説明

差動信号故障検出装置及び差動信号故障検出方法

【課題】故障箇所が送信端であるか受信端であるかを容易に特定し得る、差動信号故障検出装置等を提供する。
【解決手段】差動信号故障検出装置10は、互いに逆位相となる二つの信号A,Bがそれぞれ伝送される第一及び第二の伝送線路93a,93bについて故障を検出するものであり、波形生成手段20、異常検出手段30及び故障判定手段40を備えている。波形生成手段20は、伝送線路93a,93bを流れる信号A,Bの対称性を示す波形(信号C)を生成する。異常検出手段30は、波形生成手段20で生成された波形(信号C)の異常(信号E)を検出する。故障判定手段40は、異常検出手段30で検出された異常(信号E)に基づいて伝送線路93a,93bにおける故障を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容量結合された高速差動信号伝送に関し、詳しくはその差動信号の故障を検出するための差動信号故障検出装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
容量結合はACカップリングとも呼ばれる。容量結合された高速差動信号伝送としては、SAS、PCI−Expressなどが知られている。SASとは、SCSI(Small Computer System Interface)の高速シリアル伝送規格である。PCI−Expressとは、PCI(Peripheral Component Interconnect)の高速シリアル伝送規格である。
【0003】
図5は、関連技術における高速差動信号伝送装置を示す回路図である。以下、この図面に基づき説明する。
【0004】
高速差動信号伝送装置90は、送信バッファ91、受信バッファ92、伝送線路93a,93b、送信側のACカップリングコンデンサ94a,94b、受信側のACカップリングコンデンサ95a,95b、故障検出回路96などから構成されている。伝送線路93a,93bには、互いに逆位相となる二つの信号A,Bがそれぞれ伝送される。送信バッファ91は、伝送線路93a,93bの送信端に設けられ、信号A,Bを送信する。受信バッファ92は、伝送線路93a,93bの受信端に設けられ、信号A,Bを受信する。ACカップリングコンデンサ94a,94b,95a,95bは、伝送線路93a,93bの受信側及び送信側に設けられ、信号A,Bに含まれる直流成分を遮断する。故障検出回路96は、受信バッファ92の出力側に設けられ、送信バッファ91から受信バッファ92までのどこかで故障が発生したことを検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−167796号公報
【特許文献2】特開平8−43472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、関連技術では、受信バッファ92の先の故障検出回路96でしか、故障を検出していなかった。そのため、せっかく故障を検出しても、その故障が送信端で発生したのか受信端で発生したのかを判断することができなかった。
【0007】
つまり、関連技術の高速差動信号伝送装置90では、送信端と受信端とが一対一に接続されており、かつ、受信端でしか経路故障(伝送エラー)を検出できなかった。そのため、送信端の障害で伝送エラーとなったのか、受信端の障害で伝送エラーとなったのか、という被疑判断が明確にできなかった。その結果、伝送エラーによる被疑の特定、すなわち送信端であるか受信端であるかの被疑判断ができず、これにより双方を交換する場合が多かった。
【0008】
また、特許文献1、2には、伝送線路の障害を検出する装置が開示されているが、いずれも極めて複雑な構成であった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、故障箇所が送信端であるか受信端であるかを容易に特定し得る差動信号故障検出装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る差動信号故障検出装置は、
互いに逆位相となる二つの信号がそれぞれ伝送される第一及び第二の伝送線路について、故障を検出する差動信号故障検出装置であって、
