説明

巻取り装置

【課題】満管パッケージの完成後に繊維ストランドが自動的に確実に切断されるような、繊維ストランドを連続的に巻き取るための巻取り装置を提供する。
【解決手段】巻取りタレット2と、該巻取りタレットに突出して保持されておりかつ各1つの巻き管5.1,5.2と把持装置とを有する2つの巻取りスピンドル3.1,3.2と、巻取りスピンドルに対応配置されている2つの切断装置7.1,7.2と、巻取りスピンドルに対して平行に可動な綾振り糸ガイド9を有する綾振り装置8とが設けられており、両切断装置7.1,7.2が、それぞれ1つのカッタと、該カッタに対応配置された遮断手段とを有しており、繊維ストランド42が、切断前に該遮断手段によって案内されており、所定の最小引張力が達成されると、繊維ストランド42が遮断手段の遮断解除を生ぜしめて、カッタに導入されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維ストランドを連続的に巻き取るための巻取り装置であって、回転可能に支承された巻取りタレットと、該巻取りタレットに突出して保持されておりかつ各1つの巻き管と把持装置とを有する、回転駆動可能な2つの巻取りスピンドルと、巻取りタレットに保持されておりかつ巻取りスピンドルに対応配置されている2つの切断装置と、巻取りスピンドルに対して平行に可動な綾振り糸ガイドを有する綾振り装置とが設けられており、該綾振り糸ガイドが、巻成された満管パッケージを有する一方の巻取りスピンドルから他方の巻取りスピンドルへ繊維ストランドを引き渡すために綾振りストロークの外に位置決め可能である形式の巻取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような形式の巻取り装置は、たとえば欧州特許出願公開第0450085号明細書に基づき公知である。
【0003】
連続的に供給された、たとえば1回の製造プロセスにおいて形成された糸または繊維ストランドまたはその他のエンドレスなストランドは、貯蔵のために通常、巻き取られてパッケージを形成する。このためには、自動化された巻取り装置が有利に使用され、これによりできるだけ多数のパッケージを、著しい中断なしに順次に巻成することができる。このような自動化された巻取り装置は少なくとも2つの巻取りスピンドルを有しており、これらの巻取りスピンドルは糸または繊維ストランドを交互に巻き取ってそれぞれ1つのパッケージを形成する。基本的に巻取りスピンドルは可動のスピンドルキャリヤに保持され得るか、または位置固定のスピンドルキャリヤに据置式に保持され得る。スピンドルキャリヤのこれら2つのバリエーションにおいては、巻取りスピンドルのうちの1つでパッケージが完成された後に、新しいパッケージを形成し得るようにするために、隣接した別の巻取りスピンドルに糸または繊維ストランドが引き渡されなければならないことが必要となる。糸または繊維ストランドの引渡しは、可動のスピンドルキャリヤを使用するバリエーションにおいては、このスピンドルキャリヤを運動させることによって巻取りスピンドルの位置を入れ替えるようにして簡単に実施され得る。この点を見る限りでは、1つの可動のスピンドルキャリヤに2つの駆動可能な巻取りスピンドルを備えた巻取り装置のバリエーションが実際の使用において普及している。スピンドルキャリヤは有利には巻取りタレットとして構成されるので、巻取りタレットの簡単な回転運動により、パッケージ完成後の糸引渡しが実施可能となる。糸または繊維ストランドの引渡しを行うためには、糸または繊維ストランドが、巻取りスピンドルまたは該巻取りスピンドルと協働する把持装置によって引き取られて、満管ボビンと、糸または繊維ストランドを引き取る巻取りスピンドルとの間の糸部分において糸の切断が行われることが重要となる。このために、公知先行技術では、多数の補助装置が知られている。これらの補助装置は糸案内および糸切断のための付加的なアクチュエータを介して、巻取りスピンドルの間へ案内される。この場合には、糸または繊維ストランドの引渡し時における運動シーケンスを調整するために複雑な制御装置が必要とされる。
【0004】
