説明

巻き上げ装置及び走行玩具

【課題】
入出力軸を交互に回転方向を変えて回転させるだけで、簡単にゴム部材を巻き上げることができ、組み立てが容易で安価に製造することができる巻き上げ装置を提供する。
【解決手段】
巻き上げ装置1は、ケース2と、ケース2に回動可能に設けられた入出力軸71及び巻き上げ軸72と、ケース2に設けられ、入出力軸71の一方の回転を巻き上げ軸72に伝達し、入出力軸71の他方の回転を巻き上げ軸72に伝達しない入力歯車群80と、ケース2に設けられ、巻き上げ軸72の一方の回転を入出力軸71に伝達せず、巻き上げ軸72の他方の回転を入出力軸71に伝達する出力歯車群90とを有する。巻き上げ軸72には、ゴム部材120の一端を引っ掛かるフック78が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムを巻き上げることができる巻き上げ装置と、この巻き上げ装置を利用した走行玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のゴムを巻き上げることができる巻き上げ装置は、ゴムの一方を掛止フックに引っ掛け、ゴムの他方を回転軸のフックに引っ掛け、回転軸を一方向に回転させてゴムを巻き上げていた。また、従来の走行玩具の動力装置は、ケースと、ケース内に収納されたゼンマイと、ケースに回動可能に設けられた車軸及びゼンマイ巻き上げ軸と、車軸の一方の回転を巻き上げ軸に伝達してゼンマイを巻き上げる入力歯車群と、ゼンマイの復元力による巻き上げ軸の他方の回転を車軸に伝達する出力歯車群とからなる(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】実開昭58−145697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の巻き上げ装置は、例えば回転軸にプロペラを取り付けた飛行機玩具に利用されることが多く、係る場合には指をプロペラに引っ掛けてプロペラを一方向に連続的に回すことによって、ゴムを巻き上げていく。この巻き上げ動作は、極めて面倒であると共に、ゴムを巻き上げていくに従ってゴムの復元力が強まるので、プロペラの戻る力によって指の皮膚が擦れたり、回している指が疲労してプロペラから一旦外れ、回るプロペラに指を強打して指を痛めたりする問題点があった。
【0004】
前記従来の走行玩具の動力装置は、車軸の両端に駆動輪を取り付け、駆動輪を接地させて前後方向に回転させると、ゼンマイを巻き上げることができる。即ち、前記従来の走行玩具の動力装置は、駆動輪を接地させて後方向に回転させると、車軸の回転が入力歯車群を介して巻き上げ軸に伝達され、ゼンマイを巻き上げる。ゼンマイは、巻き上げられると、外径が小さくなっていく。前記従来の走行玩具の動力装置は、ゼンマイを巻き上げた状態で走行玩具を手から離すと、ゼンマイの復元力が、巻き上げ軸、出力歯車群を介して車軸に伝達され、駆動輪が回転して走行玩具を走行させる。ゼンマイは、弾発力が解放されるに従って、外径が大きくなっていく。このように、前記従来の走行玩具の動力装置は、ゼンマイの弾性を解放させるために、ゼンマイを収容するゼンマイ収容室を横方向のみならず縦方向に大きく形成しなければならず、ゼンマイ及び歯車群を収容するケースを薄くコンパクトに形成することができないという問題点があった。
【0005】
前記従来の走行玩具の動力装置は、ゼンマイの一端を巻き上げ軸に取り付け、ゼンマイの他端をゼンマイ収納室の一側に取り付けなければならないので、組立が面倒であり、安価に製造することができなかった。また、ゼンマイを交換することができないので、動力性能が常に一定であり、走行玩具の動力性能を変更させることができないという問題点があった。また、記従来の走行玩具の動力装置は、ゼンマイを交換することができないので、ゼンマイが壊れたらもう使用することができないという問題点があった。さらに廃棄処分する場合、ゼンマイが金属板で形成されるため、分別廃棄の弊害にもなるという問題点があった。