前記第一及び第二の伝送線路を流れる前記信号の対称性を示す波形を生成する波形生成手段と、
この波形生成手段で生成された前記波形の異常を検出する異常検出手段と、
この異常検出手段で検出された異常に基づいて前記第一及び第二の伝送線路における故障を判定する故障判定手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る差動信号故障検出方法は、
互いに逆位相となる二つの信号がそれぞれ伝送される第一及び第二の伝送線路について、故障を検出する差動信号故障検出方法であって、
前記第一及び第二の伝送線路を流れる前記信号の対称性を示す波形を生成し、
生成された前記波形の異常を検出し、
検出された前記異常に基づいて前記第一及び第二の伝送線路における故障を判定する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、信号の対称性の崩れを利用することにより、伝送線路の途中で故障を検出しているので、故障箇所が送信端であるか受信端であるかを容易に判断できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る差動信号故障検出装置を示す回路図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る差動信号故障検出方法を示す流れ図である。
【図3】図1の差動信号故障検出装置における各信号の正常時の波形を示すグラフである。
【図4】図1の差動信号故障検出装置における各信号の異常時の波形を示すグラフである。
【図5】関連技術における高速差動信号伝送装置を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)について説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る差動信号故障検出装置を示す回路図である。以下、この図面に基づき説明する。なお、図1において、図5に示した構成要素については同一の符号を用いることにする。
【0016】
本実施形態の差動信号故障検出装置10は、互いに逆位相となる二つの信号A,Bがそれぞれ伝送される第一及び第二の伝送線路93a,93bについて故障を検出するものであり、波形生成手段20、異常検出手段30及び故障判定手段40を備えている。波形生成手段20は、伝送線路93a,93bを流れる信号A,Bの対称性を示す波形(信号C)を生成する。異常検出手段30は、波形生成手段20で生成された波形(信号C)の異常(信号E)を検出する。故障判定手段40は、異常検出手段30で検出された異常(信号E)に基づいて伝送線路93a,93bにおける故障を判定する。
【0017】
正常時の信号A,Bは、互いに逆位相となるため、対称な波形である。何らかの理由でこの対称性が崩れると、差動信号故障検出装置10は伝送線路93a,93bにおいて故障が発生したと判定する。つまり、受信側ではなく送信側の故障であると判定できる。また、故障検出回路96から故障を示す信号(信号I)が出力され、差動信号故障検出装置10から故障を示す信号(信号H)が出力されない場合は、受信側の故障であると判定できる。
【0018】
例えば、波形生成手段20は、対称性を示す波形として、伝送線路93a,93bを流れる信号A,Bの重畳波形(信号C)を生成する。このとき、異常検出手段30は、波形生成手段20で生成された重畳波形(信号C)の積分値(信号E)を得ることにより、重畳波形(信号C)の異常を検出する。故障判定手段40は、異常検出手段30で得られた積分値(信号E)が閾値Vthを越えた場合に、伝送線路93a,93bにおいて故障が発生したと判定する。
【0019】
次に、各手段の具体例について説明する。
【0020】
波形生成手段20は、伝送線路93aに流れる信号Aを取り出す第一の抵抗器21aと、伝送線路93bに流れる信号Bを取り出す第二の抵抗器21bと、抵抗器21aから取り出された信号Aと抵抗器21bから取り出された信号Bとの重畳波形(信号C)を生成するインダクタ22と、を有する。
【0021】