欧州特許出願公開第0450085号明細書に基づき、冒頭で述べた形式の巻取り装置が公知である。この巻取り装置では、糸引渡しのために必要となる補助装置が、巻取りタレットに固定配置されていて、巻取りタレットの回転によって自動的に糸または繊維ストランドの引渡しプロセスに関係付けられる。このためには、巻取りスピンドルにそれぞれ2つの切断装置ならびに2つの把持装置が対応配置されている。糸または繊維ストランドの引渡し時に必要となる糸の位置決めは、綾振りストロークの外で巻取りスピンドルに対して平行に位置決め可能である可動の綾振り糸ガイドによってのみ行われる。したがって、満管ボビンを備えた巻取りスピンドルから別の巻取りスピンドルへの糸または繊維ストランドの引渡しは、巻取りタレットの回転運動によってのみ実施され得る。切断装置は位置固定式の切刃により形成される。この切刃は巻取りタレットに保持されている。しかし、このような切刃は、糸もしくは繊維ストランドの規定されたきれいな切断を行うために、巻取りスピンドルの間での糸または繊維ストランドの規定された延伸を必要とする。特に繊維ストランドが使用される場合には、糸引張力が不十分であると、部分切断が行われる恐れがあり、このような部分切断は繊維端部のほぐれや房状化(Verfransung)を招く。さらに、繊維ストランドが切断される時点が規定されていないので、繊維ストランドを位置固定しかつ新しいパッケージを巻成する前に既に繊維ストランドの切断が行われてしまう恐れがあり、ひいてはプロセス中断が生じる恐れがあるという問題も存在する。この問題は特に、糸または繊維ストランドが比較的低い速度で巻き取られるようなプロセスにおいて出現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0450085号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、冒頭で述べた形式の、糸または繊維ストランドを連続的に巻き取るための巻取り装置を改良して、満管パッケージの完成後に繊維ストランドが自動的に確実に切断されるような巻取り装置を提供することである。
【0007】
本発明の別の課題は、冒頭で述べた形式の、繊維ストランドを連続的に巻き取るための巻取り装置を改良して、巻取りの完了した満管パッケージの完成後に巻取りスピンドルの間での繊維ストランドの引渡しが、実質的に、付加的なアクチュエータによる外部エネルギなしに実施可能となるような巻取り装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために本発明の構成では、冒頭で述べた形式の巻取り装置において、両切断装置が、それぞれ1つのカッタと、該カッタに対応配置された遮断手段とを有しており、繊維ストランドが、切断前に該遮断手段によって案内されており、所定の最小引張力が達成されると、繊維ストランドが遮断手段の遮断解除を生ぜしめて、カッタに導入されるようにした。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、満管パッケージの完成後に巻取りスピンドルの間で繊維ストランドを引き渡す際に、所定の最小糸引張力が達成された後でしか繊維ストランドが切断されないことによりすぐれている。したがって、一方では、繊維ストランドが、繊維ストランドを引き取る巻取りスピンドルに把持されているので、満管パッケージと、繊維ストランドを引き取る巻取りスピンドルとの間の糸部分において所定の最小糸引張力が形成可能となることが確保される。このためには、巻取りスピンドルに対応配置された切断装置が、それぞれカッタと、該カッタに対応配置された遮断手段とを備えて構成されている。この場合、繊維ストランドは切断前に遮断手段によって案内されており、繊維ストランドは所定の最小引張力が達成されると、遮断手段の解放もしくは遮断解除を生ぜしめ、カッタに供給可能となる。繊維ストランドの最小引張力は、繊維ストランドとカッタとが衝突し合ったときに繊維が直ちに切断されるように設定されると有利である。これによって、糸端部におけるほつれや裂けが回避され得るので有利である。
【0010】
巻取りタレットの回転運動からのみ、巻取りタレットに保持された切断装置における繊維ストランドの引渡しおよび切断の繰返しが簡単かつ確実に実施可能となるようにするために、遮断手段は機械的な手段によって形成されると有利である。すなわち、本発明の有利な改良形では、カッタが案内溝の溝底部に対応配置されており、遮断手段がロッカレバーによって形成されている。このロッカレバーは案内溝の溝底部を覆っていて、繊維ストランドの最小引張力が達成されると、離反旋回によって案内溝の溝底部を解放するようになっている。