【0006】
本願発明は、上記問題点に鑑み案出したものであって、入出力軸を交互に回転方向を変えて回転させるだけで、指を痛めることがなく簡単にゴム部材を巻き上げることができ、ゼンマイを必要としていないので、組み立てが容易で安価に製造することができ、ケース
を薄くコンパクトに形成することができる巻き上げ装置を提供することを第1の目的とする。また、ゴム部材を交換することによって、動力性能を変更させることができる走行玩具を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願請求項1に係る巻き上げ装置は、上記第1の目的を達成するため、ケースと、前記ケースに回動可能に設けられた入出力軸及び巻き上げ軸と、前記ケースに設けられ、入出力軸の一方の回転を巻き上げ軸に伝達し、入出力軸の他方の回転を巻き上げ軸に伝達しない入力歯車群と、前記ケースに設けられ、巻き上げ軸の一方の回転を入出力軸に伝達せず、巻き上げ軸の他方の回転を入出力軸に伝達する出力歯車群とを有し、巻き上げ軸には、ゴム部材の一端を引っ掛けるフックが形成されている。
【0008】
本願請求項2に係る巻き上げ装置は、上記第1の目的を達成するため、入出力軸には、入力歯車と出力歯車が設けられ、巻き上げ軸には、受動歯車が設けられており、入力歯車群は、入力歯車の一方の回転を受動歯車に伝達し、入力歯車の他方の回転を受動歯車に伝達しない入力側飛び込み歯車を有し、出力歯車群は、受動歯車の一方の回転を出力歯車に伝達せず、受動歯車の他方の回転を出力歯車に伝達する出力側飛び込み歯車を有する。
【0009】
本願請求項3に係る走行玩具は、上記第2の目的を達成するため、上記巻き上げ装置を備えた走行玩具であって、車台と、車台に回動可能に設けられた車輪と、車台に取り付けられた前記巻き上げ装置と、巻き上げ装置の入出力軸の両端に設けられた駆動輪と、車台に設けられた、前記巻き上げ装置のフックに対向する掛止突起と、前記フックと前記掛止突起の両方に引っ掛けられたゴム部材とを有する。
【発明の効果】
【0010】
本願発明に係る巻き上げ装置は、入出力軸を一方向に連続的に回転させる必要がなく、入出力軸を交互に回転方向を変えて回転させることによって、指を痛めることがなく簡単にゴム部材を巻き上げることができるという効果がある。特に、入出力軸の両端に車輪を取り付け、車輪を接地させて車輪を前後方向に回転させるだけで、ゴム部材を巻き上げることができるので、車輪等の回転部に指が触れなくてすみ、安全であるという効果がある。また、本願発明に係る巻き上げ装置は、動力装置として利用することができ、また、ゼンマイを必要としていないので、組み立てが容易で安価に製造することができ、ゼンマイを収納するスペースが必要ない分、ケースを薄くコンパクトに形成することができるという効果がある。
【0011】
本願発明に係る走行玩具は、動力源となるゴム部材を交換することができるので、動力性能を変更することができ、ゴム部材が切れても新しいものに代えることができるので、長時間使用することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本願発明に係る巻き上げ装置の一つの実施の形態を図1乃至図16に基づいて説明する。図1は、本願発明に係る巻き上げ装置を左方から視た斜視図である。図2は、上記巻き上げ装置を右方から視た斜視図である。図3は、上記巻き上げ装置の左側面図である。図4は、上記巻き上げ装置の右側面図である。図5は、上記巻き上げ装置のケースの左半体を内側から視た平面図である。図6は、前記ケースの右半体を内側から視た平面図である。図7は、上記巻き上げ装置の仕切板を一方から視た斜視図である。図8は、前記仕切板を他方から視た斜視図である。図9は、上記巻き上げ装置の入力側及び出力側の歯車群の説明図である。
【0013】
図10は、上記巻き上げ装置の右半体に仕切板を取り付けた斜視図である。図11は、