異常検出手段30は、波形生成手段20で生成された重畳波形に相当する電圧(信号C)と基準電圧Vrefとの差に相当する差電圧(信号D)を出力するオペアンプ31と、オペアンプ31から出力された差電圧(信号D)のみを出力するダイオード32と、ダイオード32によって充電され積分値に相当する電圧(信号E)を保持するコンデンサ33と、を有する。
【0022】
故障判定手段40は、異常検出手段30で得られた積分値(信号E)と閾値Vthとの大小関係を出力するバッファ41と、積分値(信号E)が閾値Vthを越えたことをバッファ41が出力した場合に、故障を示す判定信号(信号H)を出力するとともに、コンデンサ33を放電するための放電信号(信号G)を出力する判定部42と、判定部42から出力された放電信号(信号G)に基づいてコンデンサ33を放電するトランジスタ43と、を有する。
【0023】
次に、各素子の接続関係について説明する。
【0024】
波形生成手段20は、抵抗器21a,21bと、インダクタ22と、接続点23と、接地点24とを有する。抵抗器21aは一端211aが伝送線路93aに接続され、抵抗器21bは一端211bが伝送線路93bに接続されている。抵抗器21aの他端212aと抵抗器21bの他端212bとが、接続点23に接続されている。インダクタ22は、一端221が接続点23に接続され、他端222が接地点24に接続されている。
【0025】
異常検出手段30は、オペアンプ31と、ダイオード32と、コンデンサ33と、接地点34とを有する。オペアンプ31は、接続点23の電圧(信号C)と基準電圧Vrefとをそれぞれ入力する二つの入力端子31+,31−、及び、入力端子31+,31−から入力した電圧の差に相当する電圧(信号D)を出力する出力端子312を含む。ダイオード32は、アノード321が出力端子312に接続されている。コンデンサ33は、一端331がダイオード32のカソード322に接続され、他端332が接地点34に接続されている。
【0026】
故障判定手段40は、バッファ41と、判定部42と、トランジスタ43と、接地点44とを有する。バッファ41は、異常検出手段30で得られた積分値(信号E)を入力する入力端子411、及び、積分値(信号E)と閾値Vthとの大小関係を示す信号Fを出力する出力端子412を含む。判定部42は、出力端子412から信号Fを入力し、信号Fが「信号E>閾値Vth」を示した場合に、故障を示す判定信号(信号H)を出力するとともに、コンデンサ33を放電するための放電信号(信号G)を出力する。トランジスタ43は、ゲート43gが放電信号(信号G)を入力し、ドレイン43dがコンデンサ33の一端331に接続され、ソース43sが接地点44に接続されている。判定部42は、例えばバッファやマイクロコンピュータ及びそのプログラムで実現することができる。
【0027】
図2は、本発明の一実施形態に係る差動信号故障検出方法を示す流れ図である。以下、図1及び図2に基づき、本実施形態の差動信号故障検出方法を説明する。
【0028】
本実施形態の差動信号故障検出方法は、差動信号故障検出装置10の動作を方法の発明として捉えたものであり、差動信号故障検出装置10と同様の効果を奏する。すなわち、本実施形態の差動信号故障検出方法は、互いに逆位相となる二つの信号A,Bがそれぞれ伝送される第一及び第二の伝送線路93a,93bについて、故障を検出する差動信号故障検出方法であって、次の三つのステップを基本的に含む。まず、伝送線路93a,93bを流れる信号A,Bの対称性を示す波形(信号C)を生成する(ステップ51)。続いて、生成された波形(信号C)の異常(信号E)を検出する(ステップ52)。最後に、検出された異常(信号E)に基づいて伝送線路93a,93bにおける故障を判定する(ステップ53)。
【0029】
例えば、ステップ51では、対称性を示す波形として、伝送線路93a,93bを流れる信号A,Bの重畳波形(信号C)を生成する。このとき、ステップ52では、ステップ51で生成された重畳波形(信号C)の積分値(信号E)を得ることにより、重畳波形(信号C)の異常を検出する。ステップ53では、ステップ52で得られた積分値(信号E)が閾値Vthを越えた場合に、伝送線路93a,93bにおいて故障が発生したと判定する。
【0030】
次に、各ステップの具体例について説明する。