【0011】
繊維ストランドの最小引張力に相当するロッカレバーの操作力を維持するためには、ロッカレバーと協働する力発生器が使用されると有利である。このために、本発明の有利な改良形では、ロッカレバーが、保持アームと、該保持アームに対して角度を成して配置された案内アームとから形成されており、ロッカレバーが、旋回軸に支承されており、保持アームに力発生器が作用しており、案内アームに繊維ストランドが案内可能であることが提案される。この場合、ロッカレバーにおいて操作力に、比較的小さな保持力または比較的大きな保持力を対応させるために、有利にはてこ比を利用することができる。ロッカレバーの操作力は繊維ストランドの、案内アームに作用する糸引張力によって規定されている。これに対して、力発生器を介して保持アームに保持力を発生させることができる。
【0012】
力発生器としては、特に永久磁石が使用されると有利であることが判っている。この永久磁石は磁気的な保持力によって金属製の保持アームを位置固定する。案内アームに作用する繊維ストランドの糸引張力により形成された操作力が、レバージオメトリ(レバー幾何学的形状)を考慮して、磁気的な保持力を克服するやいなや、ロッカレバーの保持アームが自動的に永久磁石から離れ、案内溝を解放するためのロッカレバーの離反旋回が開始する。
【0013】
両巻取りスピンドルの間での繊維ストランドの引渡しの際に繊維ストランドの所望の糸走路を得るために、本発明のさらに別の有利な改良形では、巻取りタレットが、互いに180゜ずらされて配置された2つの保持ロッドと、互いに180゜ずらされて配置された2つのガイドロッドとを支持しており、繊維ストランドの引渡し時に両保持ロッドのうちの一方の保持ロッドと、両ガイドロッドのうちの一方のガイドロッドとが、両巻取りスピンドルの間で繊維ストランドを案内するようになっている。すなわち、一方では満管パッケージへの繊維ストランドの供給走路と、把持装置への繊維ストランドの進入走路とが、互いに別個に独立して案内可能となるという手段が存在する。すなわち、保持ロッドはそれぞれ満管パッケージへの繊維ストランドの糸走路に影響を与え、ガイドロッドは把持装置への繊維ストランドの糸走路に影響を与えるようになっている。
【0014】
巻取りスピンドルの間での繊維ストランドの引渡しの際に満管パッケージの周面からの繊維ストランドの落下が回避されなければならないので、保持ロッドは、巻取りスピンドルに対して平行にボビンセンタを越えるまで延びるそれぞれ1つの自由端部を有している。この保持ロッドは、該保持ロッドにおける繊維ストランドの位置決めを行うそれぞれ1つの糸ホルダもしくは糸ガイドを有している。
【0015】
保持ロッドおよびガイドロッドの配置および構成は、各把持装置の構成とは無関係であるので、繊維ストランドはたとえば巻き管の周面におけるクランプスリットによって把持され得る。できるだけ平滑な表面を有する巻き管を使用することができるようにするために、把持装置は有利には複数の把持フックにより形成されている。これらの把持フックは直接に巻き管に並んで当該巻取りスピンドルの周面に分配されて保持されている。これによって、繊維ストランドの全ての位置決めおよび案内を、それぞれ使用された巻き管とは無関係に行うことができる。繊維ストランドの供給走路は、位置決め可能な綾振り糸ガイドによってのみ規定される。
【0016】
繊維ストランドを供給するために、特に有利であることが判っている本発明のさらに別の改良形では、綾振り糸ガイドが、互いに直交する方向に向けられた少なくとも2つのローラ対により形成されている。すなわち、繊維ストランドを扁平な帯状物として巻取り装置に供給することができる。両ローラ対を介して90゜だけねじることにより、繊維ストランドを帯状にボビンの周面に巻き付けることが可能となる。
【0017】
綾振り糸ガイドを位置決めするためには、ローラ対が、ホルダに取り付けられており、該ホルダが、駆動可能なねじ山付き軸を介して位置決め可能であると有利である。この場合、ねじ山付き軸の駆動装置によって、ローラ対の綾振り運動も、繊維ストランドを引き渡すための位置決めも、制御され得る。
【0018】
