号(上述の例では1なら欠球部、2なら円柱部)と、加工タイプ(据込みまたは絞りについてそれぞれ複数用意)を選択し、その加工タイプに応じてどの程度の加工を行うのか(例えば素材径の何%、加工後の直径や角度など)を数値で入力し、さらに所望により修正値を指定する。これにより、加工前後の各形状に基づいて、加工率や圧造力が算出され、それに基づきその工程が実行可能な場合には、その工程が採用される。
【0031】
そして、図8〜図10に示すように、以後、同様にして次工程以降が設計され、最終製品までの各工程を設計する。例えば、第一工程と第二工程で順に製作する場合には、まず、設定された第一工程終了後の中間素材の形状を想定し、その形状と加工前の素材形状とから加工可否を判定し、加工可能ならば、次に、その設定された第一工程終了後の中間素材の形状と、最終製品の形状とから加工可否を判定すればよい。なお、これら工程設計を自動で行う場合には、過去の類似の設計データなどを利用して、各工程の加工タイプや加工程度を任意に作成して、コンピュータ自身がシミュレーションを繰り返して最適化することになる。
【0032】
本実施例では自動化されており、図8〜図10に示される加工工程画面が確認画面として順次に表示される。すなわち、「工程登録」ボタンをクリックすることで、順次に画面が切り替わり、最終工程において同ボタンをクリックすると、図11の次画面へ移行する。
【0033】
図11は、工程詳細画面であり、本実施例では、各工程の具体的内容および図面と、完成状態の斜視図が同時に表示される。すなわち、画面左上の工程表には、加工順に、どの形状要素をどの加工方法でどの程度加工するかが表示される。さらに、画面下部には、工程図が表示され、画面右上には、完成状態の斜視図が表示される。そして、これらの内容でよければ、「戻る」ボタンをクリックして図10の画面へ戻り、そこで「登録」ボタンをクリックすれば設計は完了し、図12の画面へ移行する。図12において、「金型図」ボタンをクリックすれば、金型設計図が表示され、プリントアウトすることができる。
【0034】
このようにして、工程設計が終了すると、図面出力手段などの結果出力手段により、各工程の状態を示した工程図が作成され、それに基づき各工程で使用される金型図を作成し、出力することができる。この出力は、ディスプレイ上の他、プリンターやプロッターへの出力も可能である。さらに、工作機械への金型工作用データを出力可能としてもよい。その場合には、直ちに所望の金型を製作することができる。
【0035】
このような設計作業の終了後には、上記一連の設計データは、データベースに登録可能である。そして、次回以降の設計時には、その登録した過去のデータを参照して、それを修正して使用可能である。
【0036】
なお、ユーザが保有する素材の素材径や材質を予め登録しておけば、その中から素材の選択が可能となる。また、加工機械についても同様に、ユーザが保有する加工機械とその性能を登録しておけば、その中から機種の選定を行うことができる。
【0037】
ところで、本実施例のシステムは、工程設計や金型設計の処理を行うサーバに、通信回線を介して端末から接続し、この端末から各種情報を入力して、その結果を端末側で得るようにすることができる。例えば、WWWブラウザを備えるパソコンから、インターネットでWEBサーバに接続し、そのウェブページ上にて素材径や形状要素・大きさなどを入力することで、工程および金型の設計ができるように構成してもよい。その場合、各端末による設計情報をサーバ側のデータベースに登録しておき、所望により複数端末でその情報を共用するようにしてもよい。
【0038】
最後に、本発明の設計システム実現のための入出力処理や設計処理をCD−ROM等の媒体(コンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体)で頒布可能である。或いは、前記処理を実行するコンピュータプログラムは、通信回線を介して各種端末に伝送して供給する(コンピュータに実行させるためのコンピュータ読取可能なプログラムを伝送する情報伝送媒体)ことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の工程・金型設計システムの一実施例の基礎設計画面を示す図である。
【図2】図1の状態から形状要素入力画面を出した状態を示す図である。
【図3】図2の形状要素入力画面にて形状要素を入力し終えた基礎設計画面を示す図である。
【図4】図3の基礎設計画面から3D表示画面を出した状態を示す図である。
【図5】図3の基礎設計画面から工程検討画面へ移行した状態を示す図である。
【図6】加工率の説明用の図である。
【図7】基本的加工方式と加工率との関係を示す図である。
【図8】工程設計画面を示す図である。
【図9】工程設計画面を示す図であり、図8の次画面である。
【図10】工程設計画面を示す図であり、図9の次画面である。
【図11】工程詳細画面を示す図である。
【図12】金型設計図出力用の画面を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塑性加工の工程設計および金型設計に用いられるシステムであって、
設計対象製品を構成する複数の立体形状要素それぞれについて、形状要素種別とその形状要素の大きさを特定する基礎寸法とが入力される形状要素入力手段と、
入力された各形状要素種別とその各基礎寸法とに基づき、各形状要素の体積を算出すると共に、その結果から製品全体の体積を算出する体積演算手段と、
算出された製品全体の体積と指定される素材径とに基づき、素材長さを算出する素材長演算手段と、
前記算出された各形状要素の体積と前記指定される素材径とに基づき、各形状要素が占める素材高さを算出し、素材径または素材高さと前記基礎寸法とに基づき、各形状要素について加工率を算出して加工可否を判定し、加工可能な場合には、加工方法と加工率とを順次に求めて工程設計する工程設計手段と、
設計された各工程における加工状態を示す工程図と、各工程で使用される金型を示す金型図の少なくとも一方を出力可能とする図面出力手段と
を備えることを特徴とする工程・金型設計システム。
【請求項2】
素材の材質の指定が可能とされており、この指定された材質の比重と、前記体積演算手段により算出された体積とに基づき、少なくとも製品全体の重量を算出し出力可能とされた
ことを特徴とする請求項1に記載の工程・金型設計システム。
【請求項3】
前記工程設計手段は、前記素材径、前記加工方法、中間工程における製品寸法のいずれかを変更して、加工率を演算し直すことで、工程設計のシミュレーションが可能とされている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の工程・金型設計システム。
【請求項4】
ディスプレイ上への製品の立体表示が可能とされ、変更したい箇所の寸法が指定されることにより、製品全体が相似形に修正されて表示可能とされ、
この修正結果に基づき、少なくとも前記体積演算と素材長演算がなされる
ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の工程・金型設計システム。