上記巻き上げ装置の左半体に組み込まれた出力歯車群の斜視図である。図12は、前記出力歯車群の動きを説明する斜視図である。図13は、図12のカバー部材を外した斜視図である。図14は、上記巻き上げ装置の左半体に仕切板を取り付けた斜視図である。図15は、上記巻き上げ装置の右半体に組み込まれる入力歯車群の斜視図である。図16は、前記入力歯車群の動きを説明する斜視図である。図17は、本願発明に係る走行玩具を一方から視た斜視図である。図18は、上記走行玩具を他方から視た斜視図である。図19は、上記走行玩具の巻き上げ装置を外した車台の斜視図である。
【0014】
図9,11,15に示すように、巻き上げ装置1は、ケース2と、前記ケース2に回動可能に設けられた入出力軸71及び巻き上げ軸72と、前記ケース2に設けられ、入出力軸71の一方の回転を巻き上げ軸72に伝達し、入出力軸71の他方の回転を巻き上げ軸72に伝達しない入力歯車群80と、前記ケース2に設けられ、巻き上げ軸72の一方の回転を入出力軸71に伝達せず、巻き上げ軸72の他方の回転を入出力軸71に伝達する出力歯車群90とを有する。巻き上げ軸72には、ゴム部材120の一端を引っ掛かるフック78が形成されている。
【0015】
前記入出力軸71には、入力歯車73と出力歯車75が設けられている。巻き上げ軸72には、受動歯車76が設けられている。入力歯車群80は、入力歯車73の一方の回転を受動歯車76に伝達し、入力歯車73の他方の回転を受動歯車76に伝達しない入力側飛び込み歯車85を有する。出力歯車群90は、受動歯車76の一方の回転を出力歯車75に伝達せず、受動歯車76の他方の回転を出力歯車75に伝達する出力側飛び込み歯車96を有する。
【0016】
図17,18に示すように、走行玩具101、車台102と、車台102に回動可能に設けられた車輪107,107と、車台102に取り付けられた前記巻き上げ装置1と、巻き上げ装置1の入出力軸71の両端に設けられた駆動輪106,106と、車台102に設けられた、前記巻き上げ装置1のフック78に対向する掛止突起119と、前記フック78と前記掛止突起119の両方に引っ掛けられたゴム部材120とを有する。
【0017】
さらに巻き上げ装置について詳細に説明する。図1〜4に示すように、巻き上げ装置1は、ケース2を有する。ケース2は、矩形箱形状に形成され、上壁3と、上壁3の前部に設けられた前壁5と、上壁3の後部に設けられた後壁6と、上壁3の右部に設けられた右壁7と、上壁3の左部に設けられた左壁8と、上壁3と対向して設けられた下壁9とからなる。前壁5の下部には係合凸起11が形成されている。後壁6の下部には係合凹部12,12が形成されている。
【0018】
ケース2は、二分割された左半体15と右半体16とからなり、左半体15と右半体16が接合されてネジ等により一体的に組み立てられている。図5に示すように、左半体15は、左壁8と、左壁8の前部に設けられた前半壁5aと、左壁8の後部に設けられた後半壁6aと、左壁8の上部に設けられた上半壁3aと、左壁8の下部に設けられた下半壁9aとからなる。前半壁5aの上部近傍には、軸受け片17が形成されている。前半壁5aには、軸受け凹部18が形成されている。軸受け片17には、軸受け凹部18と対向する軸受け凹部19が形成されている。また、前半壁5aと軸受け片17の間には、雌ネジ部22が形成されたボス21が突設されている。また、左壁8のボス21を挟んだ上下には、ネジ通し穴23,24が形成されている。
【0019】
左壁8の略中央上部には、上軸受け孔26が形成されている。左壁8の上軸受け孔26の下部には、上軸受け孔26の略中心を中心とする円弧状の長孔27が形成されている。左壁8の後方下部には、下軸受け孔29が形成されている。
【0020】