さらに、ボビンの周面に繊維帯状物を付着させるためには、綾振り糸ガイドに押圧ローラが対応配置されており、該押圧ローラが、可動の揺動体を介して、巻成したいボビンの周面に保持されている。押圧ローラの可動性は、ボビン増大時に巻取りスピンドルの待避運動を巻取りタレットの回転運動により実施するために利用され得るので有利である。このためには、押圧ローラの位置を監視するためのセンサが設けられており、該センサが、制御装置を介して巻取りタレットのタレット駆動装置に接続されている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による巻取り装置の1実施形態を概略的に示す正面図である。
【図2】図1に示した実施形態の平面図である。
【図3】図1および図2に示した実施形態における切断装置のうちの1つを概略的に示す横断面図である。
【図4】図3に示した切断装置の縦断面図である。
【図5】図1に示した実施形態を、巻取りスピンドルの間での繊維ストランドの引渡しの際の状態で示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明を実施するための形態を図面につき詳しく説明する。
【0021】
図1および図2には、本発明による巻取り装置の1実施形態を互いに異なる方向から見た図が示されている。図1には正面図が、図2には平面図がそれぞれ示されている。一方の図面に関して特に別記しない限り、以下の説明は図1および図2の両図面に該当する。
【0022】
本実施形態の巻取り装置は巻取りタレット2を有している。この巻取りタレット2はフレーム壁1に回転可能に支承されていて、タレット駆動装置21を介して図面で見て逆時計回り方向に回転可能である。巻取りタレット2は回転可能に支承された2つの巻取りスピンドル3.1,3.2を支持しており、両巻取りスピンドル3.1,3.2はそれぞれ片側の自由端部が突出するように保持されている。巻取りスピンドル3.1,3.2は巻取りタレット2に互いに180゜だけずらされて保持されている。各巻取りスピンドル3.1,3.2はそれぞれ駆動装置に連結されており、この駆動装置は図2に図示されているように、たとえばそれぞれ1つのスピンドル駆動装置19.1,19.2によって形成されていてよい。
【0023】
巻取りスピンドル3.1,3.2はそれぞれ1つの巻き管5.1,5.2を支持している。この巻き管5.1,5.2の周面にパッケージを巻成することができる。各巻取りスピンドル3.1,3.2はそれぞれ把持装置4.1,4.2を有しており、これらの把持装置4.1,4.2は図2に示したように、巻取りスピンドル3.1,3.2の周面において巻き管5.1,5.2の側方に並んで、巻取りスピンドル3.1,3.2の支承端部の範囲に配置されている。巻取りスピンドル3.1,3.2に設けられた把持装置4.1,4.2は互いに同一に形成されているので、この個所では巻取りスピンドル3.2に設けられた把持装置4.2についてのみ説明する。把持装置4.2は複数の把持フック40を有しており、これらの把持フック40は巻取りスピンドル3.2の周面に均一に分配されて配置されている。これらの把持フック40には、巻取りスピンドル3.2の周面において把持溝39が対応配置されている。この把持溝39は、この把持溝39内に突入した把持フック40よりも大きく形成された幅を有している。
【0024】
図1および図2から判るように、各巻取りスピンドル3.1,3.2には、それぞれ1つの分離装置もしくは切断装置7.1,7.2と、ガイドロッド23.1,23.2と、保持ロッド22.1,22.2とが対応配置されている。切断装置7.1,7.2と、ガイドロッド23.1,23.2と、保持ロッド22.1,22.2とは、両巻取りスピンドル3.1,3.2の間に分配されて配置されていて、巻取りタレット2に固く結合されている。
【0025】
図2から判るように、切断装置7.1,7.2は各1つの支持体28.1,28.2によって、把持装置4.1,4.2によって形成されている所定の把持平面に保持される。
【0026】
保持ロッド22.1,22.2ならびにガイドロッド23.1,23.2は巻取りタレット2に、互いに異なる長さで突出するように配置されている。突出長さの長い方の保持ロッド22.1,22.2はその自由端部が、巻き管5.1,5.2の長さのほぼ1/2の長さにより規定されているボビンセンタを越えて突出するように配置されている。実質的に巻き管5.1,5.2の長さにより規定されている巻取り範囲内で、保持ロッド22.1,22.2はそれぞれ1つの糸ガイド24.1,24.2を有しており、この糸ガイド24.1,24.2は保持ロッド22.1または保持ロッド22.2に沿ってスライドする繊維ストランドを位置決めするために働く。