【0031】
ステップ51では、伝送線路93aに流れる信号Aを第一の抵抗器21aを介して取り出すとともに、伝送線路93bに流れる信号Bを第二の抵抗器21bを介して取り出し、抵抗器21aから取り出された信号Aと抵抗器21bから取り出された信号Bとの重畳波形(信号C)をインダクタ22を介して生成する。
【0032】
ステップ52では、ステップ51で生成された重畳波形に相当する電圧(信号C)と基準電圧Vrefとの差に相当する差電圧(信号D)をオペアンプ31を介して出力し、オペアンプ31から出力された差電圧(信号D)のみをダイオード32を介して出力し、ダイオード32によってコンデンサ33を充電し、積分値に相当する電圧(信号E)をコンデンサ33を介して保持する。
【0033】
ステップ53では、ステップ52で得られた積分値(信号E)と閾値Vthとの大小関係をバッファ41を介して出力し、積分値(信号E)が閾値Vthを越えたことをバッファ41が出力した場合に、故障を示す判定信号(信号H)を判定部42を介して出力するとともに、コンデンサ33を放電するための放電信号(信号G)を判定部42を介して出力し、判定部42から出力された放電信号(信号G)に基づいてコンデンサ33をトランジスタ43を介して放電する。
【0034】
以下、本実施形態の差動信号故障検出装置10について更に詳しく説明する。
【0035】
差動信号故障検出装置10は、抵抗器21a,21b、インダクタ22、オペアンプ31、ダイオード32、コンデンサ33、バッファ41、判定部42、トランジスタ43などから構成される。
【0036】
抵抗器21a,21bは、送信バッファ91と受信バッファ92とACカップリングコンデンサ94a,94b,95a,95bとが付設された差動信号の伝送線路93a,93bに対して、差動信号の波形に影響を与えない程度に高い抵抗値を有する。インダクタ22は、伝送線路93a,93bの重畳波形をグランド(接地)レベルを中心に振幅させる。オペアンプ31は、差動信号の電圧振幅の対称性が崩れたことを検出する。ダイオード32及びコンデンサ33は、オペアンプ31の出力を積分する。バッファ41は、積分された電位をデジタルロジック(1/0)に変換する。判定部42は、バッファ41の出力より伝送エラーが発生したことを判定する。トランジスタ43は、FET(Field Effect Transistor)であり、判定部42による伝送エラー判定後に、コンデンサ33に蓄積された電荷を放電する。
【0037】
伝送線路93a,93bの差動信号(信号A,B)は、抵抗器21a,21b及びインダクタ22を介して信号Cとなる。信号Cは、高周波成分を取り除くローパスフィルタとしてのインダクタ22と、オペアンプ31のプラス側の入力端子31+とに供給される。インダクタ22の他方はグランドに接地される。オペアンプ31のマイナス側の入力端子31−には、ノイズの影響を受けないレベルに設定された基準電圧Vrefに接続される。オペアンプ31から出力された信号Dは、ダイオード32のアノード321に供給される。ダイオード32のカソード322から出力された信号Eは、コンデンサ33とバッファ41の入力端子411とトランジスタ43のドレイン43dに供給される。また、コンデンサ33の他方は接地される。バッファ41から出力された信号Fは、判定部42に供給される。トランジスタ43のソース43sはグランドに接地される。トランジスタ43のゲート43gには、判定部42から信号Gが印加される。
【0038】
図3は、差動信号故障検出装置10における信号A〜Fの正常時の波形を示すグラフである。図4は、差動信号故障検出装置10における信号A〜Fの異常時の波形を示すグラフである。以下、図1乃至図4に基づき、差動信号故障検出装置の動作を詳しく説明する。
【0039】
図3は正常に動作しているときの信号A〜Fの波形であり、図4は異常(故障)のときの信号A〜Fの波形を示す図である。信号A〜Fは、正常時のときをA1〜F1として「1」を付して示し、異常時のときをA2〜F2として「2」を付して示す。
【0040】