図6に示すように、右半体16は、右壁7と、右壁7の前部に設けられた前半壁5bと、右壁7の後部に設けられた後半壁6bと、右壁7の上部に設けられた上半壁3bと、右壁7の下部に設けられた下半壁9bとからなる。右壁7の略中央上部には、上軸受け孔30が形成されている。右壁7の後方下部には、下軸受け孔31が形成されている。右壁7の下軸受け孔31の上部には、下軸受け孔31の略中心を中心とする円弧状の長孔32が形成されている。右壁7の上部両側及び下部略中央には、ネジ通し孔33,35,36が形成されている。
【0021】
図7,8に示すように、左半体15と右半体16の間には、仕切板40が設けられている。仕切板40は、ケース2内に収容される大きさに形成されている。仕切板40の左側面41の前部上下位置には、前記左壁8のネジ通し穴23,24に対向する、雌ネジ部45,46が形成された取付軸42,43が設けられている。仕切板40の左側面41の下部には、前記左壁8の長孔27と対向し、且つ長孔27と略同形状の長穴48が形成された突起49が設けられている。仕切板40の右側面44の下部には、前記右壁7の長孔32と対向し、且つ長孔32と略同形状の長孔51が形成されている。
【0022】
仕切板40は、前記左壁8のボス21と対向する半円状の切り欠き52が形成されている。また、仕切板40は、前記左壁8の上軸受け孔26と対向する透孔53が形成され、、前記左壁8の下軸受け孔29と対向する半円状の切り欠き55が形成されている。仕切板40の右側面44の上部両側及び下部略中央には、右壁7のネジ通し孔33,35,36と対向する、雌ネジ部61,62,63が形成された取付軸57,58,59が設けられている。
【0023】
図14に示すように、仕切板40は、左側面41を左壁8側に向け、取付軸42の雌ネジ部45を左壁8のネジ通し穴23に合わせ、取付軸43の雌ネジ部46を左壁8のネジ通し穴24に合わせ、図1に示すように、ネジ65,65を左壁8側からネジ通し穴23,24に通して雌ネジ部45,46に螺合することによって、左半体15に取り付けられる。図10に示すように、右半体16は、右壁7を仕切板40の右側面44側に向け、右壁7のネジ通し孔33に取付軸57の雌ネジ部61を合わせ、右壁7のネジ通し孔36に取付軸59の雌ネジ部63を合わせ、右壁7のネジ通し孔35に取付軸58の雌ネジ部62を合わせ、図2に示すように、ネジ65,65,65を右壁7側からネジ通し穴33,35,36に通して雌ネジ部61,62,63に螺合することによって、仕切板40に取り付けられる。このように、左半体15と右半体16は、これらが仕切板40に取り付けられて、左半体15の上半壁3aと右半体16の上半壁3bが接合し、左半体15の前半壁5aと右半体16の前半壁5bが接合し、左半体15の後半壁6aと右半体16の後半壁6bが接合し、左半体15の下半壁9aと右半体16の下半壁9bが接合して、ケース2を構成する。
【0024】
図9に示すように、ケース2内には、入出力軸71と巻き上げ軸72と、入力歯車群80及び出力歯車群90が回動可能に設けられている。入出力軸71は、入力歯車73と出力歯車75が固定して取り付けられ、前記左半体15の下軸受け孔29と右半体16の下軸受け孔31に回動可能に取り付けられている。図15に示すように、入力歯車73は、仕切板40の切り欠き55から仕切板40の右側面44側に突出し、図11に示すように、出力歯車75は、仕切板40の左側面41側に位置している。なお、入出力軸71は、両側がケース2から突出している。
【0025】
図9に示すように、ケース2には、回転軸81が回動可能に設けられている。回転軸81は、小歯車82と平歯車91が固定して取り付けられ、左半体15の上軸受け孔26と右半体16の上軸受け孔30に回動可能に取り付けられている。平歯車91の側面には、クラウン歯車92が一体に形成されている。図15に示すように、小歯車82は、仕切板
40の切り欠き53から仕切板40の右側面44側に突出し、図11に示すように、平歯車91は、仕切板40の左側面41側に位置している。
【0026】