【0027】
突出長さの短い方のガイドロッド23.1,23.2は、その自由端部が巻き管5.1,5.2の巻取り範囲に突入するまで延びるように配置されていて、把持装置4.1,4.2をカバーしている。
【0028】
以下に、切断装置7.1,7.2の構造および機能ならびに保持ロッド22.1,22.2の機能ならびにガイドロッド23.1,23.2の機能を詳しく説明する。
【0029】
図1および図2から判るように、巻取りタレット2の側方に並んで綾振り装置8がフレーム壁1に突設されて保持されている。綾振り装置8は綾振り糸ガイド9を有しており、この綾振り糸ガイド9は本実施形態では、互いに直交して配置された2つのローラ対15.1,15.2によって形成されている。第1のローラ対15.1は巻取りスピンドル3.1,3.2に対して直交する横方向に向けられていて、プロセスから供給された繊維ストランドを引き取る。糸走行方向で第1のローラ対15.1の下方に配置された第2のローラ対15.2は第1のローラ対15.1に対して直交して保持されていて、巻取りスピンドル3.1,3.2に対して平行に延びている。第1および第2のローラ対15.1,15.2はローラキャリヤ16.1,16.2によって保持される。両ローラキャリヤ16.1,16.2は一緒になって1つのホルダ17に固定されている。ホルダ17は巻取りスピンドル3.1,3.2に対して平行に往復案内可能である。このためには、ホルダ17がねじ山付き軸13を介して案内されている。このねじ山付き軸13は巻取りスピンドル3.1,3.2に対して平行に延びている。ねじ山付き軸13は、突出した綾振りキャリヤ14に回転可能に支承されていて、一方の端部が綾振り駆動装置18と連結されている。
【0030】
特に図2から判るように、ホルダ17は、両ローラ対15.1,15.2が巻取り範囲の側方に並んで位置決め可能となるようにねじ山付き軸13に位置決めされ得る。図2に示した位置では、綾振り装置8の綾振り糸ガイド9が、綾振りストロークの外に位置している。この場合、綾振り糸ガイド9は、満管パッケージから空管への繊維ストランドの引渡し時に繊維ストランドを把持するために、繊維ストランドを所定の把持平面に位置決めすることを可能にする。
【0031】
運転時では、ホルダ17がねじ山付き軸13に沿って綾振りストローク内で往復案内される。綾振りストロークは、巻き管5.1,5.2の幅よりも少しだけ小さく設定されていると有利である。したがって、綾振りストロークによって、巻き管5.1,5.2の周面における綾振り範囲が決定される。
【0032】
図1および図2から判るように、綾振り装置8には、回転可能に支承された押圧ローラ10が対応配置されている。この押圧ローラ10は巻き管5.1の周面に当て付けられるか、もしくは繊維ストランドの巻取り時では巻き取られたボビンの周面に当て付けられる。押圧ローラ10はフォーク状の揺動体11を介して保持される。揺動体11は突出した旋回軸12に旋回可能に支承されている。揺動体11にはセンサ25が対応配置されている。このセンサ25はパッケージの巻成中に押圧ローラ10の待避運動を検出する。このときに、押圧ローラ10の待避運動は、押圧ローラ10の実質的に不変の位置において、パッケージの巻成のために引き続き巻取りタレット2の間欠送りを実施することができるようにするために利用される。このためには、センサ25が制御装置20に接続されており、この制御装置20は図2に示したように、各駆動装置19.1,19.2、21,18に接続されている。
【0033】
図1および図2に示した巻取り装置は、糸または繊維ストランドを連続的に巻き取ってパッケージを形成するために適している。この場合、パッケージは巻取りスピンドル3.1,3.2に交互に形成される。1つのパッケージの完成後に、満管パッケージから隣接した巻取りスピンドルへの繊維ストランドの引渡しは、巻取りタレットの回転運動と綾振り糸ガイドの位置決めとによってのみ実施される。図5には、このような状況が示されている。満管ボビンもしくは満管パッケージ6から巻取りスピンドル3.2への繊維ストランドの引渡しのためには、巻取りスピンドル3.2と満管パッケージ6との間の糸区分に位置する繊維ストランドを切断することが必要となる。小さな巻取り速度にもかかわらず繊維ストランドの確実な引渡しおよび切断を得るためには、各切断装置7.1,7.2が同一に構成されている。したがって、以下においては、両切断装置7.1,7.2のうちの一方の切断装置7.1の構造および機能についてのみ説明する。