まず、図3を参照して正常時の動作を説明する。送信バッファ91から出力された信号A1,B1は、図示するように互いに反転する波形となる。これらの信号A1,B1が抵抗器21a,21bを介してワイヤードされるため、信号C1はグランドレベルの波形となる。また、インダクタ22は、ローパスフィルタであり、信号C1に含まれる必要のない高周波成分を取り除く役割を持つ。信号C1がオペアンプ31のプラス側に入力され、ノイズの影響を受けないレベルに設定された基準電圧Vrefがオペアンプ31のマイナス側に入力されると、オペアンプ31が出力する信号D1はグランドレベルの波形となる。信号D1がグランドレベルであるため、コンデンサ33の充電電圧である信号E1はグランドレベル、バッファ41から出力される信号F1はLowレベルとなる。
【0041】
次に、図4を参照して異常時の動作を説明する。ここでは、故障事例として信号B2が出力されない場合を採り上げる。このとき、信号A2,B2は抵抗器21a,21bを介してワイヤードされるため、信号C2は正弦波のような波形となる。また、インダクタ22は、ローパスフィルタであり、信号C2に含まれる必要のない高周波成分を取り除く役割を持つ。信号C2がオペアンプ31のプラス側に入力され、ノイズに影響を受けない電圧Vrefがオペアンプ31のマイナス側に入力されると、オペアンプ31から出力された信号D2は半波整流されたような波形となる。信号D2は、ダイオード32のアノード321からカソード322へ流れ、コンデンサ33にチャージされる。信号Eは徐々に電圧が上がってある閾値Vthに達すると、バッファ41はHighレベルの信号Fを出力する。判定部42は、バッファ41のHighレベルの信号Fを検知することにより、伝送故障と判断する。また、コンデンサ33にチャージされた電荷はそのままでは抜けないため、ディスチャージ用のトランジスタ43を備える。判定部42は、ディスチャージを指示してトランジスタ43のゲート43gを開き、これによりコンデンサ33の電荷をディスチャージする機能を有する。
【0042】
本実施形態によれば、信号A,Bの対称性の崩れを利用することにより、伝送線路93a,93bの途中で故障を検出しているので、故障箇所が送信端か受信端かを容易に判断できる。また、被疑デバイスを特定できることにより、送信端及び受信端の双方のデバイスを交換する必要がなくなる。
【0043】
次に、本発明について総括する。本発明は、カップリングされた高速平衡伝送を使用している装置において、伝送線路の途中で故障を検出する回路である。本発明は、容量結合(ACカップリング)された高速差動信号伝送を使用している装置において、出力バッファと入力バッファとACカップリングコンデンサとからなる差動信号の伝送線路の途中に、差動信号故障検出装置を具備することにより、差動信号の電圧振幅の対称性を利用して平衡が崩れた場合にそれを検出することを特徴とする。本発明の差動信号故障検出装置は、差動信号の電圧振幅の対称性を利用してその平衡が崩れた場合、それを判定部が検出及び判定する手段を有する。この差動信号故障検出装置によって伝送エラーが検出された場合には、送信端側の伝送線路で故障があったと判定できる。
【0044】
換言すると、本発明の目的は、送信端と受信端の間に故障検出回路を備えて、故障箇所が送信端であるか受信端であるかを判断する回路を提供することである。すなわち、本発明は、出力バッファと入力バッファとカップリングコンデンサからなる差動伝送線路と、差動伝送線路間を接続する高抵抗値の抵抗と、抵抗の中点に接続され、中点を接地するインダクタと、差動信号の電圧振幅の対称性の崩れを検出するオペアンプと、オペアンプの出力を積分するダイオード及び積分用コンデンサと、積分された電位を判定する判定部と、判定後に放電するFETとから構成される。本発明では、終端抵抗の中点をインダクタを介し接地し、正負の信号を合成した信号がグランドレベルになることを期待して、中点の電圧振幅を増幅・整流して異常を発見する。
【0045】
以上、上記実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細については、当業者が理解し得るさまざまな変更を加えることができる。また、本発明には、上記実施形態の構成の一部又は全部を相互に適宜組み合わせたものも含まれる。
【0046】