図4,15に示すように、仕切板40の長穴51と右壁7の長孔32には、入力側飛び込み歯車85を固定した摺動軸83が回動可能に取り付けられている。入力側飛び込み歯車85は、入力歯車73と常に噛み合い、移動することによって小歯車82とも噛み合うようになっている。図3,10に示すように、仕切板40の長穴48と左壁8の長孔27には、出力側飛び込み歯車96を固定した摺動軸95が回動可能に取り付けられている。図9,11に示すように、出力側飛び込み歯車96には、小歯車97が一体に形成されている。小歯車97は、平歯車91と常に噛み合い、移動することによって出力側飛び込み歯車96が出力歯車75と噛み合うようになっている。
【0027】
図13に示すように、巻き上げ軸72は、左半体15の軸受け凹部18,19に回動可能に取り付けられている。巻き上げ軸72は、ケース2内側の一端に受動歯車76が固定して取り付けられ、ケース2外側の他端に?状のフック78が固定して取り付けられている。受動歯車76は、前記クラウン歯車92と常時噛み合うようになっている。図11に示すように、軸受け凹部18,19は、前記巻き上げ軸72が軸受け凹部18,19から外れないようにするため、カバー部材25によって塞がれている。カバー部材25は、これに形成された透孔28に挿通したネジ66を、ボス21の雌ネジ部22に螺合することによって、ボス21に固定して取り付けられている。本実施の形態では、入力歯車群80は、入力側飛び込み歯車85と小歯車82とで構成され、出力歯車群90は、クラウン歯車92、平歯車91,小歯車97、出力側飛び込み歯車96とで構成されているが、これに限定されるものではない。
【0028】
上記した巻き上げ装置1は、図17,18に示すように、車台102に取り付けられて走行玩具101の動力装置を構成する。図19に示すように、車台102は、板状に形成され、後部に矩形状の取付開口103が形成され、前部に車軸105が回動可能に取り付けられている。取付開口103は、巻き上げ装置1のケース2を嵌合する大きさに形成され、後部にケース2の係合凹部12,12を係合する係合突縁104が形成されている。巻き上げ装置1のケース2は、これの係合凹部12,12が係合突縁104に係合されるようにして、車台102の取付開口103に嵌合され、係合凸起11が取付開口103の前縁に係合して位置決めされる。ケース2は、フック78が前方に位置するようにして、車台102に図示しないネジによって固定される。前記入出力軸71は、車幅方向に延びて車台102から突出し、両端に駆動輪106,106が固定して取り付けられている。従って、入出力軸71は、走行玩具101の駆動軸を構成する。
【0029】
車台102の前部両側には、軸受け片110,110が起立して形成されている。軸受け片110,110には、軸受け孔が形成され、当該軸受け孔に前記車軸105が回動可能に取り付けられている。車軸105の両端には車輪107,107が固定して取り付けられている。車台102の上面109略中央には、前後方向に延びる長板状の補強板112が設けられている。補強板112は、後端113が取付開口103近傍まで延び、前端115が車台102の前端縁116近傍まで延び、車軸105を挿通する挿通孔117が形成されている。補強板112の前部には、掛止突起119が形成されている。前記フック78と当該掛止突起119には、輪ゴム120が引っ掛けられている。
【0030】
上記走行玩具101は、図15に示すように、駆動輪106を後方回転させて入出力軸71を反時計方向(一方向)に回転させると、図16に示すように、入力側飛び込み歯車85が上方に移動して小歯車82と噛み合い、入出力軸71の反時計方向(一方向)の回転が、入力歯車73、入力側飛び込み歯車85、小歯車82を介して回転軸81に伝達される。図11に示すように、回転軸81の反時計方向(一方向)の回転は、クラウン歯車