【0034】
図3および図4には、切断装置7.1を互いに異なる方向から見た図が示されている。切断装置の本実施形態は図3には横断面図で、図4には縦断面図でそれぞれ図示されている。特に別記しない限り、以下の説明は両図面に該当する。
【0035】
切断装置7.1はカッタ27を有している。このカッタ27には遮断手段26が前置されている。遮断手段26は本実施形態では、機械的なロッカレバー(傾動レバー)32として形成されている。ロッカレバー32はL字形に形成されていてよく、そして案内アーム34を有している。この案内アーム34はカッタ27の上方で切刃41に対してほぼ平行に延びている。案内アーム34に対して直交して、ロッカレバー32は保持アーム33を有している。この保持アーム33は力発生器36と協働して、保持力により図3および図4に示した位置に保持される。ロッカレバー32は旋回軸35に旋回可能に支承されている。力発生器36はこの場合には、永久磁石37によって形成されている。この永久磁石37に設けられた当付け面に保持アーム33が保持されている。保持アーム33は金属製に形成されており、これによってロッカレバー32に磁気的な保持力を発生させることができる。永久磁石37は磁石ホルダ43によって切断装置7.1に保持される。
【0036】
カッタ27はロッカレバー32の下方に配置されていて、カッタキャリヤ38によって保持されている。ロッカレバー32とカッタ27とには、互いに向かい合って位置する2つの案内金属薄板30.1,30.2が対応配置されている。これらの案内金属薄板30.1,30.2はそれぞれ1つの案内溝31を有している。案内溝31はカッタ27にまで延びており、この場合、案内溝31の溝底部はカッタ27の切刃41の下方に位置している。案内溝31の溝底部の上方では、ロッカレバー32の案内アーム34が溝底部に対してほぼ平行に延びていて、案内金属薄板30.1,30.2に設けられた各案内溝31により形成された案内平面を貫通している。
【0037】
運転時に、糸引渡しの際には、繊維ストランドが自動的に案内溝31内に導入されて、ロッカレバー32の案内アーム34の表面に案内される。この過程は、巻取りタレット2を回転させかつ綾振り糸ガイド9を位置決めすることによって達成される。
【0038】
図5には、この状況が図示されている。巻取りタレット2が巻取りスピンドル3.1,3.2の交換を実施し、かつ繊維ストランドの位置決めが綾振り糸ガイド9によって行われた後に、引渡しが開始する。符号42で示された、供給される繊維ストランドは、ローラ対15.1,15.2を介して巻取りスピンドル3.2の巻き管5.2の側方に並んで案内される。巻取りタレット2の回転により、保持ロッド22.2とガイドロッド23.2とが繊維ストランドの糸走路内に案内されている。巻取りタレット2のスタート時に、まず綾振り糸ガイド9が真ん中の巻取り範囲に保持される。引き続き、綾振り糸ガイド9は(図1に図示したような)巻き管に並んだ側方の交換位置に案内され、この場合、繊維ストランドは自動的に(図3に図示したような)切断装置7.1の案内溝31内へ案内される。この繊維ストランドはこのときに巻取りスピンドル3.2の把持溝39内に落下して、把持フック40によって把持される。この時点まで、繊維ストランドは相変わらず巻取りスピンドル3.1に位置する満管パッケージ6によって巻き取られる。繊維ストランド42が把持装置4.2によって巻取りスピンドル3.2と巻き管5.2とに位置固定されるやいなや、満管パッケージ6と巻取りスピンドル3.2との間の糸部分には糸引張力が形成される。このときに満管パッケージの、意図されていない繰出しを阻止するために、巻取りスピンドル3.1は制動されるので、繊維ストランド42における糸引張力の増大により、ロッカレバー32が旋回させられ、案内溝31を開放して繊維ストランドを沈み込ませるので、繊維ストランドはカッタ27の切刃41において切断される。
【0039】