上記の実施形態の一部又は全部は以下の付記のようにも記載され得るが、本発明は以下の構成に限定されるものではない。
【0047】
[付記1]互いに逆位相となる二つの信号がそれぞれ伝送される第一及び第二の伝送線路について、故障を検出する差動信号故障検出装置であって、
前記第一及び第二の伝送線路を流れる前記信号の対称性を示す波形を生成する波形生成手段と、
この波形生成手段で生成された前記波形の異常を検出する異常検出手段と、
この異常検出手段で検出された異常に基づいて前記第一及び第二の伝送線路における故障を判定する故障判定手段と、
を備えたことを特徴とする差動信号故障検出装置。
【0048】
[付記2]付記1記載の差動信号故障検出装置であって、
前記波形生成手段は、前記対称性を示す波形として、前記第一及び第二の伝送線路を流れる前記信号の重畳波形を生成し、
前記異常検出手段は、前記波形生成手段で生成された前記重畳波形の積分値を得ることにより、当該重畳波形の異常を検出し、
前記故障判定手段は、前記異常検出手段で得られた前記積分値が閾値を越えた場合に、前記第一及び第二の伝送線路において故障が発生したと判定する、
ことを特徴とする差動信号故障検出装置。
【0049】
[付記3]付記2記載の差動信号故障検出装置であって、
前記波形生成手段は、
前記第一の伝送線路に流れる信号を取り出す第一の抵抗器と、
前記第二の伝送線路に流れる信号を取り出す第二の抵抗器と、
前記第一の抵抗器から取り出された信号と前記第二の抵抗器から取り出された信号との重畳波形を生成するインダクタと、
を有する、
ことを特徴とする差動信号故障検出装置。
【0050】
[付記4]付記2又は3記載の差動信号故障検出装置であって、
前記異常検出手段は、
前記波形生成手段で生成された前記重畳波形に相当する電圧と基準電圧との差に相当する差電圧を出力するオペアンプと、
このオペアンプから出力された差電圧のみを出力するダイオードと、
このダイオードによって充電され前記積分値に相当する電圧を保持するコンデンサと、
を有する、
ことを特徴とする差動信号故障検出装置。
【0051】
[付記5]付記2乃至4のいずれか一つに記載の差動信号故障検出装置であって、
前記故障判定手段は、
前記異常検出手段で得られた前記積分値と閾値との大小関係を出力するバッファと、
前記積分値が前記閾値を越えたことを前記バッファが出力した場合に、故障を示す判定信号を出力するとともに、前記コンデンサを放電するための放電信号を出力する判定部と、
この判定部から出力された放電信号に基づいて前記コンデンサを放電するトランジスタと、
を有する、
ことを特徴とする差動信号故障検出装置。
【0052】
[付記6]互いに逆位相となる二つの信号がそれぞれ伝送される第一及び第二の伝送線路について、故障を検出する差動信号故障検出方法であって、
前記第一及び第二の伝送線路を流れる前記信号の対称性を示す波形を生成し、
生成された前記波形の異常を検出し、
検出された前記異常に基づいて前記第一及び第二の伝送線路における故障を判定する、
ことを特徴とする差動信号故障検出方法。
【0053】
[付記7]付記6記載の差動信号故障検出方法であって、
前記対称性を示す波形として、前記第一及び第二の伝送線路を流れる前記信号の重畳波形を生成し、
前記重畳波形の異常を検出する際に、生成された前記重畳波形の積分値を得ることにより、当該重畳波形の異常を検出し、
前記第一及び第二の伝送線路における故障を判定する際に、前記異常検出手段で得られた前記積分値が閾値を越えた場合に、当該第一及び第二の伝送線路において故障が発生したと判定する、
ことを特徴とする差動信号故障検出方法。
【0054】
[付記8]付記7記載の差動信号故障検出方法であって、
前記重畳波形を生成する際に、
前記第一の伝送線路に流れる信号を第一の抵抗器を介して取り出すとともに、前記第二の伝送線路に流れる信号を第二の抵抗器を介して取り出し、
前記第一の抵抗器から取り出された信号と前記第二の抵抗器から取り出された信号との重畳波形をインダクタを介して生成する、
ことを特徴とする差動信号故障検出方法。
【0055】
[付記9]付記7又は8記載の差動信号故障検出方法であって、
前記重畳波形の異常を検出する際に、
生成された前記重畳波形に相当する電圧と基準電圧との差に相当する差電圧をオペアンプを介して出力し、