【請求項5】
複数の加工機械について、ダイスおよびパンチ数、またはそれらから求まる加工可能工程数、さらには出力可能能力が機種ごとに対応して記憶されており、
前記工程設計手段は、前記加工率を用いて工程数を算出する一方、圧造力を算出し、それら算出結果と前記記憶データに基づき加工機械を自動選定する
ことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の工程・金型設計システム。
【請求項6】
加工機械の機種の選定が可能とされており、
選定された機種の出力可能能力に基づき、その機種による加工の可否が判定され、
選定された機種のダイスおよびパンチ数により求まる加工可能工程数に基づき、工程設計する
ことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかに記載の工程・金型設計システム。
【請求項7】
前記工程図または前記金型図に加えて、工作機械への金型工作用データが出力可能とされた
ことを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかに記載の工程・金型設計システム。
【請求項8】
ユーザが保有する素材が登録されており、その内のいずれかを選択することで素材径が特定される
ことを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれかに記載の工程・金型設計システム。
【請求項9】
工程・金型設計終了後にはその設計情報が登録可能とされ、過去に行った設計情報を読み出して修正することで新たな設計が可能とされた
ことを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれかに記載の工程・金型設計システム。
【請求項10】
少なくとも前記形状要素入力手段、前記体積演算手段、前記素材長演算手段、および前記工程設計手段として、コンピュータを機能させるための請求項1から請求項9までのいずれかに記載の工程・金型設計システム用のプログラム。
【請求項1】
塑性加工の工程設計および金型設計に用いられるシステムであって、
設計対象製品を構成する複数の立体形状要素それぞれについて、形状要素種別とその形状要素の大きさを特定する基礎寸法とが入力される形状要素入力手段と、
入力された各形状要素種別とその各基礎寸法とに基づき、各形状要素の体積を算出すると共に、その結果から製品全体の体積を算出する体積演算手段と、
算出された製品全体の体積と指定される素材径とに基づき、素材長さを算出する素材長演算手段と、
前記算出された各形状要素の体積と前記指定される素材径とに基づき、各形状要素が占める素材高さを算出し、素材径または素材高さと前記基礎寸法とに基づき、各形状要素について加工率を算出して加工可否を判定し、加工可能な場合には、加工方法と加工率とを順次に求めて工程設計する工程設計手段と、
設計された各工程における加工状態を示す工程図と、各工程で使用される金型を示す金型図の少なくとも一方を出力可能とする図面出力手段と
を備えることを特徴とする工程・金型設計システム。
【請求項2】
素材の材質の指定が可能とされており、この指定された材質の比重と、前記体積演算手段により算出された体積とに基づき、少なくとも製品全体の重量を算出し出力可能とされた
ことを特徴とする請求項1に記載の工程・金型設計システム。
【請求項3】
前記工程設計手段は、前記素材径、前記加工方法、中間工程における製品寸法のいずれかを変更して、加工率を演算し直すことで、工程設計のシミュレーションが可能とされている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の工程・金型設計システム。
【請求項4】
ディスプレイ上への製品の立体表示が可能とされ、変更したい箇所の寸法が指定されることにより、製品全体が相似形に修正されて表示可能とされ、
この修正結果に基づき、少なくとも前記体積演算と素材長演算がなされる
ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の工程・金型設計システム。
【請求項5】
複数の加工機械について、ダイスおよびパンチ数、またはそれらから求まる加工可能工程数、さらには出力可能能力が機種ごとに対応して記憶されており、
前記工程設計手段は、前記加工率を用いて工程数を算出する一方、圧造力を算出し、それら算出結果と前記記憶データに基づき加工機械を自動選定する
ことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の工程・金型設計システム。
【請求項6】
加工機械の機種の選定が可能とされており、
選定された機種の出力可能能力に基づき、その機種による加工の可否が判定され、
選定された機種のダイスおよびパンチ数により求まる加工可能工程数に基づき、工程設計する
ことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかに記載の工程・金型設計システム。
【請求項7】
前記工程図または前記金型図に加えて、工作機械への金型工作用データが出力可能とされた
ことを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかに記載の工程・金型設計システム。
【請求項8】
ユーザが保有する素材が登録されており、その内のいずれかを選択することで素材径が特定される
ことを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれかに記載の工程・金型設計システム。
【請求項9】
工程・金型設計終了後にはその設計情報が登録可能とされ、過去に行った設計情報を読み出して修正することで新たな設計が可能とされた
ことを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれかに記載の工程・金型設計システム。
【請求項10】
少なくとも前記形状要素入力手段、前記体積演算手段、前記素材長演算手段、および前記工程設計手段として、コンピュータを機能させるための請求項1から請求項9までのいずれかに記載の工程・金型設計システム用のプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−43758(P2006−43758A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−232181(P2004−232181)
【出願日】平成16年8月9日(2004.8.9)
【出願人】(504303481)絹川ネジ工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月9日(2004.8.9)
【出願人】(504303481)絹川ネジ工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
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