図3および図4から判るように、この場合には永久磁石37によって磁気的な保持力として形成される、保持アーム33における保持力が、案内アーム34における操作力よりも大きい限りは、ロッカレバー32はその遮断された機能に留まる。このときにレバー長さ(てこ長さ)および作用点が考慮されなければならないので、力の絶対値は種々異なっていてよい。案内アーム34に作用する操作力は、案内アーム34の表面に案内されている繊維ストランド42の糸引張力により規定される。したがって、保持アーム33に作用する保持力により、ロッカレバー32の旋回を行わせる繊維ストランドの最小引張力を規定することができる。ロッカレバー32が離反旋回するやいなや、繊維ストランド42はカッタ27の切刃41へ到達して、直接に切断される。引き続き、ロッカレバー32は、保持アーム33に吸引作用する永久磁石によって再び初期位置へ案内され得る。
【0040】
繊維ストランドの引渡しの際には、この繊維ストランドを巻取りスピンドルにも、巻き管にも、クランプによってまたは巻付けにより固定することができる。この場合に重要となるのは、繊維ストランドの切断が、満管パッケージ6と、引き継ぎたい巻取りスピンドル3.2との間の繊維ストランドの糸部分における最小引張テンションが形成された後にはじめて行われることである。
【0041】
前で説明した、繊維ストランドの引渡しのための経過は、巻取りスピンドル3.2から巻取りスピンドル3.1への繊維ストランドの引渡し時でも同じ態様で行われる。したがって、本発明による巻取り装置は、比較的小さな巻取り速度および小さなプロセス速度において確実な糸引渡しを可能にするために特に適している。最小引張テンションを形成することにより、各巻取り材料の早期の切断または不規則的な切断が阻止されている。
【0042】
図1および図2に示した本発明による巻取り装置の実施形態は例示的なものである。すなわち、綾振り装置の駆動は、リニアモータまたは駆動される反転溝付軸によっても実施され得る。巻取り材料に応じて、綾振り糸ガイドは糸ガイドエレメントまたはローラ対によって形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 フレーム壁
2 巻取りタレット
3.1,3.2 巻取りスピンドル
4.1,4.2 把持装置
5.1,5.2 巻き管
6 満管パッケージ
7.1,7.2 切断装置
8 綾振り装置
9 綾振り糸ガイド
10 押圧ローラ
11 揺動体
12 旋回軸
13 ねじ山付き軸
14 綾振りキャリヤ
15.1,15.2 ローラ対
16.1,16.2 ローラキャリヤ
17 ホルダ
18 綾振り駆動装置
19.1,19.2 スピンドル駆動装置
20 制御装置
21 タレット駆動装置
22.1,22.2 保持ロッド
23.1,23.2 ガイドロッド
24.1,24.2 糸ガイド
25 センサ
26 遮断手段
27 カッタ
28.1,28.2 支持体
30.1,30.2 案内金属薄板
31 案内溝
32 ロッカレバー
33 保持アーム
34 案内アーム
35 旋回軸
36 力発生器
37 永久磁石
38 カッタキャリヤ
39 把持溝
40 把持フック
41 切刃
42 繊維ストランド
43 磁石ホルダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維ストランドを連続的に巻き取るための巻取り装置であって、回転可能に支承された巻取りタレット(2)と、該巻取りタレット(2)に突出して保持されておりかつ各1つの巻き管(5.1,5.2)と把持装置(4.1,4.2)とを有する、回転駆動可能な2つの巻取りスピンドル(3.1,3.2)と、巻取りタレット(2)に保持されておりかつ巻取りスピンドル(3.1,3.2)に対応配置されている2つの切断装置(7.1,7.2)と、巻取りスピンドル(3.1,3.2)に対して平行に可動な綾振り糸ガイド(9)を有する綾振り装置(8)とが設けられており、該綾振り糸ガイド(9)が、巻成された満管パッケージ(6)を有する一方の巻取りスピンドル(3.1,3.2)から他方の巻取りスピンドル(3.1,3.2)へ繊維ストランドを引き渡すために綾振りストロークの外に位置決め可能である形式の巻取り装置において、両切断装置(7.1,7.2)が、それぞれ1つのカッタ(27)と、該カッタ(27)に対応配置された遮断手段(26)とを有しており、繊維ストランド(42)が、切断前に該遮断手段(26)によって案内されており、所定の最小引張力が達成されると、繊維ストランド(42)が遮断手段(26)の遮断解除を生ぜしめて、カッタ(27)に導入されるようになっていることを特徴とする、繊維ストランドを連続的に巻き取るための巻取り装置。
【請求項2】