82、受動歯車76を介して巻き上げ軸72に伝達され、巻き上げ軸72及びフック78を一方向に回転させて輪ゴム(ゴム部材)120を巻き上げていく。回転軸81の反時計方向(一方向)の回転は、平歯車91を介して小歯車97に伝達されるが、小歯車97と一体の出力側飛び込み歯車96が出力歯車75から離間する方向に移動するので、入出力軸71に伝達されることがない。駆動輪106を前方回転させて入出力軸71を時計方向(他方向)に回転させると、図15に示すように、入力側飛び込み歯車85が下方に移動して小歯車82から離間するので、入出力軸71の時計方向(他方向)の回転が回転軸81、即ち、巻き上げ軸72に伝達されることがない。このように、走行玩具101は、車台102を把持し、駆動輪106,106を接地させて、前後方向に動かすと、フック78が間欠的に一方向に回転し、輪ゴム(ゴム部材)120を巻き上げることができる。輪ゴム(ゴム部材)120は、巻き上げられると弾性力が強められるため、車台102を反り返らせるような力が働く。車台102には、補強板112が輪ゴム(ゴム部材)120と略平行に配置されているので、補強板112が輪ゴム(ゴム部材)120の巻き上げによる車台102の反り返りを防ぐことができる。
【0031】
走行玩具101は、輪ゴム(ゴム部材)120を巻き上げた状態で、車台102から手を離すと、図11に示すように、輪ゴム(ゴム部材)120の弾性復元力により、フック78が他方向に回転し、フック78の回転が巻き上げ軸72、受動歯車76、クラウン歯車92を介して回転軸81を時計方向(他方向)に回転させる。図12に示すように、クラウン歯車92と一体の平歯車91が時計方向(他方向)に回転すると、出力側飛び込み歯車96が移動して出力歯車75と噛み合い、回転軸81の時計方向(他方向)の回転が、平歯車91、小歯車97、出力側飛び込み歯車96、出力歯車75を介して入出力軸71に伝達される。入出力軸71は、時計方向(他方向)に回転し、両端に設けられた駆動輪106、106が回転して、走行玩具101が走行する。入出力軸71の時計方向(他方向)の回転は、入力歯車73に伝達されるが、入力側飛び込み歯車85が小歯車82から離間する方向に移動するので、回転軸81に伝達されることがない。
【0032】
巻き上げ装置1は、入出力軸71を一方向に連続的に回転させる必要がなく、入出力軸71を交互に回転方向を変えて回転させることによって、指を痛めることがなく簡単にゴム部材120を巻き上げることができる。また、巻き上げ装置1は、入出力軸71の両端に車輪106,106を取り付け、車輪106,106を接地させて前後方向に回転させるだけで、ゴム部材120を巻き上げることができるので、車輪106,106等の回転部に指が触れなくてすみ、安全である。また、巻き上げ装置1は、動力装置として利用することができ、ゼンマイを必要としていないので、組み立てが容易で安価に製造することができ、ゼンマイを収納するスペースが必要ない分、ケースを薄くコンパクトに形成することができる。上記巻き上げ装置1を取り付けた走行玩具101は、動力源となるゴム部材120を交換することができるので、動力性能を変更することができ、ゴム部材120が切れても新しいものに代えることができるので、長時間使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本願発明に係る巻き上げ装置を左方から視た斜視図である。
【図2】上記巻き上げ装置を右方から視た斜視図である。
【図3】上記巻き上げ装置の左側面図である。
【図4】上記巻き上げ装置の右側面図である。
【図5】上記巻き上げ装置のケースの左半体を内側から視た平面図である。
【図6】前記ケースの右半体を内側から視た平面図である。
【図7】上記巻き上げ装置の仕切板を一方から視た斜視図である。
【図8】前記仕切板を他方から視た斜視図である。
【図9】上記巻き上げ装置の入力側及び出力側の歯車群の説明図である。
【図10】上記巻き上げ装置の右半体に仕切板を取り付けた斜視図である。
【図11】上記巻き上げ装置の左半体に組み込まれた出力歯車群の斜視図である。
【図12】前記出力歯車群の動きを説明する斜視図である。