このオペアンプから出力された差電圧のみをダイオードを介して出力し、
このダイオードによってコンデンサを充電し、前記積分値に相当する電圧を当該コンデンサを介して保持する、
ことを特徴とする差動信号故障検出方法。
【0056】
[付記10]付記7乃至9のいずれか一つに記載の差動信号故障検出方法であって、
前記第一及び第二の伝送線路における故障を判定する際に、
得られた前記積分値と閾値との大小関係をバッファを介して出力し、
前記積分値が前記閾値を越えたことを前記バッファが出力した場合に、故障を示す判定信号を判定部を介して出力するとともに、前記コンデンサを放電するための放電信号を当該判定部を介して出力し、
この判定部から出力された放電信号に基づいて前記コンデンサをトランジスタを介して放電する、
ことを特徴とする差動信号故障検出方法。
【0057】
[付記11]
互いに逆位相となる二つの信号がそれぞれ伝送される第一及び第二の伝送線路と、
前記第一及び第二の伝送線路の送信端に設けられ、前記二つの信号を送信する送信バッファと、
前記第一及び第二の伝送線路の受信端に設けられ、前記二つの信号を受信する受信バッファと、
前記第一及び第二の伝送線路の受信側及び送信側に設けられ、前記二つの信号に含まれる直流成分を遮断するACカップリングコンデンサと、
前記受信バッファの出力側に設けられ、前記送信バッファから当該受信バッファまでのどこかで故障が発生したことを検出する故障検出回路と、
前記第一及び第二の伝送線路の途中に設けられた付記1乃至5のいずれか一つに記載の差動信号故障検出装置と、
を備えたことを特徴とする高速差動信号伝送装置。
【0058】
[付記12]互いに逆位相となる二つの信号がそれぞれ伝送される第一及び第二の伝送線路について、故障を検出する差動信号故障検出装置であって、
前記二つの信号の電圧振幅の対称性が崩れた場合、前記第一及び第二の伝送線路で故障があったと判定する、
ことを特徴とする差動信号故障検出装置。
【0059】
[付記13]互いに逆位相となる二つの信号がそれぞれ伝送される第一及び第二の伝送線路について、故障を検出する差動信号故障検出方法であって、
前記二つの信号の電圧振幅の対称性が崩れた場合、前記第一及び第二の伝送線路に故障があったと判定する、
ことを特徴とする差動信号故障検出方法。
【産業上の利用可能性】
【0060】
互いに逆位相となる二つの信号を二本の線路を介して伝送する高速差動信号伝送などに利用可能である。
【符号の説明】
【0061】
10 差動信号故障検出装置
20 波形生成手段
21a 第一の抵抗器
21b 第二の抵抗器
22 インダクタ
30 異常検出手段
31 オペアンプ
32 ダイオード
33 コンデンサ
40 故障判定手段
41 バッファ
42 判定部
43 トランジスタ
90 高速差動信号伝送装置
91 送信バッファ
92 受信バッファ
93a 第一の伝送線路
93b 第二の伝送線路
94a,94b,95a,95b ACカップリングコンデンサ
96 故障検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに逆位相となる二つの信号がそれぞれ伝送される第一及び第二の伝送線路について、故障を検出する差動信号故障検出装置であって、
前記第一及び第二の伝送線路を流れる前記信号の対称性を示す波形を生成する波形生成手段と、
この波形生成手段で生成された前記波形の異常を検出する異常検出手段と、
この異常検出手段で検出された異常に基づいて前記第一及び第二の伝送線路における故障を判定する故障判定手段と、
を備えたことを特徴とする差動信号故障検出装置。
【請求項2】
請求項1記載の差動信号故障検出装置であって、
前記波形生成手段は、前記対称性を示す波形として、前記第一及び第二の伝送線路を流れる前記信号の重畳波形を生成し、
前記異常検出手段は、前記波形生成手段で生成された前記重畳波形の積分値を得ることにより、当該重畳波形の異常を検出し、
前記故障判定手段は、前記異常検出手段で得られた前記積分値が閾値を越えた場合に、前記第一及び第二の伝送線路において故障が発生したと判定する、
ことを特徴とする差動信号故障検出装置。
【請求項3】
請求項2記載の差動信号故障検出装置であって、