カッタ(27)に案内溝(31)の溝底部が対応配置されており、遮断手段(26)がロッカレバー(32)により形成されており、該ロッカレバー(32)が、案内溝(31)の溝底部の上方で使用されており、繊維ストランドの前記最小引張力が達成されると、ロッカレバー(32)が、離反旋回によって案内溝(31)の溝底部を解放するようになっている、請求項1記載の巻取り装置。
【請求項3】
ロッカレバー(32)が、保持アーム(33)と、該保持アーム(33)に対して角度を成して配置された案内アーム(34)とから形成されており、ロッカレバー(32)が、旋回軸(35)に支承されており、保持アーム(33)に力発生器(36)が作用しており、案内アーム(34)に繊維ストランド(42)が案内可能である、請求項2記載の巻取り装置。
【請求項4】
力発生器(36)が、永久磁石(37)により形成されており、該永久磁石(37)に金属製の保持アーム(33)が解離可能に保持可能である、請求項3記載の巻取り装置。
【請求項5】
巻取りタレット(2)が、互いに180゜ずらされて配置された2つの保持ロッド(22.1,22.2)と、互いに180゜ずらされて配置された2つのガイドロッド(23.1,23.2)とを支持しており、繊維ストランドの引渡し時に両保持ロッド(22.1,22.2)のうちの一方の保持ロッドと、両ガイドロッド(23.1,23.2)のうちの一方のガイドロッドとが、両巻取りスピンドル(3.1,3.2)の間で繊維ストランドを案内する、請求項1から4までのいずれか1項記載の巻取り装置。
【請求項6】
保持ロッド(22.1,22.2)が、それぞれ1つの自由端部を有しており、該自由端部が、巻取りスピンドル(3.1,3.2)に対して平行にボビンセンタを越えるまで延びており、保持ロッド(22.1,22.2)が、該保持ロッド(22.1,22.2)における繊維ストランドの位置決めを行うそれぞれ1つの糸ガイド(24.1,24.2)を有している、請求項5記載の巻取り装置。
【請求項7】
ガイドロッド(23.1,23.2)が、それぞれ1つの自由端部を有しており、該自由端部が、巻取りスピンドル(3.1,3.2)に対して平行に把持装置(4.1,4.2)を越えるまで延びている、請求項5または6記載の巻取り装置。
【請求項8】
把持装置(4.1,4.2)が複数の把持フック(40)により形成されており、該把持フック(40)が、直接に巻き管(5.1,5.2)に並んで、当該巻取りスピンドル(3.1,3.2)の周面に分配されて保持されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の巻取り装置。
【請求項9】
綾振り糸ガイド(9)が、互いに直交する方向に向けられた少なくとも2つのローラ対(15.1,15.2)により形成されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の巻取り装置。
【請求項10】
ローラ対(15.1,15.2)が、ホルダ(17)に取り付けられており、該ホルダ(17)が、駆動可能なねじ山付き軸(13)を介して位置決め可能である、請求項9記載の巻取り装置。
【請求項11】
綾振り糸ガイド(9)に押圧ローラ(10)が対応配置されており、該押圧ローラ(10)が、可動の揺動体(11)を介して、巻成したいボビンの周面に保持されている、請求項1から10までのいずれか1項記載の巻取り装置。
【請求項12】
押圧ローラ(10)の位置を監視するためのセンサ(25)が設けられており、該センサ(25)が、制御装置(20)に接続されており、該制御装置(20)によって巻取りタレット(2)のタレット駆動装置(21)が制御可能である、請求項11記載の巻取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−35686(P2013−35686A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−172858(P2012−172858)
【出願日】平成24年8月3日(2012.8.3)
【出願人】(307031976)エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (105)
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D−42897 Remscheid, Germany
【Fターム(参考)】