【図13】図12のカバー部材を外した斜視図である。
【図14】上記巻き上げ装置の左半体に仕切板を取り付けた斜視図である。
【図15】上記巻き上げ装置の右半体に組み込まれる入力歯車群の斜視図である。
【図16】前記入力歯車群の動きを説明する斜視図である。
【図17】本願発明に係る走行玩具を一方から視た斜視図である。
【図18】上記走行玩具を他方から視た斜視図である。
【図19】上記走行玩具の巻き上げ装置を外した車台の斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
1 巻き上げ装置
2 ケース
3 上壁
3a 上半壁
3b 上半壁
5 前壁
5a 前半壁
5b 前半壁
6 後壁
6a 後半壁
6b 後半壁
7 右壁
8 左壁
9 下壁
9a 下半壁
9b 下半壁
11 係合凸起
12 係合凹部
15 左半体
16 右半体
17 軸受け片
18 軸受け凹部
19 軸受け凹部
21 ボス
22 雌ネジ部
23 ネジ通し穴
24 ネジ通し穴
25 カバー部材
26 上軸受け孔
27 長孔
28 透孔
29 下軸受け孔
30 上軸受け孔
31 下軸受け孔
32 長孔
33 ネジ通し孔
35 ネジ通し孔
36 ネジ通し孔
40 仕切板
41 左側面
42 取付軸
43 取付軸
44 右側面
45 雌ネジ部
46 雌ネジ部
48 長穴
49 突起
51 長孔
52 切り欠き
53 透孔
55 切り欠き
57 取付軸
58 取付軸
59 取付軸
61 雌ネジ部
62 雌ネジ部
63 雌ネジ部
65 ネジ
66 ネジ
71 入出力軸
72 巻き上げ軸
73 入力歯車
75 出力歯車
76 受動歯車
78 フック
80 入力歯車群
90 出力歯車群
81 回転軸
82 小歯車
83 摺動軸
85 入力側飛び込み歯車
91 平歯車
92 クラウン歯車
95 摺動軸
96 出力側飛び込み歯車
97 小歯車
101 走行玩具
102 車台
103 取付開口
104 係合突縁
105 車軸
106 駆動輪
110 軸受け片
107 車輪
109 上面
112 補強板
113 後端
115 前端
116 前端縁
117 挿通
119 掛止突起
120 輪ゴム(ゴム部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケースに回動可能に設けられた入出力軸及び巻き上げ軸と、
前記ケースに設けられ、入出力軸の一方の回転を巻き上げ軸に伝達し、入出力軸の他方の回転を巻き上げ軸に伝達しない入力歯車群と、
前記ケースに設けられ、巻き上げ軸の一方の回転を入出力軸に伝達せず、巻き上げ軸の他方の回転を入出力軸に伝達する出力歯車群とを有し、
巻き上げ軸には、ゴム部材の一端を引っ掛けるフックが形成されていることを特徴とする巻き上げ装置。
【請求項2】
入出力軸には、入力歯車と出力歯車が設けられ、
巻き上げ軸には、受動歯車が設けられており、
入力歯車群は、入力歯車の一方の回転を受動歯車に伝達し、入力歯車の他方の回転を受動歯車に伝達しない入力側飛び込み歯車を有し、
出力歯車群は、受動歯車の一方の回転を出力歯車に伝達せず、受動歯車の他方の回転を出力歯車に伝達する出力側飛び込み歯車を有することを特徴とする請求項2記載の巻き上げ装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の巻き上げ装置を備えた走行玩具であって、
車台と、
車台に回動可能に設けられた車輪と、
車台に取り付けられた前記巻き上げ装置と、
巻き上げ装置の入出力軸の両端に設けられた駆動輪と、
車台に設けられた、前記巻き上げ装置のフックに対向する掛止突起と、
前記フックと前記掛止突起の両方に引っ掛けられたゴム部材とを有することを特徴とする走行玩具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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