前記波形生成手段は、
前記第一の伝送線路に流れる信号を取り出す第一の抵抗器と、
前記第二の伝送線路に流れる信号を取り出す第二の抵抗器と、
前記第一の抵抗器から取り出された信号と前記第二の抵抗器から取り出された信号との重畳波形を生成するインダクタと、
を有する、
ことを特徴とする差動信号故障検出装置。
【請求項4】
請求項2又は3記載の差動信号故障検出装置であって、
前記異常検出手段は、
前記波形生成手段で生成された前記重畳波形に相当する電圧と基準電圧との差に相当する差電圧を出力するオペアンプと、
このオペアンプから出力された差電圧のみを出力するダイオードと、
このダイオードによって充電され前記積分値に相当する電圧を保持するコンデンサと、
を有する、
ことを特徴とする差動信号故障検出装置。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか一つに記載の差動信号故障検出装置であって、
前記故障判定手段は、
前記異常検出手段で得られた前記積分値と閾値との大小関係を出力するバッファと、
前記積分値が前記閾値を越えたことを前記バッファが出力した場合に、故障を示す判定信号を出力するとともに、前記コンデンサを放電するための放電信号を出力する判定部と、
この判定部から出力された放電信号に基づいて前記コンデンサを放電するトランジスタと、
を有する、
ことを特徴とする差動信号故障検出装置。
【請求項6】
互いに逆位相となる二つの信号がそれぞれ伝送される第一及び第二の伝送線路について、故障を検出する差動信号故障検出方法であって、
前記第一及び第二の伝送線路を流れる前記信号の対称性を示す波形を生成し、
生成された前記波形の異常を検出し、
検出された前記異常に基づいて前記第一及び第二の伝送線路における故障を判定する、
ことを特徴とする差動信号故障検出方法。
【請求項7】
請求項6記載の差動信号故障検出方法であって、
前記対称性を示す波形として、前記第一及び第二の伝送線路を流れる前記信号の重畳波形を生成し、
前記重畳波形の異常を検出する際に、生成された前記重畳波形の積分値を得ることにより、当該重畳波形の異常を検出し、
前記第一及び第二の伝送線路における故障を判定する際に、前記異常検出手段で得られた前記積分値が閾値を越えた場合に、当該第一及び第二の伝送線路において故障が発生したと判定する、
ことを特徴とする差動信号故障検出方法。
【請求項8】
請求項7記載の差動信号故障検出方法であって、
前記重畳波形を生成する際に、
前記第一の伝送線路に流れる信号を第一の抵抗器を介して取り出すとともに、前記第二の伝送線路に流れる信号を第二の抵抗器を介して取り出し、
前記第一の抵抗器から取り出された信号と前記第二の抵抗器から取り出された信号との重畳波形をインダクタを介して生成する、
ことを特徴とする差動信号故障検出方法。
【請求項9】
請求項7又は8記載の差動信号故障検出方法であって、
前記重畳波形の異常を検出する際に、
生成された前記重畳波形に相当する電圧と基準電圧との差に相当する差電圧をオペアンプを介して出力し、
このオペアンプから出力された差電圧のみをダイオードを介して出力し、
このダイオードによってコンデンサを充電し、前記積分値に相当する電圧を当該コンデンサを介して保持する、
ことを特徴とする差動信号故障検出方法。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれか一つに記載の差動信号故障検出方法であって、
前記第一及び第二の伝送線路における故障を判定する際に、
得られた前記積分値と閾値との大小関係をバッファを介して出力し、
前記積分値が前記閾値を越えたことを前記バッファが出力した場合に、故障を示す判定信号を判定部を介して出力するとともに、前記コンデンサを放電するための放電信号を当該判定部を介して出力し、
この判定部から出力された放電信号に基づいて前記コンデンサをトランジスタを介して放電する、
ことを特徴とする差動信号故障検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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